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映画「薔薇大名」 監督:池広一夫

下
月太郎の婚約者・お小夜と、横恋慕のスリ師・お京。
だが、この男、月太郎じゃなく、実は奥州棚倉藩の若君・小笠原左馬之助であった。


 時代劇です。陽気でおバカな喜劇話です。
 大名行列など冗長なシーンは早回しで観せますし、悲しいシーンも含め音楽はユーモラスなジャズ風。
 でも、ストーリーは凝っています。

 「薔薇大名」の「薔薇」の意は、若君の腕に薔薇のようなアザがあるからで、他意はない。
 私は池広一夫というこの監督の映画が好きで、本作は監督の第一作目らしい。
 1シーンだけの特別出演で市川雷蔵が突然出てくるが、ほかは主役も含め、一般的には余り知名度がない俳優ばかり。
 でも今となっては、これがかえって新鮮でいい! 

1-1_20171006115730085.png 話は、ある藩の若君・左馬之助と、曲芸一座の芸人・月太郎の、その姿かたちがソックリであったことから始まる。
 そして、月太郎に恋する、同じ一座の芸人娘・お小夜と、月太郎に横恋慕のスリ稼業の女、この2人の女が話に花を添える。
 さらには、若君/月太郎、この瓜二つの2人の立場が入れ替わった事が、つまり偽・若君が、結局は、若君の藩の内紛を解決することになるという、藩をあげての大騒動に発展する。
 では、若君と町人の月太郎がなぜ入れ替わったのか?

2-1_201710061159044fc.png

 密かに江戸市中に滞在する小笠原左馬之助(小林勝彦)は、実は奥州棚倉藩(福島県)の若君。
 その棚倉藩では、城主の跡目争いという陰湿な内紛が起きていた。
 現城主(左馬之助の父親)は、悪者家老の指図で長期間に渡り藩医から毒を盛られ衰弱していた。
 家老は城主と若君を暗殺し、家老派の新たな城主をうちたてようと企んでいるのだ。
 これに気づいた左馬之助はひとり江戸に出て急ぎ毒薬の勉強をし、藩医が薬と称する毒薬の証拠を握ろうとしていた。
 しかし、左馬之助が国元から突然姿を消した事とそのわけは極秘であり、父親はじめ藩の誰もが知らぬことであった。
 だが、家老は若君が江戸にいることを嗅ぎつけ、暗殺団を江戸へ送り、若君は切られて大川に落ちた。

3-0_20171006120128172.png 一方、そんなことなど知る由もない城主派の侍たちも、若君を探しに江戸に来ていた。
 城主の寿命があとわずか、一刻も早く若君を見つけ出し、国元へ帰ってもらわないと、家老派の思うがままになってしまう。わが藩、存亡の危機。
 そんなある日の江戸市中、城主派の侍が月太郎(小林勝彦)を見かける、あ!若君だ! いや、人違いだ!俺は月太郎だ! 
 結局、月太郎は城主派に拘束されるが、彼の腕に若君の証拠の「薔薇」のアザがないことが分かり、今度は若君に化けて身代わりで国元へ行ってくれと懇願される。
 このお礼は100両という多額で、月太郎は婚約者の病父の薬代を思い、大役を引き受け、大名駕籠に乗せられて、侍たちと国元の奥州棚倉藩(福島県)へ。

 さらに一方、そんなことなど知る由もない、月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)。
 突如姿を消した月太郎から奥州棚倉へ行くとだけ知らされたお小夜は、一座の座長を説き伏せ、一座の面々とともに棚倉へ巡業の旅に出る手はずとなった。
 そんな時に、月太郎がお小夜の前に現れた。ずぶ濡れで傷を負っていた。どうしたの!
 優しく介抱された左馬之助だが、知らぬ町人に自分が誰かも言えず、なりゆきで月太郎を演ずることとなる。
 お小夜は左馬之助を月太郎だと疑いすらしない。(左馬之助は侍言葉で話すんだけどね) お小夜は「いつまで芝居の真似をしてるのよ」てな感じ。(喜劇ですから)

5 -0 しかし、一座の棚倉への巡業スケジュールはもう変更できず、お小夜と左馬之助と一座全員は旅に出た。
 旅の途中、左馬之助は、本陣(大名専用の宿)の準備の様子や、街道を駆け抜ける早馬から、胸騒ぎを覚える。
 その夜、旅籠の一室で左馬之助はお小夜に抱いてと迫られ、左馬之助はおおいに戸惑う。

 そこへ、市川雷蔵扮する町人が「いちゃいちゃする声がうるせぇ、宿は貸し切りじゃねぇんだ」と、部屋に飛び込んで来る。
 そして市川雷蔵は左馬之助に向かって、本心をこの女に打ち明けろと言い残して去る。(無理やりの筋書きで可笑しい)
 そこでついに左馬之助はお小夜に、自分は月太郎じゃない、それに月太郎が藩騒動に巻き込まれているらしく、危険だと告げる。
 これを聞いて心配するお小夜に、「この小笠原左馬之助が彼を救える」と言う。お小夜はお願いいたしますと頭を下げた。

 さて、ラスト近く。
 月太郎こと偽若君と城主派一行が、城内に入る。
 また、曲芸一座は城主の招きと偽って、これも城内へ。(若君の計らいだろう) 
 そのうち、偽若君の腕にアザがないことが家老派にばれて一大事。だがそこへ一座が現れる。

7-0.png そおして、時代劇のお約束事、家老一派と城主派のチャンチャンバラバラ。
 若君の武道達人の技、月太郎とお小夜らの曲芸の技が敵をやっつけます。
 加えて、一座の出し物、中に入った人を消す魔法の箪笥や、一座巡業に付いて来た、月太郎に横恋慕のスリ師・お京が大活躍します。めでたしめでたし。


監督:池広一夫(池廣一夫)|1960年|68分|
原作:陣出達朗|脚色:淀川新八|撮影:本田平三|
出演:月太郎、小笠原左馬之助(小林勝彦)|月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)|スリ稼業の女・お京(宮川和子)|ほか多数

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映画「お父さんと伊藤さん」 上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也 監督:タナダユキ

上
さすが年の功、伊藤さんは、お父さんのあしらいが上手。

1-0_20170930124809c6c.png
 拍手!脚本が良く出来ていて、演出に抜け目がない。
 息子娘の世代も、父親の世代も楽しめるビターな喜劇。

 話は、妻を亡くした頑固な父親の、たらい回し。
 そんな意固地な父親を持つ息子娘であれば、あるいは、あんな息子娘を持つ父親であれば、こうなる事もある、というこわい話。

 その、あんな息子娘とは。
 長男の潔(長谷川朝晴)と嫁・理々子(安藤聖)の夫婦のところに父親(藤竜也)が同居している。
 夫婦は父親との生活に辟易している。そのうえ、夫婦は中学受験の双子を抱えている。
 特に理々子は義父との関係がもう破綻状態。義父の姿を見るだけで吐き気を催すくらいに精神的に追い詰められている。

 そこで潔は逡巡しながらも、妹の彩(上野樹里)に父親を引き受けてもらいたいと乞うた。
 「未来永劫ってわけじゃない。子供の受験が終わる来年春までの半年でいいんだ」
 切羽詰まった潔は、父親というものは娘と相性がいいという神話にすがったのかもしれない。
 しばらくぶりに会った兄妹だったが、しかし、彩は「ごめん、ほんとにごめん」と断った。
 潔は知らなかった。彩は独り住まいではなかった。伊藤(リリー・フランキー)という男と同居しているのだった。(兄妹はこんな程度に疎遠であった)

 彩は34歳、本屋でアルバイトをしている。会社を辞めてからはバイトの仕事しか見つからない。
 伊藤は54歳。彩とはコンビニのバイト先で知り合った。今は学校給食のバイトをしている。
 彩は伊藤の過去をよく知らない。知る必要もないと思っている。20の歳の差はあるが、本人たちに違和感はない。

 さて、兄と会ってのち帰宅した彩は、玄関に見慣れぬ靴を発見。
 おお、伊藤さんがお父さんと話してる!

 話はここから、父親の秘密も絡んで、てんやわんやの展開になります。あとは観てのお楽しみ。

下2監督:タナダユキ|2016年|119分|
原作:中澤日菜子|脚本:黒沢久子|撮影:大塚亮|
出演:山中彩(上野樹里)|伊藤康昭(リリー・フランキー)|山中潔(長谷川朝晴)|山中理々子(安藤聖)|叔母の小枝子(渡辺えり)|お父さん(藤竜也)|ほか

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映画「或る女」(1942年) 主演:田中絹代 監督:渋谷実

上


 話は、明治から大正にかけての、「或る女」の10年を描いている。

1-1_20170923130911f26.png 席主※(坂本武)の計らいで、寄席で下働きしている、おしげ(田中絹代)。(※寄席のあるじ)
 このおしげに向かって、寄主に雇われている元落語家の男・柴田(河村黎吉)が、話していいものか、いけないものかと迷いながらも、話始める。
 「実はね、三楽が東京に帰ってきているらしい」と、くわえて「子もいてね、おまけにカミさんが病に伏せってしまい、金に大層、困ってるらしい」
 これを聞いて、おしげは「僅かばかりだけど、お金ならあるわ」、しかし柴田は「そりゃ、いけねえよ」

 そこへやって来た席主は即座に、「おしげさんに、三楽のことなんか言うもんじゃない」と柴田を制した。続けて、おしげには、「三楽は、あんたにあんなに苦労をかけた男だ、もうかかわりなさんな」と三楽を罵りながら言った。
 これに対しおしげは、「もう10年も前のことだもの、今じゃ何とも思わないわ」

