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映画 Archive

中国映画「相愛相親」,「天使は白をまとう」,「氷の下」 ~第18回東京フィルメックス上映作品

 これら3作品の中では、「相愛相親」がいい出来です。

『相愛相親』   Love Education|相愛相親|【特別招待作品】
中国、台湾|2017|120分|監督・主演:シルヴィア・チャン(Sylvia CHANG)|
10_2017112210015589f.jpg
 女性監督(兼主演)によるホームドラマ、女性目線の映画です。
 喜劇的な場面があり、女性観客の間から時折クスクス笑いが聞こえました。
 また、シーンの切り返しに独特のリズムがあって、これが心地良い印象を与えています。 

 中年の主人公が母親の遺骨を、父親が眠る故郷の墓に埋葬しようとするが、故郷に住む父親の先妻に断固反対される話です。

 父親はその昔、先妻を故郷に残し出稼ぎに出た切り、故郷へ帰らず、都会で知り合った女性と結婚。この女性が主人公の母親でした。
 この間永い間、先妻は夫が帰って来るのを辛抱強く待ちました。そして遺骨となって帰って来てからは墓守をして来たわけです。だから故郷の村人たちは先妻の肩を持ちます。

 こんな筋書きを飾るエピソードが三つ。
 ひとつが、埋葬騒動を番組ネタにしようとするテレビ局。
 ふたつめは、主人公の娘。娘は当初、この内輪もめを客観視していましたが、そのうちに、孤独に生きる先妻に興味を持ち始め彼女に近づいていきます。
 もうひとつは、主人公の夫。尻に敷かれても、おっとりした夫。この俳優、いい味を出していますが俳優ではない。
 (本業は映画監督で名はティエン・チュアンチュアン。「青い凧」「ジャスミンの花開く」「ルアンの歌」「五月の恋」などで知られる人物)
 もちろん主人公を演ずる監督のシルヴィア・チャンもいいですね。

 ちなみに映画に出てくるシーンですが。
 TSUTAYAがやっている書店を中心にした生活提案型の店舗のような店、あちらの新幹線、モダンなマンションの部屋などなど、どれも日本と変わらない。いわゆる中国っぽいと思えるシーンは、先妻の住む古風な家屋くらいでしょうか。
 映画は、現代の中国の都会に住む家族の様子がよくわかります。
写真
娘は彼氏と家出し先妻の家へ。
彼氏はミュージシャン。
写真
その昔は夫が好きだった。
そんなことさえ忘れていた妻。

『天使は白をまとう』   Angels Wear White|嘉年華|【特別招待作品】
中国|2017|107分|監督:ヴィヴィアン・チュウ(Vivian QU)|
20_20171122211358201.jpg
 ふたりの少女が主人公のお話です。
 家出をし各地を転々としたのち、この海辺のリゾート地へ流れ着いた16歳の少女(左写真)。
 彼女は小さな(ラブ)ホテルで住み込みの従業員をしている。

 もうひとりは、私立名門校の小学生の女の子。母親と二人住まいだが、母は娘の面倒を見ない女。
 この子は同級生と一緒に、地元の名士に誘われホテルで一泊し援助交際をしたが、16歳の従業員が従業員としてこのことを目撃する。

 のちにこれが発覚し事件となり、地元警察が動き出して、小学生の少女二人は親同伴で病院にて検査を受けることになる。
 名士関係者やホテルのオーナーはもみ消しを図るが、噂は広がる。
 名士は少女の親に金で働きかける。今後の教育費の面倒をみると。
 ついに警察も名士の味方をする。事件は無かったことになってしまう。そして少女たちは・・。

 脚本が練れていない。物語を巧く物語れていないのだ。
 また、二人の少女の心の様子が描き切れていない。俳優のだんまりだけでは伝わらない。ただし、小学生役の少女の目つきは、多部未華子のように鋭い。
 根底にある社会批判がぬるいのは、致し方ないか。 
21.jpg22_2017112222075398f.jpg
『氷の下』   The Conformist|氷之下|【コンペティション対象作品】
中国|2017|126分|監督:ツァイ・シャンジュン(CAI Shangjun)|
3_20171121202032022.jpg
 う~ん辛い。

 コワモテ風を狙っているようだが、脚本が空中分解している。
 それを知ってか、126分間、客を飽きさせないようにと、あるいは驚かそうと、次から次へと肩に力が入った映像が出てくる。
 カメラは頑張っていたが、私は映画の終わるのが待ち遠しかった。









32.jpg31.jpg33_20171122223418470.jpg


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気になる映画 61  《これから上映の映画》

写真
「泳ぎすぎた夜」
監督:五十嵐耕平、D・マニヴェル
2018春 イメージフォーラム
写真
大映女優祭 48作品上映
大映創立75年記念企画
12/9-1/12 角川シネマ新宿
写真
市川準監督 傑作選ベスト5
ベスト1 大阪物語、ベスト2 BU・SU
12/2-8 目黒シネマ
写真
追悼 松本俊夫
ロゴスとカオスのはざまで
12/9-22 イメージフォーラム
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「花咲くころ」|2013年グルジア
岩波ホール創立50周年記念
来年2/3-3/16 岩波ホール
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「皆殺しの天使」ほか
ルイス・ブニュエル監督特集
12月 イメージフォーラム
写真
「デヴィッド・リンチ:アートライフ」
出演:デヴィッド・リンチ
来年1/27-シネマカリテ・アップリンク他
写真
東南アジアの都市生活
短編ドキュメンタリー作品上映&トーク
12/9 国際交流基金ホール
12/7 京大東南アジア地域研究研究所
稲盛財団記念館
写真
東南アジア映画特集
12/9,16,23 2018/1/6 
東京外大 アゴラグローバルプロメテウスホール



映画「スワロウテイル」 映画音楽に魅せられて 主演:CHARA 監督:岩井俊二

上

 日本のどこか、海沿いの都市、その市街の外れにある、円都(イェンタウン)と呼ばれる無法のバラック集落地区に、中国系不法移民たちが住んでいる。

1-0_201711171315104b1.png 映画冒頭で私たちはたちまち、この移民たちの日常世界に引き込まれる。
 それは、中国語をベースに片言の日本語・英語が混じる無国籍風のセリフ、かつシーンの様子も、いかにも無法地域らしく怪しげで素晴らしいからだ。ロケ地選択と美術の仕事の勝利だろう。

2-0_201711171316336f7.png 映画は、この円都(イェンタウン)での物語を第一章にして、次に円都の暮らしから離脱する主人公らの新たな展開を第二章にする二部構成。
 映画全体を通して思うに、正直言って脚本が弱い。
 弱いが、これを補って余りあるものにしているのは、なんと言ってもCHARA自身の魅力と彼女の歌。
 加えてやはり、映像イメージが牽引する無法の街のシーンの作りだ。

 ミュージシャンで女優のCHARAの魅力とは、少女っぽい舌足らずな中国語のセリフかも知れない。
 歌は、恥ずかし気に歌いだす「マイウェイ」もいいが、映画ラストに流れる「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」がいいですね。
 当時、この歌はヒットしてよく流れていました。曲の冒頭の、哀愁のある儚げなシンセサイザーの音色がいいし、もちろんCHARAのウィスパーボイスが魅力的です。
 映画製作の1996年はバブル崩壊の直後。そんな厭世的な気分が映画の背景にあるような気がします。 

 
監督・原作・脚本:岩井俊二|1996年|149分|
撮影:篠田昇|音楽:小林武史|主題歌:YEN TOWN BAND|美術:種田陽平|
出演:ヒオ・フェイホン(三上博史)|グリコ(CHARA)|アゲハ(伊藤歩)|リョウ・リャンキ(江口洋介)|マオフウ(アンディ・ホイ)|ラン(渡部篤郎)|鈴木野(桃井かおり)|シェンメイ(山口智子)|レイコ(大塚寧々)|星野(洞口依子)|医者(ミッキー・カーチス)|葛飾(渡辺哲)|須藤(塩見三省)|浅川(武発太郎)|アーロウ(シーク・マハメッド・ベイ)|ホァン(小橋賢児)|ワン(翁華栄)|アゲハの母・ユリコ(藤井かほり)|デイブ(ケント・フリック)|金髪男(ローリー寺西)|本田(田口トモロヲ)|楠木(鈴木慶一)|監査官(山崎一)|亀和田(北見敏之)|パンク男(光石研)|ロリータ店長(酒井敏也)|インタビュアー(クリス・ペプラー)|藤田(陰山泰)|ツェン(顧暁東)|ニハット(アブラハム・レビン)|チュンオン(楊錠宇)|クラブの客(浅野忠信)|少女アゲハ(鴨川寿枝)|YEN TOWN BAND(ブライアン・バートン―ルイス、カーク・D・ハバード、カレブ・ジェイムズ、アリ・モリズミ・MTV、 C.J.、ダニエル・グルーンバウム)|

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1年前・3年前・5年前の11月、一夜一話。(2016年11月・2014年11月・2012年11月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-11-15 Wed 06:00:00
  • 映画
1年前の11月に掲載した映画です。
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  1年前の11月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年11月 Archive>

写真
「あん」
監督:河瀬直美
樹木希林
写真
<カ行> の洋画
これまでに記事にした洋画
2016.11.15 現在
写真
「エル・スール」
監督:ビクトル・エリセ
スペイン
写真
「橋の上の娘」
監督:パトリス・ルコント
フランス
写真
第17回東京FILMeX上映作品
3作品:スリランカ、韓国、中国
       
写真
第17回東京FILMeX上映作品
「マンダレーへの道」
台湾/ミャンマー
写真
今日はジャズ・ボーカルだよ。
ダイアナ・クラールと
ナット・キング・コール
写真
最近、読んだ本、3冊。


3年前の11月に掲載した映画です。
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  3年前の11月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年11 Archive)

写真
「鴛鴦歌合戦」
監督:マキノ正博
片岡千恵蔵、市川春代
写真
「箱入り息子の恋」
監督:市井昌秀
星野源、夏帆
写真
「穴」
監督:市川崑
京マチ子,船越英二,山村聡
写真
「顔役」
監督:勝新太郎
勝新太郎,山崎努,藤岡琢也
写真
「タラデガ・ナイト
      オーバルの狼」

アメリカ
写真
「記憶が私を見る」
監督:ソン・ファン
製作:ジャ・ジャンクー|中国
写真
「グロリア」
監督:ジョン・カサヴェテス
アメリカ
写真
「バニシング・ポイント」
監督:R・C・サラフィアン
アメリカ
写真
「呼吸」
監督:K・マルコヴィックス
オーストリア
写真
東京フィルメックス2014
「扉の少女」
韓国
写真
東京フィルメックス2014
「生きる」
韓国
写真
美術展「楽園としての芸術」
障害ある人たちによる作品展
(東京都美術館)
写真
美術展「オープン・スペース
          - 2014」

( 東京オペラシティ内 ICC)
写真
京都のはなし
うどん


5年前の11月に掲載した映画です。
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  5年前の11月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年11月 Archive)

写真
「宇宙大戦争」
監督:本多猪四郎
特撮: 円谷英二
写真
「野良犬」
監督:黒澤明
三船敏郎、志村喬
写真
「暁の追跡 」
監督:市川崑
池部良、杉葉子
写真
「Love Letter」
監督:岩井俊二
中山美穂
写真
「ヒポクラテスたち」
監督:大森一樹
古尾谷雅人、伊藤蘭
写真
「ドント・ルック・バック」
ドキュメンタリー映画
アメリカ、イギリス
写真
「トニ」
監督:ジャン・ルノワール
フランス
写真
「ヘンリー・フール」
監督:ハル・ハートリー
アメリカ
写真
「ウェルカム・トゥ
       ・コリンウッド」

アメリカ
写真
「鬼火」
監督:ルイ・マル
フランス
写真
「恋の邪魔者」
監督:パトリス・ルコント
フランス
写真
「おばあちゃんの家」
監督:イ・ジョンヒャン
韓国
写真
「天使の眼、野獣の街」
監督:ヤウ・ナイホイ
香港
写真
「灯台守の恋」
監督:フィリップ・リオレ
フランス



映画「あらくれ」(1957) 主演:高峰秀子 監督:成瀬巳喜男

上

 明治に生まれ、大正の時代を生きる女、お島(高峰秀子)の話。

1-0_20171112165819fbe.jpg お島は「あらくれ」な女、世間・風習に逆らって荒々しく振る舞い生きる女だと映画は言う。
 夫に盾突き、取っ組み合いの夫婦喧嘩をしたり、夫の浮気相手の女と組んずほぐれつの格闘をする。そして大抵、お島は勝つ。
 たしかに時として、お島は乱暴を働く女だが、果たして「あらくれ」な女だろうか。
  
 お島は、養女として育てられた。
 年ごろになった頃、養子先の家が一方的に決めた縁談を嫌い、祝言当日にお島はその家を飛び出した。
 そののち東京に出て、病で妻を亡くした缶詰屋の鶴さん(上原謙)と結婚。だが鶴さんの浮気が続き、夫婦仲は破綻、ついに離婚。

 離婚したはいいが、世間にお島の居場所はない。
 実家を出たきりの実兄を頼って、お島は見知らぬその地へ行くが、そこの旅館の女将に金を借りた兄が行方不明になる。お島は、仕方なく、その旅館の女中として働き始めた。

 旅館の若旦那、浜屋(森雅之)の妻は病弱で、静養のため実家にいた。そんなことで若旦那はお島に恋してしまう。
 やがて妻の身体が回復し実家から妻が帰って来る。板挟みになった若旦那は、お島を妾にして関係を続けようとするが、お島はこれを嫌い、再び東京へ出た。

2-0 縫製の店で働き始めたお島は、職場の男、小野田(加東大介)と所帯を持ち、洋服仕立て屋を始める。
 しかし、一緒になってお島は小野田に商才が無いことに気付き始める。そのうえ小野田は、女(三浦光子)とねんごろになり、家まで持たせる始末。
 業を煮やしたお島は、店の若い職人(仲代達矢)と小僧を連れて温泉地へ出かけた。それは、3人で新しく店を開こうという相談のためであった。

 
 たしかに、お島は男勝りで才覚がある。
 一方、登場する男たちは皆、器が小さく、お島が抵抗しようとすると、世間体を持ち出し、女を見くだす態度をとる。
 映画は、そんな男尊女卑がまかり通る時代に生きる女の自活を描こうとしている。

 がしかし、観終わってみれば、高峰秀子の演技は印象に残るが、男たちの人物像がどれも紋切り型で、結果、相対するお島の人物像も平板になってみえる。よって作品としてはいささか凡庸な印象だ。
 本作は原作と趣が少々違うかも知れない。

監督:成瀬巳喜男|1957年|121分|
原作:徳田秋声『あらくれ』1915年(大正4年)|脚色:水木洋子|撮影:玉井正夫|
出演:お島(高峰秀子)|缶詰屋の主・鶴さん(上原謙)|田舎の旅館の若旦那・浜屋(森雅之)|洋服の仕立て職人・小野田(加東大介)|お島の実父(東野英治郎)|お島の実母(岸輝子)|お島の兄・壮太郎(宮口精二)|お島の姉・おすず(中北千枝子)|お島の養父・喜助(坂本武)|お島の養母・おとら(本間文子)|作太郎(谷晃)|植源の隠居(林幹)|植源の隠居の息子・房吉(田中春男)|鶴さんの幼なじみで小野田の女になった女・おゆう(三浦光子)|浜屋の妻・お君(千石規子)|精米所の主人(志村喬)|お島の伯母(沢村貞子)|お島の店の職人・木村(仲代達矢)|ほか

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人気の映画記事 ベスト10

  • Posted by: やまなか
  • 2017-11-08 Wed 06:00:00
  • 映画
 よく訪問いただいている人気の映画記事、ベストテンを更新しました。
 日本映画ベスト10、外国映画ベスト10、それぞれに、こちらからご覧ください。



映画「喜劇 駅前旅館」 監督:豊田四郎

上






 本作は1958年の製作。このころの日本映画は良く出来ている。
 脚本も演出も、俳優の技量も、娯楽性も、文句なしにハイレベル。
 ベテラン俳優の、さりげない一挙手一投足に、感情表現の絶妙な味があることにも注目してほしい。

 東京の「東玄関」上野駅の駅前旅館150軒や飲食店街は、多くの旅行客に親しまれ繁盛して来た。
 そして昨今、修学旅行の団体客が、毎日のように旅館街にどっと押し寄せてくる!

1-0_201711041139566da.png 戦後、修学旅行が再開され、さらに本格化したのが、この映画の時代、1950年代。
 戦前は、修学旅行は「国家神道教育」に通じる神社を目的地としていたが、戦後、これが自由化され、さらには修学旅行は誰もが行くものとして一般化された。
 よって修学旅行の行き先は、交通の利便性や社会見学先を考えると日本の「首都」東京になり、かつ団体客の受け入れ可能な宿泊旅館を考慮すると、自ずと上野であった。

 このことで、焼野原から復興してきた上野の駅前旅館街は一変した。
 大型の旅館は、黙っていても、各地の学校から予約が入るという、ウハウハ極楽状態。もう上野駅前で客引きする必要は無くなっていた。
 
 こんなことを背景に「喜劇 駅前旅館」は始まる。
 大型旅館の柊元(くきもと)旅館、ここのベテラン番頭の次平(森繁久彌)は、玄関で騒ぐ修学旅行生たちを目の前にして嘆く。「これは旅館じゃない、流れ作業の工場だ」
 40歳代の次平は客引きのプロ。次平を頼って来るリピーター一般客も多い。旅館一同の、宿泊客に対する丁寧なおもてなし。
 しかし、修学旅行生の団体客を相手にすると、旅館は、彼らの一日のスケジュールに沿って流れ作業のように動く。次平はこれを、もはや旅館業の工場化だという。

2-0_20171104114124f04.png 本作公開時の宣伝文句は、「舌三寸で客を引き、胸三寸で恋のせる、番頭家業の裏おもて」。
 旅館街のそばにある飲み屋の女将、お辰(淡島千景)の店に、次平や他の旅館の番頭たち(伴淳三郎、多々良純ら)の口達者な常連が集まる。お辰は前々から次平に気があるが、次平にその気があるのや無いのやら。

 くわえて、恋物語がもう二つ。
 はとバスの添乗員の小山欣一(フランキー堺)は、柊元旅館の可愛い女中、お京(三井美奈)が好き。ふたりのその先はいかに。
 もうひとつの話は、次平の昔の女、於菊(淡路恵子)が柊元旅館に客として現れる。さてこちらの展開は・・。

 そして、団体客の物語。
 関西女子高の修学旅行生を引率する老先生(左卜全)、同じく四国男子高の先生(藤村有弘)、同じく東北女子高の先生(若水ヤエ子)に、山田紡績の社員旅行を引率するおばさん社員(浪花千栄子)が、話に騒ぎを持ち込む。

 さらには、上野界隈のやくざの頭(山茶花究)が率いる一団が、客引きを巡って、あるいは旅館の女中の引き抜きや麻薬売買で騒ぎを起こす。
 さてさて、このあと、すったもんだのお話はどうなりますでしょうか、それは観てのお楽しみ。
 ちなみに、柊元旅館主人(森川信)、その妻(草笛光子)も話に味を添えています。
 
監督:豊田四郎|1958年|109分|
原作:井伏鱒二|脚色:八住利雄|撮影:安本淳|
出演:生野次平(柊元旅館番頭):森繁久彌|柊元三治(柊元旅館主人):森川信|柊元お浜(柊元旅館内儀):草笛光子|柊元梅吉(柊元旅館中番):藤木悠|柊元お京(柊元旅館女中):三井美奈|柊元お松(柊元旅館女中):都家かつ江|高沢(水無瀬ホテル番頭):伴淳三郎|春木屋番頭:多々良純|杉田屋番頭:若宮忠三郎|小山欣一(添乗員):フランキー堺|お辰(辰巳屋女主人):淡島千景|於菊:淡路恵子|相田(関西女子高校先生):左卜全|広見(四国男子高校先生):藤村有弘|保健の先生(山田紡績):浪花千栄子|女の先生(東北女高):若水ヤエ子|カッパのボス株:山茶花究|カッパA:大村千吉|カッパB:西条悦朗|カッパC:堺左千夫|カッパD:水島直哉|辰巳屋小女:小桜京子|山田(紡績所長):谷晃|芸者:三田照子|女学生:市原悦子|

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気になる映画 60  《これから上映の映画》

写真
「最低。」
監督:瀬々敬久
11/25~角川シネマ新宿ほか
写真
「二十六夜待ち」
監督:越川道夫
12/23~テアトル新宿
写真
「ニッポンの、みせものやさん」
監督:奥谷洋一郎
11/25-12/1 新宿K’cinema
写真
シネマヴェーラ的大映女優祭
11/4-12/1
シネマヴェーラ渋谷
写真
女優で観る
<大映>文芸映画の世界
11/25-12/22 神保町シアター
写真
女優 倍賞千恵子特集
11/4-12/1 横浜シネマリン






2年前・4年前・6年前の10月、一夜一話。(2015年10月・2013年10月・2011年10月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-10-31 Tue 06:00:00
  • 映画
2年前の10月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年10月 Archive)

写真
「風切羽」
監督:小澤雅人
秋月三佳
写真
「その夜の侍」
監督:赤堀雅秋
堺雅人
写真
「喧嘩犬」
監督:村山三男
田宮二郎
写真
「下妻物語」
監督:中島哲也
深田恭子、土屋アンナ
写真
「ヴィヴィアン・マイヤーを
          探して」

(ドキュメンタリー映画)
写真
「イゴールの約束」
監督:ダルデンヌ兄弟
ベルギー
写真
「ハネムーン・キラーズ」
監督:レナード・カッスル
アメリカ
写真
「ヘルシンキ・ナポリ
    オールナイトロング」

監督:ミカ・カウリスマキ
写真
「憂鬱な楽園」
監督:ホウ・シャオシェン
台湾
写真
“1970年代の日本のロック、フォークを
振り返る”をテーマにして読んだ本。


4年前の10月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年10月 Archive)

写真
「PicNic ピクニック」
監督:岩井俊二
チャラ、浅野忠信
写真
「ヘヴンズ ストーリー」
監督:瀬々敬久
寉岡萌希、長谷川朝晴
写真
「燃えつきた地図」
監督:勅使河原宏
勝新太郎、市原悦子、渥美清
写真
「狂った野獣」
監督:中島貞夫
渡瀬恒彦、川谷拓三
写真
「密航0ライン」
監督:鈴木清順
長門裕之,清水まゆみ,中原早苗
写真
「タナカヒロシのすべて」
監督:田中誠
鳥肌実、ユンソナ
写真
「さゞなみ」
監督:長尾直樹
唯野未歩子,豊川悦司,松坂慶子
写真
「妹」
監督:藤田敏八
秋吉久美子、林隆三
写真
「ヘッドライト」
監督:アンリ・ベルヌイユ
フランス
写真
「フィッシュ・タンク」
監督:アンドレア・アーノルド
イギリス
写真
「トゥルー・ヌーン」
監督:ノシール・サイードフ
タジキスタン
写真
「カリフォルニア・ドールズ」
監督:ロバート・アルドリッチ
アメリカ
写真
「第七天国」
監督:フランク・ボーゼージ
アメリカ
写真
「母と娘」
監督:ロリー・ビー・キントス
フィリピン


