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一夜一話

映画「ピンク・キャデラック」(1989年) 監督:バディ・ヴァン・ホーン

下


下4

 ご存知、ハリウッド俳優クリント・イーストウッド主演の映画。
 ですが、相手役の女性ルーを演じる女優バーナデット・ピータースが光ります。

1-0_20171020151830618.jpg この小柄な女優は、特にミュージカル女優として有名だそうですが、この映画で演ずるルーという女は、見るからに貧相。そしてノータリンで弱弱しい。
 しかし、そのルーのおバカさ、行てまえ(やっちまえ)的無謀さが、映画をコメディーにしています。そして、ルーに振り回される、クリント・イーストウッド演ずるトム。

 トムは離婚して独身。仕事は、保釈金が払えない人間に代わって保釈金を立替負担する会社の下請け。
 つまり、この会社が立替えた金を「払わない」踏み倒し人間を見つけ出して、身柄を拘束する仕事で、トムはフリーでやっている。

 ルーは偽札所持で逮捕の女。立替金を返済しない人物リストの一人。トムがこの案件を請け負った。
 しかし偽札は実は、家庭内暴力をするルーの夫が、ある組織に属していて、組織がらみの犯罪であることが分かってくる。
 この組織は武装し、白人至上主義を唱えるネオナチ集団。(これがアクションシーンのネタになっている)

 ルーが所持していた偽札以外に、組織は大量の偽札を持っていた。
 夫は組織に言われて、その大量の偽札を自分の車に隠している。この車が夫愛用のピンク・キャデラック。

 一方、ルーは夫に愛想も尽きて顔見りゃ憎らしい状態で家出。赤ん坊を乗せ、このキャデラックで姉の家へ行こうとした。
 でも、なんとしたことか、走るキャデラックから、お札が舞い散っていく! 組織はルーを追う。
 しかし実は、車に積んであった札は・・・。

 あとは観てのお楽しみ。
  
オリジナルタイトル:PINK CADILLAC|
監督:バディ・ヴァン・ホーン|アメリカ|1989年|122分|
脚本:ジョン・エスコウ|撮影:ジャック・N・グリーン|
出演:クリント・イーストウッド(トム・ノワック)|バーナデット・ピータース(ルー・アン・マクグィン)|マイケル・デ・バレス(アレックス)|ジェフリー・ルイス(リッキー・Z)|ティモシー・カーハート(ロイ・マクグィン)|ほか

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映画「偉大なるマルグリット」 監督:グザヴィエ・ジャノリ

上

 話は悲劇なのですが、それ以上に喜劇的であります。
 夫の冷めた愛を取り戻したいがために歌う主人公の音痴がとても印象に残りますが、映画が語る本質は悲しい愛の物語なのです。

1-0_20171013211911588.png 時は1920年、フランスの郊外。
 大邸宅に住む貴族の女性マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)は裕福な資産家です。
 夫のジョルジュ・デュモンの爵位は、マルグリットが買いました。
 夫は大きなビジネスをしていますが、その資金はやはり夫人が提供しています。

 ですがマルグリットは、夫に対して金のことで恩着せがましい物言いをすることはありません。
 彼女はまったくの天然の気質で、夫を純粋に愛しています。
 かたや夫は、マルグリットに対し負い目を感じ続けていて、もはや夫の心はマルグリットから離れて久しいのです。
 しかし妻と離婚すれば金は消え失せます。夫は女と不倫をして憂さを晴らしています。

 夫婦に子はなく、夫は仕事で、あるいは浮気で家を空けることも多いようです。
 ですから、マルグリットは大邸宅にひとりいて、寂しいのです。

 マルグリットはクラシック音楽の愛好家です。音楽が彼女の心を慰めます。
 邸宅には彼女のための音楽室があり、ピアノと蓄音機があって多数のSPレコードを集めています。
 マルグリットは歌うことも趣味にしています。歌曲の譜面をたくさん持っています。
2-0_201710132120243e0.jpg インド人の執事マデルボスは彼女の歌にあわせてピアノ伴奏をします。オペラの歌曲を歌うときは、舞台衣装を着て歌います。
 そうです、マルグリットはオペラの舞台衣装や小道具も集めているのです。
 執事のマデルボスはオペラ歌手になり切ったマルグリットを写真撮影します。撮った写真はまるで有名なオペラ歌手のようです。執事はマルグリットの秘め事遊びのお相手をしています。

 でもマルグリットの本当は、歌を歌う妖艶な姿を夫に見てほしいのです。彼女は夫の愛の復活を求めているのでした。
 しかし、そんなマルグリットを、夫は陰でバケモノだと言います。

 なぜなら、マルグリットは大の音痴でした。そのうえ、自分が音痴であることを認識できないのです。彼女は先天的に歌唱能力が欠けている障害を持っているのでした。(詳細下記) 
 ですが、マルグリットは戦災孤児救済などのために、邸宅内でオーケストラ付の慈善コンサートを幾度も催します。
 観客は親しい貴族たちです。彼らはマルグリットの奇声に未だに慣れていません。ですが演奏が終わると誰もが笑顔で彼女を褒め称えます。
 夫の気遣いは計り知れません。邸宅内でひとり歌うのであれば、その時どんな舞台衣装を着ようが、夫は黙認しています。
 しかしコンサートを催す度に、夫の心は悲しいことに、ますますマルグリットから離れていくのです。

2-1_201710132122023ff.png そんなある日の邸宅内コンサートに、新聞記者と前衛的な挿絵画家、この二人の若者が密かに忍び込みます。
 そして彼らはマルグリットの圧倒的奇声に遭遇しぶったまげるわけです。特に画家は彼女を絶賛します。そして新聞記事になりました。
 つまり、夫が関係者に口外禁止にしていたマルグリットの奇声が、世間にばれてしまいました。

 さて、このシーンを導入に、映画はマルグリットの奔放さを語り始めます。
 挿絵画家はモンパルナスあたりの芸術家たち自由人の一人なのでしょうか、前衛急進的な反体制派の男です。
 この画家に誘われるままに、彼女は夜の街でジャズが流れる当時最先端のとんがった店で踊ります。(マルグリットの音楽的感性 下記)
 1人で夜の街にいること自体が初体験のマルグリットは、大いに開放感を味わいます。一人遊びに飽いたもう一人のマルグリットなのでしょうか。

2-2_20171013212350e40.png 画家が主催するアバンギャルドな催しに、マルグリットが出演し店は大騒動になり、その内容が反体制的であったことから、画家もマルグリットも警察に連行されてしまいます。世間は彼女のことをますます知ることになりました。
 画家はマルグリットに歌の先生を紹介します。そして、マルグリットは大劇場でリサイタルを開くことになります・・。

 話は飛んで、物語の結末は精神病棟でした。そこで何が行われようとするのか・・・これも観てのお楽しみ、いや悲しみましょう。 
 マルグリットを本当に思いやるのは、マルグリットの生きざまをフィルムに収めることに執心する執事と、皮肉なことに夫の不倫相手の女だけでした。

 観終わって残念なことは、脚本上、マルグリットの夫の人物描写が弱いこと。
 音痴の歌手というヒントは実話から得たようです。その人物とはアメリカのソプラノ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンス(1868-1944)という女性。歌唱能力が完全に欠落していたそうです。現在でもこの歌手のCDがあります。
 参考wikipediaサイト https://ja.wikipedia.org/wiki/フローレンス・フォスター・ジェンキンス
 なお、メリル・ストリープ主演映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」(2016年)は未見。

 ★先天性失音楽症による歌唱能力の欠如とは 参考サイト 「脳の活動によって音から音楽になる」 
  http://music-specialty.com/musicology/brain-activity.html

 ★マルグリットの音楽的感性について
  歌唱能力欠如のマルグリットですが、音楽を聴く感性は鋭いようです。
  画家に紹介されて彼女はひとりで前衛オペラ「道化師」を見に行き、いたく感銘を受けます。
  ちなみにこの音楽会会場にはプロのサクラ手配師がいて10人のサクラが拍手やブラボーを叫んでいます。
  「現代歌曲は人気がないので」と言う小人症の手配師の言が印象的です。
 
オリジナルタイトル:MARGUERITE|
監督:グザヴィエ・ジャノリ|フランス|2015年|129分|
脚本・脚色:グザヴィエ・ジャノリ|脚本協力:マルシア・ロマーノ|撮影:グリン・スピーカート|
出演:マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)|ジョルジュ・デュモン(アンドレ・マルコン)|アトスペッジーニ(ミシェル・フォー)|アゼル(クリスタ・テレ)|マデルボス(デニス・ムプンガ)|リュシアンボーモン(シルヴァン・デュエード)|キルフォンプリースト(オベール・フェノワ)|フェリシテ(ソフィア・ルブット)|ディエゴ(テオ・チョルビ)|ほか

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1年前・3年前・5年前の10月、一夜一話。(2016年10月・2014年10月・2012年10月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-10-15 Sun 06:00:00
  • 映画
1年前の10月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年10月 Archive>

写真
「パラダイスビュー」
監督:高嶺剛
小林薫、戸川純
写真
「鶴八鶴次郎」
監督:成瀬巳喜男
山田五十鈴、長谷川一夫
写真
「ベニスで恋して」
監督:シルビオ・ソルディーニ
イタリア、スイス
写真
「森浦への道」
監督:イ・マニ
韓国
写真
「フル・フロンタル」
監督:スティーヴン
  ・ソダーバーグ|アメリカ
写真
「リオ、アイラブユー」
~映画音楽に魅せられて
ブラジル
写真
「セントラル・ステーション」
監督:ウォルター・サレス
ブラジル
写真
「110番街交差点」
~映画音楽に魅せられて
アメリカ
     
写真
「ある過去の行方」
監督:アスガー・ファルハディ
フランス、イタリア、イラン

3年前の10月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年10月 Archive)

写真
「パンドラの匣」
監督:冨永昌敬 |仲里依紗、
川上未映子、染谷将太
写真
「ヌードの夜」 監督:石井隆
余貴美子、竹中直人、
椎名桔平、根津甚八
写真
「足にさわった女」
監督:市川崑
越路吹雪、池部良
写真
「揮発性の女」
監督:熊切和嘉
石井苗子、澤田俊輔
写真
「怪異談 生きてゐる小平次」
監督:中川信夫
宮下順子
写真
「さすらいの女神たち」
監督:マチュー・アマルリック
フランス
写真
「南東から来た男」
監督:エリセオ・スビエラ
アルゼンチン
写真
「ネブラスカ
   ふたつの心をつなぐ旅」

アメリカ
写真
「ショーシャンクの空に」
監督:フランク・ダラボン
アメリカ
写真
「グッド・ウィル
  ・ハンティング 旅立ち」

アメリカ
「キムチを売る女」
監督:チャン・リュル
韓国・中国

5年前の10月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年10月 Archive)

写真
「クワイエットルームに
        ようこそ」

内田有紀,宮藤官九郎,蒼井優
写真
「水の女」
監督:杉森秀則
UA、浅野忠信
写真
「オキナワの少年」
監督:新城卓
藤川一歩、内藤剛志
写真
「スリー☆ポイント」
監督:山本政志
村上淳、蒼井そら
写真
「ポストマン・ブルース」
監督:SABU
堤真一、遠山景織子
写真
「夏の妹」
監督:大島渚
栗田ひろみ、りりィ
写真
「パプリカ」
監督:今敏
アニメ
写真
「ディナーラッシュ」
監督:ボブ・ジラルディ
アメリカ
写真
「父の初七日」
監督:ワン・ユーリンほか
台湾
写真
「アンナ」
監督:ピエール・コラルニック
フランス
写真
「潜水服は蝶の夢を見る」
監督:ジュリアン
  ・シュナーベル|フランス
写真
「きらめきの季節 美麗時光」
監督:チャン・ツォーチ
台湾
写真
「ラスベガスをやっつけろ」
監督:テリー・ギリアム
アメリカ
写真
「銀河」
監督:ルイス・ブニュエル
フランス


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映画「女と男のいる舗道」 監督:ジャン=リュック・ゴダール

上


1-0_20171010213421399.jpg ナナを演じる女優アンナ・カリーナが、映画全編84分間、ずっと出ずっぱりの映画です。
 総じてセリフの少ない中、加えてあっさりした演出のもと、アンナ・カリーナの存在の味が、この映画のイメージを決定しています。
 カメラは、いつもアンナ・カリーナに寄り添いながらも、彼女の存在感に頼ることなく、素晴らしい撮影を実現しています。
 スチールカメラ撮影での、しっかりした構図力が基本にないと、こういう映像は撮れないように思います。(他にあるようで、なかなか無いものです)

 舞台はパリ。子持ちのナナは子を置いて離婚し、女優を目指すが現実はレコードショップの店員をして、しがない独り身人生を送っている。しかし、パリでの生活には薄給のナナは、娼婦の道を歩むことになります。

 映画は12の章で成り立っています。
 ストーリーは12章を通して展開されますが、各章はそれぞれに異なるモチーフを持って語ります。
 全編を終始一本の話で描く映画では、時に、どこかに冗長なシーンが入りがちですが、本作の作りはそういうことが入る隙はなく、緻密さが印象に残ります。
 
 2階のビリヤード場で、ジュークボックスから流れるロックンロールで、ひとり踊るナナのシーンがいいです。
 話は悲しい話ですが、重く暗くならずドライ。映像はとてもスタイリッシュ。
 ゴダールの作だからと、かたく構えず肩の力を抜いて自分の目で楽しく観ましょう。
 

オリジナル・タイトル:Vivre sa vie: Film en douze tableaux|自分の人生を生きる、12のタブローに描かれた映画|
監督:ジャン=リュック・ゴダール|フランス|1962年|84分|
原作:マルセル・サコット|脚本:ジャン=リュック・ゴダール|撮影:ラウール・クタール|音楽:ミシェル・ルグラン|
出演:ナナ(アンナ・カリーナ)|ラウール(サディ・レボ)|ポール(アンドレ・ラバルト)|イヴェット(ギレーヌ・シュランベルジェ)|ほか

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【 ゴダールの映画 】

いままでに取り上げた作品です。画像をクリックしてお読みください。
写真
「アルファヴィル」
写真
「勝手にしやがれ」
写真
「小さな兵隊」

映画「ラスト・ショー」  監督:ピーター・ボグダノヴィッチ

上
ソニー、デュアンとジェイシー


 1951年、アメリカはテキサス、白人だけのさびれた小さな田舎町。
 映画は、この町に住む高校生たちの恋、友情を描くとともに、高校を卒業し社会へ出ていく道筋の、それぞれの選択を見守って描いています。

1-0_20171009135756d7d.jpg その町は、町と言えるほどの町じゃない。
 広い道路の両側にところどころに店があるだけ。
 ハンバーガーにコーヒー等わずかなメニューしかないレストラン、いや食堂、小さなビリヤードの店、そのほかに開いている店舗はガソリンスタンドに薬局くらい。閉館を迎えそうな映画館はある。

 この町で、高校生ソニーが相当にくたびれたボロ車に乗り込んで映画は始まる。
 町の広い道路の真ん中で、無心にホウキで道を掃くビリーは、知的障害のある少年で、ソニーは何かと彼の面倒を見てやっている。
 中年の男サムは食堂とビリヤード場のあるじ、この辺りじゃ皆から一目置かれる男で、気が合うのか、ソニーとビリーの世話を親代わりのようにしている。
 食堂を一人で切り盛りする中年女性は、後で分かるがサムの昔の恋人、彼女に町の情報が集まる。

2-0_20171009135925594.jpg 映画館は、唯一の娯楽の場で、高校生たちは友達同士やデートに使っている。ビリーも常連だ。
 そして、この地域には油田があって掘り当てた人間は金持ちだ。人々の間に貧富の差がある。

 映画はこんな設定を背景に、ソニーとその同級生たちの様子を語ります。
 ソニーの友達デュアンは高校一の美人ジェイシーと付き合っている。
 ジェイシーの家は油田で裕福。母親は娘の彼氏が誰かを気にする。貧乏な家のデュアンじゃなく、油田開発で当てた家の、金持ちの彼氏にしなさいと言う。
 この母親は結構さばけた女で、あからさまに娘に注意忠告する内容が、娘の行動を左右し、結果、物語の先行きを変えていく。そして、デュアンの未練は後を引く。

 ジェイシーに突然ふられたデュアンは、高校卒業後、町を離れ油田の現場で働く。貯めた金で車を買う。それはジェイシーの気を引こうとするかのようだった。

3-0 ソニーは高校時代の彼女と別れ、サムのビリヤード場で働いている。町を離れたデュアンは、ジェイシーがソニーと付き合いださないか気にしているようだ。
 だが、ソニーはふとした切っ掛けで中年の女と関係を持つようになる。
 そんな頃、気まぐれなジェイシーはソニーに近づき始めるが・・。

 小さな町の男女の関係を映画は見せていくが、どこかうら悲しい。
 そして、サムの突然の死。彼の遺言でソニーはビリヤード店をもらうことになる。
 ジェイシーは朝鮮戦争の戦線へ。ビリーは交通事故死。


 印象に残るのは、高校生の青春よりも、ジェイシーの気まぐれを繰るかのようなジェイシーの母親、ソニーが付き合う年上の女、サムの昔の恋人で食堂の女の3人かもしれない。
 
4-0






オリジナルタイトル:The Last Picture Show|
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ|アメリカ|1971年|118分|
原作:ラリー・マクマートリー|脚色:ラリー・マクマートリー 、 ピーター・ボグダノヴィッチ|撮影:ロバート・サーティース|
出演:ソニー(ティモシー・ボトムズ)|デュアン(ジェフ・ブリッジス)|ジェイシー(シビル・シェパード)|サム(ベン・ジョンソン)|ルース(クロリス・リーチマン)|ビリー(サム・ボトムズ)|ジェイシーの母・ロイス(エレン・バースティン)|ほか




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一夜一話の “今日はメンフィスソウルだよ” デニス・ラサール

2_201709302147041dc.jpg



 今日の一枚は、ソウルシンガー、デニス・ラサールのデビュー・アルバム「Trapped By A Thing Called Love」。(1972年)
 こんなにも上質なソウル・ミュージックがあることに感謝したい。
 
 デニスの持ち味は、バラードやゆるいミディアムテンポの歌にある、何とも言えない良さ。
 もちろん、少しアップテンポの曲では、ドライブの効いたグルーブ感がある。気が付けば身体でリズムをとっている。

 総じて言えば、滋味があって音楽の角が丸い。
 先鋭的な派手さはないが、何か温かな余裕を感じる。悪く言えば地味。
 でも、ソウルミュージックがほんとに好きな人には、このデニスの音楽のノリは、たまらないだろう!ファン冥利に尽きる。

 デニスは与えられた曲を歌う単なる歌手ではない、ソングライターでもある。収録11曲中、8曲を手掛けている。どれもいい曲だ。 
 彼女は、メンフィス・ソウルミュージックの著名レコードレーベルHi Recordsの名プロデューサー、ウィリー・ミッチェルをパパ・ウィリーと呼んで慕っていた。
 そんなことでデニスは、デトロイトのWEATBOUND Recordsに所属しているにもかかわらず、パパのもとで、この1stアルバムを製作したらしい。

3_20170930214751498.jpg さて、WEATBOUNDで時を過ごしたのち、デニスはABC Recordsに移籍。
 移籍後の3枚目のアルバムが、この「Under The Influence」。(1978年)
 時はディスコ・ミュージックと呼ばれた耳障りの良いメロディにリズムを強調した音楽ブームのさなか。
 ジャケットデザインはオシャレになってデニスも別人の様。
 アルバムのプロデュースはデニス自身がやっている。しかし収録曲のほとんどに私は興味が持てない。
 辛うじてB面ラストの2曲だけが、デニスの持ち味らしい歌だ。
 このデニスに限らず、1970年代後半になって、ソウルミュージックの素晴らしさは、残念ながら終わってしまったようだ。

 ちなみに、ジム・ジャームッシュ監督の映画「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」(2013年)に、「Trapped By A Thing Called Love」の曲がシングル盤から流れるシーンがある。この映画については、こちらからお読みください。

Trapped By A Thing Called Love  Westbound Records ‎– WB 2012 (1972年)
A1 Trapped By A Thing Called Love  2:36
A2 Now Run And Tell That  3:19
A3 Heartbreaker Of The Year  2:48
A4 Good Goody Better  3:19
A5 Catch Me If You Can  3:03
B1 Hung Up, Strung Up  2:37
B2 Do Me Right  2:50
B3 The Deeper I Go (The Better It Gets)  2:23
B4 If You Should Loose Me  2:37
B5 Keep It Coming  2:32
B6 It's Too Late   3:10

映画「薔薇大名」 監督:池広一夫

下
月太郎の婚約者・お小夜と、横恋慕のスリ師・お京。
だが、この男、月太郎じゃなく、実は奥州棚倉藩の若君・小笠原左馬之助であった。


 時代劇です。陽気でおバカな喜劇話です。
 大名行列など冗長なシーンは早回しで観せますし、悲しいシーンも含め音楽はユーモラスなジャズ風。
 でも、ストーリーは凝っています。

 「薔薇大名」の「薔薇」の意は、若君の腕に薔薇のようなアザがあるからで、他意はない。
 私は池広一夫というこの監督の映画が好きで、本作は監督の第一作目らしい。
 1シーンだけの特別出演で市川雷蔵が突然出てくるが、ほかは主役も含め、一般的には余り知名度がない俳優ばかり。
 でも今となっては、これがかえって新鮮でいい! 

1-1_20171006115730085.png 話は、ある藩の若君・左馬之助と、曲芸一座の芸人・月太郎の、その姿かたちがソックリであったことから始まる。
 そして、月太郎に恋する、同じ一座の芸人娘・お小夜と、月太郎に横恋慕のスリ稼業の女、この2人の女が話に花を添える。
 さらには、若君/月太郎、この瓜二つの2人の立場が入れ替わった事が、つまり偽・若君が、結局は、若君の藩の内紛を解決することになるという、藩をあげての大騒動に発展する。
 では、若君と町人の月太郎がなぜ入れ替わったのか?