2-0_20170923131120b96.png そして映画は10年前にさかのぼる。(明治の終わり頃)
 そのころ、三楽という芸人(徳大寺伸)は東京じゃ少しばかり売れ始めていた。
 寄席で働く若き娘おしげは、三楽の舞台と舞台を降りた後の短い逢瀬をいつも心待ちにしていた。三楽のほうも、まんざらではなかった。
 だが、彼に欲があった。上方の舞台に出て一旗揚げたいと、三味線の女を連れて東京を去った。三楽はこの女と、既に出来ていたのだった。
 おしげは、突然の失恋に心砕かれ、席主にそれまでの礼も言わず、故郷の田舎へ帰った。

 故郷の家には、兄とその子の二人が住んでいる。この親子は困窮していた。兄は少ない蓄えを人に騙され奪われ、また借金で家は抵当に入っていた。
 しかし兄の子・勇は、幼いながらも進学を望んでいた。将来大きな船の船員になりたいという。

 おしげは自身の悲しみを心の底に押しやって、この世に身内はこの三人、力合わせて勇を育ててやりましょうと、兄を励ます。
 おしげは東京に戻って働き、稼いだお金は兄の子・勇の教育費にと、兄は借金返済にと、兄妹はそれぞれ再び働き始めた。

 そう、おしげのこの頑張りは、どこから来るのだろうか。
 それは、おしげが失った自身の生きがいを新たに見つけたから。つまり、三楽への想いから、実の母子のようにして勇を育てる愛へと、気持ちを切り替えたから。
 それでも、おしげは、三楽への愛を今も心に抱き続けている。そして、だから、私は一生結婚はしないと決心していた。

 東京に戻ったおしげは、斡旋屋の紹介で、あるお屋敷の住み込み女中の職を得る。
 安定したこの職は、兄のもとへ送金するに十分であった。
 この家の娘は病弱で家に閉じこもったままで日々を過ごしていたが、おしげが来たことで親しい話相手ができ、おしげを慕った。

 だが不幸なことに、この娘に好きな人がいたが、相手の家から一方的に婚約が破棄され、娘は失意に陥った。
 たまたま、おしげは田舎の兄の家に帰っていた。そこへおしげに会いたくて娘が一人でやって来た。だが病弱な娘は、儚くもここで体調を崩し世を去ってしまう。屋敷の主は、これをおしげのせいにし、おしげは突然に解雇された。

 理不尽に思いながらも、おしげは挫けない。
 顔の広い柴田の紹介で、勇のため、おしげは料理屋で働き始めた。
3-0_201709231321415ff.png そんなある日、勇(佐野周二)がおしげに会いに来た。商船大学を成績二位で卒業したことを報告に。
 とても喜ぶおしげは勇を連れて、大学の寮じゃ食べられない美味しいものをご馳走しようと、上等な店のうなぎやへ。おしげが勇に酌をするその仕草は玄人の様だった。
 勇はおしげに言った、「叔母さんは料理屋なんかで働く女性じゃない。僕は嫌だ、無理を言うようだが仕事を変えてほしい」と訴えた。「これからは僕は給金をもらえて、採用前提の試用期間航海に出る。お金の方はもう大丈夫。無理しないで田舎に帰ってゆっくりして」
 (当時、商船大卒の航海士とは、日航のパイロット以上の高給とりだった。くわえて勇が知識人になったせいだろう、自分を養ってくれた大事な叔母には飲み屋の女でいて欲しくなかった、勇はそう思っていた)

 しかし、おしげは田舎に帰らず、東京のミシン縫製の町工場で働き始める。(私はもう畑仕事はできない)
 ある日、工場でおしげが倒れた。彼女の人生は、これまで働き詰めの毎日であった。

 このことを聞きつけた席主は、弱ったおしげを手厚く介抱し、快復したおしげは再び寄席で働くことになった。
 こうして、おしげの10年が過ぎた。

 さて、冒頭シーンの続きに映画は戻る。
 おしげは、幾何かの金を口座から下ろし、三楽一家が住む家へ向かった。
 どぶに掛かる小橋を渡って、おしげは三楽の粗末な家の玄関先に立った。
 驚く三楽はおしげを家にあげた。儀礼的な挨拶の後、おしげが差し出す金に、三楽は躊躇するも手を出そうとしたが、三楽の妻はこれを制した。

 そこへ突如、勇が柴田の案内でやって来た。勇は叔母を苦しめた三楽を罵りに来たのだった。
 それはおしげに代わって誰かがいつか言うべき三楽に対する罵りであった。
 その三楽は、そう言ってもらえて私もすっきりした、長年の胸のつかえがやっととれたと感謝し泣いた。
 荒んだ場をおしげと柴田が納め、三楽夫婦はおしげの金を受け取ったのであった。
 
 脚本が弱いが、田中絹代の優れた演技でもっている映画。
 戦時中に製作・公開されたものだが、戦時下の影響はない。ただし、映画が始まる前に「一億の誠で包め兵の家」というスローガンが映し出される。

 映画に石油ランプと白熱電球のあかりが出てくる。
 電灯は、大正11年頃には東京市内のほぼ全域に普及したらしい。
 よって、おしげの10年は、明治末期から大正時代にかけての話なんだろう。

 それと映画に出てくる知らない言葉。
 「おちょうもく」:金銭の異称。江戸時代までの銭貨は中心に穴があり、その形が鳥の目に似ていたところからいう。「お鳥目」
 「おちょうばさん」:帳場とは商店・旅館・料理屋などで,帳簿をつけ勘定をする所。会計場。
           おしげは料理屋で「お帳場さん」も兼ねてた仕事をしていた。
 「アプレンティス」:見習いを意味する英語。卒業した勇が見習いで航海に出ることをおしげに言うシーンで勇が言う言葉。

監督:渋谷実|1942年|96分|
脚本:池田忠雄、津路嘉郎|撮影:森田俊保|
出演:おしげ(田中絹代)|実兄の一人息子・勇(佐野周二)|柴田(河村黎吉)|良吉(斎藤達雄)|三楽(徳大寺伸)|おたま(木暮実千代)|筆子(文谷千代子)|小せい(伏見信子)|樋口(坂本武)|お豊(忍節子)|お松(三村秀子)|勇の少年時代(津田晴彦)|藤子未亡人(葛城文子)|下宿のお母さん(飯田蝶子)|料亭の女将(吉川満子)|おとし(高松栄子)|昌子(森川まさみ)|敬一郎(日守新一)|徳さん(水島亮太郎)|お兼(松尾千鶴子)|城太郎(大塚紀男)|半玉(森和美)|

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映画「朧夜の女」(おぼろよの女) 1936年 監督:五所平之助

下
 照子


 時は昭和の初め頃、叔父に連れられ行った先の銀座のバー、そこの女と出来てしまった初心な大学生の初恋の顛末。

01-_20170919135736160.jpg 大学生の誠一(徳大寺伸)は、父を早くに亡くし、母のお徳(飯田蝶子)が女手一つで育てた一人息子。すれてない箱入り息子でいい男。
 お徳は、牛や(牛鍋屋)で働いているが、若いころは芸者だった様子。どこかの店の主人風の旦那に頼まれ、唄、三味線の個人教授をしている。

 誠一を銀座のバーに連れ出した張本人の叔父・文吉(坂本武)は、お徳の実兄で昔は粋な遊び人だった。
 その文吉が収まるところにやっと収まって所帯を持った、その妻が、おきよ(吉川満子)という女。
 この夫婦には子がいない。神社の石段下で張物屋を営んでいる。(着物の洗濯屋さん:お客の着物を抜糸して反物にし洗濯する稼業。洗い張り。)
 以上こんな登場人物の描写が話の前段にあって、映画は物語のその先を語り始める。

2-0_20170919140548d74.jpg バーの女・照子(飯塚敏子)は、昔風にありていに言えば、芸者上がりの女給だ。
 だが照子は数年前までは芝神明で指折りの芸者だった。旦那(パトロン)がついて芸者を辞めたが、その旦那が急死、照子の人生は下り坂となっていた。

 文吉は芝神明にいた照子を覚えていた。照子も客として文吉を覚えていた。銀座のバーは再開の場でもあった。
 さて、その後、誠一と照子は密かに会い文通を交わした。ふたりの愛は純であった。しかし誠一はこのことを母親に言えないでいる。

 そしてある日、誠一は照子から妊娠したことを告げられる。
 誠一は驚き戸惑うが、照子は心の奥底で、これを機に身を引くことを決めていた。
 誠一さんは勉強をして将来偉くなる人。子一人、私ひとりでもちゃんと育てていける・・。

 かたや、悩み抜いた誠一は、叔父・文吉に打ち明ける。(死んでも母親には言えない)
 文吉は驚きはしたが、すぐさま、こう思った。自慢の甥が自分を頼りにしてくれた嬉しさ、照子はまったく知らぬ女じゃないこと、さらにはわが身を振り返れば、身に覚えがないことでは無い。
 そこで文吉は思案の末、自分が照子と浮気して子をこしらえてしまった、という嘘を思いつく。そして、これを妻のおきよに言った。

 これを聞いたおきよは、大いに悲しむ一方、これまでの文吉の放蕩を思うと、そんなには驚かなかった。
 誠一と照子の関係を未だ知らぬ母・お徳は、兄の放蕩ぶりを「いい歳して」と非難するも、義姉として子供の出来ないおきよに言う。「兄さんは女ときっぱり分かれる、その代わり、子は家で育てると言ってる。辛いだろうけど、いっそ育ててみれば。赤ちゃんは可愛いよ。世間は、おきよさんはよく出来た嫁だと、ほめそやすよ。」

 ひとつ目の嘘が通って文吉は、慌てて空き家を探し、土手下の家に照子を住まわせる。
 つまり今度はこれ、姉のお徳に対しての嘘。文吉と照子のこの愛の巣に、お徳は便所の傍の軒に吊り下げる「吊り下げ手洗い器」や何やかにやを買いそろえてやってくる。

