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一夜一話

一夜一話の “今日はロックのライブだよ”  オールマン・ブラザーズ・バンド

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 今日選んだのは、オールマン・ブラザーズ・バンドの1971年のライブアルバム、「フィルモア・イースト・ライヴ」(原題:At Fillmore East)。
 なかでも、アルバム1曲目の「Statesboro Blues」を聴いとくれ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dWy3Q30Cn2A

 この曲、当時から聴いてるが、やはりガツンと来るこの、わくわく感・爽快感が抜群。
 のびのび縦横無尽のスライドギター、ガッツあるボーカル、よろし。
 もし、内にモヤモヤしたのを抱えてるなら、吹き飛ばしてくれる。
 とにかくライブコンサートの臨場感が満喫できるアルバムです。

 この曲のライブ録音は、例えば「American University 12/13/70」や「Live at the Atlanta International Pop Festival」(1970)なんかでも聴けるが、出来は「フィルモア・イースト・ライヴ」の方に軍配は上がる。
 でも、ライブにしちゃ演奏がちょっとまとまりすぎるかな、と思う向きには、この2枚がいいかも。

 「フィルモア・イースト・ライヴ」には7曲収録されている。
 試聴は下記からできます。
 https://www.bol.com/nl/p/the-allman-brothers-band-at-fillmore-east/1000004000061065/
 元気あるブルース、ムーディーなブルースから、ちょいと浮遊感ある曲まで曲想は豊か。
 デュアン・オールマンのスライドギターが表看板だが、グレッグ・オールマンのオルガンが持ち歌の多彩さを作り出している。


「The Allman Brothers at Fillmore East」
1. Statesboro Blues| 2. Done Somebody Wrong| 3. Storm Monday| 4. You Don't Love Me| 5. Hot 'Lanta| 6. In Memory Of Elizabeth Reed| 7. Whipping Post|

これまでに掲載したポピュラー音楽の記事は、こちらから
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映画「幸福(しあわせ)」   監督:アニエス・ヴァルダ

上2










 夫婦の幸せ、我が子がいる幸せ、そして、めぐりあわせが良い幸せを描く映画です。
 
 万が一、不幸に見舞われても、その悲しみの深みに沈みこまぬうちに、新たな幸せが向こうからやって来るという運の人がいる。
 言い換えれば、悲痛に生きる人がいる一方で、楽しくうまく生きる人がいる、そんな人の明るい幸せを描いていきます。
 あわせて、相手の幸せを壊さない寛大な心の持ちようが話をつなぎます。

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 フランソワとテレーズの若夫婦には可愛い子がふたりいる。
 町の木工所に務めるフランソワ、自宅でドレス縫製の注文を受けるテレーズ。
 豊かではないが何の不自由もない、絵に描いたような、幸せな家庭。

2-0_20180715142010a40.jpg


 そんななのに、フランソワはエミリーと出会い、この2人は一瞬にして互いに一目惚れ、デートを重ねる。
 この愛人エミリーを前にしてフランソワは、愛妻テレーズとの幸せを語り、エミリーはそれを恨まず離婚してとも言わず、フランソワの家庭の今の幸せを十分承知している。



3-0_20180715142348044.jpg そんなある日、フランソワとテレーズは我が子を連れて、大きな池のある緑地にピクニックに出かけた。
 そこでフランソワは、愛人の事を打ち明けた。
 フランソワは妻の反撃を身構えたが、意外にも、「あなたが幸せならそれでいい」と、テレーズは言った。安心した“幸せフランソワ”は、妻の膝枕でちょっと昼寝をした。
 しばらくして目覚めたフランソワは妻の姿がないのを知る。子たちを連れて緑地のあちこちを探すが妻を見つけられない。

 そして池から妻の水死体が上がる。自殺だろうか、映画は池の水面に垂れ下がる木の枝にしがみつこうとする溺れるテレーズの映像を一瞬みせる。事故かもしれない。

 葬儀が終り、フランソワは残された幼い娘・息子との寂しい生活が始まる。
 しかし、親戚がこの父子を温かく見守り助けてくれる。

 そんな折、フランソワは子供を連れてのピクニックに、エミリーを誘った。
 そしていつしかエミリーは、フランソワの家の、一つ屋根の下で妻として母として暮らし始めるのであった。

 この映画は、まるで何事もなかったかのように「幸福」を享受する“幸せフランソワ”についての、寓話なのかもしれない。

オリジナルタイトル:Le Bonheur
監督・脚本・台詞:アニエス・ヴァルダ|フランス|1964年|80分|
撮影:ジャン・ラビエ、クロード・ボーソレイユ|挿入音楽作曲:モーツァルト|
出演:フランソワ(ジャン=クロード・ドルオー)|その妻テレーズ(クレール・ドルオー)|息子ピエロ(オリヴィエ・ドルオー)|娘ジズー(サンドリーヌ・ドルオー)|愛人エミリー(マリー=フランス・ボワイエ)|ポール(ポール・ヴェキアリ)|ほか

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ポピュラー音楽!!  クラシック音楽

1年前・3年前・5年前の7月、一夜一話。(2017年7月・2015年7月・2013年7月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-07-15 Sun 06:00:00
  • 映画
1年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2017年7月 Archive>

写真
「飢餓海峡」
監督:内田吐夢
三國連太郎,伴淳三郎,左幸子
写真
「プープーの物語」
監督:渡邉謙作
上原さくら、松尾れい子
写真
「ジヌよさらば かむろば村へ」
監督:松尾スズキ
松田龍平,阿部サダヲ,松たか子
写真
「故郷」
監督:山田洋次
倍賞千恵子,井川比佐志,笠智衆

写真
「フローズン・リバー」
監督:コートニー・ハント
アメリカ
写真
「チャップリンからの贈りもの」
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
フランス
写真
「アデル、ブルーは熱い色」
監督:アブデラティフ・ケシシュ
フランス
写真
「初恋のアルバム 人魚姫のいた島」
監督:パク・フンシク
韓国

写真
CD紹介
“今日はスタンダード・ナンバー
の名曲だよ“ 小野リサ
写真
CD紹介
“今日はジャズピアノトリオだよ“
ユリ・ケイン
写真
CD紹介
“今日はシカゴ・ブルースだよ”
ココ・テイラー



3年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2015年7月 Archive)

写真
「心中天網島」
監督:篠田正浩
岩下志麻、中村吉右衛門
写真
「クレージーの大爆発」
監督:古澤憲吾
植木等、ハナ肇、谷啓
写真
「百円の恋」
監督:武正晴
安藤サクラ
写真
「ジ、エクストリーム、
        スキヤキ」
監督:前田司郎
写真
岸部一徳の出演映画
教祖誕生、Beautiful Sunday
いつか読書する日、他
写真
「8 1/2」
監督:フェデリコ・
     フェリーニ
写真
「キャデラック・レコード
音楽でアメリカを変えた人々
         の物語」
写真
フランス映画、1960年代。
      いい映画14本。
小さな兵隊、ラ・ジュテ、他
写真
「ドイツ零年」
監督:ロベルト・
     ロッセリーニ
写真
「宇宙人ポール」
監督:グレッグ・モットーラ
アメリカ
写真
最近読んだ本、3冊
写真
福島 高湯温泉に行ってきた


5年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2013年7月 Archive)

写真
「珍品堂主人」
監督:豊田四郎
淡島千景、森繁久彌
写真
「兄貴の恋人」
監督:森谷司郎
内藤洋子、酒井和歌子
写真
「ロボジー」
監督:矢口史靖
ミッキー・カーチス
写真
「狐と狸」
監督:千葉泰樹
加東大介、小林桂樹ほか
写真
「大阪ストーリー」
大阪の在日韓国人一家の
ドキュメンタリー映画
写真
「乙女ごころ三人姉妹」
監督:成瀬巳喜男
細川ちか子、堤真佐子
写真
「あの夏、いちばん
       静かな海」

監督:北野武
写真
「ツレがうつになりまして」
監督:佐々部清
宮崎あおい、堺雅人
写真
「事件記者」
監督:山崎徳次郎
シリーズ映画10本の第一作
写真
映画ピックアップ
「女が、自分の道を歩む時」
邦画/洋画18本
写真
「マーサの幸せレシピ」
監督:S・ネットルベック
ドイツ
写真
「夜霧の恋人たち」
監督:F・トリュフォー
フランス
写真
「スタンリーのお弁当箱」
監督:アモール・グプテ
インド
写真
「愛おしき隣人」
監督:ロイ・アンダーソン
スウェーデン

一夜一話の “今日はネオ・クラシック・ソウルだよ”  レデシー (Ledisi)

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 レデシーの1stアルバム(だと思う)
 すごくかっこいいのです。アルバムタイトルは「Soulsinger」(2001年)。
 ネオ・クラシック・ソウルというまわりくどい売り文句ですが、21世紀のソウルサウンドだよ!
 
 バックはドラムとベースにキーボードにギターに女性バックコーラス。
 曲によってはサックスが入る。
 まずは聴いてみて。(曲は「Soulsinger」)
 https://www.youtube.com/watch?v=9H1DB-v6gtU
 どうです、キビキビした歌声がいいでしょ。
 続けて聴けるのが、「Get Outta My Kitchen」、「Take Time」、「You Are My Friend」。(ただし「Soulsinger」以外は、URLクリックのたびに流れる曲が変わります、2nd以降の他のアルバム曲も流れるので要注意。)

 のちのレデシーと比べると、本アルバムでは声が若いですが、これがサラッとしていて、初々しくていい。ソウル的発声がまだまだとも言えるけど、これがいい。
 それと、ベースとドラムのセンスが抜群に良い。ベースはアコースティックベースもやる。(リズムセクションがちゃんと聴こえるワイドレンジな環境で聴いて欲しい)

 そしてキーボードに注目。こいつ、歌伴(歌の伴奏)の才能が最高密度で素晴らしい!
 エレクトリックピアノ(フェンダーローズ)に、押し潰したようなクラビネット・サウンドが、レデシーを支えてます。
 そのプレーは控えめだが、ココっ!というタイミングで短いフレーズが繰り出される。そのうえ、そのフレーズは強弱の抑えが効いていて、その一音が強、これがグッと来るのです。
 またmajor 7thのコードを奏でるフェンダーローズでは、ストリングスサウンドの世界を作り出す。
 女性コーラスのアレンジも巧い。レデシーのボーカルと絶妙に絡んでくる。

 ただ、残念なのは、このアルバムは再発されてないこと。掛け値なしに名盤なのにね。
 なお、4曲目、9曲目は下のリンクから聴けますが、上記のトラックに比べてちょっと劣る。


「Soulsinger」
1. Get Outta My Kitchen| 2. Soulsinger| 3. Take Time|
4. Stop Livin'In Ya Head (https://www.youtube.com/watch?v=yWcR0i1AuSo)|
5. Coffee| 6. You Are My Friend| 7. Hotel| 8. Dreaming Interlude|
9. Free Again (https://www.youtube.com/watch?v=IQs32QoDOQo)|
10. Groove On| 11. I Want'cha Babe| 12. I Want'cha Babe - Interlude| 13. Papa Loved To Love Me| 14. In My Life| 15. My Prayers| 16. Good Lovin'| 17. Snoring|

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映画「我が家は楽し」(1951)  監督:中村登  出演:高峰秀子、笠智衆、山田五十鈴

上2
(左から)次女信子18歳(岸恵子)、長女朋子(高峰秀子)、三女光子、長男和男、
父・植村孝作(笠智衆)、母・なみ子(山田五十鈴)



 日本は、まだ連合国軍占領下(1945-1952)。
 戦後の混乱期をなんとか抜け出し、経済復興の糸口をつかもうとする1951年(昭和26年)のお話。
 人々はみな、一応に貧しかった。

 それでも植村の一家6人は幸せだ。
1_20180706171057b87.jpg 父親の植村孝作(笠智衆)は森永製菓の工場勤務の課長。仕事の出来るほうの人物ではないが実直で人当たりはいい。
 忘れ物の多い父さんだが、その穏やかな性格は一家のムードメーカーであり大黒柱。
 母親のなみ子(山田五十鈴)は良妻賢母、17歳で結婚し今年が結婚25周年。
 子供の病気や修学旅行費用などの出費で家計は赤字、母親はミシン仕事で家計を助けている。
 それでも家族の服も靴も雨傘も新調できずだが、家族はみな明るく我慢している。
 だが、お米が足りない。夕食の一家団らんの時、母親は、夫と子たちにはご飯をすすめ、自分はパンを食べてしのいでいる。(戦後の食糧不足は緩和されつつはあったが・・)
 そして、母親の奥の手は質屋であった。

 子供は4人一男三女。みな親思い、姉弟仲良し。
 次女の信子(岸恵子デビュー作)は18歳、高3で修学旅行目前。(戦時中途絶えていた修学旅行の再開まもなくの頃)
 長男は野球好きな小学生、三女はまだ幼子。
 さて、長女の朋子(高峰秀子)は無職、画家を目指している。
 朋子自身も就職を考え、叔母からも就職をすすめられているが、母親は絵の勉強をしなさいと言う。実は母親は若いころ画家を志していた。その叶わなかった夢を娘に託したい。(そして実際のところ、女性の勤め先はなかなか無い時代)

4_2018070619251916f.jpg 映画はこうして当時の、貧しいながらも、こうあれ、こうあってほしい理想の家族像を描くが、不幸も交える。
 朋子の絵の絵画展落選。朋子の彼氏内田三郎(佐田啓二)の結核による死亡(当時、疾患別死亡者数の順位で、結核は1位か2位と高い)
 父親の勤続25年の、永年勤続報奨金を、表彰の日の帰りにすられる。(ただし子たちへのプレゼントを買った残金だった。三女の玩具のピアノ、次女の旅行バッグ、長男のグローブ、長女へは敬愛する著名画家の画集)

 そして一番の困難は、この一家が住んでいる借家を追い出されることになったこと。(当時、手ごろな借家物件はとても少ない)
 だが、日ごろ行いの良い者は救われる。(のかも知れない)
3_201807061949200ed.jpg 叔母(なみ子の妹)の家に同居を許され一家が引っ越しする前日、一家と手伝いに来ていた叔母が、最後の夕食をとっていた時に、その朗報が届いた。

             

 この植村家は世田谷区か大田区辺りの私鉄沿線に住む、貧しいとはいえ、当時の中流層だろう。(植村家の家の向かいの洋館邸宅のレンガ塀が壊れているのは空襲によるだろうから、東京郊外ではなくて近郊と見た)
 一方、当時の都内の底辺の人々の戦後生活はどうだったろうか?
 それは、今井正監督の「どっこい生きてる」を観るのがいいかもしれない。映画「どっこい生きてる」の記事はこちらからどうぞ。

監督:中村登|1951年|91分|
原案:田中澄江|脚本:柳井隆雄、田中澄江|撮影:厚田雄春|
出演:植村孝作(笠智衆)|その妻なみ子(山田五十鈴)|朋子(高峰秀子)|信子(岸恵子)|和男(岡本克政)|光子(福井和子)|朋子の彼氏・内田三郎(佐田啓二)|なみ子の妹・福田かよ子(桜むつ子)|洋館邸宅に一人住む金沢老人(高堂国典)|朋子の画家仲間・小泉千代(楠田薫)|朋子が敬愛する大宮画伯(青山杉作)|勤め人で家主の馬場信太郎(増田順二)|その妻・夏子(水上令子)|叔母の紹介で朋子が務めた土建屋の社長(南進一郎)|永年表彰する森永製菓の社長(奈良真養)|ほか

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ポピュラー音楽!!  クラシック音楽





映画「ケンとカズ」  監督:小路紘史

上
ケン(左)とカズ。


01-_20180701130306c6d.jpg ケンとカズの友情を描く、リアルで硬派な映画。
 べたべたした仲間付き合いではない2人は、いつも互いに、最低限の事しか言わない。

 2人は町工場のしがない自動車修理工だ。
 そんな日常の裏で、通りの陰で待つ男達に、2人は覚せい剤を売りに行く。
 ケン(カトウシンスケ)の先輩・藤堂は小さな組の組長で、この藤堂の誘いでケンはいつしか覚せい剤を売るようになった。

 カズ(毎熊克哉)はケンより、切れやすい。
 ケンの誘いでカズはここで修理工になったが、時折、工場長の胸ぐらつかんで脅すほどの剣幕。
 覚せい剤の客がカズに、カズの気に障ることを言おうものなら、客はぼこぼこにされる。やりすぎだと言ってそれを止めるのがケン。
 ケンとカズが、藤堂の島をうろつくヤクザを襲撃する時も、カズは抑えがきかない。

2-0_201807011304265b4.jpg 今じゃ、覚せい剤商売に付いちゃ、カズの方が主導権を握っている。(カズはもはや修理工の仕事に興味がない)
 カズは考える。藤堂との商売じゃ、せこせこ働いてもタカが知れてる。(藤堂に対して売上げ金をごまかしているようだ)
 カズは一歩踏み込む。極秘に、藤堂と争う、藤堂より大きな組から覚せい剤を仕入れようとする。

 ケンはそんなカズの行動に一応は付き合うものの、「やりすぎだ、俺はやらない、ひとりでやれ」とケンはカズに言う。
 カズは本気だ。互いに、いつもの口数の少なさが、沈黙に変わる。
 裏の世界は狭い。藤堂も敵対組も、カズとケンの行動を見ている。

 ある日、2人は殴り合いになる、口より先に手が出る。殴り殴ったあと、また互いに無口になり、ケンはその場から去って行った。


3-0_20180701130954a56.jpg ケンは早紀(飯島珠奈)と住んでいる。早紀は妊娠している。
 ケンの様子の変化を敏感に察した早紀は、我が子を思い心配だ。
 そして、ケンがカズについて行けなくなったのは、ケンが家庭を思うようになったからだ。

 カズは母親(神保明子)と住んでいる。
 その昔、母親は、幼いカズを虐待し続けた。
 しかし、「カズ、お前、マザコンだろ」そうケンは言った。図星だった。カズは母親をばばあと罵るが、心の底ではマザコンらしい。
 母親は育児放棄(ネグレクト)ではなかった。
 幼いカズを虐待したあと、母親はいつもカズを抱きしめ、私が悪かったと泣く日々だった。
 その母親が今じゃ認知症の症状。ばばあと罵るカズに、母親を施設に入れる金は無い。

 そしてその日、カズは藤堂に呼び出される。人気のない高架下。カズは既に痛めつけられている。
 追って、ケンも高架下に来た。やはり呼び出されたんだろう。そしてラストの見せ場・・・。

             

 修理工場には、ケン、カズの下に見習い工のテル(藤原季節)がいる。
 テルはケン、カズのあとについていくが、そのうち藤堂の息がかかる。

 このテルと、カズの母親の2人の役柄が、ドラマに奥行きを作っている。
 ラストの、ある1シーンがいささか冗長なのが残念。でも、辛口のいい映画です。

監督・脚本:小路紘史|2016年|96分|
撮影:山本周平
出演:ケン(カトウシンスケ)|カズ(毎熊克哉)|工場の後輩・テル(藤原季節)|ケンの彼女・早紀(飯島珠奈)|組長の藤堂(髙野春樹)|藤堂の子分の田上(江原大介)|カズの母親(神保明子)|ほか

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2年前・4年前・6年前の6月、一夜一話。(2016年6月・2014年6月・2012年6月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-06-29 Fri 06:00:00
  • 映画
2年前の6月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2016年6月 Archive)

写真
「煉瓦女工」
監督:千葉泰樹
矢口陽子、三島雅夫
写真
「喜劇 女は度胸」
監督:森崎東
倍賞美津子,沖山秀子,渥美清
写真
「贅沢な骨」
監督:行定勲
麻生久美子、つぐみ
写真
「貸間あり」
監督:川島雄三
フランキー堺、淡島千景
写真
「亀は意外と速く泳ぐ」
監督:三木聡
上野樹里  
写真
<あ行> の邦画
これまでに記事にした邦画から。
2016.6.14現在

写真
「ボンボン」
監督:カルロス・ソリン
アルゼンチン
写真
「のるかそるか」
監督:ジョー・ピトカ
アメリカ
写真
「ママと娼婦」
監督:ジャン・ユスターシュ
フランス
写真
「ハッピー・クリスマス」
監督:ジョー・スワンバーグ
アメリカ

写真
「映画の特集の特集
テーマに沿って、一夜一話の中から厳選しました。



4年前の6月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年6月 Archive)

写真
「こだまは呼んでいる」
監督:本多猪四郎
池部良、雪村いづみ
写真
「孤独なツバメたち
デカセギの子どもに生まれて」

ドキュメンタリー映画
写真
「BU・SU」
監督:市川準
富田靖子
写真
「雨月物語」
監督:溝口健二
京マチ子,田中絹代,森雅之
写真
「地獄」
監督:中川信夫
天知茂、沼田曜一 .
写真
「凶気の桜」
監督:薗田賢次
窪塚洋介、RIKIYA

写真
「罪の手ざわり」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
写真
「闇のあとの光」
監督:カルロス・レイガダス
メキシコ
写真
「新装開店」
監督:キム・ソンホン
韓国
写真
「時計じかけのオレンジ」
監督:スタンリー・キューブリック
アメリカ
写真
「ハーダー・ゼイ・カム」
監督:ペリー・ヘンゼル
ジミー・クリフ|ジャマイカ.
写真
「レイチェルの結婚」
監督:ジョナサン・デミ
アメリカ



6年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2012年5月 Archive>

写真
「ガス人間第一号」
監督:本多猪四郎
八千草薫
写真
「東京物語」
監督:小津安二郎
原節子,笠智衆,東山千栄子
写真
「ゴーヤーちゃんぷるー」
監督:松島哲也
多部未華子、武田航平
写真
「祇園の姉妹」
監督:溝口健二
山田五十鈴、梅村蓉子
写真
「今宵ひと夜を」
監督:千葉泰樹
八千草薫、三浦光子
写真
「海ほおずき The Breath」
監督:林海象
唐十郎、原田芳雄

写真
「アニー・ホール」
監督:ウディ・アレン
アメリカ
写真
「PARIS (パリ)」
監督:セドリック・クラピッシュ
フランス
写真
「5時から7時までのクレオ」
監督:アニエス・ヴァルダ
フランス
写真
「中国娘」
監督:グオ・シャオルー
イギリス
写真
「ロードキル」
監督:ブルース・マクドナルド
カナダ
写真
「恋する惑星」
監督:ウォン・カーウァイ
香港
写真
「ボルベール<帰郷>」
監督:ペドロ・アルモドバル
スペイン
写真
「レポマン」
監督:アレックス・コックス
アメリカ


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一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術

映画「合葬」  監督:小林達夫

上

 将軍徳川慶喜が政権返上を明治天皇に奏上した大政奉還1867年から翌年1868年までのお話。

 世の中の土台が瓦解する幕末に、武士に生まれたからこその、生き方選択の迷路に迷い込んだ、幼なじみの3人の男たちがいた。
 しかし、この先世の中どうなる、という大きな不安が押し迫るさなかでも、武士にも、また武家の女や町人・農民といった人々にも、彼らの日常はそれぞれにあった。もちろん恋もあった。

1-0_20180627112225bd2.jpg 秋津極(柳楽優弥)は彰義隊に入隊するため、砂世(門脇麦)との婚約を一方的に解消した。(秋津は死を覚悟していた)
 砂世は、秋津の幼なじみの福原悌二郎の妹で、砂世は幼いころから秋津に淡い恋心を抱いていたのだった。
 秋津のもう一人の幼なじみ吉森柾之助は、養子先の武家から前触れなく、ていよく追い出される。(養子先の武家の女達は武士の世は終わったと、時代の変わり目を読んでいる)

 吉森に何処へと行くあてはない。秋津はこの迷える吉森を彰義隊に引き入れた。
 その吉森にもうひとつの迷いがあった。それは、茶屋で働く かなという女に恋をどう打ち明けようかという迷い。だが、そのかなは秋津に猛烈に一目惚れしてしまう。
 
 こうして秋津は妻になる女を捨て、吉森は女への思いを抱きながら彰義隊に入隊する。
 この事態におよんで、徳川将軍の身辺警護と江戸の秩序守護を目的とした彰義隊なんて、大政奉還した今、もう意味ないじゃんと思う福原は秋津に、改めて妹との婚約解消を考え直してくれ、いや少なくとも妹にもう一度会ってやってくれ、と頼み込んだ。
 そしてさらには福原は、秋津と吉森の、彰義隊に対する考えを覆そうと、彰義隊の客分となって彼らの宿舎(寺)に出入りするようになった。

 その寺には、森篤之進(オダギリジョー)という、彰義隊の武闘派(抗戦派)に懐疑的な男もいたが、その日、彰義隊と新政府軍との戦争が上野(パンダがいる上野)や谷根千あたりで始まってしまう。
 結局、福原は秋津、吉森と共に戦争に加わるが、福原は戦死。
 (彰義隊は、上野の寛永寺(上野公園)に結集するがほぼ全滅、生き残ったわずかの隊員は散り散りに谷根千あたりに四散。上野戦争)
 農家の小屋に身を隠す、負傷した秋津とそれを見守る吉森。翌朝、秋津はこの小屋で自害。