6年前の10月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年10月 Archive>

写真
「ツィゴイネルワイゼン」
監督:鈴木清順
原田芳雄、大谷直子
写真
「白昼堂々」
監督:野村芳太郎
渥美清、倍賞千恵子
写真
「雨の中の二人」
監督:桜井秀雄
田村正和、中村晃子
写真
「台所太平記」
監督:豊田四郎
森繁久彌,淡島千景,ほか女優多数
写真
「ある日、突然。」
監督:ディエゴ・レルマン
アルゼンチン
写真
「キャラメル」
監督:ナディーン・ラバキー
レバノン
写真
「旅立ちの汽笛」
監督:A・アブディカリコフ
フランス・キルギス
「戦争のない20日間」
監督:アレクセイ・ゲルマン
ソ連
写真
「テハンノで売春していて
バラバラ殺人にあった女子高生
まだテハンノにいる」
|韓国
写真
「都市の夏」
監督:ヴィム・ヴェンダース
西ドイツ
写真
「ワンダーランド駅で」
監督:B・アンダーソン
アメリカ
写真
「クリチバ 0℃」
監督:エロイ・P・フェへイラ
ブラジル
写真
「明りを灯す人」
監督:アクタン・A・クバト
キルギス
写真
「再会の食卓」
監督:ワン・チュアンアン
中国
写真
「アイ・ラブ・北京」
監督:ニン・イン
中国
写真
「仁義」|フランス
監督:ジャン=ピエール
        ・メルヴィル
写真
「いぬ」|フランス
監督:ジャン=ピエール
        ・メルヴィル




映画「ブロンクス物語 愛につつまれた街」 監督:ロバート・デ・ニーロ

写真
「犯人は誰だ」 幼いカロジェロが目撃証人となった。みな、街のギャングだ。
犯人である組のボス、ソニーは目の前にいる。横で父親はハラハラする。



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カロジェロ9歳














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この金は誰から貰った?と父は問う
     
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カロジェロはボスから目をかけられ、
賭博場のサイコロ振りで小遣いをもらう。

 ニューヨークはマンハッタン北辺の、ハーレム川の向こう、そこはブロンクス。
 時は1960年代。ブロンクスの、その一区画は当時イタリア系暴力団が支配する街だった。
 これは、この街に生まれ育った少年の成長を綴るお話。そして、人種差別の偏見を越えたラブストーリー。

 少年・カロジェロと両親が暮らす家は、通りに面した3階建ての3階。
 そして隣りの店は、街のギャングの溜まり場だ。地下室は賭博の場になっていた。
 こんな環境は、自ずと9歳のカロジェロに「街のスター」である、組のボスや組員たちへの好奇心や憧れをすり込んだ。

1-0_201710281144562a0.jpg 組のボス、ソニー(チャズ・パルミンテリ、本作の脚本を書いている)は、街の住人から表向き尊敬されつつも、人々を恐怖心で支配していた。
 一方、ソニーは気に入った人間には気配りする男。教養は無いものの、人生哲学を持っていて、刑務所では難しい本を読んでいたらしい。

 ある日、カロジェロは家の前にいて、ソニーが男を射殺する現場を目撃する。
 その直後、その現場で、駆け付けた刑事は容疑者たちを集め、幼いカロジェロを目撃証人にして犯人識別を始めた。

 通りに幾人かの人の目があったはずなのに、警察に対しカロジェロを目撃証人とした、街の人々。それでいて、事の行方は面白そうだと様子をうかがう街の野次馬。

 そんな人だかりの中、息子から事件の様子を既に聞いていた父親・ロレンツォ(ロバート・デ・ニーロ)は、息子がソニーを犯人と言わないかと気を揉んだ。だが、カロジェロは「ここに犯人はいない」と言った。
2-00_201710281202044d9.jpg この時からカロジェロが17歳になるまで、ソニーとは親子のような関係が続いた。(映画は主に、このふたりの様子を描いていく)

 ソニーは何かとカロジェロに便宜を払い可愛がった。だがカロジェロは悪の道へは行かなかった。
 それはソニーがカロジェロを、自分のような道に行かせたくなかったこと(つまりソニーのカロジェロへの恩返し)、くわえて正義感ある父親・ロレンツォの存在があったからこそだった。

 黒人女性ジェーン(タラル・ヒックス)との出会い。人種を越えた愛。
 ロレンツォは、ブロンクスを巡るスクールバスの運転手だ。
 高校生になったカロジェロ17歳は、父親が運転するバスに乗っていた時、同じ高校に通うジェーンに一目惚れしてしまう。ジェーンの方もそうだった。

 だが同じブロンクスでも、カロジェロが住む一画はイタリア人の街、ジェーンが住む街は黒人街。ふたつの街はいつもいがみ合っていた。ふたりの間に壁は無くても、ふたりの周囲はそうではなかった。
 イタリア人地区を通り過ぎようとする黒人たちが襲われることもしばしばであった。しかしカロジェロはこれには加わらない。どうして彼らを虐めるのかと。
 そんな街の雰囲気のなか、カロジェロが黒人女性と付き合うことは非難の的だった。
 悩んだカロジェロは父親に話すが、正義感ある父親ではあったが、反対した。
 ソニーにも話した。彼は反対しなかった上に、付き合うに値する女性かを判断する方法を教えてくれた。

 カロジェロの幼なじみの連中は、街の不良になっていた。ソニーはカロジェロに、あんな奴らに近づくなといつも言われるが、長年の付き合いもある。カロジェロは、彼らとつるむ時はつるんでいた。

 ある夜、彼らは車に乗って黒人街へ行き、拳銃と火炎瓶で一軒の店を襲撃した。
 彼らの襲撃は成功したかにみえたが、投げた火炎瓶を1人の黒人が投げ返し、彼らの車は炎上、彼ら全員が焼死した。
 
 実は、この事件の直前、彼らに誘われたカロジェロも、これから襲撃しようとする車に悶々としながらも乗っていた。
 その様子を見かけたのか、走る車にソニーの車が近づき、ソニーはカロジェロに降りろと命令した。
 そしていつもの小言、こいつらに近づくな。そしてカロジェロはソニーの車に乗せられ、その場を去ったのだ。結果、カロジェロはソニーのおかげで命拾いをした。

3-1_201710281215259e6.jpg ソニーが死んだ。
 かつて父親をソニーに殺された男が、ソニーを撃ったのだ。即死であった。
 葬儀に加わったカロジェロは、ソニーの手下たちの誰もが悲しまずにいることを、冷めた目で眺めていた。
 カロジェロは、葬儀が終わっても、棺の前にひとりいた。そして、眠るソニーに言った。「これからもジェーンと付き合っていくよ」 

 警察に嘘をつき悪者ソニーを救ったカロジェロの心の迷いに注目してください。
 父親はカロジェロに「大人になれば分かる」と言うが、これじゃ子供には分からないですね。それと脚本上、父親の存在が薄い。
 カロジェロがサイコロを振って、もらった多額の金をソニーに返すと父親が妻に言うシーン、稼ぎのいい仕事を紹介するとソニーから言われたが断ったと妻に言うシーン、この時、妻は残念がります。妻は正義より現実主義者のようで、可笑しいです。

 ちなみに映画では、40曲ほどの1960年代のポップスが流れています。シナトラやビートルズやボブ・ディランも聴こえてきます。
 曲は、場面に合わせて白人ポップスと黒人ポップスを使い分けています。例えば黒人街のシーンでは例えばジェームズ・ブラウンのソウルが流れます。
 カロジェロの父はスクールバスを運転しながらジャズを聴いてます。でも17歳のカロジェロはジャズが嫌いです。
 カロジェロの幼なじみは、黒人ポップスのドゥーワップを嫌っています。

 映画のサウンドトラック曲目リスト:http://www.imdb.com/title/tt0106489/soundtrack

下 12 左端オリジナルタイトル:A Bronx Tale|
監督:ロバート・デ・ニーロ|アメリカ|1994年|121分|
脚本:チャズ・パルミンテリ|撮影:レイナルド・ヴィラロボス|
出演:カロジェロ・アネロ(リロ・ブランカート・ジュニア)|ロレンツォ・アネロ(ロバート・デ・ニーロ)|ソニー(チャズ・パルミンテリ)|
カーマイン(ジョー・ペシ)|9歳のカロジェロ(フランシス・キャプラ)|ジェーン・ウィリアムズ(タラル・ヒックス)|ロジーナ・アネロ(キャスリン・ナルドゥッチ)|ジミー(クレム・カセルタ)|エディ(エディ・モンタナーロ)|ジョジョ(フレッド・フィッシャー)|

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映画「青空娘」 主演:若尾文子  監督:増村保造

下






1-00_201710260754521ec.png





















 いい映画ですね。
 娯楽映画の喜劇をベースにした、継子(ままこ)いじめと、まだ見ぬ実母を探す話。
 そして、

 この物語の中、主人公・小野有子18歳(若尾文子)は、苦境をはねのけ、青空の下、爽やかに駆け抜けて行きます。


 喜劇的な役回りは、有子が卒業した女子高の恩師で独身の二見先生(菅原謙二)、有子に一目惚れするお坊ちゃん青年の広岡(川崎敬三)、有子の実父小野栄一の大邸宅の女中・八重(ミヤコ蝶々)、そしてちょい役ですが、穏やかな広岡の母親(東山千栄子)や、気っぷのいいキャバレーの女支配人(清川玉枝)。
 これに対し、有子を虐める悪役は、小野の正妻・達子(沢村貞子)にその長女照子。

 そもそも、有子の不幸のもとは、父親の小野栄一(信欣三)だ。
 栄一は今は大手町にある会社の社長だが、若いころ、職場の女性と恋愛し、有子が生まれた。しかし、これは不倫であった。
 それまでに栄一は、上司の役員に押し切られて、その娘・達子(沢村貞子)と結婚していた。だが結婚当初から栄一は、達子に愛を感じることはなかった。

2-0_20171025103255905.png 有子は生まれてすぐに、伊豆の海近い、母親の実家に預けられた。そして母・三村町子(三宅邦子)は姿を消す。
 それから18年後、祖母に育てられ高校を卒業した有子は、父親の招きで、東京にある父親の自宅で暮らすことになっていた。
 その直前、祖母が他界。祖母は死に際に、東京の母は実の母ではないと有子に告げた。
 次女の有子はこれまで、兄姉そして弟の4人のうち、自分だけが伊豆にいることに疑問を持ってはいたが、誰もそのわけを言う者はいなかったし、有子も深くは考えて来なかった。

 そして、高校を卒業した有子は東京へ。
 しかし、大邸宅で有子を待っていたのは正妻・達子の冷たい仕打ちだった。
 つまり、次の女中が見つかるまでは(というレトリックで)、その日から、有子は女中としてこの家に住むことになった。なんと彼女にあてがわれた一室は階段下の納戸であった。(まるでハリー・ポッターのようだ)
 有子を不憫に思うのは、この家の古女中の八重(ミヤコ蝶々)、八重は有子を暖かく、面白おかしく励ます。

 そこへ父親が出張先から帰宅。有子との再会を喜ぶ間もなく、父親は、妻・達子の有子に対する待遇に驚き、冷たく短い夫婦喧嘩。
 そして父親が折れた。それから達子へ愚痴。有子を呼ぶことについて、あんなに何度も、頭を下げて頼んだのに、この様か。
 しかし、有子は歳に似合わず大人の対応であった。つまり、女中として同居することに異を唱えなかった。八重は有子に、女中仕事を教え始め、有子は積極的に女中であろうとした。

3-0_2017102510491822e.jpg そんなある日、さる会社社長の御曹司である広岡(川崎敬三)が、この家に現れる。広岡は、長女の照子が招いた遊び仲間のひとりで、照子は彼を好いていた。(照子も社長令嬢だ)
 しかし、広岡は女中の有子に一目ぼれしてしまう。このことから、照子はそれまで以上に有子を憎むようになるし、母・達子も同様だった。

 そんなこんなで、自宅で有子とゆっくり話せない父親は、彼女を会社に呼んだ。
 有子は父親から、実母とのいきさつを初めて聞き、母の写真を見せられた。初めて見る、私のお母さん。

 女中であろうとした有子だったが、正妻・達子と照子の虐めに耐えかねて、ついに伊豆へ帰ってしまう。
 煮え切らぬ父親と、有子を愛する広岡、そして不憫に思う女中・八重は、有子を案じる以外に手の打ちようはなかった。

 
 ここから話は急展開。
 帰郷した有子に、叔母が言った。つい先日、お前の母親が訪ねてきたと。私のお母さんは生きている。東京にいるらしいことが分かる。
 東京に戻った有子は、恩師・二見先生(菅原謙二)に会う。(有子の卒業後、先生は教師を辞め、東京の広告制作プロダクションのデザイナーになっていたのだ)

5_2017102511323909e.png 教え子恩師の一線を越えて密かに有子を愛する二見先生と、結婚を前提に付き合いたいと公言する広岡の二人は、有子の母親探しに協力する。
 そして、有子は母親の三村町子(三宅邦子)に会えたのであった。

 
 喜劇と悲劇で挟んだ「王子様との恋」サンドイッチをお楽しみください。 
 くわえて、映画が語る物語の展開に沿って、映像が実に的確で分かりやすい表現をしていることに注目してほしい。
 有子を実家に預けた母は悲しみを抱き満州へ、そして現地で結婚。これは、戦前、たぶん昭和14、15年ごろ。中国東北部に満州国という日本の傀儡政権があったころ。母は戦後、帰国し二見先生の勤務先の雑居ビルの掃除婦をしていた。

監督:増村保造|1957年|88分|
原作:源氏鶏太|脚色:白坂依志夫|撮影:高橋通夫|
出演:小野有子(若尾文子)|有子が通った高校の恩師・二見桂吉(菅原謙二)|有子に一目惚れした広岡良輔(川崎敬三)|その母親・広岡静江(東山千栄子)|有子の実父・小野栄一(信欣三)|その正妻・小野達子(沢村貞子)|その長女・小野照子(穂高のり子)|同じくその長男・小野正治(品川隆二)|同じくその次男・小野弘志(岩垂幸彦)|有子の実母・三村町子(三宅邦子)|小野家の女中・八重(ミヤコ蝶々)|小野家に出入りする魚屋・哲五郎(南都雄二)|有子のお婆さん(滝花久子)|有子の友人・信子の叔母でキャバレーの支配人(清川玉枝)|
6-2.png
有子の部屋は、階段下の納戸
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女中であろうとする有子
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ブルジョアは鯛、私らはイカ
     
6-4.png
有子を諦める二見先生
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失恋乾杯に付き合う女支配人
6-6.jpg
広岡と始まる新しい人生


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上2
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映画「シークレット・サンシャイン」 監督:イ・チャンドン

上2

 
 とても良く出来た、いい映画です。
 脚本も演出も女優チョン・ドヨンの演技も、どれもが素晴らしい出来。

1-0_2017102214411826c.jpg ですが、テーマは実に重いです。(ここで引いても結構)
 家族愛、夫との死別、誘拐犯による息子の死、神の愛・救い(信仰の喜び)と癒えぬ心、救われぬ信仰、自殺未遂、救いのないその先。

 映画は、総じては安易な表現(例えば劇画的な)にならず、リアルでていねいな描写に徹しています。
 もう少し言えば、登場人物のその場の様を、セリフに頼らず上手に感情表現し、映像表現しています。 
 主人公のみならず脇役たちについても、いるいるそんな人がというように活き活きと描かれ、映画の中で息づいています。
 
 未亡人シネ(チョン・ドヨン)は一人息子のジュンを連れ、ソウルから密陽(ミリャン)に引っ越してきた。
 港町プサンから北へ入ったこの小さな街は、亡夫の故郷であった。シネは、母子の人生の再出発を、夫が愛したこの街に託したのだった。

 シネは、ものをストレートに言う女で勝気。夫の親・親戚と、またシネの唯一の肉親である実弟とも疎遠なのは、彼女のそういう性格がそうしているのかもしれない。

 シネは商店街にある住宅付き店舗でピアノ教室を始めた。
 ソウルという大都会から来たそんな未亡人シネに、田舎街の人々の視線が集まるのは当然だった。

 シネは、同じ商店街で自動車修理店を開くキムという独身男性(ソン・ガンホ)と知り合いになる。キムは下心を抑えながら、新参者のシネの面倒を親切にみてやり始める。
 そんな中、シネは、郊外の土地を買う不動産投資の姿勢をキムに見せ始める。キムはさっそく彼の人脈で不動産屋を紹介した。
 しかし実は、シネにそんな金はない。街の人々の、未亡人母子へ向けての好奇心や哀れみを強く感じるシネは、持ち前の勝気さから、こんな虚勢を張ったのだ。

2-0_201710221443474a5.png だが、未亡人が金を持っているという噂は、男の心に悪を呼び込む。(これが息子ジュンの誘拐、身代金要求につながってしまう)

 シネは身代金を指定場所に置き、警察が動き出し、そして無情にも、シネは息子ジュンの死に遭遇する。(誘拐犯がジュンを殺してしまった)

 一方、シネに哀れみを感じた信者たちは、彼女にクリスチャン信仰を勧めた。
 その時、シネは言った、「なぜ神はジュンの命を奪ったの」

 子を失ったシネの悲しみは、絶望の域を超え耐えがたきものだった。
 張り裂ける心を抱えるシネは、すがるように救いを求めて、ついに教会の扉を開けた。

 従順な信者になったシネは、神のあふれる愛を感じ始める。教会での礼拝、布教活動、地域集会に加わることで、語り合える友もでき、シネはやっと心の安定を得られるようになる。心は癒され幸せであった。
 しかし、家でひとりポツンといる時、シネはジュンの気配を感じ、聞こえるはずのないジュンの声を聞くのであった。

 シネの信仰が深まるなか、彼女は、「汝(なんじ)の敵を愛し許せ」という神の言葉通りに、誘拐殺人犯の男を許そうと思うと信者仲間に打ち明ける。
 自動車修理店のキムは、シネが刑務所で男と面会しようとするのを止める。牧師は「あなたが刑務所に行くとき、神はともにいます」と言った。信者に付き添われ、キムの運転で、シネは刑務所へ向かい、男と面会する。

03-.png 「神の恩寵と愛を伝えるために、私はここへ来ました」
 これに対し男は言った。
 「神は、この罪深き罪人にも訪れました。私の罪を許したのです」
 「えっ、神が・・・罪を許したですって?」
 「そして、心の平安が訪れました、あなたのためにも私は祈ります」

 なんというすっきりした男の笑顔!男は刑務所内で信者になっていたのだった。
 シネの動揺はあまりに強烈であった。刑務所の駐車場で彼女は気を失い倒れてしまった。
 家に戻ったシネは狂気のさた、信者集会所のガラス窓に石を投げつけ、そのあと家で手首を切って自殺を図り、血まみれで前の道にさ迷い出て、精神病棟に入院。
 
 なぜにシネは・・・。
 退院後、信者の集まりでシネは吐くように言う。
 「汝の敵を愛し許せと神は言うが、許したくても、私は許せない。
  男は、もう神に許されて、心やすらかだって言った。
  私が男を許す前に、なぜ神は許したの?
  私が苦しんでいる時に、あの男はすでに許され、救われていたわ。
  なぜ、そんなことが!」

 その後のシネは、まるで抜け殻の様だった。

 韓国の人口の約3割がキリスト教徒で、キリスト教が最大勢力の宗教らしい。
 シネとの出会いから、ここまで、キムはずっとシネを案じている。このキムという男にも注目してください。
 ちなみに、タイトル名「シークレット・サンシャイン」は、シネが住み始めた街・「密陽」の「密」をシークレット、「陽」をサンシャインと読んで名付けたと、トークショーで監督が言っていた。


オリジナルタイトル:밀양(ミリャン)|密陽 Secret Sunshine|
監督:イ・チャンドン|韓国|2007年|142分|
原作:イ・チョンジュン|脚本:イ・チャンドン|
出演:イ・シネ(チョン・ドヨン)|キム・ジョンチャン(ソン・ガンホ)|ジュンが通う塾の教師・誘拐殺人犯(チョ・ヨンジン)|シネの弟・ミンギ(キム・ヨンジェ)|シネの一人息子ジュン(ソン・ジョンヨプ)|犯人の娘チョンア(ソン・ミリム)|薬局の女性キム執事(キム・ミヒャン)|カン長老(イ・ユンヒ)|シン社長(キム・ジョンス)|洋品店の女主人(キム・ミギョン)|牧師(オ・マンソク)|

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映画「ピンク・キャデラック」(1989年) 監督:バディ・ヴァン・ホーン

下


下4

 ご存知、ハリウッド映画俳優クリント・イーストウッド主演の映画。
 ですが、相手役の女性ルーを演じる女優バーナデット・ピータースが光ります。

1-0_20171020151830618.jpg この小柄な女優は、特にミュージカル女優として有名だそうですが、この映画で演ずるルーという女は、見るからに貧相。そしてノータリンで弱弱しい。
 しかし、そのルーのおバカさ、行てまえ(やっちまえ)的無謀さが、映画をコメディーにしています。そして、ルーに振り回される、クリント・イーストウッド演ずるトム。

 トムは離婚して独身。仕事は、保釈金が払えない人間に代わって保釈金を立替負担する会社の下請け。
 つまり、この会社が立替えた金を「払わない」踏み倒し人間を見つけ出して、身柄を拘束する仕事で、トムはフリーでやっている。

 ルーは偽札所持で逮捕の女。立替金を返済しない人物リストの一人。トムがこの案件を請け負った。
 しかし偽札は実は、家庭内暴力をするルーの夫が、ある組織に属していて、組織がらみの犯罪であることが分かってくる。
 この組織は武装し、白人至上主義を唱えるネオナチ集団。(これがアクションシーンのネタになっている)

 ルーが所持していた偽札以外に、組織は大量の偽札を持っていた。
 夫は組織に言われて、その大量の偽札を自分の車に隠している。この車が夫愛用のピンク・キャデラック。

 一方、ルーは夫に愛想も尽きて顔見りゃ憎らしい状態で家出。赤ん坊を乗せ、このキャデラックで姉の家へ行こうとした。
 でも、なんとしたことか、走るキャデラックから、お札が舞い散っていく! 組織はルーを追う。
 しかし実は、車に積んであった札は・・・。

 あとは観てのお楽しみ。
  
オリジナルタイトル:PINK CADILLAC|
監督:バディ・ヴァン・ホーン|アメリカ|1989年|122分|
脚本:ジョン・エスコウ|撮影:ジャック・N・グリーン|
出演:クリント・イーストウッド(トム・ノワック)|バーナデット・ピータース(ルー・アン・マクグィン)|マイケル・デ・バレス(アレックス)|ジェフリー・ルイス(リッキー・Z)|ティモシー・カーハート(ロイ・マクグィン)|ほか

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2-1_20171020153255d1b.jpg    2-2_20171020153257e4e.png









映画「偉大なるマルグリット」 監督:グザヴィエ・ジャノリ

上

 話は悲劇なのですが、それ以上に喜劇的であります。
 夫の冷めた愛を取り戻したいがために歌う主人公の音痴がとても印象に残りますが、映画が語る本質は悲しい愛の物語なのです。

1-0_20171013211911588.png 時は1920年、フランスの郊外。
 大邸宅に住む貴族の女性マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)は裕福な資産家です。
 夫のジョルジュ・デュモンの爵位は、マルグリットが買いました。
 夫は大きなビジネスをしていますが、その資金はやはり夫人が提供しています。

 ですがマルグリットは、夫に対して金のことで恩着せがましい物言いをすることはありません。
 彼女はまったくの天然の気質で、夫を純粋に愛しています。
 かたや夫は、マルグリットに対し負い目を感じ続けていて、もはや夫の心はマルグリットから離れて久しいのです。
 しかし妻と離婚すれば金は消え失せます。夫は女と不倫をして憂さを晴らしています。

