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一夜一話

映画「朧夜の女」(おぼろよの女) 1936年 監督:五所平之助

下
 照子


 時は昭和の初め頃、叔父に連れられ行った先の銀座のバー、そこの女と出来てしまった初心な大学生の初恋の顛末。

01-_20170919135736160.jpg 大学生の誠一(徳大寺伸)は、父を早くに亡くし、母のお徳(飯田蝶子)が女手一つで育てた一人息子。すれてない箱入り息子でいい男。
 お徳は、牛や(牛鍋屋)で働いているが、若いころは芸者だった様子。どこかの店の主人風の旦那に頼まれ、唄、三味線の個人教授をしている。

 誠一を銀座のバーに連れ出した張本人の叔父・文吉(坂本武)は、お徳の実兄で昔は粋な遊び人だった。
 その文吉が収まるところにやっと収まって所帯を持った、その妻が、おきよ(吉川満子)という女。
 この夫婦には子がいない。神社の石段下で張物屋を営んでいる。(着物の洗濯屋さん:お客の着物を抜糸して反物にし洗濯する稼業。洗い張り。)
 以上こんな登場人物の描写が話の前段にあって、映画は物語のその先を語り始める。

2-0_20170919140548d74.jpg バーの女・照子(飯塚敏子)は、昔風にありていに言えば、芸者上がりの女給だ。
 だが照子は数年前までは芝神明で指折りの芸者だった。旦那(パトロン)がついて芸者を辞めたが、その旦那が急死、照子の人生は下り坂となっていた。

 文吉は芝神明にいた照子を覚えていた。照子も客として文吉を覚えていた。銀座のバーは再開の場でもあった。
 さて、その後、誠一と照子は密かに会い文通を交わした。ふたりの愛は純であった。しかし誠一はこのことを母親に言えないでいる。

 そしてある日、誠一は照子から妊娠したことを告げられる。
 誠一は驚き戸惑うが、照子は心の奥底で、これを機に身を引くことを決めていた。
 誠一さんは勉強をして将来偉くなる人。子一人、私ひとりでもちゃんと育てていける・・。

 かたや、悩み抜いた誠一は、叔父・文吉に打ち明ける。(死んでも母親には言えない)
 文吉は驚きはしたが、すぐさま、こう思った。自慢の甥が自分を頼りにしてくれた嬉しさ、照子はまったく知らぬ女じゃないこと、さらにはわが身を振り返れば、身に覚えがないことでは無い。
 そこで文吉は思案の末、自分が照子と浮気して子をこしらえてしまった、という嘘を思いつく。そして、これを妻のおきよに言った。

 これを聞いたおきよは、大いに悲しむ一方、これまでの文吉の放蕩を思うと、そんなには驚かなかった。
 誠一と照子の関係を未だ知らぬ母・お徳は、兄の放蕩ぶりを「いい歳して」と非難するも、義姉として子供の出来ないおきよに言う。「兄さんは女ときっぱり分かれる、その代わり、子は家で育てると言ってる。辛いだろうけど、いっそ育ててみれば。赤ちゃんは可愛いよ。世間は、おきよさんはよく出来た嫁だと、ほめそやすよ。」

 ひとつ目の嘘が通って文吉は、慌てて空き家を探し、土手下の家に照子を住まわせる。
 つまり今度はこれ、姉のお徳に対しての嘘。文吉と照子のこの愛の巣に、お徳は便所の傍の軒に吊り下げる「吊り下げ手洗い器」や何やかにやを買いそろえてやってくる。

 さて文吉、お徳が去ったあと、ポツンと座る照子、そこへ誠一が現れる。
 誠一は言う、こんな嘘はやめよう。俺は母親に正直に言う、結婚しよう。叔父や叔母にこれ以上迷惑はかけられない、俺は卑怯だ、と。しかし、照子は誠一の訴えを受け流すだけだった。

 それからそんなに時を経ず、照子は妊娠中毒症で急遽入院する。そして、あっけなく世を去る。
 土手下の家で通夜が行われた。霊前には文吉の友人やお徳もいる。そこへ誠一が現れた。これに気づいた文吉は彼を家の外に連れ出す。
 「もうこれ以上の嘘は、耐えられない、母親にすべてを言う。」と泣く誠一を制して文吉は言う。「この世の中、嘘も正しいことがある、何よりも照子は今もそれを望んでいる」と。


 なにしろ80年以上前の映画です。
 世間の常識が、今と違うことを理解して観ましょう。
 それと、近代を対象にした都市民俗学?とでも言いましょうか、銀座のバーの様子、そこで働くキラキラ衣装の少女、牛鍋屋の様子、張物屋の職人の仕事風景、寄席の様子、一般家屋の室内などに注目しても面白いかもしれません。

監督:五所平之助|1936年|111分|
原作:五所亭|脚本:池田忠雄|撮影:小原譲治
出演:照子、バーでの源氏名(飯塚敏子)|誠一(徳大寺伸)|文吉(坂本武)|お徳(飯田蝶子)|おきよ(吉川満子)|医師(佐分利信)|町内の旦那衆(河村黎吉、野本正一、新井淳)|職人(青野清、谷麗光)|芸者(忍節子)|牛やの女(岡村文子、江坂静子)|女給(朝見草子、立花泰子)|女中(大関君子)|牛やの主人(水島亮太郎)|学生(大山健二、阿部正三郎、金光嗣郎)|講釈師(一龍斎 貞丈)|

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映画「クスクス粒の秘密」 フランス映画 監督:アブデラティフ・ケシシュ

上2










 「クスクス粒の秘密」という題名から、印象としてファンタジックな映画に思われるかもしれないが、そうじゃない。
 フランス南部の港町(セット Sète)に住むチュニジア系移民一世とその子たちの話です。

 総じて、話のタッチは重くなく、比較的軽いですが、「人生、そうそう上手くは行かない」と映画は言っています。しかし、人々はそんな人生をなんとか受け入れ、日々を過ごしています。

 そして、彼らのそんな様子は(傍から見る人には)、時に滑稽じみた様にみえることもあると映画は言っています。


1-0_20170918141944b2f.jpg
 冒頭のいくつかのシーンで映画は、主な登場人物の境遇と人間関係をみせます。
 それは同時に、この港町の現状を語っています。(中小造船業の斜陽、港の漁業の衰退、観光業へのシフト。)

 港のドックで働くスリマーヌは小型船の造船・修理のベテラン、御年60歳でチュニジア系移民一世。実直で無口な男。
 彼の子は4人いて、息子が2人に娘が2人、みな二世。長男長女は既婚。しかし、チュニジア系移民一世の妻スアドとは離婚している。 

 スアドは、チュニジアの伝統料理クスクス((粒状のパスタ))が得意なBIG MAMA。
 子たちとその伴侶や孫たちは母親の家に集って、おふくろの味・クスクスを食べることを楽しみにしている。
 子たちの伴侶はフランス人とロシア人ですが、みな、とても美味しいクスクスが好き。
 しかし、その席にスリマーヌはいない。

2-0_20170918143612705.jpg スリマーヌは愛人ラティファと暮らしている。ラティファもチュニジア系一世だ。
 彼女は小さなホテルと付随するバーを買い取って生計を立てている。そして、ラティファの一人娘リムが母親を手伝っている。リムは20歳で二世。

 スリマーヌはホテルの狭い空き部屋に住んでいる。居候だ。
 ラティファとリムの母娘もホテルの一室を住居としている。
 くわえて、チュニジアの民族音楽バンドの老メンバーも住んでいる。彼らはバーで演奏し生活している。


 さて、こんなシチュエーションをもとに、物語は展開します。
 長年勤めた職場をリストラで追われたスリマーヌは、廃船間際の船を買って船上レストランを始めようと考えます。
 世事に疎いスリマーヌは、リムの助けを借り、資金の手配や役所への諸手続きを始めます。しかし、レストラン経験もなく手元資金もなく、よって信用がありません。でも、船の修理技術はあるスリマーヌは、船の改装だけは済ませました。

 ちなみにこのレストランの売りは、クスクス。
 そうです、スリマーヌは元妻のスアドをコック長にしようという算段。この段で、愛人ラティファはソッポを向きっぱなし。

 信用が容易に得られないと分かったスリマーヌとリムは、お役人や仲間を呼んで、とても美味しいクスクスの船上パーティを企てます。
 バンドのメンバーは、ギャラは出世払いでいいとして、演奏を買って出ます。
 そして彼の息子・娘4人とその伴侶も、このパーティ準備を手伝います。もちろん、前菜やクスクス料理はスアドが作ります。(船にはまだ厨房がありません、スアドは自宅で料理しました)
 彼女はこれまでも、誰かの結婚パーティなどで大量の料理経験はあるのです。準備万端。

 いよいよ、客が船に集まります。酒が出て前菜が出て演奏が始まり、パーティは賑やかに盛り上がります。
 時間を見計らい、スリマーヌの長男次男が車で自宅に戻り、スアドが作った各種のクスクス料理を取りに行きます。そして、いくつかの大鍋を船上に持ち込みました。

 だが、ここで問題が起きます。
 何が問題かというと、長男の浮気相手の女性がパーティに来ていたのを長男が気づき、やばいということで、彼は密かに会場を抜け出し、車でどこかに逃げてしまいます。
 ですが、肝心要のクスクス(粒状のパスタ)を蒸した鍋が、まだ長男の車のトランクの中! これだけを運び出し忘れていたのです。

 事態を知ったスリマーヌはじめ皆は顔面蒼白、もう呆然としています。一方、客たちは、クスクス料理が出てこないことにいら立ち始めます。
 そこへ、ラティファとリムの母娘が客として遅れてやってきました。リムは嫌がる母親を説き伏せてやっとのことで連れて来たのです。なにしろ愛人ですから、この場にそぐわない。(一方、スアドも会場には来ていません)

 お話はここに来て頂点に差し掛かります。急いで話の先を言えば結果的に、ラティファとリムは救世主でした。大活躍!
 かたや、要のスリマーヌはというと、会場を後にして長男を探しに行きますが、彼の混乱ぶりは悪夢のシーンにありがちな展開に・・。(このシーンは冗長ですがご愛敬でみてください)

tunisia-map1.jpg 映画の中で聴こえて来るチュニジア民族音楽バンドが奏でる魅惑的なサウンド、これが流れることで、このフランス映画がチュニジア映画風に観えてきます。お楽しみください。(監督の出自はチュニジアとのこと)

 映画の出来具合については、2013年製作作品「アデル、ブルーは熱い色」の方が、エッジが効いていて、ずっと良い。 

オリジナルタイトル:La graine et le mulet|
監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2007年|135分|
出演:スリマーヌ(アビブ・ブファール)|リム(アフシア・エルジ)|上の娘カリマ(ファリダ・バンケタッシュ)|愛人ラティファ(アティカ・カラウイ)|長男の嫁でロシア人のジュリア(アリス・ユーリ)|下の娘オルファ(サブリナ・オアザニ)|元妻スアド(ブラウイア・マルズーク)|ほか

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〜モンテヴェルディ生誕450年記念〜 ラ・フォンテヴェルデ 第25回定期演奏会 マドリガーレ集全曲演奏シリーズ 「円熟期II :サン・マルコの楽長」

2_201709171331175e6.jpg


 白寿ホールのコンサートに行ってきた。
 いい、コンサートでした。満足。
 舞台の上の方々が、実に楽しそうに演奏していました。

 メンバーの多くは、古楽オーケストラのバッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーなんですね。
 どうりで、どこかで見た顔があった。

 昨今よく言われる、Jクラシックなんていう生半可な範疇を優に飛び越えた、実力ある立派な演奏でした。

 リュート演奏の方が弾くギター(ルネッサンスギター?)、あれ、実物を初めて見て感激。カポタストをしてました。

 モンテヴェルディ(1567- 1643)は、16~17世紀にかけてのイタリアの作曲家、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、歌手。
 マントヴァ公国の宮廷楽長、ヴェネツィアのサン・マルコ寺院の楽長を歴任し、ヴェネツィア音楽のもっとも華やかな時代の一つを作り上げた人。
 彼の作品はルネサンス音楽からバロック音楽への過渡期にあると位置づけられる。(ふむふむそうなんだ)


出演
ラ・フォンテヴェルデ:
鈴木美登里、染谷熱子、中山美紀(ソプラノ)、上杉清仁(カウンターテナー)、布施奈緒子(アルト)、谷口洋介、中嶋克彦(テノール)、小笠原美敬、渡辺祐介(バス)

若松夏美、荒木優子(ヴァイオリン)、成田寛、佐藤駿太(ヴィオラ)、西澤誠治、角谷朋紀(ヴィオローネ)
伊藤美恵(ハープ)、金子浩(リュート、ルネッサンスギター?)、上尾直毅(チェンバロ)

曲目
クラウディオ・モンテヴェルディ:マドリガーレ集第7巻
竪琴の調子を合わせて Tempro la cetra
愛の神よ、僕はどうしたらいいのだ? Amor, che deggio far?
黄金の髪よ Chiome d’oro

同:マドリガーレ集第8巻
他の者は軍神マルスについて歌う Altri canti di marte
僕は恋に燃えているが Ardo, avvampo mi struggo
ニンファの嘆き Lamento della ninfa
私の美しい演奏に合わせて Movete al bio bel suon  他

映画「夏をゆく人々」 イタリア映画 監督:アリーチェ・ロルヴァケル

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長女ジェルソミーナ、多感な年ごろ


 イタリア半島の中ほどにある大きな湖、この湖畔に住む家族のお話。

1-0_201709151404336b7.jpg 湖周辺の広々とした草原、ここで一家7人は養蜂で生計を立てている。
 でも、男手は父さんだけで、母さんとその子4人姉妹と居候のおばさんの、女6人の家。
 そのうえ、長女ジェルソミーナの下の娘たちは、まだ幼い。

 ミツバチの箱を運んだり、遠心分離機で蜂蜜を抽出したり、バケツに一杯になった蜂蜜を運んだりと、力仕事はたくさんある。
 だから、父さんは女手しかいないことで、いつもイライラしている。(そして家族に対して、しょっちゅうワンマンなふるまい)

 そんな父親をみて、ジェルソミーナは懸命に養蜂の仕事をこなしている。口にこそ出さないが、父親も長女のそんな様子を力強く思っている。

 ある日、無口な少年が少年院からこの家にやって来た。父親は、少年の更生のためのプログラムを利用して男手を手に入れたのだ。家に住み込みで仕事を手伝うことになった。

 自然に優しい農業・畜産・養蜂家などを対象にしたコンクールがテレビ局の主催で開催されるという。
 このことを知ったジェルソミーナは密かにコンクールに応募した。よそ者を嫌う父親は、こういうことには絶対反対することを彼女は知っていました。

 さあ、さて、ここら辺りから物語は思わぬ展開をし始めます。
 話の筋のその先を急いで追う姿勢では、この映画は楽しめません。ゆったりした気分で観ましょう。
 主人公のジェルソミーナ役の女性の、楚々とした雰囲気がいいです。プロの俳優じゃないようです。映画はこのジェルソミーナの存在感で成り立っています。

 父親は家族の中ではワンマンですが、世間に対しては自閉的な男です。
 そんな彼ですが、男手が欲しいがためによそ者の少年を家に迎え入れました。
 一方、ジェルソミーナはそろそろ大人の女になろうとしています。自分の意志でコンクールに応募したように、ジェルソミーナの意識は田舎の一軒家から世間に出ていこうとしています。そんな彼女と彼女の恋を母親も叔母も応援します。

 
 映画の後半ぐらいから、「エトルリア」「エトルリア人」という言葉が出てきます。
 この一家の住む地域は、エトルリアという、紀元前8世紀~紀元前1世紀ごろにイタリア半島中部にあった都市国家群があった場所。
 映画は、そんな歴史の謎めいた不思議さをバックグラウンドに秘めているようです。(それは例えば、この一家の家のそばにロケに来た女優さんの姿を借りて・・)
 

オリジナルタイトル:LE MERAVIGLIE|
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル|イタリア スイス ドイツ|2014年|111分|
撮影:エレーヌ・ルヴァール|
出演:ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)|アンジェリカ(アルバ・ロルヴァケル)|ウルフガング(サム・ルーウィック)|ココ(ザビーネ・ティモテオ)|ミリーカテナ(モニカ・ベルッチ)|アドリアン(アンドレ・M・ヘンニック)|少年更生係イルデ(マルガレーテ・ティーゼル)|ほか

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1年前・3年前・5年前の9月、一夜一話。(2016年9月・2014年9月・2012年9月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-09-14 Thu 06:00:00
  • 映画
1年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年9月 Archive>

写真
「風の又三郎」
監督:島耕二
映画音楽に魅せられて
写真
「イン・ザ・プール」
監督:三木聡 オダギリジョー
松尾スズキ、市川実和子
写真
「泥の河」
監督:小栗康平
田村高廣、加賀まりこ
写真
「舞妓はレディ」
監督:周防正行
上白石萌音、富司純子
写真
<か行> の邦画
これまでに記事にした邦画から
    
写真
「ドリンキング・バディーズ
飲み友以上、恋人未満の
甘い方程式」
   アメリカ
写真
「世界」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
写真
「その怪物」
監督:ファン・イノ
韓国
写真
「人生スイッチ」
監督:ダミアン・ジフロン
アルゼンチン・スペイン
写真
「シュトロツェクの
        不思議な旅」

西ドイツ
写真
「永遠と一日」
監督:テオ・アンゲロプロス
ギリシャ
写真
京都に行って来た。
「京都の湯と水の話」



3年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年9月 Archive)

写真
「ミスター・ミセス・ミス
       ・ロンリー」

原田美枝子、宇崎竜童
写真
「水の声を聞く」
監督:山本政志
玄里、趣里、村上淳
写真
「小早川家の秋」
監督:小津安二郎
原節子、中村鴈治郎
写真
「夢みるように眠りたい」
監督:林海象
佐野史郎、佳村萌
写真
「祇園囃子」
監督:溝口健二
若尾文子、木暮実千代
写真
特集「関西の映画です。」
過去記事よりピックアップ
       
写真
「女優で検索」
その名で探す、出演映画。
但し暫定版    
写真
「イーダ」
監督:パベウ・パブリコフスキ
ポーランド
写真
「365日のシンプルライフ」
監督:ペトリ・ルーッカイネン
フィンランド
写真
「愛しのタチアナ」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「最愛の夏」
監督:チャン・ツォーチ
台湾
写真
「マンハッタン」
監督:ウッディ・アレン
アメリカ
写真
「黒いジャガー」「スーパーフライ」
ソウルフルなブラック・シネマは、いかが?



5年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年9月 Archive)

写真
「不良少年」
監督:羽仁進
山田幸男
写真
「あなたと私の合言葉 
    さようなら、今日は」

若尾文子、京マチ子
写真
「旅の重さ」
監督:斎藤耕一
高橋洋子
写真
「HANA-BI」
監督:北野武
岸本加世子
写真
「さよならS」
監督:エリック・ゾンカ
フランス
写真
「月曜日に乾杯!」
監督:オタール
 ・イオセリアーニ|フランス
写真
「ラテンアメリカ
       光と影の詩」

アルゼンチン
写真
「憎しみ」
監督:マチュー・カソヴィッツ
フランス
写真
「太陽の下の10万ドル」
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
フランス
写真
「カラマリ・ユニオン」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「パリ・ルーヴル美術館
          の秘密」

フランス
写真
「夜行列車」
監督:J・カワレロウィッチ
ポーランド
写真
「ひなぎく」
監督:ヴェラ・ヒティロヴァ
チェコスロヴァキア


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気になる映画 59  《これから上映の映画》

写真
「パターソン」
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
8/26~武蔵野館、ヒューマントラスト
写真
「50年後のボクたちは」
監督:ファティ・アキン  9/16~
シネマカリテ、ヒューマントラスト
写真
「鉱」(あらがね)
監督:小田香 監修:タル・ベーラ
10/21~11/3 K's cinema
写真
チェコ・ヌーヴェルヴァーグ
60年代チェコ映画祭  「パーティと招待客」
「ひなぎく」「愛の殉教者たち」ほか全9本上映
11月~イメージフォーラム
写真
エミール・クストリッツァ監督特集
9/16~29 恵比寿ガーデンシネマ
上映作品中、次の3作は記事にしてます。
アンダーグラウンド」「ジプシーの時」「黒猫・白猫
題名をクリックしてご覧ください。
写真
「軽蔑」 デジタル・リマスター版
監督:ジャン=リュック・ゴダール
9/30~恵比寿ガーデンシネマ

映画「青いドレスの女」 監督:カール・フランクリン

上
 映画冒頭は、こんなイラストと、T-ボーン・ウォーカーの歌うブルースで始まる。


1-0_201709071744482a8.jpg 原作は推理小説。(黒人の私立探偵小説「イージー・ローリンズ」シリーズの第1作を映画化)
 最近は少なくなってしまった、黒人が主体の映画。(1995年制作)

 時代は1948年、場所はロサンゼルス。
 黒人差別は当然の時代。(公民権運動が本格的に動き出すのは1950年代半ば頃から)

 第二次世界大戦で欧州戦線(黒人部隊)を経験した主人公の黒人青年イージーは、戦後、兵役経験を活かし機械工として造船所や航空機メンテ工場で働いていた。
 イージーは真面目な青年だ。勤め先では社員として勤務。それ故に、黒人ではあるが一定の社会的信頼を得ていた。
 つまり住宅ローンが組めて、(黒人だけの)戸建住宅街に一軒家を持ち、粋な車も持っていた。優雅な独身生活であった。

 しかし、突然の解雇。職探しを始めるが、まともな勤め先がみつからない。ローン返済が滞る。
 そんな折、行きつけのバーのあるじジョッピーから、オルブライトという怪しげな白人の男を紹介される。
 オルブライトはイージーに、ある白人女を探してほしいと札束をちらつかせる。切羽詰まっていたイージーはこの話に乗った。

 話は、市長選挙が絡む。
 ロスの富豪トッド・カーターと、対抗馬のマシュー・テレルという二人の白人が立候補を表明していた。
 ところがカーターは突然、自ら立候補を取り下げた。
 カーターが愛し婚約者となった女性に、「ある問題」があることが発覚し、彼の周囲はカーターに婚約破棄を迫った。その結果、カーターは出馬の意欲も無くなり、失意に沈んでしまったのだった。
 一方のマシュー・テレルは押しの強い男だが、密かなある弱点を持っていた。
  
 イージーは、白人女探しに、市長選挙が絡むこんな背景があるとは知る由も無かった。
 いざイージーが動き始めると、彼の行く先々で殺人現場に遭遇する。警察に連行される。
 そして、彼が探す白人女性、(青いドレスの女)ダフネがイージーの前に現れた。
 彼女はマシュー・テレルの弱みを握っているらしい・・なぜ。
 イージーが足で知り得た事柄が、次の謎を解き明かすことになり、イージーの身の危険は増していく。
 そもそも、カーターの婚約者の「ある問題」とは何?、婚約者は誰?、マシュー・テレルの弱みとは?
 