 福原の妹、砂世は、年上の穏やかな男と結婚した。
 砂世は、夫の前で胸の内を打ち明ける。
 あなたとの縁談の話が持ち上がった時、私は兄にウソをつきました。これから一生悔やむことになるから、一目秋津に会っておきたいと。

2-1_201806271123553c7.jpg でも、私はある夜、秋津と一夜を共にしていました。何処から聴こえる笛の調べに魅了されたらしい秋津が、突然に我が家の縁側に現れたのです。
 これを聞く夫は穏やかにほほ笑むばかりでありました。

 いわゆる歴史小説で描かれる幕末ではありませんね。
 話の底にある、ある種の「静寂さ」を感じ得れば、よりいい映画に思えるかもしれません。 
 何かで読んだ記憶ですが、谷根千あたりの武家屋敷の庭に上野戦争で敗れた彰義隊隊員が隠れていたという話を思い出しました。

監督:小林達夫|2015年|87分|
原作:杉浦日向子|脚本:渡辺あや|撮影:渡辺伸二|
出演:秋津極(柳楽優弥)|吉森柾之助(瀬戸康史)|福原悌二郎(岡山天音)|福原砂世(門脇麦)|かな(桜井美南)|森篤之進(オダギリジョー)|ほか

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映画「軽蔑」(1963) 監督:ジャン=リュック・ゴダール

上
イタリアの南、カプリ島にあるプロコシュの別荘にて。
左から、米国人映画プロデューサーのプロコシュ(ジャック・パランス)、通訳兼秘書嬢、カミーユ(ブリジット・バルドー)、その夫・劇作家のポール(ミシェル・ピッコリ)、名映画監督フリッツ・ラング(本人役で出演)。

             

1-0_20180623104949979.jpg ある日突然に妻から軽蔑され始めた夫の話。
 夫は劇作家のポール(ミシェル・ピッコリ)、妻のカミーユ(ブリジット・バルドー)は元タイピスト。

 ポールが劇作家として売れない頃に、ポールはカミーユと出会ったのだろう、貧しいながらも楽しい生活であった。(と思われる)
 その後、劇作家として飯が食えるようになる。何部屋もある高級マンションを買った。
 カミーユ曰く、「ホテル住まいより、ずっと豪華なマンション」に移り住むことができた。
 しかし、マンション購入にあたって一部の支払いは済ませたものの、残り全額支払うためには、荒稼ぎが必要だった。

 そこへ舞い込んだ美味しい話にポールは乗った。
 それは、アメリカ人の映画プロデューサー、プロコシュ(ジャック・パランス)が手掛ける映画「オデュッセイア」の脚本を、一般受けするように手直しする案件。監督フリッツ・ラング(本人役)が書いた脚本が硬く、プロコシュは気に入らない。撮影は一部すでに始まっているにもかかわらず、だ。
 プロコシュに呼び出されて、ポールはカミーユを連れて撮影所へ出向いた。
 そしてポールは撮影所の試写室に入り、テスト撮影を観る。監督が書いた脚本も渡される。
 映画の脚本は初めてだし、プロコシュのワンマン振りもいかがなものかと思ったが、ポールはやると返事した。プロコシュはその場でポールにギャラの小切手を切った。

02-_2018062310510525b.jpg そう、この日から、カミーユのポールに対する態度が一変する。
 そういえば、撮影所でのミーティングが終わってのち、プロコシュが自宅にポール夫妻を誘ったとき、プロコシュは赤いスポーツカーにカミーユだけ乗せようとした。あの時、カミーユは、これでいいの?という視線をポールへ送ったが、ポールはプロコシュに、どうぞ、自分はタクシーで行くと行った。あれがカミーユの気に障ったか・・とポールはそう軽く思っていた。

 そんなことだから、妻から軽蔑され始めたという事にポールはまったく気づかない。
 その後何日経っても、ポールはカミーユの態度が一変したわけがわからない。ポールには、さしたる心当たりがない。カミーユの心模様を探ろうと、カミーユに何度もわけを聞いたが何も言わない、話を逸らす。夫婦の、男と女の、ボタンの掛け違いの果てしない無限ループが続く。

 そして夫婦のそんな事情は、映画プロデューサーのプロコシュの別荘に持ち込まれる。
 結局、ポールはプロコシュからの誘いを辞退し、別荘をひとりあとにする。
 一方、この先タイピストとして働くと言うカミーユは、プロコシュの車に同乗し・・。
 そして結果的に、映画監督フリッツ・ラングは自作の脚本で映画を撮り続ける。


 たぶん、カミーユには、ポールに対する思いに、以前から徐々に変化があったに違いない。
 その身近な変容に気付かなかったポール。妻へのいとおしみ、観察力が何か欠けていたポール。

 映画は、製作当時の西欧映画業界の斜陽と、資金力あるハリウッドとの対比を物語に埋め込んでいる。
 また、男の思う成功と、女の思う幸せも対比してみせているように思う。

オリジナルタイトル:Le mepris
監督:ジャン=リュック・ゴダール|フランス・イタリア|1963年|102分|
原作:アルベルト・モラビア|脚本:ジャン=リュック・ゴダール|撮影:ラウール・クタール|
出演:カミーユ(ブリジット・バルドー)|ポール(ミシェル・ピコリ)|映画プロデューサーのジェレミー・プロコシュ(ジャック・パランス)|通訳のフランチェスカ・ヴァニーニ(ジョルジア・モル)|映画監督、本人役(フリッツ・ラング)|撮影監督(ラウール・クタール)|ラングの助監督(ジャン=リュック・ゴダール)|

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映画「北京好日」  監督:ニン・イン

上

 現在進行形の(1992年当時の)、北京の街中の人々をドキュメンタリー風に活写する映画。
 登場人物はみな、京劇が三度の飯より好きなおじいちゃん達。
 塀沿いの通りの傍らに集まって、京胡(胡弓のような擦弦楽器)や太鼓、月琴など楽器を奏でる人達、代わるがわる自慢の喉を聴かせる人達。
 文革の世を生きてきたじいちゃん達はみな様々な労働者だったが、今は隠居の身。時間だけはある。

2-0_20180621140001726.png こんな一群に登場するのが主人公の韓(ハン)じいさん65歳。
 韓さんは京劇の劇場で長年、守衛をしてきた。
 とは言っても守衛・宿直業務以外に、劇場の事務方雑用や、出番前の(端役の)役者へ注意をしたり、舞台で虎のぬいぐるみに入ることもあった。つまり劇場と劇団の、陰ながらではあるが世話役といった立ち位置。そのすべてが韓さんの生きがいであった。
 そして定年。本人はまだまだ仕事を続けたいが、代わりの人も既に採用された。すなおに辞めるしかない。

 韓さんは独り住まい。連れ合いは先に逝った。否応なく定年後の日々が始まったが、さて、することがない。
 毎日出勤時間に家を出て、街をあてもなくうろつく。そしてある日、京劇好きな一群に出会った。

 韓さん、正直なところ、京劇の真似をして楽しむ事にさほど興味がわかない、それよりも、京劇好きな男たちの一群に対して世話役を名乗り出たい。これができれば、韓さんの生きがいの継続になる。
 韓さんは洋風ダンス教室をやっている会館を偶然見つけ、役所に京劇教室の申請をし許可が降りる。

 京劇好きのじいちゃん達は、韓さんのおかげで、寒風吹きすさぶ寒空の下で集まることもなくなると、みな大喜び。
 韓さんは韓さんで、歌う順序や運営ルールを決めたり、茶を用意したりと楽しそう。

 街の京劇コンクールにも出た。おじいちゃん達の数も増え、仲も深まり、そして一年が経とうとしていた。
 そんなある日に、歌う順序にルール無視で割り込むといった些細なことから、その場にいたおじいちゃん達も巻き込んで、大人げない喧嘩沙汰になる。韓さんは世話役を辞めると出ていった。
 その夜、会館ではおじいちゃん達が集まっていた。これまでやって来れたのは韓さんのおかげだ、喧嘩をはじめたお前は韓さんに詫びを入れろなどと話している。これを外から盗み聞きしている韓さんの表情は悲しそう。

 会館の利用は、もとから一年限りであった。みな、決まりが悪い別れとなってしまった。
 ラストシーン。塀沿いの通りに以前のように集まって、おじいちゃん達数人が京劇の演奏と歌を楽しんでいる。
 韓さんが通りの角からそおっと、その様子をうかがっている。そして、意を決した韓さんが皆の方へ向かって歩みだす。

 地味な映画ですが、こういうの好きです。
 出演者の大かたは素人だそうです。おじいちゃん仲間の中で唯一の若者(練炭町工場の雇われ役)は、ダウン症の障害のある方ですが、この人の存在が映画になごみを添えています。
 それと、製作当時の1992年から26年経った中国の急速な経済発展にあらためて驚く。
 この映画に登場したじいさん達も、きっとあの世で目を丸くしているだろう。

オリジナルタイトル:For Fun 找楽
監督:ニン・イン|中国、香港|1992年|93分|
原作:チェン・チェンコン|脚本: ニン・イン、ニン・タイ|撮影:シアオ・フォン、ウー・テイー、ヤン・シアオウェン|
出演:韓(ハン)じいさん:ホワン・ツォンルオ|喬万有(チアオ・ワンヨウ):ホワン・ウェンチェ|何明(ハー・ミン):何明|楊(ヤン)先生:ヤン・ヨウタン|董(トン)じいさん:ハン・シャンシュイ|王(ワン)じいさん:ワン・シューマン|

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1年前・3年前・5年前の6月、一夜一話。(2017年6月・2015年6月・2013年6月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-06-16 Sat 06:00:00
  • 映画
1年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2017年6月 Archive>

写真
「夜叉」
監督:降旗康男
高倉健、田中裕子、いしだあゆみ

写真
「紅の翼」
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
アメリカ
写真
「ミニー&モスコウィッツ」
監督:ジョン・カサヴェテス
アメリカ
写真
「フェリーニのアマルコルド」
監督:フェデリコ・フェリーニ
イタリア
写真
「ブーベの恋人」
監督:ルイジ・コメンチーニ
イタリア
写真
「ウィスキー」
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
ウルグアイ

写真
CD紹介
“今日はシンガーソングライターだよ“
リッキー・リー・ジョーンズ
写真
親戚の集まりで京都へ行ってきた。
そのついでに、ちょっと京都観光。
錦市場近くの銭湯がいい!
写真
京都へ行ったついでに、琵琶湖東岸の近江八幡へ行った。
水郷めぐり、秀吉の甥・豊臣秀次の八幡山城跡、近江商人の城下町、
そして織田信長の安土城跡。


3年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2015年6月 Archive)

写真
「祭りの準備」
監督:黒木和雄
江藤潤、原田芳雄
写真
「隣の八重ちゃん」
監督:島津保次郎
逢初夢子
写真
「夫婦フーフー日記」
監督:前田弘二
永作博美、佐々木蔵之介
写真
「浮草」
監督:小津安二郎
若尾文子,川口浩,京マチ子
写真
「喜劇 駅前温泉」
監督:久松静児
森繁久彌,フランキー堺,伴淳三郎
写真
「沖縄 うりずんの雨」
監督:ジャン・ユンカーマン
ドキュメンタリー映画
写真
「きみはいい子」
監督:呉美保
高良健吾、尾野真千子

写真
「みなさん、さようなら」
監督:ドゥニ・アルカン
カナダ
写真
「バーバー」
監督:ジョエル・コーエン
アメリカ
写真
「台湾の暇人」
監督:アーサー・チュー
台湾
写真
これまでに一夜一話で取りあげた
アジアの映画です。
2017.01.14現在
写真
「天使」・「海辺にて」
監督:パトリック・ボカノウスキー
フランス
写真
「モスクワ・天使のいない夜」
監督:セルゲイ・ボドロフ
ロシア


5年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2013年6月 Archive)

写真
「大地の子守歌」
監督:増村保造
原田美枝子
写真
「愛怨峡」
監督:溝口健二
山路ふみ子、清水将夫
写真
「下町(ダウンタウン)」
監督:千葉泰樹
山田五十鈴、三船敏郎
写真
「ハッピーフライト」
監督:矢口史靖
綾瀬はるか
写真
「古都」
監督:中村登
岩下志麻(一人二役)

写真
「理髪店の娘」
監督:シャーロット・リム
マレーシア
写真
「新世界の夜明け」・「The Collector」・「Bunohan」
「シネ・マレーシア2013
  マレーシア映画の現在」
写真
「 闇からの声なき声」
筋痛性脳脊髄炎 (ME)という
難病のドキュメンタリー映画
写真
「出発」
監督:イエジー・スコリモフスキ
ベルギー
写真
「マイ・ブルーベリー・ナイツ」
監督:ウォン・カーウァイ
香港
写真
「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」
監督:トーマス・ヤーン
ドイツ
写真
「メイク・イット・ファンキー」
ニューオリンズの音楽ドキュメンタリー映画
アメリカ

写真
映画ピックアップ
「人生なんて、そうそう
  うまく行かないワケよ。」


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映画「モンディアリート」  監督:ニコラ・バディモフ

上
少年アブドゥを背負うアーメッドと、ルイザ。

 ストーリーはハッピーエンドで終わる心温まる話です。
 この映画、ユーモアがあってコミカルな映画ですが、これを喜劇映画と言ってしまうと、喜劇俳優やお笑い芸人が出てくる映画だと、誤解を生じるかもしれません。
 一方、話は、フランスの児童養護施設にいたサッカー大好きなアラブ人少年が、フランス人の里親のもとで生活していましたが、マルセイユで行われるワールドカップ・フランス大会に、何とかして行きたい!と、無一文で家出したことから始まります。(里親とは、うまくいっていなかったようです)
 よって、話の筋の方はまじめ(シリアス)なお話です。でもユーモアあるコミカルな映画です。甘辛と言いますか、塩あんの味。

0_20180614213714765.jpg アラブ人少年アブドゥは、アーメッドに出会います。アーメッドもアラブ人です。
 アーメッドは、少年がブラジルチームの大ファンであること、マルセイユのワールドカップ・フランス大会を是非観戦したいことを知ります。
 これが、子供好きでもないアーメッドが、少年アブドゥを連れてマルセイユへ行こうとしたきっかけでした。

 そして実は、アーメッドはマルセイユの地元チームのサッカー選手でした。黄金の腕と呼ばれた名ゴールキーパーでした。
 しかし、あることでチームオーナーの怒りを買い、リンチされチームから追い出されました。
 その後、10年間、アーメッドは母親や兄弟たちがいるマルセイユを離れ今日まで過ごしてきました。しかし、もうオーナーに対する罪滅ぼしはこの10年で終えた、終えたい、帰りたいと思い始めていた矢先に、アブドゥに出会ったのでした。
 だから、アーメッドが、少年アブドゥを連れてマルセイユへ行こうとした、本当のわけはアーメッドの方にありました。

 そしてマルセイユへの珍道中が始まります。
 道中いろんなことがありますが、アーメッドと少年アブドゥにとって、ルイザという若い女性に会ったっことは幸いでした。
 そしてお金のない三人は、アブドゥのためにワールドカップ・フランス大会のチケットを買わなければならないために四苦八苦するのですがうまくいかない。
 そんなうちにマルセイユに着いてしまう。
 そこで、アーメッドは決心し彼の古巣、あのチームオーナーに会いに行くのでした。
 結末は、オーナーからチケットを奪いアブドゥは観戦できました。そしてアーメッドとルイザは結ばれます。

 たわい無い話と言ってしまえばそれまでですが、いい映画です。
 ただし残念ながら今ではもう観られない映画です。(昔、NHKBSで放映された時に録画したのを観て書いています)

 はじめに、まじめ(シリアス)なお話ですが、ユーモアあるコミカルな映画です。甘辛と言いますか、塩あんの味、と言いました。
 シリアスな映画だと思いこんで、その視点だけから本作を観てしまうと、ユーモアあるシーンに、とても違和感を感じてしまうかも知れません。本作に限らず、こういった甘辛な映画を観る時には、柔軟な読解力で楽しみましょう。

オリジナルタイトル:MONDIALITO|CARTE D'IDENTITE|
監督:ニコラ・バディモフ|スイス/フランス|2000年|90分|
脚本: ニコラ・バディモフ、ムサ・マースクリ|撮影: トマ・ハードマイヤー|
出演: ムサ・マースクリ(アーメッド、別名ジョルジュ|エマ・ドゥ・コーヌ(ルイザ)|アントワーヌ・モリーニ(アブドゥ)|アントン・クズネゾフ(ロシア人行商・オレグ)

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映画「クラッシュ」  監督:ポール・ハギス

上

 白人と黒人の二項対立だけでなく、アメリカの様々な人種間のギクシャクを群像劇で観せる映画。
 ストーリーは、数多くのエピソードがパッチワークされ、それぞれに関連を持たせている。
 そこには、拳銃による殺人が3件、交通事故が3件、ハッピーエンドが2件、盛り込まれています。
 貧富による分断、車社会、銃社会のアメリカも映し出します。
 2時間足らずのこの映画で、いわばアメリカの縮図を観せようとするのだから大変。話は複雑を極める。またメッセージは細部に宿っています。

 そんな複雑なエピソード群の中から、4つの話を取り上げてみます。(エピソード間の関連性は、あとで述べるとしよう)
1_20180609143517838.jpg【エピソード1】・・リック地方検事とその妻ジーンの白人夫妻
 夫妻は、映画に出てくる登場人物中、一番の上流階級の人。
1-2_201806091447463f5.jpg 検事は黒人層からの支持をとても意識している。上から目線の妻は、いつもツンツンしていて、家政婦がいつかない。
 そんな夫婦がある日、街中で黒人の二人組に拳銃で脅され、目の前で自家用車を強奪される。
 車を強奪された事は、検事のメンツにかかわる事。それも黒人にだ、心境複雑。
 妻は恐怖心から自宅の玄関ドアのカギを丈夫なものに取り換えようとするが、修理に来たカギ屋のダニエルが黒人だったために、このカギ屋が、車を盗んだ二人組に合いカギを渡すのではと猜疑心に苛まれる。それを聞いていたカギ屋はスペアキーのすべてを夫人の前に置いて帰った。


2_20180609143644157.jpg【エピソード2】・・キャメロンとその妻クリスティンの黒人夫妻
 夫妻は、映画に出てくる登場人物中、二番目に上流の人。
 夫はTVディレクター。TV業界で黒人が生き抜くには、周りの白人たちとそれなりに同調しなければならないらしい。夫は周囲に目配りしながら穏やかに実を取る男。
 妻はそれを理解はするが、心の底では白人にオベッカ使ってと思っているようだ。
2-2_201806091451514e8.jpg そんな夫妻がある日、夫が何かの賞を受賞した夜、車で帰宅のところ、街中で白人のライアン巡査が乗るパトカーに停車させられる。
 夫妻が乗る車は、検事の盗まれた車と同車種、同じ色。
 パトカーに同乗する若い白人巡査ハンセンは、車のナンバーが違いますよと注意するが、ライアン巡査は停車させた。
 夫は妻に車外に出るなと制したが、妻は巡査の理由なき行動に怒りを抑え切れないで車外に出る。
 ライアン巡査は出てきた妻の身体を、身体検査よろしく、まさぐり始める。この屈辱に耐えられない妻は夫の方を見るが結局、夫は巡査に歯向かわなかった。
 それから、この夫婦の仲は崩れ始めた。


3-3_20180609143956208.jpg【エピソード3】・・ファハドとその娘のペルシャ人父娘、カギ屋のダニエルとその幼い娘の黒人の父娘
 ファハド父娘は中間層の下位、ダニエル父娘は下層の上位といった人たち。
3-6.jpg ペルシャ人店主のファハドは、店のドアを修理したくて、カギ屋のダニエルを呼んでカギを交換させたが、カギ屋は、ドアの扉も替えないと防犯にならないと言う。がしかし、ファハドは承知しない。互いに言い争った。
 翌日、誰かによって店はメチャメチャに荒らされた。店はファハドが長年にわたり丹精込めてきた店である。怒り心頭のファハドはダニエルの仕業と決めつけ、ダニエルの自宅前で拳銃を忍ばせ待ち伏せする。
 帰宅したダニエルに、ファハドは拳銃を突きつけ撃とうとしたその時、ダニエルにその娘が飛びついた。
 結果、ファハドはその幼い女の子の背中を至近距離で撃ってしまった。しかし、娘は怪我もなく生きていた。なぜなら空砲であった。
 以前、ファハドが銃砲店で銃弾を購入しようとした時、その店主の白人と揉め、結局、同伴したファハドの娘が、当てずっぽで指し示し買った銃弾が空砲弾だったのが、この奇跡を生んだ。



4_20180609144054954.jpg【エピソード4】・・アンソニーとピーターの黒人二人組
 職に就かず、盗みを働く黒人の男たち。しかしアンソニー曰く、俺たちは黒人からは盗まないと言っている。
 アンソニーとピーターは、【エピソード1】の車の強奪犯だ。
 そしてその夜、ふたりはこの盗んだ車で、前方不注意、アジア系の中年を轢いてしまう。処置に困った二人はある病院の玄関先にこの男を置いて逃げる。ひき逃げだ。



 さてさて、エピソードは相互に関連を持って、ますます広がっていく。
 アンソニーが、停車中の高級車に拳銃を突きつけて乗り込んだが、それは【エピソード2】のTVディレクターの黒人キャメロンの車だった。キャメロンは車を発車させながら、黒人同士2人は揉める。これを外から見ると車は変な運転をするように見える不審車。(かつ【エピソード1】の盗難車と同種同じ色)
 一台のパトカーがこれを追う。【エピソード2】に出てきた若い白人巡査ハンセンが運転するパトカーもあとを追う。追い詰められたキャメロンとアンソニーは銃を構えた巡査に包囲される。
8-0.jpg そこへ割り込んだのが、若い巡査ハンセン。「俺はこのキャメロンを知っている、悪い奴じゃない、大丈夫だ」と言いながら、他の巡査を制し、怒るキャメロンをなだめて、その場は事なきを得た。
 しかしキャメロンはアンソニーの銃を隠し持っていた。一触即発だった。

 一方、キャメロンの妻クリスティンは、夫婦仲が最悪になったことに傷心して精神不安定でいたためだろうか、交通事故で他車と接触し横転、車はひっくり返る。
 だが事態は差し迫る。相手の車からガソリンが漏れ出し、こちらに流れ来る。だが逆さになった車からクリスティンは出られない。シートベルトで宙づりになっている。
 そこへ駆けつけたのが、クリスティンを弄んだ巡査ライアン。初めクリスティンはライアンの救助を拒んだが、車に火が付く。結局彼女はライアンに助けられた。

 そして、若き白人巡査ハンセン。
 疲れての仕事の帰り道、車に乗るハンセンは、夜道でヒッチハイクする1人の黒人青年を拾います。街を出たいと言うその青年は、アンソニーの相棒のピーター。
 車内でのちょっとしたやり取りに、気分を害したハンセンは、降りろとピーターに言う。その時、ピーターがズボンのポケットに手を入れ出そうとしたモノが拳銃かと即断したハンセンは即座に、ピーターを射殺してしまう。そして道端の草むらに置いて逃げてしまった。

 さらには以上に書かなかった男、黒人刑事のグラハム。
 映画冒頭、夜のシーン。グラハムとその妻の乗る車が接触事故を起こす。グラハム刑事が安全運転だったとしたら、相手のアジア系の女が悪いんだろう。この女、やたら悪口雑言、グラハムの妻、ヒスパニック系(メキシコ)の妻に向かって罵っている。
 あとでわかるが、このアジア系の女は夫が緊急入院した病院へ向かう途中。【エピソード4】で、アンソニーとピーターの黒人二人組にひき逃げされた男の妻が、この女。
 そんな騒ぎを横に見て、グラハム刑事は見知った巡査たちに挨拶しながら、道端にいる同僚の刑事に近づいた。「どうした、事件発生か?」「そう、若い黒人の射殺死体だ」。(映画の観客はわかる、これはハンセン巡査が射殺したピーターだ)
 そして死体を確認したグラハム刑事は驚きを押し殺した。その男はグラハム刑事の弟だった。