 夫婦に子はなく、夫は仕事で、あるいは浮気で家を空けることも多いようです。
 ですから、マルグリットは大邸宅にひとりいて、寂しいのです。

 マルグリットはクラシック音楽の愛好家です。音楽が彼女の心を慰めます。
 邸宅には彼女のための音楽室があり、ピアノと蓄音機があって多数のSPレコードを集めています。
 マルグリットは歌うことも趣味にしています。歌曲の譜面をたくさん持っています。
2-0_201710132120243e0.jpg インド人の執事マデルボスは彼女の歌にあわせてピアノ伴奏をします。オペラの歌曲を歌うときは、舞台衣装を着て歌います。
 そうです、マルグリットはオペラの舞台衣装や小道具も集めているのです。
 執事のマデルボスはオペラ歌手になり切ったマルグリットを写真撮影します。撮った写真はまるで有名なオペラ歌手のようです。執事はマルグリットの秘め事遊びのお相手をしています。

 でもマルグリットの本当は、歌を歌う妖艶な姿を夫に見てほしいのです。彼女は夫の愛の復活を求めているのでした。
 しかし、そんなマルグリットを、夫は陰でバケモノだと言います。

 なぜなら、マルグリットは大の音痴でした。そのうえ、自分が音痴であることを認識できないのです。彼女は先天的に歌唱能力が欠けている障害を持っているのでした。(詳細下記) 
 ですが、マルグリットは戦災孤児救済などのために、邸宅内でオーケストラ付の慈善コンサートを幾度も催します。
 観客は親しい貴族たちです。彼らはマルグリットの奇声に未だに慣れていません。ですが演奏が終わると誰もが笑顔で彼女を褒め称えます。
 夫の気遣いは計り知れません。邸宅内でひとり歌うのであれば、その時どんな舞台衣装を着ようが、夫は黙認しています。
 しかしコンサートを催す度に、夫の心は悲しいことに、ますますマルグリットから離れていくのです。

2-1_201710132122023ff.png そんなある日の邸宅内コンサートに、新聞記者と前衛的な挿絵画家、この二人の若者が密かに忍び込みます。
 そして彼らはマルグリットの圧倒的奇声に遭遇しぶったまげるわけです。特に画家は彼女を絶賛します。そして新聞記事になりました。
 つまり、夫が関係者に口外禁止にしていたマルグリットの奇声が、世間にばれてしまいました。

 さて、このシーンを導入に、映画はマルグリットの奔放さを語り始めます。
 挿絵画家はモンパルナスあたりの芸術家たち自由人の一人なのでしょうか、前衛急進的な反体制派の男です。
 この画家に誘われるままに、彼女は夜の街でジャズが流れる当時最先端のとんがった店で踊ります。(マルグリットの音楽的感性 下記)
 1人で夜の街にいること自体が初体験のマルグリットは、大いに開放感を味わいます。一人遊びに飽いたもう一人のマルグリットなのでしょうか。

2-2_20171013212350e40.png 画家が主催するアバンギャルドな催しに、マルグリットが出演し店は大騒動になり、その内容が反体制的であったことから、画家もマルグリットも警察に連行されてしまいます。世間は彼女のことをますます知ることになりました。
 画家はマルグリットに歌の先生を紹介します。そして、マルグリットは大劇場でリサイタルを開くことになります・・。

 話は飛んで、物語の結末は精神病棟でした。そこで何が行われようとするのか・・・これも観てのお楽しみ、いや悲しみましょう。 
 マルグリットを本当に思いやるのは、マルグリットの生きざまをフィルムに収めることに執心する執事と、皮肉なことに夫の不倫相手の女だけでした。

 観終わって残念なことは、脚本上、マルグリットの夫の人物描写が弱いこと。
 音痴の歌手というヒントは実話から得たようです。その人物とはアメリカのソプラノ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンス(1868-1944)という女性。歌唱能力が完全に欠落していたそうです。現在でもこの歌手のCDがあります。
 参考wikipediaサイト https://ja.wikipedia.org/wiki/フローレンス・フォスター・ジェンキンス
 なお、メリル・ストリープ主演映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」(2016年)は未見。

 ★先天性失音楽症による歌唱能力の欠如とは 参考サイト 「脳の活動によって音から音楽になる」 
  http://music-specialty.com/musicology/brain-activity.html

 ★マルグリットの音楽的感性について
  歌唱能力欠如のマルグリットですが、音楽を聴く感性は鋭いようです。
  画家に紹介されて彼女はひとりで前衛オペラ「道化師」を見に行き、いたく感銘を受けます。
  ちなみにこの音楽会会場にはプロのサクラ手配師がいて10人のサクラが拍手やブラボーを叫んでいます。
  「現代歌曲は人気がないので」と言う小人症の手配師の言が印象的です。
 
オリジナルタイトル:MARGUERITE|
監督:グザヴィエ・ジャノリ|フランス|2015年|129分|
脚本・脚色:グザヴィエ・ジャノリ|脚本協力:マルシア・ロマーノ|撮影:グリン・スピーカート|
出演:マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)|ジョルジュ・デュモン(アンドレ・マルコン)|アトスペッジーニ(ミシェル・フォー)|アゼル(クリスタ・テレ)|マデルボス(デニス・ムプンガ)|リュシアンボーモン(シルヴァン・デュエード)|キルフォンプリースト(オベール・フェノワ)|フェリシテ(ソフィア・ルブット)|ディエゴ(テオ・チョルビ)|ほか

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クラシック音楽    ポピュラー音楽   

1年前・3年前・5年前の10月、一夜一話。(2016年10月・2014年10月・2012年10月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-10-15 Sun 06:00:00
  • 映画
1年前の10月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年10月 Archive>

写真
「パラダイスビュー」
監督:高嶺剛
小林薫、戸川純
写真
「鶴八鶴次郎」
監督:成瀬巳喜男
山田五十鈴、長谷川一夫
写真
「ベニスで恋して」
監督:シルビオ・ソルディーニ
イタリア、スイス
写真
「森浦への道」
監督:イ・マニ
韓国
写真
「フル・フロンタル」
監督:スティーヴン
  ・ソダーバーグ|アメリカ
写真
「リオ、アイラブユー」
~映画音楽に魅せられて
ブラジル
写真
「セントラル・ステーション」
監督:ウォルター・サレス
ブラジル
写真
「110番街交差点」
~映画音楽に魅せられて
アメリカ
     
写真
「ある過去の行方」
監督:アスガー・ファルハディ
フランス、イタリア、イラン

3年前の10月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年10月 Archive)

写真
「パンドラの匣」
監督:冨永昌敬 |仲里依紗、
川上未映子、染谷将太
写真
「ヌードの夜」 監督:石井隆
余貴美子、竹中直人、
椎名桔平、根津甚八
写真
「足にさわった女」
監督:市川崑
越路吹雪、池部良
写真
「揮発性の女」
監督:熊切和嘉
石井苗子、澤田俊輔
写真
「怪異談 生きてゐる小平次」
監督:中川信夫
宮下順子
写真
「さすらいの女神たち」
監督:マチュー・アマルリック
フランス
写真
「南東から来た男」
監督:エリセオ・スビエラ
アルゼンチン
写真
「ネブラスカ
   ふたつの心をつなぐ旅」

アメリカ
写真
「ショーシャンクの空に」
監督:フランク・ダラボン
アメリカ
写真
「グッド・ウィル
  ・ハンティング 旅立ち」

アメリカ
「キムチを売る女」
監督:チャン・リュル
韓国・中国

5年前の10月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の10月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年10月 Archive)

写真
「クワイエットルームに
        ようこそ」

内田有紀,宮藤官九郎,蒼井優
写真
「水の女」
監督:杉森秀則
UA、浅野忠信
写真
「オキナワの少年」
監督:新城卓
藤川一歩、内藤剛志
写真
「スリー☆ポイント」
監督:山本政志
村上淳、蒼井そら
写真
「ポストマン・ブルース」
監督:SABU
堤真一、遠山景織子
写真
「夏の妹」
監督:大島渚
栗田ひろみ、りりィ
写真
「パプリカ」
監督:今敏
アニメ
写真
「ディナーラッシュ」
監督:ボブ・ジラルディ
アメリカ
写真
「父の初七日」
監督:ワン・ユーリンほか
台湾
写真
「アンナ」
監督:ピエール・コラルニック
フランス
写真
「潜水服は蝶の夢を見る」
監督:ジュリアン
  ・シュナーベル|フランス
写真
「きらめきの季節 美麗時光」
監督:チャン・ツォーチ
台湾
写真
「ラスベガスをやっつけろ」
監督:テリー・ギリアム
アメリカ
写真
「銀河」
監督:ルイス・ブニュエル
フランス


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映画「女と男のいる舗道」 監督:ジャン=リュック・ゴダール

上


1-0_20171010213421399.jpg ナナを演じる女優アンナ・カリーナが、映画全編84分間、ずっと出ずっぱりの映画です。
 総じてセリフの少ない中、加えてあっさりした演出のもと、アンナ・カリーナの存在の味が、この映画のイメージを決定しています。
 カメラは、いつもアンナ・カリーナに寄り添いながらも、彼女の存在感に頼ることなく、素晴らしい撮影を実現しています。
 スチールカメラ撮影での、しっかりした構図力が基本にないと、こういう映像は撮れないように思います。(他にあるようで、なかなか無いものです)

 舞台はパリ。子持ちのナナは子を置いて離婚し、女優を目指すが現実はレコードショップの店員をして、しがない独り身人生を送っている。しかし、パリでの生活には薄給のナナは、娼婦の道を歩むことになります。

 映画は12の章で成り立っています。
 ストーリーは12章を通して展開されますが、各章はそれぞれに異なるモチーフを持って語ります。
 全編を終始一本の話で描く映画では、時に、どこかに冗長なシーンが入りがちですが、本作の作りはそういうことが入る隙はなく、緻密さが印象に残ります。
 
 2階のビリヤード場で、ジュークボックスから流れるロックンロールで、ひとり踊るナナのシーンがいいです。
 話は悲しい話ですが、重く暗くならずドライ。映像はとてもスタイリッシュ。
 ゴダールの作だからと、かたく構えず肩の力を抜いて自分の目で楽しく観ましょう。
 

オリジナル・タイトル:Vivre sa vie: Film en douze tableaux|自分の人生を生きる、12のタブローに描かれた映画|
監督:ジャン=リュック・ゴダール|フランス|1962年|84分|
原作:マルセル・サコット|脚本:ジャン=リュック・ゴダール|撮影:ラウール・クタール|音楽:ミシェル・ルグラン|
出演:ナナ(アンナ・カリーナ)|ラウール(サディ・レボ)|ポール(アンドレ・ラバルト)|イヴェット(ギレーヌ・シュランベルジェ)|ほか

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【 ゴダールの映画 】

いままでに取り上げた作品です。画像をクリックしてお読みください。
写真
「アルファヴィル」
写真
「勝手にしやがれ」
写真
「小さな兵隊」

映画「ラスト・ショー」  監督:ピーター・ボグダノヴィッチ

上
ソニー、デュアンとジェイシー


 1951年、アメリカはテキサス、白人だけのさびれた小さな田舎町。
 映画は、この町に住む高校生たちの恋、友情を描くとともに、高校を卒業し社会へ出ていく道筋の、それぞれの選択を見守って描いています。

1-0_20171009135756d7d.jpg その町は、町と言えるほどの町じゃない。
 広い道路の両側にところどころに店があるだけ。
 ハンバーガーにコーヒー等わずかなメニューしかないレストラン、いや食堂、小さなビリヤードの店、そのほかに開いている店舗はガソリンスタンドに薬局くらい。閉館を迎えそうな映画館はある。

 この町で、高校生ソニーが相当にくたびれたボロ車に乗り込んで映画は始まる。
 町の広い道路の真ん中で、無心にホウキで道を掃くビリーは、知的障害のある少年で、ソニーは何かと彼の面倒を見てやっている。
 中年の男サムは食堂とビリヤード場のあるじ、この辺りじゃ皆から一目置かれる男で、気が合うのか、ソニーとビリーの世話を親代わりのようにしている。
 食堂を一人で切り盛りする中年女性は、後で分かるがサムの昔の恋人、彼女に町の情報が集まる。

2-0_20171009135925594.jpg 映画館は、唯一の娯楽の場で、高校生たちは友達同士やデートに使っている。ビリーも常連だ。
 そして、この地域には油田があって掘り当てた人間は金持ちだ。人々の間に貧富の差がある。

 映画はこんな設定を背景に、ソニーとその同級生たちの様子を語ります。
 ソニーの友達デュアンは高校一の美人ジェイシーと付き合っている。
 ジェイシーの家は油田で裕福。母親は娘の彼氏が誰かを気にする。貧乏な家のデュアンじゃなく、油田開発で当てた家の、金持ちの彼氏にしなさいと言う。
 この母親は結構さばけた女で、あからさまに娘に注意忠告する内容が、娘の行動を左右し、結果、物語の先行きを変えていく。そして、デュアンの未練は後を引く。

 ジェイシーに突然ふられたデュアンは、高校卒業後、町を離れ油田の現場で働く。貯めた金で車を買う。それはジェイシーの気を引こうとするかのようだった。

3-0 ソニーは高校時代の彼女と別れ、サムのビリヤード場で働いている。町を離れたデュアンは、ジェイシーがソニーと付き合いださないか気にしているようだ。
 だが、ソニーはふとした切っ掛けで中年の女と関係を持つようになる。
 そんな頃、気まぐれなジェイシーはソニーに近づき始めるが・・。

 小さな町の男女の関係を映画は見せていくが、どこかうら悲しい。
 そして、サムの突然の死。彼の遺言でソニーはビリヤード店をもらうことになる。
 ジェイシーは朝鮮戦争の戦線へ。ビリーは交通事故死。


 印象に残るのは、高校生の青春よりも、ジェイシーの気まぐれを繰るかのようなジェイシーの母親、ソニーが付き合う年上の女、サムの昔の恋人で食堂の女の3人かもしれない。
 
4-0






オリジナルタイトル:The Last Picture Show|
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ|アメリカ|1971年|118分|
原作:ラリー・マクマートリー|脚色:ラリー・マクマートリー 、 ピーター・ボグダノヴィッチ|撮影:ロバート・サーティース|
出演:ソニー(ティモシー・ボトムズ)|デュアン(ジェフ・ブリッジス)|ジェイシー(シビル・シェパード)|サム(ベン・ジョンソン)|ルース(クロリス・リーチマン)|ビリー(サム・ボトムズ)|ジェイシーの母・ロイス(エレン・バースティン)|ほか




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映画「薔薇大名」 監督:池広一夫

下
月太郎の婚約者・お小夜と、横恋慕のスリ師・お京。
だが、この男、月太郎じゃなく、実は奥州棚倉藩の若君・小笠原左馬之助であった。


 時代劇です。陽気でおバカな喜劇話です。
 大名行列など冗長なシーンは早回しで観せますし、悲しいシーンも含め音楽はユーモラスなジャズ風。
 でも、ストーリーは凝っています。

 「薔薇大名」の「薔薇」の意は、若君の腕に薔薇のようなアザがあるからで、他意はない。
 私は池広一夫というこの監督の映画が好きで、本作は監督の第一作目らしい。
 1シーンだけの特別出演で市川雷蔵が突然出てくるが、ほかは主役も含め、一般的には余り知名度がない俳優ばかり。
 でも今となっては、これがかえって新鮮でいい! 

1-1_20171006115730085.png 話は、ある藩の若君・左馬之助と、曲芸一座の芸人・月太郎の、その姿かたちがソックリであったことから始まる。
 そして、月太郎に恋する、同じ一座の芸人娘・お小夜と、月太郎に横恋慕のスリ稼業の女、この2人の女が話に花を添える。
 さらには、若君/月太郎、この瓜二つの2人の立場が入れ替わった事が、つまり偽・若君が、結局は、若君の藩の内紛を解決することになるという、藩をあげての大騒動に発展する。
 では、若君と町人の月太郎がなぜ入れ替わったのか?

2-1_201710061159044fc.png

 密かに江戸市中に滞在する小笠原左馬之助(小林勝彦)は、実は奥州棚倉藩(福島県)の若君。
 その棚倉藩では、城主の跡目争いという陰湿な内紛が起きていた。
 現城主(左馬之助の父親)は、悪者家老の指図で長期間に渡り藩医から毒を盛られ衰弱していた。
 家老は城主と若君を暗殺し、家老派の新たな城主をうちたてようと企んでいるのだ。
 これに気づいた左馬之助はひとり江戸に出て急ぎ毒薬の勉強をし、藩医が薬と称する毒薬の証拠を握ろうとしていた。
 しかし、左馬之助が国元から突然姿を消した事とそのわけは極秘であり、父親はじめ藩の誰もが知らぬことであった。
 だが、家老は若君が江戸にいることを嗅ぎつけ、暗殺団を江戸へ送り、若君は切られて大川に落ちた。

3-0_20171006120128172.png 一方、そんなことなど知る由もない城主派の侍たちも、若君を探しに江戸に来ていた。
 城主の寿命があとわずか、一刻も早く若君を見つけ出し、国元へ帰ってもらわないと、家老派の思うがままになってしまう。わが藩、存亡の危機。
 そんなある日の江戸市中、城主派の侍が月太郎(小林勝彦)を見かける、あ!若君だ! いや、人違いだ!俺は月太郎だ! 
 結局、月太郎は城主派に拘束されるが、彼の腕に若君の証拠の「薔薇」のアザがないことが分かり、今度は若君に化けて身代わりで国元へ行ってくれと懇願される。
 このお礼は100両という多額で、月太郎は婚約者の病父の薬代を思い、大役を引き受け、大名駕籠に乗せられて、侍たちと国元の奥州棚倉藩(福島県)へ。

 さらに一方、そんなことなど知る由もない、月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)。
 突如姿を消した月太郎から奥州棚倉へ行くとだけ知らされたお小夜は、一座の座長を説き伏せ、一座の面々とともに棚倉へ巡業の旅に出る手はずとなった。
 そんな時に、月太郎がお小夜の前に現れた。ずぶ濡れで傷を負っていた。どうしたの!
 優しく介抱された左馬之助だが、知らぬ町人に自分が誰かも言えず、なりゆきで月太郎を演ずることとなる。
 お小夜は左馬之助を月太郎だと疑いすらしない。(左馬之助は侍言葉で話すんだけどね) お小夜は「いつまで芝居の真似をしてるのよ」てな感じ。(喜劇ですから)

5 -0 しかし、一座の棚倉への巡業スケジュールはもう変更できず、お小夜と左馬之助と一座全員は旅に出た。
 旅の途中、左馬之助は、本陣(大名専用の宿)の準備の様子や、街道を駆け抜ける早馬から、胸騒ぎを覚える。
 その夜、旅籠の一室で左馬之助はお小夜に抱いてと迫られ、左馬之助はおおいに戸惑う。

 そこへ、市川雷蔵扮する町人が「いちゃいちゃする声がうるせぇ、宿は貸し切りじゃねぇんだ」と、部屋に飛び込んで来る。
 そして市川雷蔵は左馬之助に向かって、本心をこの女に打ち明けろと言い残して去る。(無理やりの筋書きで可笑しい)
 そこでついに左馬之助はお小夜に、自分は月太郎じゃない、それに月太郎が藩騒動に巻き込まれているらしく、危険だと告げる。
 これを聞いて心配するお小夜に、「この小笠原左馬之助が彼を救える」と言う。お小夜はお願いいたしますと頭を下げた。

 さて、ラスト近く。
 月太郎こと偽若君と城主派一行が、城内に入る。
 また、曲芸一座は城主の招きと偽って、これも城内へ。(若君の計らいだろう) 
 そのうち、偽若君の腕にアザがないことが家老派にばれて一大事。だがそこへ一座が現れる。

7-0.png そおして、時代劇のお約束事、家老一派と城主派のチャンチャンバラバラ。
 若君の武道達人の技、月太郎とお小夜らの曲芸の技が敵をやっつけます。
 加えて、一座の出し物、中に入った人を消す魔法の箪笥や、一座巡業に付いて来た、月太郎に横恋慕のスリ師・お京が大活躍します。めでたしめでたし。


監督:池広一夫(池廣一夫)|1960年|68分|
原作:陣出達朗|脚色:淀川新八|撮影:本田平三|
出演:月太郎、小笠原左馬之助(小林勝彦)|月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)|スリ稼業の女・お京(宮川和子)|ほか多数

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映画「ひつじ村の兄弟」 アイスランド映画 監督:グリームル・ハゥコーナルソン

上


 アイスランドの草原でヒツジを飼育する、仲の悪い兄弟の話。
 映画は、この兄弟の生きざまを、雄大な風景と寒冷地の気候で包み込む。

1-0_20171002092727d46.jpg 兄弟はともに独身で、親から譲り受けた広大な土地に建つ、二軒の家に別れて住んでいる。
 ヒツジ小屋も牧草地も牧羊犬も車も、そのすべてが別々。牧草地の境界線には有刺鉄線の柵がある。

 映画はこの兄弟の弟を中心に話をすすめる。
 それにしても、なぜ40年も、互いにまともな会話をしないで過ごしてきたのか。
 それはどうも相続問題のようだ。
 親は、ヒツジと所有地のすべてを弟に譲ったらしい。そこで優しい弟は、兄のための牧草地とヒツジ、そして古いほうの家を、兄に無償で貸すことにした。
 だが、こういうことのすべてが兄を怒らせ、弟を憎むようになり、よって弟も兄を憎むことになった。


 そんなある日、重大事件が起きる。
 ヒツジの疫病が発覚し、兄弟のヒツジ含め近隣の牧畜農家のヒツジの全部が殺処分の対象となった。
 この地域の人々はみなヒツジの飼育で生活しているのだ。みな困惑した。悩みに悩んで土地を離れる一家も現れる。この先のローンの返済ができないからだ。
 
 強情っ張りの性格は、兄だけでなく大人しそうな弟にも、その血を引いているようだ。
 弟は100頭以上の殺処分を当局に任さず自ら行った。
 なぜなら、殺処分しなかった9頭のヒツジを、獣医当局の監視の目をくぐって家の地下室に隠したのだ。先祖代々のヒツジの血統を守りたいのだ。(このヒツジたちには疫病の様子はないようだ)

 これに気づいた兄は弟に近づいた。兄も、血統を守りたいのだった。
 しかし全頭殺処分の方針を決めた当局がこれを嗅ぎつけた。
 兄弟は9頭のヒツジと牧羊犬を連れて、誰も近づかない冬の山へと向かった。兄弟は初めて力を合わすことになった。
 だが、吹雪のなか、二人はヒツジを見失う。吹雪は容赦なく激しさを増す。
 兄弟は雪穴を掘って中に横たわり、互いに身体を暖め合い、吹雪をやり過ごそうとするのであった。

下

オリジナルタイトル:HRÚTAR|
監督・脚本:グリームル・ハゥコーナルソン|アイスランド、デンマーク|2015年|93分|
撮影:ストゥルラ・ブラント・グロヴレン
出演:グミー(シグルヅル・シグルヨンソン)|キディー(テオドル・ユーリウソン)|当局の獣医カトリン(シャーロッテ・ボーヴィング)|ほか

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映画「お父さんと伊藤さん」 上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也 監督:タナダユキ

上
さすが年の功、伊藤さんは、お父さんのあしらいが上手。

1-0_20170930124809c6c.png
 拍手!脚本が良く出来ていて、演出に抜け目がない。
 息子娘の世代も、父親の世代も楽しめるビターな喜劇。

 話は、妻を亡くした頑固な父親の、たらい回し。
 そんな意固地な父親を持つ息子娘であれば、あるいは、あんな息子娘を持つ父親であれば、こうなる事もある、というこわい話。

 その、あんな息子娘とは。
 長男の潔(長谷川朝晴)と嫁・理々子(安藤聖)の夫婦のところに父親(藤竜也)が同居している。
 夫婦は父親との生活に辟易している。そのうえ、夫婦は中学受験の双子を抱えている。
 特に理々子は義父との関係がもう破綻状態。義父の姿を見るだけで吐き気を催すくらいに精神的に追い詰められている。

 そこで潔は逡巡しながらも、妹の彩(上野樹里)に父親を引き受けてもらいたいと乞うた。
 「未来永劫ってわけじゃない。子供の受験が終わる来年春までの半年でいいんだ」
 切羽詰まった潔は、父親というものは娘と相性がいいという神話にすがったのかもしれない。
 しばらくぶりに会った兄妹だったが、しかし、彩は「ごめん、ほんとにごめん」と断った。
 潔は知らなかった。彩は独り住まいではなかった。伊藤(リリー・フランキー)という男と同居しているのだった。(兄妹はこんな程度に疎遠であった)

 彩は34歳、本屋でアルバイトをしている。会社を辞めてからはバイトの仕事しか見つからない。
 伊藤は54歳。彩とはコンビニのバイト先で知り合った。今は学校給食のバイトをしている。
 彩は伊藤の過去をよく知らない。知る必要もないと思っている。20の歳の差はあるが、本人たちに違和感はない。

 さて、兄と会ってのち帰宅した彩は、玄関に見慣れぬ靴を発見。
 おお、伊藤さんがお父さんと話してる!