 さて文吉、お徳が去ったあと、ポツンと座る照子、そこへ誠一が現れる。
 誠一は言う、こんな嘘はやめよう。俺は母親に正直に言う、結婚しよう。叔父や叔母にこれ以上迷惑はかけられない、俺は卑怯だ、と。しかし、照子は誠一の訴えを受け流すだけだった。

 それからそんなに時を経ず、照子は妊娠中毒症で急遽入院する。そして、あっけなく世を去る。
 土手下の家で通夜が行われた。霊前には文吉の友人やお徳もいる。そこへ誠一が現れた。これに気づいた文吉は彼を家の外に連れ出す。
 「もうこれ以上の嘘は、耐えられない、母親にすべてを言う。」と泣く誠一を制して文吉は言う。「この世の中、嘘も正しいことがある、何よりも照子は今もそれを望んでいる」と。


 なにしろ80年以上前の映画です。
 世間の常識が、今と違うことを理解して観ましょう。
 それと、近代を対象にした都市民俗学?とでも言いましょうか、銀座のバーの様子、そこで働くキラキラ衣装の少女、牛鍋屋の様子、張物屋の職人の仕事風景、寄席の様子、一般家屋の室内などに注目しても面白いかもしれません。

監督:五所平之助|1936年|111分|
原作:五所亭|脚本:池田忠雄|撮影:小原譲治
出演:照子、バーでの源氏名(飯塚敏子)|誠一(徳大寺伸)|文吉(坂本武)|お徳(飯田蝶子)|おきよ(吉川満子)|医師(佐分利信)|町内の旦那衆(河村黎吉、野本正一、新井淳)|職人(青野清、谷麗光)|芸者(忍節子)|牛やの女(岡村文子、江坂静子)|女給(朝見草子、立花泰子)|女中(大関君子)|牛やの主人(水島亮太郎)|学生(大山健二、阿部正三郎、金光嗣郎)|講釈師(一龍斎 貞丈)|

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映画 「石合戦」 監督:若杉光夫

上
石合戦。右方向の対岸にいる相手陣営と石の投げ合い。
このシーンは、仮設の木の橋の上から撮っている。


 兵庫県の山あいにある、のどかな村の人々を描く映画。

 川を挟んで二手に分かれた子たちが、互いに対岸の子たちに向けて、河原の石の投げ合いをしている。石合戦だが、男の子の遊びでもある。
 どちらの陣営の子も、同じ小学校に通っているが、仲が悪い。
 仲が悪いのは、その子らの親たちが仲が悪いからなのだ。いや、親だけじゃなく祖父母の代も、昔から仲が悪い。
 かつて、石が顔に当って失明した人も村人の中にいる。
 映画は、村の大人同士のつまらぬ人間関係が、そのまま子たちの人間関係に影響するのだと言っている。

 県会議員の大野という男は、この村で大人たちの頂点の座にいるらしい。彼の家は戦前までは大地主だった。
 村一番の真面目な男・松蔵(宇野重吉)は、戦後、この大野から僅かな土地を買った。
 この極めてまっとうな方法で土地を買った松蔵に大野は苛立っていた。大野に寄り添い、大野の為なら、何かあればひと肌脱ぎます、なんて言う人々に乞われて、大野は土地を手離す、なんていうストーリーが好きな男なのだ。松蔵はそうではなかった。

 子たちが川遊びしていたその日、この大野の旦那が、川にかかる仮設の橋を渡っていた。
 そこへ、松蔵の子が橋の下から手を伸ばし、大野の足を引っ張り、彼を川へ落としてしまった。
 子どもの悪戯だったが、大野は怒った。大野は松蔵を村八分にしてしまう。村八分にされて松蔵の子も、村の子たちから村八分にされてしまう。

1-0_20170824193604438.jpg 主人公の男の子・竹丸(浜田光夫)は、村の神社の一人息子。
 がき大将の正反対で、石合戦が怖いし、仮設の低い橋から川に未だに飛び込めない。(その落差1メートルほど)
 竹丸の母親(山田五十鈴)は病で長年、伏せっている。竹丸の父親(小沢栄太郎)は、神社の神主で、夏の祭りの収支がマイナスなのが頭痛の種。(賽銭などの収益-諸費用の支出)
 「ここは好きじゃない大野にすがるしかないな。」なにしろ、大野は小学校の校舎新築で業者と癒着し、大金を懐にしたらしい。(村中の噂)

 さて、大野が川に落とされたあと、河原にいた子らの中に、大野は竹丸の姿を見た。
 そして、大野は竹丸を密かに呼んで、誰が俺を川に落としたのだと問いただした。大野得意の甘言と脅し(アメとムチ)を竹丸に示し、つい、やったのは松蔵の子だと竹丸は言ってしまう。
 これが噂となって広がり、竹丸は子らから村八分となってしまう。

 話の展開はいくつかのエピソードと共に進む。
 竹丸の母が大阪の病院に緊急入院する。村の合併話が、大野の先導で進む。
 小学校の若い教師・渡辺先生(内藤武敏)が子たちの石合戦を止めさせる。また、渡辺先生が「アカ」だという噂を真に受ける大野は、先生を辞任に追い込もうとする。それを支援する小学校校長や村長といった村のお偉いサンたち。
 そして、大野が贈収賄で逮捕される。
 一方、竹丸の母がこの世を去る。真剣に神に祈った竹丸は、神殿で暴れる。

 そうしてラストは少々強引だが、ハッピーエンドに。
 竹丸の家は村では裕福だ。この竹丸の生活環境と、村の貧しい家の子の境遇を映画は対比してみせる。
 渡辺先生のシーンでは、子供対象の教育映画っぽい雰囲気があって鼻白むシーンはあるが、これを乗り越えられると、昭和30年当時の日本が垣間見れる。

監督:若杉光夫|1955年|91分|
原作:上司小剣|脚色:松丸青史 、 吉田隆一 、 村山亜土|撮影:仲沢半次郎|
出演:竹丸(浜田光夫)|その父・上神満臣(小沢栄太郎)|その妻・鴻子(山田五十鈴)|小学校の教師・渡辺正男(内藤武敏)|県会議員の大野剛造(嵯峨善兵)|松蔵(宇野重吉)|ほか

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映画 「無花果の顔」(いちじくの顔) 監督:桃井かおり 出演:山田花子、石倉三郎

上

 一家四人の門脇というウチの、幸せの変遷を描く映画。
 今までにないタイプの喜劇映画です。いくつものエピソードが絡みます。それと、お伽噺の要素を持ち合わせていて、ちょっとシュールです。音楽はいいセンス。

1-0_2017081915362933d.png 表通りの裏手、門脇の家。
 ちゃぶ台がある一家団らんの和室と縁側、無花果(いちじく)の木が植わった中庭、中庭に沿って濡れ縁伝いの先にある風呂場は薪で沸かす風呂、赤い冷蔵庫やカラフルなガラス瓶が並ぶ台所とその一角がミシン仕事のスペース。

 妻(桃井かおり)は、夫思いの世話女房。(いささか古いタイプの女性像の設定だ)
 夫(石倉三郎)は水道・ガス管のベテラン配管工。茹でたジャガイモに塩辛を乗せて風呂上りのビールを美味そうに飲む。(仲睦まじいが、少々ズレた夫婦の会話は、新作落語の登場人物のよう)
 今夜の夕食は、ちゃぶ台でチーズフォンデュ。今夜は、娘(山田花子)に息子(HIROYUKI)も加わって久々に家族団らんのひと時。

 さて、何でもなく過ぎる日々から、ちょっとした物語は始まる。
 夫が何やら忙しい。家を空けたと思ったら、現場に近いウィークリーマンションを借りたという。
 夜間の徹夜仕事らしい。でも、よくよく聞くと仕事じゃない。昔、職人仲間が手抜き工事をした建物がリニューアル中で、夫は誰もいない夜間の現場に密かに侵入し、当時の手抜き工事の配管をボランティアで、ていねいに直しているのだ。黙ってればわかりゃしない事を。ひとがいいったらありゃしない。

1-00_20170819154711f30.png ボランティアの案件が無事終わり、やっと通常の仕事を始めた矢先、夫が現場で倒れ死亡。(脳溢血か心筋梗塞か)
 急な死に直面し家族はぼんやりしている。職場の面々が通夜に来る。妻の弟(光石研)が心配してそっと姉に聞く。生命保険は?労災は? そんなこと知らないわよ。

 妻は、娘(山田花子)が一人住まいしている部屋に転がり込む。娘はちょっとした小説家で雑誌に連載を書いている。

 妻は仕事を見つけた。料理が美味いきちんとした飲み屋で働き始める。その店の主人(高橋克実)が、ある日、求婚する。
 門脇のあの家を素敵にリニューアルして、二人が住み始める。門脇の娘息子も、店の主人の娘も祝福している。

 娘(山田花子)が赤ちゃんを出産した。娘が嫌がった年上の男(岩松了)の子だったが、娘はひとりで育てるという。
 最近、妻(桃井かおり)の様子が変だ。新しい夫(高橋克実)は心配する。優しい夫は妻を温かく包み込むのであった。(一応、これでめでたしめでたし)
 そして、こんな人々の生きざまを庭先からじっと見守ってきた、これからも見守って行く無花果の木。それから、門脇家の娘は、幼い頃から、この無花果の木と通じ合えているようだ。



2-0_20170819155439615.png 配慮された細やかな脚本が、生活のリアルな質感を呼びます。例えば、通夜の準備シーンでは。
 缶の箱に納めた古い家族の写真の数々(娘が父親の写真を探している、葬式なんだという実感や経験を思い起こさせる)。
 生臭い握りより稲荷寿司か太巻きよネと言いながら、通夜客のために、出前の店選びに悩む妻。そして夫が死んだのに、寿司屋の女将とあてどもないオバサン会話を続ける妻。(死をまだ実感できない経験が思い浮かぶ)、等々。