 昨今のアメリカをみていると、こんな黒人主体の映画はもう製作されないかもしれない。

 総じて、描き切れていない大雑把さのある映画だが、娯楽映画ですからね。
 でも挿入音楽がいいです。
 映画冒頭、のっけからT-ボーンのブルースが流れて、私はノックアウト。
 この映画に取りあげられた主なミュージシャンは、往年のモダンブルースシンガーのT-ボーン・ウォーカー、ピー・ウィー・クレイトンや、ビッグバンドをバックにして歌うジャンプブルースシンガーのジミー・ウィザースプーン、ロイ・ブラウンなどなど、そしてデューク・エリントンも。
 サウンドトラック情報:http://www.allmusic.com/album/devil-in-a-blue-dress-sony-mw0000176104

オリジナルタイトル:Devil in a Blue Dress|
監督・脚本:カール・フランクリン|アメリカ|1995年|102分|
原作:ウォルター・モズレイ|撮影:タク・フジモト|
出演:イージーこと、エゼキエル・ローリンズ(デンゼル・ワシントン)|青いドレスの女・ダフネ・モネ(ジェニファー・ビールス)|イージーの親友で殺人が得意なケンカの助っ人・マウス・アレクサンダー(ドン・チードル)|バーのオヤジでイージーの友人・ジョッピー(メル・ウィンクラー)|ロス一番の富豪の白人、ダフネを愛するトッド・カーター(テリー・キニー)|カーターと市長選挙を争う白人、他人に言えない秘密を持つ男マシュー・テレル(モーリー・チェイキン)|ジョッピーがイージーに紹介した白人でマシュー・テレルに雇われる男ドウィット・オルブライト(トム・サイズモア)|ダフネの親友・コレッタ・ジェームズ( リサ・ニコル・カールソン)|コレッタの彼氏、イージーの知り合いデュプリー・ブロチャード(ジャーナード・バークス)|ほか

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映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」 監督:セオドア・メルフィ

上


1-0_201709061020036f5.jpg 70歳の頑固ジジイと、12歳の孤独な少年のお話。
 この映画、若い方には少年モノ映画に観えるかも知れないが、年配にはいささかビターな喜劇映画に観えるかも知れない。 

 頑固で人の話を聞かない人嫌いなジジイ、ヴィンセント(ビル・マーレイ)は、二十歳代の頃にはベトナム戦線を経験した世代。
 今は、白人中産階級(中の下)が住む住宅街の中の、小さな一軒家で一人暮らしだ。(子はいないようだ)

 ヴィンセントの楽しみは、安酒とタバコとTVそして、行きつけの店の踊り子・ダカと時々の有料セックス。
 暮らしは決して豊かじゃない、いや苦しい。無職の上に、自宅を抵当に入れての生活資金は底をつき、借りちゃいけない所から金を借りている。
 彼のお金はどこへ消えるのか? それは、今も最愛の妻サンディを預けている上等な介護施設。妻は重度の認知症なのだ。そして、この施設への払いが滞っている。

 そんなある日、ヴィンセントの隣家にマギーとその1人息子オリバーが越してきた。
 マギーは病院のMRI検査技師。夫は弁護士だが、この夫の度重なる浮気が原因で夫婦関係は破たん、今、オリバーの親権をめぐって離婚調停中。子供の奪い合いを避け、マギーはオリバーを連れて越してきた。(子は養子らしい)

 オリバーは12歳にしちゃ小柄。転校生への学内いじめ、母親の長時間勤務やらで、オリバーは一人ぼっち。
 「結果的に」これを救ったのが、人嫌いな隣人ヴィンセント。いいウチの子に育ったひ弱なオリバーは、おやじの塊みたいなジジイに世間を教わることになる。(競馬場、バー、娼婦、ケンカの仕方、悪い言葉など)

 これは、ヴィンセントから見れば、転がり込んで来たベビーシッターという時給稼ぎだった。
 マギーから見ればヴィンセントは、隣家のベビーシッターで便利な反面、ウチの子をワルに染め上げるジジイ。
 オリバーにとっては、初めは近寄りがたい偏屈ジジイだったが、いつの間にか仲良くなり、最後には「St.VINCENT」と褒め称える。

 話は、脳溢血によるヴィンセントの緊急入院・リハビリや、妻のいる介護施設からの料金不払いによる退去勧告や妻の死、オリバーの親権騒動の結末、踊り子のダカの嬉しい出産などのエピソードが絡んで行く。

 オリバーが学内発表で、ヴィンセントを聖人と褒めるシーンは、あまりにもアメリカ映画的感動シーンに仕立て上げられていて白けるが、これは、映画の結末のヴィンセントのうら悲しい境遇を考えると、プラスマイナスのバランスをとっての配慮とみておこう。
オリジナルタイトル:St.VINCENT|
監督・脚本:セオドア・メルフィ|アメリカ|2014年|102分|
撮影:ジョン・リンドレイ
出演:ヴィンセント(ビル・マーレイ)|オリバー(ジェイデン・リーベラー)|その母親マギー(メリッサ・マッカーシー)|ヴィンセントの有料彼女・ダカ(ナオミ・ワッツ)|ヴィンセントの妻サンディ(ドナ・ミッチェル)|ほか

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美術展「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」 ポーラ美術館開館15周年記念展 2017年3月18日~9月24日

上2

 「破壊する画家」ピカソと「語る画家」シャガール。
 世界初の2人展。紡ぎ出される愛と平和へのメッセージ。
 これがこの展覧会のキャッチフレーズ。

 無性に油絵が見たくなる時がある。
 ストレートに「本物」が見たい。
 霧が流れるポーラ美術館(箱根)へ行ってきた。
 絵画の展示点数が多く、どれも良くて、大満足。

 その中でも、持って帰りたかった作品。
 シャガールの「婚約者達」の大きな絵と、ピカソの「坐る女」の小さな絵。

 これは持ち帰るには大きすぎるが、ピカソの「ミノタウロマキア」とシャガールの「平和」も印象に残った。
 どちらも巨大なタペストリー作品。(画家が元絵を描き、タペストリー作家が制作した作品)

 驚いたこと。展示の多くが、ポーラ美術館自身が持っている作品だった。いいの持ってるね。



写真
「婚約者達」(1930年制作 148×89cm)
写真
「坐る女」(1921年制作 33×24cm)


映画「カフェ・ブダペスト」 ハンガリー映画 監督:フェテケ・イボヤ

上
歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジム。ブダペストの街角にて。

1-0_20170901122232caf.png
 時は1990年、ソ連崩壊(1991年)の前年。
 祖国ソ連を離れ、開かれた東欧ハンガリーへと旅立ったロシア人の男たちの物語。

  映画冒頭のナレーションより…(本作は1995年製作)
  当時の気分を語るのは難しい。あり得ないことが突如 起きたのだ。
  ハンガリーが西側に扉を開いたのを契機に、すべてが急速に進行した。
  東欧が幸福に酔ったあの日々、忘れ得ぬ時代。
  そしてついにハンガリーからソ連軍撤退。
  (ところが)今度は別のロシア人がやって来た。西側を目指し、その入り口、ハンガリーに人々が押し寄せたのだ。
 (下記|1989年の出来事)
 
 2人のロシア人ミュージシャン、歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジムが、ハンガリーのブダペストへたどり着く。(※※下記|2人の経路)

2‐0 (ユーラが歌う)
  ♪さあ 旅立とう 歌を道連れに
  ステンカ・ラージンは もう十分歌われた
  新時代の俺たちは そんなの歌わない。
  直立不動で大声で 一体何を歌ってる
  共産主義の歌なんて もう うんざり …
 (ユーラ役の俳優は、ロシア出身のシンガーソングライター)

 機械工をしていた若いロシア人のセルゲイも、西側諸国を目指して、まずはブダペストにたどり着く。
 このようにして当時、既にブダペストには、祖国ソ連を脱出した人々の他に、少々危ない商売をする出稼ぎ組や、自身の人生を捨てた破滅型の放浪人など、様々なロシア人たちが滞留していた。
 また、そんなロシア人を相手に宿を提供するブダペストの人、フリーマーケットでロシア人を鴨にする人など、様々なハンガリー人がいた。
 加えて、東方諸国の解放とソ連国内の混乱に乗じて、ロシア系犯罪組織がブダペストへも進出して来て、表のフリーマーケットや裏のヤミ市で、恐喝とブローカーの動きを見せ始めていた。

下


 一方、こんな東欧に対し、冒険心とある種のロマンを抱いてブダペストに来る西側の人々もいて、映画は2人の女性を登場させて、恋を語り物語を彩る。
 それはイギリス人のマギーと、アメリカ人のスーザンだ。
 ひょうきんで明るいユーラはマギーと出会い、サックスのメロディがかっこいいワジムはスーザンと出会う。
 真面目な青年セルゲイは、泊まった宿のハンガリー人の女将(年上の独身女性)の世話になる。



 この映画、誰が主人公かと言えば、ユーラが歌うメロディとその歌詞だろう。
 ユーラ役のロシア出身のシンガーソングライター、ユーリ・フォミチェフという人の歌が、映画の各所で流れる。これが素晴らしい。
 ロシア由来かな、独特のうら悲しさと、その反面の楽しさを合わせ持つ音楽だ。西側のブルース音楽の領域とは別世界。

 映画は、当時のブダペストを活写し、時代の変わり目を、重くせずにすっきりと饒舌に語っている。いい映画だ。  

 このお話の時代のあと、ロシアは西側諸国と共に生きていくはずだったが、いつの間にかプーチンの国となっている。
 また、東欧の人々は職を求めて西側に移って行く。東欧諸国も我先にEUに加盟した。そして今、今度はEU離脱を考えている国がある。
1989年の東欧の出来事
 1989年5月2日 - ハンガリー政府がオーストリアとの国境にある鉄条網の撤去に着手。鉄のカーテンが破られる。
 同年6月 - ポーランドで、自由選挙実施。非労働党政党「連帯」が上院過半数を占める。東欧革命のさきがけ。
 同年8月19日 - ハンガリーで汎ヨーロッパ・ピクニックが開催、約600人の東ドイツ市民がオーストリア経由で西ドイツへ亡命。
 同年10月7日 - ハンガリー社会主義労働者党、ハンガリー社会党への改組を決定し、一党独裁政党としての歴史に終止符を打つ。
 同年10月17日 - 東ドイツで強権的な政治を行っていたエーリッヒ・ホーネッカー・ドイツ社会主義統一党書記長の書記長解任が党政治局で決議され、ホーネッカーが失脚。
 同年11月9日 - 東ドイツがベルリンの壁の通行を自由化。
 同年11月10日 - ベルリンの壁崩壊。
        ブルガリアで共産党書記長のトドル・ジフコフが失脚。これを機にブルガリアでも民主化が始まる。
 同年11月24日 - チェコスロバキアビロード革命。共産党政権が崩壊。
 同年12月1日 - 東ドイツで憲法が改正され、ドイツ社会主義統一党(SED)による国家の指導条項が削除される。SEDの一党独裁制が終焉。
 同年12月22日 - ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権崩壊(ルーマニア革命)。

3-1_20170901123010e01.png※※2人の経路
 時は1990年。ユーラとワジムは、ロシア人バンドのメンバーで、ユーゴで行われるコンサート会場へ、バンド専用バスで向かっていた。このバンドのバスの経路に注目。
 当初、ソ連・ハンガリー国境に到着するが、検問で拒否され越境できず迂回することになる。
 まずはソ連・チェコ国境を通過、次にチェコ・ハンガリー国境を通過し、ハンガリー・ユーゴ国境を越えようとした。(リアルな描写)
 ところがここで、2人はバスを降り、バンド仲間から分かれてブダペストにたどり着く。
オリジナルタイトル:BOLSE VITA|
監督・脚本:フェテケ・イボヤ|ハンガリー、ドイツ|1995年|101分|
撮影:サライ・アンドラーシュ|
出演:ギター弾きのユーラ(ユーリ・フォミチェフ)|サックス吹きのワジム(イーゴリ・チェルニエヴィッチ)|機械工のセルゲイ(アレクセイ・セレブリャコフ)|イギリス女性・マギー(ヘレン・バクセンデール)|米国人女性・スーザン(キャロリン・リンケ)|外人向けの宿の女将・エルジ(マール・アーグネシュ)|ほか

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2年前・4年前・6年前の8月、一夜一話。(2015年8月・2013年8月・2011年8月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-08-31 Thu 06:00:00
  • 映画
2年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  2年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年8月 Archive)

写真
「雪国」
監督:豊田四郎
岸惠子、池部良
写真
「0.5ミリ」
監督:安藤桃子
安藤サクラ
写真
「草を刈る娘」 (思春の泉)
監督:中川信夫
左幸子、宇津井健
写真
「ベンヤメンタ学院」
監督:クエイ兄弟
イギリス
写真
「カー・ウォッシュ」
監督:マイケル・シュルツ
アメリカ
写真
「雪の轍」
監督:ヌリ・B・ジェイラン
トルコ
写真
「三文オペラ」
~映画音楽に魅せられて
ドイツ
写真
東南アジアの映画・特選
アジアに吹く風、アジアの匂い
    
写真
京都に行ってきた。
毎日最高気温37度の京都へ
    
写真
武満 徹・作曲「波の盆」
指揮:尾高忠明
東京フィルハーモニー交響楽団
写真
1970年代の日本の
ロック、フォークを振り返る。


4年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  4年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年8月 Archive)

写真
「火まつり」
監督:柳町光男
太地喜和子、北大路欣也
写真
「楽園」
監督:萩生田宏治
松尾れい子
写真
事件記者シリーズ
「真昼の恐怖」「仮面の脅威」
「姿なき狙撃者」
写真
「何が彼女をそうさせたか」
監督:鈴木重吉
高津慶子
写真
「しあわせのかおり」
監督:三原光尋
中谷美紀 、藤竜也
写真
「ソレイユのこどもたち」
監督:奥谷洋一郎
ドキュメンタリー映画
写真
「音曲の乱」
監督:林海象
佐野史郎、スカパラ、鰐淵晴子
写真
「チキン・ハート」
監督:清水浩   池内博之、
忌野清志郎、松尾スズキ
写真
「真夜中の虹」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「犬と女と刑老人」
監督:シェ・チン
中国
写真
「SUCK サック」
監督:ロブ・ステファニューク
カナダ
写真
「ダフト・パンク
     エレクトロマ」

イギリス
写真
「青の稲妻」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
比叡山「山頂のひみつ」
その夏、京都の夜景を
独り占めしたことがある。


6年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  6年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年8月 Archive>

写真
「Peace」
監督:想田和弘
ドキュメンタリー映画
写真
「鉄塔武蔵野線」
監督:長尾直樹
伊藤淳史
写真
「スナッチ」
監督:ガイ・リッチー
イギリス
写真
「京義線」
監督:パク・フンシク
韓国
写真
「スウィート・スウィート
        バック」

アメリカ
写真
「アントニア」
監督:マルレーン・ゴリス
オランダ
写真
「人生、ここにあり!」
監督:ジュリオ・マンフレドニア
イタリア
写真
「グッド・ハーブ」
監督:マリア・ノバロ
メキシコ
写真
「ロック、ストック&トゥー
 ・スモーキング・バレルズ」

監督: ガイ・リッチー
写真
「秘密と嘘」
監督:マイク・リー
イギリス
写真
「マリア」
監督:アレクサンドル
      ・ソクーロフ
写真
「明るい瞳」
監督:ジェローム・ボネル
フランス
写真
「ナイト・オン・ザ
       ・プラネット」

監督:ジム・ジャームッシュ
写真
「ゴーストワールド」
監督:テリー・ツワイゴフ
アメリカ
写真
「普通じゃない」
監督:ダニー・ボイル
イギリス
写真
「鏡」
監督:アンドレイ
    ・タルコフスキー
写真
鬼海弘雄写真展
「東京ポートレイト」
東京都写真美術館


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映画「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」 監督:ロベール・ブレッソン

上






1-0_201708271317238f3.jpg













 フランス軍人の手記をもとに監督自ら脚本を書いた、脱獄する男の一部始終を描くサスペンス映画。

 舞台はリヨンにあるモントリュック監獄の独房、時は1943年。

 その前年、ナチスドイツは南フランスへ進軍し地域を占領、リヨンはドイツ軍やその治安部隊の街となっていた。
 翌1943年6月、レジスタンス運動の中心人物が逮捕、虐殺されるなど、ナチスドイツによるレジスタンス撲滅が一気に進んで行った。

 その頃だろう、映画の主人公フォンテーヌ中尉も逮捕され拷問を受け、独房に入れられた。
 監獄の中庭では、毎日のように銃殺刑の執行が進む。
 中尉は入獄後、時を置かず脱獄を決意し、獄中のレジスタンスらによる密かな協力を得て、獄中で得られるわずかなもので脱獄のための準備を始める。
 そんなある日、獄中のレジスタンスの一人が脱獄を試みたが失敗し処刑されてしまう。しかし中尉にとっては、彼の失敗が自分の脱獄手法の改善を図るきっかけとなった。
 そして、中尉も死刑の判決を受ける。これで脱獄の決意はより固まった。

 準備が整い、いつ脱獄するかという時に、中尉の独房に一人の青年が押し込まれて来た。
 当初、中尉は彼をドイツの回し者かと疑ったがそうではなかった。そして、行きがかり上、この青年とともに脱獄するしかない。
 ついに、その夜、中尉はふたりで脱獄するのであった。


 映画のタイトルが「脱獄」ではなく「抵抗」であるのは、中尉のレジスタンス活動を褒め称えているからだろう。
 映像の多くはフォンテーヌ中尉の独房の中。台詞は極わずか。音楽も入れない。だが、シーンに緊張感があり、スリリング。

 一方、脱獄実行シーンは屋外である。それゆえに、閉ざされた空間におけるそれまでの高い緊張が、屋外に出て拡散してしまう。そのせいか、あるいは脱獄シーンそのものが有り触れているせいか、残念ながら脱獄実行シーンは凡庸だ。

 独房シーンを飽きさせないのは撮影の技と、なんと言っても中尉役のフランソワ・ルテリエという人が醸し出す雰囲気。これが至って素晴らしい。
 この映画の登場人物の多くはプロ俳優を使っていないらしい。中尉役の彼は普通の学生であった。

 最後に。フォンテーヌ中尉の脱獄の翌年1944年に、リヨンはドイツ軍から解放される。


オリジナルタイトル:UN CONDAMNE A MORT S'EST ECHAPPE OU LE VENT SOUFFLE OU IL VEUT|
英語タイトル:A MAN ESCAPED|
監督・脚本・脚色・台詞:ロベール・ブレッソン|フランス|1956年|100分|
原案:アンリ・ドヴィニ|
出演:フォンテーヌ中尉(フランソワ・ルテリエ)|青年ジョスト(シャルル・ル・クランシュ)|ほか

【ロベール・ブレッソンの映画】 これまでに記事にした映画から。

スリ」(1960年)  「バルタザールどこへ行く」(1964年) 

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映画 「ナック」 監督:リチャード・レスター

上
 天然のナンシー


1-0_20170826084019135.jpg 1965年のロンドン。流行りはじめた若者文化、カウンターカルチャーの、ブームの部分をすくい上げて作ったドタバタ喜劇。
 当時のティーンエイジの子たちを観客対象にした映画だ。
 「最近の若いもんは…」とブツブツ言う街の大人たちをスナップした、ドキュメンタリーっぽいシーンが各所に幾つもあって、世間にチョイ逆らいたいティーンエイジの笑いを誘ったんだろう。

2-0_20170826084408f36.jpg そんな古臭い大人たちの批判をよそに、若いもん3人のお話が進みます。
 やたら女にもてる(努力もしている)きざなドラマーのトーレン、もてたいがもてない要領の悪いコリン、天然系おのぼりさんの女の子ナンシー、この3人が主人公。

 そのほかに、たくさんの美人の女の子たちが入れ替わり立ち替わり登場する。
 それはトーレンの彼女達や、トーレンの持て過ぎをひがむコリンの妄想シーンに出てくる女の子たち。
 案外、ここが見どころかも知れない。(ただしヌードもセックスもない健全映画、だが男尊女卑)

 ちなみに、この女の子の中に、ハイティーンだったジェーン・バーキンやシャーロット・ランプリングが出演しているらしい。(捜してください)

 筋は言うほどのものではないが、モノクロ映像がきれいです。
 1965年のロンドンの風景やファッションが何やらアンティークです。

 監督は本作「ナック」製作の前年(1964年)に、「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」を、「ナック」製作の同年1965年に「ヘルプ!4人はアイドル」を撮っている。

 ボブ・ディランの英国ツアーに追ったドキュメンタリー映画「ドント・ルック・バック」(1967年)に出てくるティーンエイジの子たちも、この「ナック」やビートルズ映画を見たんだろうな。    

 1969年ごろのロンドンに住む青年を描いた映画「ウィズネイルと僕」(1987年)の二人は、この「ナック」の主人公たちと同世代の数年後なのでしょう。 (下線部をクリックして、その過去記事にお進みください)

 時代はいつも多面的です。
 その時代をどんなスタンスで見るか、見たかで、時代の色合いは違って見えます。
 例えば、ポップカルチャーに焦点を当てて見る、カウンターカルチャーの視点で見る、政治が人に与えた影響の文脈で見る。
 ひとりの人の中でも、時とともに見方は移ろって行きます。


オリジナルタイトル:The Knack ...and How to Get It|
監督:リチャード・レスター|イギリス|1965年|85分|
原作戯曲:アン・ジェリコー|脚色:チャールズ・ウッド|撮影:デイヴィッド・ワトキン|
出演:ナンシー(リタ・トゥシンハム)|コリン(マイケル・クロフォード)|トーレン(レイ・ブルックス)|ジェーン・バーキン|ジャクリーン・ビセット|シャーロット・ランプリング|

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映画 「石合戦」 監督:若杉光夫

上
石合戦。右方向の対岸にいる相手陣営と石の投げ合い。
このシーンは、仮設の木の橋の上から撮っている。


 兵庫県の山あいにある、のどかな村の人々を描く映画。

 川を挟んで二手に分かれた子たちが、互いに対岸の子たちに向けて、河原の石の投げ合いをしている。石合戦だが、男の子の遊びでもある。
 どちらの陣営の子も、同じ小学校に通っているが、仲が悪い。
 仲が悪いのは、その子らの親たちが仲が悪いからなのだ。いや、親だけじゃなく祖父母の代も、昔から仲が悪い。
 かつて、石が顔に当って失明した人も村人の中にいる。
 映画は、村の大人同士のつまらぬ人間関係が、そのまま子たちの人間関係に影響するのだと言っている。

 県会議員の大野という男は、この村で大人たちの頂点の座にいるらしい。彼の家は戦前までは大地主だった。
 村一番の真面目な男・松蔵(宇野重吉)は、戦後、この大野から僅かな土地を買った。
 この極めてまっとうな方法で土地を買った松蔵に大野は苛立っていた。大野に寄り添い、大野の為なら、何かあればひと肌脱ぎます、なんて言う人々に乞われて、大野は土地を手離す、なんていうストーリーが好きな男なのだ。松蔵はそうではなかった。

 子たちが川遊びしていたその日、この大野の旦那が、川にかかる仮設の橋を渡っていた。
 そこへ、松蔵の子が橋の下から手を伸ばし、大野の足を引っ張り、彼を川へ落としてしまった。
 子どもの悪戯だったが、大野は怒った。大野は松蔵を村八分にしてしまう。村八分にされて松蔵の子も、村の子たちから村八分にされてしまう。

1-0_20170824193604438.jpg 主人公の男の子・竹丸(浜田光夫)は、村の神社の一人息子。
 がき大将の正反対で、石合戦が怖いし、仮設の低い橋から川に未だに飛び込めない。(その落差1メートルほど)
 竹丸の母親(山田五十鈴)は病で長年、伏せっている。竹丸の父親(小沢栄太郎)は、神社の神主で、夏の祭りの収支がマイナスなのが頭痛の種。(賽銭などの収益-諸費用の支出)
 「ここは好きじゃない大野にすがるしかないな。」なにしろ、大野は小学校の校舎新築で業者と癒着し、大金を懐にしたらしい。(村中の噂)