2-1_201710061159044fc.png

 密かに江戸市中に滞在する小笠原左馬之助(小林勝彦)は、実は奥州棚倉藩(福島県)の若君。
 その棚倉藩では、城主の跡目争いという陰湿な内紛が起きていた。
 現城主(左馬之助の父親)は、悪者家老の指図で長期間に渡り藩医から毒を盛られ衰弱していた。
 家老は城主と若君を暗殺し、家老派の新たな城主をうちたてようと企んでいるのだ。
 これに気づいた左馬之助はひとり江戸に出て急ぎ毒薬の勉強をし、藩医が薬と称する毒薬の証拠を握ろうとしていた。
 しかし、左馬之助が国元から突然姿を消した事とそのわけは極秘であり、父親はじめ藩の誰もが知らぬことであった。
 だが、家老は若君が江戸にいることを嗅ぎつけ、暗殺団を江戸へ送り、若君は切られて大川に落ちた。

3-0_20171006120128172.png 一方、そんなことなど知る由もない城主派の侍たちも、若君を探しに江戸に来ていた。
 城主の寿命があとわずか、一刻も早く若君を見つけ出し、国元へ帰ってもらわないと、家老派の思うがままになってしまう。わが藩、存亡の危機。
 そんなある日の江戸市中、城主派の侍が月太郎(小林勝彦)を見かける、あ!若君だ! いや、人違いだ!俺は月太郎だ! 
 結局、月太郎は城主派に拘束されるが、彼の腕に若君の証拠の「薔薇」のアザがないことが分かり、今度は若君に化けて身代わりで国元へ行ってくれと懇願される。
 このお礼は100両という多額で、月太郎は婚約者の病父の薬代を思い、大役を引き受け、大名駕籠に乗せられて、侍たちと国元の奥州棚倉藩(福島県)へ。

 さらに一方、そんなことなど知る由もない、月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)。
 突如姿を消した月太郎から奥州棚倉へ行くとだけ知らされたお小夜は、一座の座長を説き伏せ、一座の面々とともに棚倉へ巡業の旅に出る手はずとなった。
 そんな時に、月太郎がお小夜の前に現れた。ずぶ濡れで傷を負っていた。どうしたの!
 優しく介抱された左馬之助だが、知らぬ町人に自分が誰かも言えず、なりゆきで月太郎を演ずることとなる。
 お小夜は左馬之助を月太郎だと疑いすらしない。(左馬之助は侍言葉で話すんだけどね) お小夜は「いつまで芝居の真似をしてるのよ」てな感じ。(喜劇ですから)

5 -0 しかし、一座の棚倉への巡業スケジュールはもう変更できず、お小夜と左馬之助と一座全員は旅に出た。
 旅の途中、左馬之助は、本陣(大名専用の宿)の準備の様子や、街道を駆け抜ける早馬から、胸騒ぎを覚える。
 その夜、旅籠の一室で左馬之助はお小夜に抱いてと迫られ、左馬之助はおおいに戸惑う。

 そこへ、市川雷蔵扮する町人が「いちゃいちゃする声がうるせぇ、宿は貸し切りじゃねぇんだ」と、部屋に飛び込んで来る。
 そして市川雷蔵は左馬之助に向かって、本心をこの女に打ち明けろと言い残して去る。(無理やりの筋書きで可笑しい)
 そこでついに左馬之助はお小夜に、自分は月太郎じゃない、それに月太郎が藩騒動に巻き込まれているらしく、危険だと告げる。
 これを聞いて心配するお小夜に、「この小笠原左馬之助が彼を救える」と言う。お小夜はお願いいたしますと頭を下げた。

 さて、ラスト近く。
 月太郎こと偽若君と城主派一行が、城内に入る。
 また、曲芸一座は城主の招きと偽って、これも城内へ。(若君の計らいだろう) 
 そのうち、偽若君の腕にアザがないことが家老派にばれて一大事。だがそこへ一座が現れる。

7-0.png そおして、時代劇のお約束事、家老一派と城主派のチャンチャンバラバラ。
 若君の武道達人の技、月太郎とお小夜らの曲芸の技が敵をやっつけます。
 加えて、一座の出し物、中に入った人を消す魔法の箪笥や、一座巡業に付いて来た、月太郎に横恋慕のスリ師・お京が大活躍します。めでたしめでたし。


監督:池広一夫(池廣一夫)|1960年|68分|
原作:陣出達朗|脚色:淀川新八|撮影:本田平三|
出演:月太郎、小笠原左馬之助(小林勝彦)|月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)|スリ稼業の女・お京(宮川和子)|ほか多数

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映画「ひつじ村の兄弟」 アイスランド映画 監督:グリームル・ハゥコーナルソン

上


 アイスランドの草原でヒツジを飼育する、仲の悪い兄弟の話。
 映画は、この兄弟の生きざまを、雄大な風景と寒冷地の気候で包み込む。

1-0_20171002092727d46.jpg 兄弟はともに独身で、親から譲り受けた広大な土地に建つ、二軒の家に別れて住んでいる。
 ヒツジ小屋も牧草地も牧羊犬も車も、そのすべてが別々。牧草地の境界線には有刺鉄線の柵がある。

 映画はこの兄弟の弟を中心に話をすすめる。
 それにしても、なぜ40年も、互いにまともな会話をしないで過ごしてきたのか。
 それはどうも相続問題のようだ。
 親は、ヒツジと所有地のすべてを弟に譲ったらしい。そこで優しい弟は、兄のための牧草地とヒツジ、そして古いほうの家を、兄に無償で貸すことにした。
 だが、こういうことのすべてが兄を怒らせ、弟を憎むようになり、よって弟も兄を憎むことになった。


 そんなある日、重大事件が起きる。
 ヒツジの疫病が発覚し、兄弟のヒツジ含め近隣の牧畜農家のヒツジの全部が殺処分の対象となった。
 この地域の人々はみなヒツジの飼育で生活しているのだ。みな困惑した。悩みに悩んで土地を離れる一家も現れる。この先のローンの返済ができないからだ。
 
 強情っ張りの性格は、兄だけでなく大人しそうな弟にも、その血を引いているようだ。
 弟は100頭以上の殺処分を当局に任さず自ら行った。
 なぜなら、殺処分しなかった9頭のヒツジを、獣医当局の監視の目をくぐって家の地下室に隠したのだ。先祖代々のヒツジの血統を守りたいのだ。(このヒツジたちには疫病の様子はないようだ)

 これに気づいた兄は弟に近づいた。兄も、血統を守りたいのだった。
 しかし全頭殺処分の方針を決めた当局がこれを嗅ぎつけた。
 兄弟は9頭のヒツジと牧羊犬を連れて、誰も近づかない冬の山へと向かった。兄弟は初めて力を合わすことになった。
 だが、吹雪のなか、二人はヒツジを見失う。吹雪は容赦なく激しさを増す。
 兄弟は雪穴を掘って中に横たわり、互いに身体を暖め合い、吹雪をやり過ごそうとするのであった。

下

オリジナルタイトル:HRÚTAR|
監督・脚本:グリームル・ハゥコーナルソン|アイスランド、デンマーク|2015年|93分|
撮影:ストゥルラ・ブラント・グロヴレン
出演:グミー(シグルヅル・シグルヨンソン)|キディー(テオドル・ユーリウソン)|当局の獣医カトリン(シャーロッテ・ボーヴィング)|ほか

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映画「お父さんと伊藤さん」 上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也 監督:タナダユキ

上
さすが年の功、伊藤さんは、お父さんのあしらいが上手。

1-0_20170930124809c6c.png
 拍手!脚本が良く出来ていて、演出に抜け目がない。
 息子娘の世代も、父親の世代も楽しめるビターな喜劇。

 話は、妻を亡くした頑固な父親の、たらい回し。
 そんな意固地な父親を持つ息子娘であれば、あるいは、あんな息子娘を持つ父親であれば、こうなる事もある、というこわい話。

 その、あんな息子娘とは。
 長男の潔(長谷川朝晴)と嫁・理々子(安藤聖)の夫婦のところに父親(藤竜也)が同居している。
 夫婦は父親との生活に辟易している。そのうえ、夫婦は中学受験の双子を抱えている。
 特に理々子は義父との関係がもう破綻状態。義父の姿を見るだけで吐き気を催すくらいに精神的に追い詰められている。

 そこで潔は逡巡しながらも、妹の彩(上野樹里)に父親を引き受けてもらいたいと乞うた。
 「未来永劫ってわけじゃない。子供の受験が終わる来年春までの半年でいいんだ」
 切羽詰まった潔は、父親というものは娘と相性がいいという神話にすがったのかもしれない。
 しばらくぶりに会った兄妹だったが、しかし、彩は「ごめん、ほんとにごめん」と断った。
 潔は知らなかった。彩は独り住まいではなかった。伊藤(リリー・フランキー)という男と同居しているのだった。(兄妹はこんな程度に疎遠であった)

 彩は34歳、本屋でアルバイトをしている。会社を辞めてからはバイトの仕事しか見つからない。
 伊藤は54歳。彩とはコンビニのバイト先で知り合った。今は学校給食のバイトをしている。
 彩は伊藤の過去をよく知らない。知る必要もないと思っている。20の歳の差はあるが、本人たちに違和感はない。

 さて、兄と会ってのち帰宅した彩は、玄関に見慣れぬ靴を発見。
 おお、伊藤さんがお父さんと話してる!

 話はここから、父親の秘密も絡んで、てんやわんやの展開になります。あとは観てのお楽しみ。

下2監督:タナダユキ|2016年|119分|
原作:中澤日菜子|脚本:黒沢久子|撮影:大塚亮|
出演:山中彩(上野樹里)|伊藤康昭(リリー・フランキー)|山中潔(長谷川朝晴)|山中理々子(安藤聖)|叔母の小枝子(渡辺えり)|お父さん(藤竜也)|ほか

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2年前・4年前・6年前の9月、一夜一話。(2015年9月・2013年9月・2011年9月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-09-30 Sat 06:00:00
  • 映画
2年前の9月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年9月 Archive)

写真
「運命じゃない人」
監督:内田けんじ
中村靖日、霧島れいか
写真
「花よりもなほ」
監督:是枝裕和
岡田准一、宮沢りえ
写真
「白線秘密地帯」
監督:石井輝男
三原葉子、宇津井健
写真
「風の子」
監督:山本嘉次郎
渡辺篤、夏川静江
写真
「メイド・イン・ホンコン」
監督:フルーツ・チャン
香港
写真
「さよなら、人類」
監督:ロイ・アンダーソン
スウェーデン
写真
「ヤクザガール 二代目は10歳」
監督:セルゲイ・ボドロフ
ロシア
写真
「ロスト・イン
     ・トランスレーション」

アメリカ
写真
「フォー・ルームス」
監督:クエンティン・タランティーノ他
アメリカ


4年前の9月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年9月 Archive)

写真
「旅籠屋騒動」
監督:森一生
ミスワカナ、玉松一郎
写真
「モル」
監督:タナダユキ
タナダユキ、石川貴子
写真
「少年」
監督:大島渚
渡辺文雄、小山明子
写真
「にあんちゃん」
監督:今村昌平
長門裕之、松尾嘉代
写真
「いつか読書する日」
監督:緒方明
田中裕子、岸部一徳
写真
「指輪をはめたい」
監督:岩田ユキ  山田孝之、
小西真奈美、真木よう子
写真
「寝ずの番」
監督:マキノ雅彦  長門裕之、
中井貴一、木村佳乃
写真
「裸の十九才」
監督:新藤兼人
原田大二郎、乙羽信子|
写真
「天使が見た夢」
監督:エリック・ゾンカ
フランス
写真
「さすらい」
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ
写真
「SWEET SIXTEEN」
監督:ケン・ローチ
イギリス

写真
「自分を探す旅
   (邦画編 その1)」

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写真
「女が、自分の道を歩む時。」
過去記事からピックアップ
写真
「人生なんて、そうそう
   うまく行かないワケよ。」

過去記事からピックアップ
写真
「やはり、
  大人の映画ってある。」

過去記事からピックアップ
写真
「子供が主演の映画は、
     視点がピュア。」

過去記事からピックアップ


6年前の9月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年9月 Archive>

写真
「二人が喋ってる。」
監督:犬童一心
新屋鳴美、宇野志津香
写真
「風の歌を聴け」
監督:大森一樹
小林薫、真行寺君枝
写真
「米」
監督:今井正
江原真二郎、中村雅子
写真
「NOVEM ノヴェム」
監督:ブラッド・キンメル
アメリカ
写真
「旅人は休まない」
監督:イ・チャンホ
韓国
写真
「ようこそ、羊さま。」
監督:リウ・ハオ
中国
写真
「胡同の理髪師(フートン)」
監督:ハスチョロー
中国
写真
「死の教室」
監督:アンジェイ・ワイダ
ポーランド
写真
「パレルモ・シューティング」
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ
写真
「モンド」
監督:トニー・ガトリフ
フランス
写真
「少年と砂漠のカフェ」
監督:A・ジャリリ
イラン
写真
「Jazz Seen
   /カメラが聴いたジャズ」

ドイツ
「ブラックブレッド」
監督:A・ビリャロンガ
スペイン・フランス
写真
「ラストサーカス」
監督:A・デ・ラ・イグレシア
スペイン
写真
「ロビンソナーダ」
監督:ナナ・ジョルジャーゼ
グルジア
写真
「誤発弾」
監督:ユ・ヒョンモク
韓国 1961年
写真
近世文学研究
「江戸滑稽化物尽くし」
アダム・カバット (著)

映画「マダム・マロリーと魔法のスパイス」 監督:ラッセ・ハルストレム

上2
開店の夜


 気楽に観れる娯楽映画です。
 インド料理を生業とする移民の一家が、フランスの片田舎でレストランを開業する話。二つの愛が芽生えます。

1-0_20170925200941f73.jpg インドで一家は料理屋を営んでいた。
 店は母親が料理し、父親がマネジメントする繁盛店だったが、地元の選挙陣営対立の中、反対陣営を支援する人々によって店が焼き打ちに合い、不幸なことにこの時、一家は母親を亡くし、その地を追われた。
 故国を捨てた一家(父と息子、娘夫婦に2人の子供)は、旧宗主国イギリスへ渡ったが商売がうまく行かず、またイギリスでは良い食材が手に入らずこの地を諦めた。そののちレストラン開業の新たな場所を求めて、一家は今度はヨーロッパ大陸へと向かった。
 
 祖国を離れ西欧のどこかの国でインド料理レストランを開業したいという父親の思いは、父親が息子のハッサンの料理に一目も二目も置いているからこそであった。
 なぜなら、ハッサンは母親の血を受け継いで味覚が鋭く、子供のころから母親に料理を教わっていた。ハッサンも母の教えのすべてを吸収していたのだった。

 一家六人を乗せて車は開業する適地を求め諸国を走った。そしてある日、フランスのある片田舎の町を通りかかる。
 ここで父親は、廃屋に近い一軒の家の前でひらめいた。ここで始めよう。そこは元レストランであった。

 開店の準備が進む中、発覚したことは、道向かいのフランス料理レストランがミシュラン一つ星の店であること。(お話は都合よくできています)
 このレストランのあるじは、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)といい、夫を亡くし自らが女将となって、毎年一つ星を勝ち取っている女性。

2-0_20170925201118f82.jpg さていよいよ開店。100フィートしかはなれていない、道のこっちと向こうだから、一つ星の店にカレーの匂いが流れていく。
 (原題はTHE HUNDRED-FOOT JOURNEY(100フィートの旅))

 マダム・マロリーは勝気のうえにイケズな女。向かいの店の邪魔をする。ハッサンの父も対抗意識を燃やす。
 そんなうちに、インド料理レストランにやっと客が付き始める。
 美味しいのだ!

 ハッサンはマダム・マロリーの店の女性マルグリットと仲良くなっていた。ともに料理人だ。
 ハッサンに貸したフランス料理本をもとに、ハッサンが初めて作ったソースにマルグリットは唸った。そして愛は深まる。

 マダム・マロリーの店のシェフが、深夜、ハッサンの店の石垣に大きな落書きをした。このシェフは移民を蔑視する男であった。
 これにマダム・マロリーが怒り、即座に彼を首にした。
 そして、後釜になんとハッサンを起用する。実はハッサンが素晴らしい料理人であることをマダムは見抜いていたのだ。

 もちろん、短いが修行(下働き)期間を経て、ハッサンは正式にシェフとなる。そうしてその年、店はミシュラン二つ星を獲得するに至る。 
 このころになって、マダムとハッサンの父親の距離が縮まっていった。

 さて、フランスの飲食業界で名をはせたハッサンは、パリの三ツ星高級レストランに引き抜かれる。
 ハッサンは、新進気鋭の若手シェフとしてパリで最新のメニューを次々に編み出し、有名人となった。
 しかし時が経つうちに、ハッサンの心に空洞ができていく。私はインド人、母から教えられたインド料理のその先を極めたい。
 ハッサンは父親の店に帰り、マルグリットとよりを戻し、ふたりで新たなレストランを開業することにした。
 私はここで三ツ星を狙うと・・。
 
オリジナルタイトル:THE HUNDRED-FOOT JOURNEY(100フィートの旅)|
監督:ラッセ・ハルストレム|アメリカ|2014年|122分|
原作:リチャード・C.モライス|脚本:スティーヴン・ナイト|撮影:リヌス・サンドグレン|
出演:マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)|パパ(オム・プリ)|ハッサン(マニッシュ・ダヤル)|マルグリット(シャルロット・ルボン)|市長(ミシェル・ブラン)|マンスール(アミット・シャー)|ジャン=ピエール(クレマン・シボニー)|ポール(ヴァンサン・エルバズ)|トーマス(アントワン・ブランクエフォート)|

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映画「或る女」(1942年) 主演:田中絹代 監督:渋谷実

上


 話は、明治から大正にかけての、「或る女」の10年を描いている。

1-1_20170923130911f26.png 席主※(坂本武)の計らいで、寄席で下働きしている、おしげ(田中絹代)。(※寄席のあるじ)
 このおしげに向かって、寄主に雇われている元落語家の男・柴田(河村黎吉)が、話していいものか、いけないものかと迷いながらも、話始める。
 「実はね、三楽が東京に帰ってきているらしい」と、くわえて「子もいてね、おまけにカミさんが病に伏せってしまい、金に大層、困ってるらしい」
 これを聞いて、おしげは「僅かばかりだけど、お金ならあるわ」、しかし柴田は「そりゃ、いけねえよ」

 そこへやって来た席主は即座に、「おしげさんに、三楽のことなんか言うもんじゃない」と柴田を制した。続けて、おしげには、「三楽は、あんたにあんなに苦労をかけた男だ、もうかかわりなさんな」と三楽を罵りながら言った。
 これに対しおしげは、「もう10年も前のことだもの、今じゃ何とも思わないわ」

2-0_20170923131120b96.png そして映画は10年前にさかのぼる。(明治の終わり頃)
 そのころ、三楽という芸人(徳大寺伸)は東京じゃ少しばかり売れ始めていた。
 寄席で働く若き娘おしげは、三楽の舞台と舞台を降りた後の短い逢瀬をいつも心待ちにしていた。三楽のほうも、まんざらではなかった。
 だが、彼に欲があった。上方の舞台に出て一旗揚げたいと、三味線の女を連れて東京を去った。三楽はこの女と、既に出来ていたのだった。
 おしげは、突然の失恋に心砕かれ、席主にそれまでの礼も言わず、故郷の田舎へ帰った。

 故郷の家には、兄とその子の二人が住んでいる。この親子は困窮していた。兄は少ない蓄えを人に騙され奪われ、また借金で家は抵当に入っていた。
 しかし兄の子・勇は、幼いながらも進学を望んでいた。将来大きな船の船員になりたいという。

 おしげは自身の悲しみを心の底に押しやって、この世に身内はこの三人、力合わせて勇を育ててやりましょうと、兄を励ます。
 おしげは東京に戻って働き、稼いだお金は兄の子・勇の教育費にと、兄は借金返済にと、兄妹はそれぞれ再び働き始めた。

 そう、おしげのこの頑張りは、どこから来るのだろうか。
 それは、おしげが失った自身の生きがいを新たに見つけたから。つまり、三楽への想いから、実の母子のようにして勇を育てる愛へと、気持ちを切り替えたから。
 それでも、おしげは、三楽への愛を今も心に抱き続けている。そして、だから、私は一生結婚はしないと決心していた。

 東京に戻ったおしげは、斡旋屋の紹介で、あるお屋敷の住み込み女中の職を得る。
 安定したこの職は、兄のもとへ送金するに十分であった。
 この家の娘は病弱で家に閉じこもったままで日々を過ごしていたが、おしげが来たことで親しい話相手ができ、おしげを慕った。

 だが不幸なことに、この娘に好きな人がいたが、相手の家から一方的に婚約が破棄され、娘は失意に陥った。
 たまたま、おしげは田舎の兄の家に帰っていた。そこへおしげに会いたくて娘が一人でやって来た。だが病弱な娘は、儚くもここで体調を崩し世を去ってしまう。屋敷の主は、これをおしげのせいにし、おしげは突然に解雇された。

 理不尽に思いながらも、おしげは挫けない。
 顔の広い柴田の紹介で、勇のため、おしげは料理屋で働き始めた。
3-0_201709231321415ff.png そんなある日、勇(佐野周二)がおしげに会いに来た。商船大学を成績二位で卒業したことを報告に。
 とても喜ぶおしげは勇を連れて、大学の寮じゃ食べられない美味しいものをご馳走しようと、上等な店のうなぎやへ。おしげが勇に酌をするその仕草は玄人の様だった。
 勇はおしげに言った、「叔母さんは料理屋なんかで働く女性じゃない。僕は嫌だ、無理を言うようだが仕事を変えてほしい」と訴えた。「これからは僕は給金をもらえて、採用前提の試用期間航海に出る。お金の方はもう大丈夫。無理しないで田舎に帰ってゆっくりして」
 (当時、商船大卒の航海士とは、日航のパイロット以上の高給とりだった。くわえて勇が知識人になったせいだろう、自分を養ってくれた大事な叔母には飲み屋の女でいて欲しくなかった、勇はそう思っていた)

 しかし、おしげは田舎に帰らず、東京のミシン縫製の町工場で働き始める。(私はもう畑仕事はできない)
 ある日、工場でおしげが倒れた。彼女の人生は、これまで働き詰めの毎日であった。

 このことを聞きつけた席主は、弱ったおしげを手厚く介抱し、快復したおしげは再び寄席で働くことになった。
 こうして、おしげの10年が過ぎた。

 さて、冒頭シーンの続きに映画は戻る。
 おしげは、幾何かの金を口座から下ろし、三楽一家が住む家へ向かった。
 どぶに掛かる小橋を渡って、おしげは三楽の粗末な家の玄関先に立った。
 驚く三楽はおしげを家にあげた。儀礼的な挨拶の後、おしげが差し出す金に、三楽は躊躇するも手を出そうとしたが、三楽の妻はこれを制した。

 そこへ突如、勇が柴田の案内でやって来た。勇は叔母を苦しめた三楽を罵りに来たのだった。
 それはおしげに代わって誰かがいつか言うべき三楽に対する罵りであった。
 その三楽は、そう言ってもらえて私もすっきりした、長年の胸のつかえがやっととれたと感謝し泣いた。
 荒んだ場をおしげと柴田が納め、三楽夫婦はおしげの金を受け取ったのであった。
 
 脚本が弱いが、田中絹代の優れた演技でもっている映画。
 戦時中に製作・公開されたものだが、戦時下の影響はない。ただし、映画が始まる前に「一億の誠で包め兵の家」というスローガンが映し出される。

 映画に石油ランプと白熱電球のあかりが出てくる。
 電灯は、大正11年頃には東京市内のほぼ全域に普及したらしい。
 よって、おしげの10年は、明治末期から大正時代にかけての話なんだろう。

 それと映画に出てくる知らない言葉。
 「おちょうもく」:金銭の異称。江戸時代までの銭貨は中心に穴があり、その形が鳥の目に似ていたところからいう。「お鳥目」
 「おちょうばさん」:帳場とは商店・旅館・料理屋などで,帳簿をつけ勘定をする所。会計場。
           おしげは料理屋で「お帳場さん」も兼ねてた仕事をしていた。
 「アプレンティス」:見習いを意味する英語。卒業した勇が見習いで航海に出ることをおしげに言うシーンで勇が言う言葉。

監督:渋谷実|1942年|96分|
脚本:池田忠雄、津路嘉郎|撮影:森田俊保|
出演:おしげ(田中絹代)|実兄の一人息子・勇(佐野周二)|柴田(河村黎吉)|良吉(斎藤達雄)|三楽(徳大寺伸)|おたま(木暮実千代)|筆子(文谷千代子)|小せい(伏見信子)|樋口(坂本武)|お豊(忍節子)|お松(三村秀子)|勇の少年時代(津田晴彦)|藤子未亡人(葛城文子)|下宿のお母さん(飯田蝶子)|料亭の女将(吉川満子)|おとし(高松栄子)|昌子(森川まさみ)|敬一郎(日守新一)|徳さん(水島亮太郎)|お兼(松尾千鶴子)|城太郎(大塚紀男)|半玉(森和美)|

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一夜一話の “今日はボサノバかな?” 三宅純とアート・リンゼイ

1_20170923102433eee.jpg



 今日の一枚は、三宅純の「Innocent Bossa In The Mirror」というアルバム。(2000年)