 最後に言い残したエピソードふたつ。
 グラハム刑事の交通事故の日のその昼、グラハム刑事は【エピソード1】のリック地方検事の息がかかった刑事フラナガンに呼び出される。その呼び出しは、グラハム刑事が担当する事件についてだった。
 担当の事件とは、白人刑事による黒人刑事射殺事件。黒人刑事が乗る車を制しようとした白人刑事は、その黒人刑事から発砲を幾度も受ける。そして白人刑事が撃った一発が黒人刑事の致命傷になった事件。互いに刑事だと知っていたのか?
 翌日、黒人刑事の車から多量の札束が発見される。黒人刑事の汚職事件に発展する。
 これにリック地方検事がストップをかけた。黒人を悪者にしては支持者が減る。汚職の件は握りつぶして、白人刑事に罪を着せるようにしたい。そこでフラナガン刑事がグラハム刑事を呼び出したのだ。グラハムは実直な刑事、フラナガンが言う地方検事の意向を嫌う。だがフラナガンはここで、グラハムの弟ピーターの犯罪歴をほのめかす。ピーターの件を見逃す代わりに、地方検事の意向を飲めという。グラハムは承知した。

 しかし、折角の弟への思いが結果的にはグラハム刑事にとってみじめなことになった。
 まずは、その夜に弟の死体と対面したこと。そして死体の身元確認のために来院したグラハムの母がグラハムに対して示した態度。「お前より私は死んだ弟に寄り添うよ!」
 もとよりグラハムと母との関係は疎遠だった。多忙なグラハムは時々は母の部屋を訪ねたが母は終始無口だった。
 観客は思う。この黒人家庭の母子の間にも、出世した息子との貧富と正義による分断の思いがあることを。

 
 ちなみに、【エピソード4】のアンソニーとピーターの黒人二人組のひとりアンソニーは、ひき逃げしたアジア系男の乗っていたバンを盗むのだが、バンの後部ドアを開けると、アジア系男女難民の一団が閉じ込められていた。
 アンソニーは盗難車を売り買いする男にバンを売ろうとするが、店の男は難民たちだけを高額で買うぞと言われる。しかし、アンソニーはこれを無視して、中華街に車を走らせ、路上で彼らを解放した。(これはとってつけた話だ※)

 私たちはペルシャ人とアラブ人の区別がつくだろうか?
 【エピソード3】でファハドが銃砲店の店員と揉めたのは、店員が彼をアラブ人だと思い毛嫌いしたからだった。
 アンソニーは、ひき逃げした男を、難民の人々を一応に中国人と言う。人を理解することは難しい。
 観ごたえある映画でした。

 ※ライアン巡査は父親思いの息子で父子だけの家ではいい息子。父親の会社では黒人従業員に良い待遇で接していたとのこと。これも付けたり的というかこだわるねぇ。

オリジナルタイトル:Crash
監督:ポール・ハギス|アメリカ|2004年|112分|
原案:ポール・ハギス|脚本:ポール・ハギス、ボビー・モレスコ|撮影監督:マイケル・ミューロー|
出演:地方検事リック(ブレンダン・フレイザー)|その妻ジーン(サンドラ・ブロック)|TVディレクターのキャメロン(テレンス・ハワード)|その妻クリスティン(サンディ・ニュートン)|ライアン巡査(マット・ディロン)|ハンセン巡査(ライアン・フィリップ)|ペルシャ人店主ファハド(ショーン・トーブ)|カギ屋ダニエル(マイケル・ペーニャ)|アンソニー(クリス・“リュダクリス”ブリッジス)|ピーター(ラレンツ・テイル)|グラハム刑事(ドン・チードル)|グラハムの母(ビバリー・トッド)|フラナガン刑事(ウィリアム・フィクナー)|ほか

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映画「日本の悪霊」  監督:黒木和雄

2_201806060938547fd.jpg

 双子のように瓜二つのヤクザと刑事が入れ替わり、終いには同質化して行くお話。
 映画はふたりの登場人物の違いを、徐々に曖昧にしていきます。
 殺伐とした風景のロケ地に、ドキュメンタリー映画風のリアリティを持ち込んだ本作は、今新たな魅力を放っているようにも思えます。
 本作をヤクザ映画だと決めつけず、また、原作は脚本化の素材である位の気持ちで受けて、原作や1960-70年の政治闘争にこだわらずに観ることも一興でしょう。
 
 群馬県のある街での出来事です。地元で古くからあるが弱体化したヤクザ・鬼頭組を、この地に勢力を伸ばす新興勢力の天地組がなきものにしようとしていた。

5_20180606120805fa0.png そんな中、ふたりの男がこの街に現れる。
 そのひとりは、村瀬(佐藤慶)という男。
 村瀬は鬼頭組を傘下に置く組のナンバー2の知的な男で、鬼頭組の偵察に来た。
 鬼頭組は村瀬という大物が助っ人に来てくれると大喜び。

 もうひとりは、落合刑事(佐藤慶・一人二役)。
 県警から派遣されてきた暴力団取り締まりを専任とする刑事だが、県警本部では、いまいちウダツの上がらぬ男であった。
 街に着いた落合刑事は、案の定、鬼頭組から村瀬と間違われる。

 実はその村瀬、この街に過去を持っている。
 そんなことで村瀬は、昔のなじみの女を訪ねるが、女の部屋には先客がいた。落合刑事だ。
 女は落合刑事を村瀬だと思い誘い入れたのだった。

 先客が刑事だと分かった村瀬は、他人とは思えぬ落合刑事に強要した。やくざと刑事、入れ替わろうと。
 落合にとって、これは刑事になりすまして、鬼頭組周辺状況の情報把握もさることながら、実は、この街の過去の真相を探り出そうという思いがあった。
 一方、落合刑事がこれを拒まなかったのは、やくざの世界に以前から魅力を感じていたからであった。
 村瀬は警察署へ、落合刑事は鬼頭組へと潜り込む。そうして、なりすましの男ふたりの、それぞれの物語が街の女たちも交えて、始まる。

 さて、先ほど言った、村瀬はこの街に過去を持っている、の話。
 1955年まで日本共産党は中国共産党の影響を受けていた。例えば農村の地主に対しての武装闘争。(しかし日本共産党は1955年にこの方針の放棄を宣言)
 村瀬の過去とは、若いころ、この群馬の街で仲間とこの闘争に加わり地主を襲い、結果時には村瀬は逃げ来る地主を迎えうち刺し殺し、村瀬はじめ仲間は四散した。
 だがこの事件には謎が残り、ヤクザになった村瀬は今も当事者として、過去の真相を究明したかったのだ。
 かたや、地元警察の署長は、この事件当時からこの事件にかかわっていた。実は謎を作ったのはこの男であった。この署長の一存でこの街でのこの事件は、街の世間体よくうやむやに処理された。
 鬼頭組の組長・鬼頭正之助は、署長の意向で当時、村瀬が犯した殺人の犯人としてムショに入った。当然、見返りは鬼頭組の安泰確保であった。しかし、組長と署長との間に亀裂が生じ始める。

 話が進むうちに、真相はより明らかになっていく。そして、村瀬と落合刑事の意気はいつしか投合していくのであった。

監督:黒木和雄|1970年|96分|ATG|
原作:高橋和巳|脚本:福田善之|撮影:堀田泰寛|音楽:岡林信康 、 早川義夫|
出演:村瀬勝/落合刑事(佐藤慶)|鬼頭正之助(高橋辰夫)|後藤署長(観世栄夫)|川田部長(榎本陽介)|子分甲(蔦森皓祐)|子分乙(深尾諠)|子分丙(鈴木両全)|子分J(土井通肇)|子分戊(倉沢周平)|子分T(坂本長利)|子分A(関口瑛)|県警本部・山口(林昭夫)|天地組・馬場(渡辺文雄)|東(丸茂光紀)|伊三次膳内(成瀬昌彦)|地主襲撃のリーダー(土方巽)|警官(岡村春彦)|パチンコ屋親父(殿山泰司)|少女(高橋美智子)|夏子(堀井永子)|歌手(岡林信康)|鬼頭竜子(奈良あけみ)|

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一夜一話の “今日はソングライターだよ” ボビー・チャールズ

1_20180601140042f5e.jpg

 今日の一枚は、ボビー・チャールズの「BOBBY CHARLES」(1972年) 。
 今も大好きなアルバムです。(CD販売区分では、ロックのジャンルです)
 
 このアルバム、一言でいえば、ソングライターが自作を歌いました的なもので、実は彼はいわゆるシンガーソングライターを売りにしていない。
 んだけど、ほのぼのとしたボーカルとゆるりとしたサウンドは一度聴いたらヤミツキ。
 なぜかと言うと、彼が作り出す曲がすごく素晴らしいのです。

 彼はミュージシャンズ・ミュージシャンと言われ、必ずしも一般受けするとは限らないが、ミュージシャンから支持されているミュージシャン。
 と、こう言われるのが凄くわかる。つまり、こいつの曲を歌ってみたい!と思わせる魔力が彼の曲にあるのです。(彼のトリコになったミュージシャンのアルバムを下に紹介しています)

 どんなジャンルのサウンドかは、R&Bを基調にしブルースやカントリーをブレンドしたサウンドです。
 こう言うとありふれたよくあるサウンドじゃと、思われるかもしれないが、ほかの人間が真似できない作風なのです、と言い切れる。
 言い換えれば、誰かのアルバムを聴いていて、「あ、この曲、ボビー・チャールズが作った曲だ」とすぐわかる。
 
 まず試聴してみて。(試聴サイト)
 https://www.amazon.co.jp/ボビー・チャールズ/dp/B000034CJN

 いいでしょ。
 バック演奏のミュージシャンは下の通り。
 ザ・バンドのメンバーやエイモス・ギャレットやマリア・マルダーの夫ジェフ・マルダーなど、ウッドストックのミュージシャンたち仲間で、ベアズヴィルというレーベルでの録音です。
 ボビー・チャールズがお遊びで来日時に、ステージに呼ばれて歌ったのが懐かしい。

 ボビー・チャールズって、どういう人?
 https://ja.wikipedia.org/wiki/ボビー・チャールズ 
 ベアズヴィルってどんなレコードレーベルなの?
 http://recordcorrecterrors.music.coocan.jp/bearsville.html
 べアズヴィル・ボックス・セットなんていうCDが出てるらしい。

「BOBBY CHARLES」(1972年) (Bearsville)
クレジット
Musician – Amos Garrett, Ben Keith, Billy Mundi, Bob Neuwirth, Bobby Charles, Buggsy Maugh*, David Sanborn, Garth Hudson, Geoff Muldaur, Harry Lookofsky, Herman Shertzer*, Jim Colegrove, Joe Newman, John Simon, John Till, Levon Helm, Mac Rebbenack*, N. D. Smart II*, Richard Manuel, Rick Danko
Producer – Bobby Charles, John Simon, Rick Danko
収録曲
A1 Street People|A2 Long Face|A3 I Must Be In A Good Place Now|A4 Save Me Jesus|A5 He's Got All The Whiskey|B1 Small Town Talk|B2 Let Yourself Go|B3 Grow Too Old|B4 I'm That Way|B5 Tennessee Blues|

 そんなわけで、ボビー・チャールズの曲を取り上げているミュージシャンと、気に入ってるアルバムを下に紹介します。
 下の4枚のうち、はじめの1枚以外は、ボビー・チャールズの仲間たちが加わっています。
 そのほかにもwikipediaによると、ファッツ・ドミノ、ビル・ヘイリー、ドクター・ジョン、レイ・チャールズなど数多くのアーティストに取り上げられているそうです。 

2_201806011444551d0.jpegゲイトマウス・ブラウン
「Back To Bogalusa 」(2001年)
 ブルースの人のアルバム。2曲目6曲目がボビー・チャールズの作品。
 かっこいいよ!ブラスも女性コーラスも!
 試聴サイト
 https://www.amazon.co.jp/ゲイトマウス・ブラウン /dp/B00005LANH


3.jpegマディ・ウォーターズ
「ウッドストックアルバム」(1975年)
 いきなりの1曲目がボビー・チャールズの作品。
 マディ・ウォーターズもまさしくブルースの人。
 このアルバムのサウンドは、ロック寄りのブルースサウンド。
でも上のゲイトマウスよりずっとアーシー、文句なし。
別の機会にこのコーナーでとりあげたい。
 試聴サイト:https://www.amazon.co.jp/マディ・ウォーターズ/dp/B00F64TT1Q


 ◆次の2枚は白人ミュージシャンのアルバムです。

4_20180601144905947.jpgポール・バターフィールド・ベター・デイズ
「ポール・バターフィールズ・ベター・デイズ」(1973年)
 4曲目がボビー・チャールズの作品。
 試聴サイト
 https://www.amazon.co.jp/ポール・バターフィールズ/dp/B00E8LU8X6


5_201806011450461f2.jpg
ジェフ・マルダー&エイモス・ギャレット
「LIVE IN JAPAN」(1979年)
5曲目がボビー・チャールズの作品。 
このコンサート行きました。エイモスのチョーキングと手の大きさがすごかった。
エレキギターの3弦を6弦あたりまでチョーキングする。
1フレットポジションと5フレットポジションを同時に押さえることができる大きな手。
試聴サイト:http://www.neowing.co.jp/product/UPCH-20119


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2年前・4年前・6年前の5月、一夜一話。(2016年5月・2014年5月・2012年5月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-05-31 Thu 06:00:00
  • 映画
2年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2016年5月 Archive)

写真
「ファンシイダンス」
監督:周防正行
本木雅弘、鈴木保奈美
写真
ドキュメンタリー映画の特集
邦画編、洋画編
これまでに記事にした映画です。

写真
「カリガリ博士」
監督:ロベルト・ウイーネ
ドイツ
写真
「女はみんな生きている」
監督:コリーヌ・セロー
フランス
写真
「熱病」
監督:アグニエシュカ・ホラント
ポーランド
写真
「宇宙人王さんとの遭遇」
監督:アントニオ&マルコ・マネッティ
イタリア
写真
「火車 HELPLESS」
監督:ピョン・ヨンジュ
韓国
写真
「海に出た夏の旅」
監督:セミョーン・アラノヴィッチ
ソ連



4年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年5月 Archive)

写真
「森崎書店の日々」
監督:日向朝子
菊池亜希子
写真
「夜明けのうた」
監督:蔵原惟繕
浅丘ルリ子
写真
「競輪上人行状記」
監督:西村昭五郎
小沢昭一、南田洋子
写真
「大阪物語」
監督:市川準
池脇千鶴,田中裕子,沢田研二
写真
「HARUKO ハルコ」
監督:野澤和之
ドキュメンタリー映画
写真
「月はどっちに出ている」
監督:崔洋一
岸谷五朗、ルビー・モレノ

写真
「パリ・エキスプレス」
監督:エルヴェ・ルノー
フランス
写真
「ウィズネイルと僕」
監督:ブルース・ロビンソン
イギリス
写真
「アイス・カチャンは恋の味」
監督:阿牛(アニュウ)
マレーシア
写真
「雲が出るまで」
監督:イェシム・ウスタオウル
トルコ
写真
「シクロ」
監督:トラン・アン・ユン
フランス・ベトナム
写真
「サニー 永遠の仲間たち」
監督:カン・ヒョンチョル
韓国



6年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2012年5月 Archive>

写真
「嵐を呼ぶ十八人」
監督:吉田喜重
早川保、香山美子
写真
「踊子」
監督:清水宏
淡島千景、京マチ子
写真
「めぐりあい」
監督:恩地日出夫
酒井和歌子
写真
「アトムの足音が聞こえる」
鉄腕アトムの音響ドキュメンタリー
音響デザイナー:大野松雄
写真
「けものがれ、俺らの猿と」
監督:須永秀明
永瀬正敏、小松方正
写真
「雲の上」
監督:富田克也(空族)
西村正秀、鷹野毅
写真
「明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。」
監督:上利竜太
谷村美月
写真
「修羅雪姫」「修羅雪姫 怨み恋歌」
監督:藤田敏八
梶芽衣子
写真
「新宿泥棒日記」
監督:大島渚
横尾忠則,横山リエ,状況劇場
写真
「キッドナップ・ブルース 」
監督:浅井慎平
タモリ,大和舞,淀川長治,岡本喜八,山下洋輔
桃井かおり ,川谷拓三,竹下景子,内藤陳・・・

写真
「海と大陸」
監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
イタリア
写真
「フロスト×ニクソン」
監督: ロン・ハワード
アメリカ
写真
「記憶の棘」
監督:ジョナサン・グレイザー
アメリカ
写真
「コンフェッション」
監督:ジョージ・クルーニー
アメリカ
写真
「ルイーサ」
監督: ゴンサロ・カルサーダ
アルゼンチン、スペイン


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映画「木靴の樹」  監督:エルマンノ・オルミ

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 時は20世紀一歩手前の19世紀末。
 イタリアの小作人たちの日常を群像劇として観せる。
 この映画、はるかな遠景を眺めるように、ゆったり構えて広い視野で観るといい。
 あるいはタイムスリップしたと思って観るのがいい。


 イタリアの北方、アルプス山脈に近い町、ベルガモ周辺に広がる農村地帯。
 広大な大地を所有する大地主と、地主につかえる管理人。
 そして小作人たちとその家族。老人、夫を亡くした妻と子沢山、恋する若い男女、働き遊ぶ子たち、生れたばかりの赤ん坊。
 種まき、とうもろこしの収穫。馬と荷車、干し草、牛の搾乳、解体される豚、水たまりのアヒル、うろつく犬、服地の行商人、放浪する乞食。
 そんな中にある、小作人たちの週一の寄り合い、結婚式、町のお祭りといったハレの時間。

3-0_20180528095043693.jpg しかし、そうした小作人たち農民の、一見、何の変化もない様に見える19世紀末の日常は、ゆるりと20世紀を迎えようとしている。
 そんな変化を映画は、小作人の子供の通学、工場勤めの娘たち、町(都会)の人々の新しさ、社会主義の芽生えなどのシーンで表現する。

 「木靴の樹」という題名に注目しすぎると、この映画の一部分しか見ないことになる。
 地主の領地内のすべては地主の物だから、領地内の道に沿って立ち並ぶ木を切り倒し、子供のための木靴を作った小作人一家は、この地を追われることになるのだが、地主と小作人という対立構図だけで本作を観てしまうと、本作の良さが半減してしまうだろう。

4_201805280952355b6.jpgオリジナルタイトル:L'albero degli Zoccoli
監督・脚本・撮影:エルマンノ・オルミ|イタリア|1978年|187分|
出演:ルイジ・オルナーギ(バティスティ)|フランチェスカ・モリッジ(バティスティーナ)|オマール・ブリニョッリ(ミネク)|ほか多数





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一夜一話の “今日はジャズ・サックスだよ” アート・ペッパー

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 今日の一枚は、アート・ペッパー というサックス吹きの「モダン・アート」(1957年)。

 何と言っても1曲目の「Blues In」が素晴らしい。
 音数の少ないベース演奏を従えてのバラードなソロ。
 何か、闇に潜む根源的な原初を感じる。
 そう感じながらも、キラリと弾ける鋭い閃光、そして孤独なつぶやき、次に途端に来る饒舌さ。
 緊張と緩和の妙。飽きない名演奏。


 2曲目「Bewitched」から、カルテット演奏になる。
 この「Bewitched」のアート・ペッパー も良いが、今の耳には、2曲目以降のバック演奏がどうにも古臭く感じるのが残念。
 ただし、6曲目の「Stompin' at the Savoy」は良い。からだが揺れる。
 ラスト曲の「Blues Out」は、1曲目の「Blues In」と対をなす演奏。
 でもアルバム1曲目には、誰でもやはり「Blues In」と名付けたこの演奏を持ってくるだろうね。 

 試聴はこちらから。アマゾンのサイト:https://www.amazon.co.jp/Modern-Art-Pepper/dp/B000005H5O
 ただし試聴リストは、下記オリジナルアルバムの収録曲に追加された曲があり、また曲順も変わっている。

「 Modern Art 」
1."Blues In" - 5:40
2."Bewitched" (Richard Rodgers, Lorenz Hart) - 4:25
3."When You're Smiling" (Larry Shay, Mark Fisher, Joe Goodwin) - 4:47
4."Cool Bunny" - 4:10
5."Dianne's Dilemma" - 3:46
6."Stompin' at the Savoy" (Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman, Andy Razaf) - 5:01
7."What Is This Thing Called Love?" (Cole Porter) - 6:00
8."Blues Out" - 4:53

Personnel
Art Pepper - alto saxophone|Russ Freeman - piano|Ben Tucker - bass|Chuck Flores - drums

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映画「剣侠江戸紫」  監督:並木鏡太郎

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 なかなかの時代劇、特に脚本がよく書けている。
 実在の人を素材にした映画。113分最後まで観せます。

 時は17世紀、江戸時代前期のころ。
 当時、(将軍家直属の家臣である)旗本のひとり、水野十郎左衛門(嵐寛寿郎)という侍は、為政者側の身でありながら、江戸市中において「旗本奴」というやくざ集団を組織し、その頭であった。
 旗本奴の中でも白柄組は特に乱暴者ぞろいで、彼らは旗本を笠に、日々悪行狼藉を働いていた。

 かたや江戸には、町人身分の遊俠の徒である「町奴」という集団があった。
 この町奴の頭領、幡随院長兵衛(大河内傳次郎)は、旗本奴との無駄な争いを避けつつも、江戸市中の勢力を巡って白柄組と対立していた。

 さて、ここに登場するのが、白井権八(大谷友右衛門)という鳥取藩の若侍。(剣が立つ)
 この白井権八、あることで藩士達から疎外され精神的に追い詰められ、その結果、藩士である父の同僚(白井権八の上司)を城内で斬殺するに至る。(のちにあった江戸城松の廊下での赤穂事件のよう)そして白井権八は藩を捨て江戸へ逃げた。
 だが、殺された藩士の子、本庄助七・本庄助八の兄弟は親の仇討ちと、白井権八のあとを追った。

 話は進んで、江戸に来た白井権八が、ある日、白柄組の男達に取り巻かれて難儀していたところを、通りかかった幡随院長兵衛に救われ、客分の身となった。
 しかし、白柄組が白井権八にちゃちゃを入れたこの些細なもめ事は、「客分として白井権八をかくまわずに我に差し出せ」と言う、水野十郎左衛門による幡随院長兵衛への圧力へと発展する。(鳥取藩内の斬殺事件を水野は知っていた)
 また同時に、助七の白井権八仇討ちの一件を知った白柄組は、助七を利用しようとする。(助八は既に白井権八に斬られて死去)

0_20180526164000656.jpg ここに話に色を添えるのは、吉原一の花魁・小紫(山根寿子)。白井権八との仲が深まる。
 無職の白井権八は小紫と会うため、辻斬(つじぎり)をして吉原の金を作り出す。これを知った小紫は白井権八に、吉原を足抜けするから、どこか遠くへ駆け落ちしようと迫る。

 話を戻す。
 一度客分とした男を粗末に扱うことは、幡随院長兵衛、町奴の頭領の意地としてできない。(日本の侠客の元祖と言われている)
 幡随院長兵衛は、白井権八を水野に差し出さず、長兵衛自ら単身で水野の屋敷へ向かった。死を覚悟していた。
 だが水野は、この幡随院長兵衛の度胸、態度はあっぱれと、彼を褒め称え、杯を交わそうとした。
 しかし水野の部下は毒杯を長兵衛に飲ませる。これを知った水野はこの部下を切り殺した。
 そして、そのあと、水野は長兵衛を槍で刺し殺す。毒杯を飲ませた事が世間に知れては水野の恥だと。長兵衛は男らしく、まったく抵抗しなかった。

 一方、小紫は胸を躍らせ、渡しの舟着き場で白井権八を待っている。
 そのころ、当の白井権八は辻斬の罪のかどで、町奉行率いる一団に囲まれ非業の死を遂げていた。

 体制側の人々の振る舞い、そうでない人々の有り様、個人の正義、異端児排除、同調圧力と思考停止などなど、様々に読み取れるお話。
 
◆水野十郎左衛門(1630-1664)
 本名・水野成之、江戸時代前期の旗本。通称、十郎左衛門。
 詳しくはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/水野成之
◆幡随院長兵衛(1622-1650 or 1657)
 江戸時代前期の町人。町奴の頭領で、日本の侠客の元祖ともいわれる。
 詳しくはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/幡随院長兵衛
◆白井権八(1655頃-1679)
 本名・平井権八。江戸時代前期に実在した日本の武士。
 詳しくはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/平井権八

監督:並木鏡太郎|1954年|113分|
脚本:三村伸太郎|撮影:河崎喜久三|
出演:幡随院長兵衛(大河内傳次郎)|水野十郎左衛門(嵐寛寿郎)|白井権八(大谷友右衛門)|三浦屋の花魁小紫(山根寿子)|ほか多数

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映画「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」  監督:石井裕也

上

1-0_201805201409348ae.jpg 慎二(池松壮亮)と美香(石橋静河)の、とても純なラブストーリー。
 それは繊細な男女の物語。恋することを怖がる美香の話でもある。

 とは言え、映画は今を生きるシンドさを、時間をとって描いている。
 特に慎二の周辺の登場人物は底辺であえぐ人が多い。心に重荷を抱いて、それでもなんとか今日一日分の、心のバランスを保とうとしている。
 