 さて、大野が川に落とされたあと、河原にいた子らの中に、大野は竹丸の姿を見た。
 そして、大野は竹丸を密かに呼んで、誰が俺を川に落としたのだと問いただした。大野得意の甘言と脅し(アメとムチ)を竹丸に示し、つい、やったのは松蔵の子だと竹丸は言ってしまう。
 これが噂となって広がり、竹丸は子らから村八分となってしまう。

 話の展開はいくつかのエピソードと共に進む。
 竹丸の母が大阪の病院に緊急入院する。村の合併話が、大野の先導で進む。
 小学校の若い教師・渡辺先生(内藤武敏)が子たちの石合戦を止めさせる。また、渡辺先生が「アカ」だという噂を真に受ける大野は、先生を辞任に追い込もうとする。それを支援する小学校校長や村長といった村のお偉いサンたち。
 そして、大野が贈収賄で逮捕される。
 一方、竹丸の母がこの世を去る。真剣に神に祈った竹丸は、神殿で暴れる。

 そうしてラストは少々強引だが、ハッピーエンドに。
 竹丸の家は村では裕福だ。この竹丸の生活環境と、村の貧しい家の子の境遇を映画は対比してみせる。
 渡辺先生のシーンでは、子供対象の教育映画っぽい雰囲気があって鼻白むシーンはあるが、これを乗り越えられると、昭和30年当時の日本が垣間見れる。

監督:若杉光夫|1955年|91分|
原作:上司小剣|脚色:松丸青史 、 吉田隆一 、 村山亜土|撮影:仲沢半次郎|
出演:竹丸(浜田光夫)|その父・上神満臣(小沢栄太郎)|その妻・鴻子(山田五十鈴)|小学校の教師・渡辺正男(内藤武敏)|県会議員の大野剛造(嵯峨善兵)|松蔵(宇野重吉)|ほか

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映画 「無花果の顔」(いちじくの顔) 監督:桃井かおり 出演:山田花子、石倉三郎

上

 一家四人の門脇というウチの、幸せの変遷を描く映画。
 今までにないタイプの喜劇映画です。いくつものエピソードが絡みます。それと、お伽噺の要素を持ち合わせていて、ちょっとシュールです。音楽はいいセンス。

1-0_2017081915362933d.png 表通りの裏手、門脇の家。
 ちゃぶ台がある一家団らんの和室と縁側、無花果(いちじく)の木が植わった中庭、中庭に沿って濡れ縁伝いの先にある風呂場は薪で沸かす風呂、赤い冷蔵庫やカラフルなガラス瓶が並ぶ台所とその一角がミシン仕事のスペース。

 妻(桃井かおり)は、夫思いの世話女房。(いささか古いタイプの女性像の設定だ)
 夫(石倉三郎)は水道・ガス管のベテラン配管工。茹でたジャガイモに塩辛を乗せて風呂上りのビールを美味そうに飲む。(仲睦まじいが、少々ズレた夫婦の会話は、新作落語の登場人物のよう)
 今夜の夕食は、ちゃぶ台でチーズフォンデュ。今夜は、娘(山田花子)に息子(HIROYUKI)も加わって久々に家族団らんのひと時。

 さて、何でもなく過ぎる日々から、ちょっとした物語は始まる。
 夫が何やら忙しい。家を空けたと思ったら、現場に近いウィークリーマンションを借りたという。
 夜間の徹夜仕事らしい。でも、よくよく聞くと仕事じゃない。昔、職人仲間が手抜き工事をした建物がリニューアル中で、夫は誰もいない夜間の現場に密かに侵入し、当時の手抜き工事の配管をボランティアで、ていねいに直しているのだ。黙ってればわかりゃしない事を。ひとがいいったらありゃしない。

1-00_20170819154711f30.png ボランティアの案件が無事終わり、やっと通常の仕事を始めた矢先、夫が現場で倒れ死亡。(脳溢血か心筋梗塞か)
 急な死に直面し家族はぼんやりしている。職場の面々が通夜に来る。妻の弟(光石研)が心配してそっと姉に聞く。生命保険は?労災は? そんなこと知らないわよ。

 妻は、娘(山田花子)が一人住まいしている部屋に転がり込む。娘はちょっとした小説家で雑誌に連載を書いている。

 妻は仕事を見つけた。料理が美味いきちんとした飲み屋で働き始める。その店の主人(高橋克実)が、ある日、求婚する。
 門脇のあの家を素敵にリニューアルして、二人が住み始める。門脇の娘息子も、店の主人の娘も祝福している。

 娘(山田花子)が赤ちゃんを出産した。娘が嫌がった年上の男(岩松了)の子だったが、娘はひとりで育てるという。
 最近、妻(桃井かおり)の様子が変だ。新しい夫(高橋克実)は心配する。優しい夫は妻を温かく包み込むのであった。(一応、これでめでたしめでたし)
 そして、こんな人々の生きざまを庭先からじっと見守ってきた、これからも見守って行く無花果の木。それから、門脇家の娘は、幼い頃から、この無花果の木と通じ合えているようだ。



2-0_20170819155439615.png 配慮された細やかな脚本が、生活のリアルな質感を呼びます。例えば、通夜の準備シーンでは。
 缶の箱に納めた古い家族の写真の数々(娘が父親の写真を探している、葬式なんだという実感や経験を思い起こさせる)。
 生臭い握りより稲荷寿司か太巻きよネと言いながら、通夜客のために、出前の店選びに悩む妻。そして夫が死んだのに、寿司屋の女将とあてどもないオバサン会話を続ける妻。(死をまだ実感できない経験が思い浮かぶ)、等々。

 可笑しな会話があちこちに挿入されています。例えば、斎場にて。
 「どうして焼くの、まだ生き返るかもしれないのに、私、認めないから」 
 「火で焼いたら熱いでしょ お父さんかわいそうでしょ それでなくてもおとうさん暑がりなのに」
 娘:「死んだんだからしょうがないでしょ」
 妻:「親を燃やして、しょうがないでしょという言い草はないでしょ」

3-1_20170819155735034.png シュールな側面。例えば、夫が借りたウィークリーマンションでの夢想のシーン。
 隣家の若い女(金魚の化身?)が、マンションの部屋に・・・。

 当時、観た印象はわからん映画でしたが、今回観てみると、ウ~ン、いい映画です。
 大人のお話ですね、この映画は。

監督・脚本:桃井かおり|2006年|94分|
撮影:釘宮慎治|音楽:Gilad Benamram|音楽プロデューサー:Kaz Utsunomiya|美術:安宅紀史|
出演:娘(山田花子)|息子(HIROYUKI)|母(桃井かおり)|父(石倉三郎)|新しい父親(高橋克実)|娘の彼氏(岩松了)|母の弟(光石研)|父親が借りたウィークリーマンションの隣に住む謎の女(渡辺真起子)|ほか

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映画 「ギャラリー 欲望の画廊」  監督:ダンカン・ウォード

上

 香辛料をうんと効かせた辛辣なコメディ。その分、脂っこくなくサラリと仕上げた映画。映像もきれいだ。

1-0_2017081816335729d.jpg どこまで真実かは知らないが、イギリスの現代アートシーンの狂った裏側を強烈に風刺している。(のかな)
 好色だが、やり手の美術商アート・スピンドルと、現代美術コレクターのボブ・マクルストン、この二人の中年男が悪役主人公と言っていい。
 (アメリカの現代アート作家だったバスキア(1960 - 1988)に、若い頃に接したという人物設定で、1980年代から現代アートで生きて来た40歳半ばの中年だ)

 とにかく、その絵画やオブジェは、世の中にその一点しかない。
 だから、これがビジネスかと思わせるほどに、売る買う両者の騙し合い。カネ、名声維持、見栄と猜疑心、精神的摩耗・・・。

 一方、成功したい魂胆丸だしの、現代アートの駆け出しアーティストたち。独立してギャラリーのオーナーになりたい賢い女。そして、アートシーンの末端にすがり続けたが、芽が出ない男の自殺。

 そんな世界に男と女が生きている。不倫、チョッカイに、パトロンという利害関係。登場人物の相関図は錯綜する。それにゲイとレズ、果ては離婚と財産分与騒動。話は盛りだくさんだ。

2-0_20170818163902513.jpg 逸話のひとつとして、画家モンドリアン(1872 - 1944)の「Boogie Woogie」を、その昔、画家本人から買った老富豪が出てくる。
 画商のアートも、美術コレクターのボブも、そしてその他の画商・個人コレクターもこの絵を狙う。(きっとサザビーズや美術館も、か)
 しかし老富豪は売りたくない。だが夫人は召使の男と組んで、値を吊りあげ売ろうとする。その結末は・・。

 もうひとつ。アートの所で5年働いていたが、ボブをパトロンに据えて、ギャラリーのオーナーになった女性ベスは、赤裸々なビデオアート作品を手掛ける女性アーティストをピックアップし、第一回目の個展を開く。
 アートやボブは、この作品が映像という複製芸術なので、値が付く芸術とは思わない様子が面白い。

 ついでに。ベスの替わりに画商アートに雇われた女性ペイジが、生まれながらの不具合で手術を受ける。その時、摘出された臓器を、ボブはホルムアルデヒド漬け作品にしてペイジに送るのだ。
 ひどい話だが、これは、イギリスの現代アート・アーティスト、ダミアン・ハーストを連想させる。この作家は、鮫、牛、羊の全身を、そのまま、ホルムアルデヒドを満たした大きなガラス箱に保存した作品で有名。

 とにかく、カネと名声を求めて、人々がうごめく現代アートシーン。
 ベスに出し抜かれた画商アート・スピンドルも、離婚と財産分与を切り抜けたコレクターのボブ・マクルストンも、性懲りもなく、したたかに明日へと向かうのである。

オリジナルタイトル:Boogie Woogie|
監督:ダンカン・ウォード|イギリス|2009年|94分|
原作:ダニー・モイニハン 小説『Boogie Woogie』|脚本:ダニー・モイニハン|撮影:ジョン・マシソン|
出演:ロンドン屈指の美術商・アート・スピンドル(ダニー・ヒューストン)|美術収集家で、アートの元で働くベスを引き抜きパトロンになる・ボブ・マクルストン(ステラン・スカルスガルド)|アートの元で働く女性で、ボブの協力を得て独立してギャラリーを持つことになる賢い女・ベス(ヘザー・グラハム)|新進気鋭の若手アーティストでベスの恋人ジョー(ジャック・ヒューストン)|ジョーと不倫する、ボブの妻・ジーン・マクルストン(ジリアン・アンダーソン)|ベスに替わってアートの元で働くローラースケートの女・ペイジ(アマンダ・サイフリッド)|モンドリアンの名画Boogie Woogieの第一作を所有している老富豪アルフレッド・ラインゴールド(クリストファー・リー: ピエト)|その妻でその絵を売りたいアルフリーダ(ジョアンナ・ラムレイ)|その召使いでアルフリーダと一緒になるロバート・フレイン(サイモン・マクバーニー)|アートシーンで食えない男・デューイ(アラン・カミング)|ジーンの友人エミール(シャーロット・ランプリング)|ほか

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1年前・3年前・5年前の8月、一夜一話。(2016年8月・2014年8月・2012年8月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-08-15 Tue 06:00:00
  • 映画
1年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年8月 Archive

写真
「雷魚」
監督:瀬々敬久
佐倉萌
写真
「皆月」
監督:望月六郎  奥田瑛二、
吉本多香美、北村一輝
写真
「浅草四人姉妹」
監督:佐伯清
相馬千恵子,関千恵子,杉葉子
写真
「トワイライト ささらさや」
監督:深川栄洋
新垣結衣、大泉洋
写真
「トレインスポッティング」
監督:ダニー・ボイル
イギリス
写真
「ある子供」
監督:ダルデンヌ兄弟
ベルギー
写真
「ミリオンダラー・ホテル」
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ
写真
「フランシス・ハ」
監督:ノア・バームバック
アメリカ
写真
「カッコーの巣の上で」
監督:ミロス・フォアマン
アメリカ
写真
「死刑台のエレベーター」
~映画音楽に魅せられて
監督:ルイ・マル|フランス
写真
「バルタザールどこへ行く」
監督:ロベール・ブレッソン
フランス



3年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年8月 Archive

写真
「時代屋の女房」
監督:森崎東
夏目雅子、渡瀬恒彦
写真
「極道ペテン師」
監督:千野皓司
フランキー堺、伴淳三郎ほか
写真
「東京五人男」
監督:斎藤寅次郎
横山エンタツ、花菱アチャコ
写真
「幻影師アイゼンハイム」
監督:ニール・バーカー
アメリカ
写真
「博士の異常な愛情」
監督:スタンリー
 ・キューブリック|アメリカ
写真
「チャイニーズ・ゴースト
       ・ストーリー」

監督:チン・シウトン|香港
写真
「ソウルガールズ」
監督:ウェイン・ブレア
オーストラリア
写真
犯罪「幸運」
監督:ドリス・デリエ
ドイツ
写真
最近読んだ本。
「ナツコ 沖縄密貿易の女王」
文春文庫:2007年
写真
京都観光街歩き、
   そして貴船の川床
    
写真
箱根 姥子温泉
岩盤自然湧出泉 ~秀明館



5年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年8月 Archive

写真
「ひとりぼっちの二人だが」
監督:舛田利雄
吉永小百合
写真
「教祖誕生」
監督:天間敏広
北野武 萩原聖人 岸部一徳
写真
「居酒屋ゆうれい」
監督:渡邊孝好
室井滋 萩原健一 山口智子
写真
「誰も知らない」
監督:是枝裕和
柳楽優弥 YOU
写真
「夜の河」
監督:吉村公三郎
山本富士子
写真
「愛より強く」
監督:ファティ・アキン
ドイツ、トルコ
写真
「バグダッド・カフェ」
監督:パーシー・アドロン
西ドイツ
写真
「モーツァルトとクジラ」
監督:ピーター・ネス
アメリカ
写真
「動くな、死ね、甦れ!」
監督:ヴィターリー
  ・カネフスキー(ロシア)
写真
「光の旅人 K-PAX 」
監督:イアン・ソフトリー
アメリカ
写真
「青いパパイヤの香り 」
監督:トラン・アン・ユン
フランス ベトナム
写真
「父、帰る 」
監督:アンドレイ
    ・ズビャギンツェフ
写真
「勝手にしやがれ」
監督:ジャン=リュック
        ・ゴダール
写真
「家の鍵」
監督:ジャンニ・アメリオ
イタリア
写真
「にがい米」
監督:ジュゼッペ
     ・デ・サンティス



映画 「泣虫小僧」(泣蟲小僧)  監督:豊田四郎

上
左から、菅子と啓吉、そして蓮子。


 泣虫になってしまいそうな小僧、啓吉11歳の姿を追えば、幸せ薄い少年物映画。
 啓吉の母・貞子とその妹三人の四人姉妹に注目すれば、1938年(昭和13年)当時の、進んだ女性が見えて来る映画。

1-0_20170810172134c98.jpg 貞子(栗島すみ子)は二児の母。小さな一軒家に住んでいるが、夫を亡くし生活に困っている。女手で喫茶店を開業するらしい。やり手だ。
 貞子には愛人がいる。この家で一緒に住むことになるが、男は商売に失敗したようで、うな垂れている。
 啓吉はこの男を避ける。啓吉の幼い妹は母親から、男をパパと呼ばされる。

 貞子は啓吉を、貞子の次妹・寛子に預けようとする。(今回が初めてではなさそう)
 寛子は「またぁ」と迷惑がるが、姉に言えない。自分に替わって夫・勘三に断わりを言わそうとするが、勘三は人がいい。「引き受けましょう」と義姉に、つい言ってしまう。
 勘三は小説家だが売れない。生活は楽じゃない。だから勘三は寛子の尻の下。
 始終暇な勘三は啓吉と相性がいい、啓吉も好きな叔父さん。しかし、寛子は啓吉を追い出したい。

 ある日、勘三は啓吉を連れて、私鉄沿線、郊外に住む蓮子(市川春代)を訪ねる。
 蓮子は、貞子をはじめとする四人姉妹の末の妹。まだ二十歳前だが、画家(志望)の夫と二人暮らし。
 この夫婦は妙に明るいが、料金不払いで電気を止められている。そんな生活を知った勘三は啓吉を連れて、すごすごと帰って行く。

 結局、啓吉は菅子のもとに落ち着く。菅子は四人姉妹の三番目、アパートの一室を借りて一人住まい。
 会社勤めをしているようだ。勘三に優しい。勘三も菅子に、なつく。
 菅子は勘三に問うた。「叔母さんの誰が好き?」 勘三の返事は「おかあさん」
 
 末の妹・蓮子も三番目の菅子も現代っ子だ。蓮子は少々飛んでいるアート系モダンガールなら、菅子は自立する女性、職業婦人といったところか。(とにかくこの四人姉妹はみな揃って、勢いがいい)

 下の姉妹ふたりが、姉の貞子を訪ねる。「啓吉は、やっぱり母親の元が一番よ」と自立する女・菅子がきっぱりと言う。(末っ子の蓮子は、姉の前では物言えない。)
 そんなことで、啓吉は母親に引き取られる。

 啓吉が体操の授業中に用務員室に呼ばれる。行ってみれば、お母さん。よそ行きの着物姿だ。
 貞子は用務員の男に聞かれないよう、部屋を出て啓吉に言った。「急に九州へ行かなくちゃならないのよ。すぐ、帰って来るから、ね。」
 啓吉は泣きそうになりながらも、母の言うことを信ずるよりほか無かった。

 学校が終わって、家に帰ると家は家具ひとつ無い、もぬけの殻。
 貞子は、啓吉の妹だけを連れて、愛人の元へ行ってしまった。

 啓吉が頼りにしたのは、菅子おばさんだけだった。小説家の勘三おじさんは頼りにならない。
 それは啓吉が勘三の家に世話になっている頃の話だ。
 勘三は、その夜、啓吉を飲み屋に連れだし、啓吉は店で寝込んでしまう。目を覚ますと勘三おじさんの姿が無い。啓吉は慌てて呑み屋を出て、勘三を探して夜の街をさ迷う。(それは勘三がトイレに立った隙だった、勘三は啓吉がいなくなったことに気付かず、深酒でその店でつぶれてしまう。)
 さ迷う啓吉を憐れに思い救ったのは、尺八吹きの男であった。
 一人住まいの男は、啓吉を一晩泊めて、朝飯を食わせてやり、そして男は啓吉を励ました。辛い時は誰でもある、そんな時は歌を歌うんだ、と。

 映画製作年の1938年(昭和13年)は、国家総動員法施行の年、ヒトラー青少年団来日。
 映画のシーンで、家の上を軍用機が飛んでいく。 
 公開当時の観客は、この作品をどんなふうに観たのでしょうか。

 ちなみに本作から連想する映画に、少年と家族をテーマにしたものでは、大島渚の「少年」(1969年)、是枝裕和の「誰も知らない」(2004年)、小栗康平の「泥の河」(1981年)。洋画ではフランソワ・トリュフォーの 「大人は判ってくれない」(1959年)などが思い浮かびます。
 四人姉妹の映画では佐伯清の「浅草四人姉妹」。戦後復興期の女性の姿を描いていました。
 (映画タイトル名をクリックして記事をお読みください)

 <これまでに記事にした映画から>
 出演女優の栗島すみ子は、成瀬巳喜男の「流れる」に、やはり特別出演ということで出演していました。
 二番目の妹役の逢初夢子は、島津保次郎の「隣の八重ちゃん」(1934年)の八重ちゃん役や、山田洋次の「霧の旗」 に出演。
 末の妹役の市川春代は、マキノ正博の「鴛鴦歌合戦」(1939年)、伊丹万作の「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年)に出演していました。
 
監督:豊田四郎|1938年|80分|
原作:林芙美子|脚色:八田尚之|撮影:小倉金弥|
出演:泣虫小僧の田崎啓吉11歳(林文夫)|啓吉の母親・貞子(栗島すみ子)|貞子の次妹・寛子(逢初夢子)|貞子のその次の妹・中橋菅子(梅園龍子)|貞子の末の妹・蓮子(市川春代)|貞子の愛人・吉田善吉(一木礼司) |寛子の夫で小説家の松山勘三(藤井貢)|蓮子の夫で画家の瀬良三石(高島敏郎)|
尺八吹きの男・水上竜山(山口勇)| 啓吉の幼い妹・礼子(若葉喜代子)|寛子の子・伸太郎(横山一雄)|

【 豊田四郎の映画 】~これまでに記事にした作品です。 

夫婦善哉」「猫と庄造と二人のをんな」「雪国」「珍品堂主人」「新・夫婦善哉」「台所太平記」 「波影

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映画「ザ・ローリング・ストーンズ  シャイン・ア・ライト」 監督:マーティン・スコセッシ

上

 ストーンズのライブを記録したドキュメンタリー映画です。
 ロックが20世紀の文化遺産(古典)になりつつある今、ストーンズがそうじゃないぜと、言っているようだ。

1-0_20170808121805d68.png 素敵なライブに行った気にさせてくれると同時に、ストーンズ最初期のインタビュー映像も楽しめる。
 若きミック・ジャガーに、「60歳になっても続けてると思う?」という問いに、「もちろん」と彼は答えている。
 また、最近のインタビュー映像もあって、キース・リチャーズ(65歳)とロニー・ウッド(61歳)に、「ギターはどっちが巧いの?」という質問に、ロニーが、「俺だな」と答えるが、すかさずキースは「二人とも下手だな」と答えた。(笑)

 キースは相変らず、エレキギターにカポタストをしている。(演奏曲によるが)
 それは解放弦をよく使うからだが、ラフでスローハンドであの短いフレーズの、気ままなリードギターは、今もストーンズがストーンズであり続けている重要な要。
 元フェイセズのロニー(ロン・ウッド)は、今はストーンズの正式メンバーだが、本作映像上では、少し影が薄い。
 そしてドラムのチャーリー・ワッツ(67歳)が素晴らしい。次から次へと繰り出すストーンズの持ち歌を、どれも的確にストーンズの曲にしていく職人芸。 
 さて、ミック・ジャガー(65歳)だが、やはり華がある。バンドをぐいぐいと引っ張って行く。コンサートをショーにしていく才能。
 とにかく、この四人が一生懸命にライブを進めていく姿は、ロックってなんだっけ?という問いに、真っ直ぐな答えを出している。

 ベースのダリル・ジョーンズは、元々ジャズ畑の人。ブルース・スプリングスティーンやマドンナのバックを経て、ストーンズのサポート・メンバー。チャーリー・ワッツとうまくやっている。
 そのほか、キーボード、ブラスセクション、バックコーラスの各メンバーも、控えめながらもステージを盛り上げている。

 ストーンズには、味と遊びとオリジナリティがある。加えて、たくさんの持ち歌という資産がある。
 そして一番大事なことだが、自ら作り出した音楽の「主人の地位」を、誰にも譲らなかったから、今に至った。

 歌や演奏がとびきり上手で、隙のない完璧な技術と分かりやすいキャラクターが求められる音楽業界。
 ミュージシャンにそれを求めるのは、拝金主義に走る業界のビジネスエリートたち。売れることが第一で、音楽の真髄に関心の無い人たちが、プロデュースと称してミュージシャンを繰る。そういうシステム。
 こんな環境じゃ、今後も創造的な音楽は生まれないだろう。
 ストーンズは、そんな環境にあらがい、あるいは、逆にうまく利用したからこそ、今がある。それだけ、力があると言える。

2-0_201708081221092bb.jpg ちなみに、バディ・ガイが登場し一曲やる。
 彼のギターのその一音だけで、彼のボーカルのその出だしだけで、ステージの場が、たちまちブルース一色になる。凄い。
 ロックが、ブルースやカントリーやR&Bから生まれたとは言え、ブルースはどこまでもブルース。
 