 部屋にひとり、ぼんやりしている時
 遠くに聞こえる街のざわめきを聞いているのも悪くはないが
 自分だけのこんな時に、「静かな音楽」を聴くのも手だ。

 真夜中や早朝や夕暮れ、目の前の風景と、心の中の風景とが織りなす、切ない儚さ。
 こんな時に聴くといいかもしれない。


 このアルバム、読書を妨げないと感じるなら、イージーリスニングと思えなくはない。
 だが、作り手はリラクゼーションの立ち位置にいない。
 けだるい中にも、経験したことのない軽い緊張が持続する、前衛的なサウンドだ。
 三宅純という人はサウンド・クリエイター、あるいは作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、楽器演奏者。
 
 アルバムを通して印象的なのは、ボサノバの4曲。(下記曲目の1、2、7、9)
 ボサノバに不可欠なアコースティックギターと歌、これに吟味された大人しいパーカッションとベース。
 そして三宅純の涼しげなピアノの単音メロディ。
 くわえて、これらのサウンドの隙から聴こえて来る、三宅制作のサンプリングされた音(主にシンセサイザー系の各種凝った音色)。

 そのほかの曲も良い。10曲中6曲がアート・リンゼイとの共作。(アート・リンゼイはギタリスト、歌手、プロデューサー、作曲家)
 2、7、8の曲はアートリンゼイがけだるく歌う。
 彼が奏でるエレキギターを使ったノイズも、いつもの通り、控えめに控えめに小さな音で入る。

 アルバムの全10曲、どれも静かな音楽です。(歌詞はすべてポルトガル語らしい)
 ただしラストは余計だった。たぶん好きな歌なんだろうけれど。

 以前ブログで取り上げた映画「プープーの物語」のオリジナル・サウンドトラック(1998年)は、三宅純の作だった。
 この映画の記事は、こちらからどうぞ。

「Innocent Bossa In The Mirror」 (2000年)
01. [Cai Nessa]  Jun Miyake/Arto Lindsay
    Vinicius Cantuaria (Vocal, Acoustic guitar, Percussion), Jun Miyake (Piano, Fender rhodes)
02. [Gaiato]  Jun Miyake/Arto Lindsay
    Arto Lindsay (Vocal), Jun Miyake (Piano), Vinicius Cantuaria (Acoustic guitar, Percussion)
    Masahiro Itami (Electric guitar scratch), Peter Scherer (Loops)
03. [Lista De Praias]  Jun Miyake/Arto Lindsay
    Jun Miyake (Piano, Fender rhodes, Samples), Vinicius Cantuaria (Acoustic guitar, Percussion)
    Arto Lindsay (Voice), Dairo Miyamoto (Bass clarinets, Wood blocks), Hitoshi Watanabe (Cello)
04. [Trejeitos]  Jun Miyake/Arto Lindsay
    Zeno Ishida (Vocal), Jun Miyake (Piano, Flugelhorns, Samples), Arto Lindsay (Chorus)
    Vinicius Cantuaria (Acoustic guitar, Percussion), Masahiro Itami (Steel strings guitar)
    Hitoshi Watanabe (Electric bass), Tomo Yamaguchi (Percussion)
05. [Titia Inocencia]  Jun Miyake
    Jun Miyake (Piano, Fender rhodes, Samples), Arto Lindsay (Electric guitar)
    Vinicius Cantuaria (Acoustic guitar, Percussion), Dairo Miyamoto (Alto flute)
    Hitoshi Watanabe (Acoustic bass), Tomo Yamaguchi (Percussion)
06. [Creamy Thighs]  Jun Miyake
    Jun Miyake (Flugelhorn, Samples), Vinicius Cantuaria (Percussion), Masahiro Itami (Acoustic guitar)
    Hitoshi Watanabe (Electric bass), Peter Scherer (Pads)
07. [A Lua Pela Grade]  Jun Miyake/Vinicius Cantuaria/Arto Lindsay
    Arto Lindsay (Vocal, Electric guitar), Vinicius Cantuaria (Acoustic guitar)
08. [Tres]  Jun Miyake/Arto Lindsay
    Arto Lindsay (Vocal, Electric guitar), Jun Miyake (Fender rhodes, Samples)
    Vinicius Cantuaria (Acoustic guitar, Percussion), Hitoshi Watanabe (Acoustic bass)
    Dairo Miyamoto (Cymbals)
09. [Giraffe In Green]  Jun Miyake
    Jun Miyake (Piano, Fender rhodes, Samples), Vinicius Cantuaria (Acoustic guitar, Percussion)
    Hitoshi Watanabe (Acoustic bass)
10. [As Tears Go By]  Mick Jagger/Keith Richards/Andrew Oldham
    Vinicius Cantuaria (Vocal, Acoustic guitar), Jun Miyake (Flumpet)

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映画「朧夜の女」(おぼろよの女) 1936年 監督:五所平之助

下
 照子


 時は昭和の初め頃、叔父に連れられ行った先の銀座のバー、そこの女と出来てしまった初心な大学生の初恋の顛末。

01-_20170919135736160.jpg 大学生の誠一(徳大寺伸)は、父を早くに亡くし、母のお徳(飯田蝶子)が女手一つで育てた一人息子。すれてない箱入り息子でいい男。
 お徳は、牛や(牛鍋屋)で働いているが、若いころは芸者だった様子。どこかの店の主人風の旦那に頼まれ、唄、三味線の個人教授をしている。

 誠一を銀座のバーに連れ出した張本人の叔父・文吉(坂本武)は、お徳の実兄で昔は粋な遊び人だった。
 その文吉が収まるところにやっと収まって所帯を持った、その妻が、おきよ(吉川満子)という女。
 この夫婦には子がいない。神社の石段下で張物屋を営んでいる。(着物の洗濯屋さん:お客の着物を抜糸して反物にし洗濯する稼業。洗い張り。)
 以上こんな登場人物の描写が話の前段にあって、映画は物語のその先を語り始める。

2-0_20170919140548d74.jpg バーの女・照子(飯塚敏子)は、昔風にありていに言えば、芸者上がりの女給だ。
 だが照子は数年前までは芝神明で指折りの芸者だった。旦那(パトロン)がついて芸者を辞めたが、その旦那が急死、照子の人生は下り坂となっていた。

 文吉は芝神明にいた照子を覚えていた。照子も客として文吉を覚えていた。銀座のバーは再開の場でもあった。
 さて、その後、誠一と照子は密かに会い文通を交わした。ふたりの愛は純であった。しかし誠一はこのことを母親に言えないでいる。

 そしてある日、誠一は照子から妊娠したことを告げられる。
 誠一は驚き戸惑うが、照子は心の奥底で、これを機に身を引くことを決めていた。
 誠一さんは勉強をして将来偉くなる人。子一人、私ひとりでもちゃんと育てていける・・。

 かたや、悩み抜いた誠一は、叔父・文吉に打ち明ける。(死んでも母親には言えない)
 文吉は驚きはしたが、すぐさま、こう思った。自慢の甥が自分を頼りにしてくれた嬉しさ、照子はまったく知らぬ女じゃないこと、さらにはわが身を振り返れば、身に覚えがないことでは無い。
 そこで文吉は思案の末、自分が照子と浮気して子をこしらえてしまった、という嘘を思いつく。そして、これを妻のおきよに言った。

 これを聞いたおきよは、大いに悲しむ一方、これまでの文吉の放蕩を思うと、そんなには驚かなかった。
 誠一と照子の関係を未だ知らぬ母・お徳は、兄の放蕩ぶりを「いい歳して」と非難するも、義姉として子供の出来ないおきよに言う。「兄さんは女ときっぱり分かれる、その代わり、子は家で育てると言ってる。辛いだろうけど、いっそ育ててみれば。赤ちゃんは可愛いよ。世間は、おきよさんはよく出来た嫁だと、ほめそやすよ。」

 ひとつ目の嘘が通って文吉は、慌てて空き家を探し、土手下の家に照子を住まわせる。
 つまり今度はこれ、姉のお徳に対しての嘘。文吉と照子のこの愛の巣に、お徳は便所の傍の軒に吊り下げる「吊り下げ手洗い器」や何やかにやを買いそろえてやってくる。

 さて文吉、お徳が去ったあと、ポツンと座る照子、そこへ誠一が現れる。
 誠一は言う、こんな嘘はやめよう。俺は母親に正直に言う、結婚しよう。叔父や叔母にこれ以上迷惑はかけられない、俺は卑怯だ、と。しかし、照子は誠一の訴えを受け流すだけだった。

 それからそんなに時を経ず、照子は妊娠中毒症で急遽入院する。そして、あっけなく世を去る。
 土手下の家で通夜が行われた。霊前には文吉の友人やお徳もいる。そこへ誠一が現れた。これに気づいた文吉は彼を家の外に連れ出す。
 「もうこれ以上の嘘は、耐えられない、母親にすべてを言う。」と泣く誠一を制して文吉は言う。「この世の中、嘘も正しいことがある、何よりも照子は今もそれを望んでいる」と。


 なにしろ80年以上前の映画です。
 世間の常識が、今と違うことを理解して観ましょう。
 それと、近代を対象にした都市民俗学?とでも言いましょうか、銀座のバーの様子、そこで働くキラキラ衣装の少女、牛鍋屋の様子、張物屋の職人の仕事風景、寄席の様子、一般家屋の室内などに注目しても面白いかもしれません。

監督:五所平之助|1936年|111分|
原作:五所亭|脚本:池田忠雄|撮影:小原譲治
出演:照子、バーでの源氏名(飯塚敏子)|誠一(徳大寺伸)|文吉(坂本武)|お徳(飯田蝶子)|おきよ(吉川満子)|医師(佐分利信)|町内の旦那衆(河村黎吉、野本正一、新井淳)|職人(青野清、谷麗光)|芸者(忍節子)|牛やの女(岡村文子、江坂静子)|女給(朝見草子、立花泰子)|女中(大関君子)|牛やの主人(水島亮太郎)|学生(大山健二、阿部正三郎、金光嗣郎)|講釈師(一龍斎 貞丈)|

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映画「クスクス粒の秘密」 フランス映画 監督:アブデラティフ・ケシシュ

上2










 「クスクス粒の秘密」という題名から、印象としてファンタジックな映画に思われるかもしれないが、そうじゃない。
 フランス南部の港町(セット Sète)に住むチュニジア系移民一世とその子たちの話です。

 総じて、話のタッチは重くなく、比較的軽いですが、「人生、そうそう上手くは行かない」と映画は言っています。しかし、人々はそんな人生をなんとか受け入れ、日々を過ごしています。

 そして、彼らのそんな様子は(傍から見る人には)、時に滑稽じみた様にみえることもあると映画は言っています。


1-0_20170918141944b2f.jpg
 冒頭のいくつかのシーンで映画は、主な登場人物の境遇と人間関係をみせます。
 それは同時に、この港町の現状を語っています。(中小造船業の斜陽、港の漁業の衰退、観光業へのシフト。)

 港のドックで働くスリマーヌは小型船の造船・修理のベテラン、御年60歳でチュニジア系移民一世。実直で無口な男。
 彼の子は4人いて、息子が2人に娘が2人、みな二世。長男長女は既婚。しかし、チュニジア系移民一世の妻スアドとは離婚している。 

 スアドは、チュニジアの伝統料理クスクス((粒状のパスタ))が得意なBIG MAMA。
 子たちとその伴侶や孫たちは母親の家に集って、おふくろの味・クスクスを食べることを楽しみにしている。
 子たちの伴侶はフランス人とロシア人ですが、みな、とても美味しいクスクスが好き。
 しかし、その席にスリマーヌはいない。

2-0_20170918143612705.jpg スリマーヌは愛人ラティファと暮らしている。ラティファもチュニジア系一世だ。
 彼女は小さなホテルと付随するバーを買い取って生計を立てている。そして、ラティファの一人娘リムが母親を手伝っている。リムは20歳で二世。

 スリマーヌはホテルの狭い空き部屋に住んでいる。居候だ。
 ラティファとリムの母娘もホテルの一室を住居としている。
 くわえて、チュニジアの民族音楽バンドの老メンバーも住んでいる。彼らはバーで演奏し生活している。


 さて、こんなシチュエーションをもとに、物語は展開します。
 長年勤めた職場をリストラで追われたスリマーヌは、廃船間際の船を買って船上レストランを始めようと考えます。
 世事に疎いスリマーヌは、リムの助けを借り、資金の手配や役所への諸手続きを始めます。しかし、レストラン経験もなく手元資金もなく、よって信用がありません。でも、船の修理技術はあるスリマーヌは、船の改装だけは済ませました。

 ちなみにこのレストランの売りは、クスクス。
 そうです、スリマーヌは元妻のスアドをコック長にしようという算段。この段で、愛人ラティファはソッポを向きっぱなし。

 信用が容易に得られないと分かったスリマーヌとリムは、お役人や仲間を呼んで、とても美味しいクスクスの船上パーティを企てます。
 バンドのメンバーは、ギャラは出世払いでいいとして、演奏を買って出ます。
 そして彼の息子・娘4人とその伴侶も、このパーティ準備を手伝います。もちろん、前菜やクスクス料理はスアドが作ります。(船にはまだ厨房がありません、スアドは自宅で料理しました)
 彼女はこれまでも、誰かの結婚パーティなどで大量の料理経験はあるのです。準備万端。

 いよいよ、客が船に集まります。酒が出て前菜が出て演奏が始まり、パーティは賑やかに盛り上がります。
 時間を見計らい、スリマーヌの長男次男が車で自宅に戻り、スアドが作った各種のクスクス料理を取りに行きます。そして、いくつかの大鍋を船上に持ち込みました。

 だが、ここで問題が起きます。
 何が問題かというと、長男の浮気相手の女性がパーティに来ていたのを長男が気づき、やばいということで、彼は密かに会場を抜け出し、車でどこかに逃げてしまいます。
 ですが、肝心要のクスクス(粒状のパスタ)を蒸した鍋が、まだ長男の車のトランクの中! これだけを運び出し忘れていたのです。

 事態を知ったスリマーヌはじめ皆は顔面蒼白、もう呆然としています。一方、客たちは、クスクス料理が出てこないことにいら立ち始めます。
 そこへ、ラティファとリムの母娘が客として遅れてやってきました。リムは嫌がる母親を説き伏せてやっとのことで連れて来たのです。なにしろ愛人ですから、この場にそぐわない。(一方、スアドも会場には来ていません)

 お話はここに来て頂点に差し掛かります。急いで話の先を言えば結果的に、ラティファとリムは救世主でした。大活躍!
 かたや、要のスリマーヌはというと、会場を後にして長男を探しに行きますが、彼の混乱ぶりは悪夢のシーンにありがちな展開に・・。(このシーンは冗長ですがご愛敬でみてください)

tunisia-map1.jpg 映画の中で聴こえて来るチュニジア民族音楽バンドが奏でる魅惑的なサウンド、これが流れることで、このフランス映画がチュニジア映画風に観えてきます。お楽しみください。(監督の出自はチュニジアとのこと)

 映画の出来具合については、2013年製作作品「アデル、ブルーは熱い色」の方が、エッジが効いていて、ずっと良い。 

オリジナルタイトル:La graine et le mulet|
監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2007年|135分|
出演:スリマーヌ(アビブ・ブファール)|リム(アフシア・エルジ)|上の娘カリマ(ファリダ・バンケタッシュ)|愛人ラティファ(アティカ・カラウイ)|長男の嫁でロシア人のジュリア(アリス・ユーリ)|下の娘オルファ(サブリナ・オアザニ)|元妻スアド(ブラウイア・マルズーク)|ほか

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〜モンテヴェルディ生誕450年記念〜 ラ・フォンテヴェルデ 第25回定期演奏会 マドリガーレ集全曲演奏シリーズ 「円熟期II :サン・マルコの楽長」

2_201709171331175e6.jpg


 白寿ホールのコンサートに行ってきた。
 いい、コンサートでした。満足。
 舞台の上の方々が、実に楽しそうに演奏していました。

 メンバーの多くは、古楽オーケストラのバッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーなんですね。
 どうりで、どこかで見た顔があった。

 昨今よく言われる、Jクラシックなんていう生半可な範疇を優に飛び越えた、実力ある立派な演奏でした。

 リュート演奏の方が弾くギター(ルネッサンスギター?)、あれ、実物を初めて見て感激。カポタストをしてました。

 モンテヴェルディ(1567- 1643)は、16~17世紀にかけてのイタリアの作曲家、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、歌手。
 マントヴァ公国の宮廷楽長、ヴェネツィアのサン・マルコ寺院の楽長を歴任し、ヴェネツィア音楽のもっとも華やかな時代の一つを作り上げた人。
 彼の作品はルネサンス音楽からバロック音楽への過渡期にあると位置づけられる。(ふむふむそうなんだ)


出演
ラ・フォンテヴェルデ:
鈴木美登里、染谷熱子、中山美紀(ソプラノ)、上杉清仁(カウンターテナー)、布施奈緒子(アルト)、谷口洋介、中嶋克彦(テノール)、小笠原美敬、渡辺祐介(バス)

若松夏美、荒木優子(ヴァイオリン)、成田寛、佐藤駿太(ヴィオラ)、西澤誠治、角谷朋紀(ヴィオローネ)
伊藤美恵(ハープ)、金子浩(リュート、ルネッサンスギター?)、上尾直毅(チェンバロ)

曲目
クラウディオ・モンテヴェルディ:マドリガーレ集第7巻
竪琴の調子を合わせて Tempro la cetra
愛の神よ、僕はどうしたらいいのだ? Amor, che deggio far?
黄金の髪よ Chiome d’oro

同:マドリガーレ集第8巻
他の者は軍神マルスについて歌う Altri canti di marte
僕は恋に燃えているが Ardo, avvampo mi struggo
ニンファの嘆き Lamento della ninfa
私の美しい演奏に合わせて Movete al bio bel suon  他

映画「夏をゆく人々」 イタリア映画 監督:アリーチェ・ロルヴァケル

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長女ジェルソミーナ、多感な年ごろ


 イタリア半島の中ほどにある大きな湖、この湖畔に住む家族のお話。

1-0_201709151404336b7.jpg 湖周辺の広々とした草原、ここで一家7人は養蜂で生計を立てている。
 でも、男手は父さんだけで、母さんとその子4人姉妹と居候のおばさんの、女6人の家。
 そのうえ、長女ジェルソミーナの下の娘たちは、まだ幼い。

 ミツバチの箱を運んだり、遠心分離機で蜂蜜を抽出したり、バケツに一杯になった蜂蜜を運んだりと、力仕事はたくさんある。
 だから、父さんは女手しかいないことで、いつもイライラしている。(そして家族に対して、しょっちゅうワンマンなふるまい)

 そんな父親をみて、ジェルソミーナは懸命に養蜂の仕事をこなしている。口にこそ出さないが、父親も長女のそんな様子を力強く思っている。

 ある日、無口な少年が少年院からこの家にやって来た。父親は、少年の更生のためのプログラムを利用して男手を手に入れたのだ。家に住み込みで仕事を手伝うことになった。

 自然に優しい農業・畜産・養蜂家などを対象にしたコンクールがテレビ局の主催で開催されるという。
 このことを知ったジェルソミーナは密かにコンクールに応募した。よそ者を嫌う父親は、こういうことには絶対反対することを彼女は知っていました。

 さあ、さて、ここら辺りから物語は思わぬ展開をし始めます。
 話の筋のその先を急いで追う姿勢では、この映画は楽しめません。ゆったりした気分で観ましょう。
 主人公のジェルソミーナ役の女性の、楚々とした雰囲気がいいです。プロの俳優じゃないようです。映画はこのジェルソミーナの存在感で成り立っています。

 父親は家族の中ではワンマンですが、世間に対しては自閉的な男です。
 そんな彼ですが、男手が欲しいがためによそ者の少年を家に迎え入れました。
 一方、ジェルソミーナはそろそろ大人の女になろうとしています。自分の意志でコンクールに応募したように、ジェルソミーナの意識は田舎の一軒家から世間に出ていこうとしています。そんな彼女と彼女の恋を母親も叔母も応援します。

 
 映画の後半ぐらいから、「エトルリア」「エトルリア人」という言葉が出てきます。
 この一家の住む地域は、エトルリアという、紀元前8世紀~紀元前1世紀ごろにイタリア半島中部にあった都市国家群があった場所。
 映画は、そんな歴史の謎めいた不思議さをバックグラウンドに秘めているようです。(それは例えば、この一家の家のそばにロケに来た女優さんの姿を借りて・・)
 

オリジナルタイトル:LE MERAVIGLIE|
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル|イタリア スイス ドイツ|2014年|111分|
撮影:エレーヌ・ルヴァール|
出演:ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)|アンジェリカ(アルバ・ロルヴァケル)|ウルフガング(サム・ルーウィック)|ココ(ザビーネ・ティモテオ)|ミリーカテナ(モニカ・ベルッチ)|アドリアン(アンドレ・M・ヘンニック)|少年更生係イルデ(マルガレーテ・ティーゼル)|ほか

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1年前・3年前・5年前の9月、一夜一話。(2016年9月・2014年9月・2012年9月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-09-14 Thu 06:00:00
  • 映画
1年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年9月 Archive>

写真
「風の又三郎」
監督:島耕二
映画音楽に魅せられて
写真
「イン・ザ・プール」
監督:三木聡 オダギリジョー
松尾スズキ、市川実和子
写真
「泥の河」
監督:小栗康平
田村高廣、加賀まりこ
写真
「舞妓はレディ」
監督:周防正行
上白石萌音、富司純子
写真
<か行> の邦画
これまでに記事にした邦画から
    
写真
「ドリンキング・バディーズ
飲み友以上、恋人未満の
甘い方程式」
   アメリカ
写真
「世界」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
写真
「その怪物」
監督:ファン・イノ
韓国
写真
「人生スイッチ」
監督:ダミアン・ジフロン
アルゼンチン・スペイン
写真
「シュトロツェクの
        不思議な旅」

西ドイツ
写真
「永遠と一日」
監督:テオ・アンゲロプロス
ギリシャ
写真
京都に行って来た。
「京都の湯と水の話」



3年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年9月 Archive)

写真
「ミスター・ミセス・ミス
       ・ロンリー」

原田美枝子、宇崎竜童
写真
「水の声を聞く」
監督:山本政志
玄里、趣里、村上淳
写真
「小早川家の秋」
監督:小津安二郎
原節子、中村鴈治郎
写真
「夢みるように眠りたい」
監督:林海象
佐野史郎、佳村萌
写真
「祇園囃子」
監督:溝口健二
若尾文子、木暮実千代
写真
特集「関西の映画です。」
過去記事よりピックアップ
       
写真
「女優で検索」
その名で探す、出演映画。
但し暫定版    
写真
「イーダ」
監督:パベウ・パブリコフスキ
ポーランド
写真
「365日のシンプルライフ」
監督:ペトリ・ルーッカイネン
フィンランド
写真
「愛しのタチアナ」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「最愛の夏」
監督:チャン・ツォーチ
台湾
写真
「マンハッタン」
監督:ウッディ・アレン
アメリカ
写真
「黒いジャガー」「スーパーフライ」
ソウルフルなブラック・シネマは、いかが?