 可笑しな会話があちこちに挿入されています。例えば、斎場にて。
 「どうして焼くの、まだ生き返るかもしれないのに、私、認めないから」 
 「火で焼いたら熱いでしょ お父さんかわいそうでしょ それでなくてもおとうさん暑がりなのに」
 娘:「死んだんだからしょうがないでしょ」
 妻:「親を燃やして、しょうがないでしょという言い草はないでしょ」

3-1_20170819155735034.png シュールな側面。例えば、夫が借りたウィークリーマンションでの夢想のシーン。
 隣家の若い女(金魚の化身?)が、マンションの部屋に・・・。

 当時、観た印象はわからん映画でしたが、今回観てみると、ウ~ン、いい映画です。
 大人のお話ですね、この映画は。

監督・脚本:桃井かおり|2006年|94分|
撮影:釘宮慎治|音楽:Gilad Benamram|音楽プロデューサー:Kaz Utsunomiya|美術:安宅紀史|
出演:娘(山田花子)|息子(HIROYUKI)|母(桃井かおり)|父(石倉三郎)|新しい父親(高橋克実)|娘の彼氏(岩松了)|母の弟(光石研)|父親が借りたウィークリーマンションの隣に住む謎の女(渡辺真起子)|ほか

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映画 「泣虫小僧」(泣蟲小僧)  監督:豊田四郎

上
左から、菅子と啓吉、そして蓮子。


 泣虫になってしまいそうな小僧、啓吉11歳の姿を追えば、幸せ薄い少年物映画。
 啓吉の母・貞子とその妹三人の四人姉妹に注目すれば、1938年(昭和13年)当時の、進んだ女性が見えて来る映画。

1-0_20170810172134c98.jpg 貞子(栗島すみ子)は二児の母。小さな一軒家に住んでいるが、夫を亡くし生活に困っている。女手で喫茶店を開業するらしい。やり手だ。
 貞子には愛人がいる。この家で一緒に住むことになるが、男は商売に失敗したようで、うな垂れている。
 啓吉はこの男を避ける。啓吉の幼い妹は母親から、男をパパと呼ばされる。

 貞子は啓吉を、貞子の次妹・寛子に預けようとする。(今回が初めてではなさそう)
 寛子は「またぁ」と迷惑がるが、姉に言えない。自分に替わって夫・勘三に断わりを言わそうとするが、勘三は人がいい。「引き受けましょう」と義姉に、つい言ってしまう。
 勘三は小説家だが売れない。生活は楽じゃない。だから勘三は寛子の尻の下。
 始終暇な勘三は啓吉と相性がいい、啓吉も好きな叔父さん。しかし、寛子は啓吉を追い出したい。

 ある日、勘三は啓吉を連れて、私鉄沿線、郊外に住む蓮子(市川春代)を訪ねる。
 蓮子は、貞子をはじめとする四人姉妹の末の妹。まだ二十歳前だが、画家(志望)の夫と二人暮らし。
 この夫婦は妙に明るいが、料金不払いで電気を止められている。そんな生活を知った勘三は啓吉を連れて、すごすごと帰って行く。

 結局、啓吉は菅子のもとに落ち着く。菅子は四人姉妹の三番目、アパートの一室を借りて一人住まい。
 会社勤めをしているようだ。勘三に優しい。勘三も菅子に、なつく。
 菅子は勘三に問うた。「叔母さんの誰が好き?」 勘三の返事は「おかあさん」
 
 末の妹・蓮子も三番目の菅子も現代っ子だ。蓮子は少々飛んでいるアート系モダンガールなら、菅子は自立する女性、職業婦人といったところか。(とにかくこの四人姉妹はみな揃って、勢いがいい)

 下の姉妹ふたりが、姉の貞子を訪ねる。「啓吉は、やっぱり母親の元が一番よ」と自立する女・菅子がきっぱりと言う。(末っ子の蓮子は、姉の前では物言えない。)
 そんなことで、啓吉は母親に引き取られる。

 啓吉が体操の授業中に用務員室に呼ばれる。行ってみれば、お母さん。よそ行きの着物姿だ。
 貞子は用務員の男に聞かれないよう、部屋を出て啓吉に言った。「急に九州へ行かなくちゃならないのよ。すぐ、帰って来るから、ね。」
 啓吉は泣きそうになりながらも、母の言うことを信ずるよりほか無かった。

 学校が終わって、家に帰ると家は家具ひとつ無い、もぬけの殻。
 貞子は、啓吉の妹だけを連れて、愛人の元へ行ってしまった。

 啓吉が頼りにしたのは、菅子おばさんだけだった。小説家の勘三おじさんは頼りにならない。
 それは啓吉が勘三の家に世話になっている頃の話だ。
 勘三は、その夜、啓吉を飲み屋に連れだし、啓吉は店で寝込んでしまう。目を覚ますと勘三おじさんの姿が無い。啓吉は慌てて呑み屋を出て、勘三を探して夜の街をさ迷う。(それは勘三がトイレに立った隙だった、勘三は啓吉がいなくなったことに気付かず、深酒でその店でつぶれてしまう。)
 さ迷う啓吉を憐れに思い救ったのは、尺八吹きの男であった。
 一人住まいの男は、啓吉を一晩泊めて、朝飯を食わせてやり、そして男は啓吉を励ました。辛い時は誰でもある、そんな時は歌を歌うんだ、と。

 映画製作年の1938年(昭和13年)は、国家総動員法施行の年、ヒトラー青少年団来日。
 映画のシーンで、家の上を軍用機が飛んでいく。 
 公開当時の観客は、この作品をどんなふうに観たのでしょうか。

 ちなみに本作から連想する映画に、少年と家族をテーマにしたものでは、大島渚の「少年」(1969年)、是枝裕和の「誰も知らない」(2004年)、小栗康平の「泥の河」(1981年)。洋画ではフランソワ・トリュフォーの 「大人は判ってくれない」(1959年)などが思い浮かびます。
 四人姉妹の映画では佐伯清の「浅草四人姉妹」。戦後復興期の女性の姿を描いていました。
 (映画タイトル名をクリックして記事をお読みください)

 <これまでに記事にした映画から>
 出演女優の栗島すみ子は、成瀬巳喜男の「流れる」に、やはり特別出演ということで出演していました。
 二番目の妹役の逢初夢子は、島津保次郎の「隣の八重ちゃん」(1934年)の八重ちゃん役や、山田洋次の「霧の旗」 に出演。
 末の妹役の市川春代は、マキノ正博の「鴛鴦歌合戦」(1939年)、伊丹万作の「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年)に出演していました。
 
監督:豊田四郎|1938年|80分|
原作:林芙美子|脚色:八田尚之|撮影:小倉金弥|
出演:泣虫小僧の田崎啓吉11歳(林文夫)|啓吉の母親・貞子(栗島すみ子)|貞子の次妹・寛子(逢初夢子)|貞子のその次の妹・中橋菅子(梅園龍子)|貞子の末の妹・蓮子(市川春代)|貞子の愛人・吉田善吉(一木礼司) |寛子の夫で小説家の松山勘三(藤井貢)|蓮子の夫で画家の瀬良三石(高島敏郎)|
尺八吹きの男・水上竜山(山口勇)| 啓吉の幼い妹・礼子(若葉喜代子)|寛子の子・伸太郎(横山一雄)|

【 豊田四郎の映画 】~これまでに記事にした作品です。 

夫婦善哉」「猫と庄造と二人のをんな」「雪国」「珍品堂主人」「新・夫婦善哉」「台所太平記」 「波影

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映画 「故郷」(1972) 倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆、渥美清  監督:山田洋次

上
砕石を満載し、今にも沈みそうな木造運搬船が、小舟を曳いてゆっくり瀬戸内の海を行く。船は老朽化している。
写真
船長で一家のあるじ、精一。
写真
船の機関士でもある、妻の民子。子供が二人いる。

 

 どっしりと腰を据えた脚本、じっくり観るに値する、いい映画。

1-0_20170723141037d2f.png 話の舞台は、瀬戸内海に浮かぶ小島と、海上を行きかう木造の砕石運搬船という、日ごろ馴染みのないドラマ設定が、観る者に異色な印象を与えてくれる。
 くわえて、ドキュメンタリー映画の要素も加わり、1972年当時のライブな感覚が味わえる。

 広島県の倉橋島という島に住む、石崎一家の物語です。
 一家の稼業は、一抱えもある砕石を採石場で積み込み、沿岸の埋立て地造成現場の沖合まで航行し、そこで石を海に投棄する仕事。
 この砕石専用の運搬船は「石船」と呼ばれ、特に倉橋島の各家では、この石船を持ち稼業に励む家々が多かったのです。

 石崎の家は、精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦に、子が二人、そして精一の父(笠智衆)の、五人家族。
 夫婦はそろって船に乗るので、子は専ら祖父が面倒をみている。
 海を見下ろす島の丘には、小さな畑があって民子はそこで野菜を作っているが、買い物に行く間がなく、毎日の食材に困ることがある。
 それを補ってくれているのが、軽トラ行商の魚屋の松下(渥美清)だ。家族同然で、「今日の余りモノだよ」と言って、気安く魚を分けてくれるのだ。

 倉橋島は今も、のどかな様相を見せるが、この島にも時代の波が押し寄せていた。
 石船の運搬単価は下落し、ダンプトラックの陸送に取って代わろうとしていた。これに対抗するには、船体を大きくした鋼鉄船に乗り換えるしかなかった。しかし、石崎に毛頭そんな金はない。
 そんなことより、石崎の早急の課題は、今の木造船のエンジンが寿命に来ていること。砕石運搬の仕事を差配してくれる親方に相談したが、金の融通は無理だった。