 私は当時も今もストーンズのファンじゃないですが、いい音楽だなと思います。
 最後に。このコンサートは元大統領ビル・クリントンの財団基金で行われたらしい。
 ヒラリー夫人はじめ、ビルの母親や友人や各国の大使館なんかも客としてぞろぞろ来ている。(もちろん一般客も大勢いる)
 そんな彼らが、コンサート直前のストーンズと交わっていました。
 なんか、日本社会とその構造があまりに違うわけです。
 
 
オリジナルタイトル:Shine A Light|
監督:マーティン・スコセッシ|アメリカ| 2008年|122分|
製作総指揮:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ、ロニー・ウッド(ロン・ウッド)|
撮影:ロバート・リチャードソン|
出演:ザ・ローリング・ストーンズ|クリスティーナ・アギレラ|バディ・ガイ|ジャック・ホワイト|ほか




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映画 「ラブゴーゴー」 台湾映画 監督:チェン・ユーシュン

写真
初恋のひと、リーファ










写真
パン屋のアシェン


 コテコテの台湾製コメディかと思いきや、案外、すっきりとした爽やかさ。

1-0_20170805151418f33.jpg パン屋のおばさんが貸してる部屋に、3人の男女が住んでいる。
 アシェン(チェン・ジンシン)は、おばさんの甥。長年、パンとケーキの職人として真面目に働き続けて、今じゃ店を任されている。
 シュウは田舎から出て来た青年で、音楽で食って行きたいが芽が出ない。金がなく、店の売れ残りのパンで、日々何とか、しのいでいる。
 OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)は、大食漢で甘いモノ好き。恋人が欲しい。

 さて、ここから三話構成の第一話が始まります。
 ある日、店にレモンケーキを買いに来た女性がいた。美人だ。アシェンは、その女性が、小学校6年の同級生で、初恋のひと、リーファだと、すぐに気付いた。
 忘れていた初恋のひとは、その日から毎日来店するが、アシェンはドキドキするだけで、声もかけられない。手紙に託そうともしたが渡せない。
 そこでアシェンは考えた。彼にとって得意なコミュニケーション・ツールは、ケーキだ。店のケーキのネーミングを、「リーファへの想いの言葉」に替えはじめる。(リーファはアシェンに気付いていないが、ケーキの名前を面白がったようだ)
 さらには、テレビ放送を通して歌の歌詞で彼女に想いを伝えよう! 音痴のアシェンは、素人のど自慢に応募し、同時にシュウから歌の特訓を受ける。
 しかし、テレビ番組を見てくれなきゃ。だが放送日時を書いた手紙が渡せない。その時、業を煮やした店の女の子が、アシェンの書いた手紙をさっと奪い、リーファを追いかけ手渡した。

 第二話。
 OLのリリーが、街でポケベルを拾った。(携帯電話がまだ無い時代の話です)
 ポケベルをいじり回しているうちに、持ち主の電話番号が分かって、恐るおそる電話をかけてみると、留守番電話のメッセージが若い男のいい声! リリーはこの声に惚れてしまうが・・・。

 第三話。
 訪問セールスのアソン(シー・イーナン)が、痴漢撃退グッズを売り歩いているが、売れない。(第一話では、パン屋のおばさんに売ろうとした)
 高層ビルに迷い込むように入り込んだアソンは、高級な美容室を見つけ、客のフリして入った。ここは女性ばかりだ、セールスできるぞと、アソンは踏んだのだ。
 彼を担当したのは、リーファであった。リーファはこの店を経営している。アソンは彼女に一目惚れ。
 しかし、当のリーファは、愛しい彼との別れ話の時であった。
 
 三話とも、程よいコメディ性を保ちながら、爽やかなテイストです。
 第一話でアシェンがリーファに宛てた手紙文には、ジーンと来ますね。
 第一話のラストは第三話のラストになってつながります。
 第二話は話としては弱いのですが、可笑しい増量剤を加えていて、悪くない。2003年の邦画「茶の味」に出てくる巨大な少女は、本作のリリーの映像表現を真似ています。
 第三話はちょっと頂けない。

 総じて言うと、第一話の話で全編を描いてもらいたかった、というのが私の気持ちです。

オリジナルタイトル:愛情来了 Love Go Go|
監督・脚本:チェン・ユーシュン|台湾|1997年|113分|
撮影:ツァイ・チェンタイ|
出演:パン屋のアシェン(チェン・ジンシン)|アシェンの同級生で初恋の相手・リーファ(タン・ナ)|音楽で食って行きたいシュウ(マニェン・シェン)|OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)|訪問セールスのアソン(シー・イーナン)|パン屋のおばさん(チウ・ショウミン)|パンにガムを入れた男(ホアン・ツジャオ)|

下
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気になる映画 58  《これから上映の映画》

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「彼女の人生は間違いじゃない」
監督:廣木隆一  瀧内公美、光石研
7/15~ロードショー 
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「おクジラさま ふたつの正義の物語」
監督:佐々木芽生 9/9~
和歌山県太地町ドキュメンタリー
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「ファウンダー
    ハンバーガー帝国のヒミツ」
7/29~ロードショー
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「さすらいのレコードコレクター
          10セントの宝物」
K's cinema 2018年春~
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誕生! ヘルツォーク特集2017
監督75歳記念上映
K's cinema 10/7~27
上映作品中、下記は記事にしています
シュトロツェクの不思議な旅
写真
ジャック・ベッケル特集
新文芸坐シネマテークvol.17
8/10、25


映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ

上

 何世紀も生きて来たヴァンパイア夫婦の話。

1-0_201708041043400af.jpg その昔、人間の首筋に噛みついて生血を吸った彼らも、21世紀では、それはもう蛮行で、節度あるヴァンパイアはドリンクとして血を飲んでいる。

 夫のアダムは、病院の血液検査室の男に大金を渡し、輸血用の新鮮な血を横流ししてもらっている。
2-0_20170804105034de4.jpg 妻のイヴは、ヴァンパイアの老作家(ジョン・ハート)がどこかから仕入れてくる信頼度の高い血を分けてもらっている。

 なにせ近年、人の血の多くは汚染されていてヴァンパイアにとっては危険である。汚染されていない清い血の継続的供給はヴァンパイアにとって死活問題であった。

 アダムは何世紀も前から作曲家で、今ではクラシックの作曲家となってしまった人々とも活動してきた。
 ただしアダムはヴァンパイアなので、「人間」の歴史の表舞台には出て来れず、自身の曲を他の(人間の)作曲家に託したりしてきた。アダムは控えめな男であったが、そのことが不満と言えば不満であった。

 そして、20世紀半ばからは作曲するロックミュージシャンとして生きて来た。
 彼の部屋は、1960~70年代のエレキギターの名器や、1905年製のギブソンのアコースティックギター、エフェクター類やドラムセット、ヴァイオリンやリュートなどなど、様々な楽器がグチャグチャ無造作にそこらじゅう。そして、自宅録音のために、スタジオ録音用の往年の機器類が所狭しと並んでいる。
 イヴの部屋には、あらゆる国のあらゆるジャンルの書物がそこらじゅうに積まれている。(日本の文庫本もある)
 夫婦とも、実にマニアックな方々である。監督の理想の部屋なんだろうか。

 さて、お話の方はというと、大したこともないので割愛。観てのお楽しみ。(123分、一応飽きずに見通しました)
 敢えて言えば、ストーリーのスジよりも、ストーリー設定に重きがある映画といえましょう。
 あるいは、監督の世界観を覗き見ることができる作品なのかもしれない。

 気に入った台詞が2つありました。
 イヴが、鬱になりかけのアダムに言う。「自分の心にとらわれるのは、生きる時間の無駄づかいよ」
 もうひとつは、モロッコの港町のライブハウスで夫婦して聴いた、素晴らしい若手歌手を指して、アダムがイヴに言う台詞。「有名になるには、もったいない才能だ」 (確かに素晴らしい歌手です!伴奏は控えめなギターと不思議なパーカッションだけ)
 有名になったが故に才能が消えていくミュージシャンを、何世紀に渡ってたくさん見て来たアダムの言葉。(監督の名言か)

 とても驚いたことがありました。
 映画の半ばあたりで、突然、ある曲が流れます。
 その曲は、女性ソウル歌手のデニス・ラサールが歌う「TRAPPED BY A THING CALLED LOVE」(デニス・ラサール作詩作曲)
 この曲は、デニス・ラサールのアルバムのA面1曲目に収録されてる曲で、私が好きなソウルのベストに入るLPなのです。 (Westbound Records ‎– 1972年)
 いや、ビックリ!
 イヴはこの曲をかけて、元気のない旦那とダンスします。

 つっこみを3つ。
 アダムが病院で輸血用血液を分けてもらうシーン。
 病院の男(人間)がアダムに言う。アダムが首にかけている聴診器を見て、「それ、古いね、70年代のモノかい?」
 私がアダムなら、こう言いかえす。「あんたの座ってる、その椅子、古いね、70年代の椅子だろ」
 男が座ってる椅子は、スチール製、キャスター付のねずみ色のくたびれたオフィス家具なんです。
 ちなみに、監督は1953年生まれ。70年代が懐かしいのでしょうかね。

 アダムの手足となっている男(人間)が、アダムが欲しがった貴重なエレキギターを探しだして納品しに来たシーン。
 ケースからおもむろにギターを取り出して、アダムが試奏する。しかし、だ!
 何か、気の利いたリードのフレーズを弾くのかと思いきや、たどたどしく2フレットで指3本のAしか押さえない・・・、それだけ。オイオイ、これ失笑でした。(楽器店で恐るおそる試奏する中学生みたい)

 3つ目は、本作の題名です。英語タイトルをまんまカタカナにしただけ。ハナから売る気がない素振りが素晴らしい。

 最後に、これまでに記事にした映画で、ヴァンパイアの映画「SUCK サック」、これもロックがらみでした。

下 
オリジナルタイトル:Only Lovers Left Alive|
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ|アメリカ イギリス ドイツ|2013年|123分|
撮影監督:ヨリック・ルソー|音楽:ジョセフ・ヴァン・ヴィセム|
出演:アダム(トム・ヒドルストン)|イヴ(ティルダ・スウィントン)|イヴの妹のエヴァ(ミア・ワシコウスカ)|老作家マーロー(通称キット)(ジョン・ハート)|アダムの手先として動くイアン(人間)(アントン・イェルチン)|ワトソン医師(人間)(ジェフリー・ライト)|


【ジム・ジャームッシュ監督の作品】 ~これまでに記事にした映画から
(題名をクリックしてご覧ください)

パーマネントバケーション」「ナイト・オン・ザ・プラネット」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」

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映画 「大統領の理髪師」 韓国映画  監督:イム・チャンサン

上
左から、理髪師のソン、大統領、側近。

 
 社会的にとてもシリアスな題材を、敢えてコミカルなタッチで映画化にするには、勇気が要ると思います。

 大企業による公害被害とその訴訟勝利という実話を扱った、ジュリア・ロバーツ主演映画「エリン・ブロコビッチ」が、まさしくそうした映画でした。(この記事はこちらからどうぞ)

1-0_201708011416255d3.jpg 本作の「大統領の理髪師」も、基本こうしたコミカルタッチな映画です。
 ここでのシリアスな題材とは、1960年代、韓国大統領の独裁政治によって犠牲となった一般市民の悲劇です。
 でも、観てみるとわかりますが、意外に軽い仕立てに作られています。

 「大統領の理髪師」で終始一貫、固有名詞なしで登場する「大統領」とは、実は第5代大統領の朴正煕です。(1917-1979)
 (その娘は第18代大統領のパク・クネ(朴槿恵)ですね。)
 ただし、理髪師のお話は創作です。つまり創作のお話を語ることで、映画は朴正煕の独裁政権を批判しています。

 「エリン・ブロコビッチ」は、ジュリア・ロバーツ演ずる普通一般の女性が、ある偶然の機会で、弁護士代行として公害訴訟に立ち向かうコミカルな話でしたが、本作「大統領の理髪師」は、ソン・ガンホ演ずる理髪店の男が、ある日、無理やり、大統領の専属理髪師にされてしまいます。このことから喜劇と悲劇が始まります。

 ジュリア・ロバーツ演ずる女性は高卒で、弁護士として求められるハイレベルな専門知識からは、ほど遠い人物でした。一方、ソン・ガンホ演ずる理髪師は文盲で世事に疎い男です。両作品ともに、この知識ギャップが喜劇設定になっています。
 
 さて、ソン・ハンモは定期的に官邸(青瓦台)に呼ばれ、官邸内に新設した理髪室で、国で一番偉い男(独裁者)の、髪を切りヒゲを剃ることになります。こりゃ、誰でもビビります。しかし名誉でもあるわけです。

 ここで事件が起きます。
 細菌性の下痢症状を抱えた北朝鮮の兵士(スパイ)が、ソウルに侵入して来ます。そしてソウル市内にこの細菌が拡がりはじめます。
 韓国当局はこの細菌をマルクス病菌と名付け、下痢をした人間は北朝鮮と接触したヤツだと断定し検挙し始めます。
 また同時に当局は、急に下痢の症状になった市民は、「スパイと接触したヤツ」に接触して、下痢になった人間だと断定し、尋問をし密告を促します。
 ソン・ハンモの理髪店がある町内では、彼の知り合い幼なじみ数人が疑われ、尋問を受け拷問を受け処刑されてしまいました。

 そんなある日、ソン・ハンモの店に、大統領側近の偉いサンが散髪に来ていました。(店は官邸のお膝元の街にあります)
 そして運命です。その時、ソン・ハンモの息子ナガンが、お腹が痛いと父親に訴えました。偉いサンはギロッと睨みます。
 大統領から寵愛を受けているソン・ハンモですから、国の民としてもっとも模範的態度を示さねばなりません。

2-0_201708011423262e7.jpg 彼は息子を連れて近くの交番に出頭します。交番は町内にあって警官とは親しい間柄です。まさか、息子を当局に渡すことはなかろうと踏んだのですが、ナガンは当局に送られ電気拷問を受けます。
 しかし、ナガンの身体は電気を通されても、なぜかただ、ムズガユイだけでした。

 数日後、送り返されてきたナガンは半身不随になっていました。
 ソン・ハンモは体制に対し煮えたぎる怒りを覚えますが、大統領や側近の前では平静を装います。
 一方で、ソン・ハンモは息子を背負い、息子の足を治せる民間医療の医者や仙人を訪ね歩きました。そして、韓国一の仙人に会うことができました。

 映画のラスト近く、大統領が側近によって暗殺されてしまいます。
 ソン・ハンモのその後は、いかに。彼の息子の足は一体どうなるのか! 観てのお楽しみ。

 ちなみに、映画はクーデターで政権を掌握した朴政権についてだけではなく、ベトナム戦争で負傷した韓国軍兵士の心、朴大統領の前任の不正選挙についても語っています。


オリジナルタイトル:孝子洞理髪師|효자동 이발사|
監督・脚本:イム・チャンサン|韓国|2004年|116分|
撮影 チョ・ヨンギュ|
出演:ソン・ハンモ(ソン・ガンホ)|その妻のキム(ムン・ソリ)|その子ナガン(イ・ジェウン)|大統領(チョ・ヨンジン)|警護室長チャン・ヒョクス(ソン・ビョンホ)|中央情報部長パク・ジョンマン(パク・ヨンス)|ほか

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気になる映画 57  《これから上映の映画》

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「密使と番人」
監督:三宅唱
ユーロスペース7/22~
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「ロスト・イン・パリ」 フランス映画
監督:D.アベル&F.ゴードン
ユーロスペース8/5~
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「笑う故郷」  アルゼンチン映画
監督:G・ドゥプラット&M・コーン
岩波ホール9/16~
写真
「ソヴィエト・フィルム・クラシックス」
冒険・SF映画編
アテネ・フランセ文化センター8/7~12
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「ブラザー・クエイの世界」
イメージフォーラム
7/8~28
「ドゥミとヴァルダ、幸福についての
            5つの物語」

イメージフォーラム7/22~
上映映画のうち以下は記事にしてます。
5時から7時までのクレオ
天使の入江」  (題名をクリック)
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「轟夕起子」
昭和の銀幕に輝くヒロイン第86弾
ラピュタ阿佐ヶ谷
8/20~10/21
上映映画のうち以下は記事にしてます。
洲崎パラダイス 赤信号
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日活文芸映画は弾む
ラピュタ阿佐ヶ谷6/18~8/19
上映映画のうち以下は記事にしてます。
にあんちゃん」「非行少女
競輪上人行状記
     
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アヴァンギャルド・ニッポン
安倍公房×勅使河原宏
ラピュタ阿佐ヶ谷7/23~8/19
上映映画のうち以下は記事にしてます。
燃えつきた地図
     
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特集「逝ける映画人を偲んで
          2015-2016」

京橋フィルムセンター NFC 7/20~9/10
上映映画のうち以下は記事にしてます。
」「祭りの準備」「狂った野獣」「任侠外伝 玄界灘」「さらば愛しき大地

2年前・4年前・6年前の7月、一夜一話。(2015年7月・2013年7月・2011年7月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-07-29 Sat 06:00:00
  • 映画
2年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  2年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年7月 Archive

写真
「心中天網島」
監督:篠田正浩
岩下志麻、中村吉右衛門
写真
「クレージーの大爆発」
監督:古澤憲吾
植木等、ハナ肇、谷啓
写真
「百円の恋」
監督:武正晴
安藤サクラ
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「ジ、エクストリーム、
        スキヤキ」
監督:前田司郎
写真
岸部一徳の出演映画
教祖誕生、Beautiful Sunday
いつか読書する日、他
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「8 1/2」
監督:フェデリコ・
     フェリーニ
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「キャデラック・レコード
音楽でアメリカを変えた人々
         の物語」
写真
フランス映画、1960年代。
      いい映画14本。
小さな兵隊、ラ・ジュテ、他
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「ドイツ零年」
監督:ロベルト・
     ロッセリーニ
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「宇宙人ポール」
監督:グレッグ・モットーラ
アメリカ
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最近読んだ本、3冊
写真
福島 高湯温泉に行ってきた


4年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  4年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年7月 Archive

写真
「珍品堂主人」
監督:豊田四郎
淡島千景、森繁久彌
写真
「兄貴の恋人」
監督:森谷司郎
内藤洋子、酒井和歌子
写真
「ロボジー」
監督:矢口史靖
ミッキー・カーチス
写真
「狐と狸」
監督:千葉泰樹
加東大介、小林桂樹ほか
写真
「大阪ストーリー」
大阪の在日韓国人一家の
ドキュメンタリー映画
写真
「乙女ごころ三人姉妹」
監督:成瀬巳喜男
細川ちか子、堤真佐子
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「あの夏、いちばん
       静かな海」

監督:北野武
写真
「ツレがうつになりまして」
監督:佐々部清
宮崎あおい、堺雅人
写真
「事件記者」
監督:山崎徳次郎
シリーズ映画10本の第一作
写真
映画ピックアップ
「女が、自分の道を歩む時」
邦画/洋画18本
写真
「マーサの幸せレシピ」
監督:S・ネットルベック
ドイツ
写真
「夜霧の恋人たち」
監督:F・トリュフォー
フランス
写真
「スタンリーのお弁当箱」
監督:アモール・グプテ
インド
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「愛おしき隣人」
監督:ロイ・アンダーソン
スウェーデン


6年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  6年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年7月 Archive

写真
「江分利満氏の優雅な生活」
監督:岡本喜八
小林桂樹、新珠三千代
写真
「きょうのできごと」
監督:行定勲
田中麗奈、妻夫木聡
写真
「原子力戦争 Lost Love」
監督:黒木和雄
原田芳雄、山口小夜子
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「竜馬暗殺」
監督:黒木和雄
原田芳雄石橋蓮司松田優作
写真
「ポンヌフの恋人」
監督:レオス・カラックス
フランス
写真
「ミフネ」
監督:S・K・ヤコブセン
デンマーク
写真
「パーマネント
      バケーション」

監督:ジム・ジャームッシュ
写真
「スリ」
監督:ロベール・ブレッソン
フランス
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「フルスタリョフ、車を!」
監督:アレクセイ・ゲルマン
ロシア
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「キングス・オブ・
       クレズマー」

音楽ドキュメンタリー映画
写真
「黒い神と白い悪魔」
監督:グラウベル・ローシャ
ブラジル
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「黒い眼のオペラ」
監督:ツァイ・ミンリャン
台湾
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「どつかれてアンダルシア」
監督:Alex de la Iglesia
スペイン
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「エヴァとステファンと
      すてきな家族」

スウェーデン
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「キス・キス・バン・バン」
監督:スチュワート・サッグ
イギリス
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「スイート・スイート・
        ビレッジ」

チェコスロヴァキア

一夜一話の “今日はシカゴ・ブルースだよ” ココ・テイラー

ココ


 今日の一枚はシカゴ・ブルース。
 ココ・テイラーという女性ブルースシンガーのアルバム「I Got What It Takes」だよ。
 ベテランのココが、ここぞとばかりにシャウトする。そこらのシンガーをなぎ倒す。

 まずは、このアルバムの音の鳴りが気に入っている。
 録音スタジオで録音されているが、ココのボーカルにリバーブがかかってない、生音(声)だ。
 バックバンドの音にもエフェクトをかけてない。ギター・アンプから出る音もそのままを録音している。
 だからこれを聴くと、小さなライブハウスで、あたかも目の前で演奏している感じがする。これが良い。

 収録曲はもちろんすべてブルースだが、曲ごとにリズム/ノリに変化を持たせて飽きさせない。曲によってはソウルな雰囲気もみせる。
 特にA面4曲目「Voodoo Woman」が気に入っている。次には同じくA面3曲目や5曲目なんかもいい。B面にもいいのがある。
 ただしA面1曲目は頂けない。ドラムがもたってる。ベストテイクじゃないのをレコードにしちゃった?

 時々はブルース聞かなきゃ、からだ悪くするよ、ということはないが、たまには聴いた方がよろしい。
 そして、こんなこと言うと、誰かに叱られるかもしれないが、ブルースは少し下手なプレーの方がいい。
 たとえばB.B.キングは完璧だ。これはこれでいいんだが ・・。
 でもブルース・バンドはね、ネイティブでローカルで、少し下手くそで、ラフなプレーの方がいい。そう思いません?