 舞台は東京。
 慎二と美香が出会う渋谷新宿の、作られた眩さと、人気のない街はずれの夜の暗さ。
 そして日雇い労働のビル建設現場と、死んでゆく患者を見送るに慣れた総合病院の廊下。
 そんな舞台を背景に、明日を見通せぬ日常の、鉛のような海に浮かんだ、慎二と美香の危なっかしい小さな恋。
 それで二人は、やっと明日を考えられる気がして、少し安堵するに至ったようだ。

2-0_20180520141205f57.jpg 慎二は生まれつき片目の視力がないことで屈折して生きてきた。
 高校の時、それなりに勉強ができ友達にも囲まれていたようだが、それは装いの日々であった。
 今は日雇いで生活している。慎二はこの生活に不満は無いようだ。今までに無くすなおに生きれる。
 日雇いの先輩は智之(松田龍平)という男で面倒をみてくれる。
 慎二が住むアパートの隣室のじいさんと仲がいい。本をたくさん持っていて、貸してくれていたが、ある日じいさんが孤独死。
 智之も、建設現場で突然死してしまう。

3-0_20180520141440c75.jpg 美香は東京に出て来て看護師をしている。
 毎日ではないが、患者が死んで病室を出ていくを見送るのが辛い。
 夜のバイトもしているのは、実家の父親に仕送りするためだ。
 美香が幼いころ母親は他界。自殺だったのか父親は口を閉ざしてきた。
 別れた彼氏から今でも愛しているというメッセージを受け取るが。

 物語は、登場人物に割り当てられたエピソードのパッチワークといってもいい。
 その一つひとつは、陳腐とは言わないが、よくある話。
 しかし、監督の素晴らしい演出力という魔法が、話をわざとらしくなく、リアルにして最後までしっかり観せる。

4-0_20180520141845ad9.jpg

監督・脚本:石井裕也|2017年|108分|
原作:最果タヒ(詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」)|
出演:美香(石橋静河)|慎二(池松壮亮)|智之(松田龍平)|美香の母(市川実日子)|岩下(田中哲司)|玲(佐藤玲)|牧田(三浦貴大)|フィリピン人の実習生アンドレス(ポール・マグサリン)|慎二の隣人の老人(大西力)|ストリートミュージシャン(野嵜好美)|ほか

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一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術

映画「大いなる休暇」  監督:ジャン=フランソワ・プリオ

上

1-0_20180519202308381.jpg カナダはケベック州の沖合にある、島民120人の小さな離島のお話。
 心温まるストーリーで、少しドタバタ喜劇です
 
 島民はかつて漁業で生計を立てていたが、今は皆、廃業して一様に生活保護を受けている。
 しかし支給金の月額では、2週間分の生活費しかまかなえない。
 働き甲斐を無くした島民は、ただただ、ぼんやりした毎日を過ごす。(なぜ漁業を辞めざるを得なかったかは映画は語らない)

 そんな折、ある会社がこの島に工場を建設したいという話が浮上した。
 工場が出来て島民が工場で働けるようになったら素晴らしい!
 しかし、それには条件があった。条件とは島に常勤の医師がいる事であった。
 この島には長らく医師はいないのだ。代理医者と称して精肉店のおやじが危なげな処置をしていた。
 工場進出という湧いて出た美味しい話があるのに、医師がいなくてはどうにもならない。
 クシの歯が欠けるように、少しずつ住民は島を離れ本土へ移住していく。

2-0_201805192017374da.jpg  こんな状況を打開すべく、村長のジェルマンはあれこれ策を考えていたその矢先に、いい話が来た。
 本土に移住していった男から、自然豊かな「へんぴな島」に住みたいという若い医師がいるという。
 そしてその医師クリストファー・ルイスがついに島へやって来る。

 村長ジェルマンは、田舎者であるがちょっとした策士であり、行動派である。
 医師が島に定住してもらうには、どうすればいいか。まず島の家々の外観をきれいにした。
 そして何よりも、医師が好きだというクリケットを、この島でも盛んにやっているというウソを、島民たちで装う。(実は島民はクリケットの「ク」の字も知らないのだ。このシーンは幾つもある可笑しいシーンのひとつ)
 次の策は、医師の家の電話盗聴だ。これは彼が好きな物事調査だ。
 彼の好きな料理が分かると、島でひとつのレストラン&バーのメニューに急遽追加するなど、医師向けのウソは増えていく。

 ま、そんな努力が実って医師は島を気に入りだし、島の娘を好きになるが、次の難題が発覚。
 工場進出の企業に、別の所から誘致話が持ち上がり、そこと競り合う形となった。企業の社長は基本的に島に工場を建てたいのだが・・・、別の誘致先からは工場が来るなら5万ドルの補助をするとのこと。 
 しかし、この島ではどうあがいても5万ドルは捻出できない。

 島には生活保護の支給金を支払うため「だけ」に、銀行の出張所がある。
 島民が彼をATMのような支店長と呼ぶその男に、村長は銀行融資を迫る。気弱なその男は、恐る恐る本店に融資の旨を伝えたが、折り返しの返事は、島の出張所の廃止とATMの設置だった。
 支店長は落胆し、かつ怒りがこみ上げ自暴自棄。勝手に銀行の金庫から5万ドルを出金し、村長に進呈した。

 金が用意できた村長たちは、ヘリで島に降り立った、工場進出の社長たち視察団を迎える。
 そこでまた難題。200人以上の住民の地に工場を作るのだと・・。
 しかし負けない村長は社長たちの前で、また島民を使って200人以上いることを演出した。(島民たちは大変だ!)

3-0_20180519202710a0c.jpg 契約一歩手前に来て、またもや苦難。
 医師に、あれもこれもウソをついてきたことが、好きになった娘の口からバレる。
 医師は、好きな彼女ができたことに後ろ髪を引かれながらも、島を離れると村長に言った。

 だが、契約に来る社長はじめのお偉方の日程は決まっていた。
 そこで村長、まだ負けない。島に物資を運んでくる小さな船の船長を説き伏せ医師に仕立てるが・・。

 村長はじめ島民たちは実にまじめに、生活と生きがいとを求めて、「ウソ」を医師と社長につくが、所詮ウソはウソ。ついに、どん詰まり。
 だが、これを救ったのは、なんと医師のクリストファー・ルイスだった。(終)
 真面目で可笑しいお話、観てのお楽しみ!

 余談1:同じく、離島の人々のコミカルな映画に「ウェイクアップ!ネッド」がありました。
     アイルランドにある離島で起きた出来事。宝くじで12億円を仕留めた独身の島民が当たったその日に死亡。それを島民全員で何とかして横取りしたい。そして宝くじ会社の調査員が島にヘリで降り立った・・・。 
 余談2:オドレイ・トトゥ主演の映画「アメリ」(2001)に出てくる同じようなシーンが、本作「大いなる休暇」の中に2回あります。 
 (下線部をクリックしてそれぞれの映画の記事をご覧ください)

オリジナルタイトル:La Grande seduction(SEDUCING DOCTOR LEWIS)
監督:ジャン=フランソワ・プリオ|カナダ|2003年|110分|
脚本:ケン・スコット|撮影:アレン・スミス|
出演:村長ジェルマン・ルサージュ(レイモン・ブシャール)|クリストファー・ルイス(デヴィッド・ブータン)|アンリ・ジルー(ブノワ・ブリエール)|イヴォン・ブルネ(ピエール・コラン)|エヴ・ボーシュマン(リュシー・ロリエ)|スティーヴ・ロラン(ブルーノ・ブランシェ)|エレーヌ・ルサージュ(リタ・ラフォンテーム)|クロティルド・ブルネ(クレモンス・デロシェ)|モンシュール・デュプレ(ドナルド・ピロン)|リチャード・オジェ(ケン・スコット)|

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1年前・3年前・5年前の5月、一夜一話。(2017年5月・2015年5月・2013年5月の掲載記事

  • Posted by: やまなか
  • 2018-05-18 Fri 06:00:00
  • 映画
1年前の5月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2017年5月 Archive>

写真
「憲兵とバラバラ死美人」
監督:並木鏡太郎
中山昭二、三重明子
写真
「君と歩こう」
監督:石井裕也
目黒真希、森岡龍

写真
「ションヤンの酒家」
監督:フォ・ジェンチイ
中国
写真
「ブルース・ブラザース」
監督:ジョン・ランディス
アメリカ
写真
「GO NOW」
監督:マイケル・ウィンターボトム
イギリス
写真
「マイ・ファニー・レディ」
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
アメリカ
写真
「アナザー プラネット」
監督:マイク・ケイヒル
アメリカ
写真
「ゴモラ」
監督:マッテオ・ガローネ
イタリア

写真
美術展「写真家ソール・ライター展」
Bunkamuraザ・ミュージアム
写真
一夜一話の “今日はメンフィス・ソウルだよ。“
ソウル・チルドレン



3年前の5月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2015年5月 Archive)

写真
「空気の無くなる日」
監督:伊東寿恵男
深見泰三、花沢徳衛
写真
「てなもんや東海道」
監督:松林宗惠
藤田まこと、白木みのる
写真
「ペタル ダンス」
宮崎あおい,忽那汐里,安藤サクラ
石川寛
写真
「嵐」
監督:稲垣浩
笠智衆、雪村いづみ
写真
「花とアリス」
監督:岩井俊二
鈴木杏、蒼井優
写真
「共喰い」
監督:青山真治
田中裕子、菅田将暉

写真
「ナポレオン・ダイナマイト(バス男)
監督:ジャレッド・ヘス
アメリカ
写真
「大統領の料理人」
監督:クリスチャン・ヴァンサン
フランス
写真
「オズの魔法使」
監督:ヴィクター・フレミング
~映画音楽に魅せられて
写真
「ビートニク」
監督:チャック・ワークマン
ドキュメンタリー|アメリカ
写真
「ラ・ジュテ」
監督:クリス・マルケル
フランス



5年前の5月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2013年5月 Archive)

写真
「あにいもうと」
監督:成瀬巳喜男
京マチ子、久我美子
写真
「同じ星の下、それぞれの夜」
監督:富田克也,冨永昌敬,真利子哲也
3監督によるオムニバス映画
写真
「パーク アンド ラブホテル」
監督:熊坂出
りりィ、梶原ひかり
写真
「現代インチキ物語 騙し屋」
監督:増村保造
曽我廼家明蝶、伊藤雄之助
写真
「世にも面白い男の一生 桂春団治」
監督:木村恵吾
森繁久彌,淡島千景,八千草薫
写真
「大阪の女」
監督:衣笠貞之助
京マチ子、中村鴈治郎

写真
「タッチ・オブ・スパイス」
監督:タソス・ブルメティス
ギリシャ
写真
「トランシルヴァニア」
監督:トニー・ガトリフ
フランス
写真
「ケス」
監督:ケン・ローチ
イギリス
写真
「情熱のピアニズム」
ジャズのドキュメンタリー
フランス
写真
「卵」
監督:セミフ・カプランオール
トルコ
写真
「黒猫・白猫」
監督:エミール・クストリッツァ
フランス
写真
「一瞬の夢」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
写真
「水辺の物語」
監督:ウー・ミンジン
マレーシア

映画「シンプルメン」  監督:ハル・ハートリー

写真
兄ビル、弟デニス、謎のエリナ、人妻ケイト

 とてもシンプルなお話。
 主要な登場人物から脇役に至るまで、誰もが実にシンプルな人々だ。

1-0_20180515120320323.png 彼らは単純な人。
 良く言えば、偽りや飾りのない、ありのままの感情で生きる、率直な人。
 それは我々の日常では、ありえないほどのシンプルさ。阿呆にみえるかもしれない。
 こういう設定だから自ずと、このお話は喜劇。
 喜劇でありながら、この映画は、我々が日ごろ、いかに自身の心を抑制して生きているかを「お前、それでいいの?」と我々に言っているようだ。

 そして、登場人物たち、自分の感情に正直な人たちを、監督ハル・ハートリーは優しく抱擁する。
 話は、ビルとその弟デニスが、長らく会わぬ父を探し、見つけ出すまでの間に出会った人々との、あれやこれや。
 話の引き金は父親が引いた。
 父は元は有名な野球選手、その後テロ容疑者とされ、家族を捨て逃亡の23年経った今、逮捕された男。ビルと弟デニスは、この父に面会しようとしたが、父親はすでに脱走した後だった。
 兄弟は、母親が持っていた父親の連絡先電話番号を頼りに父に会いに行こうと旅立った。
 そして出会う人々。服役した夫が帰宅するだろうことを嫌う妻ケイト、ケイトの家に居候する謎のルーマニア人の女エリナ、ケイトの夫と親友のマーティン、ビルを追う地元警察官、ガソリンスタンドの男ふたり。そしてちょい役の女子学生。みな個性あるシンプルな人間たち。

 父親はじめ、窃盗犯のビルなど登場人物それぞれに割り当てられるエピソードは、どれもいささか奇異。奇異だが、そこに登場人物に対する監督特有のこだわりが込められている。
 演技についてだが、一瞬だが一呼吸を置いてのセリフ回しや、ケイト、デニス、マーティン三人のダンスなど、これも監督のこだわりだ。これらを楽しみながら観てみよう。

オリジナルタイトル:SIMPLE MEN
監督・脚本:ハル・ハートリー|アメリカ|1992年|106分|
撮影:マイケル・スピラー|
出演:ビル・マッケイブ(ロバート・バーク)|デニス・マッケイブ(ウィリアム・セイジ)|ケイト(カレン・サイラス|ケイトの元夫ジャックの親友マーティン(マーティン・ドノヴァン)|ビル、デニスの父ウィリアム(ジョン・マッケイ)|ルーマニア人のエリナ(エリナ・レーヴェンソン)|女学生キム(ホリー・マリー・コームズ)|
下


【 ハル・ハートリー監督の映画 】
 これまでに取り上げた監督作品です。画像をクリックしてご覧ください。
 この監督の作品は、一度ハマるとクセになる魅力があります。
 上記「シンプルメン」に登場する俳優たちは下記の映画でも個性ある常連。ただし、「アンビリーバブル・トゥルース」と「トラスト・ミー」に出演のエイドリアン・シェリー(1966年-2006年)は監督業もする女優でした。
写真
「アンビリーバブル
    ・トゥルース」
1989年
写真
「トラスト・ミー」1991年
  
写真
「愛・アマチュア」1992年
  

写真
「ヘンリー・フール 」1997年
写真
「はなしかわって」2011年


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映画「ブリキの太鼓」  監督:フォルカー・シュレンドルフ

上

1-0_20180511163533957.jpg 3歳にして「大人の世界」を忌み嫌い、その後も幼児のように生きたオスカルという男の話です。
 この作品は、観る者の興味、視点の違いで、異なって見える映画かも知れない。そんな二面性いや三面性があります。

 そのうちの一面は、ストーリーのバックグランドとして配置されている、物語当時のポーランドの時代性、これを冷徹に語る側面。
 それは第二次世界大戦へ突き進むナチスドイツに対するポーランドの有り様と、そして当時のポーランド国内の民族的差別とを、庶民の目から生々しく描いている側面です。

 ふたつ目の面は、当時を生きる人々の赤裸々な性を、あからさまに描く側面。
 オスカルの両親と周辺の人々、およびオスカル自身のそれです。
 これがメインテーマのごとく映画は語ります。

 三つ目は、ダークなファンタジーの側面。
 オスカルは3歳にして二つの超能力を持っていました。
 まずは自身の身体的成長を止められること。
 もうひとつは、「ブリキの太鼓」を叩きながら、叫びとも聞こえる奇声を発すると、その衝撃波で標的としたガラス窓やグラスを、一瞬にして砕き散らす能力です。(コミカルなシーンとして描かれます)
 これは、オスカルがのちにサーカス団(慰問団)に加わり、芸として見せるシーンもありますが、大人の淫らな性や(たぶん本質的には)戦争や憎しみ合いも含め、「大人の世界」を嫌ったオスカルの叫びと警告であったのかもしれません。

2-0_20180511164649f27.jpg
 さて、この映画が語るお話をなぞってみましょう。
 1924年生れのオスカルは大人になることを避け、自らの意思で身体の成長を3歳で止めました。
 映画はこの、いつまでも幼児に見えるオスカルの顛末を軸に、ポーランドの都市ダンツィヒ(現在のグダニスク)周辺を舞台に、隣国ナチスドイツを歓迎しその思想に心酔し、ドイツの敗戦でこの悪夢から目覚めたポーランドの人々の、うつろな心模様を描きます。

 また映画は初めに、1899年から語り始め、ポーランドの少数民族カシューブ族(カシュバイ人)の出自であったオスカルの母方の祖母を登場させ、カシューブ族とポーランド人との民族的乖離を暗示します。(この話全体は、疎外されたカシューブ族の祖母の視点を基点にしているように思えます)
 さらに、ナチスに賛同する人々と、反ナチス・ポーランド人との内戦、またユダヤ人差別とシナゴーグ放火暴動など、ポーランドに住むユダヤ人を排斥する反ユダヤ主義のポーランド人の様子も描き出しています。


 そんなことを背景にして、さて、映画はオスカルと彼周辺の人々の話をどう語るのか。それは欲情の物語でありました。
 オスカルの奇麗な母親アグネスは同時に二人の男を愛していました。夫アルフレートと、アグネスのいとこ(従兄)で愛人のヤンです。
 アグネスは夫と生活を共にしながらも、ヤンとの間にできたであろう子・オスカルを育てています。(オスカルはヤンが実父だと思っている)
 そしてアグネスは再度ヤンの子を宿すが、これまた夫アルフレートはとても寛容でありました。しかしアグネスは体調不良と精神の混乱で自殺、あっけない死でありました。
 こんな日々の中、夫アルフレートは時と共に他の多くのポーランド人同様にナチスに心酔していく。
 独り身になって子育てと、自身が営む店のやりくりに苦労していたアルフレートは、ある日、アグネスの母親(オスカルの祖母)から一人の少女を住み込みの小間使いとして紹介されます。16歳のマリアです。オスカルと同い年。時は1940年。

3-0_20180511165213ff7.jpg この出会いはオスカルの初恋となりました。
 オスカルは、いまだに外見は幼児だが16歳の男です。マリアの肉体に魅かれます。
 そして、表向きの父親アルフレートもマリアを求めました。
 マリアが妊娠します。その子はクルトと名付けられます。その後もオスカルは、クルトを密かに自分の子だと思い続けました。

 オスカルのもうひとつの出会い。
 それはサーカス団の芸人たちでありました。とりわけ、10歳で成長を止めたと言う、小人症の団長ベブラじいさんとは息が合いました。
 そののちオスカルはサーカス団に加わり、慰問隊として(第二次世界大戦の)戦場を巡ります。
 この間、同じく団員のひとりで小人症の女性と恋に落ちます。短いでしたが幸せな日々を過ごすことができました。

 さあ、話は徐々にラストを迎え始めます。
 クルトが3歳になる日、オスカルは帰郷しクルトに新品のブリキの太鼓をプレゼントしました。そしてナチスドイツの敗戦。
 このドイツ敗戦によるポーランドの混乱の中、オスカルの父アルフレートは戦勝国ソ連軍兵隊に射殺されます。(射殺したソ連兵が能面づらの東洋系青年であったことが少し気になります)

 埋葬に参列したのは、オスカル、彼の祖母、マリア、クルト、墓守のユダヤ人でした。
 オスカルは3歳からずっと太鼓を手放しませんでしたが、父の埋葬時に、持っていたブリキの太鼓を墓穴に投げ入れます。それは、オスカルの決意表明でした。彼は止めていた自身の肉体的成長を開始することにしたのです。この時、オスカル21歳、1945年のことでした。

 ラストシーン、オスカルは祖母に言われます。「我々はポーランド人でもドイツ人でもない。お前はここにいてもしようがない、西へ旅立ちなさい」 
 そう言われてオスカルは列車に乗って旅立ちました。(終)

 ちなみに、1939年9月1日のドイツ軍によるポーランド侵攻が第二次世界大戦の始まりとされています。

オリジナルタイトル:Die Blechtrommel
監督:フォルカー・シュレンドルフ|西ドイツ、フランス|1979年|142分|
原作:ギュンター・グラス(1959年発表)|
脚色:ジャン・クロード・カリエール 、 フォルカー・シュレンドルフ 、 フランツ・ザイツ|撮影:イゴール・ルター|
出演:オスカル・マツェラート(ダーフィト・ベンネント)|父アルフレート・マツェラート(マリオ・アドルフ)|母アグネス・マツェラート(アンゲラ・ヴィンクラー)|若き後妻マリア・マツェラート(カタリーナ・タールバッハ)|母アグネスの従兄ヤン・ブロンスキ(ダニエル・オルブリフスキー)|母アグネスの母親アンナ・コリャイチェク(若年期:ティーナ・エンゲル、老年期:ベルタ・ドレーフス)|母アグネスの父親ヨーゼフ・コリャイチェク(ローラント・トイプナー)|ブリキの太鼓を供給し続けたユダヤ人の玩具店オーナー・ジグムンド・マルクス(シャルル・アズナヴール)|ほか
下2

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映画「赤ちょうちん」 監督:藤田敏八  主演:秋吉久美子

上

 飾り気をえぐり取った殺伐とした荒い感触と、この先を見失った時代の、いかにも1970年代前半の映画といった趣きの作品です。

 熊本県天草から出てきた17歳の幸枝(秋吉久美子)と、二十歳そこそこの政行(高岡健二)との、不安定な幸せの道筋を描く。
 時は冬、ふたりの幸せは政行が住む、中央線大久保・東中野駅間の高架脇の、一間のアパートで始まった。

 話は引っ越しを繰り返す場面展開で進み、その中で映画は、幸枝と政行の愛の行方を追いかける。
 ふたりにとって引っ越しは、あてのない幸せ探しであり、同時に若いふたりにとって、世間を学ぶ旅であり、かつ、いわれのない試練の旅であった。


1-0_2018051012361124e.jpg アパート建て替えで追い出された政行は、京王線幡ヶ谷にあるキッチン付きトイレなしの部屋に越し、幸枝との同棲が始まる。
 ところがある日突然、この部屋にかつて住んでいた男(長門裕之)が無断で居候しだして、奇妙な3人住まいが始まる。
 その上、この部屋は幡ヶ谷斎場のそば。斎場を怖がる幸枝は引っ越しを望んだ。

 次は新宿高層ビルがすぐそこの西新宿の部屋へ。
 ここで幸枝の妊娠が分かった。しかし生活はふたりだけでも苦しい。ふたりは悩む。政行は中絶を求めた。
 そんなある日、幸枝は近くを流れる神田川に身投げしようとした。

 反省した政行は男として覚悟を決め、幸枝の出産を前提に郊外へ引っ越し。周りは畑が残る土地、キッチンもトイレもある一階だ。
 幸枝は病院で無事出産しふたりは喜んだが、幸枝は産後の鬱なのか、周囲の住民や家主(悠木千帆)との折り合いが上手くいかない。
 赤ちゃんが眠る窓際のガラス窓が投石で割れる、近所の子供かも知れない。さらには買い物途中に店前に停めて置いたはずのベビーカーが、坂道を暴走する事故を家主のせいにする。政行は四度目の引っ越しを決意した。

 安い家賃を求めて葛飾の土手近くの長屋へ越す。
 長屋の隣家は彼らを優しく歓迎した。政行は隣家から工場の職場を斡旋してもらった。良き人情の長屋住まいが始まる。
 だが住み始めてから知ったことは、ここは一家心中の悲惨な部屋であった。
 でも何故か幸枝は政行が思うほど動揺しない。いや政行より平気。もっと言えば今までの幸枝よりも、幸枝は変になっていたのだ。
 しかし政行はそれに気づかず、隣家のおばさんに幸枝の様子が変だと言われる。御用聞きの男にわけもなく殴りかかったりしていた。
 そんなある日、政行が務める工場に電話が入る。おばさんからだ、すぐ帰って来い、幸枝の行動が・・。

 シーンは精神病院のベッドで身体拘束された幸枝と、ベッドサイドの政行のシーンに移る。
 そしてラストシーン、政行は赤ん坊と二人だけの、5度目の引っ越しをするのであった。(終)

 映画は幾つかのエピソードを差し入れて、話を膨らませている。
 話の冒頭で、とある立体駐車場の係員として政行が働いていた職場の先輩・修(河原崎長一郎)、その彼女・利代子(横山リエ)のふたりは、幾つものシーンで政行と幸枝のストーリーと絡み合う。

 全編を通して思うに、秋吉久美子演ずる幸枝の表情が終始硬い印象が残る。
 ちなみに本題ではないが、幸枝の出産時に病院が赤ちゃんを取り違えるエピソードがある。
 幸枝と赤ちゃんのツーショットを政行が撮った直後に、看護師が取り違えたことを言いながら、幸枝の赤ちゃんを抱いて病室に入って来る。政行は再度、写真を撮るが、ふたりの心は落ち着かない。これも印象に残る。