 かつて精一と一緒に船に乗っていた弟は、先のない石船の仕事に見切りをつけ、島を離れて今は勤め人になっていた。
 そして、ついに、精一も石船稼業を諦めた。
 人の紹介で、広島県尾道にある造船所に勤めることになったのだ。家族の移住である。精一の父は島に残ることになった。

 東京から来てこの島に移り住んだ魚屋の松下(渥美清)が、映画の中で独り言のように言っている。倉橋島というこんないい島に、どうして住み続けることが出来ないんだろうね。
 また精一は、零細な稼業に押し寄せる時代の波について、妻の民子にこう言っている。「なんで、わしらは大きなもんに勝てんのかいの・・・」と。


監督:山田洋次|1972年|96分|
原作:山田洋次|脚本:山田洋次、宮崎晃|撮影:高羽哲夫|
出演:石崎精一(井川比佐志)|精一の妻・民子(倍賞千恵子)|精一の実父・石崎仙造(笠智衆)|精一の弟・石崎健次(前田吟)|魚屋の松下松太郎(渥美清)|ほか

【 山田洋次の映画 】 ~これまでに記事にした作品から (下記題名をクリック)

二階の他人」「下町の太陽」「馬鹿が戦車でやって来る」「霧の旗」「故郷

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映画 「ジヌよさらば かむろば村へ」  監督・脚本:松尾スズキ

上2


1-0_20170719110447be0.jpg 松尾スズキ監督2015年作のドタバタ喜劇です。こういう質のいい映画をつくる監督に拍手!
 くわえて阿部サダヲの芯のある演技が、この映画の柱になってます。
 なにしろ脚本がいい! (近年、他監督の新作邦画の多くが、その脚本がいかに駄作か・・・・)
 各所にみられる気の利いた可笑しいセリフも聞き逃しなく。

 東北のある村に、頼りなさげな若い男が一人ふらりと現れる。100万円で廃屋のような古い農家住宅を買ったらしい。
 この、かむろば村は限界集落一歩手前。村では、村長・天野与三郎(阿部サダヲ)は、まだ若い。

 天野村長は、この頼りなさげな男・高見武晴(松田龍平)を、まるで身内のように「タケ」と呼んで、親身に世話をする。
 タケは元銀行員。ムリな融資と回収不能の連鎖から、タケは精神的に参ってしまった。そして退職。病名はカネ恐怖症。カネを見るも触るもダメ。身体がガクガクしてきて、その場で気絶する。(本作の題にあるジヌとは銭ということらしい)
 だからカネを使わない生活を探して、タケはかむろば村にたどり着いた次第。

 カネを使わない生活。それは現物支給の生活。
 タケがはじめた便利屋の労働提供は野菜に換わる。村長の店、よろずやの「スーパーあまの」でのバイトも同様で、店の食料品に換わる。ただし、レジはできない。村長の妻・亜希子(松たか子)か、パート店員・いそ子(片桐はいり)がする。

 天野村長は、村に村人に真剣に尽くす。信頼も厚い。(見習え、全国の村長町長よ)
 だが、彼には秘めておきたい過去があった。そしてある日、村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)がやって来た。
 ひとモンチャク起きないわけがない。警察沙汰となった。

 隣り町の町議会議員が、かむろば村を吸収合併することを企んでいる。かむろば村に何やら処理場を作る計画だ。
 そして、かむろば村の村長選挙が始まる。隣り町の町議は、日頃から手なずけておいた村の助役に立候補させた。
 一方、天野村長は自分に替わって頼りなさげなタケを立候補させる。タケはカネにまみれていない。まみれようがない。ついにタケもその気になった。

 ところで、隣り町の町議会議員は、手なずけたい女がいる。村にある旅館の美人女将だ。
 女将は、かむろば村の老人で自称神様の、なかぬっさん(西田敏行)の娘だ。
 この、なかぬっさんは、いい神様で、(重要なシーンで目が不気味に光る)、この話で重要な役回り。天野村長やタケを助けるのだ。
 だが、神様とはいえ寄る年波には勝てぬ。なかぬっさんが他界。そして、どうやら、孫が村の神を引き継いだようだ。
 村長と村の神が代替わりし、かむろば村は次代へと歩み始める。
 

監督・脚本:松尾スズキ|2015年|121分|
原作:いがらしみきお|撮影:月永雄太|
出演:高見武晴、あだ名タケ(松田龍平)|かむろば村村長・天野与三郎(阿部サダヲ)|その妻・天野亜希子(松たか子)|女子高生・青葉(二階堂ふみ)|村長の店「スーパーあまの」のパート店員・いそ子(片桐はいり)|自称かむろば村の神様・なかぬっさん(西田敏行)|なかぬっさんの娘で伊佐旅館の女将・奈津(中村優子)|奈津の息子でなかぬっさんの孫、与三郎との子・進( 田中仁人)|かむろば村の助役・伊吉(村杉蝉之介)|伊吉の妻でや村役場の職員・トキ(伊勢志摩)|伊佐旅館の板前で元やくざ・勝男(オクイシュージ)|タケの農作業の面倒をみる何時も笑顔のみよんつぁん(モロ師岡)|村のやくざ青年で女子高生青葉が好きな青木(荒川良々)|隣の町の町会議員・伊佐旅館の女将・奈津に気がある・青舐(皆川猿時)|村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)|

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映画 「プープーの物語」  監督:渡邉謙作

写真
フウとスズ










写真
ブルーの色が好きなスズと、オープンカー


1-0_201707141055476be.png
 二人の女子、フウとスズの、大変大変なロードムービー。
 これは、ちょっとやっかいなキテレツ喜劇です。
 その上、軽くてユルくて、くだらない。Good!
 今のご時世じゃ、もうこういう映画はつくれない。

 フウは密かにスズが好き。スズはブルーの色が好き。
 フウはスズに寄りつく男をなぎ倒す。スズは赤ちゃんを抱えてる。
 スズは世のしがらみに頓着しない。その時の気まぐれで爽やかに生きてる、チョット足りない女の子。
 フウはスズが好きだから、そんなスズをいつもフォローする。

 大きく広がる田園風景の中、フウとスズと赤ちゃんのプープーはヒッチハイクの車を待っている。
 そこへ、スズが好きなブルー色のオープンカーがやって来る。はしゃぐスズ。
 着いた先で、オープンカーの男がスズに襲い掛かる、
 察したフウは生まれて初めての人殺しで、男をやっつけたはずが、どっこい生きていて逆襲を喰らう。
 だが次の瞬間、男は眉間に銃弾を受け、即死。
 間一髪のところ、二人を救ったのは、オープンカーの後部トランクから突如現れた、不思議な銀色少年、トランクマン。

1-0_2017071410592830c.png そんな頃、女装の妻とその夫は、自分たちの行方不明の赤ちゃんを探していた。
 この二人組に捕まったフウとスズ、計4人はオープンカーに乗って、彼らの赤ちゃん探しに付き合わされる。

 「きっと、ここよ」とフウは車を止めさせた。そこはスズが赤ちゃんをベビーカーごと、置き去りにした所。
 やっぱり!草原の茂みの中から赤ちゃんの泣き声。
 スズの赤ちゃんを奪おうとする二人組は、フウとスズに銃口を向けるが。どこからともなくドキューン。ここで例のトランクマンが再度ふたりを救った。

 そもそも、フウとスズのこの旅は、赤ちゃんのお父さんに会いに行く旅。
 一方、赤ちゃんのお父さん、木嶋(國村隼)は、スズからの手紙を、楽しい我が家で受け取っていた。

 手紙を読んで木嶋は唸った。たしか、依頼殺人でスズを殺したはずなのに…。
 木嶋はさっそく、あの時の殺人請負人ジョージ(原田芳雄)に会うことにした。結局木嶋は今度はジョージに頼まず、自らスズを狙うことにした。

 執拗な追跡の結果、木嶋がフウとスズの前に現れる。互いに拳銃の撃ち合いが始まり、次ぎの瞬間、木嶋が崩れた。
 そう、ここでもお助けトランクマン!

 そおして、フウとスズとプープーに、再び幸せな日々が始まるのでした。めでたしめでたし。なんぢゃ!このケッタイな話は・・。

 あの鈴木清順が脇役の老人で現れる。舞台セリフっぽい長セリフです。
 挿入のサウンド、いいセンス。
 軽く受け流して観ましょうね。
 

監督・脚本:渡邉謙作|1998年|73分|
原案:ミッキー・ケン・ケン・ブー|撮影:村石直人|音楽:三宅純|
出演:スズ(上原さくら)|フウ(松尾れい子)|木嶋(國村隼)|ジョージ(原田芳雄)|トランクマン(山中零)|老人(鈴木清順)|
オープンカーの男、職業ゴルファー(桜井大造)|イルカ(津田充昭)|ゲスオ(大森立嗣)|写真の男(ジョー山中)|ほか

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映画 「飢餓海峡」 監督:内田吐夢

上
函館警察の元刑事弓坂(右)は、当時追っていた男・犬飼に10年の時を経て、
このとき初めて会った。(東舞鶴警察留置場にて)


 「飢餓海峡」の飢餓とは、直截的には、主人公ふたりの貧しい出自を、海峡とは津軽海峡を指すが、題名の意味合いは、あまりに貧しい生まれであったが故に、どちらの人生も、(対岸の)幸せに至れなかったことの不幸を表わしている。(原作:水上勉)

 物語は、北海道を放浪していた犬飼(三國連太郎)という極貧の生まれの男と、青森県下北半島にある恐山のふもとに住む、やはり貧しい家の娘・八重(左幸子)、このふたりそれぞれの顛末を描く大作。(182分)