2_2017072508584892d.png「I Got What It Takes」 (1975) Alligator Records ‎– AL-4706

A1 Trying To Make A Living  2:46
A2 I Got What It Takes  3:42
A3 Mama, He Treats Your Daughter Mean  3:04
A4 Voodoo Woman  3:46
A5 Be What You Want To Be  3:53
A6 Honkey Tonkey  2:54
B1 Big Boss Man  3:57
B2 Blues Never Die  3:55
B3 Find A Fool  3:59
B4 Happy Home  3:15
B5 That's Why I'm Crying  4:28

Vocals – Koko Taylor|
Bass – Cornelius Boyson|Drums – Vince Chappelle|Guiitar – Mighty Joe Young, Sammy Lawhorn|Keyboards – Bill Held|Saxophone – Abb Locke|
Producer – Bruce Iglauer, Koko Taylor, Joe Young|

映画 「故郷」(1972) 倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆、渥美清  監督:山田洋次

上
砕石を満載し、今にも沈みそうな木造運搬船が、小舟を曳いてゆっくり瀬戸内の海を行く。船は老朽化している。
写真
船長で一家のあるじ、精一。
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船の機関士でもある、妻の民子。子供が二人いる。

 

 どっしりと腰を据えた脚本、じっくり観るに値する、いい映画。

1-0_20170723141037d2f.png 話の舞台は、瀬戸内海に浮かぶ小島と、海上を行きかう木造の砕石運搬船という、日ごろ馴染みのないドラマ設定が、観る者に異色な印象を与えてくれる。
 くわえて、ドキュメンタリー映画の要素も加わり、1972年当時のライブな感覚が味わえる。

 広島県の倉橋島という島に住む、石崎一家の物語です。
 一家の稼業は、一抱えもある砕石を採石場で積み込み、沿岸の埋立て地造成現場の沖合まで航行し、そこで石を海に投棄する仕事。
 この砕石専用の運搬船は「石船」と呼ばれ、特に倉橋島の各家では、この石船を持ち稼業に励む家々が多かったのです。

 石崎の家は、精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦に、子が二人、そして精一の父(笠智衆)の、五人家族。
 夫婦はそろって船に乗るので、子は専ら祖父が面倒をみている。
 海を見下ろす島の丘には、小さな畑があって民子はそこで野菜を作っているが、買い物に行く間がなく、毎日の食材に困ることがある。
 それを補ってくれているのが、軽トラ行商の魚屋の松下(渥美清)だ。家族同然で、「今日の余りモノだよ」と言って、気安く魚を分けてくれるのだ。

 倉橋島は今も、のどかな様相を見せるが、この島にも時代の波が押し寄せていた。
 石船の運搬単価は下落し、ダンプトラックの陸送に取って代わろうとしていた。これに対抗するには、船体を大きくした鋼鉄船に乗り換えるしかなかった。しかし、石崎に毛頭そんな金はない。
 そんなことより、石崎の早急の課題は、今の木造船のエンジンが寿命に来ていること。砕石運搬の仕事を差配してくれる親方に相談したが、金の融通は無理だった。

 かつて精一と一緒に船に乗っていた弟は、先のない石船の仕事に見切りをつけ、島を離れて今は勤め人になっていた。
 そして、ついに、精一も石船稼業を諦めた。
 人の紹介で、広島県尾道にある造船所に勤めることになったのだ。家族の移住である。精一の父は島に残ることになった。

 東京から来てこの島に移り住んだ魚屋の松下(渥美清)が、映画の中で独り言のように言っている。倉橋島というこんないい島に、どうして住み続けることが出来ないんだろうね。
 また精一は、零細な稼業に押し寄せる時代の波について、妻の民子にこう言っている。「なんで、わしらは大きなもんに勝てんのかいの・・・」と。


監督:山田洋次|1972年|96分|
原作:山田洋次|脚本:山田洋次、宮崎晃|撮影:高羽哲夫|
出演:石崎精一(井川比佐志)|精一の妻・民子(倍賞千恵子)|精一の実父・石崎仙造(笠智衆)|精一の弟・石崎健次(前田吟)|魚屋の松下松太郎(渥美清)|ほか

【 山田洋次の映画 】 ~これまでに記事にした作品から (下記題名をクリック)

二階の他人」「下町の太陽」「馬鹿が戦車でやって来る」「霧の旗」「故郷

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映画 「初恋のアルバム 人魚姫のいた島」 韓国映画  監督:パク・フンシク

2_20170723103949f09.jpg




写真


写真

 甘口の映画だが、そう悪くはない。
 それは、若き日の母親とその娘ナヨンを、一人二役で演ずる、チョン・ドヨンが光っているからです。

 ナヨンは失踪した父親を探して、母親が生まれ育った島へ旅立ちました。
 ですが、島に着いた途端、ナヨンは、母親が娘であった頃へ、タイムスリップしてしまう。
 タイムスリップしたその先では、島も、そして周りの海も、まだまだ開発の手が及んでないのどかな風土、光りに満ち溢れた風景でした。

1-0_20170721103413879.jpg 若き日の母・ヨンスンは幼い弟と二人住まい。親はいません。ヨンスンは島の女たちと一緒に、海女をして生活しています。
 島には小さな郵便局があって、ヨンスンはそこの若い配達夫・ジングクと恋仲になっていました。
 学校へ通えず文盲のままに過ぎて来たヨンスンに、ジングクは優しく読み書きを教えています。

 映画はその大部分の時間を使って、このヨンスンとジングク、若い二人の、たどたどしい愛を瑞々しく描いて行きます。これが本作の見どころでしょう。

 さて、そののちジングクは転勤で島を離れることになりますが、結局、その後二人はめでたく結ばれました。
 そう、この郵便局の男ジングクがナヨンの父親になるのです。

 しかし、いつからなのでしょうか、両親の夫婦仲がうまく行かないようになってしまいました。(映画は、夫婦仲が悪い事や以下の事については、少ししか時間を割きません)

2-0_2017072110361922a.jpg 勝ち気な母親は、事あるごとに、がなり声で父親を容赦なく、なじる毎日。父親は言われるまま、ただ黙っている。
 ナヨンはそんな母親が嫌いだ。こんな、女尊男卑な家庭に生まれたくなかった。

 どうやら父親は借金を背負っているようです。人の好い父親は、誰かの連帯保証人になったらしく、返済義務が生じている。
 父親の郵便局勤めの稼ぎだけでは賄えない。その分、家計を補うためにも、母親は銭湯でマッサージ/垢すりをして働いています。(ナヨンも郵便局に勤めています)

 そのうえ、近年、父親は体調が悪い。病院の検査でも良くないらしい。だが父親は、このことを誰にも話していません。
 父親は妻に債務に病魔に疲れてしまい、失踪。
 そこで、娘ナヨンが、父親探しに島へ向かうのでした。

 そして映画冒頭。父親の葬儀の席で、借金を残したまま他界したことを、母親は大声でなじり、大泣きするのです。

 タイムスリップから帰ったナヨンは思います。
 あんなに、ねじ曲がってしまった母親の心に、夫にも見せない秘めた愛、若き日の愛が、あるのだろうと。
 そして、父親については、純粋に優しいということは、かえって周りを傷つけることになると・・・。

 残念なのは、若い頃の両親と現在の両親の、その様相の格差があまりにあまりなので、別の人の話に思えてしまいます。
 いやいや往往にして、こうなってしまうものですよ、と映画は言っているのでしょうか。


下
オリジナルタイトル:人魚姫|인어공주 |
監督:パク・フンシク|韓国|2004年|111分|
原案:キョン・ヒェウォン|脚本:パク・フンシク 、 ソン・ヒェジン|撮影:チェ・ヨンテク|
出演:娘のナヨン、若き日のナヨンの母・チョ・ヨンスン、一人二役(チョン・ドヨン)|現在の母・キム・ヨンスン(コ・ドゥシム)|若き日の父・キム・ジングク(パク・ヘイル)|現在の父・キム・ジングク(キム・ボングン)|ナヨンの彼氏・ドヒョン(イ・ソンギュン)|ほか

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映画 「ジヌよさらば かむろば村へ」  監督・脚本:松尾スズキ

上2


1-0_20170719110447be0.jpg 松尾スズキ監督2015年作のドタバタ喜劇です。こういう質のいい映画をつくる監督に拍手!
 くわえて阿部サダヲの芯のある演技が、この映画の柱になってます。
 なにしろ脚本がいい! (近年、他監督の新作邦画の多くが、その脚本がいかに駄作か・・・・)
 各所にみられる気の利いた可笑しいセリフも聞き逃しなく。

 東北のある村に、頼りなさげな若い男が一人ふらりと現れる。100万円で廃屋のような古い農家住宅を買ったらしい。
 この、かむろば村は限界集落一歩手前。村では、村長・天野与三郎(阿部サダヲ)は、まだ若い。

 天野村長は、この頼りなさげな男・高見武晴(松田龍平)を、まるで身内のように「タケ」と呼んで、親身に世話をする。
 タケは元銀行員。ムリな融資と回収不能の連鎖から、タケは精神的に参ってしまった。そして退職。病名はカネ恐怖症。カネを見るも触るもダメ。身体がガクガクしてきて、その場で気絶する。(本作の題にあるジヌとは銭ということらしい)
 だからカネを使わない生活を探して、タケはかむろば村にたどり着いた次第。

 カネを使わない生活。それは現物支給の生活。
 タケがはじめた便利屋の労働提供は野菜に換わる。村長の店、よろずやの「スーパーあまの」でのバイトも同様で、店の食料品に換わる。ただし、レジはできない。村長の妻・亜希子(松たか子)か、パート店員・いそ子(片桐はいり)がする。

 天野村長は、村に村人に真剣に尽くす。信頼も厚い。(見習え、全国の村長町長よ)
 だが、彼には秘めておきたい過去があった。そしてある日、村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)がやって来た。
 ひとモンチャク起きないわけがない。警察沙汰となった。

 隣り町の町議会議員が、かむろば村を吸収合併することを企んでいる。かむろば村に何やら処理場を作る計画だ。
 そして、かむろば村の村長選挙が始まる。隣り町の町議は、日頃から手なずけておいた村の助役に立候補させた。
 一方、天野村長は自分に替わって頼りなさげなタケを立候補させる。タケはカネにまみれていない。まみれようがない。ついにタケもその気になった。

 ところで、隣り町の町議会議員は、手なずけたい女がいる。村にある旅館の美人女将だ。
 女将は、かむろば村の老人で自称神様の、なかぬっさん(西田敏行)の娘だ。
 この、なかぬっさんは、いい神様で、(重要なシーンで目が不気味に光る)、この話で重要な役回り。天野村長やタケを助けるのだ。
 だが、神様とはいえ寄る年波には勝てぬ。なかぬっさんが他界。そして、どうやら、孫が村の神を引き継いだようだ。
 村長と村の神が代替わりし、かむろば村は次代へと歩み始める。
 

監督・脚本:松尾スズキ|2015年|121分|
原作:いがらしみきお|撮影:月永雄太|
出演:高見武晴、あだ名タケ(松田龍平)|かむろば村村長・天野与三郎(阿部サダヲ)|その妻・天野亜希子(松たか子)|女子高生・青葉(二階堂ふみ)|村長の店「スーパーあまの」のパート店員・いそ子(片桐はいり)|自称かむろば村の神様・なかぬっさん(西田敏行)|なかぬっさんの娘で伊佐旅館の女将・奈津(中村優子)|奈津の息子でなかぬっさんの孫、与三郎との子・進( 田中仁人)|かむろば村の助役・伊吉(村杉蝉之介)|伊吉の妻でや村役場の職員・トキ(伊勢志摩)|伊佐旅館の板前で元やくざ・勝男(オクイシュージ)|タケの農作業の面倒をみる何時も笑顔のみよんつぁん(モロ師岡)|村のやくざ青年で女子高生青葉が好きな青木(荒川良々)|隣の町の町会議員・伊佐旅館の女将・奈津に気がある・青舐(皆川猿時)|村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)|

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一夜一話の “今日はジャズピアノトリオだよ“ ユリ・ケイン

000.jpg


 今日の一枚は、「BLUE WAIL」。ジャズピアニスト、ユリ・ケインがドラムとベースを従えたトリオのアルバムだよ。

 古今東西ありがちなジャズピアノトリオの演奏フォーマットを、ほどよく逸脱している鋭利なセンスが聴きどころ。
 定型的なジャズサウンドに飽いている輩には、グッと来るアルバムです。

 演奏内容は、緊張と緩和がうまくコントロールされていて、サウンドの表情が豊か。また、1曲の演奏時間が総じて短く、スカッと終わる。いさぎよい。


 ピアノトリオの伝統的様式を逸脱していると、まず感じるのは、ドラム。
 たぶんにユリ・ケインのピアノにインスパイアされている結果だ。
 やたら手数が多いドラムだが、不思議にうるさくない。それは太鼓の鳴りをデッドにチューニングしてあって、かつハイハット、シンバルも派手じゃなく繊細な鳴りのものを選んでいるから。
 一方、アコースティックベースは、奇をてらわずオーソドックスに4ビートを維持し、やんちゃなピアノとドラムの面倒をみながら、トリオの底辺を支えている。

 さて、ユリ・ケインのピアノは、意外に綺麗な音色を出す。
 よってスローなバラードでは耽美である。しかし、アバンギャルドなフレーズではエッジの効いた力強いピアノになる。
 また、ブルー・ノート・スケールも忘れてはいない。
 収録曲のいくつかに出てくるドラムやベースのソロ部分で、ユリ・ケインの控え目なバッキングが独特でかっこいい。
 つまり総じて、ユリ・ケインのピアノはとても独創的なスタイルだ。あたりまえだが、これがこのアルバムの肝である。
 
 本アルバムを聴くにあたっては、まずは1曲目の、ユリ・ケインのピアノソロでぶっ飛びたい。
 演奏曲は「ハニーサックル・ローズ」。ファッツ·ウォーラーの作曲(1929年)で、数々の女性ジャズシンガーが歌った曲。
 これを前衛的に気ままにプレイする。うう、GOOD! (アルバムのラストは別テイク)
 2曲目からはトリオの演奏が続く。以下、ご随意にどうぞ、お楽しみください。

「BLUE WAIL」  (Winter & Winter 910034-2)  1998年

1 Honeysuckle Rose (Written-By – Fats Waller)  4:03
2 Loose Trade  5:33
3 The Face Of Space  6:21
4 Digature Of The Line 4:55
5 Blue Wail  8:35
6 Stain  5:48
7 Sweet Potato  9:19
8 Bones Don't Cry  5:15
9 Poem For Shulamit  4:45
10 Fireball  3:37
11 Honeysuckle Rose (Written-By – Fats Waller) 4:14

Piano, Producer – Uri Caine|Bass – James Genus|Drums – Ralph Peterson Jr.|

Producer – Joe Ferla, Stefan Winter

映画 「プープーの物語」  監督:渡邉謙作

写真
フウとスズ










写真
ブルーの色が好きなスズと、オープンカー


1-0_201707141055476be.png
 二人の女子、フウとスズの、大変大変なロードムービー。
 これは、ちょっとやっかいなキテレツ喜劇です。
 その上、軽くてユルくて、くだらない。Good!
 今のご時世じゃ、もうこういう映画はつくれない。

 フウは密かにスズが好き。スズはブルーの色が好き。
 フウはスズに寄りつく男をなぎ倒す。スズは赤ちゃんを抱えてる。
 スズは世のしがらみに頓着しない。その時の気まぐれで爽やかに生きてる、チョット足りない女の子。
 フウはスズが好きだから、そんなスズをいつもフォローする。

 大きく広がる田園風景の中、フウとスズと赤ちゃんのプープーはヒッチハイクの車を待っている。
 そこへ、スズが好きなブルー色のオープンカーがやって来る。はしゃぐスズ。
 着いた先で、オープンカーの男がスズに襲い掛かる、
 察したフウは生まれて初めての人殺しで、男をやっつけたはずが、どっこい生きていて逆襲を喰らう。
 だが次の瞬間、男は眉間に銃弾を受け、即死。
 間一髪のところ、二人を救ったのは、オープンカーの後部トランクから突如現れた、不思議な銀色少年、トランクマン。

1-0_2017071410592830c.png そんな頃、女装の妻とその夫は、自分たちの行方不明の赤ちゃんを探していた。
 この二人組に捕まったフウとスズ、計4人はオープンカーに乗って、彼らの赤ちゃん探しに付き合わされる。

 「きっと、ここよ」とフウは車を止めさせた。そこはスズが赤ちゃんをベビーカーごと、置き去りにした所。
 やっぱり!草原の茂みの中から赤ちゃんの泣き声。
 スズの赤ちゃんを奪おうとする二人組は、フウとスズに銃口を向けるが。どこからともなくドキューン。ここで例のトランクマンが再度ふたりを救った。

 そもそも、フウとスズのこの旅は、赤ちゃんのお父さんに会いに行く旅。
 一方、赤ちゃんのお父さん、木嶋(國村隼)は、スズからの手紙を、楽しい我が家で受け取っていた。

 手紙を読んで木嶋は唸った。たしか、依頼殺人でスズを殺したはずなのに…。
 木嶋はさっそく、あの時の殺人請負人ジョージ(原田芳雄)に会うことにした。結局木嶋は今度はジョージに頼まず、自らスズを狙うことにした。

 執拗な追跡の結果、木嶋がフウとスズの前に現れる。互いに拳銃の撃ち合いが始まり、次ぎの瞬間、木嶋が崩れた。
 そう、ここでもお助けトランクマン!

 そおして、フウとスズとプープーに、再び幸せな日々が始まるのでした。めでたしめでたし。なんぢゃ!このケッタイな話は・・。

 あの鈴木清順が脇役の老人で現れる。舞台セリフっぽい長セリフです。
 挿入のサウンド、いいセンス。
 軽く受け流して観ましょうね。
 

監督・脚本:渡邉謙作|1998年|73分|
原案:ミッキー・ケン・ケン・ブー|撮影:村石直人|音楽:三宅純|
出演:スズ(上原さくら)|フウ(松尾れい子)|木嶋(國村隼)|ジョージ(原田芳雄)|トランクマン(山中零)|老人(鈴木清順)|
オープンカーの男、職業ゴルファー(桜井大造)|イルカ(津田充昭)|ゲスオ(大森立嗣)|写真の男(ジョー山中)|ほか

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映画 「アデル、ブルーは熱い色」  監督:アブデラティフ・ケシシュ

上
 アデルとエマ
1-0_20170713094955213.jpg


 オリジナルの題名は「アデルの人生:第1章と第2章」。
 高校生のアデルが同じ学校の先輩男子より、街で見かけたブルーの髪の女性に魅かれていく話。
 主人公のアデル役のアデル・エグザルコプロスの自然体の熱演に脱帽だ、素晴らしい。

 宣伝では、衝撃の愛の7分間、史上最高のラブシーンにカンヌが大喝采!と、レスビアンの性描写をことさらに言うが、蓮っ葉な売り文句だな、それがこの映画の売りなのかい?

 ブルーの髪の女性エマは画家、その彼女が映画の中で、自身の作品に言及するキュレーター(美術評論家)に対して言っている。「作品に敬意を払うべきよ」と。このセリフをそのまま、本作の配給会社に言いたいね。
 観るほうも、エロいの観たけりゃ、他のにすれば。

 売りのラブシーンよりも、アデルがクラブで街頭デモでパーティで幼稚園で踊るダンスシーンの方が長い。映画の各所で出てくる。監督は愛と踊り両方のシーンをもって、作品のいしずえ(礎)と考えている風に思える。

 映画に使われる音楽の選定にセンスを感じる、いいね。

 あと、アデルの家庭は中の下か、労働者階級で、人生において特に職業選択は手堅くというに対して、エマの家庭は自由奔放な上流階級。お父さんは二人目で、著名なシェフ。エマの家庭はレスビアンを許容する。

 話のスジはいたって単純だが、「アデルの人生:第1章と第2章」を丁寧に描いて行く。179分の大作。
 演技輝くアデルに注目。じっくり観てみよう。

 ちなみに、アデルに対して恋愛感情なしに、親身になってくれる男子が登場する。
 2015年の韓国映画「恋物語」にも同様な男子が主人公のレスビアンな女子を慰める。(「恋物語」の記事はこちらから。)


オリジナルタイトル:La Vie d'Adèle : Chapitres 1 et 2|
英語タイトル:BLUE IS THE WARMEST COLOR|
監督:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2013年|179分|
原作:ジュリー・マロ|脚本:アブデラティフ・ケシシュ 、 ガリア・ラクロワ|
撮影監督:ソフィアン・エル・ファニ|音楽:ジャン=ポール・ユリエ|音楽監修:エリーゼ・ルーゲン|
出演:アデル(アデル・エグザルコプロス)|エマ(レア・セドゥー)|サミール(サリム・ケシュシュ)|リーズ(モナ・バルラベン)|トマ(ジェレミー・ラユルト)|ベアトリス(アルマ・ホドロフスキー)|アントワーヌ(バンジャマン・シクスー)|ほか

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1年前・3年前・5年前の7月、一夜一話。(2016年7月・2014年7月・2012年7月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-07-13 Thu 06:00:00
  • 映画
 ちょっと改良いたしました。
1年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年7月 Archive

写真
「ピース オブ ケイク」
監督:田口トモロヲ
多部未華子、綾野剛
写真
「愛と希望の街」
監督:大島渚
藤川弘志、富永ユキ
写真
「特急にっぽん」
監督:川島雄三
フランキー堺、団令子
写真
「スライ・ストーン」
音楽ドキュメンタリー映画
オランダ
写真
「100歳の華麗なる冒険」
監督:F・ハーングレン
スウェーデン
写真
「鯨とり ナドヤカンダ」
監督:ペ・チャンホ
韓国
写真
「ボーダー・レディオ」
監督:A・アンダースほか
アメリカ
写真
「自由はパラダイス」
監督:セルゲイ・ボドロフ
ソ連
写真
「マラヴィータ」
監督:リュック・ベッソン
アメリカ R・デ・ニーロ
写真
<ア行> の洋画
これまでに記事にした洋画から。

3年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年7月 Archive

写真
「渋滞」
監督:黒土三男
萩原健一、黒木瞳
写真
「濡れた赫い糸」
監督:望月六郎
北村一輝、高岡早紀
写真
「みれん」
監督:千葉泰樹
池内淳子、仲谷昇
写真
「NINIFUNI」(ににふに)
監督:真利子哲也
ももいろクローバー
写真
「雁の寺」(がんのてら)
監督:川島雄三
若尾文子
写真
「サーカス」
監督:G・アラヴィンダン
インド
写真
「リダクテッド 真実の価値」
監督:ブライアン・デ・パルマ
アメリカ
写真
「ポケットの中の握り拳」
監督:マルコ・ベロッキオ
イタリア
写真
「グランド・ブダペスト・ホテル」
監督:ウェス・アンダーソン
イギリス
写真
京都・非観光ぶらり街歩き
寺町通、本能寺とか
そして土塁(御土居)
写真
最近読んだ本3冊

5年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年7月 Archive

写真
「サマータイムマシン・
        ブルース」

監督:本広克行 上野樹里
写真
「ハラがコレなんで」
監督:石井裕也
仲里依紗
写真
「ドキュメント灰野敬二」
監督:白尾一博
音楽ドキュメンタリー
写真
「屋根の上の赤い女」
監督:岡太地
山中崇、神農幸
写真
「水の花」
監督:木下雄介
寺島咲
写真
「もう頬づえはつかない」
監督:東陽一
桃井かおり
写真
京都 先斗町の一夜
お盆で帰っての、夏。
写真
「シチリア!シチリア!」
監督:G・トルナトーレ
イタリア
写真
「みんなのしらない
        センダック」

アメリカ
写真
「ブラザー・フロム・
    アナザー・プラネット」

アメリカ
写真
「パンチドランク・ラブ」
監督:P・T・アンダーソン
アメリカ
写真
「ラスト・ホリデイ」
監督:A・カラクーロフ
カザフスタン
写真
「イグジット・スルー・ザ・
      ギフトショップ」

監督:バンクシー  アメリカ
写真
「少女の髪どめ」
監督:マジッド・マジディ
イラン
写真
「越境者」
監督:ピエトロ・ジェルミ
イタリア


映画 「チャップリンからの贈りもの」  監督:グザヴィエ・ボーヴォワ

上
左から、娘のサミラ、父親のオスマン、そして風来坊のエディ。
 

 話の舞台はスイス、レマン湖の辺り。
 生真面目なアルジェリア人と楽天家のベルギー人、この二人の男がトンデモナイことを仕出かす話。

1-0_20170708220906035.jpg 北アフリカはアルジェリアからの(不法?)移民の男オスマンは、テレビも無い粗末な小屋に妻子と住んでいる。
 最近、妻が重い腰痛で緊急入院し、オスマンは娘のサミラと二人っきり。  
 そこへ風来坊のベルギー人エディが訪ねて来た。エディはオスマンの命の恩人で、義理堅いオスマンはエディの居候を歓迎した。
 だが、病院でこのことを知ったオスマンの妻は、「エディはやっかい者」と渋い顔。以前に良くない事があった様子。