5年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年9月 Archive)

写真
「不良少年」
監督:羽仁進
山田幸男
写真
「あなたと私の合言葉 
    さようなら、今日は」

若尾文子、京マチ子
写真
「旅の重さ」
監督:斎藤耕一
高橋洋子
写真
「HANA-BI」
監督:北野武
岸本加世子
写真
「さよならS」
監督:エリック・ゾンカ
フランス
写真
「月曜日に乾杯!」
監督:オタール
 ・イオセリアーニ|フランス
写真
「ラテンアメリカ
       光と影の詩」

アルゼンチン
写真
「憎しみ」
監督:マチュー・カソヴィッツ
フランス
写真
「太陽の下の10万ドル」
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
フランス
写真
「カラマリ・ユニオン」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「パリ・ルーヴル美術館
          の秘密」

フランス
写真
「夜行列車」
監督:J・カワレロウィッチ
ポーランド
写真
「ひなぎく」
監督:ヴェラ・ヒティロヴァ
チェコスロヴァキア


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気になる映画 59  《これから上映の映画》

写真
「パターソン」
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
8/26~武蔵野館、ヒューマントラスト
写真
「50年後のボクたちは」
監督:ファティ・アキン  9/16~
シネマカリテ、ヒューマントラスト
写真
「鉱」(あらがね)
監督:小田香 監修:タル・ベーラ
10/21~11/3 K's cinema
写真
チェコ・ヌーヴェルヴァーグ
60年代チェコ映画祭  「パーティと招待客」
「ひなぎく」「愛の殉教者たち」ほか全9本上映
11月~イメージフォーラム
写真
エミール・クストリッツァ監督特集
9/16~29 恵比寿ガーデンシネマ
上映作品中、次の3作は記事にしてます。
アンダーグラウンド」「ジプシーの時」「黒猫・白猫
題名をクリックしてご覧ください。
写真
「軽蔑」 デジタル・リマスター版
監督:ジャン=リュック・ゴダール
9/30~恵比寿ガーデンシネマ

映画「青いドレスの女」 監督:カール・フランクリン

上
 映画冒頭は、こんなイラストと、T-ボーン・ウォーカーの歌うブルースで始まる。


1-0_201709071744482a8.jpg 原作は推理小説。(黒人の私立探偵小説「イージー・ローリンズ」シリーズの第1作を映画化)
 最近は少なくなってしまった、黒人が主体の映画。(1995年制作)

 時代は1948年、場所はロサンゼルス。
 黒人差別は当然の時代。(公民権運動が本格的に動き出すのは1950年代半ば頃から)

 第二次世界大戦で欧州戦線(黒人部隊)を経験した主人公の黒人青年イージーは、戦後、兵役経験を活かし機械工として造船所や航空機メンテ工場で働いていた。
 イージーは真面目な青年だ。勤め先では社員として勤務。それ故に、黒人ではあるが一定の社会的信頼を得ていた。
 つまり住宅ローンが組めて、(黒人だけの)戸建住宅街に一軒家を持ち、粋な車も持っていた。優雅な独身生活であった。

 しかし、突然の解雇。職探しを始めるが、まともな勤め先がみつからない。ローン返済が滞る。
 そんな折、行きつけのバーのあるじジョッピーから、オルブライトという怪しげな白人の男を紹介される。
 オルブライトはイージーに、ある白人女を探してほしいと札束をちらつかせる。切羽詰まっていたイージーはこの話に乗った。

 話は、市長選挙が絡む。
 ロスの富豪トッド・カーターと、対抗馬のマシュー・テレルという二人の白人が立候補を表明していた。
 ところがカーターは突然、自ら立候補を取り下げた。
 カーターが愛し婚約者となった女性に、「ある問題」があることが発覚し、彼の周囲はカーターに婚約破棄を迫った。その結果、カーターは出馬の意欲も無くなり、失意に沈んでしまったのだった。
 一方のマシュー・テレルは押しの強い男だが、密かなある弱点を持っていた。
  
 イージーは、白人女探しに、市長選挙が絡むこんな背景があるとは知る由も無かった。
 いざイージーが動き始めると、彼の行く先々で殺人現場に遭遇する。警察に連行される。
 そして、彼が探す白人女性、(青いドレスの女)ダフネがイージーの前に現れた。
 彼女はマシュー・テレルの弱みを握っているらしい・・なぜ。
 イージーが足で知り得た事柄が、次の謎を解き明かすことになり、イージーの身の危険は増していく。
 そもそも、カーターの婚約者の「ある問題」とは何?、婚約者は誰?、マシュー・テレルの弱みとは?
 
 昨今のアメリカをみていると、こんな黒人主体の映画はもう製作されないかもしれない。

 総じて、描き切れていない大雑把さのある映画だが、娯楽映画ですからね。
 でも挿入音楽がいいです。
 映画冒頭、のっけからT-ボーンのブルースが流れて、私はノックアウト。
 この映画に取りあげられた主なミュージシャンは、往年のモダンブルースシンガーのT-ボーン・ウォーカー、ピー・ウィー・クレイトンや、ビッグバンドをバックにして歌うジャンプブルースシンガーのジミー・ウィザースプーン、ロイ・ブラウンなどなど、そしてデューク・エリントンも。
 サウンドトラック情報:http://www.allmusic.com/album/devil-in-a-blue-dress-sony-mw0000176104

オリジナルタイトル:Devil in a Blue Dress|
監督・脚本:カール・フランクリン|アメリカ|1995年|102分|
原作:ウォルター・モズレイ|撮影:タク・フジモト|
出演:イージーこと、エゼキエル・ローリンズ(デンゼル・ワシントン)|青いドレスの女・ダフネ・モネ(ジェニファー・ビールス)|イージーの親友で殺人が得意なケンカの助っ人・マウス・アレクサンダー(ドン・チードル)|バーのオヤジでイージーの友人・ジョッピー(メル・ウィンクラー)|ロス一番の富豪の白人、ダフネを愛するトッド・カーター(テリー・キニー)|カーターと市長選挙を争う白人、他人に言えない秘密を持つ男マシュー・テレル(モーリー・チェイキン)|ジョッピーがイージーに紹介した白人でマシュー・テレルに雇われる男ドウィット・オルブライト(トム・サイズモア)|ダフネの親友・コレッタ・ジェームズ( リサ・ニコル・カールソン)|コレッタの彼氏、イージーの知り合いデュプリー・ブロチャード(ジャーナード・バークス)|ほか

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クラシック音楽    ポピュラー音楽   




映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」 監督:セオドア・メルフィ

上


1-0_201709061020036f5.jpg 70歳の頑固ジジイと、12歳の孤独な少年のお話。
 この映画、若い方には少年モノ映画に観えるかも知れないが、年配にはいささかビターな喜劇映画に観えるかも知れない。 

 頑固で人の話を聞かない人嫌いなジジイ、ヴィンセント(ビル・マーレイ)は、二十歳代の頃にはベトナム戦線を経験した世代。
 今は、白人中産階級(中の下)が住む住宅街の中の、小さな一軒家で一人暮らしだ。(子はいないようだ)

 ヴィンセントの楽しみは、安酒とタバコとTVそして、行きつけの店の踊り子・ダカと時々の有料セックス。
 暮らしは決して豊かじゃない、いや苦しい。無職の上に、自宅を抵当に入れての生活資金は底をつき、借りちゃいけない所から金を借りている。
 彼のお金はどこへ消えるのか? それは、今も最愛の妻サンディを預けている上等な介護施設。妻は重度の認知症なのだ。そして、この施設への払いが滞っている。

 そんなある日、ヴィンセントの隣家にマギーとその1人息子オリバーが越してきた。
 マギーは病院のMRI検査技師。夫は弁護士だが、この夫の度重なる浮気が原因で夫婦関係は破たん、今、オリバーの親権をめぐって離婚調停中。子供の奪い合いを避け、マギーはオリバーを連れて越してきた。(子は養子らしい)

 オリバーは12歳にしちゃ小柄。転校生への学内いじめ、母親の長時間勤務やらで、オリバーは一人ぼっち。
 「結果的に」これを救ったのが、人嫌いな隣人ヴィンセント。いいウチの子に育ったひ弱なオリバーは、おやじの塊みたいなジジイに世間を教わることになる。(競馬場、バー、娼婦、ケンカの仕方、悪い言葉など)

 これは、ヴィンセントから見れば、転がり込んで来たベビーシッターという時給稼ぎだった。
 マギーから見ればヴィンセントは、隣家のベビーシッターで便利な反面、ウチの子をワルに染め上げるジジイ。
 オリバーにとっては、初めは近寄りがたい偏屈ジジイだったが、いつの間にか仲良くなり、最後には「St.VINCENT」と褒め称える。

 話は、脳溢血によるヴィンセントの緊急入院・リハビリや、妻のいる介護施設からの料金不払いによる退去勧告や妻の死、オリバーの親権騒動の結末、踊り子のダカの嬉しい出産などのエピソードが絡んで行く。

 オリバーが学内発表で、ヴィンセントを聖人と褒めるシーンは、あまりにもアメリカ映画的感動シーンに仕立て上げられていて白けるが、これは、映画の結末のヴィンセントのうら悲しい境遇を考えると、プラスマイナスのバランスをとっての配慮とみておこう。
オリジナルタイトル:St.VINCENT|
監督・脚本:セオドア・メルフィ|アメリカ|2014年|102分|
撮影:ジョン・リンドレイ
出演:ヴィンセント(ビル・マーレイ)|オリバー(ジェイデン・リーベラー)|その母親マギー(メリッサ・マッカーシー)|ヴィンセントの有料彼女・ダカ(ナオミ・ワッツ)|ヴィンセントの妻サンディ(ドナ・ミッチェル)|ほか

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美術展「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」 ポーラ美術館開館15周年記念展 2017年3月18日~9月24日

上2

 「破壊する画家」ピカソと「語る画家」シャガール。
 世界初の2人展。紡ぎ出される愛と平和へのメッセージ。
 これがこの展覧会のキャッチフレーズ。

 無性に油絵が見たくなる時がある。
 ストレートに「本物」が見たい。
 霧が流れるポーラ美術館(箱根)へ行ってきた。
 絵画の展示点数が多く、どれも良くて、大満足。

 その中でも、持って帰りたかった作品。
 シャガールの「婚約者達」の大きな絵と、ピカソの「坐る女」の小さな絵。

 これは持ち帰るには大きすぎるが、ピカソの「ミノタウロマキア」とシャガールの「平和」も印象に残った。
 どちらも巨大なタペストリー作品。(画家が元絵を描き、タペストリー作家が制作した作品)

 驚いたこと。展示の多くが、ポーラ美術館自身が持っている作品だった。いいの持ってるね。



写真
「婚約者達」(1930年制作 148×89cm)
写真
「坐る女」(1921年制作 33×24cm)


映画「カフェ・ブダペスト」 ハンガリー映画 監督:フェテケ・イボヤ

上
歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジム。ブダペストの街角にて。

1-0_20170901122232caf.png
 時は1990年、ソ連崩壊(1991年)の前年。
 祖国ソ連を離れ、開かれた東欧ハンガリーへと旅立ったロシア人の男たちの物語。

  映画冒頭のナレーションより…(本作は1995年製作)
  当時の気分を語るのは難しい。あり得ないことが突如 起きたのだ。
  ハンガリーが西側に扉を開いたのを契機に、すべてが急速に進行した。
  東欧が幸福に酔ったあの日々、忘れ得ぬ時代。
  そしてついにハンガリーからソ連軍撤退。
  (ところが)今度は別のロシア人がやって来た。西側を目指し、その入り口、ハンガリーに人々が押し寄せたのだ。
 (下記|1989年の出来事)
 
 2人のロシア人ミュージシャン、歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジムが、ハンガリーのブダペストへたどり着く。(※※下記|2人の経路)

2‐0 (ユーラが歌う)
  ♪さあ 旅立とう 歌を道連れに
  ステンカ・ラージンは もう十分歌われた
  新時代の俺たちは そんなの歌わない。
  直立不動で大声で 一体何を歌ってる
  共産主義の歌なんて もう うんざり …
 (ユーラ役の俳優は、ロシア出身のシンガーソングライター)

 機械工をしていた若いロシア人のセルゲイも、西側諸国を目指して、まずはブダペストにたどり着く。
 このようにして当時、既にブダペストには、祖国ソ連を脱出した人々の他に、少々危ない商売をする出稼ぎ組や、自身の人生を捨てた破滅型の放浪人など、様々なロシア人たちが滞留していた。
 また、そんなロシア人を相手に宿を提供するブダペストの人、フリーマーケットでロシア人を鴨にする人など、様々なハンガリー人がいた。
 加えて、東方諸国の解放とソ連国内の混乱に乗じて、ロシア系犯罪組織がブダペストへも進出して来て、表のフリーマーケットや裏のヤミ市で、恐喝とブローカーの動きを見せ始めていた。

下


 一方、こんな東欧に対し、冒険心とある種のロマンを抱いてブダペストに来る西側の人々もいて、映画は2人の女性を登場させて、恋を語り物語を彩る。
 それはイギリス人のマギーと、アメリカ人のスーザンだ。
 ひょうきんで明るいユーラはマギーと出会い、サックスのメロディがかっこいいワジムはスーザンと出会う。
 真面目な青年セルゲイは、泊まった宿のハンガリー人の女将(年上の独身女性)の世話になる。



 この映画、誰が主人公かと言えば、ユーラが歌うメロディとその歌詞だろう。
 ユーラ役のロシア出身のシンガーソングライター、ユーリ・フォミチェフという人の歌が、映画の各所で流れる。これが素晴らしい。
 ロシア由来かな、独特のうら悲しさと、その反面の楽しさを合わせ持つ音楽だ。西側のブルース音楽の領域とは別世界。

 映画は、当時のブダペストを活写し、時代の変わり目を、重くせずにすっきりと饒舌に語っている。いい映画だ。  

 このお話の時代のあと、ロシアは西側諸国と共に生きていくはずだったが、いつの間にかプーチンの国となっている。
 また、東欧の人々は職を求めて西側に移って行く。東欧諸国も我先にEUに加盟した。そして今、今度はEU離脱を考えている国がある。
1989年の東欧の出来事
 1989年5月2日 - ハンガリー政府がオーストリアとの国境にある鉄条網の撤去に着手。鉄のカーテンが破られる。
 同年6月 - ポーランドで、自由選挙実施。非労働党政党「連帯」が上院過半数を占める。東欧革命のさきがけ。
 同年8月19日 - ハンガリーで汎ヨーロッパ・ピクニックが開催、約600人の東ドイツ市民がオーストリア経由で西ドイツへ亡命。
 同年10月7日 - ハンガリー社会主義労働者党、ハンガリー社会党への改組を決定し、一党独裁政党としての歴史に終止符を打つ。
 同年10月17日 - 東ドイツで強権的な政治を行っていたエーリッヒ・ホーネッカー・ドイツ社会主義統一党書記長の書記長解任が党政治局で決議され、ホーネッカーが失脚。
 同年11月9日 - 東ドイツがベルリンの壁の通行を自由化。
 同年11月10日 - ベルリンの壁崩壊。
        ブルガリアで共産党書記長のトドル・ジフコフが失脚。これを機にブルガリアでも民主化が始まる。
 同年11月24日 - チェコスロバキアビロード革命。共産党政権が崩壊。
 同年12月1日 - 東ドイツで憲法が改正され、ドイツ社会主義統一党(SED)による国家の指導条項が削除される。SEDの一党独裁制が終焉。
 同年12月22日 - ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権崩壊(ルーマニア革命)。

3-1_20170901123010e01.png※※2人の経路
 時は1990年。ユーラとワジムは、ロシア人バンドのメンバーで、ユーゴで行われるコンサート会場へ、バンド専用バスで向かっていた。このバンドのバスの経路に注目。
 当初、ソ連・ハンガリー国境に到着するが、検問で拒否され越境できず迂回することになる。
 まずはソ連・チェコ国境を通過、次にチェコ・ハンガリー国境を通過し、ハンガリー・ユーゴ国境を越えようとした。(リアルな描写)
 ところがここで、2人はバスを降り、バンド仲間から分かれてブダペストにたどり着く。
オリジナルタイトル:BOLSE VITA|
監督・脚本:フェテケ・イボヤ|ハンガリー、ドイツ|1995年|101分|
撮影:サライ・アンドラーシュ|
出演:ギター弾きのユーラ(ユーリ・フォミチェフ)|サックス吹きのワジム(イーゴリ・チェルニエヴィッチ)|機械工のセルゲイ(アレクセイ・セレブリャコフ)|イギリス女性・マギー(ヘレン・バクセンデール)|米国人女性・スーザン(キャロリン・リンケ)|外人向けの宿の女将・エルジ(マール・アーグネシュ)|ほか

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2年前・4年前・6年前の8月、一夜一話。(2015年8月・2013年8月・2011年8月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-08-31 Thu 06:00:00
  • 映画
2年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  2年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年8月 Archive)

写真
「雪国」
監督:豊田四郎
岸惠子、池部良
写真
「0.5ミリ」
監督:安藤桃子
安藤サクラ
写真
「草を刈る娘」 (思春の泉)
監督:中川信夫
左幸子、宇津井健
写真
「ベンヤメンタ学院」
監督:クエイ兄弟
イギリス
写真
「カー・ウォッシュ」
監督:マイケル・シュルツ
アメリカ
写真
「雪の轍」
監督:ヌリ・B・ジェイラン
トルコ
写真
「三文オペラ」
~映画音楽に魅せられて
ドイツ
写真
東南アジアの映画・特選
アジアに吹く風、アジアの匂い
    
写真
京都に行ってきた。
毎日最高気温37度の京都へ
    
写真
武満 徹・作曲「波の盆」
指揮:尾高忠明
東京フィルハーモニー交響楽団
写真
1970年代の日本の
ロック、フォークを振り返る。


4年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  4年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年8月 Archive)

写真
「火まつり」
監督:柳町光男
太地喜和子、北大路欣也
写真
「楽園」
監督:萩生田宏治
松尾れい子
写真
事件記者シリーズ
「真昼の恐怖」「仮面の脅威」
「姿なき狙撃者」
写真
「何が彼女をそうさせたか」
監督:鈴木重吉
高津慶子
写真
「しあわせのかおり」
監督:三原光尋
中谷美紀 、藤竜也
写真
「ソレイユのこどもたち」
監督:奥谷洋一郎
ドキュメンタリー映画
写真
「音曲の乱」
監督:林海象
佐野史郎、スカパラ、鰐淵晴子
写真
「チキン・ハート」
監督:清水浩   池内博之、
忌野清志郎、松尾スズキ
写真
「真夜中の虹」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「犬と女と刑老人」
監督:シェ・チン
中国
写真
「SUCK サック」
監督:ロブ・ステファニューク
カナダ
写真
「ダフト・パンク
     エレクトロマ」

イギリス
写真
「青の稲妻」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
比叡山「山頂のひみつ」
その夏、京都の夜景を
独り占めしたことがある。


6年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  6年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年8月 Archive>

写真
「Peace」
監督:想田和弘
ドキュメンタリー映画
写真
「鉄塔武蔵野線」
監督:長尾直樹
伊藤淳史
写真
「スナッチ」
監督:ガイ・リッチー
イギリス
写真
「京義線」
監督:パク・フンシク
韓国
写真
「スウィート・スウィート
        バック」

アメリカ
写真
「アントニア」
監督:マルレーン・ゴリス
オランダ
写真
「人生、ここにあり!」
監督:ジュリオ・マンフレドニア
イタリア
写真
「グッド・ハーブ」
監督:マリア・ノバロ
メキシコ
写真
「ロック、ストック&トゥー
 ・スモーキング・バレルズ」

監督: ガイ・リッチー
写真
「秘密と嘘」
監督:マイク・リー
イギリス
写真
「マリア」
監督:アレクサンドル
      ・ソクーロフ
写真
「明るい瞳」
監督:ジェローム・ボネル
フランス
写真
「ナイト・オン・ザ
       ・プラネット」

監督:ジム・ジャームッシュ
写真
「ゴーストワールド」
監督:テリー・ツワイゴフ
アメリカ
写真
「普通じゃない」
監督:ダニー・ボイル
イギリス
写真
「鏡」
監督:アンドレイ
    ・タルコフスキー
写真
鬼海弘雄写真展
「東京ポートレイト」
東京都写真美術館


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映画「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」 監督:ロベール・ブレッソン

上






1-0_201708271317238f3.jpg













 フランス軍人の手記をもとに監督自ら脚本を書いた、脱獄する男の一部始終を描くサスペンス映画。

 舞台はリヨンにあるモントリュック監獄の独房、時は1943年。

 その前年、ナチスドイツは南フランスへ進軍し地域を占領、リヨンはドイツ軍やその治安部隊の街となっていた。
 翌1943年6月、レジスタンス運動の中心人物が逮捕、虐殺されるなど、ナチスドイツによるレジスタンス撲滅が一気に進んで行った。

 その頃だろう、映画の主人公フォンテーヌ中尉も逮捕され拷問を受け、独房に入れられた。
 監獄の中庭では、毎日のように銃殺刑の執行が進む。
 中尉は入獄後、時を置かず脱獄を決意し、獄中のレジスタンスらによる密かな協力を得て、獄中で得られるわずかなもので脱獄のための準備を始める。
 そんなある日、獄中のレジスタンスの一人が脱獄を試みたが失敗し処刑されてしまう。しかし中尉にとっては、彼の失敗が自分の脱獄手法の改善を図るきっかけとなった。
 そして、中尉も死刑の判決を受ける。これで脱獄の決意はより固まった。

 準備が整い、いつ脱獄するかという時に、中尉の独房に一人の青年が押し込まれて来た。
 当初、中尉は彼をドイツの回し者かと疑ったがそうではなかった。そして、行きがかり上、この青年とともに脱獄するしかない。
 ついに、その夜、中尉はふたりで脱獄するのであった。


 映画のタイトルが「脱獄」ではなく「抵抗」であるのは、中尉のレジスタンス活動を褒め称えているからだろう。
 映像の多くはフォンテーヌ中尉の独房の中。台詞は極わずか。音楽も入れない。だが、シーンに緊張感があり、スリリング。

 一方、脱獄実行シーンは屋外である。それゆえに、閉ざされた空間におけるそれまでの高い緊張が、屋外に出て拡散してしまう。そのせいか、あるいは脱獄シーンそのものが有り触れているせいか、残念ながら脱獄実行シーンは凡庸だ。

 独房シーンを飽きさせないのは撮影の技と、なんと言っても中尉役のフランソワ・ルテリエという人が醸し出す雰囲気。これが至って素晴らしい。
 この映画の登場人物の多くはプロ俳優を使っていないらしい。中尉役の彼は普通の学生であった。

 最後に。フォンテーヌ中尉の脱獄の翌年1944年に、リヨンはドイツ軍から解放される。


オリジナルタイトル:UN CONDAMNE A MORT S'EST ECHAPPE OU LE VENT SOUFFLE OU IL VEUT|
英語タイトル:A MAN ESCAPED|
監督・脚本・脚色・台詞:ロベール・ブレッソン|フランス|1956年|100分|
原案:アンリ・ドヴィニ|
出演:フォンテーヌ中尉(フランソワ・ルテリエ)|青年ジョスト(シャルル・ル・クランシュ)|ほか

【ロベール・ブレッソンの映画】 これまでに記事にした映画から。

スリ」(1960年)  「バルタザールどこへ行く」(1964年) 

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映画 「ナック」 監督:リチャード・レスター

上
 天然のナンシー


1-0_20170826084019135.jpg 1965年のロンドン。流行りはじめた若者文化、カウンターカルチャーの、ブームの部分をすくい上げて作ったドタバタ喜劇。
 当時のティーンエイジの子たちを観客対象にした映画だ。
 「最近の若いもんは…」とブツブツ言う街の大人たちをスナップした、ドキュメンタリーっぽいシーンが各所に幾つもあって、世間にチョイ逆らいたいティーンエイジの笑いを誘ったんだろう。

2-0_20170826084408f36.jpg そんな古臭い大人たちの批判をよそに、若いもん3人のお話が進みます。
 やたら女にもてる(努力もしている)きざなドラマーのトーレン、もてたいがもてない要領の悪いコリン、天然系おのぼりさんの女の子ナンシー、この3人が主人公。