1-0_2017062915305344e.png 時は昭和22年、北海道にいた犬飼が、網走刑務所を出所した二人組に出会ったことから、話は始まる。
 当時、放浪中の身であった犬飼は、彼らの仲間になった訳ではなかったが、旅の道連れとなっていた。
 列車に乗った3人。その車内で犬飼は、この二人組が北海道岩内町の質屋を狙って強盗を働き大金を手にした事、その時、質屋の家族を殺し家に火を放った事を、それとなく薄々知る。逃亡する二人組と、この時点でも旅の道連れの犬飼であった。

 列車を降りた3人は海岸へと向かう。警察の目を避けて、津軽海峡を舟で渡ろうと言うのである。
 時はちょうど、青函連絡船が台風で転覆事故を起こしたその直後であった。
 遭難者救助のため地元消防団ら大勢が、次々に小舟で沖合に出て行こうとする、その騒動の最中であった。
 犬飼は二人組に言われるままに消防団員を装い、小舟一艘を借りた。

 日が暮れた荒海の沖合での出来事だった。
 二人組が仲間割れの喧嘩を始め、一人が海に落ちる。ついで片割れが犬飼に襲い掛かった。犬飼は身を守った結果その男は海に落ちた。深夜の出来事であった。(これは10年後、犬飼が東舞鶴警察の刑事の尋問に答えた発言であり虚偽かもしれないが、犬飼の真の告白かもしれない)

 結局早朝、犬飼一人が下北半島の海岸に、辛うじてたどり着いた。そうして犬飼はここで初めて、二人組が持っていた大金を確認した。大きな幸せを感じた瞬間であった。この金でこれからの人生が開ける!
 同時に、貧しく過ぎた自分の過去が、心の中で走馬灯のように駆け巡った。何をやってもうまく行かない人生だった。
 そして次に彼はおびえ始めた。自分が強盗殺人放火の犯人と疑われる、二人組を殺したと疑われる。当然であった。彼は乗って来た小舟を壊し、燃やしてしまう。

 食うものも無く、行く宛も無く、山林をさ迷った犬飼は、トロッコのような森林鉄道列車を見て飛び乗った。
 彼が八重に会ったのはこの時だった。
 ひどく汚れた身なりだがいい男の犬飼を見て、八重は食べていたおにぎりを二つ、犬飼にやった。
 そのあと、八重が仲居兼娼婦をする小さな旅館で、八重は犬飼に風呂をすすめ爪を切ってやったりの世話を丁寧にしてやった。
 八重は困った人を前にしての親切心だったのかもしれないが、見知らぬこの男に心が揺れたのは確かであった。
 一方、犬飼は、たぶん、生まれて初めての、真っ直ぐな親切に、やはり心が揺れていたのかもしれない。ふたりは交わった。

 犬飼は、「なんも悪い事した銭や無いから、好きにつこうたらええ」と手に入れた金から、八重にとっては大金の額を、そこにあった新聞紙に包んで、お礼として八重に渡した。そして犬飼は急ぎ旅館を後にした。(このふたりが再会するのは10年後であった)

 八重の家は貧しい上に借金を抱えていた。
 母親は死に、年老いた父親(加藤嘉)は林業で働くが稼ぎは少ない。仕方なく旅館で働く八重であったが、この金で貧しい暮らしから抜け出せる。借金を返済できる、父親の生活の足しにもできるから、自分は東京へ行きたい。東京に出て心機一転、堅気の働きがしたい。そう考えた八重は迷わず、同郷の知り合いを頼りに上京する。
 始め、間口一間の呑み屋に雇われ、次に娼婦となり、やがて芸者となって10年の時が過ぎた。生活は安定し、貯金を貯め、八重はそれなりに満足であった。

 一方、この10年の間に、犬飼多吉は樽見京一郎と名に変え、 京都府北部、日本海に面する舞鶴で会社経営をする実業家になっていた。
 大きな屋敷に住み、大陸引上げの女と結婚し、地元に、また故郷の小さな村に多額の寄付をする篤志家としても名をはせていた。

 ある日、八重はふと見た新聞記事の顔写真に、釘付けになった。犬飼さんだ!女の直感であった。記事には樽見京一郎の多額の寄付のことを礼賛していた。
 八重は居ても立っても居られない、住所が掲載されているその記事の切り抜きを持って、その日に舞鶴へ向かった。八重はただ犬飼に会って一言、10年前の礼を言いたかったのである。

2-0_2017062915392876c.jpg しかし八重を前にして、恰幅のいい樽見京一郎は、何の事やらと知らぬ存ぜぬを押し通そうとする。だが、間近に見る男は犬塚である。八重は懸命に話しかけた。ついに犬塚は白状する、そして犬塚の心がまたしても大きく揺れ、八重の首を絞めてしまう。
 そのあと犬塚は八重に茶を出した書生も殺し、深夜、二人の死体を心中に見せかけ海に投げた。

 八重には、この10年間ずっと後生大事にしていた物があった。それは、親切のお礼だと犬塚が言って、札束を新聞紙に包んだ、その古新聞紙と、犬塚の爪を切った時のその爪であった。(この古新聞の一面記事は青函連絡船転覆事故)
 八重は、犬塚が津軽海峡を渡って来た事も、二人組の大金を得ていた事も何も知らなかった。
 八重が知っているのは、弓坂という刑事が八重を訪ねて来て、「見知らぬ大男を見なかったか」と聞かれ、嘘をついた事だけだった。

 東舞鶴警察の刑事たち(高倉健ほか)が動き出す。
 調べが進むうちに樽見の犯行という線が濃厚になる。八重の遺体から例の多額寄付の新聞記事切り抜きが発見されたのだ。さらに見つかったのは、彼女が持っていた青函連絡船転覆事故を報じる古新聞。
 刑事たちは、樽見と八重の関係を探りはじめる。

 八重の父親が娘の遺体を引き取りに来た時、東舞鶴警察は、10年前に函館警察の刑事が八重を捜していたことを知る。
 そして、函館警察の元刑事弓坂(伴淳三郎)が呼び出される。 
 10年前、弓坂は北海道岩内町の質屋強盗殺人放火事件を追っていた。加えて青函連絡船転覆事故による遭難水死の遺体のうち、身元不明の2体が、網走刑務所を出所した二人組である事までは突きとめていた。そして、この二人の死体の額には、ともに妙な打撲の傷があった。小舟のオールによるものか。
 さらには当時、小舟を借りに来た男がその舟を燃やしたであろう灰も確認し、男が下北半島にたどり着いた事は明らかである事も突きとめていた。
 加えて東舞鶴警察は、10年目の宿帳から樽見の筆跡を確認した。
 ついに、樽見京一郎が東舞鶴警察に呼び出された。さて、このあと結末はいかに!!


監督:内田吐夢|1964年|182分|
原作:水上勉|脚色:鈴木尚之|撮影:仲沢半次郎|
出演:犬飼多吉/樽見京一郎(三國連太郎)|杉戸八重(左幸子)|樽見の妻・敏子(風見章子)|八重の父・長左衛門(加藤嘉)|函館警察の刑事・弓坂吉太郎(伴淳三郎)|弓坂の妻・織江(進藤幸)|網走刑務所を出所した二人組の一人・沼田八郎(最上逸馬)|網走刑務所を出所した二人組の一人・木島忠吉(安藤三男)|戸波刑事(岡野耕作)|佐藤刑事(菅原正)|岩内署長(志摩栄)|朝日館主人(曽根秀介)|朝日館女中(牧野内とみ子)|札幌の警部補(北山達也)|和尚(山本麟一)|漁師辰次(大久保正信)|下北の漁師(矢野昭)|下北の巡査(西村淳二)|巫子(遠藤慎子)|大湊の巡査(田村錦人)|富貴屋のおかみ(荒木玉枝)|煙草屋のおかみ(河村久子)|記者A(室田日出男)|池袋の警官(久保一)|警視庁の係官(北峰有二)|唐木刑事(鈴木昭夫)|堀口刑事(関山耕司)|嘱託医(斎藤三男)|味村時雄(高倉健)|ほか
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映画 「夜叉」  監督:降旗康男

上


 田中裕子を愛でる映画です。

1-0_2017061914235620d.png 任侠映画は今も好まないが、高倉健主演の「夜叉」を、前世紀に観たような気がしたので、今回あらためて観てみたら・・。
 高倉健のおはこ、無口で無表情な演技よりも、田中裕子の無言と微かに移ろう田中の表情の方が、ずっと雄弁だった。

2-0_20170619142734972.png 修治(高倉健)は、人斬り夜叉と言われた大阪ミナミのやくざであったが、覚醒剤で金を稼ぐな、という彼の主張が、組の中で通らず彼は干された。加えて、かたぎの女である冬子(いしだあゆみ)との結婚を機に、修治は足を洗い冬子の実家、福井県敦賀で漁師となった。

 修治の妻、冬子はこの漁師町で生まれた。15年前、冬子は大阪に働きに出て、やくざ者とは知らず修治と出会ったのであった。
 螢子(田中裕子)はミナミから流れて来て、この漁師町で「蛍」という名の呑み屋をはじめた女。螢子は子連れであり、彼氏はミナミのヤクザ、失島(北野武)であった。

 螢子と冬子の、それぞれの修治への愛。それは、ミナミのやくざな世界の中の愛、敦賀湾の漁師町の愛。

 脚本は練りが不足している。説明のためのモノクロ回想シーンは、どれも安っぽくて頂けない。
 ただし、秀逸なシーンが三つ。本作の全体を支える要です。
 ・螢子の店で、修治と冬子が客として酒を飲むシーン。修治をめぐって、螢子と冬子との間でスパークする激しく静かな火花。
 ・ある夜、修治宅を訪れた螢子が、二人だけの話がしたくて彼を海際に呼び出すシーン。螢子が修治に、ぼそっと言う。「冬子さん、嫌いや」
 ・夫に献身的で日ごろ大人しい冬子が、修治と螢子の関係を知ったその夜、冬子は修治に向かって、苦しい胸のうちから絞り出すように言う凄んだセリフ、「私はあなたの妻です!」 この一瞬、女優いしだあゆみが光る。
  かつて人斬り夜叉と言われた男も、この一言には敵わなかったというお話でした。