 話はここから、父親の秘密も絡んで、てんやわんやの展開になります。あとは観てのお楽しみ。

下2監督:タナダユキ|2016年|119分|
原作:中澤日菜子|脚本:黒沢久子|撮影:大塚亮|
出演:山中彩(上野樹里)|伊藤康昭(リリー・フランキー)|山中潔(長谷川朝晴)|山中理々子(安藤聖)|叔母の小枝子(渡辺えり)|お父さん(藤竜也)|ほか

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2年前・4年前・6年前の9月、一夜一話。(2015年9月・2013年9月・2011年9月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-09-30 Sat 06:00:00
  • 映画
2年前の9月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年9月 Archive)

写真
「運命じゃない人」
監督:内田けんじ
中村靖日、霧島れいか
写真
「花よりもなほ」
監督:是枝裕和
岡田准一、宮沢りえ
写真
「白線秘密地帯」
監督:石井輝男
三原葉子、宇津井健
写真
「風の子」
監督:山本嘉次郎
渡辺篤、夏川静江
写真
「メイド・イン・ホンコン」
監督:フルーツ・チャン
香港
写真
「さよなら、人類」
監督:ロイ・アンダーソン
スウェーデン
写真
「ヤクザガール 二代目は10歳」
監督:セルゲイ・ボドロフ
ロシア
写真
「ロスト・イン
     ・トランスレーション」

アメリカ
写真
「フォー・ルームス」
監督:クエンティン・タランティーノ他
アメリカ


4年前の9月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年9月 Archive)

写真
「旅籠屋騒動」
監督:森一生
ミスワカナ、玉松一郎
写真
「モル」
監督:タナダユキ
タナダユキ、石川貴子
写真
「少年」
監督:大島渚
渡辺文雄、小山明子
写真
「にあんちゃん」
監督:今村昌平
長門裕之、松尾嘉代
写真
「いつか読書する日」
監督:緒方明
田中裕子、岸部一徳
写真
「指輪をはめたい」
監督:岩田ユキ  山田孝之、
小西真奈美、真木よう子
写真
「寝ずの番」
監督:マキノ雅彦  長門裕之、
中井貴一、木村佳乃
写真
「裸の十九才」
監督:新藤兼人
原田大二郎、乙羽信子|
写真
「天使が見た夢」
監督:エリック・ゾンカ
フランス
写真
「さすらい」
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ
写真
「SWEET SIXTEEN」
監督:ケン・ローチ
イギリス

写真
「自分を探す旅
   (邦画編 その1)」

過去記事からピックアップ
写真
「女が、自分の道を歩む時。」
過去記事からピックアップ
写真
「人生なんて、そうそう
   うまく行かないワケよ。」

過去記事からピックアップ
写真
「やはり、
  大人の映画ってある。」

過去記事からピックアップ
写真
「子供が主演の映画は、
     視点がピュア。」

過去記事からピックアップ


6年前の9月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年9月 Archive>

写真
「二人が喋ってる。」
監督:犬童一心
新屋鳴美、宇野志津香
写真
「風の歌を聴け」
監督:大森一樹
小林薫、真行寺君枝
写真
「米」
監督:今井正
江原真二郎、中村雅子
写真
「NOVEM ノヴェム」
監督:ブラッド・キンメル
アメリカ
写真
「旅人は休まない」
監督:イ・チャンホ
韓国
写真
「ようこそ、羊さま。」
監督:リウ・ハオ
中国
写真
「胡同の理髪師(フートン)」
監督:ハスチョロー
中国
写真
「死の教室」
監督:アンジェイ・ワイダ
ポーランド
写真
「パレルモ・シューティング」
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ
写真
「モンド」
監督:トニー・ガトリフ
フランス
写真
「少年と砂漠のカフェ」
監督:A・ジャリリ
イラン
写真
「Jazz Seen
   /カメラが聴いたジャズ」

ドイツ
「ブラックブレッド」
監督:A・ビリャロンガ
スペイン・フランス
写真
「ラストサーカス」
監督:A・デ・ラ・イグレシア
スペイン
写真
「ロビンソナーダ」
監督:ナナ・ジョルジャーゼ
グルジア
写真
「誤発弾」
監督:ユ・ヒョンモク
韓国 1961年
写真
近世文学研究
「江戸滑稽化物尽くし」
アダム・カバット (著)

映画「マダム・マロリーと魔法のスパイス」 監督:ラッセ・ハルストレム

上2
開店の夜


 気楽に観れる娯楽映画です。
 インド料理を生業とする移民の一家が、フランスの片田舎でレストランを開業する話。二つの愛が芽生えます。

1-0_20170925200941f73.jpg インドで一家は料理屋を営んでいた。
 店は母親が料理し、父親がマネジメントする繁盛店だったが、地元の選挙陣営対立の中、反対陣営を支援する人々によって店が焼き打ちに合い、不幸なことにこの時、一家は母親を亡くし、その地を追われた。
 故国を捨てた一家(父と息子、娘夫婦に2人の子供)は、旧宗主国イギリスへ渡ったが商売がうまく行かず、またイギリスでは良い食材が手に入らずこの地を諦めた。そののちレストラン開業の新たな場所を求めて、一家は今度はヨーロッパ大陸へと向かった。
 
 祖国を離れ西欧のどこかの国でインド料理レストランを開業したいという父親の思いは、父親が息子のハッサンの料理に一目も二目も置いているからこそであった。
 なぜなら、ハッサンは母親の血を受け継いで味覚が鋭く、子供のころから母親に料理を教わっていた。ハッサンも母の教えのすべてを吸収していたのだった。

 一家六人を乗せて車は開業する適地を求め諸国を走った。そしてある日、フランスのある片田舎の町を通りかかる。
 ここで父親は、廃屋に近い一軒の家の前でひらめいた。ここで始めよう。そこは元レストランであった。

 開店の準備が進む中、発覚したことは、道向かいのフランス料理レストランがミシュラン一つ星の店であること。(お話は都合よくできています)
 このレストランのあるじは、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)といい、夫を亡くし自らが女将となって、毎年一つ星を勝ち取っている女性。

2-0_20170925201118f82.jpg さていよいよ開店。100フィートしかはなれていない、道のこっちと向こうだから、一つ星の店にカレーの匂いが流れていく。
 (原題はTHE HUNDRED-FOOT JOURNEY(100フィートの旅))

 マダム・マロリーは勝気のうえにイケズな女。向かいの店の邪魔をする。ハッサンの父も対抗意識を燃やす。
 そんなうちに、インド料理レストランにやっと客が付き始める。
 美味しいのだ!

 ハッサンはマダム・マロリーの店の女性マルグリットと仲良くなっていた。ともに料理人だ。
 ハッサンに貸したフランス料理本をもとに、ハッサンが初めて作ったソースにマルグリットは唸った。そして愛は深まる。

 マダム・マロリーの店のシェフが、深夜、ハッサンの店の石垣に大きな落書きをした。このシェフは移民を蔑視する男であった。
 これにマダム・マロリーが怒り、即座に彼を首にした。
 そして、後釜になんとハッサンを起用する。実はハッサンが素晴らしい料理人であることをマダムは見抜いていたのだ。

 もちろん、短いが修行(下働き)期間を経て、ハッサンは正式にシェフとなる。そうしてその年、店はミシュラン二つ星を獲得するに至る。 
 このころになって、マダムとハッサンの父親の距離が縮まっていった。

 さて、フランスの飲食業界で名をはせたハッサンは、パリの三ツ星高級レストランに引き抜かれる。
 ハッサンは、新進気鋭の若手シェフとしてパリで最新のメニューを次々に編み出し、有名人となった。
 しかし時が経つうちに、ハッサンの心に空洞ができていく。私はインド人、母から教えられたインド料理のその先を極めたい。
 ハッサンは父親の店に帰り、マルグリットとよりを戻し、ふたりで新たなレストランを開業することにした。
 私はここで三ツ星を狙うと・・。
 
オリジナルタイトル:THE HUNDRED-FOOT JOURNEY(100フィートの旅)|
監督:ラッセ・ハルストレム|アメリカ|2014年|122分|
原作:リチャード・C.モライス|脚本:スティーヴン・ナイト|撮影:リヌス・サンドグレン|
出演:マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)|パパ(オム・プリ)|ハッサン(マニッシュ・ダヤル)|マルグリット(シャルロット・ルボン)|市長(ミシェル・ブラン)|マンスール(アミット・シャー)|ジャン=ピエール(クレマン・シボニー)|ポール(ヴァンサン・エルバズ)|トーマス(アントワン・ブランクエフォート)|

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映画「或る女」(1942年) 主演:田中絹代 監督:渋谷実

上


 話は、明治から大正にかけての、「或る女」の10年を描いている。

1-1_20170923130911f26.png 席主※(坂本武)の計らいで、寄席で下働きしている、おしげ(田中絹代)。(※寄席のあるじ)
 このおしげに向かって、寄主に雇われている元落語家の男・柴田(河村黎吉)が、話していいものか、いけないものかと迷いながらも、話始める。
 「実はね、三楽が東京に帰ってきているらしい」と、くわえて「子もいてね、おまけにカミさんが病に伏せってしまい、金に大層、困ってるらしい」
 これを聞いて、おしげは「僅かばかりだけど、お金ならあるわ」、しかし柴田は「そりゃ、いけねえよ」

 そこへやって来た席主は即座に、「おしげさんに、三楽のことなんか言うもんじゃない」と柴田を制した。続けて、おしげには、「三楽は、あんたにあんなに苦労をかけた男だ、もうかかわりなさんな」と三楽を罵りながら言った。
 これに対しおしげは、「もう10年も前のことだもの、今じゃ何とも思わないわ」

2-0_20170923131120b96.png そして映画は10年前にさかのぼる。(明治の終わり頃)
 そのころ、三楽という芸人(徳大寺伸)は東京じゃ少しばかり売れ始めていた。
 寄席で働く若き娘おしげは、三楽の舞台と舞台を降りた後の短い逢瀬をいつも心待ちにしていた。三楽のほうも、まんざらではなかった。
 だが、彼に欲があった。上方の舞台に出て一旗揚げたいと、三味線の女を連れて東京を去った。三楽はこの女と、既に出来ていたのだった。
 おしげは、突然の失恋に心砕かれ、席主にそれまでの礼も言わず、故郷の田舎へ帰った。

 故郷の家には、兄とその子の二人が住んでいる。この親子は困窮していた。兄は少ない蓄えを人に騙され奪われ、また借金で家は抵当に入っていた。
 しかし兄の子・勇は、幼いながらも進学を望んでいた。将来大きな船の船員になりたいという。

 おしげは自身の悲しみを心の底に押しやって、この世に身内はこの三人、力合わせて勇を育ててやりましょうと、兄を励ます。
 おしげは東京に戻って働き、稼いだお金は兄の子・勇の教育費にと、兄は借金返済にと、兄妹はそれぞれ再び働き始めた。

 そう、おしげのこの頑張りは、どこから来るのだろうか。
 それは、おしげが失った自身の生きがいを新たに見つけたから。つまり、三楽への想いから、実の母子のようにして勇を育てる愛へと、気持ちを切り替えたから。
 それでも、おしげは、三楽への愛を今も心に抱き続けている。そして、だから、私は一生結婚はしないと決心していた。

 東京に戻ったおしげは、斡旋屋の紹介で、あるお屋敷の住み込み女中の職を得る。
 安定したこの職は、兄のもとへ送金するに十分であった。
 この家の娘は病弱で家に閉じこもったままで日々を過ごしていたが、おしげが来たことで親しい話相手ができ、おしげを慕った。

 だが不幸なことに、この娘に好きな人がいたが、相手の家から一方的に婚約が破棄され、娘は失意に陥った。
 たまたま、おしげは田舎の兄の家に帰っていた。そこへおしげに会いたくて娘が一人でやって来た。だが病弱な娘は、儚くもここで体調を崩し世を去ってしまう。屋敷の主は、これをおしげのせいにし、おしげは突然に解雇された。

 理不尽に思いながらも、おしげは挫けない。
 顔の広い柴田の紹介で、勇のため、おしげは料理屋で働き始めた。
3-0_201709231321415ff.png そんなある日、勇(佐野周二)がおしげに会いに来た。商船大学を成績二位で卒業したことを報告に。
 とても喜ぶおしげは勇を連れて、大学の寮じゃ食べられない美味しいものをご馳走しようと、上等な店のうなぎやへ。おしげが勇に酌をするその仕草は玄人の様だった。
 勇はおしげに言った、「叔母さんは料理屋なんかで働く女性じゃない。僕は嫌だ、無理を言うようだが仕事を変えてほしい」と訴えた。「これからは僕は給金をもらえて、採用前提の試用期間航海に出る。お金の方はもう大丈夫。無理しないで田舎に帰ってゆっくりして」
 (当時、商船大卒の航海士とは、日航のパイロット以上の高給とりだった。くわえて勇が知識人になったせいだろう、自分を養ってくれた大事な叔母には飲み屋の女でいて欲しくなかった、勇はそう思っていた)

 しかし、おしげは田舎に帰らず、東京のミシン縫製の町工場で働き始める。(私はもう畑仕事はできない)
 ある日、工場でおしげが倒れた。彼女の人生は、これまで働き詰めの毎日であった。

 このことを聞きつけた席主は、弱ったおしげを手厚く介抱し、快復したおしげは再び寄席で働くことになった。
 こうして、おしげの10年が過ぎた。

 さて、冒頭シーンの続きに映画は戻る。
 おしげは、幾何かの金を口座から下ろし、三楽一家が住む家へ向かった。
 どぶに掛かる小橋を渡って、おしげは三楽の粗末な家の玄関先に立った。
 驚く三楽はおしげを家にあげた。儀礼的な挨拶の後、おしげが差し出す金に、三楽は躊躇するも手を出そうとしたが、三楽の妻はこれを制した。

 そこへ突如、勇が柴田の案内でやって来た。勇は叔母を苦しめた三楽を罵りに来たのだった。
 それはおしげに代わって誰かがいつか言うべき三楽に対する罵りであった。
 その三楽は、そう言ってもらえて私もすっきりした、長年の胸のつかえがやっととれたと感謝し泣いた。
 荒んだ場をおしげと柴田が納め、三楽夫婦はおしげの金を受け取ったのであった。
 
 脚本が弱いが、田中絹代の優れた演技でもっている映画。
 戦時中に製作・公開されたものだが、戦時下の影響はない。ただし、映画が始まる前に「一億の誠で包め兵の家」というスローガンが映し出される。

 映画に石油ランプと白熱電球のあかりが出てくる。
 電灯は、大正11年頃には東京市内のほぼ全域に普及したらしい。
 よって、おしげの10年は、明治末期から大正時代にかけての話なんだろう。

 それと映画に出てくる知らない言葉。
 「おちょうもく」:金銭の異称。江戸時代までの銭貨は中心に穴があり、その形が鳥の目に似ていたところからいう。「お鳥目」
 「おちょうばさん」:帳場とは商店・旅館・料理屋などで,帳簿をつけ勘定をする所。会計場。
           おしげは料理屋で「お帳場さん」も兼ねてた仕事をしていた。
 「アプレンティス」:見習いを意味する英語。卒業した勇が見習いで航海に出ることをおしげに言うシーンで勇が言う言葉。

監督:渋谷実|1942年|96分|
脚本:池田忠雄、津路嘉郎|撮影:森田俊保|
出演:おしげ(田中絹代)|実兄の一人息子・勇(佐野周二)|柴田(河村黎吉)|良吉(斎藤達雄)|三楽(徳大寺伸)|おたま(木暮実千代)|筆子(文谷千代子)|小せい(伏見信子)|樋口(坂本武)|お豊(忍節子)|お松(三村秀子)|勇の少年時代(津田晴彦)|藤子未亡人(葛城文子)|下宿のお母さん(飯田蝶子)|料亭の女将(吉川満子)|おとし(高松栄子)|昌子(森川まさみ)|敬一郎(日守新一)|徳さん(水島亮太郎)|お兼(松尾千鶴子)|城太郎(大塚紀男)|半玉(森和美)|

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映画「朧夜の女」(おぼろよの女) 1936年 監督:五所平之助

下
 照子


 時は昭和の初め頃、叔父に連れられ行った先の銀座のバー、そこの女と出来てしまった初心な大学生の初恋の顛末。

01-_20170919135736160.jpg 大学生の誠一(徳大寺伸)は、父を早くに亡くし、母のお徳(飯田蝶子)が女手一つで育てた一人息子。すれてない箱入り息子でいい男。
 お徳は、牛や(牛鍋屋)で働いているが、若いころは芸者だった様子。どこかの店の主人風の旦那に頼まれ、唄、三味線の個人教授をしている。

 誠一を銀座のバーに連れ出した張本人の叔父・文吉(坂本武)は、お徳の実兄で昔は粋な遊び人だった。
 その文吉が収まるところにやっと収まって所帯を持った、その妻が、おきよ(吉川満子)という女。
 この夫婦には子がいない。神社の石段下で張物屋を営んでいる。(着物の洗濯屋さん:お客の着物を抜糸して反物にし洗濯する稼業。洗い張り。)
 以上こんな登場人物の描写が話の前段にあって、映画は物語のその先を語り始める。

2-0_20170919140548d74.jpg バーの女・照子(飯塚敏子)は、昔風にありていに言えば、芸者上がりの女給だ。
 だが照子は数年前までは芝神明で指折りの芸者だった。旦那(パトロン)がついて芸者を辞めたが、その旦那が急死、照子の人生は下り坂となっていた。

 文吉は芝神明にいた照子を覚えていた。照子も客として文吉を覚えていた。銀座のバーは再開の場でもあった。
 さて、その後、誠一と照子は密かに会い文通を交わした。ふたりの愛は純であった。しかし誠一はこのことを母親に言えないでいる。

 そしてある日、誠一は照子から妊娠したことを告げられる。
 誠一は驚き戸惑うが、照子は心の奥底で、これを機に身を引くことを決めていた。
 誠一さんは勉強をして将来偉くなる人。子一人、私ひとりでもちゃんと育てていける・・。

 かたや、悩み抜いた誠一は、叔父・文吉に打ち明ける。(死んでも母親には言えない)
 文吉は驚きはしたが、すぐさま、こう思った。自慢の甥が自分を頼りにしてくれた嬉しさ、照子はまったく知らぬ女じゃないこと、さらにはわが身を振り返れば、身に覚えがないことでは無い。
 そこで文吉は思案の末、自分が照子と浮気して子をこしらえてしまった、という嘘を思いつく。そして、これを妻のおきよに言った。

 これを聞いたおきよは、大いに悲しむ一方、これまでの文吉の放蕩を思うと、そんなには驚かなかった。
 誠一と照子の関係を未だ知らぬ母・お徳は、兄の放蕩ぶりを「いい歳して」と非難するも、義姉として子供の出来ないおきよに言う。「兄さんは女ときっぱり分かれる、その代わり、子は家で育てると言ってる。辛いだろうけど、いっそ育ててみれば。赤ちゃんは可愛いよ。世間は、おきよさんはよく出来た嫁だと、ほめそやすよ。」

 ひとつ目の嘘が通って文吉は、慌てて空き家を探し、土手下の家に照子を住まわせる。
 つまり今度はこれ、姉のお徳に対しての嘘。文吉と照子のこの愛の巣に、お徳は便所の傍の軒に吊り下げる「吊り下げ手洗い器」や何やかにやを買いそろえてやってくる。

 さて文吉、お徳が去ったあと、ポツンと座る照子、そこへ誠一が現れる。
 誠一は言う、こんな嘘はやめよう。俺は母親に正直に言う、結婚しよう。叔父や叔母にこれ以上迷惑はかけられない、俺は卑怯だ、と。しかし、照子は誠一の訴えを受け流すだけだった。

 それからそんなに時を経ず、照子は妊娠中毒症で急遽入院する。そして、あっけなく世を去る。
 土手下の家で通夜が行われた。霊前には文吉の友人やお徳もいる。そこへ誠一が現れた。これに気づいた文吉は彼を家の外に連れ出す。
 「もうこれ以上の嘘は、耐えられない、母親にすべてを言う。」と泣く誠一を制して文吉は言う。「この世の中、嘘も正しいことがある、何よりも照子は今もそれを望んでいる」と。


 なにしろ80年以上前の映画です。
 世間の常識が、今と違うことを理解して観ましょう。
 それと、近代を対象にした都市民俗学?とでも言いましょうか、銀座のバーの様子、そこで働くキラキラ衣装の少女、牛鍋屋の様子、張物屋の職人の仕事風景、寄席の様子、一般家屋の室内などに注目しても面白いかもしれません。

監督:五所平之助|1936年|111分|
原作:五所亭|脚本:池田忠雄|撮影:小原譲治
出演:照子、バーでの源氏名(飯塚敏子)|誠一(徳大寺伸)|文吉(坂本武)|お徳(飯田蝶子)|おきよ(吉川満子)|医師(佐分利信)|町内の旦那衆(河村黎吉、野本正一、新井淳)|職人(青野清、谷麗光)|芸者(忍節子)|牛やの女(岡村文子、江坂静子)|女給(朝見草子、立花泰子)|女中(大関君子)|牛やの主人(水島亮太郎)|学生(大山健二、阿部正三郎、金光嗣郎)|講釈師(一龍斎 貞丈)|

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映画「クスクス粒の秘密」 フランス映画 監督:アブデラティフ・ケシシュ

上2










 「クスクス粒の秘密」という題名から、印象としてファンタジックな映画に思われるかもしれないが、そうじゃない。
 フランス南部の港町(セット Sète)に住むチュニジア系移民一世とその子たちの話です。

 総じて、話のタッチは重くなく、比較的軽いですが、「人生、そうそう上手くは行かない」と映画は言っています。しかし、人々はそんな人生をなんとか受け入れ、日々を過ごしています。

 そして、彼らのそんな様子は(傍から見る人には)、時に滑稽じみた様にみえることもあると映画は言っています。


1-0_20170918141944b2f.jpg
 冒頭のいくつかのシーンで映画は、主な登場人物の境遇と人間関係をみせます。
 それは同時に、この港町の現状を語っています。(中小造船業の斜陽、港の漁業の衰退、観光業へのシフト。)

 港のドックで働くスリマーヌは小型船の造船・修理のベテラン、御年60歳でチュニジア系移民一世。実直で無口な男。
 彼の子は4人いて、息子が2人に娘が2人、みな二世。長男長女は既婚。しかし、チュニジア系移民一世の妻スアドとは離婚している。 

 スアドは、チュニジアの伝統料理クスクス((粒状のパスタ))が得意なBIG MAMA。
 子たちとその伴侶や孫たちは母親の家に集って、おふくろの味・クスクスを食べることを楽しみにしている。
 子たちの伴侶はフランス人とロシア人ですが、みな、とても美味しいクスクスが好き。
 しかし、その席にスリマーヌはいない。