 そのほかに、たくさんの美人の女の子たちが入れ替わり立ち替わり登場する。
 それはトーレンの彼女達や、トーレンの持て過ぎをひがむコリンの妄想シーンに出てくる女の子たち。
 案外、ここが見どころかも知れない。(ただしヌードもセックスもない健全映画、だが男尊女卑)

 ちなみに、この女の子の中に、ハイティーンだったジェーン・バーキンやシャーロット・ランプリングが出演しているらしい。(捜してください)

 筋は言うほどのものではないが、モノクロ映像がきれいです。
 1965年のロンドンの風景やファッションが何やらアンティークです。

 監督は本作「ナック」製作の前年(1964年)に、「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」を、「ナック」製作の同年1965年に「ヘルプ!4人はアイドル」を撮っている。

 ボブ・ディランの英国ツアーに追ったドキュメンタリー映画「ドント・ルック・バック」(1967年)に出てくるティーンエイジの子たちも、この「ナック」やビートルズ映画を見たんだろうな。    

 1969年ごろのロンドンに住む青年を描いた映画「ウィズネイルと僕」(1987年)の二人は、この「ナック」の主人公たちと同世代の数年後なのでしょう。 (下線部をクリックして、その過去記事にお進みください)

 時代はいつも多面的です。
 その時代をどんなスタンスで見るか、見たかで、時代の色合いは違って見えます。
 例えば、ポップカルチャーに焦点を当てて見る、カウンターカルチャーの視点で見る、政治が人に与えた影響の文脈で見る。
 ひとりの人の中でも、時とともに見方は移ろって行きます。


オリジナルタイトル:The Knack ...and How to Get It|
監督:リチャード・レスター|イギリス|1965年|85分|
原作戯曲:アン・ジェリコー|脚色:チャールズ・ウッド|撮影:デイヴィッド・ワトキン|
出演:ナンシー(リタ・トゥシンハム)|コリン(マイケル・クロフォード)|トーレン(レイ・ブルックス)|ジェーン・バーキン|ジャクリーン・ビセット|シャーロット・ランプリング|

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映画 「石合戦」 監督:若杉光夫

上
石合戦。右方向の対岸にいる相手陣営と石の投げ合い。
このシーンは、仮設の木の橋の上から撮っている。


 兵庫県の山あいにある、のどかな村の人々を描く映画。

 川を挟んで二手に分かれた子たちが、互いに対岸の子たちに向けて、河原の石の投げ合いをしている。石合戦だが、男の子の遊びでもある。
 どちらの陣営の子も、同じ小学校に通っているが、仲が悪い。
 仲が悪いのは、その子らの親たちが仲が悪いからなのだ。いや、親だけじゃなく祖父母の代も、昔から仲が悪い。
 かつて、石が顔に当って失明した人も村人の中にいる。
 映画は、村の大人同士のつまらぬ人間関係が、そのまま子たちの人間関係に影響するのだと言っている。

 県会議員の大野という男は、この村で大人たちの頂点の座にいるらしい。彼の家は戦前までは大地主だった。
 村一番の真面目な男・松蔵(宇野重吉)は、戦後、この大野から僅かな土地を買った。
 この極めてまっとうな方法で土地を買った松蔵に大野は苛立っていた。大野に寄り添い、大野の為なら、何かあればひと肌脱ぎます、なんて言う人々に乞われて、大野は土地を手離す、なんていうストーリーが好きな男なのだ。松蔵はそうではなかった。

 子たちが川遊びしていたその日、この大野の旦那が、川にかかる仮設の橋を渡っていた。
 そこへ、松蔵の子が橋の下から手を伸ばし、大野の足を引っ張り、彼を川へ落としてしまった。
 子どもの悪戯だったが、大野は怒った。大野は松蔵を村八分にしてしまう。村八分にされて松蔵の子も、村の子たちから村八分にされてしまう。

1-0_20170824193604438.jpg 主人公の男の子・竹丸(浜田光夫)は、村の神社の一人息子。
 がき大将の正反対で、石合戦が怖いし、仮設の低い橋から川に未だに飛び込めない。(その落差1メートルほど)
 竹丸の母親(山田五十鈴)は病で長年、伏せっている。竹丸の父親(小沢栄太郎)は、神社の神主で、夏の祭りの収支がマイナスなのが頭痛の種。(賽銭などの収益-諸費用の支出)
 「ここは好きじゃない大野にすがるしかないな。」なにしろ、大野は小学校の校舎新築で業者と癒着し、大金を懐にしたらしい。(村中の噂)

 さて、大野が川に落とされたあと、河原にいた子らの中に、大野は竹丸の姿を見た。
 そして、大野は竹丸を密かに呼んで、誰が俺を川に落としたのだと問いただした。大野得意の甘言と脅し(アメとムチ)を竹丸に示し、つい、やったのは松蔵の子だと竹丸は言ってしまう。
 これが噂となって広がり、竹丸は子らから村八分となってしまう。

 話の展開はいくつかのエピソードと共に進む。
 竹丸の母が大阪の病院に緊急入院する。村の合併話が、大野の先導で進む。
 小学校の若い教師・渡辺先生(内藤武敏)が子たちの石合戦を止めさせる。また、渡辺先生が「アカ」だという噂を真に受ける大野は、先生を辞任に追い込もうとする。それを支援する小学校校長や村長といった村のお偉いサンたち。
 そして、大野が贈収賄で逮捕される。
 一方、竹丸の母がこの世を去る。真剣に神に祈った竹丸は、神殿で暴れる。

 そうしてラストは少々強引だが、ハッピーエンドに。
 竹丸の家は村では裕福だ。この竹丸の生活環境と、村の貧しい家の子の境遇を映画は対比してみせる。
 渡辺先生のシーンでは、子供対象の教育映画っぽい雰囲気があって鼻白むシーンはあるが、これを乗り越えられると、昭和30年当時の日本が垣間見れる。

監督:若杉光夫|1955年|91分|
原作:上司小剣|脚色:松丸青史 、 吉田隆一 、 村山亜土|撮影:仲沢半次郎|
出演:竹丸(浜田光夫)|その父・上神満臣(小沢栄太郎)|その妻・鴻子(山田五十鈴)|小学校の教師・渡辺正男(内藤武敏)|県会議員の大野剛造(嵯峨善兵)|松蔵(宇野重吉)|ほか

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クラシック音楽    ポピュラー音楽   

映画 「無花果の顔」(いちじくの顔) 監督:桃井かおり 出演:山田花子、石倉三郎

上

 一家四人の門脇というウチの、幸せの変遷を描く映画。
 今までにないタイプの喜劇映画です。いくつものエピソードが絡みます。それと、お伽噺の要素を持ち合わせていて、ちょっとシュールです。音楽はいいセンス。

1-0_2017081915362933d.png 表通りの裏手、門脇の家。
 ちゃぶ台がある一家団らんの和室と縁側、無花果(いちじく)の木が植わった中庭、中庭に沿って濡れ縁伝いの先にある風呂場は薪で沸かす風呂、赤い冷蔵庫やカラフルなガラス瓶が並ぶ台所とその一角がミシン仕事のスペース。

 妻(桃井かおり)は、夫思いの世話女房。(いささか古いタイプの女性像の設定だ)
 夫(石倉三郎)は水道・ガス管のベテラン配管工。茹でたジャガイモに塩辛を乗せて風呂上りのビールを美味そうに飲む。(仲睦まじいが、少々ズレた夫婦の会話は、新作落語の登場人物のよう)
 今夜の夕食は、ちゃぶ台でチーズフォンデュ。今夜は、娘(山田花子)に息子(HIROYUKI)も加わって久々に家族団らんのひと時。

 さて、何でもなく過ぎる日々から、ちょっとした物語は始まる。
 夫が何やら忙しい。家を空けたと思ったら、現場に近いウィークリーマンションを借りたという。
 夜間の徹夜仕事らしい。でも、よくよく聞くと仕事じゃない。昔、職人仲間が手抜き工事をした建物がリニューアル中で、夫は誰もいない夜間の現場に密かに侵入し、当時の手抜き工事の配管をボランティアで、ていねいに直しているのだ。黙ってればわかりゃしない事を。ひとがいいったらありゃしない。

1-00_20170819154711f30.png ボランティアの案件が無事終わり、やっと通常の仕事を始めた矢先、夫が現場で倒れ死亡。(脳溢血か心筋梗塞か)
 急な死に直面し家族はぼんやりしている。職場の面々が通夜に来る。妻の弟(光石研)が心配してそっと姉に聞く。生命保険は?労災は? そんなこと知らないわよ。

 妻は、娘(山田花子)が一人住まいしている部屋に転がり込む。娘はちょっとした小説家で雑誌に連載を書いている。

 妻は仕事を見つけた。料理が美味いきちんとした飲み屋で働き始める。その店の主人(高橋克実)が、ある日、求婚する。
 門脇のあの家を素敵にリニューアルして、二人が住み始める。門脇の娘息子も、店の主人の娘も祝福している。

 娘(山田花子)が赤ちゃんを出産した。娘が嫌がった年上の男(岩松了)の子だったが、娘はひとりで育てるという。
 最近、妻(桃井かおり)の様子が変だ。新しい夫(高橋克実)は心配する。優しい夫は妻を温かく包み込むのであった。(一応、これでめでたしめでたし)
 そして、こんな人々の生きざまを庭先からじっと見守ってきた、これからも見守って行く無花果の木。それから、門脇家の娘は、幼い頃から、この無花果の木と通じ合えているようだ。



2-0_20170819155439615.png 配慮された細やかな脚本が、生活のリアルな質感を呼びます。例えば、通夜の準備シーンでは。
 缶の箱に納めた古い家族の写真の数々(娘が父親の写真を探している、葬式なんだという実感や経験を思い起こさせる)。
 生臭い握りより稲荷寿司か太巻きよネと言いながら、通夜客のために、出前の店選びに悩む妻。そして夫が死んだのに、寿司屋の女将とあてどもないオバサン会話を続ける妻。(死をまだ実感できない経験が思い浮かぶ)、等々。

 可笑しな会話があちこちに挿入されています。例えば、斎場にて。
 「どうして焼くの、まだ生き返るかもしれないのに、私、認めないから」 
 「火で焼いたら熱いでしょ お父さんかわいそうでしょ それでなくてもおとうさん暑がりなのに」
 娘:「死んだんだからしょうがないでしょ」
 妻:「親を燃やして、しょうがないでしょという言い草はないでしょ」

3-1_20170819155735034.png シュールな側面。例えば、夫が借りたウィークリーマンションでの夢想のシーン。
 隣家の若い女(金魚の化身?)が、マンションの部屋に・・・。

 当時、観た印象はわからん映画でしたが、今回観てみると、ウ~ン、いい映画です。
 大人のお話ですね、この映画は。

監督・脚本:桃井かおり|2006年|94分|
撮影:釘宮慎治|音楽:Gilad Benamram|音楽プロデューサー:Kaz Utsunomiya|美術:安宅紀史|
出演:娘(山田花子)|息子(HIROYUKI)|母(桃井かおり)|父(石倉三郎)|新しい父親(高橋克実)|娘の彼氏(岩松了)|母の弟(光石研)|父親が借りたウィークリーマンションの隣に住む謎の女(渡辺真起子)|ほか

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映画 「ギャラリー 欲望の画廊」  監督:ダンカン・ウォード

上

 香辛料をうんと効かせた辛辣なコメディ。その分、脂っこくなくサラリと仕上げた映画。映像もきれいだ。

1-0_2017081816335729d.jpg どこまで真実かは知らないが、イギリスの現代アートシーンの狂った裏側を強烈に風刺している。(のかな)
 好色だが、やり手の美術商アート・スピンドルと、現代美術コレクターのボブ・マクルストン、この二人の中年男が悪役主人公と言っていい。
 (アメリカの現代アート作家だったバスキア(1960 - 1988)に、若い頃に接したという人物設定で、1980年代から現代アートで生きて来た40歳半ばの中年だ)

 とにかく、その絵画やオブジェは、世の中にその一点しかない。
 だから、これがビジネスかと思わせるほどに、売る買う両者の騙し合い。カネ、名声維持、見栄と猜疑心、精神的摩耗・・・。

 一方、成功したい魂胆丸だしの、現代アートの駆け出しアーティストたち。独立してギャラリーのオーナーになりたい賢い女。そして、アートシーンの末端にすがり続けたが、芽が出ない男の自殺。

 そんな世界に男と女が生きている。不倫、チョッカイに、パトロンという利害関係。登場人物の相関図は錯綜する。それにゲイとレズ、果ては離婚と財産分与騒動。話は盛りだくさんだ。

2-0_20170818163902513.jpg 逸話のひとつとして、画家モンドリアン(1872 - 1944)の「Boogie Woogie」を、その昔、画家本人から買った老富豪が出てくる。
 画商のアートも、美術コレクターのボブも、そしてその他の画商・個人コレクターもこの絵を狙う。(きっとサザビーズや美術館も、か)
 しかし老富豪は売りたくない。だが夫人は召使の男と組んで、値を吊りあげ売ろうとする。その結末は・・。

 もうひとつ。アートの所で5年働いていたが、ボブをパトロンに据えて、ギャラリーのオーナーになった女性ベスは、赤裸々なビデオアート作品を手掛ける女性アーティストをピックアップし、第一回目の個展を開く。
 アートやボブは、この作品が映像という複製芸術なので、値が付く芸術とは思わない様子が面白い。

 ついでに。ベスの替わりに画商アートに雇われた女性ペイジが、生まれながらの不具合で手術を受ける。その時、摘出された臓器を、ボブはホルムアルデヒド漬け作品にしてペイジに送るのだ。
 ひどい話だが、これは、イギリスの現代アート・アーティスト、ダミアン・ハーストを連想させる。この作家は、鮫、牛、羊の全身を、そのまま、ホルムアルデヒドを満たした大きなガラス箱に保存した作品で有名。

 とにかく、カネと名声を求めて、人々がうごめく現代アートシーン。
 ベスに出し抜かれた画商アート・スピンドルも、離婚と財産分与を切り抜けたコレクターのボブ・マクルストンも、性懲りもなく、したたかに明日へと向かうのである。

オリジナルタイトル:Boogie Woogie|
監督:ダンカン・ウォード|イギリス|2009年|94分|
原作:ダニー・モイニハン 小説『Boogie Woogie』|脚本:ダニー・モイニハン|撮影:ジョン・マシソン|
出演:ロンドン屈指の美術商・アート・スピンドル(ダニー・ヒューストン)|美術収集家で、アートの元で働くベスを引き抜きパトロンになる・ボブ・マクルストン(ステラン・スカルスガルド)|アートの元で働く女性で、ボブの協力を得て独立してギャラリーを持つことになる賢い女・ベス(ヘザー・グラハム)|新進気鋭の若手アーティストでベスの恋人ジョー(ジャック・ヒューストン)|ジョーと不倫する、ボブの妻・ジーン・マクルストン(ジリアン・アンダーソン)|ベスに替わってアートの元で働くローラースケートの女・ペイジ(アマンダ・サイフリッド)|モンドリアンの名画Boogie Woogieの第一作を所有している老富豪アルフレッド・ラインゴールド(クリストファー・リー: ピエト)|その妻でその絵を売りたいアルフリーダ(ジョアンナ・ラムレイ)|その召使いでアルフリーダと一緒になるロバート・フレイン(サイモン・マクバーニー)|アートシーンで食えない男・デューイ(アラン・カミング)|ジーンの友人エミール(シャーロット・ランプリング)|ほか

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1年前・3年前・5年前の8月、一夜一話。(2016年8月・2014年8月・2012年8月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-08-15 Tue 06:00:00
  • 映画
1年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年8月 Archive

写真
「雷魚」
監督:瀬々敬久
佐倉萌
写真
「皆月」
監督:望月六郎  奥田瑛二、
吉本多香美、北村一輝
写真
「浅草四人姉妹」
監督:佐伯清
相馬千恵子,関千恵子,杉葉子
写真
「トワイライト ささらさや」
監督:深川栄洋
新垣結衣、大泉洋
写真
「トレインスポッティング」
監督:ダニー・ボイル
イギリス
写真
「ある子供」
監督:ダルデンヌ兄弟
ベルギー
写真
「ミリオンダラー・ホテル」
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ
写真
「フランシス・ハ」
監督:ノア・バームバック
アメリカ
写真
「カッコーの巣の上で」
監督:ミロス・フォアマン
アメリカ
写真
「死刑台のエレベーター」
~映画音楽に魅せられて
監督:ルイ・マル|フランス
写真
「バルタザールどこへ行く」
監督:ロベール・ブレッソン
フランス



3年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年8月 Archive

写真
「時代屋の女房」
監督:森崎東
夏目雅子、渡瀬恒彦
写真
「極道ペテン師」
監督:千野皓司
フランキー堺、伴淳三郎ほか
写真
「東京五人男」
監督:斎藤寅次郎
横山エンタツ、花菱アチャコ
写真
「幻影師アイゼンハイム」
監督:ニール・バーカー
アメリカ
写真
「博士の異常な愛情」
監督:スタンリー
 ・キューブリック|アメリカ
写真
「チャイニーズ・ゴースト
       ・ストーリー」

監督:チン・シウトン|香港
写真
「ソウルガールズ」
監督:ウェイン・ブレア
オーストラリア
写真
犯罪「幸運」
監督:ドリス・デリエ
ドイツ
写真
最近読んだ本。
「ナツコ 沖縄密貿易の女王」
文春文庫:2007年
写真
京都観光街歩き、
   そして貴船の川床
    
写真
箱根 姥子温泉
岩盤自然湧出泉 ~秀明館



5年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年8月 Archive

写真
「ひとりぼっちの二人だが」
監督:舛田利雄
吉永小百合
写真
「教祖誕生」
監督:天間敏広
北野武 萩原聖人 岸部一徳
写真
「居酒屋ゆうれい」
監督:渡邊孝好
室井滋 萩原健一 山口智子
写真
「誰も知らない」
監督:是枝裕和
柳楽優弥 YOU
写真
「夜の河」
監督:吉村公三郎
山本富士子
写真
「愛より強く」
監督:ファティ・アキン
ドイツ、トルコ
写真
「バグダッド・カフェ」
監督:パーシー・アドロン
西ドイツ
写真
「モーツァルトとクジラ」
監督:ピーター・ネス
アメリカ
写真
「動くな、死ね、甦れ!」
監督:ヴィターリー
  ・カネフスキー(ロシア)
写真
「光の旅人 K-PAX 」
監督:イアン・ソフトリー
アメリカ
写真
「青いパパイヤの香り 」
監督:トラン・アン・ユン
フランス ベトナム
写真
「父、帰る 」
監督:アンドレイ
    ・ズビャギンツェフ
写真
「勝手にしやがれ」
監督:ジャン=リュック
        ・ゴダール
写真
「家の鍵」
監督:ジャンニ・アメリオ
イタリア
写真
「にがい米」
監督:ジュゼッペ
     ・デ・サンティス



映画 「泣虫小僧」(泣蟲小僧)  監督:豊田四郎

上
左から、菅子と啓吉、そして蓮子。


 泣虫になってしまいそうな小僧、啓吉11歳の姿を追えば、幸せ薄い少年物映画。
 啓吉の母・貞子とその妹三人の四人姉妹に注目すれば、1938年(昭和13年)当時の、進んだ女性が見えて来る映画。

1-0_20170810172134c98.jpg 貞子(栗島すみ子)は二児の母。小さな一軒家に住んでいるが、夫を亡くし生活に困っている。女手で喫茶店を開業するらしい。やり手だ。
 貞子には愛人がいる。この家で一緒に住むことになるが、男は商売に失敗したようで、うな垂れている。
 啓吉はこの男を避ける。啓吉の幼い妹は母親から、男をパパと呼ばされる。

 貞子は啓吉を、貞子の次妹・寛子に預けようとする。(今回が初めてではなさそう)
 寛子は「またぁ」と迷惑がるが、姉に言えない。自分に替わって夫・勘三に断わりを言わそうとするが、勘三は人がいい。「引き受けましょう」と義姉に、つい言ってしまう。
 勘三は小説家だが売れない。生活は楽じゃない。だから勘三は寛子の尻の下。
 始終暇な勘三は啓吉と相性がいい、啓吉も好きな叔父さん。しかし、寛子は啓吉を追い出したい。

 ある日、勘三は啓吉を連れて、私鉄沿線、郊外に住む蓮子(市川春代)を訪ねる。
 蓮子は、貞子をはじめとする四人姉妹の末の妹。まだ二十歳前だが、画家(志望)の夫と二人暮らし。
 この夫婦は妙に明るいが、料金不払いで電気を止められている。そんな生活を知った勘三は啓吉を連れて、すごすごと帰って行く。

 結局、啓吉は菅子のもとに落ち着く。菅子は四人姉妹の三番目、アパートの一室を借りて一人住まい。
 会社勤めをしているようだ。勘三に優しい。勘三も菅子に、なつく。
 菅子は勘三に問うた。「叔母さんの誰が好き?」 勘三の返事は「おかあさん」
 
 末の妹・蓮子も三番目の菅子も現代っ子だ。蓮子は少々飛んでいるアート系モダンガールなら、菅子は自立する女性、職業婦人といったところか。(とにかくこの四人姉妹はみな揃って、勢いがいい)

 下の姉妹ふたりが、姉の貞子を訪ねる。「啓吉は、やっぱり母親の元が一番よ」と自立する女・菅子がきっぱりと言う。(末っ子の蓮子は、姉の前では物言えない。)
 そんなことで、啓吉は母親に引き取られる。

 啓吉が体操の授業中に用務員室に呼ばれる。行ってみれば、お母さん。よそ行きの着物姿だ。
 貞子は用務員の男に聞かれないよう、部屋を出て啓吉に言った。「急に九州へ行かなくちゃならないのよ。すぐ、帰って来るから、ね。」
 啓吉は泣きそうになりながらも、母の言うことを信ずるよりほか無かった。

 学校が終わって、家に帰ると家は家具ひとつ無い、もぬけの殻。
 貞子は、啓吉の妹だけを連れて、愛人の元へ行ってしまった。

 啓吉が頼りにしたのは、菅子おばさんだけだった。小説家の勘三おじさんは頼りにならない。
 それは啓吉が勘三の家に世話になっている頃の話だ。
 勘三は、その夜、啓吉を飲み屋に連れだし、啓吉は店で寝込んでしまう。目を覚ますと勘三おじさんの姿が無い。啓吉は慌てて呑み屋を出て、勘三を探して夜の街をさ迷う。(それは勘三がトイレに立った隙だった、勘三は啓吉がいなくなったことに気付かず、深酒でその店でつぶれてしまう。)
 さ迷う啓吉を憐れに思い救ったのは、尺八吹きの男であった。
 一人住まいの男は、啓吉を一晩泊めて、朝飯を食わせてやり、そして男は啓吉を励ました。辛い時は誰でもある、そんな時は歌を歌うんだ、と。

 映画製作年の1938年(昭和13年)は、国家総動員法施行の年、ヒトラー青少年団来日。
 映画のシーンで、家の上を軍用機が飛んでいく。 
 公開当時の観客は、この作品をどんなふうに観たのでしょうか。

 ちなみに本作から連想する映画に、少年と家族をテーマにしたものでは、大島渚の「少年」(1969年)、是枝裕和の「誰も知らない」(2004年)、小栗康平の「泥の河」(1981年)。洋画ではフランソワ・トリュフォーの 「大人は判ってくれない」(1959年)などが思い浮かびます。
 四人姉妹の映画では佐伯清の「浅草四人姉妹」。戦後復興期の女性の姿を描いていました。
 (映画タイトル名をクリックして記事をお読みください)

 <これまでに記事にした映画から>
 出演女優の栗島すみ子は、成瀬巳喜男の「流れる」に、やはり特別出演ということで出演していました。
 二番目の妹役の逢初夢子は、島津保次郎の「隣の八重ちゃん」(1934年)の八重ちゃん役や、山田洋次の「霧の旗」 に出演。
 末の妹役の市川春代は、マキノ正博の「鴛鴦歌合戦」(1939年)、伊丹万作の「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年)に出演していました。
 