監督:藤田敏八|1974年|93分|
脚本:中島丈博、桃井章|撮影:萩原憲治|
出演:久米政行(高岡健二)|霜川幸枝(秋吉久美子)|中年男(長門裕之)|牟田修(河原崎長一郎)|利代子(横山リエ)|幸枝の兄(石橋正次)|吉村クニ子(悠木千帆)|ミキ子(山科ゆり)|広村ヒサ子(中原早苗)|深谷ウメ(三戸部スエ)|松崎敬造(陶隆)|松崎文子(南風洋子)|松崎進(山本コウタロー)|管理人(小松方正)|

【 藤田敏八監督の映画 】
これまでに掲載した作品です。画像をクリックしてお読みください。

写真
「妹」
主演:秋吉久美子、林隆三
写真
「もっとしなやかにもっとしたたかに」
主演:森下愛子、奥田瑛二
写真
「修羅雪姫」・「修羅雪姫 怨み恋歌」
主演:梶芽衣子

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映画「エスケイプ・フロム・トゥモロー」  監督:ランディ・ムーア

上

 妻子を連れてディズニーランドに来た男ジムの不幸な顛末。

5-0_20180505144113878.png 家族四人、前日に、ディズニーランドを目の前にしたホテルに一泊しての、次の朝。
 さあ、これからディズニーランドへ!という時に、ジムの携帯が鳴った。(休暇中に会社から電話が来るのは嫌なものだ)

 この電話で、働き盛りのジムは、勤め先の友人から(会社の決定だと前置きされて)突然の解雇を言い渡された。
 だが、家族でこれから楽しい時を過ごそうという、この日、ジムはクビになったことを妻に言いそびれる。

4-0_20180505144520ab4.jpg 映画は、理由が思いつかない突然の解雇によって、幸せな日常から暗い非日常へ、一気に転落したジムの、苦しい心境を、同時にプレッシャーからの逃避を表現する。(ジムは幻影を見始める)
 加えて映画は、こんな時にも、妻子に対し「良きパパ」を演じようとするジムの(現実逃避との)格闘を表していく。
 
 次いで、この不幸をトリガーにして、「良きパパ」の限界線にいるジムの目線を借りて、映画はディズニーランドという、「楽しい虚構」を実態ある世界に作り上げた、その仕組まれた作りごとを突く。(とても嫌なことがあると、目の前の楽しいことに対し、一気に批判的になるものだ)

 さらに映画は、一度嫌なことに会うと嫌なことが続きがち、というよくある「いら立ちの連鎖」を、シーン各所にうまく織り込みながら、一方で、プレッシャーからの逃避から来る、見知らぬ若い女性へのチョッカイや酒の暴飲といった、「良きパパ」ジムの、いけない誘惑との葛藤を可笑しくしてみせる。

 以上のようなことを踏まえ、話は、始めは、ディズニーランドでありがちな家族の行動/感情を示しながら、話の進行につれてジムの心に「いら立ちの連鎖」が鬱積し、後半ついに、ジムはSFの世界に迷い込み、悪夢に取り込まれて精神が爆発する。
 ちょっと、映画「未来世紀ブラジル」のラストシーンが心をかすめた。

オリジナルタイトル:Escape from Tomorrow
監督・脚本:ランディ・ムーア|アメリカ|2013年|90分|
撮影:ルーカス・リー・グラハム|
出演:ジム(ロイ・アブラムソン)|エミリー(エレナ・シューバー)|サラ(ケイトリン・ロドリゲス)|ソフィー(ダニエル・サファディ)|イザベル(アネット・マヘンドリュ)|科学者(スタッス・クラッセン)|看護師(エイミー・ルーカス)|

2_20180506145539a30.png









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映画「ストロベリーショートケイクス」  監督:矢崎仁司

上








 恋に悩む東京の女4人、それぞれの生きざまドラマ。

 その、それぞれの生きざまは、世の中、こんな女がいるだろう、と思われる女性像を、意識的にデフォルメして、美しく標本化し、花のイラスト図鑑のように仕立ててある。

 恋に悩む女4人は、二組のペアになって登場する。(つまり映画は、4人個別の恋物語で、同時に二組の物語でもあります)



1-0_201805031336155ad.jpg 里子(池脇千鶴)と秋代(中村優子)。
 このふたりは、ちょっと高級なデリバリーヘルスの店「ヘブンズゲイト」に勤めている。里子は店の電話受付嬢、秋代はヘルス嬢。
 里子は、過去に破れた恋からやっと抜け出せた、そして今、夢のような恋をしたい願望真っ最中。
 秋代は、成就しえない恋を抱えている。思い続ける彼氏とは、専門学校の同窓の菊地(安藤政信)。男と女の親友同士で菊池にその気はないし彼女がいる。

2-0_201805031337298be.jpg ちひろ(中越典子)と塔子(原作者の魚喃キリコ、俳優芸名岩瀬塔子)。
 こちらのふたりは、ルームシェアするふたり。ちひろは、いわゆるOLで、塔子は売れだしたフリーのイラストレーター。
 女4人のなかで唯一、恋の現在進行形を行くのは、OLのちひろ。相手はビジネスマンの永井(加瀬亮)。ちひろは永井の部屋に通う。
 塔子は、彼氏に捨てられ、忘れようとして忘れかけている恋を抱えている。

 里子の話は、漫画チックに喜劇仕立ての風味。結局里子は店を辞め、バイトし始めた高架下の中華の店の、あの男と一緒になるのか。
 秋代の話は、あれがそうなら、恋は成就できなかったけれども授かったのかな。
 女4人のなかで唯一だったちひろは、一番悲しい。
 塔子は、元カレからの結婚式招待状で、忘れようとして忘れかけている昔の恋があることを、我々に見せる。 
 
 映画は、里子と秋代、ちひろと塔子の二組、女同士の話をそれぞれするが、建てつけが悪い。 
 また結末は、この二組の話をひとつにして終わらせようとするが、如何せん、無理がある。
 ちなみに、エピソードが一番リアルなのは、イラストレーターの塔子の話。発注者である編集者とフリーランスの葛藤軋轢でした。そして塔子の絵筆の筆さばき。

監督:矢崎仁司|2005年| 127分|
原作:魚喃キリコ|脚本:狗飼恭子|撮影:石井勲|
出演:里子(池脇千鶴)|秋代(中村優子)|ちひろ(中越典子)|塔子(岩瀬塔子こと魚喃キリコ)|ちひろの彼氏永井(加瀬亮)|秋代の彼氏菊地(安藤政信)|デリヘルの店「ヘブンズゲイト」の店長森尾(村杉蝉之介)|デリヘル嬢・ミチル(前田綾花)|デリヘル嬢・ユリ(宮下ともみ)|デリヘル嬢・サキエ(桂亜沙美)|街中華のリー(趙たみ和)|秋代の客(高取英)|秋代の客(諏訪太朗)||秋代の客(保坂和志)|秋代の客(戌井昭人)|編集長・大崎(矢島健一)|女医(いしのようこ)|里子の母の恋人・田所(奥村公延)|里子の母・町子(中原ひとみ)|ほか

【 一夜一話の 歩き方 】下

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一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術




2年前・4年前・6年前の4月、一夜一話。(2016年4月・2014年4月・2012年4月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-04-30 Mon 06:00:00
  • 映画
2年前の4月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の4月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2016年4月 Archive)

写真
「風と樹と空と」
監督:松尾昭典
吉永小百合、浜田光夫
写真
「女経」
監督:増村保造、市川崑、吉村公三郎
若尾文子、山本富士子、京マチ子
写真
「グッド・ストライプス」
監督:岨手由貴子
菊池亜希子、中島歩
写真
「熱海ブルース」
監督:ドナルド・リチー
ワダチエコ、スズキトモスケ

写真
「アメリ」
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
フランス
写真
「光りの墓」
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
タイ
写真
「あの娘と自転車に乗って」
監督:アクタン・アリム・クバト
キルギス



4年前の4月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の4月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年4月 Archive)

写真
「ナイン・ソウルズ」
監督:豊田利晃
原田芳雄、松田龍平
写真
「残菊物語」
監督:溝口健二
花柳章太郎、森赫子
写真
「世界はときどき美しい」
監督:御法川修
松田美由紀,片山瞳,市川実日子
写真
「2/デュオ」
監督:諏訪敦彦
柳愛里、西島秀俊
写真
「ゲンと不動明王」
監督:稲垣浩
千秋実,乙羽信子,笠智衆

写真
「はなしかわって」
監督:ハル・ハートリー
アメリカ
写真
「聖者の午後」
監督:フランシスコ・ガルシア
ブラジル
写真
「バックコーラスの歌姫たち」
ドキュメンタリー映画
アメリカ
写真
「反撥」
監督:ロマン・ポランスキー
イギリス
写真
「童年往事 時の流れ」
監督:ホウ・シャオシェン
台湾
写真
「二郎は鮨の夢を見る」
ドキュメンタリー映画
アメリカ
写真
「17歳のカルテ」
監督:ジェームズ・マンゴールド
アメリカ



6年前の4月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の4月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2012年4月 Archive>

写真
「にごりえ」
監督:今井正
淡島千景,丹阿弥谷津子,久我美子
写真
「くちづけ」
監督:増村保造
野添ひとみ、川口浩
写真
「二階の他人」
監督:山田洋次
葵京子、小坂一也

写真
「シテール島への船出」
監督:テオ・アンゲロプロス
ギリシャ
写真
「4:30」
監督:ロイストン・タン
シンガポール
写真
「ハリウッドホンコン」
監督:フルーツ・チャン
香港
写真
「ヒューゴの不思議な発明」
監督:マーティン・スコセッシ
アメリカ
写真
「水の中のナイフ」
監督:ロマン・ポランスキー
ポーランド
写真
「コントロール」
監督:アントン・コービン
イギリス
写真
「π(パイ)」
監督:ダーレン・アロノフスキー
アメリカ
写真
「行きずりの二人」
監督:クロード・ルルーシュ
フランス
写真
「百年の夢」
ドキュメンタリー映画
チェコスロバキア
写真
「メリエス’88 」
フランス国営映像研究所制作
フランス
写真
「ひかりのまち」
監督:マイケル・ウィンターボトム
イギリス




映画「パパは、出張中!」  監督:エミール・クストリッツァ

上
妻のセーナ、マリク、兄ミルザ、メーシャ

 マリク6歳の父、メーシャの浮気が引き起こした思わぬ展開は、不運にもマリク一家に苦難を与えることになります。(しかしラストは苦いですが、ハッピーエンドで終わります)

01-_20180427113923b92.jpg 思わぬ事態になった原因は、メーシャの浮気もさることながら、1950年のユーゴスラビアの政治情勢でした。 
 当時、独自の社会主義を目指すユーゴスラビアは、反ソ連(反スターリン)の姿勢でした。

 ある日、愛人と一緒にいたメーシャは、ソ連を批判するユーゴスラビアの新聞の挿絵を見て、「これはやりすぎだ」と、つぶやきました。(挿絵は下記)
 のちにこのことを、愛人はユーゴスラビア人民委員会のお偉方にふと漏らしました。
 お偉方は、メーシャのつぶやきを「親ソ連」的発言ととって、メーシャを国家反逆の罪で、強制労働させることになります。(裁判なんて開かれません)

 映画は、こんな時代のユーゴスラビアのサラエヴォを舞台に、主に6歳のマリク目線で、2年間の間に起った出来事を、語っていきます。(つまり柔らかい語り口です、ナレーションはマリクです)

 事の発端。
 メーシャが「これはやりすぎだ」とつぶやいた逢瀬の時、愛人は「奥さんといつ離婚してくれるの」とメーシャに強く迫っていました。
 その翌日、愛人は女性グライダー乗りとして、人民委員会主催のグライダー曲芸飛行ショーに出場しました。
 メーシャは奥さんと二人の息子(マリクと兄ミルザ)を連れ、多くの見学者が集まった飛行場にいました。

 そこには人民委員会のお偉方も参列しています。このお偉方がメーシャに近づいて来ました。
 そうです、このジーヨというお偉方は、メーシャの義理の兄、つまりメーシャの妻セーナの実の兄なのです。
 さてショーが終わり、メーシャの愛人はジーヨの車に乗ります。この時です、「これはやりすぎだ」発言を、愛人はジーヨに軽い気持ちで話してしまいます。(ジーヨがメーシャの義理の兄であることは、愛人も知っていましたから)

2-0_20180427115051598.jpg その夜すぐ、メーシャは人民委員会へ呼び出され、義兄ジーヨのオフィスで彼の口から、遠くの地での強制労働を告げられます。
 しかしその夜は、メーシャの息子マリクの、割礼の祝いの日でした。
 メーシャの家の食卓には、メーシャ、妻セーナ、二人の息子、同居のセーナの両親など、そしてジーヨがいます。
 ですが、皆沈みがち。メーシャもセーナもセーナの両親(つまりジーヨの両親)の誰もが、ジーヨに話しかけません。
 そしてセレモニーが終わるや否や、メーシャは強制労働の炭鉱へと家を出ました。(ジーヨは家の外に、連行するための車を待たせていました)

 この日から「パパは出張中」の日々が始まるわけです。(妻セーナは息子たちに父親は出張中ということにしたのです)
 なぜなら、日ごろからメーシャは仕事で家を空けることはたびたびでしたから。(ちなみに、実はこれまでメーシャの浮気は出張中のことでしたし、セーナは相手は知りませんが感づいていました)

 そののち、セーナは兄ジーヨの家を訪れます。セーナは夫へ送る荷物を持っていました。
 しかし兄は、メーシャがどこにいるのか、いつ帰れるのかの問いに答えません。このことは誰にも言うな、会いに来るな、と言うばかりでした。(ジーヨは独り身ですが、彼の家には女がいました)

 炭鉱での強制労働は厳しいものでしたが、一度だけ、セーナはマリクを連れて炭鉱を訪問できました。
 この時、セーナは夫に、どうしてこういう事になったのかと問いますが、「わからない、ジーヨに聞け」と言います。
 セーナは「ジーヨは何も言わない、そういえばジーヨの家にあのグライダー乗りの女性がいたけれど、あの人に聞こうか?」
 「やめとけ」と言い、メーシャは話題を変えました。
 後日、セーナはグライダー乗りに会いに行きます。女の勘は鋭いです。セーナはその女に襲い掛かりました。
 
 続いた強制労働もやっと終わり、メーシャは、今度はこれまたサラエヴォから遠い田舎ズヴォルニクという所へ移され、その地である上司の元で仕事を始めます。
 ここでは家族を呼び寄せることができました。家族4人はまたひとつになれました。

 ここでちょっと、メーシャの下の息子マリクのこと。
 父親が強制労働へ行ったあと、マリクは夢遊病になり、夜、家を出て出歩くようになります。ストレスです。
 日ごろの「パパは出張中」とは明らかに違うことを、幼いながらもマリクは感じ取っていました。(夢遊病のシーンは、監督の持ち味であるコミカルな仕立てです)
 ズヴォルニクに引っ越してからマリクは、あるロシア系の男の一人娘マーシャを好きになります。幼い恋、相思相愛でした。
 ですが、マーシャは不治の病におかされていました。幼い恋は長くは続きませんでした。

03-.jpg そんなある日、メーシャに恩赦がでました、やっとサラエヴォに帰れるのです。
 帰ってまもなく、メーシャの義弟(妻セーナの弟)の結婚式がありました。一族郎党が集まりました。
 3人目の子をお腹に宿すセーナは、兄ジーヨに近づきもしません。
 メーシャはジーヨに、すべて水に流そうと少し話しました。ジーヨはアル中のように酒に酔っています、重度の不眠症に陥っていました。

 そのジーヨの横に、メーシャの元愛人がいます。(この2人は公然の関係になったようです)
 そして、こともあろうに、メーシャは、式をよそに人気のない部屋に元愛人を連れ込み、「なぜジーヨに言ったのか」と問い詰めながらも、ふたりは激しく交わります。でも、この様子をマリクはじっと見つめていました。
 (このあと、元愛人はトイレで首吊り自殺を図ろうとしますが失敗しました)

 この時もうひとり、式をよそにして、そっと出て行く男がいました。彼は自らの意思で老人ホームに入所するため、いま旅立とうとしています。
 その男は、ジーヨ、新郎(次男)、セーナの父親ムザフェルでした。
 ムザフェルはマリクの兄ミルザにこう言いました。「やつらに言っておけ、政治なんてクソ食らえだと」

 ラスト。ラジオからはユーゴ対ソ連のサッカー試合の実況中継が流れます。
 ユーゴはソ連を負かし金メダルを取りました。人々はじっとこれを聴き喜んでいます。1952年のことでした。

オリジナルタイトル:Otac na sluzbenom putu(When Father Was Away on Business)
監督:エミール・クストリッツァ|ユーゴスラビア|1985年|136分|
脚本:アブドゥラフ・シドラン|撮影:ヴィルコ・フィラチ|
出演:マリク(モレノ・デバルトリ)|父メーシャ(ミキ・マノイロヴィッチ)|母セーナ(ミリャナ・カラノヴィッチ)|セーナの兄で人民委員会のジーヨ(ムスタファ・ナダレヴィチ)|グライダー乗りで体操教師のアンキッツァ(ミーラ・フルラン)|マリクの祖父ムザフェル(パヴレ・ヴイシッチ)|マリクの恋人マーシャ(シルヴィア・プハリッチ)|ほか
3下










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【 エミール・クストリッツァ監督の映画 】
 これまでに掲載した作品です。画像をクリックしてお読みください。

写真
「アンダーグラウンド」
写真
「ジプシーのとき」
写真
「黒猫・白猫」
写真
「ウェディング・ベルを鳴らせ!」




映画「正門前行」  監督:佐藤信介

100_20180422123801a99.jpg

 淡々としていますが、コメディです。

 この映画、監督の手による脚本の勝利です。
 回りまわっての結末で、ふたつの話を、巧みにストンと落とします。うまい!(と最後で思う)
 
 しかし、脚本を映像化する段になると案外難しい。(と思われる)
 普段のように普通にしゃべってねの演技も、う~ん残念ながら中だるみしがち。

 美大キャンパス内の学生間のうわさが、友達の知り合いのその知り合いというように、関連する学生らのそれぞれの勝手な発言によって、思いもかけない展開になるわけですが、うわさ好きじゃない私は、観ていてなんだか、そんな事どうでもいいじゃんとウザく感じます。
 が、ついつい最後まで観てしまったのは、この監督の独特な語り口にいつしか、引き込まれてしまったからでした。
 尺66分てのもいいですね。

 それから、容疑者扱いされてしまう松永君は、主人公の神崎君の彼女・恭子さんの、元カレ。
 このことに神崎君は嫉妬しても仕方ないのだが、神崎君は松永君を罵る、このシーンが可笑しい。
 それと、女子高生の瀬川さん(坂野友香)が、一番光っています。

 ちなみに、この映画、1997年の製作、つまり固定電話だけの時代。
 当時、アパート住まいの学生の部屋に電話は必ずしも有ったわけじゃない。
 iPhoneのある今、の設定なら、この話、どんな展開になったのでしょう。

監督・脚本:佐藤信介|1997年|66分|
撮影:河津太郎|
出演:主人公の神崎(内野勝就)|その彼女の恭子(伊藤聖子)|松永(川野弘毅)|瀬川(坂野友香)|掛井(脇坂宏志)|藤城(金子泰子)|森(森直子)|石塚(藤田英彦)|兼満(矢島淳子)|樋口(中村靖日)|ほか

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一夜一話の “今日は日本のポップスだよ”  MANNA(マンナ)

1_20180421162413636.jpg


 元ピチカート・ファイヴの鴨宮諒と梶原もと子のデュオ、のデビューアルバム。(1991年)
 いま聴いても、いいサウンド。
 下のリンクから3曲聴ける。聴いてみよう。

「海岸ソング」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16719673
「ムッシュ・ダンダン」
https://www.youtube.com/watch?v=X9kn8M6TS3g
「ふたつの時代~ シュガー・デイズ」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16719659


 梶原のかわいいボーカルに耳が行くが、そこで留まらずに、鴨宮が作り出すサウンドとアレンジに耳を傾けてほしい。これがいま聴いても、いいセンス。
 シンセがいい音色。
 特にゆったりとした音色のベース音、これがサウンドの方向を決めている。そしてシンプルなドラムにも注目してほしい。
 ぜひベースラインが聴ける環境で聴いてね。

1. 海岸ソング| 2. ムッシュ・ダンダン| 3. 僕のマシュマロさん| 4. 仲直りをしてキスをして| 5. ロルルーの唄| 6. ふたつの時代| 7. シュガー・デイズ| 8. 甘たるく感傷的な絵| 9. 口笛マンボ|

映画「ポエトリー アグネスの詩」  監督:イ・チャンドン

上3
1-00_20180419100150005.jpg





 女子中学生の水死体が川を流れ下るシーンを、映画は冒頭、いきなり観客に投げて寄越す。

 この話を語る前にまず、主人公ミジャ(ユン・ジョンヒ)の話から始めよう。
 ミジャは60歳半ばの温和なおばあちゃん、中3男子の孫と二人暮らし。
 その孫の母親(ミジャの娘)は別居していて、釜山に住んで働いている。ミジャは娘から仕送りを受けているんだろうが、孫との生活に余裕はない。
 それでミジャは、ある老人の介護で生活費を稼いでいる。その男は脳梗塞か何かの後遺症で障害があり、手足が不自由、口がきけない。
 孫のジョンウクは、おばあちゃんっ子。幼いころからミジャに育てられた様子で、中3にしては幼い大人しい子、ミジャに爪を切ってもらう始末。

 ミジャは最近、詩に興味がある。詩を書いてみたい。そこで詩の教室に通い始めた。
 さて、こんな平凡なおばあちゃんのミジャが、話が進むうちに、冒頭シーンの女子中学生の自殺事件に苦しめられることになる。

 ミジャがこの事件に遭遇したのは、病院の救急外来入口で、女子中学生の母親が泣き叫ぶのを見た時であった。
2-00_20180419100956b44.jpg そして次に、ミジャを苦しめることが発覚する。
 それは、孫のジョンウクはじめ彼の同級生6人が、自殺した女子中学生ヒジンを、生前、学校で数回にわたりレイプしていた事実。

 このことをミジャは、同級生6人のうちの1人、ギボムの父親から呼び出されて聞いた。
 ミジャは家に帰り、ヒジンの事をそれとなくジョンウクに聞くが、さしたる反応はない。
 一方、ギボムの父親ら、同級生5人の父親たちは密かに集まり、今後の対応を相談している。
 ここは息子たちの将来を考え、向こうの親と示談で納めたい。ほかに事の次第を知っているのは校長はじめそれぞれの担任だけ。だが、地元紙の記者が動き始めたらしい、秘密裏に進めたい。

 相談の結果、父親たちは示談の提示金額を3000万ウォンと決めた。1人頭500万ウォン、ミジャはこれをギボムの父親から知らされた。
 しかし、ミジャにそういう金は無い。ギボムの父親はミジャに向かって「釜山の娘に出してもらいなさい」と言う。だがミジャは、娘に事件も示談金のことも伝えない。(この家庭内事情を映画は語らない)

 相談相手もなく、追い詰められるミジャはある決断をする。
 ミジャは介護で通っている老人の男に身を許した。男は会長と呼ばれていて資産家のようだ、そして男はミジャが好き。(今までも迫られることがあった)
 そして後日、ミジャは男に500万ウォンを「くれ」と筆談で話す。(ミジャが筆談するわけは男の娘が傍にいるのだ)
 くれ、とは返済することができないからだと書き添える。男は脅迫かと筆談で返す。
 結局ミジャは身を挺して500万ウォンを手にし、ギボムの父親に渡すことができた。


下 60歳半ばのミジャを観客は、世知に疎い、認知症初期と診断された、詩作にあこがれる、頼りないおばあさんと思うかも知れない。(ミジャのセリフに、これまでの人生に苦労は絶えなかったとあるが、それを映画は語らない)
 一方、ギボムの父親はじめとする加害者の父親たちは、40歳前後の働き盛りの男たちだ。自ずとミジャと相いれない。
 加害者5人の父親の集まりにミジャも出るが、ミジャはすぐに退散してしまう。
 ミジャは父親たちから、示談の交渉役にされてしまうが、ミジャは自殺した女子ヒジンの母親と世間話をしただけで交渉の話はできなかった。
 また、孫のジョンウクに対し、問い詰めないし、怒らない。

 ミジャは優しい。人当たりがやわらかい。
 だがミジャは、ぼんやりしているわけじゃない。洞察力があり、よく考えているが、いかんせん問題解決に時間がかかる。決断が後手になる。
 ミジャは正義感が強い。
 孫の事より、自殺したヒジンやその母親に意識が行く。加害者の父親たちのやり方に懐疑的だ。

 ミジャは、考えがはっきりした時、想定したことが現実になる時、すでに覚悟はできている強い女性。
 ある日刑事が現れ、ミジャの前で孫のジョンウクが連行される。ミジャは少しも動じなかった。
 詩教室の最終日に提出の宿題、詩一編をミジャはきちんと提出した。それは美しい感動を呼ぶ詩であった。(映画中で示される)
 しかし、その教室にミジャの姿は無かった。(ミジャは前日に提出していた)
 ミジャはどこへいったのか?