 オスマンは問題を抱えていた。
 妻の医療費が払えない。だから妻は手術が受けられない。
 病院からは、オスマンの妻であることを証明する家族証明を提示すれば、低所得者向けに、手術代などの医療費が割安になる。
 しかしオスマン夫婦は結婚の際、スイスの役所の手続きをしていない、だから証明するものが無い、よって高額医療費の全額負担となってしまう。
 そのうえ、妻が働けないでいるので、家族の収入はがた減り。銀行に金を借りる相談に行ったが相手にしてもらえない。
 手立てがないオスマンは頭を抱えている。おまけに娘のサミラは母親が家にいないので情緒不安定。

2-0_20170708215635248.jpg こんなオスマン一家の困った様子を見ていた居候のエディに、アイデアが浮かんだ。
 最近、他界したチャップリンの遺体を一時、盗んで、身代金を頂こう!
 晩年、レマン湖のほとりの別荘に住んでいたチャップリンは、近くの墓地に埋葬されていたのだ。

 エディの突飛な言動に慣れているオスマンだったが、これには呆れた。呆れたが魅力的でもあった。なにしろオスマンに打つ手がなかった。
 ついにある夜、二人は闇に紛れて、墓荒らしを決行し、人目につかない別の場所に棺を埋めた。
 次に、チャップリン家に対して、電話で犯行声明と身代金要求。電話はエディが担当、オスマンは英語が話せない。
 しかしエディの電話は、思うように話が進まず相手に怒鳴りだしたり、オスマンに相談なく身代金を半額にしたりと、横にいるオスマンはハラハラし通し。
 (シーンは喜劇とまでは行きませんが、ともに貧しい男の凸凹コンビの様相。)

 さてさて話は、このあと、どうなるのでしょう。でも映画は、一応、ハッピーエンドを迎えます。
 脚本は、スイスで1977年に実際にあった事件を基にしているようです。
 チャールズ・チャップリンは、1977年12月25日に死去、映画の日本語タイトル名は12月25日クリスマスの日にかけているのでしょうか。
 ちなみにですが、スイスでは、全住民の24.6%の外国人を抱えているらしい。(2015年現在)


オリジナルタイトル:La Rançon de la Gloire|
英語タイトル:THE PRICE OF FAME|
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ|フランス|2014年|115分|
脚本:エティエンヌ・コメ 、 グザヴィエ・ボーヴォワ|撮影監督:カロリーヌ・シャンプティエ|
出演:エディ(ブノワ・ポールヴールド)|オスマン(ロシュディ・ゼム)|サーカスの女・ローサ(キアラ・マストロヤンニ)|チャップリンの秘書・ジョン・クルーカー(ピーター・コヨーテ)|オスマンの娘・サミラ(セリ・グマシュ)|オスマンの妻・ヌールNoor(ナディーン・ラバキー)|チャップリンの娘(ドロレス・チャップリン)|

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一夜一話の “今日はスタンダード・ナンバーの名曲だよ“  小野リサ

1_20170706120911f0e.jpg

 
 今日の一枚は、小野リサのアルバム「DREAM」。ご機嫌な極上アルバムだよ。

 小野リサといえばボサノヴァだけど、このアルバムは趣きが違う。
 「ムーンライト・セレナーデ」、「二人でお茶を」、「センチメンタル・ジャーニー」、「チャタヌガ・チュー・チュー」など、アメリカ1925~1944年の珠玉のスタンダードナンバーが並んでいる。

 小野リサのハスキーでロマンティックなささやき系のボーカルに、現代的で緻密な名曲アレンジに加えた演奏、スピード感ある元気な演奏が、とてもマッチしている。それと、何と言っても曲がいい!
 ちなみにスタンダードの中に一曲、小野リサ作曲の「天使の瞳」があるが名曲に負けてない。

 プロデュースとアレンジとボーカルとギターとピアノを担当した59歳のオスカー・カストロ・ネビス(1940-2013)という人は、ボサノヴァ黎明期からの著名なブラジルのミュージシャン、アレンジャー、作曲家。
 オスカーのかすれた歌声が、小野リサの声と、これもマッチしている。

 小野リサのソロアルバムというより、ふたりのアルバムと言っていい。いや、わたしゃ、小野リサをフィーチャーした、オスカー・カストロ・ネビスのアルバムとみる。
 演奏は、ドラム、ベース、ピアノ、ぐっと来るコーラス、管楽器、各種打楽器。どのミュージシャンも皆、うまい!皆、楽しんでる。

 たまに、こんなアメリカンな名曲を聴きたくなるが、グレンミラーオーケストラや往年の歌手とかのレコードじゃ、単なるなつかしのサウンドぢゃ。
 名曲を今によみがえらせて、いい曲だなと聴けるこのアルバムは素晴らしい。下記リストの作曲家たちに感謝したい。
 元気出したい時、ボリューム上げて聴いてほしい。


「DREAM」(1999年)

1 明るい表通りで - On the sunny side of the street  (1930 Jimmy McHugh - Dorothy Fields)
2 ムーンライト・セレナーデ - Moonlight serenade  (1939 Glenn Miller - Mitchell Parish)
3 アンディサイデッド - Undecided  (1938 Charlie Shavers - Sid Robin)
4 二人でお茶を - Tea for two  (1925 Irving Caesar - Vincent Youmans)
5 ナイト・アンド・デイ - Night and day  (1932 Cole Porter)
6 時の過ぎゆくまま - As time goes by  (1931 Herman Hupfeld)
7 サヴォイでストンプ - Stompin' at the savoy  (1934 Edgar Sampson - Chick Webb - Andy Razaf - Benny Goodman)
8 ボーイ・ネクスト・ドア - The boy next door  (1944 Ralph Blane - Hugh Martin)
9 イン・ザ・ムード - In the mood  (1939 Joe Garland)
10 ドリーム - Dream  (1944 Johnny Mercer)
11 天使の瞳 - Angel's eyes  (小野リサ作曲 Monday Michiru - Lisa Ono)
12 センチメンタル・ジャーニー - Sentimental journey  (1944 Bud Green - Les Brown - Bem Homer)
13 チャタヌガ・チュー・チュー - Chattanooga choo-choo  (1941 Harry Warren - Mack Gordon)

映画 「フローズン・リバー」  監督:コートニー・ハント

上


 お話は、アメリカ東北部、カナダとの国境近く。
 ニューヨーク州の北辺を流れるセントローレンス川、この川を国境線にして向こうはカナダだ。

 生活に窮する白人中年女性と、アメリカ先住民族の若い女性との、母親同士の思わぬ出会いと人種の壁と、凍った川を車で渡る密入国者輸送の共犯と、友情を描く。

1-0_20170703141232ab2.jpg この国境付近でトレーラーハウス※(下記)に住み、二人の息子を抱える白人女性レイには、もう小銭しかない。レンタルで借りてるテレビ(受像機)の支払いも滞っている。下の子はまだ4歳位、ディズニーのアニメが楽しみなのに。
 レイは1ドルショップで働くが非正規雇用、給料日はまだ先。
 ある日、コツコツ貯えた金を持って、夫は姿を消した。その金は、一家四人が暖かく楽しく住める新しいトレーラーハウスを買うための金だった。

 夫はギャンブルに溺れていた。それを激しく責めるレイだったらしい。そんな両親をこれまで見て来た15歳の長男は父親を擁護する。
 レイは夫を探しに、いや、持って逃げた金を取り返すべく、夫がよく行くモホーク・ビンゴ・パレスへ車で出かけた。
 そこはインディアン・カジノのビンゴ会場、北アメリカ先住民族のモホーク族の保留地のなかにある。

 夫の姿はなかった。車は駐車場にあった。夫はここからバスで行方をくらましたようだ。
 モホーク族の女ライラが会場から飛び出してきて、夫が乗って来た車で走り去る。何! あとを追うレイ。
 たどりついたところは、保留地の中のライラの家、レイのハウスより小さくて、キャンピング用のトレーラーの様。一人住まいだ。
 ライラはレイに言う、「この車を売らない?」 (トランクルームが大きいこの車は、人を入れて運ぶのに役に立つのだ。)

 ライラはこんな車が欲しかった。車があれば、兄の商売を手伝って金が入る。その金を貧しい義母に渡せる。
 出産直後に赤ちゃんを義母に奪われたままのライラは、赤ちゃんのために金を渡したい。(ライラの夫はすでに世を去っていた)

 ライラの兄たちの商売は、カナダからアメリカへの密入国斡旋だった。
 冬はセントローレンス川が凍り、車で川を渡れる。(フローズン・リバー)
 そして、川の両岸つまりカナダ側もモホーク族の保留地。保留地の中にはアメリカ・カナダの国境はない。このことを逆手に取った密入国。
 車のトランクルームに密入国者を入れて密かに川を渡るのだ。部族の闇収入源なのか。

 結局、ライラの話を聞いてレイも密入国者輸送を手伝うことになる。稼いだ金は折半だ。
 レイはレイでまとまった金が近々に欲しかった。あと数日以内にトレーラーハウスの残金を納めないと、頭金が消えてしまう。

 さて、レイの無謀な冒険、ライラの土地勘、そして意外にも沈着冷静なレイの判断。
 カナダ側から川を渡りアメリカ側の保留地を出ると、州警察の目が光るが、白人のレイは怪しまれないし、警官とは見知った間柄でもあった。

 3回目の密入国ほう助のある夜、レイとライラは窮地に追い込まれる。
 州警察と彼女らの間に、モホーク族の部族議会が入って事を丸く収めることになる。要するにトカゲのシッポ切り。
 会議の結論はレイかライラのどちらかが自首する。
 はじめ、ライラが自首すると言った。なぜならレイには帰りを待つ二人の息子がいる。レイは一瞬躊躇しながらも、家へ帰ろうとしたが、引き返した。
 そしてレイはライラに言った。あなたは赤ちゃんを義母から奪い返して、そして私の家に住み、息子二人の面倒をみて。刑期は4か月らしいから。


※トレーラーハウスとは
  キャンピング・トレーラーの形態だが、特定の場所に定住するを目的とした移動可能住宅。タイヤがついたプレハブ住宅。トラックで牽引する。
※インディアン・カジノとは
  保留地内でインディアン部族が経営する各種カジノ。アメリカ連邦政府との連邦条約規定に基づくインディアン部族の権利となっている。
 参考サイト https://ja.wikipedia.org/wiki/イロコイ連邦のインディアン・カジノの項。保留地についても解説あり。
※モホーク族とは
  https://ja.wikipedia.org/wiki/モホーク族
 
下
オリジナルタイトル:Frozen River|
監督・脚本:コートニー・ハント|アメリカ|2008年|97分|
撮影監督:リード・モラノ|
出演:レイ(メリッサ・レオ)|ライラ(ミスティ・アップハム)|レイの長男ティー・ジェイ(チャーリー・マクダーモット)|ジャック・ブルーノ(マーク・ブーン・Jr)|フィナーティ警官(マイケル・オキーフ)|ジミー(ディラン・カルソナ)|リッキー(ジェイムズ・ライリー)|ビリー・スリー・リヴァーズ(マイケル・スカイ)|チェン・リー (ナンシー・ウー)|ガイ・ベルサイユ(ジェイ・クレイツ)|






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映画 「飢餓海峡」 監督:内田吐夢

上
函館警察の元刑事弓坂(右)は、当時追っていた男・犬飼に10年の時を経て、
このとき初めて会った。(東舞鶴警察留置場にて)


 「飢餓海峡」の飢餓とは、直截的には、主人公ふたりの貧しい出自を、海峡とは津軽海峡を指すが、題名の意味合いは、あまりに貧しい生まれであったが故に、どちらの人生も、(対岸の)幸せに至れなかったことの不幸を表わしている。(原作:水上勉)

 物語は、北海道を放浪していた犬飼(三國連太郎)という極貧の生まれの男と、青森県下北半島にある恐山のふもとに住む、やはり貧しい家の娘・八重(左幸子)、このふたりそれぞれの顛末を描く大作。(182分)

1-0_2017062915305344e.png 時は昭和22年、北海道にいた犬飼が、網走刑務所を出所した二人組に出会ったことから、話は始まる。
 当時、放浪中の身であった犬飼は、彼らの仲間になった訳ではなかったが、旅の道連れとなっていた。
 列車に乗った3人。その車内で犬飼は、この二人組が北海道岩内町の質屋を狙って強盗を働き大金を手にした事、その時、質屋の家族を殺し家に火を放った事を、それとなく薄々知る。逃亡する二人組と、この時点でも旅の道連れの犬飼であった。

 列車を降りた3人は海岸へと向かう。警察の目を避けて、津軽海峡を舟で渡ろうと言うのである。
 時はちょうど、青函連絡船が台風で転覆事故を起こしたその直後であった。
 遭難者救助のため地元消防団ら大勢が、次々に小舟で沖合に出て行こうとする、その騒動の最中であった。
 犬飼は二人組に言われるままに消防団員を装い、小舟一艘を借りた。

 日が暮れた荒海の沖合での出来事だった。
 二人組が仲間割れの喧嘩を始め、一人が海に落ちる。ついで片割れが犬飼に襲い掛かった。犬飼は身を守った結果その男は海に落ちた。深夜の出来事であった。(これは10年後、犬飼が東舞鶴警察の刑事の尋問に答えた発言であり虚偽かもしれないが、犬飼の真の告白かもしれない)

 結局早朝、犬飼一人が下北半島の海岸に、辛うじてたどり着いた。そうして犬飼はここで初めて、二人組が持っていた大金を確認した。大きな幸せを感じた瞬間であった。この金でこれからの人生が開ける!
 同時に、貧しく過ぎた自分の過去が、心の中で走馬灯のように駆け巡った。何をやってもうまく行かない人生だった。
 そして次に彼はおびえ始めた。自分が強盗殺人放火の犯人と疑われる、二人組を殺したと疑われる。当然であった。彼は乗って来た小舟を壊し、燃やしてしまう。

 食うものも無く、行く宛も無く、山林をさ迷った犬飼は、トロッコのような森林鉄道列車を見て飛び乗った。
 彼が八重に会ったのはこの時だった。
 ひどく汚れた身なりだがいい男の犬飼を見て、八重は食べていたおにぎりを二つ、犬飼にやった。
 そのあと、八重が仲居兼娼婦をする小さな旅館で、八重は犬飼に風呂をすすめ爪を切ってやったりの世話を丁寧にしてやった。
 八重は困った人を前にしての親切心だったのかもしれないが、見知らぬこの男に心が揺れたのは確かであった。
 一方、犬飼は、たぶん、生まれて初めての、真っ直ぐな親切に、やはり心が揺れていたのかもしれない。ふたりは交わった。

 犬飼は、「なんも悪い事した銭や無いから、好きにつこうたらええ」と手に入れた金から、八重にとっては大金の額を、そこにあった新聞紙に包んで、お礼として八重に渡した。そして犬飼は急ぎ旅館を後にした。(このふたりが再会するのは10年後であった)

 八重の家は貧しい上に借金を抱えていた。
 母親は死に、年老いた父親(加藤嘉)は林業で働くが稼ぎは少ない。仕方なく旅館で働く八重であったが、この金で貧しい暮らしから抜け出せる。借金を返済できる、父親の生活の足しにもできるから、自分は東京へ行きたい。東京に出て心機一転、堅気の働きがしたい。そう考えた八重は迷わず、同郷の知り合いを頼りに上京する。
 始め、間口一間の呑み屋に雇われ、次に娼婦となり、やがて芸者となって10年の時が過ぎた。生活は安定し、貯金を貯め、八重はそれなりに満足であった。

 一方、この10年の間に、犬飼多吉は樽見京一郎と名に変え、 京都府北部、日本海に面する舞鶴で会社経営をする実業家になっていた。
 大きな屋敷に住み、大陸引上げの女と結婚し、地元に、また故郷の小さな村に多額の寄付をする篤志家としても名をはせていた。

 ある日、八重はふと見た新聞記事の顔写真に、釘付けになった。犬飼さんだ!女の直感であった。記事には樽見京一郎の多額の寄付のことを礼賛していた。
 八重は居ても立っても居られない、住所が掲載されているその記事の切り抜きを持って、その日に舞鶴へ向かった。八重はただ犬飼に会って一言、10年前の礼を言いたかったのである。

2-0_2017062915392876c.jpg しかし八重を前にして、恰幅のいい樽見京一郎は、何の事やらと知らぬ存ぜぬを押し通そうとする。だが、間近に見る男は犬塚である。八重は懸命に話しかけた。ついに犬塚は白状する、そして犬塚の心がまたしても大きく揺れ、八重の首を絞めてしまう。
 そのあと犬塚は八重に茶を出した書生も殺し、深夜、二人の死体を心中に見せかけ海に投げた。

 八重には、この10年間ずっと後生大事にしていた物があった。それは、親切のお礼だと犬塚が言って、札束を新聞紙に包んだ、その古新聞紙と、犬塚の爪を切った時のその爪であった。(この古新聞の一面記事は青函連絡船転覆事故)
 八重は、犬塚が津軽海峡を渡って来た事も、二人組の大金を得ていた事も何も知らなかった。
 八重が知っているのは、弓坂という刑事が八重を訪ねて来て、「見知らぬ大男を見なかったか」と聞かれ、嘘をついた事だけだった。

 東舞鶴警察の刑事たち(高倉健ほか)が動き出す。
 調べが進むうちに樽見の犯行という線が濃厚になる。八重の遺体から例の多額寄付の新聞記事切り抜きが発見されたのだ。さらに見つかったのは、彼女が持っていた青函連絡船転覆事故を報じる古新聞。
 刑事たちは、樽見と八重の関係を探りはじめる。

 八重の父親が娘の遺体を引き取りに来た時、東舞鶴警察は、10年前に函館警察の刑事が八重を捜していたことを知る。
 そして、函館警察の元刑事弓坂(伴淳三郎)が呼び出される。 
 10年前、弓坂は北海道岩内町の質屋強盗殺人放火事件を追っていた。加えて青函連絡船転覆事故による遭難水死の遺体のうち、身元不明の2体が、網走刑務所を出所した二人組である事までは突きとめていた。そして、この二人の死体の額には、ともに妙な打撲の傷があった。小舟のオールによるものか。
 さらには当時、小舟を借りに来た男がその舟を燃やしたであろう灰も確認し、男が下北半島にたどり着いた事は明らかである事も突きとめていた。
 加えて東舞鶴警察は、10年目の宿帳から樽見の筆跡を確認した。
 ついに、樽見京一郎が東舞鶴警察に呼び出された。さて、このあと結末はいかに!!


監督:内田吐夢|1964年|182分|
原作:水上勉|脚色:鈴木尚之|撮影:仲沢半次郎|
出演:犬飼多吉/樽見京一郎(三國連太郎)|杉戸八重(左幸子)|樽見の妻・敏子(風見章子)|八重の父・長左衛門(加藤嘉)|函館警察の刑事・弓坂吉太郎(伴淳三郎)|弓坂の妻・織江(進藤幸)|網走刑務所を出所した二人組の一人・沼田八郎(最上逸馬)|網走刑務所を出所した二人組の一人・木島忠吉(安藤三男)|戸波刑事(岡野耕作)|佐藤刑事(菅原正)|岩内署長(志摩栄)|朝日館主人(曽根秀介)|朝日館女中(牧野内とみ子)|札幌の警部補(北山達也)|和尚(山本麟一)|漁師辰次(大久保正信)|下北の漁師(矢野昭)|下北の巡査(西村淳二)|巫子(遠藤慎子)|大湊の巡査(田村錦人)|富貴屋のおかみ(荒木玉枝)|煙草屋のおかみ(河村久子)|記者A(室田日出男)|池袋の警官(久保一)|警視庁の係官(北峰有二)|唐木刑事(鈴木昭夫)|堀口刑事(関山耕司)|嘱託医(斎藤三男)|味村時雄(高倉健)|ほか
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2年前・4年前・6年前の6月、一夜一話。(2015年6月・2013年6月・2011年6月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-06-29 Thu 06:00:00
  • 映画
2年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  2年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年6月 Archive

1祭りの準備     2隣の八重ちゃん     3夫婦フーフー日記
祭りの準備」        「隣の八重ちゃん」      「夫婦フーフー日記」 お薦め!
 監督:黒木和雄        監督:島津保次郎       監督:前田弘二
 江藤潤、竹下景子                      永作博美、佐々木蔵之介
4浮草     5喜劇 駅前温泉     6沖縄 うりずんの雨
浮草」           「喜劇 駅前温泉」      「沖縄 うりずんの雨
 監督:小津安二郎       監督:久松静児        監督:ジャン・ユンカーマン
 京マチ子、若尾文子      森繁久彌、伴淳三郎      ドキュメンタリー映画
7きみはいい子
きみはいい子
 監督:呉美保
 高良健吾、尾野真千子
11みなさん、さようなら     12バーバー     13台湾の暇人
みなさん、さようなら」   「バーバー」         「台湾の暇人
 監督:ドゥニ・アルカン    監督:ジョエル・コーエン   監督:アーサー・チュー
 カナダ            アメリカ           台湾
14図     15天使     16モスクワ・天使のいない夜
中央アジア・西アジア     「天使」・「海辺にて」    「モスクワ・天使のいない夜
・南アジアの映画        監督:パトリック・ボカノウスキー  監督:セルゲイ・ボドロフ
                フランス              ロシア

4年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  4年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年6月 Archive

1大地の子守歌     2愛怨峡     3下町
大地の子守歌」       「愛怨峡」          「下町(ダウンタウン)」
 監督:増村保造        監督:溝口健二        監督:千葉泰樹
 原田美枝子                         山田五十鈴、三船敏郎
4ハッピーフライト     5古都
ハッピーフライト」     「古都」        
 監督:矢口史靖        監督:中村登       
 綾瀬はるか           岩下志麻     
11理髪店の娘     12闇からの声なき声     13出発
理髪店の娘いい映画    「闇からの声なき声」     「出発
 監督:シャーロット・リム   製作:ナタリー・ブールトン他 監督:イエジー・スコリモフスキ
 マレーシア          イギリス           ベルギー
14マイ・ブルーベリー・ナイツ     15mare-sia.jpg     16ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
マイ・ブルーベリー・ナイツ」 マレーシア映画祭のまとめ  「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
 監督:ウォン・カーウァイ   「マレーシア映画の現在」   監督:トーマス・ヤーン
 香港                            ドイツ
17メイク・イット・ファンキー     無題123
メイク・イット・ファンキー」 映画ピックアップ  ~これまでに記事にした映画
音楽ドキュメンタリー     「人生なんて、そうそう うまく行かないワケよ。
 アメリカ           邦画/洋画

6年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  6年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年6月 Archive

1殺人狂時代   2死の十字路   3帰って来た若旦那
「殺人狂時代」        「死の十字路」        「帰って来た若旦那」   
 監督:岡本喜八        監督:井上梅次        監督:青柳信雄
 仲代達矢、団令子       三國連太郎、新珠三千代    司葉子、鶴田浩二
4街の灯   5愛妻記   6ロックンロールミシン
「街の灯」          「愛妻記」           「ロックンロールミシン」
 監督:森崎東         監督:久松静児         監督:行定勲
 栗田ひろみ、堺正章      司葉子、フランキー堺      池内博之、りょう
11レネットとミラベル四つの冒険   12太陽に恋して   13日陽はしづかに発酵し・・・ 
「レネットとミラベル四つの冒険」 「太陽に恋して」      「日陽はしづかに発酵し・・・」
 監督:エリック・ロメール     監督:ファティ・アキン   監督:アレクサンドル・ソクーロフ
 フランス             ドイツ           ソ連
14踊れトスカーナ!   15ミルクのお値段   16テルマ&ルイーズ
「踊れトスカーナ!」     「ミルクのお値段」       「テルマ&ルイーズ」
 監督:レオナルド・ピエラッチョーニ 監督:ハリー・シンクレア 監督:リドリー・スコット
 イタリア           ニュージーランド        アメリカ
17Celine et Julie vont en bateau   18 100,000年後の安全   19風吹く良き日
「セリーヌとジュリーは舟でゆく」「100,000年後の安全」     「風吹く良き日」
 監督:ジャック・リヴェット   監督:マイケル・マドセン   監督:イ・チャンホ
 フランス            ドキュメンタリー       韓国
 