2-0_20170918143612705.jpg スリマーヌは愛人ラティファと暮らしている。ラティファもチュニジア系一世だ。
 彼女は小さなホテルと付随するバーを買い取って生計を立てている。そして、ラティファの一人娘リムが母親を手伝っている。リムは20歳で二世。

 スリマーヌはホテルの狭い空き部屋に住んでいる。居候だ。
 ラティファとリムの母娘もホテルの一室を住居としている。
 くわえて、チュニジアの民族音楽バンドの老メンバーも住んでいる。彼らはバーで演奏し生活している。


 さて、こんなシチュエーションをもとに、物語は展開します。
 長年勤めた職場をリストラで追われたスリマーヌは、廃船間際の船を買って船上レストランを始めようと考えます。
 世事に疎いスリマーヌは、リムの助けを借り、資金の手配や役所への諸手続きを始めます。しかし、レストラン経験もなく手元資金もなく、よって信用がありません。でも、船の修理技術はあるスリマーヌは、船の改装だけは済ませました。

 ちなみにこのレストランの売りは、クスクス。
 そうです、スリマーヌは元妻のスアドをコック長にしようという算段。この段で、愛人ラティファはソッポを向きっぱなし。

 信用が容易に得られないと分かったスリマーヌとリムは、お役人や仲間を呼んで、とても美味しいクスクスの船上パーティを企てます。
 バンドのメンバーは、ギャラは出世払いでいいとして、演奏を買って出ます。
 そして彼の息子・娘4人とその伴侶も、このパーティ準備を手伝います。もちろん、前菜やクスクス料理はスアドが作ります。(船にはまだ厨房がありません、スアドは自宅で料理しました)
 彼女はこれまでも、誰かの結婚パーティなどで大量の料理経験はあるのです。準備万端。

 いよいよ、客が船に集まります。酒が出て前菜が出て演奏が始まり、パーティは賑やかに盛り上がります。
 時間を見計らい、スリマーヌの長男次男が車で自宅に戻り、スアドが作った各種のクスクス料理を取りに行きます。そして、いくつかの大鍋を船上に持ち込みました。

 だが、ここで問題が起きます。
 何が問題かというと、長男の浮気相手の女性がパーティに来ていたのを長男が気づき、やばいということで、彼は密かに会場を抜け出し、車でどこかに逃げてしまいます。
 ですが、肝心要のクスクス(粒状のパスタ)を蒸した鍋が、まだ長男の車のトランクの中! これだけを運び出し忘れていたのです。

 事態を知ったスリマーヌはじめ皆は顔面蒼白、もう呆然としています。一方、客たちは、クスクス料理が出てこないことにいら立ち始めます。
 そこへ、ラティファとリムの母娘が客として遅れてやってきました。リムは嫌がる母親を説き伏せてやっとのことで連れて来たのです。なにしろ愛人ですから、この場にそぐわない。(一方、スアドも会場には来ていません)

 お話はここに来て頂点に差し掛かります。急いで話の先を言えば結果的に、ラティファとリムは救世主でした。大活躍!
 かたや、要のスリマーヌはというと、会場を後にして長男を探しに行きますが、彼の混乱ぶりは悪夢のシーンにありがちな展開に・・。(このシーンは冗長ですがご愛敬でみてください)

tunisia-map1.jpg 映画の中で聴こえて来るチュニジア民族音楽バンドが奏でる魅惑的なサウンド、これが流れることで、このフランス映画がチュニジア映画風に観えてきます。お楽しみください。(監督の出自はチュニジアとのこと)

 映画の出来具合については、2013年製作作品「アデル、ブルーは熱い色」の方が、エッジが効いていて、ずっと良い。 

オリジナルタイトル:La graine et le mulet|
監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2007年|135分|
出演:スリマーヌ(アビブ・ブファール)|リム(アフシア・エルジ)|上の娘カリマ(ファリダ・バンケタッシュ)|愛人ラティファ(アティカ・カラウイ)|長男の嫁でロシア人のジュリア(アリス・ユーリ)|下の娘オルファ(サブリナ・オアザニ)|元妻スアド(ブラウイア・マルズーク)|ほか

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映画「夏をゆく人々」 イタリア映画 監督:アリーチェ・ロルヴァケル

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長女ジェルソミーナ、多感な年ごろ


 イタリア半島の中ほどにある大きな湖、この湖畔に住む家族のお話。

1-0_201709151404336b7.jpg 湖周辺の広々とした草原、ここで一家7人は養蜂で生計を立てている。
 でも、男手は父さんだけで、母さんとその子4人姉妹と居候のおばさんの、女6人の家。
 そのうえ、長女ジェルソミーナの下の娘たちは、まだ幼い。

 ミツバチの箱を運んだり、遠心分離機で蜂蜜を抽出したり、バケツに一杯になった蜂蜜を運んだりと、力仕事はたくさんある。
 だから、父さんは女手しかいないことで、いつもイライラしている。(そして家族に対して、しょっちゅうワンマンなふるまい)

 そんな父親をみて、ジェルソミーナは懸命に養蜂の仕事をこなしている。口にこそ出さないが、父親も長女のそんな様子を力強く思っている。

 ある日、無口な少年が少年院からこの家にやって来た。父親は、少年の更生のためのプログラムを利用して男手を手に入れたのだ。家に住み込みで仕事を手伝うことになった。

 自然に優しい農業・畜産・養蜂家などを対象にしたコンクールがテレビ局の主催で開催されるという。
 このことを知ったジェルソミーナは密かにコンクールに応募した。よそ者を嫌う父親は、こういうことには絶対反対することを彼女は知っていました。

 さあ、さて、ここら辺りから物語は思わぬ展開をし始めます。
 話の筋のその先を急いで追う姿勢では、この映画は楽しめません。ゆったりした気分で観ましょう。
 主人公のジェルソミーナ役の女性の、楚々とした雰囲気がいいです。プロの俳優じゃないようです。映画はこのジェルソミーナの存在感で成り立っています。

 父親は家族の中ではワンマンですが、世間に対しては自閉的な男です。
 そんな彼ですが、男手が欲しいがためによそ者の少年を家に迎え入れました。
 一方、ジェルソミーナはそろそろ大人の女になろうとしています。自分の意志でコンクールに応募したように、ジェルソミーナの意識は田舎の一軒家から世間に出ていこうとしています。そんな彼女と彼女の恋を母親も叔母も応援します。

 
 映画の後半ぐらいから、「エトルリア」「エトルリア人」という言葉が出てきます。
 この一家の住む地域は、エトルリアという、紀元前8世紀~紀元前1世紀ごろにイタリア半島中部にあった都市国家群があった場所。
 映画は、そんな歴史の謎めいた不思議さをバックグラウンドに秘めているようです。(それは例えば、この一家の家のそばにロケに来た女優さんの姿を借りて・・)
 

オリジナルタイトル:LE MERAVIGLIE|
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル|イタリア スイス ドイツ|2014年|111分|
撮影:エレーヌ・ルヴァール|
出演:ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)|アンジェリカ(アルバ・ロルヴァケル)|ウルフガング(サム・ルーウィック)|ココ(ザビーネ・ティモテオ)|ミリーカテナ(モニカ・ベルッチ)|アドリアン(アンドレ・M・ヘンニック)|少年更生係イルデ(マルガレーテ・ティーゼル)|ほか

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1年前・3年前・5年前の9月、一夜一話。(2016年9月・2014年9月・2012年9月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-09-14 Thu 06:00:00
  • 映画
1年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年9月 Archive>

写真
「風の又三郎」
監督:島耕二
映画音楽に魅せられて
写真
「イン・ザ・プール」
監督:三木聡 オダギリジョー
松尾スズキ、市川実和子
写真
「泥の河」
監督:小栗康平
田村高廣、加賀まりこ
写真
「舞妓はレディ」
監督:周防正行
上白石萌音、富司純子
写真
<か行> の邦画
これまでに記事にした邦画から
    
写真
「ドリンキング・バディーズ
飲み友以上、恋人未満の
甘い方程式」
   アメリカ
写真
「世界」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
写真
「その怪物」
監督:ファン・イノ
韓国
写真
「人生スイッチ」
監督:ダミアン・ジフロン
アルゼンチン・スペイン
写真
「シュトロツェクの
        不思議な旅」

西ドイツ
写真
「永遠と一日」
監督:テオ・アンゲロプロス
ギリシャ
写真
京都に行って来た。
「京都の湯と水の話」



3年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年9月 Archive)

写真
「ミスター・ミセス・ミス
       ・ロンリー」

原田美枝子、宇崎竜童
写真
「水の声を聞く」
監督:山本政志
玄里、趣里、村上淳
写真
「小早川家の秋」
監督:小津安二郎
原節子、中村鴈治郎
写真
「夢みるように眠りたい」
監督:林海象
佐野史郎、佳村萌
写真
「祇園囃子」
監督:溝口健二
若尾文子、木暮実千代
写真
特集「関西の映画です。」
過去記事よりピックアップ
       
写真
「女優で検索」
その名で探す、出演映画。
但し暫定版    
写真
「イーダ」
監督:パベウ・パブリコフスキ
ポーランド
写真
「365日のシンプルライフ」
監督:ペトリ・ルーッカイネン
フィンランド
写真
「愛しのタチアナ」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「最愛の夏」
監督:チャン・ツォーチ
台湾
写真
「マンハッタン」
監督:ウッディ・アレン
アメリカ
写真
「黒いジャガー」「スーパーフライ」
ソウルフルなブラック・シネマは、いかが?



5年前の9月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の9月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年9月 Archive)

写真
「不良少年」
監督:羽仁進
山田幸男
写真
「あなたと私の合言葉 
    さようなら、今日は」

若尾文子、京マチ子
写真
「旅の重さ」
監督:斎藤耕一
高橋洋子
写真
「HANA-BI」
監督:北野武
岸本加世子
写真
「さよならS」
監督:エリック・ゾンカ
フランス
写真
「月曜日に乾杯!」
監督:オタール
 ・イオセリアーニ|フランス
写真
「ラテンアメリカ
       光と影の詩」

アルゼンチン
写真
「憎しみ」
監督:マチュー・カソヴィッツ
フランス
写真
「太陽の下の10万ドル」
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
フランス
写真
「カラマリ・ユニオン」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「パリ・ルーヴル美術館
          の秘密」

フランス
写真
「夜行列車」
監督:J・カワレロウィッチ
ポーランド
写真
「ひなぎく」
監督:ヴェラ・ヒティロヴァ
チェコスロヴァキア


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気になる映画 59  《これから上映の映画》

写真
「パターソン」
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
8/26~武蔵野館、ヒューマントラスト
写真
「50年後のボクたちは」
監督:ファティ・アキン  9/16~
シネマカリテ、ヒューマントラスト
写真
「鉱」(あらがね)
監督:小田香 監修:タル・ベーラ
10/21~11/3 K's cinema
写真
チェコ・ヌーヴェルヴァーグ
60年代チェコ映画祭  「パーティと招待客」
「ひなぎく」「愛の殉教者たち」ほか全9本上映
11月~イメージフォーラム
写真
エミール・クストリッツァ監督特集
9/16~29 恵比寿ガーデンシネマ
上映作品中、次の3作は記事にしてます。
アンダーグラウンド」「ジプシーの時」「黒猫・白猫
題名をクリックしてご覧ください。
写真
「軽蔑」 デジタル・リマスター版
監督:ジャン=リュック・ゴダール
9/30~恵比寿ガーデンシネマ

映画「青いドレスの女」 監督:カール・フランクリン

上
 映画冒頭は、こんなイラストと、T-ボーン・ウォーカーの歌うブルースで始まる。


1-0_201709071744482a8.jpg 原作は推理小説。(黒人の私立探偵小説「イージー・ローリンズ」シリーズの第1作を映画化)
 最近は少なくなってしまった、黒人が主体の映画。(1995年制作)

 時代は1948年、場所はロサンゼルス。
 黒人差別は当然の時代。(公民権運動が本格的に動き出すのは1950年代半ば頃から)

 第二次世界大戦で欧州戦線(黒人部隊)を経験した主人公の黒人青年イージーは、戦後、兵役経験を活かし機械工として造船所や航空機メンテ工場で働いていた。
 イージーは真面目な青年だ。勤め先では社員として勤務。それ故に、黒人ではあるが一定の社会的信頼を得ていた。
 つまり住宅ローンが組めて、(黒人だけの)戸建住宅街に一軒家を持ち、粋な車も持っていた。優雅な独身生活であった。

 しかし、突然の解雇。職探しを始めるが、まともな勤め先がみつからない。ローン返済が滞る。
 そんな折、行きつけのバーのあるじジョッピーから、オルブライトという怪しげな白人の男を紹介される。
 オルブライトはイージーに、ある白人女を探してほしいと札束をちらつかせる。切羽詰まっていたイージーはこの話に乗った。

 話は、市長選挙が絡む。
 ロスの富豪トッド・カーターと、対抗馬のマシュー・テレルという二人の白人が立候補を表明していた。
 ところがカーターは突然、自ら立候補を取り下げた。
 カーターが愛し婚約者となった女性に、「ある問題」があることが発覚し、彼の周囲はカーターに婚約破棄を迫った。その結果、カーターは出馬の意欲も無くなり、失意に沈んでしまったのだった。
 一方のマシュー・テレルは押しの強い男だが、密かなある弱点を持っていた。
  
 イージーは、白人女探しに、市長選挙が絡むこんな背景があるとは知る由も無かった。
 いざイージーが動き始めると、彼の行く先々で殺人現場に遭遇する。警察に連行される。
 そして、彼が探す白人女性、(青いドレスの女)ダフネがイージーの前に現れた。
 彼女はマシュー・テレルの弱みを握っているらしい・・なぜ。
 イージーが足で知り得た事柄が、次の謎を解き明かすことになり、イージーの身の危険は増していく。
 そもそも、カーターの婚約者の「ある問題」とは何?、婚約者は誰?、マシュー・テレルの弱みとは?
 
 昨今のアメリカをみていると、こんな黒人主体の映画はもう製作されないかもしれない。

 総じて、描き切れていない大雑把さのある映画だが、娯楽映画ですからね。
 でも挿入音楽がいいです。
 映画冒頭、のっけからT-ボーンのブルースが流れて、私はノックアウト。
 この映画に取りあげられた主なミュージシャンは、往年のモダンブルースシンガーのT-ボーン・ウォーカー、ピー・ウィー・クレイトンや、ビッグバンドをバックにして歌うジャンプブルースシンガーのジミー・ウィザースプーン、ロイ・ブラウンなどなど、そしてデューク・エリントンも。
 サウンドトラック情報:http://www.allmusic.com/album/devil-in-a-blue-dress-sony-mw0000176104

オリジナルタイトル:Devil in a Blue Dress|
監督・脚本:カール・フランクリン|アメリカ|1995年|102分|
原作:ウォルター・モズレイ|撮影:タク・フジモト|
出演:イージーこと、エゼキエル・ローリンズ(デンゼル・ワシントン)|青いドレスの女・ダフネ・モネ(ジェニファー・ビールス)|イージーの親友で殺人が得意なケンカの助っ人・マウス・アレクサンダー(ドン・チードル)|バーのオヤジでイージーの友人・ジョッピー(メル・ウィンクラー)|ロス一番の富豪の白人、ダフネを愛するトッド・カーター(テリー・キニー)|カーターと市長選挙を争う白人、他人に言えない秘密を持つ男マシュー・テレル(モーリー・チェイキン)|ジョッピーがイージーに紹介した白人でマシュー・テレルに雇われる男ドウィット・オルブライト(トム・サイズモア)|ダフネの親友・コレッタ・ジェームズ( リサ・ニコル・カールソン)|コレッタの彼氏、イージーの知り合いデュプリー・ブロチャード(ジャーナード・バークス)|ほか

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映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」 監督:セオドア・メルフィ

上


1-0_201709061020036f5.jpg 70歳の頑固ジジイと、12歳の孤独な少年のお話。
 この映画、若い方には少年モノ映画に観えるかも知れないが、年配にはいささかビターな喜劇映画に観えるかも知れない。 

 頑固で人の話を聞かない人嫌いなジジイ、ヴィンセント(ビル・マーレイ)は、二十歳代の頃にはベトナム戦線を経験した世代。
 今は、白人中産階級(中の下)が住む住宅街の中の、小さな一軒家で一人暮らしだ。(子はいないようだ)

 ヴィンセントの楽しみは、安酒とタバコとTVそして、行きつけの店の踊り子・ダカと時々の有料セックス。
 暮らしは決して豊かじゃない、いや苦しい。無職の上に、自宅を抵当に入れての生活資金は底をつき、借りちゃいけない所から金を借りている。
 彼のお金はどこへ消えるのか? それは、今も最愛の妻サンディを預けている上等な介護施設。妻は重度の認知症なのだ。そして、この施設への払いが滞っている。

 そんなある日、ヴィンセントの隣家にマギーとその1人息子オリバーが越してきた。
 マギーは病院のMRI検査技師。夫は弁護士だが、この夫の度重なる浮気が原因で夫婦関係は破たん、今、オリバーの親権をめぐって離婚調停中。子供の奪い合いを避け、マギーはオリバーを連れて越してきた。(子は養子らしい)

 オリバーは12歳にしちゃ小柄。転校生への学内いじめ、母親の長時間勤務やらで、オリバーは一人ぼっち。
 「結果的に」これを救ったのが、人嫌いな隣人ヴィンセント。いいウチの子に育ったひ弱なオリバーは、おやじの塊みたいなジジイに世間を教わることになる。(競馬場、バー、娼婦、ケンカの仕方、悪い言葉など)

 これは、ヴィンセントから見れば、転がり込んで来たベビーシッターという時給稼ぎだった。
 マギーから見ればヴィンセントは、隣家のベビーシッターで便利な反面、ウチの子をワルに染め上げるジジイ。
 オリバーにとっては、初めは近寄りがたい偏屈ジジイだったが、いつの間にか仲良くなり、最後には「St.VINCENT」と褒め称える。

 話は、脳溢血によるヴィンセントの緊急入院・リハビリや、妻のいる介護施設からの料金不払いによる退去勧告や妻の死、オリバーの親権騒動の結末、踊り子のダカの嬉しい出産などのエピソードが絡んで行く。

 オリバーが学内発表で、ヴィンセントを聖人と褒めるシーンは、あまりにもアメリカ映画的感動シーンに仕立て上げられていて白けるが、これは、映画の結末のヴィンセントのうら悲しい境遇を考えると、プラスマイナスのバランスをとっての配慮とみておこう。
オリジナルタイトル:St.VINCENT|
監督・脚本:セオドア・メルフィ|アメリカ|2014年|102分|
撮影:ジョン・リンドレイ
出演:ヴィンセント(ビル・マーレイ)|オリバー(ジェイデン・リーベラー)|その母親マギー(メリッサ・マッカーシー)|ヴィンセントの有料彼女・ダカ(ナオミ・ワッツ)|ヴィンセントの妻サンディ(ドナ・ミッチェル)|ほか

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映画「カフェ・ブダペスト」 ハンガリー映画 監督:フェテケ・イボヤ

上
歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジム。ブダペストの街角にて。

1-0_20170901122232caf.png
 時は1990年、ソ連崩壊(1991年)の前年。
 祖国ソ連を離れ、開かれた東欧ハンガリーへと旅立ったロシア人の男たちの物語。

  映画冒頭のナレーションより…(本作は1995年製作)
  当時の気分を語るのは難しい。あり得ないことが突如 起きたのだ。
  ハンガリーが西側に扉を開いたのを契機に、すべてが急速に進行した。
  東欧が幸福に酔ったあの日々、忘れ得ぬ時代。
  そしてついにハンガリーからソ連軍撤退。
  (ところが)今度は別のロシア人がやって来た。西側を目指し、その入り口、ハンガリーに人々が押し寄せたのだ。
 (下記|1989年の出来事)
 
 2人のロシア人ミュージシャン、歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジムが、ハンガリーのブダペストへたどり着く。(※※下記|2人の経路)

2‐0 (ユーラが歌う)
  ♪さあ 旅立とう 歌を道連れに
  ステンカ・ラージンは もう十分歌われた
  新時代の俺たちは そんなの歌わない。
  直立不動で大声で 一体何を歌ってる
  共産主義の歌なんて もう うんざり …
 (ユーラ役の俳優は、ロシア出身のシンガーソングライター)

 機械工をしていた若いロシア人のセルゲイも、西側諸国を目指して、まずはブダペストにたどり着く。
 このようにして当時、既にブダペストには、祖国ソ連を脱出した人々の他に、少々危ない商売をする出稼ぎ組や、自身の人生を捨てた破滅型の放浪人など、様々なロシア人たちが滞留していた。
 また、そんなロシア人を相手に宿を提供するブダペストの人、フリーマーケットでロシア人を鴨にする人など、様々なハンガリー人がいた。
 加えて、東方諸国の解放とソ連国内の混乱に乗じて、ロシア系犯罪組織がブダペストへも進出して来て、表のフリーマーケットや裏のヤミ市で、恐喝とブローカーの動きを見せ始めていた。

下


 一方、こんな東欧に対し、冒険心とある種のロマンを抱いてブダペストに来る西側の人々もいて、映画は2人の女性を登場させて、恋を語り物語を彩る。
 それはイギリス人のマギーと、アメリカ人のスーザンだ。
 ひょうきんで明るいユーラはマギーと出会い、サックスのメロディがかっこいいワジムはスーザンと出会う。
 真面目な青年セルゲイは、泊まった宿のハンガリー人の女将(年上の独身女性)の世話になる。



 この映画、誰が主人公かと言えば、ユーラが歌うメロディとその歌詞だろう。
 ユーラ役のロシア出身のシンガーソングライター、ユーリ・フォミチェフという人の歌が、映画の各所で流れる。これが素晴らしい。
 ロシア由来かな、独特のうら悲しさと、その反面の楽しさを合わせ持つ音楽だ。西側のブルース音楽の領域とは別世界。

 映画は、当時のブダペストを活写し、時代の変わり目を、重くせずにすっきりと饒舌に語っている。いい映画だ。  

 このお話の時代のあと、ロシアは西側諸国と共に生きていくはずだったが、いつの間にかプーチンの国となっている。
 また、東欧の人々は職を求めて西側に移って行く。東欧諸国も我先にEUに加盟した。そして今、今度はEU離脱を考えている国がある。
1989年の東欧の出来事
 1989年5月2日 - ハンガリー政府がオーストリアとの国境にある鉄条網の撤去に着手。鉄のカーテンが破られる。
 同年6月 - ポーランドで、自由選挙実施。非労働党政党「連帯」が上院過半数を占める。東欧革命のさきがけ。
 同年8月19日 - ハンガリーで汎ヨーロッパ・ピクニックが開催、約600人の東ドイツ市民がオーストリア経由で西ドイツへ亡命。
 同年10月7日 - ハンガリー社会主義労働者党、ハンガリー社会党への改組を決定し、一党独裁政党としての歴史に終止符を打つ。
 同年10月17日 - 東ドイツで強権的な政治を行っていたエーリッヒ・ホーネッカー・ドイツ社会主義統一党書記長の書記長解任が党政治局で決議され、ホーネッカーが失脚。
 同年11月9日 - 東ドイツがベルリンの壁の通行を自由化。
 同年11月10日 - ベルリンの壁崩壊。
        ブルガリアで共産党書記長のトドル・ジフコフが失脚。これを機にブルガリアでも民主化が始まる。
 同年11月24日 - チェコスロバキアビロード革命。共産党政権が崩壊。
 同年12月1日 - 東ドイツで憲法が改正され、ドイツ社会主義統一党(SED)による国家の指導条項が削除される。SEDの一党独裁制が終焉。
 同年12月22日 - ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権崩壊(ルーマニア革命)。