監督:豊田四郎|1938年|80分|
原作:林芙美子|脚色:八田尚之|撮影:小倉金弥|
出演:泣虫小僧の田崎啓吉11歳(林文夫)|啓吉の母親・貞子(栗島すみ子)|貞子の次妹・寛子(逢初夢子)|貞子のその次の妹・中橋菅子(梅園龍子)|貞子の末の妹・蓮子(市川春代)|貞子の愛人・吉田善吉(一木礼司) |寛子の夫で小説家の松山勘三(藤井貢)|蓮子の夫で画家の瀬良三石(高島敏郎)|
尺八吹きの男・水上竜山(山口勇)| 啓吉の幼い妹・礼子(若葉喜代子)|寛子の子・伸太郎(横山一雄)|

【 豊田四郎の映画 】~これまでに記事にした作品です。 

夫婦善哉」「猫と庄造と二人のをんな」「雪国」「珍品堂主人」「新・夫婦善哉」「台所太平記」 「波影

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映画「ザ・ローリング・ストーンズ  シャイン・ア・ライト」 監督:マーティン・スコセッシ

上

 ストーンズのライブを記録したドキュメンタリー映画です。
 ロックが20世紀の文化遺産(古典)になりつつある今、ストーンズがそうじゃないぜと、言っているようだ。

1-0_20170808121805d68.png 素敵なライブに行った気にさせてくれると同時に、ストーンズ最初期のインタビュー映像も楽しめる。
 若きミック・ジャガーに、「60歳になっても続けてると思う?」という問いに、「もちろん」と彼は答えている。
 また、最近のインタビュー映像もあって、キース・リチャーズ(65歳)とロニー・ウッド(61歳)に、「ギターはどっちが巧いの?」という質問に、ロニーが、「俺だな」と答えるが、すかさずキースは「二人とも下手だな」と答えた。(笑)

 キースは相変らず、エレキギターにカポタストをしている。(演奏曲によるが)
 それは解放弦をよく使うからだが、ラフでスローハンドであの短いフレーズの、気ままなリードギターは、今もストーンズがストーンズであり続けている重要な要。
 元フェイセズのロニー(ロン・ウッド)は、今はストーンズの正式メンバーだが、本作映像上では、少し影が薄い。
 そしてドラムのチャーリー・ワッツ(67歳)が素晴らしい。次から次へと繰り出すストーンズの持ち歌を、どれも的確にストーンズの曲にしていく職人芸。 
 さて、ミック・ジャガー(65歳)だが、やはり華がある。バンドをぐいぐいと引っ張って行く。コンサートをショーにしていく才能。
 とにかく、この四人が一生懸命にライブを進めていく姿は、ロックってなんだっけ?という問いに、真っ直ぐな答えを出している。

 ベースのダリル・ジョーンズは、元々ジャズ畑の人。ブルース・スプリングスティーンやマドンナのバックを経て、ストーンズのサポート・メンバー。チャーリー・ワッツとうまくやっている。
 そのほか、キーボード、ブラスセクション、バックコーラスの各メンバーも、控えめながらもステージを盛り上げている。

 ストーンズには、味と遊びとオリジナリティがある。加えて、たくさんの持ち歌という資産がある。
 そして一番大事なことだが、自ら作り出した音楽の「主人の地位」を、誰にも譲らなかったから、今に至った。

 歌や演奏がとびきり上手で、隙のない完璧な技術と分かりやすいキャラクターが求められる音楽業界。
 ミュージシャンにそれを求めるのは、拝金主義に走る業界のビジネスエリートたち。売れることが第一で、音楽の真髄に関心の無い人たちが、プロデュースと称してミュージシャンを繰る。そういうシステム。
 こんな環境じゃ、今後も創造的な音楽は生まれないだろう。
 ストーンズは、そんな環境にあらがい、あるいは、逆にうまく利用したからこそ、今がある。それだけ、力があると言える。

2-0_201708081221092bb.jpg ちなみに、バディ・ガイが登場し一曲やる。
 彼のギターのその一音だけで、彼のボーカルのその出だしだけで、ステージの場が、たちまちブルース一色になる。凄い。
 ロックが、ブルースやカントリーやR&Bから生まれたとは言え、ブルースはどこまでもブルース。
 
 私は当時も今もストーンズのファンじゃないですが、いい音楽だなと思います。
 最後に。このコンサートは元大統領ビル・クリントンの財団基金で行われたらしい。
 ヒラリー夫人はじめ、ビルの母親や友人や各国の大使館なんかも客としてぞろぞろ来ている。(もちろん一般客も大勢いる)
 そんな彼らが、コンサート直前のストーンズと交わっていました。
 なんか、日本社会とその構造があまりに違うわけです。
 
 
オリジナルタイトル:Shine A Light|
監督:マーティン・スコセッシ|アメリカ| 2008年|122分|
製作総指揮:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ、ロニー・ウッド(ロン・ウッド)|
撮影:ロバート・リチャードソン|
出演:ザ・ローリング・ストーンズ|クリスティーナ・アギレラ|バディ・ガイ|ジャック・ホワイト|ほか




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映画 「ラブゴーゴー」 台湾映画 監督:チェン・ユーシュン

写真
初恋のひと、リーファ










写真
パン屋のアシェン


 コテコテの台湾製コメディかと思いきや、案外、すっきりとした爽やかさ。

1-0_20170805151418f33.jpg パン屋のおばさんが貸してる部屋に、3人の男女が住んでいる。
 アシェン(チェン・ジンシン)は、おばさんの甥。長年、パンとケーキの職人として真面目に働き続けて、今じゃ店を任されている。
 シュウは田舎から出て来た青年で、音楽で食って行きたいが芽が出ない。金がなく、店の売れ残りのパンで、日々何とか、しのいでいる。
 OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)は、大食漢で甘いモノ好き。恋人が欲しい。

 さて、ここから三話構成の第一話が始まります。
 ある日、店にレモンケーキを買いに来た女性がいた。美人だ。アシェンは、その女性が、小学校6年の同級生で、初恋のひと、リーファだと、すぐに気付いた。
 忘れていた初恋のひとは、その日から毎日来店するが、アシェンはドキドキするだけで、声もかけられない。手紙に託そうともしたが渡せない。
 そこでアシェンは考えた。彼にとって得意なコミュニケーション・ツールは、ケーキだ。店のケーキのネーミングを、「リーファへの想いの言葉」に替えはじめる。(リーファはアシェンに気付いていないが、ケーキの名前を面白がったようだ)
 さらには、テレビ放送を通して歌の歌詞で彼女に想いを伝えよう! 音痴のアシェンは、素人のど自慢に応募し、同時にシュウから歌の特訓を受ける。
 しかし、テレビ番組を見てくれなきゃ。だが放送日時を書いた手紙が渡せない。その時、業を煮やした店の女の子が、アシェンの書いた手紙をさっと奪い、リーファを追いかけ手渡した。

 第二話。
 OLのリリーが、街でポケベルを拾った。(携帯電話がまだ無い時代の話です)
 ポケベルをいじり回しているうちに、持ち主の電話番号が分かって、恐るおそる電話をかけてみると、留守番電話のメッセージが若い男のいい声! リリーはこの声に惚れてしまうが・・・。

 第三話。
 訪問セールスのアソン(シー・イーナン)が、痴漢撃退グッズを売り歩いているが、売れない。(第一話では、パン屋のおばさんに売ろうとした)
 高層ビルに迷い込むように入り込んだアソンは、高級な美容室を見つけ、客のフリして入った。ここは女性ばかりだ、セールスできるぞと、アソンは踏んだのだ。
 彼を担当したのは、リーファであった。リーファはこの店を経営している。アソンは彼女に一目惚れ。
 しかし、当のリーファは、愛しい彼との別れ話の時であった。
 
 三話とも、程よいコメディ性を保ちながら、爽やかなテイストです。
 第一話でアシェンがリーファに宛てた手紙文には、ジーンと来ますね。
 第一話のラストは第三話のラストになってつながります。
 第二話は話としては弱いのですが、可笑しい増量剤を加えていて、悪くない。2003年の邦画「茶の味」に出てくる巨大な少女は、本作のリリーの映像表現を真似ています。
 第三話はちょっと頂けない。

 総じて言うと、第一話の話で全編を描いてもらいたかった、というのが私の気持ちです。

オリジナルタイトル:愛情来了 Love Go Go|
監督・脚本:チェン・ユーシュン|台湾|1997年|113分|
撮影:ツァイ・チェンタイ|
出演:パン屋のアシェン(チェン・ジンシン)|アシェンの同級生で初恋の相手・リーファ(タン・ナ)|音楽で食って行きたいシュウ(マニェン・シェン)|OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)|訪問セールスのアソン(シー・イーナン)|パン屋のおばさん(チウ・ショウミン)|パンにガムを入れた男(ホアン・ツジャオ)|

下
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「彼女の人生は間違いじゃない」
監督:廣木隆一  瀧内公美、光石研
7/15~ロードショー 
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「おクジラさま ふたつの正義の物語」
監督:佐々木芽生 9/9~
和歌山県太地町ドキュメンタリー
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「ファウンダー
    ハンバーガー帝国のヒミツ」
7/29~ロードショー
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「さすらいのレコードコレクター
          10セントの宝物」
K's cinema 2018年春~
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誕生! ヘルツォーク特集2017
監督75歳記念上映
K's cinema 10/7~27
上映作品中、下記は記事にしています
シュトロツェクの不思議な旅
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ジャック・ベッケル特集
新文芸坐シネマテークvol.17
8/10、25


映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ

上

 何世紀も生きて来たヴァンパイア夫婦の話。

1-0_201708041043400af.jpg その昔、人間の首筋に噛みついて生血を吸った彼らも、21世紀では、それはもう蛮行で、節度あるヴァンパイアはドリンクとして血を飲んでいる。

 夫のアダムは、病院の血液検査室の男に大金を渡し、輸血用の新鮮な血を横流ししてもらっている。
2-0_20170804105034de4.jpg 妻のイヴは、ヴァンパイアの老作家(ジョン・ハート)がどこかから仕入れてくる信頼度の高い血を分けてもらっている。

 なにせ近年、人の血の多くは汚染されていてヴァンパイアにとっては危険である。汚染されていない清い血の継続的供給はヴァンパイアにとって死活問題であった。

 アダムは何世紀も前から作曲家で、今ではクラシックの作曲家となってしまった人々とも活動してきた。
 ただしアダムはヴァンパイアなので、「人間」の歴史の表舞台には出て来れず、自身の曲を他の(人間の)作曲家に託したりしてきた。アダムは控えめな男であったが、そのことが不満と言えば不満であった。

 そして、20世紀半ばからは作曲するロックミュージシャンとして生きて来た。
 彼の部屋は、1960~70年代のエレキギターの名器や、1905年製のギブソンのアコースティックギター、エフェクター類やドラムセット、ヴァイオリンやリュートなどなど、様々な楽器がグチャグチャ無造作にそこらじゅう。そして、自宅録音のために、スタジオ録音用の往年の機器類が所狭しと並んでいる。
 イヴの部屋には、あらゆる国のあらゆるジャンルの書物がそこらじゅうに積まれている。(日本の文庫本もある)
 夫婦とも、実にマニアックな方々である。監督の理想の部屋なんだろうか。

 さて、お話の方はというと、大したこともないので割愛。観てのお楽しみ。(123分、一応飽きずに見通しました)
 敢えて言えば、ストーリーのスジよりも、ストーリー設定に重きがある映画といえましょう。
 あるいは、監督の世界観を覗き見ることができる作品なのかもしれない。

 気に入った台詞が2つありました。
 イヴが、鬱になりかけのアダムに言う。「自分の心にとらわれるのは、生きる時間の無駄づかいよ」
 もうひとつは、モロッコの港町のライブハウスで夫婦して聴いた、素晴らしい若手歌手を指して、アダムがイヴに言う台詞。「有名になるには、もったいない才能だ」 (確かに素晴らしい歌手です!伴奏は控えめなギターと不思議なパーカッションだけ)
 有名になったが故に才能が消えていくミュージシャンを、何世紀に渡ってたくさん見て来たアダムの言葉。(監督の名言か)

 とても驚いたことがありました。
 映画の半ばあたりで、突然、ある曲が流れます。
 その曲は、女性ソウル歌手のデニス・ラサールが歌う「TRAPPED BY A THING CALLED LOVE」(デニス・ラサール作詩作曲)
 この曲は、デニス・ラサールのアルバムのA面1曲目に収録されてる曲で、私が好きなソウルのベストに入るLPなのです。 (Westbound Records ‎– 1972年)
 いや、ビックリ!
 イヴはこの曲をかけて、元気のない旦那とダンスします。

 つっこみを3つ。
 アダムが病院で輸血用血液を分けてもらうシーン。
 病院の男(人間)がアダムに言う。アダムが首にかけている聴診器を見て、「それ、古いね、70年代のモノかい?」
 私がアダムなら、こう言いかえす。「あんたの座ってる、その椅子、古いね、70年代の椅子だろ」
 男が座ってる椅子は、スチール製、キャスター付のねずみ色のくたびれたオフィス家具なんです。
 ちなみに、監督は1953年生まれ。70年代が懐かしいのでしょうかね。

 アダムの手足となっている男(人間)が、アダムが欲しがった貴重なエレキギターを探しだして納品しに来たシーン。
 ケースからおもむろにギターを取り出して、アダムが試奏する。しかし、だ!
 何か、気の利いたリードのフレーズを弾くのかと思いきや、たどたどしく2フレットで指3本のAしか押さえない・・・、それだけ。オイオイ、これ失笑でした。(楽器店で恐るおそる試奏する中学生みたい)

 3つ目は、本作の題名です。英語タイトルをまんまカタカナにしただけ。ハナから売る気がない素振りが素晴らしい。

 最後に、これまでに記事にした映画で、ヴァンパイアの映画「SUCK サック」、これもロックがらみでした。

下 
オリジナルタイトル:Only Lovers Left Alive|
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ|アメリカ イギリス ドイツ|2013年|123分|
撮影監督:ヨリック・ルソー|音楽:ジョセフ・ヴァン・ヴィセム|
出演:アダム(トム・ヒドルストン)|イヴ(ティルダ・スウィントン)|イヴの妹のエヴァ(ミア・ワシコウスカ)|老作家マーロー(通称キット)(ジョン・ハート)|アダムの手先として動くイアン(人間)(アントン・イェルチン)|ワトソン医師(人間)(ジェフリー・ライト)|


【ジム・ジャームッシュ監督の作品】 ~これまでに記事にした映画から
(題名をクリックしてご覧ください)

パーマネントバケーション」「ナイト・オン・ザ・プラネット」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」

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映画 「大統領の理髪師」 韓国映画  監督:イム・チャンサン

上
左から、理髪師のソン、大統領、側近。

 
 社会的にとてもシリアスな題材を、敢えてコミカルなタッチで映画化にするには、勇気が要ると思います。

 大企業による公害被害とその訴訟勝利という実話を扱った、ジュリア・ロバーツ主演映画「エリン・ブロコビッチ」が、まさしくそうした映画でした。(この記事はこちらからどうぞ)

1-0_201708011416255d3.jpg 本作の「大統領の理髪師」も、基本こうしたコミカルタッチな映画です。
 ここでのシリアスな題材とは、1960年代、韓国大統領の独裁政治によって犠牲となった一般市民の悲劇です。
 でも、観てみるとわかりますが、意外に軽い仕立てに作られています。

 「大統領の理髪師」で終始一貫、固有名詞なしで登場する「大統領」とは、実は第5代大統領の朴正煕です。(1917-1979)
 (その娘は第18代大統領のパク・クネ(朴槿恵)ですね。)
 ただし、理髪師のお話は創作です。つまり創作のお話を語ることで、映画は朴正煕の独裁政権を批判しています。

 「エリン・ブロコビッチ」は、ジュリア・ロバーツ演ずる普通一般の女性が、ある偶然の機会で、弁護士代行として公害訴訟に立ち向かうコミカルな話でしたが、本作「大統領の理髪師」は、ソン・ガンホ演ずる理髪店の男が、ある日、無理やり、大統領の専属理髪師にされてしまいます。このことから喜劇と悲劇が始まります。

 ジュリア・ロバーツ演ずる女性は高卒で、弁護士として求められるハイレベルな専門知識からは、ほど遠い人物でした。一方、ソン・ガンホ演ずる理髪師は文盲で世事に疎い男です。両作品ともに、この知識ギャップが喜劇設定になっています。
 
 さて、ソン・ハンモは定期的に官邸(青瓦台)に呼ばれ、官邸内に新設した理髪室で、国で一番偉い男(独裁者)の、髪を切りヒゲを剃ることになります。こりゃ、誰でもビビります。しかし名誉でもあるわけです。

 ここで事件が起きます。
 細菌性の下痢症状を抱えた北朝鮮の兵士(スパイ)が、ソウルに侵入して来ます。そしてソウル市内にこの細菌が拡がりはじめます。
 韓国当局はこの細菌をマルクス病菌と名付け、下痢をした人間は北朝鮮と接触したヤツだと断定し検挙し始めます。
 また同時に当局は、急に下痢の症状になった市民は、「スパイと接触したヤツ」に接触して、下痢になった人間だと断定し、尋問をし密告を促します。
 ソン・ハンモの理髪店がある町内では、彼の知り合い幼なじみ数人が疑われ、尋問を受け拷問を受け処刑されてしまいました。

 そんなある日、ソン・ハンモの店に、大統領側近の偉いサンが散髪に来ていました。(店は官邸のお膝元の街にあります)
 そして運命です。その時、ソン・ハンモの息子ナガンが、お腹が痛いと父親に訴えました。偉いサンはギロッと睨みます。
 大統領から寵愛を受けているソン・ハンモですから、国の民としてもっとも模範的態度を示さねばなりません。

2-0_201708011423262e7.jpg 彼は息子を連れて近くの交番に出頭します。交番は町内にあって警官とは親しい間柄です。まさか、息子を当局に渡すことはなかろうと踏んだのですが、ナガンは当局に送られ電気拷問を受けます。
 しかし、ナガンの身体は電気を通されても、なぜかただ、ムズガユイだけでした。

 数日後、送り返されてきたナガンは半身不随になっていました。
 ソン・ハンモは体制に対し煮えたぎる怒りを覚えますが、大統領や側近の前では平静を装います。
 一方で、ソン・ハンモは息子を背負い、息子の足を治せる民間医療の医者や仙人を訪ね歩きました。そして、韓国一の仙人に会うことができました。

 映画のラスト近く、大統領が側近によって暗殺されてしまいます。
 ソン・ハンモのその後は、いかに。彼の息子の足は一体どうなるのか! 観てのお楽しみ。

 ちなみに、映画はクーデターで政権を掌握した朴政権についてだけではなく、ベトナム戦争で負傷した韓国軍兵士の心、朴大統領の前任の不正選挙についても語っています。


オリジナルタイトル:孝子洞理髪師|효자동 이발사|
監督・脚本:イム・チャンサン|韓国|2004年|116分|
撮影 チョ・ヨンギュ|
出演:ソン・ハンモ(ソン・ガンホ)|その妻のキム(ムン・ソリ)|その子ナガン(イ・ジェウン)|大統領(チョ・ヨンジン)|警護室長チャン・ヒョクス(ソン・ビョンホ)|中央情報部長パク・ジョンマン(パク・ヨンス)|ほか

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気になる映画 57  《これから上映の映画》

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「密使と番人」
監督:三宅唱
ユーロスペース7/22~
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「ロスト・イン・パリ」 フランス映画
監督:D.アベル&F.ゴードン
ユーロスペース8/5~
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「笑う故郷」  アルゼンチン映画
監督:G・ドゥプラット&M・コーン
岩波ホール9/16~
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「ソヴィエト・フィルム・クラシックス」
冒険・SF映画編
アテネ・フランセ文化センター8/7~12
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「ブラザー・クエイの世界」
イメージフォーラム
7/8~28
「ドゥミとヴァルダ、幸福についての
            5つの物語」

イメージフォーラム7/22~
上映映画のうち以下は記事にしてます。
5時から7時までのクレオ
天使の入江」  (題名をクリック)
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「轟夕起子」
昭和の銀幕に輝くヒロイン第86弾
ラピュタ阿佐ヶ谷
8/20~10/21
上映映画のうち以下は記事にしてます。
洲崎パラダイス 赤信号
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日活文芸映画は弾む
ラピュタ阿佐ヶ谷6/18~8/19
上映映画のうち以下は記事にしてます。
にあんちゃん」「非行少女
競輪上人行状記
     
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アヴァンギャルド・ニッポン
安倍公房×勅使河原宏
ラピュタ阿佐ヶ谷7/23~8/19
上映映画のうち以下は記事にしてます。
燃えつきた地図
     
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特集「逝ける映画人を偲んで
          2015-2016」

京橋フィルムセンター NFC 7/20~9/10
上映映画のうち以下は記事にしてます。
」「祭りの準備」「狂った野獣」「任侠外伝 玄界灘」「さらば愛しき大地

2年前・4年前・6年前の7月、一夜一話。(2015年7月・2013年7月・2011年7月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-07-29 Sat 06:00:00
  • 映画
2年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  2年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年7月 Archive

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「心中天網島」
監督:篠田正浩
岩下志麻、中村吉右衛門
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「クレージーの大爆発」
監督:古澤憲吾
植木等、ハナ肇、谷啓
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「百円の恋」
監督:武正晴
安藤サクラ
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「ジ、エクストリーム、
        スキヤキ」
監督:前田司郎
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岸部一徳の出演映画
教祖誕生、Beautiful Sunday
いつか読書する日、他
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「8 1/2」
監督:フェデリコ・
     フェリーニ
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「キャデラック・レコード
音楽でアメリカを変えた人々
         の物語」
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フランス映画、1960年代。
      いい映画14本。
小さな兵隊、ラ・ジュテ、他
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「ドイツ零年」
監督:ロベルト・
     ロッセリーニ
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「宇宙人ポール」
監督:グレッグ・モットーラ
アメリカ
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最近読んだ本、3冊
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福島 高湯温泉に行ってきた


4年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  4年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年7月 Archive

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「珍品堂主人」
監督:豊田四郎
淡島千景、森繁久彌
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「兄貴の恋人」
監督:森谷司郎
内藤洋子、酒井和歌子
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「ロボジー」
監督:矢口史靖
ミッキー・カーチス
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「狐と狸」
監督:千葉泰樹
加東大介、小林桂樹ほか
写真
「大阪ストーリー」
大阪の在日韓国人一家の
ドキュメンタリー映画
写真
「乙女ごころ三人姉妹」
監督:成瀬巳喜男
細川ちか子、堤真佐子
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「あの夏、いちばん
       静かな海」

監督:北野武
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「ツレがうつになりまして」
監督:佐々部清
宮崎あおい、堺雅人
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「事件記者」
監督:山崎徳次郎
シリーズ映画10本の第一作
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映画ピックアップ
「女が、自分の道を歩む時」
邦画/洋画18本
写真
「マーサの幸せレシピ」
監督:S・ネットルベック
ドイツ
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「夜霧の恋人たち」
監督:F・トリュフォー
フランス
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「スタンリーのお弁当箱」
監督:アモール・グプテ
インド
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「愛おしき隣人」
監督:ロイ・アンダーソン
スウェーデン


6年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  6年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年7月 Archive

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「江分利満氏の優雅な生活」
監督:岡本喜八
小林桂樹、新珠三千代
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「きょうのできごと」
監督:行定勲
田中麗奈、妻夫木聡
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「原子力戦争 Lost Love」
監督:黒木和雄
原田芳雄、山口小夜子
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「竜馬暗殺」
監督:黒木和雄
原田芳雄石橋蓮司松田優作
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「ポンヌフの恋人」
監督:レオス・カラックス
フランス
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「ミフネ」
監督:S・K・ヤコブセン
デンマーク
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「パーマネント
      バケーション」

監督:ジム・ジャームッシュ
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「スリ」
監督:ロベール・ブレッソン
フランス
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「フルスタリョフ、車を!」
監督:アレクセイ・ゲルマン
ロシア
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「キングス・オブ・
       クレズマー」

音楽ドキュメンタリー映画
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「黒い神と白い悪魔」
監督:グラウベル・ローシャ
ブラジル
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「黒い眼のオペラ」
監督:ツァイ・ミンリャン
台湾
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「どつかれてアンダルシア」
監督:Alex de la Iglesia
スペイン
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「エヴァとステファンと
      すてきな家族」

スウェーデン
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「キス・キス・バン・バン」
監督:スチュワート・サッグ
イギリス
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「スイート・スイート・
        ビレッジ」

チェコスロヴァキア

一夜一話の “今日はシカゴ・ブルースだよ” ココ・テイラー

ココ


 今日の一枚はシカゴ・ブルース。
 ココ・テイラーという女性ブルースシンガーのアルバム「I Got What It Takes」だよ。
 ベテランのココが、ここぞとばかりにシャウトする。そこらのシンガーをなぎ倒す。

 まずは、このアルバムの音の鳴りが気に入っている。
 録音スタジオで録音されているが、ココのボーカルにリバーブがかかってない、生音(声)だ。
 バックバンドの音にもエフェクトをかけてない。ギター・アンプから出る音もそのままを録音している。
 だからこれを聴くと、小さなライブハウスで、あたかも目の前で演奏している感じがする。これが良い。

 収録曲はもちろんすべてブルースだが、曲ごとにリズム/ノリに変化を持たせて飽きさせない。曲によってはソウルな雰囲気もみせる。
 特にA面4曲目「Voodoo Woman」が気に入っている。次には同じくA面3曲目や5曲目なんかもいい。B面にもいいのがある。
 ただしA面1曲目は頂けない。ドラムがもたってる。ベストテイクじゃないのをレコードにしちゃった?