 
監督:降旗康男|1985年|128分|
脚本:中村努|撮影:木村大作|
出演:修治(高倉健)|螢子(田中裕子)|冬子(いしだあゆみ)|冬子の母親うめ(乙羽信子)|失島(北野武)|啓太(田中邦衛)|啓太の妻とら(あき竹城)|修治が属した組の組長の妻塙松子(奈良岡朋子)|修治の舎弟トシオ(小林稔侍)|親爺(大滝秀治)|修治が若い頃の女夏子(檀ふみ)|組員(寺田農)|ミナミの組長(下條正巳)|

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映画 「君と歩こう」  監督:石井裕也

上
田舎を出るノリオと明美先生。2人の明るい駆け落ちが始まった。

 田舎に住む、34歳の独身女性教師と高校生男子との駆け落ち喜劇話。

 映画は、よくある話の人物設定を否定してみせる。
 つまり、34歳男性教師が若い女子高校生と駆け落ちするのではなく、だ。
 また、その愛は極端に淡い。
 キスさえなく男子は童貞のまま、よくある男女の愛には程遠く、とりあえず切羽つまった駆け落ちでもない。

 そして話の筋は、基本、喜劇だが、奇妙で突飛で写実的じゃない。
 しかし一方で、どうしようもなく現実的でもあり、このふたつの要素がまだらに入り混じるところが、監督の喜劇なんだろう。

 大きく欠けてしまった心を抱く者同士、ノリオと明美。ふたりは自身のそれを言わない。
 だからこそ、優しい。 これは愛?

1-0 教師の明美(目黒真希)は、高校生のノリオ(森岡龍)に対し、自分は駆け落ちのプロだという。
 その日、ノリオは明美にせかされ、住み慣れた田舎を後に、ふたりは東京へ出た。

 まずは、ふたりはそれぞれの携帯電話を渋谷川に捨てる。
 そして、日当たりのいい部屋を借りた。明美はノリオに言う。
 「私はお金持ちなの。前々から言ってるとおり、ノリオは勉強して弁護士になるの。勉強しなさい。」 「はい先生」
 
 明美:「How are you?」 明美はいつもノリオに、こう問いかけるが、
 ノリオ:「ア、アム、アム・・・」
 明美:「I'm fine thank you. and you? でしょう」
 ノリオは覚えが悪い。

 話が進むうちにわかること。
 ノリオの両親はそろって自殺した。
 ノリオと明美の出会いは、両親の自殺のその直後、後追い自殺しようと、ノリオが首つりしている、「その最中」に、明美先生が家庭訪問に訪れたのだった。
 その後、ノリオはひとりで自宅に住み続けるが、家はゴミ屋敷になっていた。

 さて、明美とノリオの話に、サブストーリーが3つ絡んで、明美とノリオの東京生活が明らかになって行く。
 サブの話のひとつは、高校生同士(吉谷彩子、前野朋哉)の恋愛で女子が妊娠。この女子がカラオケ屋でバイトをしていて、この店で明美先生もノリオに内緒でバイトを始めるが、ノリオの前では要領がいい先生は意外にも、役立たず・・。さらには、そんな様子をノリオが見てしまう。
 一方、この女子高生を気遣うノリオを遠目に目撃した明美先生は、ノリオが浮気していると嫉妬する。
 結局、駆け落ちのプロ・明美先生は、このカップルを駆け落ちさせようと奮闘することに。
 次ぎのサブストーリーは、ノリオが偶然出会った謎の女性・康代(勝俣幸子)に、ノリオは公園の多目的トイレで童貞を奪われる。
 三つ目は、両親がいない野球ファン少年・安太郎(渡部駿太)がノリオに出会う話。

 そして、こんな何やかにやがあった、3年後。
 田舎を出たはずのノリオは、田舎の自宅に戻っていた。
 そしてある日、ノリオは畑の中のバス停で、バスを降りたばかりの、明美先生を発見する。
 明美はノリオに、笑顔を返すのであった。

下2監督・脚本:石井裕也|2009年|90分|
撮影:高木風太|
出演:田中明美(目黒真希)|佐伯ノリオ(森岡龍)|女子高生・一瀬メグミ(吉谷彩子)|男子高生・竹友(前野朋哉)|野球好きな安太郎(渡部駿太)|謎な女・康代(勝俣幸子)|ノリオの同級生のひとり・康隆(中村無何有)|ほか

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映画 「憲兵とバラバラ死美人」  監督:並木鏡太郎

上2
殺された女、百合子(三重明子)

 時は昭和12年、仙台歩兵第四連隊の敷地内で発覚した猟奇殺人事件のお話。

1-0_20170506211933332.png 連隊内で飲料水として使っている井戸から、若い女性の胴体が引き上げられます。その女性は妊娠していました。
 さて、殺人犯は連隊兵士だとみて、地元警察ではなく、憲兵隊が捜査を開始します。

 この映画は60年前に製作された娯楽作品です。映画公開当時は「バラバラ死美人」というショッキングな内容を楽しめたのかも知れませんが、今の感覚で観ると、犯罪ミステリー映画です。衝撃度への期待は裏切られます。でも、悪くはないです。

2-0_20170506214044305.png
 映画の内容は、1950年代によく作られた、刑事事件ドラマや怪談もの映画の、典型的なスタイルをとりながらも、コミカルさも忘れない作りです。
 ただし本作では、犯人捜査をする主役の刑事を、憲兵隊の曹長(下士官)に置き換えています。
 当時の、典型的なドラマ・スタイルを楽しみましょう。
 
 遺体発見後、憲兵の小坂曹長(中山昭二)が、仙台連隊長の招きで東京からやってきます。彼は腕利きの捜査官です。
 一方、地元、仙台の憲兵隊も捜査を始めていて、小坂曹長と事件解明でつばぜり合いになります。

 殺された女性、百合子(三重明子)、犯人の君塚軍曹(江見俊太郎)、この二人の登場シーンは少ないのですが、共に存在感ある俳優で、とても印象に残ります。この映画の見どころです。

 主演の小坂曹長(中山昭二)は、憲兵にしては温和な性格。地道に証拠を探し推理し、また地元警察の老刑事をうまく活用します。
 その小坂曹長の部下、高山(鮎川浩)は、曹長を助けながらも、コミカルで軽妙な演技をしています。

 東京から来た小坂曹長と高山が宿とした家は、高山の幼なじみの、しの(江畑絢子)という女性の家でした。この、しのの快活さと、高山の可笑しさが楽しいです。高山は、しのが好きです。
 また、しのの姉、喜代子(若杉嘉津子)は、飲み屋を切り盛りする、色っぽい独身女性。彼女は小坂曹長に一目惚れ、曹長もまんざらでもない。

 こういうサイドストーリーを脇に従えながら、小坂曹長と高山による犯人捜査は続けられます。
 そして、犯人逮捕のため、小坂曹長は満洲へ渡ります。
 満洲へ移動した仙台歩兵第四連隊に犯人の君塚軍曹もいて、彼はさらに連隊を離れてハルピンに逃げていました。 
 
 ちなみに、地元憲兵隊によって誤認逮捕され、取り調べで拷問にあう恒吉軍曹(天知茂、この時26歳)。若いながらも既に、あの天知茂特有の薄暗い魅力たっぷりです。

監督:並木鏡太郎|1957年|73分|
原作:小坂慶助|脚色:杉本彰|撮影:山中晋|
出演:小坂徳助曹長(中山昭二)|小坂の部下でヒラの憲兵・高山忠吉(鮎川浩)|被害者・伊藤百合子(三重明子)|殺人犯の軍曹・君塚八太郎(江見俊太郎)|小坂が宿にした家のあるじ・加島喜代子(若杉嘉津子)|喜代子の妹で高山の幼なじみ・加島しの(江畑絢子)|萩山憲兵曹長(細川俊夫)|刈田憲兵伍長(小高まさる)|井部憲兵隊長(倉橋宏明)|坂本憲兵大尉(高松政雄)|金田(三村俊夫)|田所(明日香実)|恒吉軍曹(天知茂)|山本(西一樹)|細井(浅見比呂志)|酒井(築地博)|小俣軍曹(池月正)|内務班の古年兵A(山岡正義)|内務班の古年兵B(宇田勝哉)|西村衛生伍長(館正三郎)|高梨(加藤章)|田中(小浜幸夫)|守谷刑事部長(岬洋二)|馬渡老刑事(久保春二)|医師の石川博士(児玉一男)|石川博士の助手(千葉徹)|鴨下妙子(松浦浪路)|清の家の女将(津路清子)|文子(小野彰子)|老姿およし(五月藤江)|歯科医(武村新)|村井夫人(高岡久美子)|

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映画 「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年) 監督:伊丹万作 (せんごくきたん きまぐれかじゃ)

上
「ヒゲの勘十」と「気まぐれ冠者」(片岡千恵蔵)

 この映画は、映画監督で俳優だった伊丹十三の父、伊丹万作(1900 - 1946)が、昭和10年に作ったコミカルな時代劇映画です。(トーキー作品)

1-0_20170423103831cee.jpg 表看板の主役は片岡千恵蔵で、浪人の「気まぐれ冠者」を演じていますが、この気まぐれ冠者に連れ添う、太っちょでちょっとヌケてる「髯(ヒゲ)の勘十」、この役を演ずる田村邦男という俳優が、とても素晴らしい。味があります。
 この人を主役として観るほうが、たぶん、この映画を楽しめると思います。(彼は日本大学相撲部出身だったそうです)
 (※冠者とは「若者」の意。ここでは、気まぐれ野郎ってな感じか)