3-1_20170901123010e01.png※※2人の経路
 時は1990年。ユーラとワジムは、ロシア人バンドのメンバーで、ユーゴで行われるコンサート会場へ、バンド専用バスで向かっていた。このバンドのバスの経路に注目。
 当初、ソ連・ハンガリー国境に到着するが、検問で拒否され越境できず迂回することになる。
 まずはソ連・チェコ国境を通過、次にチェコ・ハンガリー国境を通過し、ハンガリー・ユーゴ国境を越えようとした。(リアルな描写)
 ところがここで、2人はバスを降り、バンド仲間から分かれてブダペストにたどり着く。
オリジナルタイトル:BOLSE VITA|
監督・脚本:フェテケ・イボヤ|ハンガリー、ドイツ|1995年|101分|
撮影:サライ・アンドラーシュ|
出演:ギター弾きのユーラ(ユーリ・フォミチェフ)|サックス吹きのワジム(イーゴリ・チェルニエヴィッチ)|機械工のセルゲイ(アレクセイ・セレブリャコフ)|イギリス女性・マギー(ヘレン・バクセンデール)|米国人女性・スーザン(キャロリン・リンケ)|外人向けの宿の女将・エルジ(マール・アーグネシュ)|ほか

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2年前・4年前・6年前の8月、一夜一話。(2015年8月・2013年8月・2011年8月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-08-31 Thu 06:00:00
  • 映画
2年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  2年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年8月 Archive)

写真
「雪国」
監督:豊田四郎
岸惠子、池部良
写真
「0.5ミリ」
監督:安藤桃子
安藤サクラ
写真
「草を刈る娘」 (思春の泉)
監督:中川信夫
左幸子、宇津井健
写真
「ベンヤメンタ学院」
監督:クエイ兄弟
イギリス
写真
「カー・ウォッシュ」
監督:マイケル・シュルツ
アメリカ
写真
「雪の轍」
監督:ヌリ・B・ジェイラン
トルコ
写真
「三文オペラ」
~映画音楽に魅せられて
ドイツ
写真
東南アジアの映画・特選
アジアに吹く風、アジアの匂い
    
写真
京都に行ってきた。
毎日最高気温37度の京都へ
    
写真
武満 徹・作曲「波の盆」
指揮:尾高忠明
東京フィルハーモニー交響楽団
写真
1970年代の日本の
ロック、フォークを振り返る。


4年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  4年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年8月 Archive)

写真
「火まつり」
監督:柳町光男
太地喜和子、北大路欣也
写真
「楽園」
監督:萩生田宏治
松尾れい子
写真
事件記者シリーズ
「真昼の恐怖」「仮面の脅威」
「姿なき狙撃者」
写真
「何が彼女をそうさせたか」
監督:鈴木重吉
高津慶子
写真
「しあわせのかおり」
監督:三原光尋
中谷美紀 、藤竜也
写真
「ソレイユのこどもたち」
監督:奥谷洋一郎
ドキュメンタリー映画
写真
「音曲の乱」
監督:林海象
佐野史郎、スカパラ、鰐淵晴子
写真
「チキン・ハート」
監督:清水浩   池内博之、
忌野清志郎、松尾スズキ
写真
「真夜中の虹」
監督:アキ・カウリスマキ
フィンランド
写真
「犬と女と刑老人」
監督:シェ・チン
中国
写真
「SUCK サック」
監督:ロブ・ステファニューク
カナダ
写真
「ダフト・パンク
     エレクトロマ」

イギリス
写真
「青の稲妻」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
比叡山「山頂のひみつ」
その夏、京都の夜景を
独り占めしたことがある。


6年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  6年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年8月 Archive>

写真
「Peace」
監督:想田和弘
ドキュメンタリー映画
写真
「鉄塔武蔵野線」
監督:長尾直樹
伊藤淳史
写真
「スナッチ」
監督:ガイ・リッチー
イギリス
写真
「京義線」
監督:パク・フンシク
韓国
写真
「スウィート・スウィート
        バック」

アメリカ
写真
「アントニア」
監督:マルレーン・ゴリス
オランダ
写真
「人生、ここにあり!」
監督:ジュリオ・マンフレドニア
イタリア
写真
「グッド・ハーブ」
監督:マリア・ノバロ
メキシコ
写真
「ロック、ストック&トゥー
 ・スモーキング・バレルズ」

監督: ガイ・リッチー
写真
「秘密と嘘」
監督:マイク・リー
イギリス
写真
「マリア」
監督:アレクサンドル
      ・ソクーロフ
写真
「明るい瞳」
監督:ジェローム・ボネル
フランス
写真
「ナイト・オン・ザ
       ・プラネット」

監督:ジム・ジャームッシュ
写真
「ゴーストワールド」
監督:テリー・ツワイゴフ
アメリカ
写真
「普通じゃない」
監督:ダニー・ボイル
イギリス
写真
「鏡」
監督:アンドレイ
    ・タルコフスキー
写真
鬼海弘雄写真展
「東京ポートレイト」
東京都写真美術館


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映画「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」 監督:ロベール・ブレッソン

上






1-0_201708271317238f3.jpg













 フランス軍人の手記をもとに監督自ら脚本を書いた、脱獄する男の一部始終を描くサスペンス映画。

 舞台はリヨンにあるモントリュック監獄の独房、時は1943年。

 その前年、ナチスドイツは南フランスへ進軍し地域を占領、リヨンはドイツ軍やその治安部隊の街となっていた。
 翌1943年6月、レジスタンス運動の中心人物が逮捕、虐殺されるなど、ナチスドイツによるレジスタンス撲滅が一気に進んで行った。

 その頃だろう、映画の主人公フォンテーヌ中尉も逮捕され拷問を受け、独房に入れられた。
 監獄の中庭では、毎日のように銃殺刑の執行が進む。
 中尉は入獄後、時を置かず脱獄を決意し、獄中のレジスタンスらによる密かな協力を得て、獄中で得られるわずかなもので脱獄のための準備を始める。
 そんなある日、獄中のレジスタンスの一人が脱獄を試みたが失敗し処刑されてしまう。しかし中尉にとっては、彼の失敗が自分の脱獄手法の改善を図るきっかけとなった。
 そして、中尉も死刑の判決を受ける。これで脱獄の決意はより固まった。

 準備が整い、いつ脱獄するかという時に、中尉の独房に一人の青年が押し込まれて来た。
 当初、中尉は彼をドイツの回し者かと疑ったがそうではなかった。そして、行きがかり上、この青年とともに脱獄するしかない。
 ついに、その夜、中尉はふたりで脱獄するのであった。


 映画のタイトルが「脱獄」ではなく「抵抗」であるのは、中尉のレジスタンス活動を褒め称えているからだろう。
 映像の多くはフォンテーヌ中尉の独房の中。台詞は極わずか。音楽も入れない。だが、シーンに緊張感があり、スリリング。

 一方、脱獄実行シーンは屋外である。それゆえに、閉ざされた空間におけるそれまでの高い緊張が、屋外に出て拡散してしまう。そのせいか、あるいは脱獄シーンそのものが有り触れているせいか、残念ながら脱獄実行シーンは凡庸だ。

 独房シーンを飽きさせないのは撮影の技と、なんと言っても中尉役のフランソワ・ルテリエという人が醸し出す雰囲気。これが至って素晴らしい。
 この映画の登場人物の多くはプロ俳優を使っていないらしい。中尉役の彼は普通の学生であった。

 最後に。フォンテーヌ中尉の脱獄の翌年1944年に、リヨンはドイツ軍から解放される。


オリジナルタイトル:UN CONDAMNE A MORT S'EST ECHAPPE OU LE VENT SOUFFLE OU IL VEUT|
英語タイトル:A MAN ESCAPED|
監督・脚本・脚色・台詞:ロベール・ブレッソン|フランス|1956年|100分|
原案:アンリ・ドヴィニ|
出演:フォンテーヌ中尉(フランソワ・ルテリエ)|青年ジョスト(シャルル・ル・クランシュ)|ほか

【ロベール・ブレッソンの映画】 これまでに記事にした映画から。

スリ」(1960年)  「バルタザールどこへ行く」(1964年) 

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映画 「ナック」 監督:リチャード・レスター

上
 天然のナンシー


1-0_20170826084019135.jpg 1965年のロンドン。流行りはじめた若者文化、カウンターカルチャーの、ブームの部分をすくい上げて作ったドタバタ喜劇。
 当時のティーンエイジの子たちを観客対象にした映画だ。
 「最近の若いもんは…」とブツブツ言う街の大人たちをスナップした、ドキュメンタリーっぽいシーンが各所に幾つもあって、世間にチョイ逆らいたいティーンエイジの笑いを誘ったんだろう。

2-0_20170826084408f36.jpg そんな古臭い大人たちの批判をよそに、若いもん3人のお話が進みます。
 やたら女にもてる(努力もしている)きざなドラマーのトーレン、もてたいがもてない要領の悪いコリン、天然系おのぼりさんの女の子ナンシー、この3人が主人公。

 そのほかに、たくさんの美人の女の子たちが入れ替わり立ち替わり登場する。
 それはトーレンの彼女達や、トーレンの持て過ぎをひがむコリンの妄想シーンに出てくる女の子たち。
 案外、ここが見どころかも知れない。(ただしヌードもセックスもない健全映画、だが男尊女卑)

 ちなみに、この女の子の中に、ハイティーンだったジェーン・バーキンやシャーロット・ランプリングが出演しているらしい。(捜してください)

 筋は言うほどのものではないが、モノクロ映像がきれいです。
 1965年のロンドンの風景やファッションが何やらアンティークです。

 監督は本作「ナック」製作の前年(1964年)に、「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」を、「ナック」製作の同年1965年に「ヘルプ!4人はアイドル」を撮っている。

 ボブ・ディランの英国ツアーに追ったドキュメンタリー映画「ドント・ルック・バック」(1967年)に出てくるティーンエイジの子たちも、この「ナック」やビートルズ映画を見たんだろうな。    

 1969年ごろのロンドンに住む青年を描いた映画「ウィズネイルと僕」(1987年)の二人は、この「ナック」の主人公たちと同世代の数年後なのでしょう。 (下線部をクリックして、その過去記事にお進みください)

 時代はいつも多面的です。
 その時代をどんなスタンスで見るか、見たかで、時代の色合いは違って見えます。
 例えば、ポップカルチャーに焦点を当てて見る、カウンターカルチャーの視点で見る、政治が人に与えた影響の文脈で見る。
 ひとりの人の中でも、時とともに見方は移ろって行きます。


オリジナルタイトル:The Knack ...and How to Get It|
監督:リチャード・レスター|イギリス|1965年|85分|
原作戯曲:アン・ジェリコー|脚色:チャールズ・ウッド|撮影:デイヴィッド・ワトキン|
出演:ナンシー(リタ・トゥシンハム)|コリン(マイケル・クロフォード)|トーレン(レイ・ブルックス)|ジェーン・バーキン|ジャクリーン・ビセット|シャーロット・ランプリング|

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映画 「石合戦」 監督:若杉光夫

上
石合戦。右方向の対岸にいる相手陣営と石の投げ合い。
このシーンは、仮設の木の橋の上から撮っている。


 兵庫県の山あいにある、のどかな村の人々を描く映画。

 川を挟んで二手に分かれた子たちが、互いに対岸の子たちに向けて、河原の石の投げ合いをしている。石合戦だが、男の子の遊びでもある。
 どちらの陣営の子も、同じ小学校に通っているが、仲が悪い。
 仲が悪いのは、その子らの親たちが仲が悪いからなのだ。いや、親だけじゃなく祖父母の代も、昔から仲が悪い。
 かつて、石が顔に当って失明した人も村人の中にいる。
 映画は、村の大人同士のつまらぬ人間関係が、そのまま子たちの人間関係に影響するのだと言っている。

 県会議員の大野という男は、この村で大人たちの頂点の座にいるらしい。彼の家は戦前までは大地主だった。
 村一番の真面目な男・松蔵(宇野重吉)は、戦後、この大野から僅かな土地を買った。
 この極めてまっとうな方法で土地を買った松蔵に大野は苛立っていた。大野に寄り添い、大野の為なら、何かあればひと肌脱ぎます、なんて言う人々に乞われて、大野は土地を手離す、なんていうストーリーが好きな男なのだ。松蔵はそうではなかった。

 子たちが川遊びしていたその日、この大野の旦那が、川にかかる仮設の橋を渡っていた。
 そこへ、松蔵の子が橋の下から手を伸ばし、大野の足を引っ張り、彼を川へ落としてしまった。
 子どもの悪戯だったが、大野は怒った。大野は松蔵を村八分にしてしまう。村八分にされて松蔵の子も、村の子たちから村八分にされてしまう。

1-0_20170824193604438.jpg 主人公の男の子・竹丸(浜田光夫)は、村の神社の一人息子。
 がき大将の正反対で、石合戦が怖いし、仮設の低い橋から川に未だに飛び込めない。(その落差1メートルほど)
 竹丸の母親(山田五十鈴)は病で長年、伏せっている。竹丸の父親(小沢栄太郎)は、神社の神主で、夏の祭りの収支がマイナスなのが頭痛の種。(賽銭などの収益-諸費用の支出)
 「ここは好きじゃない大野にすがるしかないな。」なにしろ、大野は小学校の校舎新築で業者と癒着し、大金を懐にしたらしい。(村中の噂)

 さて、大野が川に落とされたあと、河原にいた子らの中に、大野は竹丸の姿を見た。
 そして、大野は竹丸を密かに呼んで、誰が俺を川に落としたのだと問いただした。大野得意の甘言と脅し(アメとムチ)を竹丸に示し、つい、やったのは松蔵の子だと竹丸は言ってしまう。
 これが噂となって広がり、竹丸は子らから村八分となってしまう。

 話の展開はいくつかのエピソードと共に進む。
 竹丸の母が大阪の病院に緊急入院する。村の合併話が、大野の先導で進む。
 小学校の若い教師・渡辺先生(内藤武敏)が子たちの石合戦を止めさせる。また、渡辺先生が「アカ」だという噂を真に受ける大野は、先生を辞任に追い込もうとする。それを支援する小学校校長や村長といった村のお偉いサンたち。
 そして、大野が贈収賄で逮捕される。
 一方、竹丸の母がこの世を去る。真剣に神に祈った竹丸は、神殿で暴れる。

 そうしてラストは少々強引だが、ハッピーエンドに。
 竹丸の家は村では裕福だ。この竹丸の生活環境と、村の貧しい家の子の境遇を映画は対比してみせる。
 渡辺先生のシーンでは、子供対象の教育映画っぽい雰囲気があって鼻白むシーンはあるが、これを乗り越えられると、昭和30年当時の日本が垣間見れる。

監督:若杉光夫|1955年|91分|
原作:上司小剣|脚色:松丸青史 、 吉田隆一 、 村山亜土|撮影:仲沢半次郎|
出演:竹丸(浜田光夫)|その父・上神満臣(小沢栄太郎)|その妻・鴻子(山田五十鈴)|小学校の教師・渡辺正男(内藤武敏)|県会議員の大野剛造(嵯峨善兵)|松蔵(宇野重吉)|ほか

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映画 「無花果の顔」(いちじくの顔) 監督:桃井かおり 出演:山田花子、石倉三郎

上

 一家四人の門脇というウチの、幸せの変遷を描く映画。
 今までにないタイプの喜劇映画です。いくつものエピソードが絡みます。それと、お伽噺の要素を持ち合わせていて、ちょっとシュールです。音楽はいいセンス。

1-0_2017081915362933d.png 表通りの裏手、門脇の家。
 ちゃぶ台がある一家団らんの和室と縁側、無花果(いちじく)の木が植わった中庭、中庭に沿って濡れ縁伝いの先にある風呂場は薪で沸かす風呂、赤い冷蔵庫やカラフルなガラス瓶が並ぶ台所とその一角がミシン仕事のスペース。

 妻(桃井かおり)は、夫思いの世話女房。(いささか古いタイプの女性像の設定だ)
 夫(石倉三郎)は水道・ガス管のベテラン配管工。茹でたジャガイモに塩辛を乗せて風呂上りのビールを美味そうに飲む。(仲睦まじいが、少々ズレた夫婦の会話は、新作落語の登場人物のよう)
 今夜の夕食は、ちゃぶ台でチーズフォンデュ。今夜は、娘(山田花子)に息子(HIROYUKI)も加わって久々に家族団らんのひと時。

 さて、何でもなく過ぎる日々から、ちょっとした物語は始まる。
 夫が何やら忙しい。家を空けたと思ったら、現場に近いウィークリーマンションを借りたという。
 夜間の徹夜仕事らしい。でも、よくよく聞くと仕事じゃない。昔、職人仲間が手抜き工事をした建物がリニューアル中で、夫は誰もいない夜間の現場に密かに侵入し、当時の手抜き工事の配管をボランティアで、ていねいに直しているのだ。黙ってればわかりゃしない事を。ひとがいいったらありゃしない。

1-00_20170819154711f30.png ボランティアの案件が無事終わり、やっと通常の仕事を始めた矢先、夫が現場で倒れ死亡。(脳溢血か心筋梗塞か)
 急な死に直面し家族はぼんやりしている。職場の面々が通夜に来る。妻の弟(光石研)が心配してそっと姉に聞く。生命保険は?労災は? そんなこと知らないわよ。

 妻は、娘(山田花子)が一人住まいしている部屋に転がり込む。娘はちょっとした小説家で雑誌に連載を書いている。

 妻は仕事を見つけた。料理が美味いきちんとした飲み屋で働き始める。その店の主人(高橋克実)が、ある日、求婚する。
 門脇のあの家を素敵にリニューアルして、二人が住み始める。門脇の娘息子も、店の主人の娘も祝福している。

 娘(山田花子)が赤ちゃんを出産した。娘が嫌がった年上の男(岩松了)の子だったが、娘はひとりで育てるという。
 最近、妻(桃井かおり)の様子が変だ。新しい夫(高橋克実)は心配する。優しい夫は妻を温かく包み込むのであった。(一応、これでめでたしめでたし)
 そして、こんな人々の生きざまを庭先からじっと見守ってきた、これからも見守って行く無花果の木。それから、門脇家の娘は、幼い頃から、この無花果の木と通じ合えているようだ。



2-0_20170819155439615.png 配慮された細やかな脚本が、生活のリアルな質感を呼びます。例えば、通夜の準備シーンでは。
 缶の箱に納めた古い家族の写真の数々(娘が父親の写真を探している、葬式なんだという実感や経験を思い起こさせる)。
 生臭い握りより稲荷寿司か太巻きよネと言いながら、通夜客のために、出前の店選びに悩む妻。そして夫が死んだのに、寿司屋の女将とあてどもないオバサン会話を続ける妻。(死をまだ実感できない経験が思い浮かぶ)、等々。

 可笑しな会話があちこちに挿入されています。例えば、斎場にて。
 「どうして焼くの、まだ生き返るかもしれないのに、私、認めないから」 
 「火で焼いたら熱いでしょ お父さんかわいそうでしょ それでなくてもおとうさん暑がりなのに」
 娘:「死んだんだからしょうがないでしょ」
 妻:「親を燃やして、しょうがないでしょという言い草はないでしょ」

3-1_20170819155735034.png シュールな側面。例えば、夫が借りたウィークリーマンションでの夢想のシーン。
 隣家の若い女(金魚の化身?)が、マンションの部屋に・・・。

 当時、観た印象はわからん映画でしたが、今回観てみると、ウ~ン、いい映画です。
 大人のお話ですね、この映画は。

監督・脚本:桃井かおり|2006年|94分|
撮影:釘宮慎治|音楽:Gilad Benamram|音楽プロデューサー:Kaz Utsunomiya|美術:安宅紀史|
出演:娘(山田花子)|息子(HIROYUKI)|母(桃井かおり)|父(石倉三郎)|新しい父親(高橋克実)|娘の彼氏(岩松了)|母の弟(光石研)|父親が借りたウィークリーマンションの隣に住む謎の女(渡辺真起子)|ほか

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映画 「ギャラリー 欲望の画廊」  監督:ダンカン・ウォード

上

 香辛料をうんと効かせた辛辣なコメディ。その分、脂っこくなくサラリと仕上げた映画。映像もきれいだ。

1-0_2017081816335729d.jpg どこまで真実かは知らないが、イギリスの現代アートシーンの狂った裏側を強烈に風刺している。(のかな)
 好色だが、やり手の美術商アート・スピンドルと、現代美術コレクターのボブ・マクルストン、この二人の中年男が悪役主人公と言っていい。
 (アメリカの現代アート作家だったバスキア(1960 - 1988)に、若い頃に接したという人物設定で、1980年代から現代アートで生きて来た40歳半ばの中年だ)

 とにかく、その絵画やオブジェは、世の中にその一点しかない。
 だから、これがビジネスかと思わせるほどに、売る買う両者の騙し合い。カネ、名声維持、見栄と猜疑心、精神的摩耗・・・。

 一方、成功したい魂胆丸だしの、現代アートの駆け出しアーティストたち。独立してギャラリーのオーナーになりたい賢い女。そして、アートシーンの末端にすがり続けたが、芽が出ない男の自殺。

 そんな世界に男と女が生きている。不倫、チョッカイに、パトロンという利害関係。登場人物の相関図は錯綜する。それにゲイとレズ、果ては離婚と財産分与騒動。話は盛りだくさんだ。

2-0_20170818163902513.jpg 逸話のひとつとして、画家モンドリアン(1872 - 1944)の「Boogie Woogie」を、その昔、画家本人から買った老富豪が出てくる。
 画商のアートも、美術コレクターのボブも、そしてその他の画商・個人コレクターもこの絵を狙う。(きっとサザビーズや美術館も、か)
 しかし老富豪は売りたくない。だが夫人は召使の男と組んで、値を吊りあげ売ろうとする。その結末は・・。

 もうひとつ。アートの所で5年働いていたが、ボブをパトロンに据えて、ギャラリーのオーナーになった女性ベスは、赤裸々なビデオアート作品を手掛ける女性アーティストをピックアップし、第一回目の個展を開く。
 アートやボブは、この作品が映像という複製芸術なので、値が付く芸術とは思わない様子が面白い。

 ついでに。ベスの替わりに画商アートに雇われた女性ペイジが、生まれながらの不具合で手術を受ける。その時、摘出された臓器を、ボブはホルムアルデヒド漬け作品にしてペイジに送るのだ。
 ひどい話だが、これは、イギリスの現代アート・アーティスト、ダミアン・ハーストを連想させる。この作家は、鮫、牛、羊の全身を、そのまま、ホルムアルデヒドを満たした大きなガラス箱に保存した作品で有名。

 とにかく、カネと名声を求めて、人々がうごめく現代アートシーン。
 ベスに出し抜かれた画商アート・スピンドルも、離婚と財産分与を切り抜けたコレクターのボブ・マクルストンも、性懲りもなく、したたかに明日へと向かうのである。

オリジナルタイトル:Boogie Woogie|
監督:ダンカン・ウォード|イギリス|2009年|94分|
原作:ダニー・モイニハン 小説『Boogie Woogie』|脚本:ダニー・モイニハン|撮影:ジョン・マシソン|
出演:ロンドン屈指の美術商・アート・スピンドル(ダニー・ヒューストン)|美術収集家で、アートの元で働くベスを引き抜きパトロンになる・ボブ・マクルストン(ステラン・スカルスガルド)|アートの元で働く女性で、ボブの協力を得て独立してギャラリーを持つことになる賢い女・ベス(ヘザー・グラハム)|新進気鋭の若手アーティストでベスの恋人ジョー(ジャック・ヒューストン)|ジョーと不倫する、ボブの妻・ジーン・マクルストン(ジリアン・アンダーソン)|ベスに替わってアートの元で働くローラースケートの女・ペイジ(アマンダ・サイフリッド)|モンドリアンの名画Boogie Woogieの第一作を所有している老富豪アルフレッド・ラインゴールド(クリストファー・リー: ピエト)|その妻でその絵を売りたいアルフリーダ(ジョアンナ・ラムレイ)|その召使いでアルフリーダと一緒になるロバート・フレイン(サイモン・マクバーニー)|アートシーンで食えない男・デューイ(アラン・カミング)|ジーンの友人エミール(シャーロット・ランプリング)|ほか