 時々はブルース聞かなきゃ、からだ悪くするよ、ということはないが、たまには聴いた方がよろしい。
 そして、こんなこと言うと、誰かに叱られるかもしれないが、ブルースは少し下手なプレーの方がいい。
 たとえばB.B.キングは完璧だ。これはこれでいいんだが ・・。
 でもブルース・バンドはね、ネイティブでローカルで、少し下手くそで、ラフなプレーの方がいい。そう思いません?

2_2017072508584892d.png「I Got What It Takes」 (1975) Alligator Records ‎– AL-4706

A1 Trying To Make A Living  2:46
A2 I Got What It Takes  3:42
A3 Mama, He Treats Your Daughter Mean  3:04
A4 Voodoo Woman  3:46
A5 Be What You Want To Be  3:53
A6 Honkey Tonkey  2:54
B1 Big Boss Man  3:57
B2 Blues Never Die  3:55
B3 Find A Fool  3:59
B4 Happy Home  3:15
B5 That's Why I'm Crying  4:28

Vocals – Koko Taylor|
Bass – Cornelius Boyson|Drums – Vince Chappelle|Guiitar – Mighty Joe Young, Sammy Lawhorn|Keyboards – Bill Held|Saxophone – Abb Locke|
Producer – Bruce Iglauer, Koko Taylor, Joe Young|

映画 「故郷」(1972) 倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆、渥美清  監督:山田洋次

上
砕石を満載し、今にも沈みそうな木造運搬船が、小舟を曳いてゆっくり瀬戸内の海を行く。船は老朽化している。
写真
船長で一家のあるじ、精一。
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船の機関士でもある、妻の民子。子供が二人いる。

 

 どっしりと腰を据えた脚本、じっくり観るに値する、いい映画。

1-0_20170723141037d2f.png 話の舞台は、瀬戸内海に浮かぶ小島と、海上を行きかう木造の砕石運搬船という、日ごろ馴染みのないドラマ設定が、観る者に異色な印象を与えてくれる。
 くわえて、ドキュメンタリー映画の要素も加わり、1972年当時のライブな感覚が味わえる。

 広島県の倉橋島という島に住む、石崎一家の物語です。
 一家の稼業は、一抱えもある砕石を採石場で積み込み、沿岸の埋立て地造成現場の沖合まで航行し、そこで石を海に投棄する仕事。
 この砕石専用の運搬船は「石船」と呼ばれ、特に倉橋島の各家では、この石船を持ち稼業に励む家々が多かったのです。

 石崎の家は、精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦に、子が二人、そして精一の父(笠智衆)の、五人家族。
 夫婦はそろって船に乗るので、子は専ら祖父が面倒をみている。
 海を見下ろす島の丘には、小さな畑があって民子はそこで野菜を作っているが、買い物に行く間がなく、毎日の食材に困ることがある。
 それを補ってくれているのが、軽トラ行商の魚屋の松下(渥美清)だ。家族同然で、「今日の余りモノだよ」と言って、気安く魚を分けてくれるのだ。

 倉橋島は今も、のどかな様相を見せるが、この島にも時代の波が押し寄せていた。
 石船の運搬単価は下落し、ダンプトラックの陸送に取って代わろうとしていた。これに対抗するには、船体を大きくした鋼鉄船に乗り換えるしかなかった。しかし、石崎に毛頭そんな金はない。
 そんなことより、石崎の早急の課題は、今の木造船のエンジンが寿命に来ていること。砕石運搬の仕事を差配してくれる親方に相談したが、金の融通は無理だった。

 かつて精一と一緒に船に乗っていた弟は、先のない石船の仕事に見切りをつけ、島を離れて今は勤め人になっていた。
 そして、ついに、精一も石船稼業を諦めた。
 人の紹介で、広島県尾道にある造船所に勤めることになったのだ。家族の移住である。精一の父は島に残ることになった。

 東京から来てこの島に移り住んだ魚屋の松下(渥美清)が、映画の中で独り言のように言っている。倉橋島というこんないい島に、どうして住み続けることが出来ないんだろうね。
 また精一は、零細な稼業に押し寄せる時代の波について、妻の民子にこう言っている。「なんで、わしらは大きなもんに勝てんのかいの・・・」と。


監督:山田洋次|1972年|96分|
原作:山田洋次|脚本:山田洋次、宮崎晃|撮影:高羽哲夫|
出演:石崎精一(井川比佐志)|精一の妻・民子(倍賞千恵子)|精一の実父・石崎仙造(笠智衆)|精一の弟・石崎健次(前田吟)|魚屋の松下松太郎(渥美清)|ほか

【 山田洋次の映画 】 ~これまでに記事にした作品から (下記題名をクリック)

二階の他人」「下町の太陽」「馬鹿が戦車でやって来る」「霧の旗」「故郷

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映画 「初恋のアルバム 人魚姫のいた島」 韓国映画  監督:パク・フンシク

2_20170723103949f09.jpg




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 甘口の映画だが、そう悪くはない。
 それは、若き日の母親とその娘ナヨンを、一人二役で演ずる、チョン・ドヨンが光っているからです。

 ナヨンは失踪した父親を探して、母親が生まれ育った島へ旅立ちました。
 ですが、島に着いた途端、ナヨンは、母親が娘であった頃へ、タイムスリップしてしまう。
 タイムスリップしたその先では、島も、そして周りの海も、まだまだ開発の手が及んでないのどかな風土、光りに満ち溢れた風景でした。

1-0_20170721103413879.jpg 若き日の母・ヨンスンは幼い弟と二人住まい。親はいません。ヨンスンは島の女たちと一緒に、海女をして生活しています。
 島には小さな郵便局があって、ヨンスンはそこの若い配達夫・ジングクと恋仲になっていました。
 学校へ通えず文盲のままに過ぎて来たヨンスンに、ジングクは優しく読み書きを教えています。

 映画はその大部分の時間を使って、このヨンスンとジングク、若い二人の、たどたどしい愛を瑞々しく描いて行きます。これが本作の見どころでしょう。

 さて、そののちジングクは転勤で島を離れることになりますが、結局、その後二人はめでたく結ばれました。
 そう、この郵便局の男ジングクがナヨンの父親になるのです。

 しかし、いつからなのでしょうか、両親の夫婦仲がうまく行かないようになってしまいました。(映画は、夫婦仲が悪い事や以下の事については、少ししか時間を割きません)

2-0_2017072110361922a.jpg 勝ち気な母親は、事あるごとに、がなり声で父親を容赦なく、なじる毎日。父親は言われるまま、ただ黙っている。
 ナヨンはそんな母親が嫌いだ。こんな、女尊男卑な家庭に生まれたくなかった。

 どうやら父親は借金を背負っているようです。人の好い父親は、誰かの連帯保証人になったらしく、返済義務が生じている。
 父親の郵便局勤めの稼ぎだけでは賄えない。その分、家計を補うためにも、母親は銭湯でマッサージ/垢すりをして働いています。(ナヨンも郵便局に勤めています)

 そのうえ、近年、父親は体調が悪い。病院の検査でも良くないらしい。だが父親は、このことを誰にも話していません。
 父親は妻に債務に病魔に疲れてしまい、失踪。
 そこで、娘ナヨンが、父親探しに島へ向かうのでした。

 そして映画冒頭。父親の葬儀の席で、借金を残したまま他界したことを、母親は大声でなじり、大泣きするのです。

 タイムスリップから帰ったナヨンは思います。
 あんなに、ねじ曲がってしまった母親の心に、夫にも見せない秘めた愛、若き日の愛が、あるのだろうと。
 そして、父親については、純粋に優しいということは、かえって周りを傷つけることになると・・・。

 残念なのは、若い頃の両親と現在の両親の、その様相の格差があまりにあまりなので、別の人の話に思えてしまいます。
 いやいや往往にして、こうなってしまうものですよ、と映画は言っているのでしょうか。


下
オリジナルタイトル:人魚姫|인어공주 |
監督:パク・フンシク|韓国|2004年|111分|
原案:キョン・ヒェウォン|脚本:パク・フンシク 、 ソン・ヒェジン|撮影:チェ・ヨンテク|
出演:娘のナヨン、若き日のナヨンの母・チョ・ヨンスン、一人二役(チョン・ドヨン)|現在の母・キム・ヨンスン(コ・ドゥシム)|若き日の父・キム・ジングク(パク・ヘイル)|現在の父・キム・ジングク(キム・ボングン)|ナヨンの彼氏・ドヒョン(イ・ソンギュン)|ほか

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映画 「ジヌよさらば かむろば村へ」  監督・脚本:松尾スズキ

上2


1-0_20170719110447be0.jpg 松尾スズキ監督2015年作のドタバタ喜劇です。こういう質のいい映画をつくる監督に拍手!
 くわえて阿部サダヲの芯のある演技が、この映画の柱になってます。
 なにしろ脚本がいい! (近年、他監督の新作邦画の多くが、その脚本がいかに駄作か・・・・)
 各所にみられる気の利いた可笑しいセリフも聞き逃しなく。

 東北のある村に、頼りなさげな若い男が一人ふらりと現れる。100万円で廃屋のような古い農家住宅を買ったらしい。
 この、かむろば村は限界集落一歩手前。村では、村長・天野与三郎(阿部サダヲ)は、まだ若い。

 天野村長は、この頼りなさげな男・高見武晴(松田龍平)を、まるで身内のように「タケ」と呼んで、親身に世話をする。
 タケは元銀行員。ムリな融資と回収不能の連鎖から、タケは精神的に参ってしまった。そして退職。病名はカネ恐怖症。カネを見るも触るもダメ。身体がガクガクしてきて、その場で気絶する。(本作の題にあるジヌとは銭ということらしい)
 だからカネを使わない生活を探して、タケはかむろば村にたどり着いた次第。

 カネを使わない生活。それは現物支給の生活。
 タケがはじめた便利屋の労働提供は野菜に換わる。村長の店、よろずやの「スーパーあまの」でのバイトも同様で、店の食料品に換わる。ただし、レジはできない。村長の妻・亜希子(松たか子)か、パート店員・いそ子(片桐はいり)がする。

 天野村長は、村に村人に真剣に尽くす。信頼も厚い。(見習え、全国の村長町長よ)
 だが、彼には秘めておきたい過去があった。そしてある日、村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)がやって来た。
 ひとモンチャク起きないわけがない。警察沙汰となった。

 隣り町の町議会議員が、かむろば村を吸収合併することを企んでいる。かむろば村に何やら処理場を作る計画だ。
 そして、かむろば村の村長選挙が始まる。隣り町の町議は、日頃から手なずけておいた村の助役に立候補させた。
 一方、天野村長は自分に替わって頼りなさげなタケを立候補させる。タケはカネにまみれていない。まみれようがない。ついにタケもその気になった。

 ところで、隣り町の町議会議員は、手なずけたい女がいる。村にある旅館の美人女将だ。
 女将は、かむろば村の老人で自称神様の、なかぬっさん(西田敏行)の娘だ。
 この、なかぬっさんは、いい神様で、(重要なシーンで目が不気味に光る)、この話で重要な役回り。天野村長やタケを助けるのだ。
 だが、神様とはいえ寄る年波には勝てぬ。なかぬっさんが他界。そして、どうやら、孫が村の神を引き継いだようだ。
 村長と村の神が代替わりし、かむろば村は次代へと歩み始める。
 

監督・脚本:松尾スズキ|2015年|121分|
原作:いがらしみきお|撮影:月永雄太|
出演:高見武晴、あだ名タケ(松田龍平)|かむろば村村長・天野与三郎(阿部サダヲ)|その妻・天野亜希子(松たか子)|女子高生・青葉(二階堂ふみ)|村長の店「スーパーあまの」のパート店員・いそ子(片桐はいり)|自称かむろば村の神様・なかぬっさん(西田敏行)|なかぬっさんの娘で伊佐旅館の女将・奈津(中村優子)|奈津の息子でなかぬっさんの孫、与三郎との子・進( 田中仁人)|かむろば村の助役・伊吉(村杉蝉之介)|伊吉の妻でや村役場の職員・トキ(伊勢志摩)|伊佐旅館の板前で元やくざ・勝男(オクイシュージ)|タケの農作業の面倒をみる何時も笑顔のみよんつぁん(モロ師岡)|村のやくざ青年で女子高生青葉が好きな青木(荒川良々)|隣の町の町会議員・伊佐旅館の女将・奈津に気がある・青舐(皆川猿時)|村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)|

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一夜一話の “今日はジャズピアノトリオだよ“ ユリ・ケイン

000.jpg


 今日の一枚は、「BLUE WAIL」。ジャズピアニスト、ユリ・ケインがドラムとベースを従えたトリオのアルバムだよ。

 古今東西ありがちなジャズピアノトリオの演奏フォーマットを、ほどよく逸脱している鋭利なセンスが聴きどころ。
 定型的なジャズサウンドに飽いている輩には、グッと来るアルバムです。

 演奏内容は、緊張と緩和がうまくコントロールされていて、サウンドの表情が豊か。また、1曲の演奏時間が総じて短く、スカッと終わる。いさぎよい。


 ピアノトリオの伝統的様式を逸脱していると、まず感じるのは、ドラム。
 たぶんにユリ・ケインのピアノにインスパイアされている結果だ。
 やたら手数が多いドラムだが、不思議にうるさくない。それは太鼓の鳴りをデッドにチューニングしてあって、かつハイハット、シンバルも派手じゃなく繊細な鳴りのものを選んでいるから。
 一方、アコースティックベースは、奇をてらわずオーソドックスに4ビートを維持し、やんちゃなピアノとドラムの面倒をみながら、トリオの底辺を支えている。

 さて、ユリ・ケインのピアノは、意外に綺麗な音色を出す。
 よってスローなバラードでは耽美である。しかし、アバンギャルドなフレーズではエッジの効いた力強いピアノになる。
 また、ブルー・ノート・スケールも忘れてはいない。
 収録曲のいくつかに出てくるドラムやベースのソロ部分で、ユリ・ケインの控え目なバッキングが独特でかっこいい。
 つまり総じて、ユリ・ケインのピアノはとても独創的なスタイルだ。あたりまえだが、これがこのアルバムの肝である。
 
 本アルバムを聴くにあたっては、まずは1曲目の、ユリ・ケインのピアノソロでぶっ飛びたい。
 演奏曲は「ハニーサックル・ローズ」。ファッツ·ウォーラーの作曲(1929年)で、数々の女性ジャズシンガーが歌った曲。
 これを前衛的に気ままにプレイする。うう、GOOD! (アルバムのラストは別テイク)
 2曲目からはトリオの演奏が続く。以下、ご随意にどうぞ、お楽しみください。

「BLUE WAIL」  (Winter & Winter 910034-2)  1998年

1 Honeysuckle Rose (Written-By – Fats Waller)  4:03
2 Loose Trade  5:33
3 The Face Of Space  6:21
4 Digature Of The Line 4:55
5 Blue Wail  8:35
6 Stain  5:48
7 Sweet Potato  9:19
8 Bones Don't Cry  5:15
9 Poem For Shulamit  4:45
10 Fireball  3:37
11 Honeysuckle Rose (Written-By – Fats Waller) 4:14

Piano, Producer – Uri Caine|Bass – James Genus|Drums – Ralph Peterson Jr.|

Producer – Joe Ferla, Stefan Winter

映画 「プープーの物語」  監督:渡邉謙作

写真
フウとスズ










写真
ブルーの色が好きなスズと、オープンカー


1-0_201707141055476be.png
 二人の女子、フウとスズの、大変大変なロードムービー。
 これは、ちょっとやっかいなキテレツ喜劇です。
 その上、軽くてユルくて、くだらない。Good!
 今のご時世じゃ、もうこういう映画はつくれない。

 フウは密かにスズが好き。スズはブルーの色が好き。
 フウはスズに寄りつく男をなぎ倒す。スズは赤ちゃんを抱えてる。
 スズは世のしがらみに頓着しない。その時の気まぐれで爽やかに生きてる、チョット足りない女の子。
 フウはスズが好きだから、そんなスズをいつもフォローする。

 大きく広がる田園風景の中、フウとスズと赤ちゃんのプープーはヒッチハイクの車を待っている。
 そこへ、スズが好きなブルー色のオープンカーがやって来る。はしゃぐスズ。
 着いた先で、オープンカーの男がスズに襲い掛かる、
 察したフウは生まれて初めての人殺しで、男をやっつけたはずが、どっこい生きていて逆襲を喰らう。
 だが次の瞬間、男は眉間に銃弾を受け、即死。
 間一髪のところ、二人を救ったのは、オープンカーの後部トランクから突如現れた、不思議な銀色少年、トランクマン。

1-0_2017071410592830c.png そんな頃、女装の妻とその夫は、自分たちの行方不明の赤ちゃんを探していた。
 この二人組に捕まったフウとスズ、計4人はオープンカーに乗って、彼らの赤ちゃん探しに付き合わされる。

 「きっと、ここよ」とフウは車を止めさせた。そこはスズが赤ちゃんをベビーカーごと、置き去りにした所。
 やっぱり!草原の茂みの中から赤ちゃんの泣き声。
 スズの赤ちゃんを奪おうとする二人組は、フウとスズに銃口を向けるが。どこからともなくドキューン。ここで例のトランクマンが再度ふたりを救った。

 そもそも、フウとスズのこの旅は、赤ちゃんのお父さんに会いに行く旅。
 一方、赤ちゃんのお父さん、木嶋(國村隼)は、スズからの手紙を、楽しい我が家で受け取っていた。

 手紙を読んで木嶋は唸った。たしか、依頼殺人でスズを殺したはずなのに…。
 木嶋はさっそく、あの時の殺人請負人ジョージ(原田芳雄)に会うことにした。結局木嶋は今度はジョージに頼まず、自らスズを狙うことにした。

 執拗な追跡の結果、木嶋がフウとスズの前に現れる。互いに拳銃の撃ち合いが始まり、次ぎの瞬間、木嶋が崩れた。
 そう、ここでもお助けトランクマン!

 そおして、フウとスズとプープーに、再び幸せな日々が始まるのでした。めでたしめでたし。なんぢゃ!このケッタイな話は・・。

 あの鈴木清順が脇役の老人で現れる。舞台セリフっぽい長セリフです。
 挿入のサウンド、いいセンス。
 軽く受け流して観ましょうね。
 

監督・脚本:渡邉謙作|1998年|73分|
原案:ミッキー・ケン・ケン・ブー|撮影:村石直人|音楽:三宅純|
出演:スズ(上原さくら)|フウ(松尾れい子)|木嶋(國村隼)|ジョージ(原田芳雄)|トランクマン(山中零)|老人(鈴木清順)|
オープンカーの男、職業ゴルファー(桜井大造)|イルカ(津田充昭)|ゲスオ(大森立嗣)|写真の男(ジョー山中)|ほか

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映画 「アデル、ブルーは熱い色」  監督:アブデラティフ・ケシシュ

上
 アデルとエマ
1-0_20170713094955213.jpg


 オリジナルの題名は「アデルの人生:第1章と第2章」。
 高校生のアデルが同じ学校の先輩男子より、街で見かけたブルーの髪の女性に魅かれていく話。
 主人公のアデル役のアデル・エグザルコプロスの自然体の熱演に脱帽だ、素晴らしい。

 宣伝では、衝撃の愛の7分間、史上最高のラブシーンにカンヌが大喝采!と、レスビアンの性描写をことさらに言うが、蓮っ葉な売り文句だな、それがこの映画の売りなのかい?