 ラスト、映画は人影のない大きな橋上のシーンを観客に見せる。
 そこは女子中学生ヒジンの水死体が流れ行った川にかかる橋だった。

オリジナルタイトル:시 (詩)
監督・脚本:イ・チャンドン|韓国| 2010年|139分|
撮影:キム・ヒョンソク
出演:ミジャ(ユン・ジョンヒ)|ジョンウク(イ・デヴィッド)|ギボムの父(アン・ネサン)|ヒジンの母(パク・ミョンシン)|キム・ヨンタク・詩作教室の先生(キム・ヨンテク)|ほか

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一話 (京都、旅行、美味など)      書評   美術

1年前・3年前・5年前の4月、一夜一話。(2017年4月・2015年4月・2013年4月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-04-16 Mon 06:00:00
  • 映画
1年前の4月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の4月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2017年4月 Archive>

写真
「羅生門」
監督:黒澤明
三船敏郎,森雅之,京マチ子
写真
「戦国奇譚 気まぐれ冠者」
監督:伊丹万作
片岡千恵蔵、田村邦男

写真
「トレヴィの泉で二度目の恋を」
監督:マイケル・ラドフォード
アメリカ
写真
「甘い生活」
監督:フェデリコ・フェリーニ
イタリア
写真
「チキンとプラム
あるバイオリン弾き、最後の夢」

フランス
写真
「あの子を探して」
監督:チャン・イーモウ
中国
写真
「エリン・ブロコビッチ」
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
アメリカ
写真
「夢のバスにのって」
監督:フェルナンド・エスピノーサ
ペルー
写真
「真夏の素肌」
監督:ニギーナ・サイフルラーエワ
ロシア



3年前の4月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の4月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2015年4月 Archive)

写真
「のんちゃんのり弁」
監督:緒方明
小西真奈美
写真
ATGの映画
これまでに掲載したATG映画
をリストアップ 2015年現在
写真
「にっぽん泥棒物語」
監督:山本薩夫
三國連太郎,北林谷栄,緑魔子
写真
「イザイホウ
神の島・久高島の祭祀」

沖縄のドキュメンタリー映画
写真
「無宿」
監督: 斉藤耕一
勝新太郎,高倉健,梶芽衣子

写真
「おみおくりの作法」
監督:ウベルト・パゾリーニ
イギリス
写真
「殺人の追憶」
監督:ポン・ジュノ
韓国
写真
「わすれな草」
監督:イップ・カムハン
香港
写真
「チョン・ウチ  時空道士」
監督:チェ・ドンフン
韓国
写真
「アルファヴィル」
監督:ジャン=リュック・ゴダール
フランス
写真
「ストラッター」
監督:カート・ボス、アリソン・アンダース
アメリカ
写真
「ソポトへの旅」
監督:ナナ・ジョルジャーゼ
ジョージア(グルジア)



5年前の4月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の4月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2013年4月 Archive)

写真
「愚か者 傷だらけの天使」
監督:阪本順治
真木蔵人、鈴木一真
写真
「もっとしなやかにもっとしたたかに」
監督:藤田敏八
森下愛子、奥田瑛二
写真
「母なれば女なれば」
監督:亀井文夫
山田五十鈴
写真
「赤い波止場」
監督:舛田利雄
石原裕次郎、北原三枝
写真
「純愛物語」
監督:今井正
中原ひとみ

写真
「ルナ・パパ」
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ
ドイツ
写真
「グッバイ・ファーストラブ」
監督:ミア・ハンセン=ラブ
フランス
写真
「スカイラブ」
監督:ジュリー・デルピー
フランス
写真
「カンバセーション…盗聴…」
監督:フランシス・フォード・コッポラ
アメリカ
写真
「まぼろし」
監督:フランソワ・オゾン
シャーロット・ランプリング
写真
「カラスの飼育」
監督:カルロス・サウラ
スペイン
写真
「ブラウン・バニー」
監督:ヴィンセント・ギャロ
アメリカ
写真
「ザ・フューチャー」
監督:ミランダ・ジュライ
ドイツ
写真
「ベアスキン 都会の夜の一幕寓話」
監督:アン・ゲディス、 エドワード・ゲディス
イギリス
写真
「ゆずれない事」
監督:ペーター・フィッシュリ、ダヴィッド・ヴァイス
スイス



映画「未来世紀ブラジル」  監督:テリー・ギリアム

上

 SFコメディだが、とてもシリアス。
 未来のどこかの国の話。(映画製作年1985年)
 この国では、国民のあらゆる個人情報が日々徹底的に掌握・管理され、国民は全体主義的に支配されている。

1-0_20180414110246946.jpg これをつかさどるのが情報省。(話の舞台となる組織)
 省というからには行政機関の一つのようだが、テロ対策に対応できる武力(警察機能)と、闇の裁き(公正な法なき裁判機能)を持ち、よって一省庁でありながら国家権力として絶大な力を持っている。(司法府・立法府は映画に出てこない)

 話は、日々膨大に発生する、行政手続き遂行に全力を注ぐ「役人」だけで事は終始する。彼らの視野に、国民や公正なんてハナから無い。これがこの映画の怖さの主因。

 ある日、その膨大な行政手続きのひとつに書類記載ミス(人名の間違い)が発生した。これがこの物語の発端だった。
 このミスによって、無実の男がある日突然、テロ容疑者として情報省情報はく奪局にて拘束され、彼らの手による拷問の末、男は死亡。
 この検挙時費用を、情報省は男の妻に過大請求したため、後日、省は払い戻ししなければならなくなった。(これもミス)
 ここで登場するのが主人公サム。サムは払い戻しのために男の妻に会いに行くことになった。
 サムは情報省記録局の役人。(省内では情報はく奪局が出世コースで、記録局の人材は落ちこぼれらしい)

2-0_20180414110435870.jpg サムは出世を望まない男。時折見る夢の世界に浸っている。その夢は、美しき女性が登場し、サムは背に翼があり、悠然と空を飛ぶスーパーマン。サムは夢が覚めても、夢の女性に恋してる。

 その女性にそっくりな女(トラックドライバー)が、記録局の入口カウンターに来ていた。サムはこれを目撃する。
 この出会いがサムの平凡な人生を一変させることになった。
 その女は、人名間違いで殺された男の部屋の階上に住んでいて、事の次第を知る女であった。女は残された妻に代わり情報省記録局に書類手続きに来ていたのだった。
3-0_20180414110832b25.jpg
 一方、はく奪局は、省のミスのすべてを隠すため、この女の逮捕に踏み切った。
 これを知ったサムは、この女の身を心配し、役人の職を投げ出し彼女に近づき、そして一緒に逃走する。サムは勇敢であった。

 もうひとつ、サムの人生を変える出会いがあった。
 その男の名はタトル。これぞ、はく奪局がミスなく書類に記載すべき名であった当のテロ容疑者である。
 タトルの容疑行為は、ビルマンションの不法な配線配管修理。なぜ不法か? この国ではこのサービスは国が直接提供するサービスであるから。(この国では、パイプ、チューブ、ダクトによって家々は通信回線、電気ガス上下水道、空調のサービスを受けているが、情報省が日々掌握すべき個人情報を得続けるには通信回線を管理下に置いておかねばならない。しかしパイプ、チューブ、ダクトがどこも、ぐちゃぐちゃに入り組んでいて、どれが通信回線かすら不明な状態。だから配線配管修理は一括して国営なのかな)
 このタトルがサムの部屋の配線配管修理に現れたのである。
 くわえてタトルは、高層ビルからワイヤーを使って地上に滑り降りる、スーパーマンのように謎の男。

4-0_2018041411120562f.jpg 結局、サムは情報省はく奪局に逮捕され拷問を受ける。
 その最中、サムはタトル率いる一群が彼を救いに来る幻想をみる。
 そして、ついに精神を破壊されたサムは、幸せな夢を見る。それは彼がこれまで見てきた夢物語の、そのハッピーエンドだった。

 ちなみに、この映画の製作年1985年とは、一般的にはオフィスにパソコン(社内LAN)があるかないかの時代、それも16ビットのパソコンであった。世はインターネットやコンピュータによる高度情報化社会への憧れがあった時代。(同時に不安もあったが、ネット上の個人情報についての目立った見識はなかった)
 当時、そんな新しい時代感覚を反映した本作に驚きと斬新さ(アナログ感覚も含め)を覚えたが、今観るとさすがに、その辺はあまり意識に上がらず、情報省の人権無視の横暴さが、行政手続きの中で淡々と行われる怖さを感じます。



オリジナルタイトル:Brazil
監督:テリー・ギリアム|イギリス|1985年|142分|
脚本:テリー・ギリアム 、 トム・ストッパード 、 チャールズ・マッケオン|
撮影:ロジャー・プラット|
出演:サム・ローリー(ジョナサン・プライス)|ジル・レイトン(キム・グライスト)|アーチボルド・ハリー・タトル(ロバート・デ・ニーロ)|ミスター・カーツマン(イアン・ホルム)|アイダ・ローリー(キャサリン・ヘルモンド)|スプー(ボブ・ホスキンス)|ジャック・リント(マイケル・パリン)|ミスター・ウォーレン(イアン・リチャードソン)|ミスター・ヘルプマン(ピーター・ヴォーン)|ドクター・ジャフェ(ジム・ブロードベント)|


下
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映画「トラスト・ミー」  監督:ハル・ハートリー

上

 高校生の女の子マリアと、30歳過ぎの独身マシューとの「純愛物語」風喜劇。

1-0_201804081006385b6.jpg かつ、マリアとマシューそれぞれの家の、子離れできないひとり親と、親離れできない子との、愛の絆の物語。
 とは言え、その絆とは時に、マリアの母のマリアへの、マシューの父のマシューへの、過度な介入であり、家庭内モラル・ハラスメントである。(マリアの父親は映画冒頭、死去。)
 それでも、マリアもマシューも、家では良い子であろうとしている。
 だが、そうそう子供ではない高校生と、かたや30過ぎの男。ともに、幼いと言えば実に幼い。

 この映画、賢者もスーパースターも出てこない。
 極々、普通の人の、その弱い所の内面を優しく可笑しくして見せる。
 ここら辺がハル・ハートリー監督の持ち味かな。

 マリアは、アメフト部の男の子と付き合っていて、妊娠してしまうが、それを聞いて若い彼は逃げた。
 母親に言わせれば、マリアはその方面の知識があまり無かったらしい。マリアは友人に相談して堕ろすか悩んでいる。

2-0_201804081008492c8.jpg マシューはと言えば、職を転々としている。(過去には刑務所にも入った)
 テレビ組み立ての小さな工場で、おばさん工員に交じって働いているが、マシューはテレビが嫌いで辞めてしまう。
 父親の紹介で今度はテレビ修理の店で働き始める。
 相変わらずテレビは嫌いだが、マリアに求婚した以上、今後の生活がかかっている。
 
 さてお話の顛末は観てのお楽しみ。
オリジナルタイトル:Trust
監督・脚本:ハル・ハートリー|アメリカ、イギリス|1991年|107分|
撮影:マイケル・スピラー|
出演:マリア(エイドリアン・シェリー)|マシュー(マーティン・ドノヴァン)|マリアの母ジーン(メリット・ネルソン)|マシューの父ジム(ジョン・マッカイ)|マリアの姉ペグ(イーディ・ファルコ)|

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一夜一話の “今日はアトランティックのR&Bだよ” ラヴァーン・ベイカー

1_201804050525198b6.jpg




 リズム&ブルースは楽しいよ。
 今日の一枚(シングル盤)は、ラヴァーン・ベイカーの「ソウル・オン・ファイア(Soul On Fire)。(1953年)
 

 いいよ、聴いてみる?  味わいあるスロー・ナンバーだよ。
 こちらから。https://www.youtube.com/watch?v=CUINUCuLu3c
 シンプルな歌だけどグッと来る。

2.jpeg 右のレコードは、ラヴァーン・ベイカーのヒット曲集。
 ここから試聴できる。http://www.billboard-japan.com/goods/detail/359062

 最初に、試聴リスト7曲目の「トウィードゥリー・ディー」を聴いてみよう。(1954年)
 なんとも明るく分かりやすい歌、これもリズム&ブルース。
 日本語の歌詞に置き換えて、中尾ミエなんかが歌いそうな曲。

 ダンサブルなのは、試聴リスト1曲目の「ジム・ダンディ」。(1956年)
 これ、白人が歌うと、ロックンロールになる。(白人が黒人の歌を真似てロックンロールになった)

 思うに、リズム&ブルースとは、黒人向けだけのブルース市場から、白人ポップス市場への参入というベクトルだ。
 目指すわけは、ブルース市場に比べて、マーケットは大きいしギャラも高かったろう。 
 さらには、ブルースのコード進行やブルースならではの旋律といったブルースの曲調に比べ、ポップスのそれは多彩だ。
 ただしリズムは、白人ポップスより強烈だと、当時の白人の若者は感じたんだろう。(歌い方も含めて)
 ここがリズム&ブルースの立ち位置だったのかもしれない。(もちろん当時、人種差別が音楽業界にもあったことを忘れてならない

 とは言え、ラヴァーン・ベイカーのこのヒット曲集には、まるで白人ポップス歌手が歌うような曲も多く収録されている。
 かつてワーナーパイオニアから出していた、アトランティックR&B FOREVER1500というアルバム(同じジャケットだが中身は日本編集のベストアルバム)では、リズム&ブルース好きな曲集になっていた。(両レコードに共通する曲は下線の曲。下記)

 映画「メイク・イット・ファンキー」という音楽ドキュメンタリー映画の記事をこちらから参照ください。


01.ジム・ダンディ|02.トゥラ・ラ・ラ|03.アイ・キャント・ラヴ・ユー・イナフ|04.ゲット・アップ、ゲット・アップ|05.ザッツ・オール・アイ・ニード|06.ボップ・ティンガ・リング|07.トウィードゥリー・ディー|08.スティル|09.プレイ・イット・フェア|10.トゥモロウ・ナイト|11.ザット・ラッキー・オールド・サン|12.ソウル・オン・ファイア|13.マイ・ハピネス・フォーエヴァー|14.ハウ・キャン・ユー・リーヴ・ア・マン・ライク・ディス?|


一夜一話の “今日は日本のポップスだよ” 中尾ミエ

1_20180330104327f82.jpg




 今日の一枚(シングル盤)は、中尾ミエの「可愛いいベビー」と「ダンスへおいで」。(1962年)
 中尾ミエって、なかなかいいよ。

 まずは聴いてみるか。
 A面「可愛いいベビー」  (作詞:漣健児、編曲:東海林修)
 こちらから聴けます。http://www.dailymotion.com/video/x2dljp6

 B面「ダンスへおいで」  (作詞:タカオ・カンベ、編曲:東海林修)
 こちらから聴けます。https://www.youtube.com/watch?v=FDyhccT-FSU

 「可愛いいベビー」は、コニー・フランシスが歌う元歌より、メリハリが効いていて、いいね。
 踊れる曲にしている。歌詞もいい。
 元歌と聞き比べができます。(下記)

 B面の「ダンスへおいで」もB面なのが可哀そうなくらい、いい出来だ。
 中尾ミエの本領発揮だよ。
 下記の元歌と聞き比べてみれば分かるが、中尾ミエの方がリズム&ブルースしている。(ツイストで踊るダンスチューン)
 元歌のモーリン・グレイはお子様っぽい。

 アメリカの流行りを日本語の歌詞にして歌う時代。歌詞が歌詞として生きていた時代です。
 
「可愛いいベビー」の元歌は、コニー・フランシスが歌う「Pretty little baby」
こちらから聴けます。https://www.youtube.com/watch?v=FCNvHqiS4s0
「ダンスへおいで」の元歌は、モーリン・グレイが歌う「Come on and dance」
こちらから聴けます。https://www.youtube.com/watch?v=YtrfLLn-Wjk

2年前・4年前・6年前の3月、一夜一話。(2016年3月・2014年3月・2012年3月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-03-31 Sat 06:00:00
  • 映画
2年前の3月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の3月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2016年3月 Archive)

写真
「かぞくのくに」
監督:ヤン・ヨンヒ
安藤サクラ、井浦新
写真
「牡蠣工場」
監督:想田和弘
ドキュメンタリー映画
写真
「みんなわが子」
監督:家城巳代治
中原ひとみ
写真
「旅するパオジャンフー」
監督:柳町光男
台湾のドキュメンタリー
写真
「おゆきさん」
監督:鍛冶昇
和泉雅子、笠智衆

写真
「情事」(1960年)
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
イタリア
写真
「アイ ウォント ユー」
監督:マイケル・ウィンターボトム
イギリス
写真
「昔々、アナトリアで」
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
トルコ

4年前の3月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の3月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年3月 Archive)

写真
「老人の恋 紙の力士」
監督:石川均
丸純子、ミッキー・カーチス
写真
「日本の裸族」
監督:奥秀太郎
阿部サダヲ、松尾スズキ
写真
「FM89.3MHz」
監督:仰木豊
小沢仁志、松浦祐也
写真
「33号車応答なし」
監督:谷口千吉
池部良、司葉子、志村喬
写真
「幻の光」
監督:是枝裕和
江角マキコ、浅野忠信、内藤剛志

写真
「マルコヴィッチの穴」
監督:スパイク・ジョーンズ
アメリカ
写真
「キッチン・ストーリー」
監督:ベント・ハーメル
ノルウェー
写真
「エバースマイル,ニュージャージー」
監督:カルロス・ソリン
アルゼンチン
写真
「インポート、エクスポート」
監督:ウルリッヒ・ザイドル
オーストリア
写真
「コーヒーをめぐる冒険」
監督:ヤン・オーレ・ゲルスター
ドイツ
写真
「アンビリーバブル・トゥルース」
監督:ハル・ハートリー
アメリカ
写真
「パラダイス 神」
監督:ウルリッヒ・ザイドル
「パラダイス3部作(愛/神/希望)」より
写真
「パラダイス 愛、希望」
監督:ウルリッヒ・ザイドル
オーストリア

6年前の3月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の3月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2012年3月 Archive>

写真
「ロビンソンの庭」
監督:山本政志
町田康、太田久美子
写真
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
監督:吉田大八
佐藤江梨子,佐津川愛美,永作博美
写真
「芝居道」
監督:成瀬巳喜男
山田五十鈴、長谷川一夫

写真
「ボクと空と麦畑」
監督:リン・ラムジー
イギリス
写真
「さすらい」
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
イタリア
写真
「女と女と井戸の中」
監督:サマンサ・ラング
オーストラリア
写真
「旅芸人の記録」
監督:テオ・アンゲロプロス
ギリシャ
写真
「ハッピー・ゴー・ラッキー」
監督:マイク・リー
イギリス
写真
「ちいさな哲学者たち」
監督:ジャン=ピエール・ポッジ他
フランス|ドキュメンタリー
写真
「ヤンヤン 夏の想い出」
監督:エドワード・ヤン
台湾
写真
「アメリカン・スプレンダー」
監督:シャリ・S・バーマン他
アメリカ
写真
「ローズ・イン・タイドランド」
監督:テリー・ギリアム
イギリス
写真
「BIUTIFUL ビューティフル」
監督:A・G・イニャリトゥ
スペイン
写真
「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」
監督:ブラッド・シルバーリング
アメリカ
写真
「昼間から呑む」
監督:ノ・ヨンソク
韓国
写真
「アナザー・デイ・イン・パラダイス」
監督:ラリー・クラーク
アメリカ


映画「未知への飛行」  監督:シドニー・ルメット

上
米ソ間のホットラインと米国大統領

 1964年製作の米ソ冷戦時代のSF映画。
 話は緊迫感がラストまで続き、112分一気に観せます。 

1-0_20180328172332b89.jpg アメリカ空軍のB-58爆撃機がモスクワに核爆弾(水爆)を投下するまでの話を、ホワイトハウス、ペンタゴン、ネブラスカ州オマハの戦略空軍司令部、およびモスクワへ進撃するB-58爆撃機の4者間で行われる指示/連携を描く一方、ホワイトハウスとソ連側とのホットラインでのやりとりを映画は観せていく。

 しかし、これはアメリカがソ連に仕掛けた戦争(奇襲攻撃)ではなかった。
 空軍司令部にある軍事情報集中センターの、電子機器モジュールの誤作動が原因で、モスクワ核攻撃の司令信号が、洋上上空にいた核爆弾搭載のB-58爆撃機へ発信されてしまったのだ。
 モスクワへ進路を取ったB-58編隊へ、軍司令部は慌てて交信しようとしたが、ソ連の常設の電波妨害で交信不能。
 そこでしかたなく、軍はB-58編隊を自軍ジェット機で撃墜しようとしたが、ジェット機は燃料切れで相次いで海に墜落。
 そうこうするうちに、B-58はある一線を越えてしまう。
 ある一線とは、進撃ルート途中のある一線を越えてしまうと、例え大統領であろうが、攻撃司令の解除が出来なくなる地点。
 つまり交信で攻撃中止を伝えたとしても、それは敵の仕業(偽情報)だとして信じるなと、空軍兵士は徹底的に教え込まれている。

 ホワイトハウス(その地下室)には、アメリカ合衆国大統領(ヘンリー・フォンダ)と通訳のバック(ラリー・ハグマン)の2人だけ。そしてソ連とつながる電話(ホットライン)がひとつ。(ソ連側については、映画は電話音声でしか表現しない)
 ペンタゴンや空軍およびソ連高官とのやり取りの中で、大統領が出した苦渋の決断は、B-58編隊撃墜をソ連へ依頼したことであった。

 ソ連軍は、ジェット戦闘機や地対空ミサイルなどで、B-58、4機を撃墜したものの、その4機はいずれも核爆弾を積んでいない機体であった。
 ソ連軍の攻撃をかわした、編隊長グレイディ大佐が乗る核弾頭搭載のB-58一機は、モスクワへと突き進む。
 ソ連側はもう打つ手が無い。B-58はあと数分でモスクワ上空に達するのであった。
 そして、ここで大統領がとった二つ目の苦渋の決断とは、ソ連を納得させるための驚愕の司令であった・・・。

 観終えて思うのは、米国大統領のこの最後の決断は、果たしてソ連の納得を得られるのだろうか。
 大統領の意思に反して、ここから米ソの核戦争が始まるのではないだろうか。
 
 核爆発による電磁パルス(EMP)発生で起こる電子機器の誤作動について。
 1950年代、核実験が行われた際、近くの米軍軍事施設の電子機器に不具合が生じたらしい。また1962年、太平洋上空での核実験で1400キロ離れたハワイで警報機、信号機の誤作動がみられたらしい。そして現在も各国で電磁パルスの軍事研究が行われているらしい。(2018.3.25朝日新聞、想定外を考える「電磁パルスで機器誤作動」)
 こんなことを想定すると、誤作動による、あるいは意図的に起こす誤作動で、今後、紛争が起きる可能性は大だ。

 1959年、アメリカをはじめとする西側との平和共存路線を模索してのフルシチョフの訪米(雪解け)も、1960年のU2型機事件※で米ソの平和共存は暗礁に乗り上げた。(1961年ベルリンの壁構築、キューバ危機と米ソの平和共存が崩れる)
 U2型機事件の4年後の本作は、(シリアスなSF映画であるだけに)、話は牧歌的に思える。

 本作と同年製作の、似たテーマの映画に、スタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」があるが、これは喜劇仕立てであったがために救われている。(下線部から記事をご覧いただけます)

 ※U-2撃墜事件とは、1960年にソ連を偵察飛行していたアメリカ合衆国の偵察機、ロッキードU-2が撃墜され、偵察の事実が発覚した事件。その後、予定されていたパリでの米ソ首脳会談が中止されるなど大きな影響があった。(wikipediaによる)

オリジナルタイトル:Fail Safe
監督:シドニー・ルメット|アメリカ|1964年|112分|
原作:ユージン・バーディック 、ハーヴェイ・ホイラー著「未確認原爆投下指令/フェイル・セイフ」
脚本:ウォルター・バーンスタイン|撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド
出演:アメリカ合衆国大統領(ヘンリー・フォンダ)|ブラック将軍(ダン・オハーリー)|グロテシェル教授(ウォルター・マッソー)|ボーガン将軍(フランク・オーヴァートン)|バック(ラリー・ハグマン)|グレイディ大佐(エドワード・ビンズ)|ラスコブ下院議員(ソレル・ブック)|カッシオ大佐(フリッツ・ウィーヴァー)|スウェンソン国防長官(ウィリアム・ハンセン)|コリンズ(ドム・デルイーズ)|フォスター(ダナ・エルカー)|ゴードン・ナップ(ラッセル・コリンズ)|