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1年前・3年前・5年前の8月、一夜一話。(2016年8月・2014年8月・2012年8月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-08-15 Tue 06:00:00
  • 映画
1年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  <2016年8月 Archive

写真
「雷魚」
監督:瀬々敬久
佐倉萌
写真
「皆月」
監督:望月六郎  奥田瑛二、
吉本多香美、北村一輝
写真
「浅草四人姉妹」
監督:佐伯清
相馬千恵子,関千恵子,杉葉子
写真
「トワイライト ささらさや」
監督:深川栄洋
新垣結衣、大泉洋
写真
「トレインスポッティング」
監督:ダニー・ボイル
イギリス
写真
「ある子供」
監督:ダルデンヌ兄弟
ベルギー
写真
「ミリオンダラー・ホテル」
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ
写真
「フランシス・ハ」
監督:ノア・バームバック
アメリカ
写真
「カッコーの巣の上で」
監督:ミロス・フォアマン
アメリカ
写真
「死刑台のエレベーター」
~映画音楽に魅せられて
監督:ルイ・マル|フランス
写真
「バルタザールどこへ行く」
監督:ロベール・ブレッソン
フランス



3年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年8月 Archive

写真
「時代屋の女房」
監督:森崎東
夏目雅子、渡瀬恒彦
写真
「極道ペテン師」
監督:千野皓司
フランキー堺、伴淳三郎ほか
写真
「東京五人男」
監督:斎藤寅次郎
横山エンタツ、花菱アチャコ
写真
「幻影師アイゼンハイム」
監督:ニール・バーカー
アメリカ
写真
「博士の異常な愛情」
監督:スタンリー
 ・キューブリック|アメリカ
写真
「チャイニーズ・ゴースト
       ・ストーリー」

監督:チン・シウトン|香港
写真
「ソウルガールズ」
監督:ウェイン・ブレア
オーストラリア
写真
犯罪「幸運」
監督:ドリス・デリエ
ドイツ
写真
最近読んだ本。
「ナツコ 沖縄密貿易の女王」
文春文庫:2007年
写真
京都観光街歩き、
   そして貴船の川床
    
写真
箱根 姥子温泉
岩盤自然湧出泉 ~秀明館



5年前の8月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の8月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2012年8月 Archive

写真
「ひとりぼっちの二人だが」
監督:舛田利雄
吉永小百合
写真
「教祖誕生」
監督:天間敏広
北野武 萩原聖人 岸部一徳
写真
「居酒屋ゆうれい」
監督:渡邊孝好
室井滋 萩原健一 山口智子
写真
「誰も知らない」
監督:是枝裕和
柳楽優弥 YOU
写真
「夜の河」
監督:吉村公三郎
山本富士子
写真
「愛より強く」
監督:ファティ・アキン
ドイツ、トルコ
写真
「バグダッド・カフェ」
監督:パーシー・アドロン
西ドイツ
写真
「モーツァルトとクジラ」
監督:ピーター・ネス
アメリカ
写真
「動くな、死ね、甦れ!」
監督:ヴィターリー
  ・カネフスキー(ロシア)
写真
「光の旅人 K-PAX 」
監督:イアン・ソフトリー
アメリカ
写真
「青いパパイヤの香り 」
監督:トラン・アン・ユン
フランス ベトナム
写真
「父、帰る 」
監督:アンドレイ
    ・ズビャギンツェフ
写真
「勝手にしやがれ」
監督:ジャン=リュック
        ・ゴダール
写真
「家の鍵」
監督:ジャンニ・アメリオ
イタリア
写真
「にがい米」
監督:ジュゼッペ
     ・デ・サンティス



映画 「泣虫小僧」(泣蟲小僧)  監督:豊田四郎

上
左から、菅子と啓吉、そして蓮子。


 泣虫になってしまいそうな小僧、啓吉11歳の姿を追えば、幸せ薄い少年物映画。
 啓吉の母・貞子とその妹三人の四人姉妹に注目すれば、1938年(昭和13年)当時の、進んだ女性が見えて来る映画。

1-0_20170810172134c98.jpg 貞子(栗島すみ子)は二児の母。小さな一軒家に住んでいるが、夫を亡くし生活に困っている。女手で喫茶店を開業するらしい。やり手だ。
 貞子には愛人がいる。この家で一緒に住むことになるが、男は商売に失敗したようで、うな垂れている。
 啓吉はこの男を避ける。啓吉の幼い妹は母親から、男をパパと呼ばされる。

 貞子は啓吉を、貞子の次妹・寛子に預けようとする。(今回が初めてではなさそう)
 寛子は「またぁ」と迷惑がるが、姉に言えない。自分に替わって夫・勘三に断わりを言わそうとするが、勘三は人がいい。「引き受けましょう」と義姉に、つい言ってしまう。
 勘三は小説家だが売れない。生活は楽じゃない。だから勘三は寛子の尻の下。
 始終暇な勘三は啓吉と相性がいい、啓吉も好きな叔父さん。しかし、寛子は啓吉を追い出したい。

 ある日、勘三は啓吉を連れて、私鉄沿線、郊外に住む蓮子(市川春代)を訪ねる。
 蓮子は、貞子をはじめとする四人姉妹の末の妹。まだ二十歳前だが、画家(志望)の夫と二人暮らし。
 この夫婦は妙に明るいが、料金不払いで電気を止められている。そんな生活を知った勘三は啓吉を連れて、すごすごと帰って行く。

 結局、啓吉は菅子のもとに落ち着く。菅子は四人姉妹の三番目、アパートの一室を借りて一人住まい。
 会社勤めをしているようだ。勘三に優しい。勘三も菅子に、なつく。
 菅子は勘三に問うた。「叔母さんの誰が好き?」 勘三の返事は「おかあさん」
 
 末の妹・蓮子も三番目の菅子も現代っ子だ。蓮子は少々飛んでいるアート系モダンガールなら、菅子は自立する女性、職業婦人といったところか。(とにかくこの四人姉妹はみな揃って、勢いがいい)

 下の姉妹ふたりが、姉の貞子を訪ねる。「啓吉は、やっぱり母親の元が一番よ」と自立する女・菅子がきっぱりと言う。(末っ子の蓮子は、姉の前では物言えない。)
 そんなことで、啓吉は母親に引き取られる。

 啓吉が体操の授業中に用務員室に呼ばれる。行ってみれば、お母さん。よそ行きの着物姿だ。
 貞子は用務員の男に聞かれないよう、部屋を出て啓吉に言った。「急に九州へ行かなくちゃならないのよ。すぐ、帰って来るから、ね。」
 啓吉は泣きそうになりながらも、母の言うことを信ずるよりほか無かった。

 学校が終わって、家に帰ると家は家具ひとつ無い、もぬけの殻。
 貞子は、啓吉の妹だけを連れて、愛人の元へ行ってしまった。

 啓吉が頼りにしたのは、菅子おばさんだけだった。小説家の勘三おじさんは頼りにならない。
 それは啓吉が勘三の家に世話になっている頃の話だ。
 勘三は、その夜、啓吉を飲み屋に連れだし、啓吉は店で寝込んでしまう。目を覚ますと勘三おじさんの姿が無い。啓吉は慌てて呑み屋を出て、勘三を探して夜の街をさ迷う。(それは勘三がトイレに立った隙だった、勘三は啓吉がいなくなったことに気付かず、深酒でその店でつぶれてしまう。)
 さ迷う啓吉を憐れに思い救ったのは、尺八吹きの男であった。
 一人住まいの男は、啓吉を一晩泊めて、朝飯を食わせてやり、そして男は啓吉を励ました。辛い時は誰でもある、そんな時は歌を歌うんだ、と。

 映画製作年の1938年(昭和13年)は、国家総動員法施行の年、ヒトラー青少年団来日。
 映画のシーンで、家の上を軍用機が飛んでいく。 
 公開当時の観客は、この作品をどんなふうに観たのでしょうか。

 ちなみに本作から連想する映画に、少年と家族をテーマにしたものでは、大島渚の「少年」(1969年)、是枝裕和の「誰も知らない」(2004年)、小栗康平の「泥の河」(1981年)。洋画ではフランソワ・トリュフォーの 「大人は判ってくれない」(1959年)などが思い浮かびます。
 四人姉妹の映画では佐伯清の「浅草四人姉妹」。戦後復興期の女性の姿を描いていました。
 (映画タイトル名をクリックして記事をお読みください)

 <これまでに記事にした映画から>
 出演女優の栗島すみ子は、成瀬巳喜男の「流れる」に、やはり特別出演ということで出演していました。
 二番目の妹役の逢初夢子は、島津保次郎の「隣の八重ちゃん」(1934年)の八重ちゃん役や、山田洋次の「霧の旗」 に出演。
 末の妹役の市川春代は、マキノ正博の「鴛鴦歌合戦」(1939年)、伊丹万作の「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年)に出演していました。
 
監督:豊田四郎|1938年|80分|
原作:林芙美子|脚色:八田尚之|撮影:小倉金弥|
出演:泣虫小僧の田崎啓吉11歳(林文夫)|啓吉の母親・貞子(栗島すみ子)|貞子の次妹・寛子(逢初夢子)|貞子のその次の妹・中橋菅子(梅園龍子)|貞子の末の妹・蓮子(市川春代)|貞子の愛人・吉田善吉(一木礼司) |寛子の夫で小説家の松山勘三(藤井貢)|蓮子の夫で画家の瀬良三石(高島敏郎)|
尺八吹きの男・水上竜山(山口勇)| 啓吉の幼い妹・礼子(若葉喜代子)|寛子の子・伸太郎(横山一雄)|

【 豊田四郎の映画 】~これまでに記事にした作品です。 

夫婦善哉」「猫と庄造と二人のをんな」「雪国」「珍品堂主人」「新・夫婦善哉」「台所太平記」 「波影

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映画 「ラブゴーゴー」 台湾映画 監督:チェン・ユーシュン

写真
初恋のひと、リーファ










写真
パン屋のアシェン


 コテコテの台湾製コメディかと思いきや、案外、すっきりとした爽やかさ。

1-0_20170805151418f33.jpg パン屋のおばさんが貸してる部屋に、3人の男女が住んでいる。
 アシェン(チェン・ジンシン)は、おばさんの甥。長年、パンとケーキの職人として真面目に働き続けて、今じゃ店を任されている。
 シュウは田舎から出て来た青年で、音楽で食って行きたいが芽が出ない。金がなく、店の売れ残りのパンで、日々何とか、しのいでいる。
 OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)は、大食漢で甘いモノ好き。恋人が欲しい。

 さて、ここから三話構成の第一話が始まります。
 ある日、店にレモンケーキを買いに来た女性がいた。美人だ。アシェンは、その女性が、小学校6年の同級生で、初恋のひと、リーファだと、すぐに気付いた。
 忘れていた初恋のひとは、その日から毎日来店するが、アシェンはドキドキするだけで、声もかけられない。手紙に託そうともしたが渡せない。
 そこでアシェンは考えた。彼にとって得意なコミュニケーション・ツールは、ケーキだ。店のケーキのネーミングを、「リーファへの想いの言葉」に替えはじめる。(リーファはアシェンに気付いていないが、ケーキの名前を面白がったようだ)
 さらには、テレビ放送を通して歌の歌詞で彼女に想いを伝えよう! 音痴のアシェンは、素人のど自慢に応募し、同時にシュウから歌の特訓を受ける。
 しかし、テレビ番組を見てくれなきゃ。だが放送日時を書いた手紙が渡せない。その時、業を煮やした店の女の子が、アシェンの書いた手紙をさっと奪い、リーファを追いかけ手渡した。

 第二話。
 OLのリリーが、街でポケベルを拾った。(携帯電話がまだ無い時代の話です)
 ポケベルをいじり回しているうちに、持ち主の電話番号が分かって、恐るおそる電話をかけてみると、留守番電話のメッセージが若い男のいい声! リリーはこの声に惚れてしまうが・・・。

 第三話。
 訪問セールスのアソン(シー・イーナン)が、痴漢撃退グッズを売り歩いているが、売れない。(第一話では、パン屋のおばさんに売ろうとした)
 高層ビルに迷い込むように入り込んだアソンは、高級な美容室を見つけ、客のフリして入った。ここは女性ばかりだ、セールスできるぞと、アソンは踏んだのだ。
 彼を担当したのは、リーファであった。リーファはこの店を経営している。アソンは彼女に一目惚れ。
 しかし、当のリーファは、愛しい彼との別れ話の時であった。
 
 三話とも、程よいコメディ性を保ちながら、爽やかなテイストです。
 第一話でアシェンがリーファに宛てた手紙文には、ジーンと来ますね。
 第一話のラストは第三話のラストになってつながります。
 第二話は話としては弱いのですが、可笑しい増量剤を加えていて、悪くない。2003年の邦画「茶の味」に出てくる巨大な少女は、本作のリリーの映像表現を真似ています。
 第三話はちょっと頂けない。

 総じて言うと、第一話の話で全編を描いてもらいたかった、というのが私の気持ちです。

オリジナルタイトル:愛情来了 Love Go Go|
監督・脚本:チェン・ユーシュン|台湾|1997年|113分|
撮影:ツァイ・チェンタイ|
出演:パン屋のアシェン(チェン・ジンシン)|アシェンの同級生で初恋の相手・リーファ(タン・ナ)|音楽で食って行きたいシュウ(マニェン・シェン)|OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)|訪問セールスのアソン(シー・イーナン)|パン屋のおばさん(チウ・ショウミン)|パンにガムを入れた男(ホアン・ツジャオ)|

下
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気になる映画 58  《これから上映の映画》

写真
「彼女の人生は間違いじゃない」
監督:廣木隆一  瀧内公美、光石研
7/15~ロードショー 
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「おクジラさま ふたつの正義の物語」
監督:佐々木芽生 9/9~
和歌山県太地町ドキュメンタリー
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「ファウンダー
    ハンバーガー帝国のヒミツ」
7/29~ロードショー
写真
「さすらいのレコードコレクター
          10セントの宝物」
K's cinema 2018年春~
写真
誕生! ヘルツォーク特集2017
監督75歳記念上映
K's cinema 10/7~27
上映作品中、下記は記事にしています
シュトロツェクの不思議な旅
写真
ジャック・ベッケル特集
新文芸坐シネマテークvol.17
8/10、25


映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ

上

 何世紀も生きて来たヴァンパイア夫婦の話。

1-0_201708041043400af.jpg その昔、人間の首筋に噛みついて生血を吸った彼らも、21世紀では、それはもう蛮行で、節度あるヴァンパイアはドリンクとして血を飲んでいる。

 夫のアダムは、病院の血液検査室の男に大金を渡し、輸血用の新鮮な血を横流ししてもらっている。
2-0_20170804105034de4.jpg 妻のイヴは、ヴァンパイアの老作家(ジョン・ハート)がどこかから仕入れてくる信頼度の高い血を分けてもらっている。

 なにせ近年、人の血の多くは汚染されていてヴァンパイアにとっては危険である。汚染されていない清い血の継続的供給はヴァンパイアにとって死活問題であった。

 アダムは何世紀も前から作曲家で、今ではクラシックの作曲家となってしまった人々とも活動してきた。
 ただしアダムはヴァンパイアなので、「人間」の歴史の表舞台には出て来れず、自身の曲を他の(人間の)作曲家に託したりしてきた。アダムは控えめな男であったが、そのことが不満と言えば不満であった。

 そして、20世紀半ばからは作曲するロックミュージシャンとして生きて来た。
 彼の部屋は、1960~70年代のエレキギターの名器や、1905年製のギブソンのアコースティックギター、エフェクター類やドラムセット、ヴァイオリンやリュートなどなど、様々な楽器がグチャグチャ無造作にそこらじゅう。そして、自宅録音のために、スタジオ録音用の往年の機器類が所狭しと並んでいる。
 イヴの部屋には、あらゆる国のあらゆるジャンルの書物がそこらじゅうに積まれている。(日本の文庫本もある)
 夫婦とも、実にマニアックな方々である。監督の理想の部屋なんだろうか。

 さて、お話の方はというと、大したこともないので割愛。観てのお楽しみ。(123分、一応飽きずに見通しました)
 敢えて言えば、ストーリーのスジよりも、ストーリー設定に重きがある映画といえましょう。
 あるいは、監督の世界観を覗き見ることができる作品なのかもしれない。

 気に入った台詞が2つありました。
 イヴが、鬱になりかけのアダムに言う。「自分の心にとらわれるのは、生きる時間の無駄づかいよ」
 もうひとつは、モロッコの港町のライブハウスで夫婦して聴いた、素晴らしい若手歌手を指して、アダムがイヴに言う台詞。「有名になるには、もったいない才能だ」 (確かに素晴らしい歌手です!伴奏は控えめなギターと不思議なパーカッションだけ)
 有名になったが故に才能が消えていくミュージシャンを、何世紀に渡ってたくさん見て来たアダムの言葉。(監督の名言か)

 とても驚いたことがありました。
 映画の半ばあたりで、突然、ある曲が流れます。
 その曲は、女性ソウル歌手のデニス・ラサールが歌う「TRAPPED BY A THING CALLED LOVE」(デニス・ラサール作詩作曲)
 この曲は、デニス・ラサールのアルバムのA面1曲目に収録されてる曲で、私が好きなソウルのベストに入るLPなのです。 (Westbound Records ‎– 1972年)
 いや、ビックリ!
 イヴはこの曲をかけて、元気のない旦那とダンスします。

 つっこみを3つ。
 アダムが病院で輸血用血液を分けてもらうシーン。
 病院の男(人間)がアダムに言う。アダムが首にかけている聴診器を見て、「それ、古いね、70年代のモノかい?」
 私がアダムなら、こう言いかえす。「あんたの座ってる、その椅子、古いね、70年代の椅子だろ」
 男が座ってる椅子は、スチール製、キャスター付のねずみ色のくたびれたオフィス家具なんです。
 ちなみに、監督は1953年生まれ。70年代が懐かしいのでしょうかね。

 アダムの手足となっている男(人間)が、アダムが欲しがった貴重なエレキギターを探しだして納品しに来たシーン。
 ケースからおもむろにギターを取り出して、アダムが試奏する。しかし、だ!
 何か、気の利いたリードのフレーズを弾くのかと思いきや、たどたどしく2フレットで指3本のAしか押さえない・・・、それだけ。オイオイ、これ失笑でした。(楽器店で恐るおそる試奏する中学生みたい)

 3つ目は、本作の題名です。英語タイトルをまんまカタカナにしただけ。ハナから売る気がない素振りが素晴らしい。

 最後に、これまでに記事にした映画で、ヴァンパイアの映画「SUCK サック」、これもロックがらみでした。

下 
オリジナルタイトル:Only Lovers Left Alive|
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ|アメリカ イギリス ドイツ|2013年|123分|
撮影監督:ヨリック・ルソー|音楽:ジョセフ・ヴァン・ヴィセム|
出演:アダム(トム・ヒドルストン)|イヴ(ティルダ・スウィントン)|イヴの妹のエヴァ(ミア・ワシコウスカ)|老作家マーロー(通称キット)(ジョン・ハート)|アダムの手先として動くイアン(人間)(アントン・イェルチン)|ワトソン医師(人間)(ジェフリー・ライト)|


【ジム・ジャームッシュ監督の作品】 ~これまでに記事にした映画から
(題名をクリックしてご覧ください)

パーマネントバケーション」「ナイト・オン・ザ・プラネット」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」

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映画 「大統領の理髪師」 韓国映画  監督:イム・チャンサン

上
左から、理髪師のソン、大統領、側近。

 
 社会的にとてもシリアスな題材を、敢えてコミカルなタッチで映画化にするには、勇気が要ると思います。

 大企業による公害被害とその訴訟勝利という実話を扱った、ジュリア・ロバーツ主演映画「エリン・ブロコビッチ」が、まさしくそうした映画でした。(この記事はこちらからどうぞ)

1-0_201708011416255d3.jpg 本作の「大統領の理髪師」も、基本こうしたコミカルタッチな映画です。
 ここでのシリアスな題材とは、1960年代、韓国大統領の独裁政治によって犠牲となった一般市民の悲劇です。
 でも、観てみるとわかりますが、意外に軽い仕立てに作られています。

 「大統領の理髪師」で終始一貫、固有名詞なしで登場する「大統領」とは、実は第5代大統領の朴正煕です。(1917-1979)
 (その娘は第18代大統領のパク・クネ(朴槿恵)ですね。)
 ただし、理髪師のお話は創作です。つまり創作のお話を語ることで、映画は朴正煕の独裁政権を批判しています。

 「エリン・ブロコビッチ」は、ジュリア・ロバーツ演ずる普通一般の女性が、ある偶然の機会で、弁護士代行として公害訴訟に立ち向かうコミカルな話でしたが、本作「大統領の理髪師」は、ソン・ガンホ演ずる理髪店の男が、ある日、無理やり、大統領の専属理髪師にされてしまいます。このことから喜劇と悲劇が始まります。

 ジュリア・ロバーツ演ずる女性は高卒で、弁護士として求められるハイレベルな専門知識からは、ほど遠い人物でした。一方、ソン・ガンホ演ずる理髪師は文盲で世事に疎い男です。両作品ともに、この知識ギャップが喜劇設定になっています。
 
 さて、ソン・ハンモは定期的に官邸(青瓦台)に呼ばれ、官邸内に新設した理髪室で、国で一番偉い男(独裁者)の、髪を切りヒゲを剃ることになります。こりゃ、誰でもビビります。しかし名誉でもあるわけです。

 ここで事件が起きます。
 細菌性の下痢症状を抱えた北朝鮮の兵士(スパイ)が、ソウルに侵入して来ます。そしてソウル市内にこの細菌が拡がりはじめます。
 韓国当局はこの細菌をマルクス病菌と名付け、下痢をした人間は北朝鮮と接触したヤツだと断定し検挙し始めます。
 また同時に当局は、急に下痢の症状になった市民は、「スパイと接触したヤツ」に接触して、下痢になった人間だと断定し、尋問をし密告を促します。
 ソン・ハンモの理髪店がある町内では、彼の知り合い幼なじみ数人が疑われ、尋問を受け拷問を受け処刑されてしまいました。

 そんなある日、ソン・ハンモの店に、大統領側近の偉いサンが散髪に来ていました。(店は官邸のお膝元の街にあります)
 そして運命です。その時、ソン・ハンモの息子ナガンが、お腹が痛いと父親に訴えました。偉いサンはギロッと睨みます。
 大統領から寵愛を受けているソン・ハンモですから、国の民としてもっとも模範的態度を示さねばなりません。

2-0_201708011423262e7.jpg 彼は息子を連れて近くの交番に出頭します。交番は町内にあって警官とは親しい間柄です。まさか、息子を当局に渡すことはなかろうと踏んだのですが、ナガンは当局に送られ電気拷問を受けます。
 しかし、ナガンの身体は電気を通されても、なぜかただ、ムズガユイだけでした。

 数日後、送り返されてきたナガンは半身不随になっていました。
 ソン・ハンモは体制に対し煮えたぎる怒りを覚えますが、大統領や側近の前では平静を装います。
 一方で、ソン・ハンモは息子を背負い、息子の足を治せる民間医療の医者や仙人を訪ね歩きました。そして、韓国一の仙人に会うことができました。