 ブルーの髪の女性エマは画家、その彼女が映画の中で、自身の作品に言及するキュレーター(美術評論家)に対して言っている。「作品に敬意を払うべきよ」と。このセリフをそのまま、本作の配給会社に言いたいね。
 観るほうも、エロいの観たけりゃ、他のにすれば。

 売りのラブシーンよりも、アデルがクラブで街頭デモでパーティで幼稚園で踊るダンスシーンの方が長い。映画の各所で出てくる。監督は愛と踊り両方のシーンをもって、作品のいしずえ(礎)と考えている風に思える。

 映画に使われる音楽の選定にセンスを感じる、いいね。

 あと、アデルの家庭は中の下か、労働者階級で、人生において特に職業選択は手堅くというに対して、エマの家庭は自由奔放な上流階級。お父さんは二人目で、著名なシェフ。エマの家庭はレスビアンを許容する。

 話のスジはいたって単純だが、「アデルの人生:第1章と第2章」を丁寧に描いて行く。179分の大作。
 演技輝くアデルに注目。じっくり観てみよう。

 ちなみに、アデルに対して恋愛感情なしに、親身になってくれる男子が登場する。
 2015年の韓国映画「恋物語」にも同様な男子が主人公のレスビアンな女子を慰める。(「恋物語」の記事はこちらから。)


オリジナルタイトル:La Vie d'Adèle : Chapitres 1 et 2|
英語タイトル:BLUE IS THE WARMEST COLOR|
監督:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2013年|179分|
原作:ジュリー・マロ|脚本:アブデラティフ・ケシシュ 、 ガリア・ラクロワ|
撮影監督:ソフィアン・エル・ファニ|音楽:ジャン=ポール・ユリエ|音楽監修:エリーゼ・ルーゲン|
出演:アデル(アデル・エグザルコプロス)|エマ(レア・セドゥー)|サミール(サリム・ケシュシュ)|リーズ(モナ・バルラベン)|トマ(ジェレミー・ラユルト)|ベアトリス(アルマ・ホドロフスキー)|アントワーヌ(バンジャマン・シクスー)|ほか

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1年前・3年前・5年前の7月、一夜一話。(2016年7月・2014年7月・2012年7月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-07-13 Thu 06:00:00
  • 映画
 ちょっと改良いたしました。
1年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年7月 Archive

写真
「ピース オブ ケイク」
監督:田口トモロヲ
多部未華子、綾野剛
写真
「愛と希望の街」
監督:大島渚
藤川弘志、富永ユキ
写真
「特急にっぽん」
監督:川島雄三
フランキー堺、団令子
写真
「スライ・ストーン」
音楽ドキュメンタリー映画
オランダ
写真
「100歳の華麗なる冒険」
監督:F・ハーングレン
スウェーデン
写真
「鯨とり ナドヤカンダ」
監督:ペ・チャンホ
韓国
写真
「ボーダー・レディオ」
監督:A・アンダースほか
アメリカ
写真
「自由はパラダイス」
監督:セルゲイ・ボドロフ
ソ連
写真
「マラヴィータ」
監督:リュック・ベッソン
アメリカ R・デ・ニーロ
写真
<ア行> の洋画
これまでに記事にした洋画から。

3年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年7月 Archive

写真
「渋滞」
監督:黒土三男
萩原健一、黒木瞳
写真
「濡れた赫い糸」
監督:望月六郎
北村一輝、高岡早紀
写真
「みれん」
監督:千葉泰樹
池内淳子、仲谷昇
写真
「NINIFUNI」(ににふに)
監督:真利子哲也
ももいろクローバー
写真
「雁の寺」(がんのてら)
監督:川島雄三
若尾文子
写真
「サーカス」
監督:G・アラヴィンダン
インド
写真
「リダクテッド 真実の価値」
監督:ブライアン・デ・パルマ
アメリカ
写真
「ポケットの中の握り拳」
監督:マルコ・ベロッキオ
イタリア
写真
「グランド・ブダペスト・ホテル」
監督:ウェス・アンダーソン
イギリス
写真
京都・非観光ぶらり街歩き
寺町通、本能寺とか
そして土塁(御土居)
写真
最近読んだ本3冊

5年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年7月 Archive

写真
「サマータイムマシン・
        ブルース」

監督:本広克行 上野樹里
写真
「ハラがコレなんで」
監督:石井裕也
仲里依紗
写真
「ドキュメント灰野敬二」
監督:白尾一博
音楽ドキュメンタリー
写真
「屋根の上の赤い女」
監督:岡太地
山中崇、神農幸
写真
「水の花」
監督:木下雄介
寺島咲
写真
「もう頬づえはつかない」
監督:東陽一
桃井かおり
写真
京都 先斗町の一夜
お盆で帰っての、夏。
写真
「シチリア!シチリア!」
監督:G・トルナトーレ
イタリア
写真
「みんなのしらない
        センダック」

アメリカ
写真
「ブラザー・フロム・
    アナザー・プラネット」

アメリカ
写真
「パンチドランク・ラブ」
監督:P・T・アンダーソン
アメリカ
写真
「ラスト・ホリデイ」
監督:A・カラクーロフ
カザフスタン
写真
「イグジット・スルー・ザ・
      ギフトショップ」

監督:バンクシー  アメリカ
写真
「少女の髪どめ」
監督:マジッド・マジディ
イラン
写真
「越境者」
監督:ピエトロ・ジェルミ
イタリア


映画 「チャップリンからの贈りもの」  監督:グザヴィエ・ボーヴォワ

上
左から、娘のサミラ、父親のオスマン、そして風来坊のエディ。
 

 話の舞台はスイス、レマン湖の辺り。
 生真面目なアルジェリア人と楽天家のベルギー人、この二人の男がトンデモナイことを仕出かす話。

1-0_20170708220906035.jpg 北アフリカはアルジェリアからの(不法?)移民の男オスマンは、テレビも無い粗末な小屋に妻子と住んでいる。
 最近、妻が重い腰痛で緊急入院し、オスマンは娘のサミラと二人っきり。  
 そこへ風来坊のベルギー人エディが訪ねて来た。エディはオスマンの命の恩人で、義理堅いオスマンはエディの居候を歓迎した。
 だが、病院でこのことを知ったオスマンの妻は、「エディはやっかい者」と渋い顔。以前に良くない事があった様子。

 オスマンは問題を抱えていた。
 妻の医療費が払えない。だから妻は手術が受けられない。
 病院からは、オスマンの妻であることを証明する家族証明を提示すれば、低所得者向けに、手術代などの医療費が割安になる。
 しかしオスマン夫婦は結婚の際、スイスの役所の手続きをしていない、だから証明するものが無い、よって高額医療費の全額負担となってしまう。
 そのうえ、妻が働けないでいるので、家族の収入はがた減り。銀行に金を借りる相談に行ったが相手にしてもらえない。
 手立てがないオスマンは頭を抱えている。おまけに娘のサミラは母親が家にいないので情緒不安定。

2-0_20170708215635248.jpg こんなオスマン一家の困った様子を見ていた居候のエディに、アイデアが浮かんだ。
 最近、他界したチャップリンの遺体を一時、盗んで、身代金を頂こう!
 晩年、レマン湖のほとりの別荘に住んでいたチャップリンは、近くの墓地に埋葬されていたのだ。

 エディの突飛な言動に慣れているオスマンだったが、これには呆れた。呆れたが魅力的でもあった。なにしろオスマンに打つ手がなかった。
 ついにある夜、二人は闇に紛れて、墓荒らしを決行し、人目につかない別の場所に棺を埋めた。
 次に、チャップリン家に対して、電話で犯行声明と身代金要求。電話はエディが担当、オスマンは英語が話せない。
 しかしエディの電話は、思うように話が進まず相手に怒鳴りだしたり、オスマンに相談なく身代金を半額にしたりと、横にいるオスマンはハラハラし通し。
 (シーンは喜劇とまでは行きませんが、ともに貧しい男の凸凹コンビの様相。)

 さてさて話は、このあと、どうなるのでしょう。でも映画は、一応、ハッピーエンドを迎えます。
 脚本は、スイスで1977年に実際にあった事件を基にしているようです。
 チャールズ・チャップリンは、1977年12月25日に死去、映画の日本語タイトル名は12月25日クリスマスの日にかけているのでしょうか。
 ちなみにですが、スイスでは、全住民の24.6%の外国人を抱えているらしい。(2015年現在)


オリジナルタイトル:La Rançon de la Gloire|
英語タイトル:THE PRICE OF FAME|
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ|フランス|2014年|115分|
脚本:エティエンヌ・コメ 、 グザヴィエ・ボーヴォワ|撮影監督:カロリーヌ・シャンプティエ|
出演:エディ(ブノワ・ポールヴールド)|オスマン(ロシュディ・ゼム)|サーカスの女・ローサ(キアラ・マストロヤンニ)|チャップリンの秘書・ジョン・クルーカー(ピーター・コヨーテ)|オスマンの娘・サミラ(セリ・グマシュ)|オスマンの妻・ヌールNoor(ナディーン・ラバキー)|チャップリンの娘(ドロレス・チャップリン)|

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一夜一話の “今日はスタンダード・ナンバーの名曲だよ“  小野リサ

1_20170706120911f0e.jpg

 
 今日の一枚は、小野リサのアルバム「DREAM」。ご機嫌な極上アルバムだよ。

 小野リサといえばボサノヴァだけど、このアルバムは趣きが違う。
 「ムーンライト・セレナーデ」、「二人でお茶を」、「センチメンタル・ジャーニー」、「チャタヌガ・チュー・チュー」など、アメリカ1925~1944年の珠玉のスタンダードナンバーが並んでいる。

 小野リサのハスキーでロマンティックなささやき系のボーカルに、現代的で緻密な名曲アレンジに加えた演奏、スピード感ある元気な演奏が、とてもマッチしている。それと、何と言っても曲がいい!
 ちなみにスタンダードの中に一曲、小野リサ作曲の「天使の瞳」があるが名曲に負けてない。

 プロデュースとアレンジとボーカルとギターとピアノを担当した59歳のオスカー・カストロ・ネビス(1940-2013)という人は、ボサノヴァ黎明期からの著名なブラジルのミュージシャン、アレンジャー、作曲家。
 オスカーのかすれた歌声が、小野リサの声と、これもマッチしている。

 小野リサのソロアルバムというより、ふたりのアルバムと言っていい。いや、わたしゃ、小野リサをフィーチャーした、オスカー・カストロ・ネビスのアルバムとみる。
 演奏は、ドラム、ベース、ピアノ、ぐっと来るコーラス、管楽器、各種打楽器。どのミュージシャンも皆、うまい!皆、楽しんでる。

 たまに、こんなアメリカンな名曲を聴きたくなるが、グレンミラーオーケストラや往年の歌手とかのレコードじゃ、単なるなつかしのサウンドぢゃ。
 名曲を今によみがえらせて、いい曲だなと聴けるこのアルバムは素晴らしい。下記リストの作曲家たちに感謝したい。
 元気出したい時、ボリューム上げて聴いてほしい。


「DREAM」(1999年)

1 明るい表通りで - On the sunny side of the street  (1930 Jimmy McHugh - Dorothy Fields)
2 ムーンライト・セレナーデ - Moonlight serenade  (1939 Glenn Miller - Mitchell Parish)
3 アンディサイデッド - Undecided  (1938 Charlie Shavers - Sid Robin)
4 二人でお茶を - Tea for two  (1925 Irving Caesar - Vincent Youmans)
5 ナイト・アンド・デイ - Night and day  (1932 Cole Porter)
6 時の過ぎゆくまま - As time goes by  (1931 Herman Hupfeld)
7 サヴォイでストンプ - Stompin' at the savoy  (1934 Edgar Sampson - Chick Webb - Andy Razaf - Benny Goodman)
8 ボーイ・ネクスト・ドア - The boy next door  (1944 Ralph Blane - Hugh Martin)
9 イン・ザ・ムード - In the mood  (1939 Joe Garland)
10 ドリーム - Dream  (1944 Johnny Mercer)
11 天使の瞳 - Angel's eyes  (小野リサ作曲 Monday Michiru - Lisa Ono)
12 センチメンタル・ジャーニー - Sentimental journey  (1944 Bud Green - Les Brown - Bem Homer)
13 チャタヌガ・チュー・チュー - Chattanooga choo-choo  (1941 Harry Warren - Mack Gordon)

映画 「フローズン・リバー」  監督:コートニー・ハント

上


 お話は、アメリカ東北部、カナダとの国境近く。
 ニューヨーク州の北辺を流れるセントローレンス川、この川を国境線にして向こうはカナダだ。

 生活に窮する白人中年女性と、アメリカ先住民族の若い女性との、母親同士の思わぬ出会いと人種の壁と、凍った川を車で渡る密入国者輸送の共犯と、友情を描く。

1-0_20170703141232ab2.jpg この国境付近でトレーラーハウス※(下記)に住み、二人の息子を抱える白人女性レイには、もう小銭しかない。レンタルで借りてるテレビ(受像機)の支払いも滞っている。下の子はまだ4歳位、ディズニーのアニメが楽しみなのに。
 レイは1ドルショップで働くが非正規雇用、給料日はまだ先。
 ある日、コツコツ貯えた金を持って、夫は姿を消した。その金は、一家四人が暖かく楽しく住める新しいトレーラーハウスを買うための金だった。

 夫はギャンブルに溺れていた。それを激しく責めるレイだったらしい。そんな両親をこれまで見て来た15歳の長男は父親を擁護する。
 レイは夫を探しに、いや、持って逃げた金を取り返すべく、夫がよく行くモホーク・ビンゴ・パレスへ車で出かけた。
 そこはインディアン・カジノのビンゴ会場、北アメリカ先住民族のモホーク族の保留地のなかにある。

 夫の姿はなかった。車は駐車場にあった。夫はここからバスで行方をくらましたようだ。
 モホーク族の女ライラが会場から飛び出してきて、夫が乗って来た車で走り去る。何! あとを追うレイ。
 たどりついたところは、保留地の中のライラの家、レイのハウスより小さくて、キャンピング用のトレーラーの様。一人住まいだ。
 ライラはレイに言う、「この車を売らない?」 (トランクルームが大きいこの車は、人を入れて運ぶのに役に立つのだ。)

 ライラはこんな車が欲しかった。車があれば、兄の商売を手伝って金が入る。その金を貧しい義母に渡せる。
 出産直後に赤ちゃんを義母に奪われたままのライラは、赤ちゃんのために金を渡したい。(ライラの夫はすでに世を去っていた)

 ライラの兄たちの商売は、カナダからアメリカへの密入国斡旋だった。
 冬はセントローレンス川が凍り、車で川を渡れる。(フローズン・リバー)
 そして、川の両岸つまりカナダ側もモホーク族の保留地。保留地の中にはアメリカ・カナダの国境はない。このことを逆手に取った密入国。
 車のトランクルームに密入国者を入れて密かに川を渡るのだ。部族の闇収入源なのか。

 結局、ライラの話を聞いてレイも密入国者輸送を手伝うことになる。稼いだ金は折半だ。
 レイはレイでまとまった金が近々に欲しかった。あと数日以内にトレーラーハウスの残金を納めないと、頭金が消えてしまう。

 さて、レイの無謀な冒険、ライラの土地勘、そして意外にも沈着冷静なレイの判断。
 カナダ側から川を渡りアメリカ側の保留地を出ると、州警察の目が光るが、白人のレイは怪しまれないし、警官とは見知った間柄でもあった。

 3回目の密入国ほう助のある夜、レイとライラは窮地に追い込まれる。
 州警察と彼女らの間に、モホーク族の部族議会が入って事を丸く収めることになる。要するにトカゲのシッポ切り。
 会議の結論はレイかライラのどちらかが自首する。
 はじめ、ライラが自首すると言った。なぜならレイには帰りを待つ二人の息子がいる。レイは一瞬躊躇しながらも、家へ帰ろうとしたが、引き返した。
 そしてレイはライラに言った。あなたは赤ちゃんを義母から奪い返して、そして私の家に住み、息子二人の面倒をみて。刑期は4か月らしいから。


※トレーラーハウスとは
  キャンピング・トレーラーの形態だが、特定の場所に定住するを目的とした移動可能住宅。タイヤがついたプレハブ住宅。トラックで牽引する。
※インディアン・カジノとは
  保留地内でインディアン部族が経営する各種カジノ。アメリカ連邦政府との連邦条約規定に基づくインディアン部族の権利となっている。
 参考サイト https://ja.wikipedia.org/wiki/イロコイ連邦のインディアン・カジノの項。保留地についても解説あり。
※モホーク族とは
  https://ja.wikipedia.org/wiki/モホーク族
 
下
オリジナルタイトル:Frozen River|
監督・脚本:コートニー・ハント|アメリカ|2008年|97分|
撮影監督:リード・モラノ|
出演:レイ(メリッサ・レオ)|ライラ(ミスティ・アップハム)|レイの長男ティー・ジェイ(チャーリー・マクダーモット)|ジャック・ブルーノ(マーク・ブーン・Jr)|フィナーティ警官(マイケル・オキーフ)|ジミー(ディラン・カルソナ)|リッキー(ジェイムズ・ライリー)|ビリー・スリー・リヴァーズ(マイケル・スカイ)|チェン・リー (ナンシー・ウー)|ガイ・ベルサイユ(ジェイ・クレイツ)|






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映画 「飢餓海峡」 監督:内田吐夢

上
函館警察の元刑事弓坂(右)は、当時追っていた男・犬飼に10年の時を経て、
このとき初めて会った。(東舞鶴警察留置場にて)


 「飢餓海峡」の飢餓とは、直截的には、主人公ふたりの貧しい出自を、海峡とは津軽海峡を指すが、題名の意味合いは、あまりに貧しい生まれであったが故に、どちらの人生も、(対岸の)幸せに至れなかったことの不幸を表わしている。(原作:水上勉)

 物語は、北海道を放浪していた犬飼(三國連太郎)という極貧の生まれの男と、青森県下北半島にある恐山のふもとに住む、やはり貧しい家の娘・八重(左幸子)、このふたりそれぞれの顛末を描く大作。(182分)

1-0_2017062915305344e.png 時は昭和22年、北海道にいた犬飼が、網走刑務所を出所した二人組に出会ったことから、話は始まる。
 当時、放浪中の身であった犬飼は、彼らの仲間になった訳ではなかったが、旅の道連れとなっていた。
 列車に乗った3人。その車内で犬飼は、この二人組が北海道岩内町の質屋を狙って強盗を働き大金を手にした事、その時、質屋の家族を殺し家に火を放った事を、それとなく薄々知る。逃亡する二人組と、この時点でも旅の道連れの犬飼であった。

 列車を降りた3人は海岸へと向かう。警察の目を避けて、津軽海峡を舟で渡ろうと言うのである。
 時はちょうど、青函連絡船が台風で転覆事故を起こしたその直後であった。
 遭難者救助のため地元消防団ら大勢が、次々に小舟で沖合に出て行こうとする、その騒動の最中であった。
 犬飼は二人組に言われるままに消防団員を装い、小舟一艘を借りた。

 日が暮れた荒海の沖合での出来事だった。
 二人組が仲間割れの喧嘩を始め、一人が海に落ちる。ついで片割れが犬飼に襲い掛かった。犬飼は身を守った結果その男は海に落ちた。深夜の出来事であった。(これは10年後、犬飼が東舞鶴警察の刑事の尋問に答えた発言であり虚偽かもしれないが、犬飼の真の告白かもしれない)

 結局早朝、犬飼一人が下北半島の海岸に、辛うじてたどり着いた。そうして犬飼はここで初めて、二人組が持っていた大金を確認した。大きな幸せを感じた瞬間であった。この金でこれからの人生が開ける!
 同時に、貧しく過ぎた自分の過去が、心の中で走馬灯のように駆け巡った。何をやってもうまく行かない人生だった。
 そして次に彼はおびえ始めた。自分が強盗殺人放火の犯人と疑われる、二人組を殺したと疑われる。当然であった。彼は乗って来た小舟を壊し、燃やしてしまう。

 食うものも無く、行く宛も無く、山林をさ迷った犬飼は、トロッコのような森林鉄道列車を見て飛び乗った。
 彼が八重に会ったのはこの時だった。
 ひどく汚れた身なりだがいい男の犬飼を見て、八重は食べていたおにぎりを二つ、犬飼にやった。
 そのあと、八重が仲居兼娼婦をする小さな旅館で、八重は犬飼に風呂をすすめ爪を切ってやったりの世話を丁寧にしてやった。
 八重は困った人を前にしての親切心だったのかもしれないが、見知らぬこの男に心が揺れたのは確かであった。
 一方、犬飼は、たぶん、生まれて初めての、真っ直ぐな親切に、やはり心が揺れていたのかもしれない。ふたりは交わった。

 犬飼は、「なんも悪い事した銭や無いから、好きにつこうたらええ」と手に入れた金から、八重にとっては大金の額を、そこにあった新聞紙に包んで、お礼として八重に渡した。そして犬飼は急ぎ旅館を後にした。(このふたりが再会するのは10年後であった)

 八重の家は貧しい上に借金を抱えていた。
 母親は死に、年老いた父親(加藤嘉)は林業で働くが稼ぎは少ない。仕方なく旅館で働く八重であったが、この金で貧しい暮らしから抜け出せる。借金を返済できる、父親の生活の足しにもできるから、自分は東京へ行きたい。東京に出て心機一転、堅気の働きがしたい。そう考えた八重は迷わず、同郷の知り合いを頼りに上京する。
 始め、間口一間の呑み屋に雇われ、次に娼婦となり、やがて芸者となって10年の時が過ぎた。生活は安定し、貯金を貯め、八重はそれなりに満足であった。

 一方、この10年の間に、犬飼多吉は樽見京一郎と名に変え、 京都府北部、日本海に面する舞鶴で会社経営をする実業家になっていた。
 大きな屋敷に住み、大陸引上げの女と結婚し、地元に、また故郷の小さな村に多額の寄付をする篤志家としても名をはせていた。

 ある日、八重はふと見た新聞記事の顔写真に、釘付けになった。犬飼さんだ!女の直感であった。記事には樽見京一郎の多額の寄付のことを礼賛していた。
 八重は居ても立っても居られない、住所が掲載されているその記事の切り抜きを持って、その日に舞鶴へ向かった。八重はただ犬飼に会って一言、10年前の礼を言いたかったのである。

2-0_2017062915392876c.jpg しかし八重を前にして、恰幅のいい樽見京一郎は、何の事やらと知らぬ存ぜぬを押し通そうとする。だが、間近に見る男は犬塚である。八重は懸命に話しかけた。ついに犬塚は白状する、そして犬塚の心がまたしても大きく揺れ、八重の首を絞めてしまう。
 そのあと犬塚は八重に茶を出した書生も殺し、深夜、二人の死体を心中に見せかけ海に投げた。

 八重には、この10年間ずっと後生大事にしていた物があった。それは、親切のお礼だと犬塚が言って、札束を新聞紙に包んだ、その古新聞紙と、犬塚の爪を切った時のその爪であった。(この古新聞の一面記事は青函連絡船転覆事故)
 八重は、犬塚が津軽海峡を渡って来た事も、二人組の大金を得ていた事も何も知らなかった。
 八重が知っているのは、弓坂という刑事が八重を訪ねて来て、「見知らぬ大男を見なかったか」と聞かれ、嘘をついた事だけだった。

 東舞鶴警察の刑事たち(高倉健ほか)が動き出す。
 調べが進むうちに樽見の犯行という線が濃厚になる。八重の遺体から例の多額寄付の新聞記事切り抜きが発見されたのだ。さらに見つかったのは、彼女が持っていた青函連絡船転覆事故を報じる古新聞。
 刑事たちは、樽見と八重の関係を探りはじめる。

 八重の父親が娘の遺体を引き取りに来た時、東舞鶴警察は、10年前に函館警察の刑事が八重を捜していたことを知る。
 そして、函館警察の元刑事弓坂(伴淳三郎)が呼び出される。 
 10年前、弓坂は北海道岩内町の質屋強盗殺人放火事件を追っていた。加えて青函連絡船転覆事故による遭難水死の遺体のうち、身元不明の2体が、網走刑務所を出所した二人組である事までは突きとめていた。そして、この二人の死体の額には、ともに妙な打撲の傷があった。小舟のオールによるものか。
 さらには当時、小舟を借りに来た男がその舟を燃やしたであろう灰も確認し、男が下北半島にたどり着いた事は明らかである事も突きとめていた。
 加えて東舞鶴警察は、10年目の宿帳から樽見の筆跡を確認した。
 ついに、樽見京一郎が東舞鶴警察に呼び出された。さて、このあと結末はいかに!!


監督:内田吐夢|1964年|182分|
原作:水上勉|脚色:鈴木尚之|撮影:仲沢半次郎|
出演:犬飼多吉/樽見京一郎(三國連太郎)|杉戸八重(左幸子)|樽見の妻・敏子(風見章子)|八重の父・長左衛門(加藤嘉)|函館警察の刑事・弓坂吉太郎(伴淳三郎)|弓坂の妻・織江(進藤幸)|網走刑務所を出所した二人組の一人・沼田八郎(最上逸馬)|網走刑務所を出所した二人組の一人・木島忠吉(安藤三男)|戸波刑事(岡野耕作)|佐藤刑事(菅原正)|岩内署長(志摩栄)|朝日館主人(曽根秀介)|朝日館女中(牧野内とみ子)|札幌の警部補(北山達也)|和尚(山本麟一)|漁師辰次(大久保正信)|下北の漁師(矢野昭)|下北の巡査(西村淳二)|巫子(遠藤慎子)|大湊の巡査(田村錦人)|富貴屋のおかみ(荒木玉枝)|煙草屋のおかみ(河村久子)|記者A(室田日出男)|池袋の警官(久保一)|警視庁の係官(北峰有二)|唐木刑事(鈴木昭夫)|堀口刑事(関山耕司)|嘱託医(斎藤三男)|味村時雄(高倉健)|ほか
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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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