  


映画 「ウィスキー」 ウルグアイ映画  監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール

上
事業主のハコボと従業員のマルタ、ともに独身だ。


01- 人生を十分味わって来た年配者たち3人の機微を描く映画です。
 
 南米ウルグアイの街中にある、朴訥な事業主と無口な女性従業員3人の、靴下製造の小さな町工場。
 古い製造機械を相手に黙々と、決まりきった単純労働をこなす日々。
 明るい期待は無いが、月々決まった生活の糧は得る。
 出社退社時の判で押したような毎日の挨拶、朝夕の表のシャッターの開閉、機械の騒音と蛍光灯の光、就業中最低限の会話、沈み込む感受性。

 その一方で映画は、真面目な市井の人が時に見せる、作られていない、じんわりとした可笑しさを提供する。
 しかし、これを喜劇と言い切るには、いささか重苦しい。

 心を閉じてしまった年配者たちの、思ってもみなかった恩返し。それは彼らの誠実さが擦り切れていなかった証。
 映画は喜劇を求めず、無口な人の実直さをすなおに描いている。

2-0 靴下工場の事業主ハコボと、長年従業員頭を務める独身女性マルタの二人は、わずかな会話で意志が通じ合う。
 そんなある日、ハコボの母親の墓石建立式に出席するために、ブラジルに住むハコボの弟エルマンがやって来た。(兄弟はユダヤ人)

 この兄弟は仲が悪く長年会っていない。面と向かっても、話す話題もない。
 それは独身のハコボが、介護も含め母親の世話を最後まで面倒みたからだった。実母でありながら弟エルマンはまったく兄任せであった。

 そのエルマンは昔、父親が始めた靴下製造の、稼業の古臭さを嫌がり、家を飛び出してブラジルで新式の靴下工場を始め、商売はうまく成功した。兄弟の造る靴下の品質やデザインの違いは鮮明だ。兄より弟に才覚があったと言える。
 ちなみに、エルマンの家族は幸せそうで、娘のひとりは近く医者になると言う。

 弟の、兄と母に対する不義理。兄の、弟に対する漠然とした嫉妬。
 そんな中で、ハコボは弟に対するメンツか、自分は結婚したと嘘を伝えていた。
 映画はここから始まる。
 ハコボはマルタに、弟が滞在している間だけ(仮の)妻になってくれと頼みこんだ。意外にもマルタはすなおに受け入れた。長年雇ってもらえている日ごろの恩を返すつもりだったのか。
 さっそくマルタはハコボの家に行き、シングルベッドをくっ付けてダブルベッドに見立てたり室内を小ぎれいにして、なんとか夫婦の家に見えるようにした。しかしハコボはこれを嫌がり、ベッドを離し、自身はソファで寝た。

 また、エルマンは不機嫌な兄と話ができないために、マルタに語りかけることが多くなる。マルタはマルタで、日ごろ、男性と話す機会がないためか、いつになく笑顔と饒舌さを世慣れたエルマンに見せる。そしてそんな二人を見て、ハコボはうっすら焼きもちを焼く。

 この三人が一泊旅行をする。
 ホテルのクラブで三人がショウを見ている時、マルタは出し抜けに、紙に包んだ札束をテーブルに乗せてハコボに差し出す。
 不義理を金で埋め合わせしようとするのかという気持ちでそれを一旦押し返したハコボだが、結局紙包みを懐に仕舞い込んだ。
 次に映画はふたつを語る。
 ホテルの夜、マルタは約束の時間に密かにエルマンの部屋へ行きベッドを共にした。
 同じころ、ハコボはホテルのカジノへ行き、紙包みの全額を両替しルーレットに賭けた。

 翌朝、ホテルのチェックアウト前に、ハコボはマルタに、綺麗な包装紙に包んだ「モノ」をプレゼントした。
 そして次の日、これまで一度も遅刻すらしなかったマルタは、ついに工場に現れなかった。

下


オリジナルタイトル:Whisky|
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール|ウルグアイ・アルゼンチン・ドイツ・スペイン| 2004年|94分|
脚本フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール、ゴンサロ・デルガド・ガリアーナ|
撮影バルバラ・アルバレス|
出演:ハコボ・コレル(アンドレス・パソス)|マルタ・アクーニャ(ミレージャ・パスクアル)|エルマン・コレル(ホルヘ・ボラーニ)|マーティン(ダニエル・エンドレール)|グラシェラ(アナ・カッツ)|カルロス(アルフォンソ・トール)|

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映画 「ブーベの恋人」  監督:ルイジ・コメンチーニ

上

 マーラ役の女優クラウディア・カルディナーレ当時25歳を愛でる映画です。

 時は第二次世界大戦末期、舞台はイタリア北部。
 当時、イタリア北部はナチスドイツの占領下にあって、ナチスドイツは、ムッソリーニが率いたファシズム体制の残党を傀儡にし、共和国を建国していた。
 お話は、これに抵抗するパルチザン(レジスタンス)の父と兄を持つ娘マーラと、そしてその二人を知る、やはりパルチザンの男ブーベ(ジョージ・チャキリス)との恋物語。

1-0_201706231114141a2.png 出会いは、1944年のある日、ブーベがマーラの父親を訪ねて来たことに始まる。
 ふたりは互いに、会ったその時から意識し合うことになる。
 しかしブーベは、イタリア人ファシストである憲兵とその息子を殺害し逃走中の身であった。
 片やマーラは普通の田舎の娘であった。父親や兄が彼女にパルチザンについて語ることもなく、彼女にはブーベの活動は遠い世界であった。

 その後、時を置いてブーベはマーラを訪ね、幾度かの短い逢瀬があり、そしていつしか、二人は行動を共にすることになる。身を隠しての日々であった。
 しかし、ブーベに危機が迫り、パルチザン幹部の計らいで彼は単身、国外に逃れることとなった。
 
 1945年、イタリア北部がパルチザン勢力によって奪還される。
 そののち、しばらくしてブーベが帰国。時代はもう、レジスタンス闘争の時を終え、イタリア全土は共和制の時代になっていた。
 ブーベは今や、ファシスト体制下で反体制分子として追われる身ではなく、殺人犯として裁判にかけられることになった。

 映画ラスト近く。マーラは列車に乗って、ブーベのいる刑務所へ面会に向かおうとしている。彼が収監されて7年の月日が経つ。
 出所までは、この先さらに7年。マーラはひたすらブーベの出所を待っている。

 時代背景。
 ムッソリーニ率いるファシズム政権崩壊の1943年以降、イタリア北部は、ナチスドイツとファシズム体制時の残党(傀儡)の支配下となり、一方、連合軍が侵攻したイタリア南部は、連合軍と国王政府との支配地域となって、イタリアは大きく二分されてしまう。
 この時から、北部各地でレジスタンス運動が起こり、ドイツ軍およびイタリア人ファシストを相手に、パルチザン勢力による国土解放に向けた戦いの時代に突入することになった。
 そして1945年4月にようやく北部地域の解放を果たし、イタリアは同年12月に共和制の時代になった。

 ブーベの苦難。
 北部が解放されてのち、ファシスト体制下で罪人となった人々に恩赦が出た。しかし、ブーベの帰国はそのあとであったために恩赦を受けることは出来なかった。ブーベはパルチザン幹部の命令に従ったために恩赦のチャンスを逃してしまった。

 マーラのふたつの愛。
 ブーベが国外逃亡した後、彼女はステファーノとの恋に落ちる。しかし、彼女は彼に「でも私はブーベの恋人よ、わかって。」と言いマーラを待つ身であることを告げた。そして、裁判時にマーラはブーベへの愛を、改めて強く感じたのであった。
 ブーベはマーラに言った。今までもこれからもお前が支えだ。もしお前がいなかったなら、俺は自殺していたかもしれない、と。


オリジナルタイトル;La Ragazza di Bube|
監督:ルイジ・コメンチーニ|イタリア・フランス|1963年|112分|
原作:カルロ・カッソーラ|脚色:ルイジ・コメンチーニ 、 マルチェロ・フォンダート|
撮影:ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ|
出演:マーラ(クラウディア・カルディナーレ)|ブーベ(ジョージ・チャキリス)|マーラの彼氏ステファーノ(マルク・ミシェル)|リリアーナ(ダニー・パリス)|イネス(モニク・ヴィータ)|マーラの母(カルラ・カーロ)|マーラの父(エミリオ・エスポジート)|

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映画 「夜叉」  監督:降旗康男

上


 田中裕子を愛でる映画です。

1-0_2017061914235620d.png 任侠映画は今も好まないが、高倉健主演の「夜叉」を、前世紀に観たような気がしたので、今回あらためて観てみたら・・。
 高倉健のおはこ、無口で無表情な演技よりも、田中裕子の無言と微かに移ろう田中の表情の方が、ずっと雄弁だった。

2-0_20170619142734972.png 修治(高倉健)は、人斬り夜叉と言われた大阪ミナミのやくざであったが、覚醒剤で金を稼ぐな、という彼の主張が、組の中で通らず彼は干された。加えて、かたぎの女である冬子(いしだあゆみ)との結婚を機に、修治は足を洗い冬子の実家、福井県敦賀で漁師となった。

 修治の妻、冬子はこの漁師町で生まれた。15年前、冬子は大阪に働きに出て、やくざ者とは知らず修治と出会ったのであった。
 螢子(田中裕子)はミナミから流れて来て、この漁師町で「蛍」という名の呑み屋をはじめた女。螢子は子連れであり、彼氏はミナミのヤクザ、失島(北野武)であった。

 螢子と冬子の、それぞれの修治への愛。それは、ミナミのやくざな世界の中の愛、敦賀湾の漁師町の愛。

 脚本は練りが不足している。説明のためのモノクロ回想シーンは、どれも安っぽくて頂けない。
 ただし、秀逸なシーンが三つ。本作の全体を支える要です。
 ・螢子の店で、修治と冬子が客として酒を飲むシーン。修治をめぐって、螢子と冬子との間でスパークする激しく静かな火花。
 ・ある夜、修治宅を訪れた螢子が、二人だけの話がしたくて彼を海際に呼び出すシーン。螢子が修治に、ぼそっと言う。「冬子さん、嫌いや」
 ・夫に献身的で日ごろ大人しい冬子が、修治と螢子の関係を知ったその夜、冬子は修治に向かって、苦しい胸のうちから絞り出すように言う凄んだセリフ、「私はあなたの妻です!」 この一瞬、女優いしだあゆみが光る。
  かつて人斬り夜叉と言われた男も、この一言には敵わなかったというお話でした。

 
監督:降旗康男|1985年|128分|
脚本:中村努|撮影:木村大作|
出演:修治(高倉健)|螢子(田中裕子)|冬子(いしだあゆみ)|冬子の母親うめ(乙羽信子)|失島(北野武)|啓太(田中邦衛)|啓太の妻とら(あき竹城)|修治が属した組の組長の妻塙松子(奈良岡朋子)|修治の舎弟トシオ(小林稔侍)|親爺(大滝秀治)|修治が若い頃の女夏子(檀ふみ)|組員(寺田農)|ミナミの組長(下條正巳)|

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映画 「フェリーニのアマルコルド」  監督:フェデリコ・フェリーニ

上
少年チッタの家族。

 フェリーニ監督(1920-1993)が少年時代のある年、特別に印象深く彼の心に残る、その1年を題材にしたといわれる喜劇&ファンタジー映画です。

2-0_20170616122321fff.jpg 時は1935年の春。
 映画のバックグラウンドは、ファシスト党のムッソリーニが首相となり、一党独裁政治をはじめて13年経った頃。
 そしてファシスト党指揮下の秘密警察が設立されてから5年経った春。圧政の時代。
 少年チッタは15歳。異性に目覚める頃、大人として世間に出て行く準備の時。

1-0_20170616121821de5.jpg
 映画の舞台は、イタリア北部の小都市。
 1930年代とはいえ、まだまだ19世紀のおおらかさと、男尊女卑と、泥臭い人の営みが残る街。

 お話は、分かりやすく起承転結を語るものではなく、映画は映像を体感させようとする。
 たくさんのアイデアを詰め込んだ押しの強いシーンの連射と、突拍子な切り返し、おふざけも紛れ込む。
 監督の創る喜びが伝わってくる。


 「フェリーニのアマルコルド」の路線を、よりストーリー性を重んじ楽しくドタバタにすると、エミール・クストリッツァ監督の、例えば奇人変人続出の「黒猫・白猫」(1998)に行き当る。

 そのドタバタを抑えて、悲しく屈折した喜劇性とアイロニーに重心を置くとすると、ロイ・アンダーソン監督の例えば「愛おしき隣人」(2007)が思い浮かぶ。
 また、多数の人物を登場させるだけで、その場面に可笑しみが加わる技法もフェリーニ由来のように思う。

 「永遠と一日」(1998)のテオ・アンゲロプロス監督も映像で語って行く監督で、フェリーニの映像力のうちの、大人数の登場と大舞台の演劇性、そして人生における祝祭の喜びを取り込んでいるように思える。

 これらの監督は、本作の様々なシーンを観ていて、「あッ、あの監督は、このシーンに影響されたんじゃないか」と思ったので書いてみた。 

 文中の下線部をクリックして当該記事をお読みください。


オリジナルタイトル:Federico Fellini Amarcord|
監督:フェデリコ・フェリーニ|イタリア、フランス|1974年|124分|
脚本:フェデリコ・フェリーニ 、 トニーノ・グエッラ|
撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ|
出演:チッタ(ブルーノ・ザニン)|チッタの父(アルマンド・ブランチャ)|チッタの母(プペラ・マッジオ)|グラディスカ(マガリ・ノエル)|ほか

◆これまでに記事にしたフェデリコ・フェリーニ監督の映画
 
 「8 1/2」(1963年)  「甘い生活」(1960年)


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1年前・3年前・5年前の6月、一夜一話。(2016年6月・2014年6月・2012年6月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-06-16 Fri 06:00:00
  • 映画
1年前の6月に掲載した映画です。
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  1年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年6月 Archive

1煉瓦女工   2喜劇 女は度胸   3贅沢な骨
「煉瓦女工」         「喜劇 女は度胸」        「贅沢な骨」
監督:千葉泰樹         監督:森崎東          監督:行定勲
                倍賞美津子、沖山秀子、渥美清  麻生久美子、つぐみ  
4貸間あり   5亀は意外と速く泳ぐ   8あ
「貸間あり」         「亀は意外と速く泳ぐ」     <あ行> の邦画
監督:川島雄三         監督:三木聡         これまでに記事にした邦画から
フランキー堺、淡島千景     上野樹里  
10ボンボン   11のるかそるか   12ママと娼婦
「ボンボン」         「のるかそるか」        「ママと娼婦」
監督:カルロス・ソリン     監督:ジョー・ピトカ      監督:ジャン・ユスターシュ
アルゼンチン          アメリカ            フランス
13ハッピー・クリスマス   18無題
「ハッピー・クリスマス」   「映画の特集」
監督:ジョー・スワンバーグ   テーマに沿って、一夜一話の中から厳選しました。
アメリカ

3年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年6月 Archive

1こだまは呼んでいる     2孤独なツバメたち  デカセギの子どもに生まれて     3BU・SU
「こだまは呼んでいる」    「孤独なツバメたち      「BU・SU」
監督:本多猪四郎       デカセギの子どもに生まれて」  監督:市川準
池部良、雪村いづみ      ドキュメンタリー映画      富田靖子

4雨月物語     5地獄     6凶気の桜
「雨月物語」         「地獄」           「凶気の桜」
監督:溝口健二         監督:中川信夫        監督:薗田賢次
京マチ子、田中絹代

11罪の手ざわり     12闇のあとの光     13新装開店
「罪の手ざわり」       「闇のあとの光」       「新装開店」
監督:ジャ・ジャンクー     監督:カルロス・レイガダス  監督:キム・ソンホン
中国              メキシコ           韓国

14_20150611155158afd.jpg     15ハーダー・ゼイ・カム     16レイチェルの結婚
「時計じかけのオレンジ」   「ハーダー・ゼイ・カム」   「レイチェルの結婚」 お薦め!
監督:スタンリー・キューブリック  主演:ジミー・クリフ   監督:ジョナサン・デミ
アメリカ              ジャマイカ        アメリカ

5年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年6月 Archive


1ガス人間第一号     2東京物語     3ゴーヤーちゃんぷるー
ガス人間第一号」      「東京物語」         「ゴーヤーちゃんぷるー
監督:本多猪四郎        監督:小津安二郎       監督:松島哲也
八千草薫            原節子            多部未華子、武田航平

4祇園の姉妹     5今宵ひと夜を     6海ほおずき
祇園の姉妹」        「今宵ひと夜を」       「海ほおずき The Breath
監督:溝口健二         監督:千葉泰樹        監督:林海象
山田五十鈴           八千草薫           唐十郎、原田芳雄

11アーニー     12PARIS (パリ) 2     13時から7時までのクレオ
アニー・ホール」      「PARIS (パリ)」       「5時から7時までのクレオ」 
監督:ウディ・アレン      監督:セドリック・クラピッシュ  監督:アニエス・ヴァルダ
アメリカ            フランス            フランス

14中国娘     15ロードキル     16恋する惑星
中国娘」          「ロードキル」        「恋する惑星
監督:グオ・シャオルー     監督:ブルース・マクドナルド 監督:ウォン・カーウァイ
イギリス            カナダ            香港

17ボルベール     18レポマン
ボルベール<帰郷>」    「レポマン
監督:ペドロ・アルモドバル   監督:アレックス・コックス
スペイン            アメリカ

琵琶湖へ行ってきた。 近江八幡、安土

  • Posted by: やまなか
  • 2017-06-14 Wed 06:00:00
  • 一話
 京都へ行ったついでに、琵琶湖東岸の近江八幡へ行った。
 水郷めぐり、秀吉の甥・豊臣秀次の八幡山城跡、近江商人の城下町、そして織田信長の安土城跡。

安土城2
水郷めぐり
琵琶湖の内湖、西の湖を中心とした水郷
 京都駅0番線ホームからJR琵琶湖線で30分ほど、まもなく近江八幡駅に到着。
 さっそく、水郷めぐりの船着き場へ。
 船頭が櫓(ろ)を漕ぐ手こぎの舟。売り文句は「日本一おそい乗物 手こぎの舟 水郷めぐり」

 7人の客を乗せ、ゆらゆらと左右に揺られて舟は出た。
 水郷の中は、江戸時代にでもタイムスリップしたかのように、本当に静か。
 風が少し強い。舟は少々流される。
 しきりに鳴くヨシキリの声と、ヨシ(葦、芦、アシ)の葉擦れの音、それだけしか聞こえない。原始の日本の風景を楽しめる。
 あれが、織田信長がつくった安土城の跡(安土山)だという。意外に低い。

 一時間で船着き場に戻った。
 水郷は静かな内湖だ。エンジン船の水郷めぐりもあるが、スピードを楽しむなら琵琶湖か海の方がいいでしょう。

 近江八幡の水郷とは:https://ja.wikipedia.org/wiki/近江八幡の水郷


1-0_20170609165526380.jpg
八幡山城と城下町
秀吉の甥・豊臣秀次の八幡山城跡、近江商人の城下町
 船着き場から民家の間の路地をたどって、千年の歴史ある日牟禮八幡宮へ。
 それからロープウェイで一気に山頂へ。(標高283m) 

 城跡から見る琵琶湖と、対岸の比良山地の山並が雄大でとてもいい!スケールの大きな景色だ。
 琵琶湖は古代湖だ。それは、河川からの土砂で埋まらずに、およそ10万年以上存続している湖。古代湖は世界中で20ヶ所ほどでしか確認されてないらしい。

 下山し、次は城下町を歩く。城と城下町の防御であり運河と港でもあった八幡堀は、琵琶湖につながっている。
 この町は、信長の死後、安土城の城下から町人を移住させて始まった。
 そしてここは、近江商人の発祥の地でもある。町並み保存がなされていて、大きな町人屋敷が今もある。

 ちなみに八幡山は新幹線から見えます。※下記

 八幡山城とは:https://ja.wikipedia.org/wiki/八幡山城

 日牟禮八幡宮とは:https://ja.wikipedia.org/wiki/日牟禮八幡宮

安土山から比叡山(左上の奥)を見る。
01-.jpg
安土城跡
困ったもんだの安土城

 JR近江八幡駅の隣りが安土駅。
 駅から城跡までは徒歩30分。レンタサイクルもあるが歩きをすすめる。道は平坦。
 駅から線路沿いに進み、そして集落を抜けて行くと、急に一面田んぼ、広々とした田園風景が眼前にひろがる。
 その風景の中の農道を、前に見える安土山(標高199m)へ向かって歩くこと15分。

 ヒバリがあちこちで鳴く。サギが田に降りている。吹く風が気持ち良い。誰もいない。「ぴーひょろひょろー」とトンビも鳴く。
 突然、汽車の汽笛。JR琵琶湖線を蒸気機関車が電気機関車に牽引されて、広い田園風景をのんびり横切って行った。

 現世のあれやこれやをちょっと忘れかけた頃、安土山の登り口に着く。
 この城の工事は1576年に始まった。そんなことを思いながら大手道の石段を登る。登り始めてすぐ、右手に伝・前田利家邸跡そして今度は左に伝・秀吉邸跡、も少し登って伝・家康邸跡。

 先に注意が必要だが、ここは山にある遺跡であって、整備された史跡公園ではない。
 大手道の石段は、少し加工した程度の自然石を左右一列に並べ、段にしているだけ。段差は40センチはある。手すりは無い。大手道を過ぎて本丸目指す道は舗装されない山道だ。

 頂上の天主跡を見て、少し下ると摠見寺跡に出る。ここからの眺めが良い。
 手前に水郷、向こうに八幡山そしてその後ろに比叡山。比叡山の向こうは亰都だ。思えば、これを見たい旅だった。(右上の写真)

 摠見寺跡からの下り道は、すごい急な石段。
 ここで私は転倒し、足をひどく捻挫し足小指を骨折した。
 城跡入り口でもらったパンフレットに、こう書いてある。
 「注意事項の4:石段は急で危険な箇所であっても安全策を施すことができません。史跡内は各自、自己責任で御入山ください。」

 そして、もうひとつ。
 「注意事項の1:山中にトイレはございません。必ずご出発前にお済ませください。」

 城跡のあちこちを巡るコースは一時間弱かかるのに、安土山にはトイレが無いのだ。
 「安全策を施すことができません」という事も含めて、山全体が遺跡だからか?
 じゃ、ご出発前に用を足すトイレが、城跡入り口付近にあるかと言えば、無い
 ただし、市営の有料トイレがある。 

下3 それは、近江八幡市総合政策部文化観光課が運営する、城跡ガイダンス施設。(右写真)
 この施設は入館料200円(小中学生100円)をとるのだ。
 要するに、トイレをしたい人は、「入館料を払ってトイレをする。」
 それも、開館9時以降しか利用できない。

 私の目前で、2人の子を連れた若いお母さんが、入館料を払ってトイレに入って行った。そして「トイレに入るのに、なんでお金とるの?」という子供の声が、トイレに張り巡らしたよしず越しに聞こえて来る。 まったくその通り! 
 トイレに張り巡らしたよしず、とは、右写真の城跡ガイダンス施設の茶色い所、よしずの囲い。なぜトイレの存在を隠すのか?
 写真で確認できるとおり、トイレは、通りに面している。どう見ても、構造上、もともとトイレは無料公開される設計である。

 安土山山中にトイレが無い件は、城跡入り口の看板にも注意書きがあり、そこには加えて、こう書いてあった。
 「尚、トイレのあるガイダンス(施設)は、当山とは無関係である事をご承知おき下さい。」 
 なるほど、安土城跡の安土山全域は摠見寺という寺の私有地なのだ。
 よって寺は、私有地外の事は知らぬ存ぜぬという構え、有料トイレについて当方に聞くな、という突き放した態度。 

 ようこそ観光地へ、というおもてなしの概念が、ここ織田信長の城跡には、無い。
 足を痛めた私はタクシーで駅まで。その運転手の話によると、摠見寺と近江八幡市は、トイレや駐車場をめぐって、長年に渡って何やらいがみ合っているらしい。
 それにしてもだ、近江八幡市はなぜ、トイレを有料にするのだろうか!