 映画のラスト近く、大統領が側近によって暗殺されてしまいます。
 ソン・ハンモのその後は、いかに。彼の息子の足は一体どうなるのか! 観てのお楽しみ。

 ちなみに、映画はクーデターで政権を掌握した朴政権についてだけではなく、ベトナム戦争で負傷した韓国軍兵士の心、朴大統領の前任の不正選挙についても語っています。


オリジナルタイトル:孝子洞理髪師|효자동 이발사|
監督・脚本:イム・チャンサン|韓国|2004年|116分|
撮影 チョ・ヨンギュ|
出演:ソン・ハンモ(ソン・ガンホ)|その妻のキム(ムン・ソリ)|その子ナガン(イ・ジェウン)|大統領(チョ・ヨンジン)|警護室長チャン・ヒョクス(ソン・ビョンホ)|中央情報部長パク・ジョンマン(パク・ヨンス)|ほか

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気になる映画 57  《これから上映の映画》

写真
「密使と番人」
監督:三宅唱
ユーロスペース7/22~
写真
「ロスト・イン・パリ」 フランス映画
監督:D.アベル&F.ゴードン
ユーロスペース8/5~
写真
「笑う故郷」  アルゼンチン映画
監督:G・ドゥプラット&M・コーン
岩波ホール9/16~
写真
「ソヴィエト・フィルム・クラシックス」
冒険・SF映画編
アテネ・フランセ文化センター8/7~12
写真
「ブラザー・クエイの世界」
イメージフォーラム
7/8~28
「ドゥミとヴァルダ、幸福についての
            5つの物語」

イメージフォーラム7/22~
上映映画のうち以下は記事にしてます。
5時から7時までのクレオ
天使の入江」  (題名をクリック)
写真
「轟夕起子」
昭和の銀幕に輝くヒロイン第86弾
ラピュタ阿佐ヶ谷
8/20~10/21
上映映画のうち以下は記事にしてます。
洲崎パラダイス 赤信号
写真
日活文芸映画は弾む
ラピュタ阿佐ヶ谷6/18~8/19
上映映画のうち以下は記事にしてます。
にあんちゃん」「非行少女
競輪上人行状記
     
写真
アヴァンギャルド・ニッポン
安倍公房×勅使河原宏
ラピュタ阿佐ヶ谷7/23~8/19
上映映画のうち以下は記事にしてます。
燃えつきた地図
     
写真
特集「逝ける映画人を偲んで
          2015-2016」

京橋フィルムセンター NFC 7/20~9/10
上映映画のうち以下は記事にしてます。
」「祭りの準備」「狂った野獣」「任侠外伝 玄界灘」「さらば愛しき大地

2年前・4年前・6年前の7月、一夜一話。(2015年7月・2013年7月・2011年7月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2017-07-29 Sat 06:00:00
  • 映画
2年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  2年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年7月 Archive

写真
「心中天網島」
監督:篠田正浩
岩下志麻、中村吉右衛門
写真
「クレージーの大爆発」
監督:古澤憲吾
植木等、ハナ肇、谷啓
写真
「百円の恋」
監督:武正晴
安藤サクラ
写真
「ジ、エクストリーム、
        スキヤキ」
監督:前田司郎
写真
岸部一徳の出演映画
教祖誕生、Beautiful Sunday
いつか読書する日、他
写真
「8 1/2」
監督:フェデリコ・
     フェリーニ
写真
「キャデラック・レコード
音楽でアメリカを変えた人々
         の物語」
写真
フランス映画、1960年代。
      いい映画14本。
小さな兵隊、ラ・ジュテ、他
写真
「ドイツ零年」
監督:ロベルト・
     ロッセリーニ
写真
「宇宙人ポール」
監督:グレッグ・モットーラ
アメリカ
写真
最近読んだ本、3冊
写真
福島 高湯温泉に行ってきた


4年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  4年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2013年7月 Archive

写真
「珍品堂主人」
監督:豊田四郎
淡島千景、森繁久彌
写真
「兄貴の恋人」
監督:森谷司郎
内藤洋子、酒井和歌子
写真
「ロボジー」
監督:矢口史靖
ミッキー・カーチス
写真
「狐と狸」
監督:千葉泰樹
加東大介、小林桂樹ほか
写真
「大阪ストーリー」
大阪の在日韓国人一家の
ドキュメンタリー映画
写真
「乙女ごころ三人姉妹」
監督:成瀬巳喜男
細川ちか子、堤真佐子
写真
「あの夏、いちばん
       静かな海」

監督:北野武
写真
「ツレがうつになりまして」
監督:佐々部清
宮崎あおい、堺雅人
写真
「事件記者」
監督:山崎徳次郎
シリーズ映画10本の第一作
写真
映画ピックアップ
「女が、自分の道を歩む時」
邦画/洋画18本
写真
「マーサの幸せレシピ」
監督:S・ネットルベック
ドイツ
写真
「夜霧の恋人たち」
監督:F・トリュフォー
フランス
写真
「スタンリーのお弁当箱」
監督:アモール・グプテ
インド
写真
「愛おしき隣人」
監督:ロイ・アンダーソン
スウェーデン


6年前の7月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  6年前の7月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2011年7月 Archive

写真
「江分利満氏の優雅な生活」
監督:岡本喜八
小林桂樹、新珠三千代
写真
「きょうのできごと」
監督:行定勲
田中麗奈、妻夫木聡
写真
「原子力戦争 Lost Love」
監督:黒木和雄
原田芳雄、山口小夜子
写真
「竜馬暗殺」
監督:黒木和雄
原田芳雄石橋蓮司松田優作
写真
「ポンヌフの恋人」
監督:レオス・カラックス
フランス
写真
「ミフネ」
監督:S・K・ヤコブセン
デンマーク
写真
「パーマネント
      バケーション」

監督:ジム・ジャームッシュ
写真
「スリ」
監督:ロベール・ブレッソン
フランス
写真
「フルスタリョフ、車を!」
監督:アレクセイ・ゲルマン
ロシア
写真
「キングス・オブ・
       クレズマー」

音楽ドキュメンタリー映画
写真
「黒い神と白い悪魔」
監督:グラウベル・ローシャ
ブラジル
写真
「黒い眼のオペラ」
監督:ツァイ・ミンリャン
台湾
写真
「どつかれてアンダルシア」
監督:Alex de la Iglesia
スペイン
写真
「エヴァとステファンと
      すてきな家族」

スウェーデン
写真
「キス・キス・バン・バン」
監督:スチュワート・サッグ
イギリス
写真
「スイート・スイート・
        ビレッジ」

チェコスロヴァキア

映画 「故郷」(1972) 倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆、渥美清  監督:山田洋次

上
砕石を満載し、今にも沈みそうな木造運搬船が、小舟を曳いてゆっくり瀬戸内の海を行く。船は老朽化している。
写真
船長で一家のあるじ、精一。
写真
船の機関士でもある、妻の民子。子供が二人いる。

 

 どっしりと腰を据えた脚本、じっくり観るに値する、いい映画。

1-0_20170723141037d2f.png 話の舞台は、瀬戸内海に浮かぶ小島と、海上を行きかう木造の砕石運搬船という、日ごろ馴染みのないドラマ設定が、観る者に異色な印象を与えてくれる。
 くわえて、ドキュメンタリー映画の要素も加わり、1972年当時のライブな感覚が味わえる。

 広島県の倉橋島という島に住む、石崎一家の物語です。
 一家の稼業は、一抱えもある砕石を採石場で積み込み、沿岸の埋立て地造成現場の沖合まで航行し、そこで石を海に投棄する仕事。
 この砕石専用の運搬船は「石船」と呼ばれ、特に倉橋島の各家では、この石船を持ち稼業に励む家々が多かったのです。

 石崎の家は、精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦に、子が二人、そして精一の父(笠智衆)の、五人家族。
 夫婦はそろって船に乗るので、子は専ら祖父が面倒をみている。
 海を見下ろす島の丘には、小さな畑があって民子はそこで野菜を作っているが、買い物に行く間がなく、毎日の食材に困ることがある。
 それを補ってくれているのが、軽トラ行商の魚屋の松下(渥美清)だ。家族同然で、「今日の余りモノだよ」と言って、気安く魚を分けてくれるのだ。

 倉橋島は今も、のどかな様相を見せるが、この島にも時代の波が押し寄せていた。
 石船の運搬単価は下落し、ダンプトラックの陸送に取って代わろうとしていた。これに対抗するには、船体を大きくした鋼鉄船に乗り換えるしかなかった。しかし、石崎に毛頭そんな金はない。
 そんなことより、石崎の早急の課題は、今の木造船のエンジンが寿命に来ていること。砕石運搬の仕事を差配してくれる親方に相談したが、金の融通は無理だった。

 かつて精一と一緒に船に乗っていた弟は、先のない石船の仕事に見切りをつけ、島を離れて今は勤め人になっていた。
 そして、ついに、精一も石船稼業を諦めた。
 人の紹介で、広島県尾道にある造船所に勤めることになったのだ。家族の移住である。精一の父は島に残ることになった。

 東京から来てこの島に移り住んだ魚屋の松下(渥美清)が、映画の中で独り言のように言っている。倉橋島というこんないい島に、どうして住み続けることが出来ないんだろうね。
 また精一は、零細な稼業に押し寄せる時代の波について、妻の民子にこう言っている。「なんで、わしらは大きなもんに勝てんのかいの・・・」と。


監督:山田洋次|1972年|96分|
原作:山田洋次|脚本:山田洋次、宮崎晃|撮影:高羽哲夫|
出演:石崎精一(井川比佐志)|精一の妻・民子(倍賞千恵子)|精一の実父・石崎仙造(笠智衆)|精一の弟・石崎健次(前田吟)|魚屋の松下松太郎(渥美清)|ほか

【 山田洋次の映画 】 ~これまでに記事にした作品から (下記題名をクリック)

二階の他人」「下町の太陽」「馬鹿が戦車でやって来る」「霧の旗」「故郷

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映画 「初恋のアルバム 人魚姫のいた島」 韓国映画  監督:パク・フンシク

2_20170723103949f09.jpg




写真


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 甘口の映画だが、そう悪くはない。
 それは、若き日の母親とその娘ナヨンを、一人二役で演ずる、チョン・ドヨンが光っているからです。

 ナヨンは失踪した父親を探して、母親が生まれ育った島へ旅立ちました。
 ですが、島に着いた途端、ナヨンは、母親が娘であった頃へ、タイムスリップしてしまう。
 タイムスリップしたその先では、島も、そして周りの海も、まだまだ開発の手が及んでないのどかな風土、光りに満ち溢れた風景でした。

1-0_20170721103413879.jpg 若き日の母・ヨンスンは幼い弟と二人住まい。親はいません。ヨンスンは島の女たちと一緒に、海女をして生活しています。
 島には小さな郵便局があって、ヨンスンはそこの若い配達夫・ジングクと恋仲になっていました。
 学校へ通えず文盲のままに過ぎて来たヨンスンに、ジングクは優しく読み書きを教えています。

 映画はその大部分の時間を使って、このヨンスンとジングク、若い二人の、たどたどしい愛を瑞々しく描いて行きます。これが本作の見どころでしょう。

 さて、そののちジングクは転勤で島を離れることになりますが、結局、その後二人はめでたく結ばれました。
 そう、この郵便局の男ジングクがナヨンの父親になるのです。

 しかし、いつからなのでしょうか、両親の夫婦仲がうまく行かないようになってしまいました。(映画は、夫婦仲が悪い事や以下の事については、少ししか時間を割きません)

2-0_2017072110361922a.jpg 勝ち気な母親は、事あるごとに、がなり声で父親を容赦なく、なじる毎日。父親は言われるまま、ただ黙っている。
 ナヨンはそんな母親が嫌いだ。こんな、女尊男卑な家庭に生まれたくなかった。

 どうやら父親は借金を背負っているようです。人の好い父親は、誰かの連帯保証人になったらしく、返済義務が生じている。
 父親の郵便局勤めの稼ぎだけでは賄えない。その分、家計を補うためにも、母親は銭湯でマッサージ/垢すりをして働いています。(ナヨンも郵便局に勤めています)

 そのうえ、近年、父親は体調が悪い。病院の検査でも良くないらしい。だが父親は、このことを誰にも話していません。
 父親は妻に債務に病魔に疲れてしまい、失踪。
 そこで、娘ナヨンが、父親探しに島へ向かうのでした。

 そして映画冒頭。父親の葬儀の席で、借金を残したまま他界したことを、母親は大声でなじり、大泣きするのです。

 タイムスリップから帰ったナヨンは思います。
 あんなに、ねじ曲がってしまった母親の心に、夫にも見せない秘めた愛、若き日の愛が、あるのだろうと。
 そして、父親については、純粋に優しいということは、かえって周りを傷つけることになると・・・。

 残念なのは、若い頃の両親と現在の両親の、その様相の格差があまりにあまりなので、別の人の話に思えてしまいます。
 いやいや往往にして、こうなってしまうものですよ、と映画は言っているのでしょうか。


下
オリジナルタイトル:人魚姫|인어공주 |
監督:パク・フンシク|韓国|2004年|111分|
原案:キョン・ヒェウォン|脚本:パク・フンシク 、 ソン・ヒェジン|撮影:チェ・ヨンテク|
出演:娘のナヨン、若き日のナヨンの母・チョ・ヨンスン、一人二役(チョン・ドヨン)|現在の母・キム・ヨンスン(コ・ドゥシム)|若き日の父・キム・ジングク(パク・ヘイル)|現在の父・キム・ジングク(キム・ボングン)|ナヨンの彼氏・ドヒョン(イ・ソンギュン)|ほか

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映画 「ジヌよさらば かむろば村へ」  監督・脚本:松尾スズキ

上2


1-0_20170719110447be0.jpg 松尾スズキ監督2015年作のドタバタ喜劇です。こういう質のいい映画をつくる監督に拍手!
 くわえて阿部サダヲの芯のある演技が、この映画の柱になってます。
 なにしろ脚本がいい! (近年、他監督の新作邦画の多くが、その脚本がいかに駄作か・・・・)
 各所にみられる気の利いた可笑しいセリフも聞き逃しなく。

 東北のある村に、頼りなさげな若い男が一人ふらりと現れる。100万円で廃屋のような古い農家住宅を買ったらしい。
 この、かむろば村は限界集落一歩手前。村では、村長・天野与三郎(阿部サダヲ)は、まだ若い。

 天野村長は、この頼りなさげな男・高見武晴(松田龍平)を、まるで身内のように「タケ」と呼んで、親身に世話をする。
 タケは元銀行員。ムリな融資と回収不能の連鎖から、タケは精神的に参ってしまった。そして退職。病名はカネ恐怖症。カネを見るも触るもダメ。身体がガクガクしてきて、その場で気絶する。(本作の題にあるジヌとは銭ということらしい)
 だからカネを使わない生活を探して、タケはかむろば村にたどり着いた次第。

 カネを使わない生活。それは現物支給の生活。
 タケがはじめた便利屋の労働提供は野菜に換わる。村長の店、よろずやの「スーパーあまの」でのバイトも同様で、店の食料品に換わる。ただし、レジはできない。村長の妻・亜希子(松たか子)か、パート店員・いそ子(片桐はいり)がする。

 天野村長は、村に村人に真剣に尽くす。信頼も厚い。(見習え、全国の村長町長よ)
 だが、彼には秘めておきたい過去があった。そしてある日、村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)がやって来た。
 ひとモンチャク起きないわけがない。警察沙汰となった。

 隣り町の町議会議員が、かむろば村を吸収合併することを企んでいる。かむろば村に何やら処理場を作る計画だ。
 そして、かむろば村の村長選挙が始まる。隣り町の町議は、日頃から手なずけておいた村の助役に立候補させた。
 一方、天野村長は自分に替わって頼りなさげなタケを立候補させる。タケはカネにまみれていない。まみれようがない。ついにタケもその気になった。

 ところで、隣り町の町議会議員は、手なずけたい女がいる。村にある旅館の美人女将だ。
 女将は、かむろば村の老人で自称神様の、なかぬっさん(西田敏行)の娘だ。
 この、なかぬっさんは、いい神様で、(重要なシーンで目が不気味に光る)、この話で重要な役回り。天野村長やタケを助けるのだ。
 だが、神様とはいえ寄る年波には勝てぬ。なかぬっさんが他界。そして、どうやら、孫が村の神を引き継いだようだ。
 村長と村の神が代替わりし、かむろば村は次代へと歩み始める。
 

監督・脚本:松尾スズキ|2015年|121分|
原作:いがらしみきお|撮影:月永雄太|
出演:高見武晴、あだ名タケ(松田龍平)|かむろば村村長・天野与三郎(阿部サダヲ)|その妻・天野亜希子(松たか子)|女子高生・青葉(二階堂ふみ)|村長の店「スーパーあまの」のパート店員・いそ子(片桐はいり)|自称かむろば村の神様・なかぬっさん(西田敏行)|なかぬっさんの娘で伊佐旅館の女将・奈津(中村優子)|奈津の息子でなかぬっさんの孫、与三郎との子・進( 田中仁人)|かむろば村の助役・伊吉(村杉蝉之介)|伊吉の妻でや村役場の職員・トキ(伊勢志摩)|伊佐旅館の板前で元やくざ・勝男(オクイシュージ)|タケの農作業の面倒をみる何時も笑顔のみよんつぁん(モロ師岡)|村のやくざ青年で女子高生青葉が好きな青木(荒川良々)|隣の町の町会議員・伊佐旅館の女将・奈津に気がある・青舐(皆川猿時)|村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)|

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映画 「プープーの物語」  監督:渡邉謙作

写真
フウとスズ










写真
ブルーの色が好きなスズと、オープンカー


1-0_201707141055476be.png
 二人の女子、フウとスズの、大変大変なロードムービー。
 これは、ちょっとやっかいなキテレツ喜劇です。
 その上、軽くてユルくて、くだらない。Good!
 今のご時世じゃ、もうこういう映画はつくれない。

 フウは密かにスズが好き。スズはブルーの色が好き。
 フウはスズに寄りつく男をなぎ倒す。スズは赤ちゃんを抱えてる。
 スズは世のしがらみに頓着しない。その時の気まぐれで爽やかに生きてる、チョット足りない女の子。
 フウはスズが好きだから、そんなスズをいつもフォローする。

 大きく広がる田園風景の中、フウとスズと赤ちゃんのプープーはヒッチハイクの車を待っている。
 そこへ、スズが好きなブルー色のオープンカーがやって来る。はしゃぐスズ。
 着いた先で、オープンカーの男がスズに襲い掛かる、
 察したフウは生まれて初めての人殺しで、男をやっつけたはずが、どっこい生きていて逆襲を喰らう。
 だが次の瞬間、男は眉間に銃弾を受け、即死。
 間一髪のところ、二人を救ったのは、オープンカーの後部トランクから突如現れた、不思議な銀色少年、トランクマン。

1-0_2017071410592830c.png そんな頃、女装の妻とその夫は、自分たちの行方不明の赤ちゃんを探していた。
 この二人組に捕まったフウとスズ、計4人はオープンカーに乗って、彼らの赤ちゃん探しに付き合わされる。

 「きっと、ここよ」とフウは車を止めさせた。そこはスズが赤ちゃんをベビーカーごと、置き去りにした所。
 やっぱり!草原の茂みの中から赤ちゃんの泣き声。
 スズの赤ちゃんを奪おうとする二人組は、フウとスズに銃口を向けるが。どこからともなくドキューン。ここで例のトランクマンが再度ふたりを救った。

 そもそも、フウとスズのこの旅は、赤ちゃんのお父さんに会いに行く旅。
 一方、赤ちゃんのお父さん、木嶋(國村隼)は、スズからの手紙を、楽しい我が家で受け取っていた。

 手紙を読んで木嶋は唸った。たしか、依頼殺人でスズを殺したはずなのに…。
 木嶋はさっそく、あの時の殺人請負人ジョージ(原田芳雄)に会うことにした。結局木嶋は今度はジョージに頼まず、自らスズを狙うことにした。

 執拗な追跡の結果、木嶋がフウとスズの前に現れる。互いに拳銃の撃ち合いが始まり、次ぎの瞬間、木嶋が崩れた。
 そう、ここでもお助けトランクマン!

 そおして、フウとスズとプープーに、再び幸せな日々が始まるのでした。めでたしめでたし。なんぢゃ!このケッタイな話は・・。

 あの鈴木清順が脇役の老人で現れる。舞台セリフっぽい長セリフです。
 挿入のサウンド、いいセンス。
 軽く受け流して観ましょうね。
 

監督・脚本:渡邉謙作|1998年|73分|
原案:ミッキー・ケン・ケン・ブー|撮影:村石直人|音楽:三宅純|
出演:スズ(上原さくら)|フウ(松尾れい子)|木嶋(國村隼)|ジョージ(原田芳雄)|トランクマン(山中零)|老人(鈴木清順)|
オープンカーの男、職業ゴルファー(桜井大造)|イルカ(津田充昭)|ゲスオ(大森立嗣)|写真の男(ジョー山中)|ほか

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映画 「アデル、ブルーは熱い色」  監督:アブデラティフ・ケシシュ

上
 アデルとエマ
1-0_20170713094955213.jpg


 オリジナルの題名は「アデルの人生:第1章と第2章」。
 高校生のアデルが同じ学校の先輩男子より、街で見かけたブルーの髪の女性に魅かれていく話。
 主人公のアデル役のアデル・エグザルコプロスの自然体の熱演に脱帽だ、素晴らしい。

 宣伝では、衝撃の愛の7分間、史上最高のラブシーンにカンヌが大喝采!と、レスビアンの性描写をことさらに言うが、蓮っ葉な売り文句だな、それがこの映画の売りなのかい?

 ブルーの髪の女性エマは画家、その彼女が映画の中で、自身の作品に言及するキュレーター(美術評論家)に対して言っている。「作品に敬意を払うべきよ」と。このセリフをそのまま、本作の配給会社に言いたいね。
 観るほうも、エロいの観たけりゃ、他のにすれば。

 売りのラブシーンよりも、アデルがクラブで街頭デモでパーティで幼稚園で踊るダンスシーンの方が長い。映画の各所で出てくる。監督は愛と踊り両方のシーンをもって、作品のいしずえ(礎)と考えている風に思える。

 映画に使われる音楽の選定にセンスを感じる、いいね。

 あと、アデルの家庭は中の下か、労働者階級で、人生において特に職業選択は手堅くというに対して、エマの家庭は自由奔放な上流階級。お父さんは二人目で、著名なシェフ。エマの家庭はレスビアンを許容する。

 話のスジはいたって単純だが、「アデルの人生:第1章と第2章」を丁寧に描いて行く。179分の大作。
 演技輝くアデルに注目。じっくり観てみよう。

 ちなみに、アデルに対して恋愛感情なしに、親身になってくれる男子が登場する。
 2015年の韓国映画「恋物語」にも同様な男子が主人公のレスビアンな女子を慰める。(「恋物語」の記事はこちらから。)


オリジナルタイトル:La Vie d'Adèle : Chapitres 1 et 2|
英語タイトル:BLUE IS THE WARMEST COLOR|
監督:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2013年|179分|
原作:ジュリー・マロ|脚本:アブデラティフ・ケシシュ 、 ガリア・ラクロワ|
撮影監督:ソフィアン・エル・ファニ|音楽:ジャン=ポール・ユリエ|音楽監修:エリーゼ・ルーゲン|
出演:アデル(アデル・エグザルコプロス)|エマ(レア・セドゥー)|サミール(サリム・ケシュシュ)|リーズ(モナ・バルラベン)|トマ(ジェレミー・ラユルト)|ベアトリス(アルマ・ホドロフスキー)|アントワーヌ(バンジャマン・シクスー)|ほか

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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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