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一夜一話の “今日はモータウンだよ” マービン・ゲイ

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 今日の一枚(シングル盤)は、リズム&ブルースの楽しさを味わえる。
 マービン・ゲイの「スタボン・カインド・オブ・フェロー」、1962年の曲。
 (Stubborn Kind Of Fellow)

 まずは聴いてみて。
 ディスクユニオンのサイトにある試聴曲リスト(1曲目だよ)
 http://diskunion.net/black/ct/detail/XAT-1245298835

 シンプルで楽しい。ずっと昔から大好きな曲。
 女性バックコーラスが可愛らしく盛り上げてくれる。(マーサ&ザ・ヴァンデラスという3人組)
 ただしレコードでこの曲を聴くと、CDなんかで聴くよりもワイルドな印象で、とてもよろしい。
 マービン・ゲイはのちに、ソウルを歌うようになるが、私はリズム&ブルースの彼のほうがいい。

 このシングル盤のB面は「イット・ハート・ミー・トゥー」( It Hurt Me Too)、上記サイトの7曲目。
 こっちは、ポップス的な伴奏をバックに、マービン・ゲイはちょいとソウルな感じで歌っている。

marvin-fellow.jpg 実は私が持ってるのは、右のLPレコード。
 1960年代のLPレコードは、それまでにリリースしたシングル盤の寄せ集め集が普通だった。
 上記のディスクユニオンのサイトにあるのは、右のレコードの試聴リスト。

 このアルバムには10曲が納められているが、うちリズム&ブルースの曲は5曲だけ。
 試聴リストの2曲目「プライド・アンド・ジョイ」、3曲目「ヒッチ・ハイク」が、Good!
 4曲目「ゲット・マイ・ハンズ・オン・サム・ラヴィン」10曲目「アイム・ユアーズ、ユアー・マイン」は、まあまあ。
 あとの曲はと言うと、それはいわゆるポップスなんだ。
 レコード会社はリズム&ブルースだけじゃなく二股の売れ筋を狙っていた。
 ま、マービン・ゲイに限らず、リズム&ブルースやソウルを歌う多くの黒人歌手はポップスや時には4ビートの曲も歌った。
 


映画「はじまりのうた」 監督:ジョン・カーニー

上

 今年に入って3か月間に観た映画のうちで、一番のいい映画。良く出来ている。
 ニューヨークを背景にしたラブロマンス映画として観ていいのですが・・。

1-0_2018032013400674e.jpg この映画の一番の魅力は、ソングライターを目指すグレタ(キーラ・ナイトレイ)が自作曲を歌うシーン。
 キーラ・ナイトレイが歌う、そのかすれ声の歌が朴訥で儚げで、なかなかいいのだ。
 そういうシーンはいくつもあるが、特に、
 映画冒頭、小さなライブハウスに客として座っていたグレタが、突然ステージで歌う羽目になるシーンの曲「ア・ステップ・ユー・キャント・テイク・バック」(1)(上の画像)と、
 別れた彼氏デイブに電話で聴かせる曲「ライク・ア・フール」(2)と、
 そして学生の頃にデイブの前で歌った曲「「ロスト・スターズ」(3)が良い。
 まず聴いてほしい。
 本作のオリジナル・サウンドトラック(HMV&BOOKS onlineの試聴こちら)の中の12曲目が(1)、7曲目が(2)で、5曲目が(3)です。

 作った歌が、まだ自分の中だけにいる時のガラス細工のような至福感((1)の曲)や、あたかも天からの啓示で歌が生れて輝くその一瞬の時の((2)の曲)や((3)の曲)に、思いを馳せて欲しい。(監督は歌作りを知っている人間だな)
 この3曲を聴いてグッと来なきゃ、この映画の良さの半分しか楽しめない。(と思う)

2-0_20180320134334f6b.jpg 次いでこの映画に、「ビジネスの成功に走る音楽業界」が「歌自身が持つ本来の魅力」を軽んじることへの苦言が、本作に織り込まれていることに注目したい。
 それは、音楽プロデューサーのダンと、ダンが創設したレーベル会社の社長サウルとの確執で表現されている。(これでダンはついに首になる)
 また監督は、音楽業界への苦言を、グレタと彼氏デイブとの恋愛関係にも影響させている。

 さてグレタとデイブとの関係だが、それは大学時代からの付き合い。ともに歌を作り歌うことが好きな軽音楽サークルの一員だった。
 グレタの作詞作曲の才能に嫉妬するデイブだったが、歌唱力はデイブの方が断然巧い。
 卒業後デイブはミュージシャンの道を歩み、ついにメジャーデビューを果たす。レコード会社はふたりが住む広いアパートも用意した。
 だがこの頃からグレタとデイブの間に亀裂が生じ始める。きっかけはデイブの浮気。デイブはグレタから去った。
 そして水面下でのもうひとつの亀裂は、売上至上志向の音楽業界がするサウンドプロデュースに対するふたりの意見の違い。

 デイブが去ったのちに、グレタは苦しい胸の内をその場で作った自作曲「ライク・ア・フール」(2)に託し電話でデイブに聴かせた。
 この事で、デイブは我に返り、結局グレタの元に舞い戻るのである。(改めてグレタの作る歌に惚れもした)
 そして我に返ったデイブは自身の新作アルバムに、学生時代にグレタが作った「ロスト・スターズ」(3)を入れた。

3-0_20180320140809341.jpg ふたりの再会時に、その曲をグレタに聴かせるのだが、グレタはそのアレンジが気に入らない。「この売れ線アレンジは私の歌に合わない」と。二人の関係は戻りそうにない。
 グレタ:「制作段階で曲の良さが消えちゃってる。この曲バラードなのにポップスになってるわ」
 「でもヒットさせたいだろ」「なぜ?」「君の作った曲が売れたらすごい」「だけど曲の良さが失われたら意味ないわ、曲は繊細よ」「でもライブでは盛り上がるんだ、一気にヒートアップする」「・・・・・」
 ラスト近く、デイブは女性ファンで満席のライブコンサートにグレタを招待し、「ロスト・スターズ」をグレタ風にギター弾き語りで歌って見せてみせた。観客は大いに感激している。
 グレタはこれをステージの袖で聴いたあと、会場を出、夜の街を自転車で走る、微笑みを浮かべて。

 ストーリーの構成が面白い。
 グレタがライブハウスで突然用意もなく歌う羽目になるシーン、映画はこの同じシーンをストーリーが進むなかで3度繰り返す。
 1度目は映画冒頭にあって、このシーンでグレタが無名のソングライターだと分かる。
4-0_20180320140943a52.jpg 2度目はグレタがいるライブハウスに、音楽プロデューサーのダンが偶然に居合わせ、グレタの自作曲に惚れるシーンとなる。
 この出会いは、ダンがグレタをシンガーソングライターとしてプロデュースすることへと発展し、また、歌に対するふたりのセンスが一致して、いつしか歳の差のある「淡い恋らしきもの」へと進む。
 3度目は次にいう話の帰着シーンとして出てくる。
 彼氏デイブと別れ、悲しみに沈むグレタを、学生時代からの音楽仲間で現在ストリートミュージシャンのスティーヴに救われるが、グレタは引きこもりがち。
 そこで、スティーヴが自分が出演するライブハウスにグレタを連れ出したことで3度目のシーンとなる。つまりスティーヴが突然、客にグレタを紹介し、座って聴いてい彼女を無理やりステージに上げたのだった。(上記画像のシーン)

5-0_20180320141057a4a.jpg そして映画はもうひとつのストーリーを用意している。
 グレタと音楽プロデューサーのダンは意気投合し、ダンのもとでアルバムのレコーディングが始まる。
 だが、そのデモテープは、ダンが創設したレーベルの社長サウルに否定されるが、グレタとダンはネットでアルバムを発表し、絶大なフォロー数と多くのダウンロード数を得ることになった。(ラストのエンディングまで観てね)
 そして次回のアルバムはヨーロッパで野外録音しようとか話は進むのです。



 ちなみに、グレタとデイブとダン、この三人の関係はどうなるか、気になるところ。
 デイブのコンサートのあとグレタは、ダンと一緒に好きな歌を聴き合った‎iPhone二股ケーブルを郵送でダンに送り返した。(巧い脚本!)
6-0_20180320141217c2d.jpg ついでに、グレタを助けるスティーヴにも注目してあげよう。いい男だよ。

 なにしろこの映画、多くのことを語っているので、例えばダンの家族の家庭不和に視線が行き過ぎると、映画の良さが見えてこなかったりする。
 とは言え、その家庭不和によって家を出たダンは精神的に参ってしまい、プロデューサーの仕事に専念できず、ヒット曲を産み出せないスランプにいた。そんな中で、酔っ払って街をうろついて、ふと入った店でダンはグレタと出会えたのであった。
 スランプ以前のダンはラップ・ミュージシャンをスターダムに押し上げたりと、著名なプロデューサーであった。そのラッパーはダンへの感謝の気持ちで、グレタのアルバムを制作する資金を援助するのである。
オリジナルタイトル:BEGIN AGAIN
監督:ジョン・カーニー|アメリカ|2013年|104分|
脚本:ジョン・カーニー|撮影:ヤーロン・オーバック|
出演:グレタ(キーラ・ナイトレイ)|音楽プロデューサーのダン(マーク・ラファロ)|グレタの彼氏デイブ・コール(アダム・レビーン)|グレタの学生時代からの友人スティーヴ(ジェームズ・コーデン)|ダンが創設したレーベルの社長サウル(ヤシーン・ベイ)|ダンの娘バイオレット(ヘイリー・スタインフェルド)|ダンの妻ミリアム・ハート(キャサリン・キーナー)|ダンがスターダムに押し上げたラップ・ミュージシャンのトラブルガム(シーロー・グリーン)|ほか


下


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一話 (京都、旅行、美味など)  書評 美術

映画「幸せをつかむ歌」 主演:メリル・ストリープ  監督:ジョナサン・デミ

上

01-.png 女優メリル・ストリープが貧乏なロックミュージシャンを演じる映画。

 30歳代で離婚し、家庭を後にしたリッキー(メリル・ストリープ)が、その後20年間、家庭を一切顧みず、50歳半ばになって、ある事をきっかけに初めて家族と再会する話です。

 ある事とは、リッキーが産んだ娘ジュリー(メイミー・ガマー)が、ジュリーの夫の浮気が原因で精神的に参ってしまい出戻った事。
 ジュリーの引きこもりは激しく、元夫ピート(ケヴィン・クライン)や再婚の奥さんでは手におえず、ピートがリッキーにヘルプの電話をしたことから物語は始まる。

 あわせてこの映画、登場人物の設定を対極的に対比させ、階層社会の上と下や、成功者と敗者のコントラストをはっきりと見せます。
 ただし人生、幸せか不幸せかは、階層の上下ではないことも映画は語ります。

 その昔、リッキーはピートとの結婚後も3人の子を出産後もロックミュージシャンになる夢を抱き続けていた。かたや夫ピートはビジネスでの成功を目指していた。
 そして離婚後20年ほどが経ち、リッキーは貧乏バンド生活で格安モーテル住まいの独身。夫ピートはビジネスに成功し大邸宅住まい、富裕層の黒人女性を妻にし、妻はリッキーが産んだ子3人を育てあげた。

 もう少し、お話のことを言うと・・。 
 1970年から1980年代、ロックが一番輝きロックしていた頃、リッキーはピートと結婚した。
 リッキーはきっと育児や家事にも専念していたのだろう。(このころリッキーは白人中流以上の層にいた)
 しかしリッキーはロッカーになりたいという若いころからの夢を捨てきれず結局、夫婦の関係は崩れ、子たちを残して家を出た。
 
 その後、リッキーはアルバムを一枚出すまでには至ったが、あとが続かなかった。
02-.jpg そして今、ライブハウスでRICKI AND THE FLASHというバンドで歌っている。(演奏曲はこちら映画公式サイト、外部リンク)
 RICKI AND THE FLASHは、有名曲をカバーするしがないバンドだが、いい演奏をする。店の客も乗っている。
 リッキーは、バンドのギタリストのグレッグ(リック・スプリングフィールド)と、いい仲。互いにバツイチ似たような境遇。
 ライブハウスの客は、バンドメンバーたちと同じ50歳代、そして同じような下層生活レベル。また、バンドも客たちも、ごく普通に白人黒人が混じっている。

 一方、ピートはモーリーン(オードラ・マクドナルド)と再婚し、今や高級住宅街(ゲーテッドコミュニティ)に大きな家を構えている。
 ピート夫妻を取り巻く人々は上流階級の白人たちだけで、黒人は妻のモーリーンだけのようだ。
3-0_2018031821434115c.jpg リッキーが産んだ子たちは、出戻りのジュリー、ゲイのアダム、近々結婚するジョシュ。
 兄妹間の人間関係は悪いし、父親ピートとの関係も悪い。(継母モーリーンとの関係は描かれていない)
 そんななかにリッキーが20年のブランクののち急に現れたわけですから、ジュリーがリッキーを無視するのは当たり前。

 さてさて、お話はどう展開しますやら、それは観てのお楽しみ。ハッピーエンドで終わります。
 本作の監督ジョナサン・デミについて言えば、2008年の作「レイチェルの結婚」の方が出来がいい。題名下線部から記事をご覧ください。
オリジナルタイトル:RICKI AND THE FLASH
監督:ジョナサン・デミ|アメリカ|2015年|101分|
脚本:ディアブロ・コディ|撮影:デクラン・クイン|
出演:リッキー愛称リンダ(メリル・ストリープ)|元夫ピート(ケヴィン・クライン)|出戻った娘ジュリー (メイミー・ガマー)|リッキーの彼氏グレッグ(リック・スプリングフィールド)|ピートの妻モーリーン(オードラ・マクドナルド)|息子ジョシュ(セバスチャン・スタン)|ジョシュの結婚相手エミリー(ヘイリー・ゲイツ)|息子アダム(ニック・ウェストレイト)|

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1年前・3年前・5年前の3月、一夜一話。(2017年3月・2015年3月・2013年3月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-03-15 Thu 06:00:00
  • 映画
1年前の3月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の3月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2017年3月 Archive>

写真
「安珍と清姫」
監督:島耕二
若尾文子、市川雷蔵
写真
「いなべ」
監督:深田晃司
松田洋昌、倉田あみ
写真
「やくたたず」
監督:三宅唱
柴田貴哉、玉井英棋

写真
「ブロンドの恋」
監督:ミロス・フォアマン
チェコスロヴァキア
写真
「卵の番人」
監督:ベント・ハーメル
ノルウェー
写真
「GUMMO ガンモ」
監督:ハーモニー・コリン
アメリカ
「第三の男」
監督:キャロル・リード
映画音楽に魅せられて

写真
<さ行> の洋画
これまでに記事にした映画から
2017.3.19 現在
写真
“かつて、「21世紀」は
    素敵な未来だった。”

最近読んだ本
スティーヴ・ライヒ
   コンサートに行ってきた。
80th ANNIVERSARY 《テヒリーム》


3年前の3月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の3月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2015年3月 Archive)

写真
「荒野のダッチワイフ」
別題 「恐怖人形」
監督:大和屋竺
写真
「波影」
監督:豊田四郎
若尾文子、大空真弓
写真
「川下さんは何度もやってくる」
監督:いまおかしんじ
佐藤宏、水澤紳吾
写真
「午前中の時間割り」
監督:羽仁進
国木田アコ、蕭淑美

写真
「アパートの鍵貸します」
監督:ビリー・ワイルダー
アメリカ
写真
「ラブ・ジョーンズ」
監督:セオドア・ウィッチャー
アメリカ
写真
「彼女を見ればわかること」
監督:ロドリゴ・ガルシア
アメリカ
写真
「ヴィクとフロ、熊に会う」
監督:ドゥニ・コテ
カナダ
写真
「フェスティバル・エクスプレス」
1970年のロックコンサート
    ・ドキュメンタリー

写真
金沢に行ってきた。(その1)
新幹線金沢開業の直前
2015年3月
写真
金沢に行ってきた。(その2)
新幹線金沢開業の直前
2015年3月


5年前の3月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の3月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2013年3月 Archive)

写真
「億万長者」
監督:市川崑
久我美子、山田五十鈴
写真
「任侠外伝 玄海灘 」
監督:唐十郎
李礼仙、根津甚八
写真
「荒川アンダー ザ ブリッジ
THE MOVIE」

監督:飯塚健
写真
「白い息/ファの豆腐・冬の日」
監督:久万真路・黒崎博
菊池亜希子、長澤まさみ
写真
「絶唱」
監督:滝沢英輔
浅丘ルリ子、小林旭
写真
「河内カルメン」
監督:鈴木清順
野川由美子

写真
「Bubble/バブル」
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
アメリカ
写真
「道中の点検 」
監督:アレクセイ・ゲルマン
ソ連
写真
「エイプリルの七面鳥」
監督:ピーター・ヘッジス
アメリカ
写真
「GO!GO!L.A. 」
監督:ミカ・カウリスマキ
イギリス
写真
「アンジェラ/Angela」
監督:レベッカ・ミラー
アメリカ
写真
「ゲンスブールと女たち」
監督:ジョアン・スファール
フランス
写真
「セカンド・サークル」
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
ロシア
写真
「ブルーバレンタイン」
監督:デレク・シアンフランス
アメリカ




一夜一話の “今日はジャズかな?”  ヴァイタル・インフォメーション

1_20180310214103f2b.png




 今日は、ヴァイタル・インフォメーションという4人組のアルバム、「Where We Come From」。
 このバンドは、CD販売の区分で言えば、ジャズのうちのフュージョンのジャンルになる。

 たしかに、音量控えめにぼんやり聴き流せば、普通のフュージョンかもしれない。
 でもね、ボリューム上げてサウンドの一皮をむくと、単なるフュージョンを越える素晴らしさが聴こえて来てくる。 下記のリンク先から試聴できます。※1

 メンバーの構成は、ドラム、ベース、ギター、キーボード。
 最初に注目すべきは、リーダーでドラムのSteve Smithが叩き出すサウンド。乾いた音で疾走感がある。凄くいい!
 このノリあるリズムは、Jeff Andrewsのベースと相まって、まさにニューオーリンズ・ファンクの「ミーターズ」※2のサウンドを感じさせる。これをルーツにしているね。
 くわえて、5、15曲目ではニューオリンズのセカンドラインのドラミングが登場する。

 かたや、ギターのFrank Gambaleは、バンドメンバーの中で一番ジャズ寄りのミュージシャン。
 “いかにも”のフュージョンの雰囲気は、こいつの和音やリード時のメロディラインが生み出している。
 とは言え、アルバムのあちこちで独創的なフレーズも聴け、彼ならではのいい味を出している。
 10曲目のサーフィンミュージック的?な曲では、アンティークな演奏をする。

 次は、先に言ったベースのJeff Andrews。
 ソウルやR&B系のベースラインを主に、ウッドベースに持ち替えての4ビートも難なくこなし、2、14曲目ではエレキベースのハイポジションでリードもとる。それはちょっとジャコ・パストリアス っぽい音色かな。

 さて残るは4人目、キーボードのTom Coster。こいつがとても面白い。
 楽器は、ハモンドオルガンのB-3、フェンダーローズと、アコーディオン。
 B-3のプレイは、聴いてすぐ思い出すのは、60年代のアメリカでよくあったハモンドオルガン演奏による楽しいインストルメンタル・ミュージックや、ソウル系のインストルメンタル・バンド「Booker T. & the M.G.'s」※3のオルガンだと分かる。親しみやすい明るいメロディを奏でる。(4、5曲目)
 もちろん、フュージョン的演奏やジミー・スミス風のジャズオルガンもやる。
 さらにはTom Costerさん、アコーディオンで「ザディコ」※4という米国のクレオール系黒人民俗音楽風な演奏をする。(5曲目)

 アルバム全体について追加して言うと、彼らは4ビートジャズもやるし(2、12、14曲目)、(3、6、9、13曲目)ではノイジーな音楽もやっている。
 そんなわけで、結局のところ「こいつら、何者?」と思うだろう。
 そもそもフュージョン(Fusion)のフューズは融合ということなので、ヴァイタル・インフォメーションというバンドは、幅広い音楽への関心と消化を基に、多要素が網の目のように入り込んだ、「シモフリ状態サウンド」を作りだした「フュージョン・バンド」ってことになる。(そうか)
※1 このアルバムの試聴は、こちらアマゾン。
   https://www.amazon.co.jp/Where-We-Come-Vital-Information/dp/B000009NSK

5_2018031114220537a.jpg
※2 ミーターズとはニューオーリンズ・ファンクの産みの親のR&Bバンド。
   ミーターズのサウンドが聴ける代表的なアルバム(LP持ってます)は、1stアルバム「The Meters」(1969年)
   下記リンク先で試聴できます。
   https://www.amazon.it/Meters/dp/B00005KB3W
※3 Booker T. & the M.G.'sとは、ソウルのレーベルであるスタックス・レコードの専属スタジオ・バンドでした。
   聴ける代表的なアルバムは、彼らのデビューアルバム「Green Onions」(1962年)
   下記リンク先で試聴できます。
   https://www.amazon.co.jp/Green-Onions-12-inch-Analog/dp/B000066AVF
※4 ザディコとは、アメリカのクレオール系黒人達が演奏するアコーディオン音楽。詳しくは下記参照。
   https://ja.wikipedia.org/wiki/ザディコ
「 Where We Come From 」 (1998)

Drums – Steve Smith|Bass – Jeff Andrews|Guitar – Frank Gambale|Keyboards – Tom Coster|
Producer – Vital Information

1 Dr. Demento 3:10|2 Moby Dick 8:20|3 Craniac Trilogy - Part 1: Transport 0:53|4 Listen Up! 4:53|5 Swamp Stomp 6:00|6 Craniac Trilogy - Part 2: The Extraction 1:10|7 First Thing This Morning 5:12|8 Take Eight 6:10|9 Craniac Trilogy - Part 3: The Implant 2:17|10 Bob 3:59|11 Cranial Joy: Completion 1:06|12 Happy House 2:30|13 Cranial Meltdown: Dementia 1:28|14 Blow Fish Blues 5:40|15 Sitting Ducks 5:20|16 Once In A Lifetime 10:43|17 008 7:11|






映画「ボッカチオ'70」 監督:マリオ・モニチェリ、フェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ヴィットリオ・デ・シーカ

上







 イタリア喜劇映画です。
 4人の監督による4作品オムニバス。それぞれに主役の女優を立てて、その女性の奔放さを語ります。
 タイトル名「ボッカチオ'70」の「'70」は、本作製作年の8年後はこうなるかも、と語り、笑いを誘おうとしているのでしょうか。

 第1話「レンツォとルチアーナ」と第4話「くじ引き」は、イタリアの庶民層が主人公で、第2話「アントニオ博士の誘惑」は上流階級、第3話「仕事中」は貴族のお話。

1-0_20180310162557725.jpg いま観かえすと、第1話「レンツォとルチアーナ」が一番にいい出来だ。
 若い男女のレンツォとルチアーナのすなおさが清々しいし、1962年当時のイタリアのつつましい都市生活が垣間見れる。
 妊娠したと思い込んでの急ぐ結婚、親戚や職場に内緒で、会社帰りに立ち寄るようにして挙げるスピード略式結婚式と、この式を挙げる教会の要領いい対応。(ちなみに結婚行進曲は教会内にあるジュークボックスから流れる)

 式を挙げたその日から、新郎レンツォはルチアーナの狭い実家(アパートで5人家族)の一員となり、新婚を味わえないと嘆くレンツォ。結局、共稼ぎの2人が越した先は当時としては、未来をちょっと感じさせる新築高層のアパート。

 ふたりが勤務するビスケット工場、嫌な上司、退職金、転職、会計士資格試験準備、ローン返済計画、新婚旅行計画などのエピソードは、今も観る者の共感を呼ぶことでしょう。
 ふたりは引っ越し、転職し、レンツォは給料は少し上がったが夜勤の仕事。朝帰りの夫を待ってルチアーナは朝、出勤していきます。


20_20180310162707a53.jpg 第4話の「くじ引き」の主役はソフィア・ローレン。一般的にはこの第4話がお気に入りになるかもしれない。
 ソフィア・ローレン演ずるゾーエは、射的場の女。
 田舎のこの町で売られる闇くじで、これに当選するとゾーエとベッドを共にすることができる。だから町中の男たちはワクワク。
 今回のラッキー男は教会の童貞中年男、そしてゾーエの心を射抜いた男も現れる。イタリアの田舎の粗野を味わいましょう。