 今に伝わる近江商人の心得、「三方よし」。
 「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということ。
 ああそうか、坊主も役人も、商人じゃない、か。

 安土城とは:https://ja.wikipedia.org/wiki/安土城


イオン0 八幡山は新幹線から見えます。
 米原→京都間で米原を出てまもなく、進行方向右手(座席のE席側)に、「観音寺城跡」という看板が小山のふもとに見える。
 およそ、この小山の向こう側に、安土城がある。
 そしてさらにしばらく、この辺り特有の小山をいくつか見て、次に視界が拡がり土地が平らな所の、ずっと向こうに、小さくイオン の赤い看板(AEON)が見えたなら、そのイオンのうしろ左手が八幡山。
 ← 写真はクリックすると拡大します。







映画 「ミニー&モスコウィッツ」  監督:ジョン・カサヴェテス

上

 1970年代、特にその前半に製作された映画のなかに、独特の風合いのリアリティを持つ映画がある。

1-0_201706091309353ff.png 本作もそうだ。
 登場人物はみな、臆面も無く自我丸出しで、愚かで、そして圧倒的に、人として強い。
 そして同時に弱い。
 その、人の弱み、つたなさを表わすにあたって映画は、飾らず盛らず、ためらいなくありのままに弱みを表わそうとする。
 愚直に生きようとする人々を、映画は応援する。
 加えて、観る者が感じる、映画のざらついた手触り感は、1970年代はモノに重さがある、アナログ全盛の時代だからだ。

 話はミニー(ジーナ・ローランズ)と、モスコウィッツ(シーモア・カッセル)のラブストーリー。
 ロサンゼルス郡立美術館に勤めるミニー(ジーナ・ローランズ)は、独身で一人住まい。
 人付き合いが下手で、何でも話せる話し相手は、職場の年配女性。彼女も独身だ。
 ミニーはひとりでいると心が乱れる。愛が欲しい。
 不倫相手の彼はいるが、愛はもう終わっている。

 モスコウィッツはレストランの駐車場付きのサービス係り。
 最低限の収入だが、そんなことを気にしない気楽に生きる男。
 そんな彼が、ミニーに一目惚れ。
 だが、ふたりの愛は、そう簡単には進まない。住む世界が違い過ぎる。

 ふたりの愚直さが、喜劇になって行く。
 監督自身の結婚経験を盛り込んだ作品とのこと。
 
オリジナルタイトル:Minnie and Moskowitz|
監督・脚本:ジョン・カサヴェテス|アメリカ|1971年|114分|
撮影 アーサー・J・オニッツ、アルリック・エデンス、マイケル・ディー・マルグリーズ|
出演:ミニー(ジーナ・ローランズ)|モスコウィッツ(シーモア・カッセル)|ヴァル・エイヴァリー|キャサリン・カサヴェテス|エルジー・エイムス|レディ・ローランズ|ジョン・カサヴェテス|

◆これまでに記事にした映画から。

【ジーナ・ローランズ出演の映画】
グロリア」(監督:ジョン・カサヴェテス)、「ナイト・オン・ザ・プラネット」(監督:ジム・ジャームッシュ)

【シーモア・カッセル出演の映画】
イン・ザ・スープ」(監督:アレクサンダー・ロックウェル)


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タリス・スコラーズ 《モンテヴェルディ生誕450年記念》 東京オペラシティ

上

 合唱のグループ、タリス・スコラーズのコンサートに行ってきた。
 人間の歌声が、こんなに完璧に、ひとつにそろうことの美しさ。素晴らしい。

 特に男声のクオリティの高さが目を引く。これがグループの盤石な基盤となっているように思える。
 響きの強いオペラシティは合唱にとても向いている。

[演奏]
 指揮:ピーター・フィリップス)、合唱:タリス・スコラーズ
[曲目]
・イザーク(c.1450-1517):天の女王、喜びませ
・パレストリーナ(c.1525-1594):教皇マルチェルスのミサ曲
・キャンプキン(1984- ):ミゼレーレ・メイ(日本初演)
・マーリー(1981- ):哀歌
・タリス(c.1505-1585):エレミヤの哀歌 Ⅰ
・ロッティ(1666-1740):十字架にかけられて(8声)
《モンテヴェルディ生誕450年記念》モテット名曲集
 モンテヴェルディ(1567-1643):十字架にかけられて/キリストよ、われらは御身をあがめ/主よ、われらを懲らしめたもうなかれ/主にむかいて新しき歌をうたえ
・アンコール曲 トレンテス:ヌンク・ドミッティス/H.イザーク:インスブルックよ、さようなら

[会場]:東京オペラシティ コンサートホール

京都へ行ってきた。 湯上り気分で街歩き。

  • Posted by: やまなか
  • 2017-06-08 Thu 06:00:00
  • 一話
湯80

 親戚の集まりで京都へ行ってきた。
 そのついでに、ちょっと京都観光。



錦湯 京都の銭湯
地図2

 錦市場(錦小路通)と堺町通が交わる辺りに、錦湯という銭湯がある。

 その場所は、錦市場(地図中の黄色部分)のすぐそばだけど、堺町通の町家街並みに溶け込んで、ひっそりとある銭湯。
(地図はクリックすると拡大します)

 前から気になっていた銭湯で、その外観が「入れ」と誘っているので今回入ってみた。

 午後4時きっかり、のれんを潜ると、中は古い。
 昭和2年創業らしいが、そのままではなかろうか。
 板張りの床の脱衣場ではジャズが静かに流れている。(一方、大型液晶TVからはニュースが流れてる)
 脱衣箱(キャビネット)の上には、常連客の名が大きく書かれた脱衣かごが並んでいる。

 さっそく、浴室へ入ろうとすると、年配の先客がもう上がって来た。昔からの常連さん。
 浴室の壁はタイル張り、ペンキ絵はない。でも、私はまったく気にしない。

2_2017060521150958f.jpg 浴槽は、深風呂、浅風呂、電気風呂、泡の薬風呂に水風呂が奥の壁際に沿って一列に並ぶ。
 電気風呂がいい。ちりちりと微細にモワッと感じる電気じゃなく、グギグギと粗い強弱があって、電気の周波数の波が大きい。効く!

 身体を洗おうと風呂椅子に座ったら、腰がぐんと沈んだ。
 通常の椅子より、ずっと低いのだ。カラン(湯水の蛇口)も低い位置にある。
 ここの客は小柄な人が多かったんだろう。

 浴室内の広告(プラ板看板)のなかに、私の好きなうどん屋の冨美家がある。店は錦湯と同じ堺町通沿い。
 目に付いたのは大書堂の広告。古書店の広告か、「江戸~現代」と書いてある。銭湯と言う極・日常の中に江戸がある。
 あとで調べたら、和本・巻物・浮世絵・近代現代版画の専門店。

 気持ち良い湯上り気分で、のれんを潜ると、錦湯の玄関先に長刀鉾(なぎなたほこ)のちまきを見つけた。
 ああ、ここは祇園祭の長刀鉾のエリアなんだと気付いた。
 
 錦湯:京都市中京区 堺町通 錦小路下ル 八百屋町535
 冨美家 錦店:京都市中京区 堺町通 蛸薬師下ル 菊屋町519

上の地図内の赤枠ゾーンの拡大図が、こちら。
通りのどん突き地図

 せっかくの湯上りなのに、錦市場は大混雑。
 各国からの観光客に加えて、各地からの修学旅行の中学生。
 市場内のあちこちで立ち食い。ここは、もう、屋台通りだ。

 そんなわけで、タオルを首にかけた私は、混雑を避けて、錦小路通の一本北の蛸薬師通を選んだ。

 まる たけ えびす に おし おいけ
 あね さん ろっかく たこ にしき
 小路通、条通、六角通、薬師通、小路通

05-.jpg
 さて、京都の道は碁盤目だというが、繁華街のど真ん中に、通りのどん突き(突き当たり)がある。
 つまり、碁盤の端。昔の亰の、東の端。これが新京極通。
 錦市場(錦小路通)を東に進めば、錦天満宮で、どん突き。(地図中の6)
 蛸薬師通も、同じく、蛸薬師堂でどん突き。(地図中の5)
 六角通も、同じく、誓願寺でどん突き。(地図中の3)

 錦市場や新京極通や寺町通だけを歩いていては、こういうことは分からない。
 誓願寺から北、本能寺までは、以前に記事にしました。こちらから、お読みください。

 その誓願寺前で、京都市上下水道局職員が「めっちゃ大好き、京都の水道水」という謎のウチワとチラシを配っていた。
 チラシでは「ふるさと納税で琵琶湖疏水 通船復活」と宣伝している。
 京都は水の豊かな街だが、水道水は琵琶湖疏水から、つまり琵琶湖の水に頼ってきた。
 そんなことで、私は翌日、琵琶湖へ向かった。(続きは、こちらから

6_20170607111409437.png 琵琶湖疏水の舟運の、本格的復活を目指す京都市は、ふるさと納税を活用し、新しい船舶の建造や事業運営を支援してもらうことを目的とした寄付金制度を開始。
 琵琶湖疏水の沿線、つまり大津・京都間(山科・岡崎地域)の更なる活性化事業。










映画 「紅の翼」1954年 主演:ジョン・ウェイン 監督:ウィリアム・A・ウェルマン

上
ホノルルを発った旅客機(プロペラ4発機)、搭乗数総勢21名。 

 1954年製作の旅客機パニックもの。

1-0_20170528124954547.png ジョン・ウェイン演じる副操縦士ダンは、1917年からの超ベテラン飛行機乗り。(職歴37年)
 彼は、長年民間航空の機長として活躍し、また二回の世界大戦と朝鮮戦争で空軍パイロットを勤めた男。
 今は別の、この航空会社で、機長を若手に譲り、自身は副操縦士の座にいる。しかしながら若手からは煙たがられている様子。

 さて、ダンが副操縦士として乗り込んだホノルル発サンフランシスコ行きの便が、晴天の中、空港を飛び立った。予定所要時間12時間16分。
 ハワイ、サンフランシスコ間は、どこまで行っても太平洋上である。
 夜になり、帰還不能点(ホノルルへ引き返す燃料がなくなる限界点)を過ぎたあたりで、旅客機の第1エンジンが突如、火を噴いた。
 さらにはこの爆発で、燃料タンクから燃料が漏れだした。機は揺れ出す。

 慌てる機長、第3操縦士、ステュワーデスの3名は、みな若い。もちろん搭乗客たちも騒ぎ出す。
 これを冷静に見るダンも、本当は怖い。だが、彼は状況を判断し的確な行動をとる。
 ダンは自ら進んで、若い機長に代わり、客たちに状況説明をした。
 「事実を過不足なく、正確に伝えることに徹します」と冒頭に述べ、まずは客の信頼感を得る努力をし、次に客の心を和らげながら、水面着陸への対処を説明した。

 しかし結局、旅客機はダンの機転のきいた操縦で、水面着陸せずに、何とか夜更けのサンフランシスコ空港にたどりつけた。(着陸後の燃料残量は、わずか114リットルだった)

 映画は、乗客それぞれの人物背景や心理描写を描くが、いささか喜劇的である。これはパニックドラマの怖さをやわらげるためだろう。(1954年当時の観客は怖かったと思う) 搭乗客の人物像は下記

 ちなみに、ダンには辛い過去があった。ダンが機長として搭乗した便が、南米コロンビアで墜落。ダンは墜落の衝撃で操縦席の窓から投げ出され、ひとり奇跡的に助かったが、ほかの搭乗者は全員が死亡した。そして悲しいことに、この搭乗者の中に、ダンの妻子がいたのだった。


下 さて、この映画を取りあげたのは、先に書いたジョン・ウェイン演じる副操縦士ダンの次のセリフ、「事実を過不足なく、正確に伝えることに徹します」が印象に残ったからだ。
 そのセリフは、「説明責任ある人の説明責任」を副操縦士ダンが、ちゃんと認識している証だ。これがかっこいい。見識ある男。

 昨今、世界中で、物事を、責任ある説明をせずに、ただ、「まったく問題ない」と言い切る人が多いと感じている。
 こういう人こそ、一番、「問題がある」し、信頼感を失う言動だ。


オリジナルタイトル:The High and the Mighty|
監督:ウィリアム・A・ウェルマン|アメリカ|1954年|147分|
原作・脚本:アーネスト・K・ガン|撮影:アーチー・スタウト|
出演:搭乗員5名:副操縦士ダン・ローマン(ジョン・ウェイン)|機長のサリヴァン(ロバート・スタック)|第3操縦士ホビー(ウィリアム・キャンベル)|ステュワーデスのスポールディング(ドー・アヴドン)|航空士ウィルビー(ウォーリー・ブラウン)|
搭乗客16名:ハワイにある核ミサイル開発プロジェクトにいた世界的な原子科学者フラハティ(ポール・ケリー)|文通相手とサンフランシスコで初めて会う予定の元・美人コンクール受賞者サリー(ジャン・スターリング)|富裕層の勝ち気な女性リディア・ライス(ラレイン・デイ)|その夫で尻に敷かれているハワード・ライス(ジョン・ハワード)|サンフランシスコの母親の許へひとりで搭乗した5歳の少年トビー(マイケル・ウエルマン)|サンフランシスコの漁師ホセ・ロコタ(ジョン・クォーレン)|満洲生まれの朝鮮人女性ドロシー・チェン(ジョイ・キム)|ブロードウェイのプロデューサ―のギュスターヴ・パーディ(ロバート・ニュートン)|その妻で人気女優リリアン(ジュリー・ビショップ)|ハワイ旅行帰りの夫エド・ジョゼフ(フィル・ハリス)|その妻(アン・ドーラン)|新婚旅行帰りの夫婦(カレン・シャープ、ジョン・スミス)|搭乗客メイ・ホルト(クレア・トレヴァ)|搭乗客ケン・チャイルド(デイヴィッド・ブライアン)|搭乗客ハムフリー・アグニュー(シドニー・ブラックマー)|その他、船員、航空会社地上職ほか

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一夜一話の “今日はシンガーソングライターだよ“  リッキー・リー・ジョーンズ

これ

 今日の一枚は、リッキー・リー・ジョーンズのファーストアルバム「浪漫」だよ。(原題 Rickie Lee Jones )
 1979年にリリースされたこの一枚は、今も新鮮な輝きを放っている。
 その輝きは、ファーストアルバムならではの魅力。(もちろん、その後のアルバムにもいいものはありますが。)
 彼女がそれまで生きてきた、聴いてきた、25年間分の蓄積が、この一枚に凝縮されている。

 こんな優れたオリジナリティを持った歌い手が素敵な曲を携えて現れたなら、誰もがバック演奏に加わりたいもの。
 下記のバックミュージシャンのリストを見てください。まったくもって凄いメンバーが集まっています。

 さて、このアルバム、これまでに一体、何回聴いたんだろう。心の底から、いい、ロック・ミュージックのアルバムだよ。

 1曲目の「Chuck E's In Love」、一度聞けば彼女の魅力にはまる、いい曲。イントロからしびれる。
 2曲目はバラード。彼女はピアノの弾き語りもする。たぶんピアノを弾いて生まれた曲だろう。
 3曲目もバラード。バック演奏はさりげないようで、よく聴くと繊細で凝っている。いいな。
 4曲目はミディアムでリズミックな1曲。イントロのベースとパーカッションが1小節目から聴く人をひきつける。 
 5曲目、ウッドベースではじまる可愛らしいバラード曲。これもバック演奏のセンスが光る。
 6曲目もバラード。ギター弾き語りで作った曲だと思う。
 7曲目はブギだぜ。彼女の歌の特徴である抑揚(緊張と緩和)がいきている。楽しい歌。ブラスが盛り上げる。
 8曲目、これは彼女の幾つかある歌の世界のひとつで、スローで悲しく幻想的。これもピアノを弾いて生まれた曲だろう。サブ
 9曲目はギター弾き語りにバックがつく。彼女のライブアルバム「ネイキッド・ソングス」でも歌っている。(6曲目も)
 10曲目「Company」、ピアノ弾き語りバラード。深夜にひとり聴くとジーンと心に染み入る。なんて美しい!陽射しが陰りまた陽が射すようにコードがマイナー/メジャーと移ろっていく。メジャーコードになったところで何か救われた感じがする。
 11曲目、これも美しいピアノとバラード。

「浪漫」 (Rickie Lee Jones) released:March 1979
1. Chuck E's In Love
2. On Saturday Afternoons In 1963
3. Night Train
4. Young Blood
5. Easy Money
6. The Last Chance Texaco
7. Danny's All-Star Joint
8. Coolsville
9. Weasel And The White Boys Cool
10. Company
11. After Hours

producer: Lenny Waronker; Russ Titelman.
Rickie Lee Jones performed vocals and background vocals, guitars, keyboards, and percussion. She also arranged the horn sections.
バック・ミュージシャン
Michael "Bobby" Boddicker - Synthesizer
Red Callender - Bass
Nick DeCaro - Accordion/Orchestral Arrangements
Buzzy Feiten - Guitars
Victor Feldman - Drums/Keyboards/Percussion
Chuck Findley - Horns
Steve Gadd - Drums
Ralph Grierson - Keyboards
Randy Kerber - Keyboards
Neil Larsen - Keyboards
Arno Lucas - Background Vocals
Johnny Mandel - Orchestral Arrangements
Michael McDonald - Background Vocals
Randy Newman - Synthesizer
Andy Newmark - Drums
Jeffrey Porcaro - Drums
Mac Rebennack - Keyboards
Tom Scott - Horns
Leslie Smith - Background Vocals
Mark Stevens - Drums/Percussion
Fred Tackett - Guitars/Mandolin
Joe Turano - Background Vocals
Ernie Watts - Horns
Willie Weeks - Fender Bass
Matthew Wiener - Background Vocals

2年前・4年前・6年前の5月、一夜一話。 (2015年5月・2013年5月・2011年5月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-05-31 Wed 06:00:00
  • 映画
2年前の5月に掲載した映画です。
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1空気の無くなる日     2てなもんや東海道     3ペタル ダンス
空気の無くなる日」     「てなもんや東海道」     「ペタル ダンス
監督:伊東寿恵男        監督:松林宗惠        監督:石川寛
                藤田まこと、白木みのる    宮崎あおい、忽那汐里、安藤サクラ
4嵐     5花とアリス     6共喰い
」            「花とアリス」        「共喰い
監督:稲垣浩          監督:岩井俊二        監督:青山真治
笠智衆             鈴木杏、蒼井優        菅田将暉、田中裕子
11ナポレオン・ダイナマイト     12大統領の料理人     13オズの魔法使
ナポレオン・ダイナマイト(バス男)」 「大統領の料理人」  「オズの魔法使」 ~映画音楽に魅せられて
監督:ジャレッド・ヘス    監督:クリスチャン・ヴァンサン  監督:ヴィクター・フレミング
アメリカ           主演:カトリーヌ・フロ      主演:ジュディ・ガーランド
14ビートニク     15ラ・ジュテ
ビートニク」        「ラ・ジュテ
監督:チャック・ワークマン   監督:クリス・マルケル
アメリカ            フランス

4年前の5月に掲載した映画です。
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1あにいもうと     2同じ星の下、それぞれの夜     3パーク アンド ラブホテル
「あにいもうと」        「同じ星の下、それぞれの夜」 「パーク アンド ラブホテル」 いち押し
監督:成瀬巳喜男         監督:富田克也ほか      監督:熊坂出
京マチ子、久我美子
  
4現代インチキ物語 騙し屋     5世にも面白い男の一生 桂春団治     6大阪の女   
「現代インチキ物語 騙し屋」  「世にも面白い男の一生 桂春団治」    「大阪の女」
監督:増村保造         監督:木村恵吾          監督:衣笠貞之助
                 淡島千景、八千草薫        京マチ子

11タッチ・オブ・スパイス     12トランシルヴァニア     13ケス    
「タッチ・オブ・スパイス」  「トランシルヴァニア」     「ケス」
監督:タソス・ブルメティス   監督:トニー・ガトリフ     監督:ケン・ローチ
    
14情熱のピアニズム     15卵     16黒猫・白猫   
「情熱のピアニズム」     「卵」             「黒猫・白猫」
ジャズピアニスト        監督:セミフ・カプランオール  監督:エミール・クストリッツァ
ミシェル・ペトルチアーニ
  
17一瞬の夢     18水辺の物語  
「一瞬の夢」        「水辺の物語」
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                マレーシア映画

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1サイドカーに犬     2パーマネント野ばら     3不灯港
「サイドカーに犬」       「パーマネント野ばら」     「不灯港」
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4ディア・ドクター     5タイムレスメロディ     6あらかじめ失われた恋人たちよ
「ディア・ドクター」      「タイムレスメロディ」     「あらかじめ失われた恋人たちよ」
 監督:西川美和         監督:奥原浩志         監督:清水邦夫/田原総一朗
 笑福亭鶴瓶           青柳拓次、市川実日子      石橋蓮司桃井かおり
7カケラ     8ヴァイブレータ     9見上げてごらん 夜の星を 
「カケラ」           「ヴァイブレータ」       「見上げてごらん 夜の星を」
 監督:安藤モモ子        監督:廣木隆一         監督:番匠義彰
 満島ひかり           寺島しのぶ|大森南朋      坂本 九
11バッファロー66     12森の中の淑女たち     13ミックマック
「バッファロー'66」       「森の中の淑女たち」      「ミックマック」
 監督:ヴィンセント・ギャロ   監督:シンシア・スコット    監督:ジャン=ピエール・ジュネ
 アメリカ            カナダ             フランス
14ヴェルクマイスター・ハーモニー     15女人、四十。SUMMER SNOW     16Manneken Pis
「ヴェルクマイスター・ハーモニー」「女人、四十。」       「小便小僧の恋物語」
 監督:タル・ベーラ        監督:アン・ホイ       監督:フランク・ヴァン・パッセル
 ハンガリー            香港             ベルギー

17細路祥 Little Cheung
「リトル・チュン」
 監督:フルーツ・チャン
 香港

   テーマに沿って、一夜一話に掲載の映画の中からピックアップしています。
   フランス映画、1960年代。いい映画。
     1960年代のフランス映画を、一夜一話から拾ってみました。こちらからどうぞ。
   中央アジア・西アジア・南アジアの映画
     これまでに一夜一話で取りあげた、アジアの映画です。(以下、五十音順)こちらからどうそ。
   ATGの映画
     これまでに掲載したATGの映画をリストアップしてみました。こちらからどうぞ。


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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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