 第2話の「アントニオ博士の誘惑」は、初めて観ると意表を突いた話で、それなりに面白いかもしれないが、改めて観ると、社会的な道徳的な既成概念を単純化先鋭化していて(それで笑いを取ろうとしているが面白くない)、なかには偏見や差別につながる表現もあり、フェリーニ作だが駄作。
  
 第3話の「仕事中」は、ヴィスコンティの出自である貴族の「結婚」をテーマにした室内劇仕立ての話。
 まだ新婚の域なのに早や倦怠期中の夫婦、資金力ある貴族の親の庇護から抜け独立し、仕事をすると言い出した主人公プーペ夫人(ロミー・シュナイダー)のお嬢様的思いつき、娼婦と遊びそれが新聞ネタになった夫はプーペの親の金にすがる。
 そんな夫婦の駆け引きを描きます。
製作年:1962年|上映時間:165分|製作国:イタリア、フランス|
第1話レンツォとルチアーナ」 Renzo e Luciana
監督・脚本:マリオ・モニチェリ、共同脚本:ジョヴァンニ・アルピーノ、イタロ・カルヴィーノ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、撮影:アルマンド・ナンヌッツィ、主演:マリサ・ソリナス、ジェルマーノ・ジリオーリ
第2話アントニオ博士の誘惑」 Le tentazioni del dottor Antonio
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ、共同脚本:エンニオ・フライアーノ、ゴッフレード・パリーゼ、トゥリオ・ピネリ、ブルネロ・ロンディ、撮影:オテッロ・マルテッリ、主演:ペッピーノ・デ・フィリッポ、アニタ・エクバーグ
第3話仕事中」 Il lavoro
監督・脚本:ルキノ・ヴィスコンティ、共同脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ、撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ、主演:ロミー・シュナイダー、トーマス・ミリアン、パオロ・ストッパ
第4話くじ引き」 La riffa
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ、脚本:チェーザレ・ザヴァッティーニ、撮影:オテッロ・マルテッリ、主演:ソフィア・ローレン

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映画「宇宙人 東京に現わる」  監督:島耕二

上






 SF娯楽映画です。
 「宇宙人 東京に現わる」というチョット怖いタイトルですが、宇宙人地球侵略といった好戦的な話じゃない。

 我々よりずっと、科学的に文化的に進化した太陽系外の宇宙人・パイラ星人は、実は地球を案じてやって来たのです。
 しかし円盤がいきなり飛来し、地球は大騒ぎ。
 そんなわけで真意を伝えたいパイラ星人は、人間の姿に変身して東京の日本人に友好的にコンタクトをとろうとするのですが。
 
 それで分かったこと。
 パイラ星人が言うに「地球を観察していると、最近やたら地球のあちこちで核実験のキノコ雲が見られる。我々もかつて核を持っていたが廃絶した。地球人の未来を案じる我々は、地球人も核廃絶の道を選ぶように提言しに来た」と。(まるでノーベル平和賞を授賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の人のよう)
 「だから地球人のなかでも、広島長崎で悲惨な経験をした日本人と最初にコンタクトをとるのが一番だと考え、こうして話している」と。

1-0_20180308144029517.png 時を置いて次に分かったこと。
 地球人には発見できないほどにまだ遠くにいる天体R(彗星?)だが、いま刻々と地球に向かって高速で接近している、らしい。
 これは一大事!核保有各国はそれぞれに、そのすべての核爆弾を天体Rへ向けて発射し、天体破壊ないしはコース変更を試みたのですが、残念ながら天体Rに何の変化も起きませんでした。
 その間も天体Rは地球にどんどん接近し、今や肉眼でも見えだした。

 そこで、こりゃあかんと思ったパイラ星人は、世界でただ一人、ウリュウムという元素を発見し密かに研究する松田博士(山形勲)とコンタクトをとった。(パイラ星人も知らない発見だった)
 ウリュウムで作る爆弾は、原子爆弾や水素爆弾より破壊力があるらしい。
 パイラ星人は松田博士から研究成果を提供してもらい、地球近くの宇宙空間に浮かぶ母艦内で急ぎ爆弾を製造した。そして母艦からRへ向けて発射。Rは期待通り破壊された。
 かくしてパイラ星人は地球の危機を救ったのであった。(終わり)
 以上が話の核ですが、本作はSF娯楽映画ですので、パイラ星人という宇宙人らしさの強調、(SFによくある)科学者数人の懸命な働き、取り巻きの若い男女、無垢な子供たち、世間一般の驚き恐怖を中心に物語ります。

 話の顛末は至って単純なのですが、映画のあちこちに挿入される野外シーンが効果的で、映画を生き生きしたものにしています。センスの良さを感じます。

 本作製作年の1956年は、米ソともにまだ人工衛星を実現していませんので、実際はRへ確実に、核爆弾をロケット発射できなかったのでしょう。(たぶん)
 ちなみに1964年製作のスタンリー・キューブリックの映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」では、核爆弾はミサイルじゃなくて、まだ爆撃機B-52から「投下」していますね。(下線部から映画記事をご覧いただけます)

 また本作製作年の1956年とは、太平洋戦争(1945年)から11年経ったが、サンフランシスコ講和条約発効(1952年)からまだ4年しか経っていない。つまり国際社会の舞台に日本が復帰して間もないころ。まだまだ信用度は低かったろう。
 だからでしょうか、R天体破壊について、日本は海外各国に対し音頭をろうとするのですが、その外交姿勢は腰が引けていてドメスティック。内向的なのを感じました。
 ついでに言えば、日本の民間一般人が、観光目的で海外旅行が自由に出来るようになるのは、まだ8年も先。(1964年)
 そう考えると、観客は、東京に来て日本人に化けたパイラ星人の星よりも、外国のほうが遠い国と思って観ていたかもしれません。

 お話の結末のその後を考えると、Rに向けてすべての保有核爆弾を使いつくした核保有国は、また新たに核を製造するのでしょうね。
 一方、松田博士が発見したウリュウムについて、どこかの国がその研究成果を盗もうとするのでしょうか。(研究資料はR天体破壊後、破棄したということでしたが博士の頭の中にはあるわけです)
下2監督:島耕二|1956年|87分|
原案:中島源太郎|脚本:小国英雄|色彩指導:岡本太郎|美術:間野重雄|特殊技術:的場徹 、築地米三郎 、田中捨一|大映カラー使用作品
出演:磯辺直太郎(南部彰三)|磯辺徳子(目黒幸子)|磯辺徹(川崎敬三)|小村芳雄(見明凡太朗)|小村多恵子(永井ミエ子)|松田英輔(山形勲)|松田清子(平井岐代子)|天文台通信係(フランク・熊谷)|高島博士(河原侃二)|青空ひかり / 天野銀子(パイラ人)(苅田とよみ)|パイラ人第二号(八木沢敏)|パイラ人第三号(夏木章)|パイラ人第四号(津田駿二)|黒メガネの男(斎藤紫香)|ほか

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映画「誘惑されて棄てられて」 イタリア映画  監督:ピエトロ・ジェルミ

上
ペッピーノとアニェーゼ

 「誘惑されて棄てられて」とは、なんとも悲しい題名ですが、これはビターなドタバタ・コメディです。
 お話は、シチリアに住む2人、16歳の娘アニェーゼとペッピーノが結婚に至るまでの、てんやわんやな物語。
 ただしラブロマンスではない。アニェーゼとペッピーノは互いに敵対しながらも、結婚してしまいます。なぜ?

1-0_2018030510014608b.jpg 脚本は監督自身の作。監督は本作の舞台、イタリアの離島シチリア島※の社会規範を喜劇仕立てで批判しています。(※シチリアはイタリアの自治州)

 そのシチリアの社会規範を体現する役回りが、アニェーゼの父親ヴィンチェンツォ。この喜劇の主人公です。
 家長であるヴィンチェンツォは、唯一の誇りである「名誉」を最優先にして生きる男。(シチリアの社会規範、その1)
 だから世間体を悪くすることには断固立ち向かうのです。

 さて、物語の切っ掛けは、アニェーゼの姉で太っちょのマティルドに、父が認める許婚(いいなずけ)のペッピーノがいるのですが、このペッピーノが美人のアニェーゼに手を出して妊娠させてしまったことでした。
 苦しむアニェーゼは教会で懺悔しますが、ことはどうにもなりません。
 ヴィンチェンツォにとっては、このことが世間に知れては、彼の名誉(家名、家長責任等)が大きく傷つきます。こうなったら、何としてもアニェーゼとペッピーノを結婚させなければ・・。

 一方、ペッピーノは開き直ります。婚約者マティルドをないがしろにして置きながら、婚前交渉を許したアニェーゼを尻軽女と罵り、俺はアニェーゼとは結婚しないと、彼の両親にわめきます。

 これを聞くに及んだヴィンチェンツォは怒り心頭、怒髪天をつく。アニェーゼも愛想が尽きました。
 姉のマティルドとの婚約は流れ、アニェーゼは今後誰とも結婚できないかもしれない。憎っくきペッピーノ!

 そこでヴィンチェンツォは、いとこの弁護士に極秘で相談します。
 弁護士は「これは未成年誘惑罪だ、ペッピーノはアニェーゼと結婚する以外に罪は免れない。しかし法の力で結婚させては噂の種になるだろ?」と言うと、「奴を殺す!」と怒鳴るヴィンチェンツォを制して「いや、それでは殺人罪で20年になる」
 しかしと、弁護士は刑法を読み上げる。
 「法には『自己の配偶者、娘、姉、妹が不法なる肉体関係を結ぶ時、これを発見し激昂の上殺害せる者は、3年以上7年の刑に処す』とある」と・・。
 つまり、シチリアでは「名誉を汚された」場合、殺人の罪はとても軽いのです。(シチリアの社会規範、その2)
2-0_20180305100559139.jpg
 ヴィンチェンツォは早速、気弱な長男アントニオに拳銃を持たせ、隠れ住むペッピーノを射殺しに行かせます。
 一方、これを知ったアニェーゼは警察に告げ、警察が現場に急行し二人を連行します。人殺しは回避できました。

 そして事件は殺人未遂事件として裁判になります。
 ペッピーノはアニェーゼはもとから淫乱な女だったと証言します。(そういうシーンが挿入されます)
 ま、とにかく、これは喜劇ですから、裁判シーンは可笑しく混乱します。何も解決しません。

 ヴィンチェンツォは、徐々に世間に漏れ出す不名誉にいら立ちを隠せません。
 そんななか、彼にひとつのアイデアが浮かび、ペッピーノ一家を巻き込んで、自力で解決しようとします。
 つまり、公権力に頼らず、自分の力で問題を解決しようとします。(シチリアの社会規範、その3)
 
 先に書いた通り、どの道、ペッピーノの未成年誘惑罪はアニェーゼと結婚する以外に罪を免れないのですが、しかし法の力で結婚したとなれば、ヴィンチェンツォは笑い者になってしまうわけです。
 これを切り抜けるアイデアは、ペッピーノによる強引な誘拐結婚という大芝居でした。衆目を集める狙いで、町の祭りのさ中に行われました。これでヴィンチェンツォに限らずペッピーノの両親も面目が立ったわけです。??
 その社会の人々にとって、正しく至極当たり前だとして、日々空気のように存在する「規範」が、おかしい事もあるわけです。
 それは本作のように、シチリア独特の風習や法律であったりします。広くみれば、その規範の範囲はひとつの国、あるいは、ある時代であったりします。

3_2018030510100064a.jpg ちなみに、姉のマティルドは父親から貧乏貴族の独身男性(→)を紹介されますが、ペッピーノ事件に翻弄されて貴族男は去りました。かわいそうにマティルドはその後、修道院に入ります。
 
 町の警察署で、壁に貼ってあるイタリア全土の地図を前にして、警部がシチリア島を手で隠しながら嘆くシーンが印象に残ります。
 もうひとつ印象に残るのは、アニェーゼ役の女優ステファニア・サンドレッリがとても妖艶。その後この女優は妖艶さが売りになったそうです。
オリジナルタイトル:Sedotta e Abbandonata
監督:ピエトロ・ジェルミ|イタリア|1963年|115分|
脚本:ピエトロ・ジェルミ 、ルチアーノ・ビンチェンツォーニ 、アージェ&スカルペッリ|
撮影:アイアーチェ・パロリン|
出演:アニェーゼ(ステファニア・サンドレッリ)|ペッピーノ(アルド・プリージ)|アニェーゼの父ヴィンチェンツォ(サーロ・ウルツィ)|アニェーゼの姉マティルド(パオラ・ビッジョ)|アニェーゼの兄アントニオ(ランド・ブッツァンカ)|ほか

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一話 (京都、旅行、美味など)      書評   美術

2年前・4年前・6年前の2月、一夜一話。(2016年2月・2014年2月・2012年2月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-02-28 Wed 06:00:00
  • 映画
2年前の2月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の2月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2016年2月 Archive)

写真
「白河夜船」
監督:若木信吾
安藤サクラ、井浦新
写真
「味園ユニバース」
監督:山下敦弘
渋谷すばる、二階堂ふみ
写真
「有りがたうさん」
監督:清水宏
上原謙、桑野通子

写真
「エレナの惑い」
監督:アンドレイ・
   ズビャギンツェフ|ロシア
写真
「ブリスフリー・ユアーズ」
監督:アピチャッポン・
   ウィーラセタクン|タイ
写真
「少年、機関車に乗る」
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ
タジキスタン

写真
洋画編ちょっと変な映画」
でも、どれも可笑しい話です。
    
写真
ブルックナー交響曲第8番ハ短調
ダニエル・バレンボイム指揮
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
写真
最近読んだ本。
「闇に消える美術品」
「美術品はなぜ盗まれるのか」

4年前の2月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の2月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年2月 Archive)

写真
「怪談海女幽霊」
監督:加戸野五郎
明智十三郎、万里昌代
写真
「悪の階段」
監督:鈴木英夫
山崎努,西村晃,加東大介,団令子
写真
「江戸川乱歩猟奇館 屋根裏
    の散歩者」
監督:田中登
宮下順子、石橋蓮司
写真
「アドレナリンドライブ」
監督:矢口史靖
石田ひかり、安藤政信
写真
「緋ざくら大名」
監督:加藤泰
大川橋蔵、大川恵子
写真
「馬鹿が戦車でやって来る」
監督:山田洋次
ハナ肇、犬塚弘
写真
「ウンタマギルー」
監督:高嶺剛
小林薫、戸川純
写真
「ウルトラ ミラクル ラブストーリー」
監督:横浜聡子
松山ケンイチ、麻生久美子

写真
「デス・プルーフ in グラインドハウス」
監督:クエンティン・タランティーノ
アメリカ
写真
「シャロウ・グレイブ」
監督:ダニー・ボイル
イギリス
写真
「クワイエット・ファミリー」
監督:キム・ジウン
韓国
9Hukkle.jpg
「ハックル」
監督:パールフィ・ジョルジ
ハンガリー
写真
「イメージの力 
 ~国立民族学博物館コレクションにさぐる」

国立新美術館

6年前の2月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の2月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2012年2月 Archive>

写真
「猫と庄造と二人のをんな」
監督:豊田四郎
山田五十鈴、森繁久彌
写真
「初恋・地獄篇」
監督:羽仁進
高橋章夫、石井くに子
写真
「マリアのお雪」
監督:溝口健二
山田五十鈴
写真
「深呼吸の必要」
監督:篠原哲雄
香里奈、谷原章介
写真
「音符と昆布」
監督:井上春生
市川由衣、池脇千鶴
写真
「幸福のスイッチ」
監督:安田真奈
上野樹里、沢田研二
写真
「愛と死の記録」
監督:蔵原惟繕
吉永小百合、渡哲也

写真
「アンダーグラウンド」
監督:エミール・クストリッツァ
仏・独・ハンガリー
写真
「真昼の不思議な物体」
監督:アピチャッポン・
   ウィーラセタクン|タイ
写真
「小さな兵隊」
監督:ジャン=リュック
   ・ゴダール|フランス
写真
「北の橋」
監督:ジャック・リヴェット
フランス
写真
「ふたつの時、ふたりの時間」
監督:ツァイ・ミンリャン
台湾
写真
「祝祭」
監督:イム・グォンテク
韓国
写真
「シンプル・シモン」
監督:アンドレアス・エーマン
スウェーデン
写真
「ぼくとママとおまわりさん」
監督:エラ・レムハーゲン
スウェーデン


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映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」  監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

上


 これはなかなかいい映画、見ごたえもある。(ビターな喜劇です) 
 スーパーヒーローの賞味期限が過ぎ、ハリウッドから見放された映画俳優リーガンが、過去の栄光にさいなまれながらも、演劇の道で再起しようする話。

1-0_20180224204517a23.jpg 主人公リーガンの心模様がよく描かれています。
 そしてカメラが実に元気がよい。
 楽屋裏の狭い通路を行く俳優を、揺れずブレずに追いかけるシーンが幾度もある。
 またシーン遷移が途切れなく滑らか、この工夫が楽しい。
 さらには、VFX(特撮)でリーガンの超能力(?)が表現される。

 では、お話です。
 リーガン(マイケル・キートン)は、かつて、スーパーヒーロー映画「バードマン」シリーズで絶大な人気を得た映画俳優だったが、乗りに乗った波は消え去り、今は落ち目。
 落ち込むリーガンの耳には、何かとリーガンを批判するバードマンのささやき(幻聴)が、うるさく聞こえる始末。

 しかしリーガンは負けてはいない、再起を目指す。
 レイモンド・カーヴァーの小説を舞台化してブロードウェイで上演しようと準備は進む。
 自ら脚色・演出・主演を手がけ、不足の資金は自らねん出し、プロデューサーには、リーガンの弁護士で友人のジェイクがあたる。
 現場とプロデューサー間によくあることだが、懸命だが気分屋で感情爆発のリーガンと、冷静沈着なジェイク両者の口論は絶えない。

 この2人を取り巻く登場人物。(この映画は、ブロードウェイの劇場舞台裏に集う人々の群像劇でもあります)
 リーガンの娘サム(エマ・ストーン)は父親の付き人、薬物依存症で最近まで入院していた。父娘のコミュニケーションはうまくいっていない。
 リーガンの芝居に出演する女優レズリー(ナオミ・ワッツ)は、今回ブロードウェイ初出演で胸いっぱい。
 同じく出演女優ローラ(アンドレア・ライズボロー)は、リーガンの愛人。妊娠したと言われるが・・。
 楽屋を訪れるシルヴィア(エイミー・ライアン)は、リーガンの元妻でサムの母親。2人が会うと、良かった昔を思い優しく語らうが、次の瞬間には口喧嘩しシルヴィアは去るといった塩梅。

2-0_201802242047462d9.jpg さて、リーガンは相手役に最適の男優が見つからず壁にぶち当たっていた。
 そこへ舞い込んだうまい話。
 それは、ブロードウェイ初出演のレズリーが「私の恋人マイクはどう?」という提案だった。
 その恋人とは、なんとブロードウェイ舞台俳優として著名なマイク(エドワード・ノートン)だった。
 おまけにレズリーは台本の読み合わせを、自宅でマイク相手にやっていたので、マイクはすでにセリフを覚えていた。もちろんリーガンは喜んでマイクを起用した。

 プレビュー公演が始まる。(本公演開幕前に、2〜3週間の期間を設けておこなうリハーサル的な試験公演)
 ところがこのマイク、芝居は巧いが、あまりにも自由奔放な性格。
 リーガンに対し言いたい放題を言う。リーガンは痛いところを突かれ爆発する毎日、ついに取っ組み合いのけんかとなる。
 またマイクは、舞台の小道具であるジンを本物のジンにすり替え、公演中の舞台上で飲む。これに腹を立てたリーガンは、その日の公演を途中で終わらせた。
 さらにマイクは、リーガンの娘サムに言い寄り、いつしかサムもその気になる。(口も巧い)

 そしてもう一人、リーガンにとって大変手ごわい相手が、ニューヨーク・タイムズの辛辣な演劇批評家、タビサ・ディッキンソンという女性。
 プレビュー公演も観ず、ハナからリーガンを酷評するつもりだ。元・娯楽映画俳優ごときが、ブロードウェイの舞台に立つこと自体が許せないらしい。

 ともあれ、プレビュー公演は続く。
 そんなある日、公演中、下手(しもて、舞台左脇)に下がったリーガンは衣装を着替え、次の出番を待つ間に、ちょっとタバコが吸いたくなった。
 楽屋口のドアを開けタバコを吸っていると、ドアが急に締まり、衣装の裾がドアに挟まってしまう。裾を引くが抜けない。魔が差した。時間は無い。
3-0_2018022420542668d.jpg 挟まった衣装を脱ぎ捨てると、パンツ一枚の姿。仕方ない。この格好で劇場表玄関へと向かった。そこはニューヨークの街の中。人々は「あっ、バードマン!」と口々に叫ぶ。
 なんとか出番に間に合ったリーガンは客席後方から、パンツ一丁で登場する。
 芝居が終わり、今日はいつになく熱演だったと言われるが・・。
 翌朝の新聞はこれを記事にした。それよりも、街の通行人たちによる投稿動画の拡散でネットは大騒ぎ。
 
 こんなあり様のなか、さすがのリーガンも鬱(うつ)の一歩手前になる。  
 頭の中、真っ白状態のリーガンは、現実から解き放たれた浮遊感を感じるようになった。NYの空中をバードマンになって飛んでいるのだ。
 リーガンを批判し続けてきた、心の中のあのバードマンがこの時、リーガンに大きな勇気を与えているのだった。

 とにかく何回かのプレビュー公演は劇場を満席にできた。
 そして本公演が始まる。パンツ一枚の動画のおかげで、チケット前売りは完売。プレミアムまでつく。
 その初日、ついにあの辛辣な演劇批評家も客席に現れる。

4-0_20180224205647bf1.jpg しかし、この日、リーガンはある重大な決意を持って舞台に立った。(その決意とは、観てのお楽しみ)
 その翌朝、辛辣批評家による絶賛の記事がニューヨーク・タイムズに掲載されたのだが・・・。
 ちなみにラストシーンはさらに、観てのお楽しみ。

オリジナルタイトル:BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ|アメリカ|2014年|120分|
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 、 ニコラス・ヒアコボーネ 、 アレクサンダー・ディネラリス・Jr. 、 アルマンド・ボー|
撮影監督:エマニュエル・ルベツキ|
出演:リーガン・トムソン(マイケル・キートン)|ジェイク(ザック・ガリフィアナキス)|マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)|ローラ(アンドレア・ライズボロー)|シルヴィア(エイミー・ライアン)|サム(エマ・ストーン)|レズリー(ナオミ・ワッツ)|ほか

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映画「鶴は翔んでゆく」 旧題名「戦争と貞操」 (1957年)  監督:ミハイル・カラトーゾフ

上


1-0_201802230931043af.jpg


 ヴェロニカとボリスは結婚を誓い合ったものの、戦争が始まり志願兵となったボリスは戦場へ、しかし彼は行方不明となる。
 ヴェロニカは後ろ髪を引かれながらも、ボリスのいとこ・マルクと結婚してしまうのだが・・。

 よくあるストーリーだが、主役ヴェロニカを演ずる女優タチアナ・サモイロワの美貌と表情が、この映画を魅力あるものにしています。
 また、カメラがいい仕事をしている。
 雑踏の中を行くヴェロニカを、俯瞰気味に構えて追い続けるシーンなど観ると、他の映画のカメラは怠けているんじゃないかとさえ思えてくる。

2-0_2018022309451751d.png

 ところが残念なことに脚本がいささか粗雑。
 話の軸足は、戦場よりも銃後の話にあるんだが、エピソードを詰め込みすぎて、その一つひとつを十分にこなせずに次へと進むためか、何やら先を急いでいる感じが否めない。そしてラストシーンは強引なエンディングだね。

 ナチスドイツによるモスクワ空襲のさ中、ヴェロニカがマルクに襲われてしまう。そののち、ふたりは結婚することになるが、タチアナ・サモイロワの悲しい表情が印象に残る。

オリジナルタイトル:Летят журавли
英語タイトル:THE CRANES ARE FLYING

監督:ミハイル・カラトーゾフ|ソ連|1957年|97分|
脚本:ヴィクトル・ローゾフ|撮影:セルゲイ・ウルセフスキー|
出演:ヴェロニカ(タチアナ・サモイロワ)|ボリス(アレクセイ・バターロフ)|ボリスの父親ヒョードル(ワシリー・メルクーリエフ)|ボリスのいとこマルク(アレクサンドル・シュウォーリン)|ボリスの姉イリーナ(スベトラーナ・ハリトーノワ)|ボリスの友人ステパン(ヴァレンタイン・ズブコフ)|ヴォロヂャ(コンスタンチン・ニキーチン)|ボリスの祖母(アントニーナ・ボグダノワ)|チェルノフ(ボリス・ココーフキン)|アンナ(エカテリーナ・クプリヤノヴァ)

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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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