 話の展開はゆったり進みます。
 旅する浪人の二人、気まぐれ冠者と髯(ヒゲ)の勘十は、山賊一味ともつながりがある、風来坊です。
 この二人は、ある藩が主催する御前試合の会場前を通りかかりました。(※殿さまの面前で行う武術試合)
 槍が得意な勘十が、これは面白そうだと、御前試合に飛び入り参加したことがきっかけで、二人は殿さまに家来として雇われることとなります。
 (どうでもいい事ですが……気まぐれ冠者は、のんきな殿さまから、「給与(禄)はいくら欲しいか」と出し抜けに聞かれ、たじろぎながらも抜け目なく希望金額を言います。勘十は、その額の多さに驚きます。
 しかし、すぐさま、殿の側近から予算的余裕は無いからねと耳打ちされた殿は、結局、気まぐれ冠者の希望金額を値切ります。でも一軒家が与えられます。厚遇ですよね。)


 さて、二人が仕官したこの国(藩)は、隣りの国が攻めてくることを恐れています。
 そこで、隣国が「攻めて来ないように」する、何か良い方法は無いものかと、殿さまはじめ家来たちは、これまでにも幾度も思案したのですが、良いアイデアは出てきません。
 まあ、この国はとても平和主義の国で、戦争は避けたいし、家来の武術レベルも低いようです。そして家来はみんな、間が抜けたのんびり屋です。おまけに殿さまは、はっきり言って阿呆です。
    ……………………………………
 そんななか、気まぐれ冠者は、隣国を偵察してみようと考えて、殿さまの許可を得ます。
 気まぐれ冠者は勘十を連れて、隣国に入りますが、不覚にも二人は捕まってしまい、城の牢屋に入れられてしまいます。
 しかし、牢屋の床の、ある敷石を持ち上げると、その下には地下へ降りて行ける抜け穴があることを発見し、二人は迷路のような抜け穴をたどって行きました。
 そして、行き止まりまで来ると、抜け道に天井がありました。気まぐれ冠者は勘十を踏み台にして、その天井を押し上げ、上の様子を見て、あっと驚きます。次に、どれどれと勘十も上の様子を見て驚きます。
 天井ように見えたのは、実は城内の部屋の床で、二人はその部屋の畳を持ち上げていたのです。そして、その部屋は、なんと、この国のお姫様、椿姫(市川春代)の部屋でありました。

 ひとり、この部屋にいた姫は、突然、床下から現れた二人を怖がっていましたが、気まぐれ冠者は絶妙に姫におべっかを使い、姫を懐柔することに成功します。
 そして、二人は、殿さまの前(お白州)に引き出されますが、殿の脇にいる姫の計らいで、殿さまは二人を釈放します。この国の殿さまも、バカ殿のようです。

 さて、ここから、気まぐれ冠者が考え出した、敵国攪乱(かくらん)作戦が始まります。
 その作戦の秘密兵器は、金の卵です。まずは金の卵を国中に知らしめます。
 そして、気まぐれ冠者と勘十、そして彼らの手下数名(知り合いの山賊)が、忍者姿となって行動し始めます。
 この国の、あちこちの農家のニワトリ小屋に、金の卵をそっと置いて行きます。そのうち、この国の人々は、そして殿さまも家来も、金の卵を産むニワトリを巡って、我を忘れ夢中になって行きます。国中が翻弄されます。隣国侵略どころではありません。作戦大成功。

 そんなわけで、気まぐれ冠者と勘十は馬にまたがり、この国で新たに手下にした人々を従えて、意気揚々と凱旋の途に就くのでした。めでたし。(馬にまたがって凱旋するシーンは、中国大陸を感じますね)

 本来、88分の尺の作品だそうですが、現存は75分なので、観れないシーンがあります。
 また、古い映画なので、音声が聞き取りにくい。よって、元は分かりやすい大衆向け仕立ての映画なのですが、話がイマイチ分からない。
 そのうえ、気まぐれ冠者と勘十が仕官した国の殿さま(伊藤隆世)と、隣国の殿さま(ジョウ・オハラ)の様子が似ているので、コンガラガル。(仕官した国の殿さまには、長いあごヒゲがある)
 それでも、ホンワリした、いい喜劇映画と言えるでしょう。

 本作の制作は1935年。この頃の時代背景。
 1931年、柳条湖事件に端を発して満洲事変が勃発、関東軍により満洲全土が占領される。その後、関東軍主導の下に同地域は中華民国からの独立を宣言し、1932年、満洲国建国に至った。
 こんな世情になかで、当時の人々は、この映画を観ていました。
 
 
この映画は、トーキーです。つまり無声映画じゃないです。
日本初のトーキーは1927年。
1938年当時でも、日本では映画製作の3分の1は、まだ無声映画だったそうです。

監督・原作・脚本:伊丹万作|1935年|88分 (現存75分)|トーキー、モノクロ|
製作:片岡千恵蔵プロダクション|撮影:石本秀雄|
出演:片岡千恵蔵(気まぐれ冠者)|田村邦男(髯の勘十)|伊藤隆世(殿様)|ジョウ・オハラ(敵国の殿様)|市川春代( 椿姫 敵国のお姫様)|尾上華丈(木曽猿)|瀬川路三郎( 関羽左衛門)|香川良介(隠密横目氏)|林誠之助(金神)|駒井燿(百足)|ほか

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映画 「羅生門」  監督:黒澤明

上2

 女優、京マチ子を愛でる映画です。
1-0_20170409235658056.jpg
 時は平安時代のある日。人けのない山間の道を、平安京の中央官庁に勤務する官人の金沢(森雅之)は、妻の真砂(京マチ子)を乗せた馬の手綱を引き、亰へと向かっていた。
 偶然、その道端に居た盗賊の多襄丸(三船敏郎)は、通り過ぎる馬上の真砂の美しさに一目惚れ。
 この女を奪いたい、その一心で多襄丸は、ふたりの行く手に立ちはだかった。そうして格闘の末、多襄丸は金沢を縛り上げ、彼の目前で妻の真砂を犯した。その後、金沢は死体で発見される。

 どうも、そこまでは確か、らしい。
 と言うのは、それは検非違使庁(けびいちしちょう)のお白洲に呼び出された、この事件の関係者らの供述から、推測される。
 被疑者は、縄で縛られた盗賊・多襄丸。証人は、金沢の妻・真砂と、巫女(霊能者)の降霊術によって呼び出された金沢の霊。加えて、死体の第一発見者の杣売の男(志村喬)、生前の金沢を見かけた旅法師(千秋実)、弱っていた多襄丸を捉えた男(加東大介)。
 しかし、多襄丸、真砂、金沢の霊、それぞれの供述が大きく食い違う。誰が金沢を、真砂の短刀で殺したのか。

 さて、お白州の後日、土砂降りの雨の中、羅生門の下で雨宿りする、死体の発見者の杣売の男が、下人の男(上田吉二郎)と旅法師に、お白州で言えなかった真実を語り出す。杣売の男は、事件に関わりたくなかったのだ。

 多襄丸、真砂、金沢の霊、この3名の供述は、カメラに向かってなされる。つまり、検非違使庁の役人(裁判官)は観客となる。
 そして、この3名の供述と杣売の男が見た真実が、それぞれ映像として再現され、映画は進む。
 京マチ子が、4名の供述でまったく異なる真砂を演じ分ける。これが見事。(観てのお楽しみ)
 少し残念なのは、多襄丸の供述時のセリフが硬いこと。

  「羅生門」(らしょうもん)とは、平安京の中央を南北に貫く朱雀大路の南端にあった都の正門、羅城門(らじょうもん)のこと。のちに、平安京の西側半分および七条以南の地は、荒廃してしまう。羅城門が見る影も無い本作は、その頃の話と思われる。


英語表記:Rashomon
監督:黒澤明|1950年|88分|
原作:芥川龍之介|脚本:黒澤明 、橋本忍|撮影:宮川一夫|
出演:多襄丸(三船敏郎)|金沢武弘(森雅之)|金沢の妻・真砂(京マチ子)|杣売(志村喬)|旅法師(千秋実)|下人(上田吉二郎)|旅免(加東大介)|巫女(本間文子)|

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映画 「やくたたず」   監督:三宅唱

上

 いい映画です。
1-0_20170324165718a12.jpg どこにでもいるような男子高校生三人の、極々日常的な時間の流れが、カメラによって切り取られ、映画に映し出される。ストーリーというほどの物語性は無い。
 大筋の台本はあるんだろうが、たぶんセリフや演技は俳優に任せている。演技の巧さは求めてはいない、カメラの前で構えなく、極、自然に振る舞えることが大事であった。
 本作をつまらないと思うのは自由だが、映像そのものが、言外に何やら静かに語っているのが分かると、この映画、気に入ると思う。
 
 話の舞台は、雪降る札幌郊外のそのまた外れ。車は通るが人影は見当たらない、殺風景な雪景色。
 枯草茂る小さな丘陵を越えれば、海。モノクロ映像が、白い雪原と冷たい空気を強調する。

 防犯機器の取付施工をする小さな会社に伊丹という従業員がいて、彼を慕って高校3年生の三人が、バイト気分で仕事を手伝いしはじめる。「やくたたず」です。
 高校3年生とはいっても、まだまだ幼い、三人はじゃれ合うように日々を過ごす。
 彼らの先輩、伊丹が勤めるこの会社は、年配のオーナー社長と若い女性従業員一人だけ(この映画の紅一点)。 そして、小さな事務所小屋と機材倉庫に古ぼけた日産サニートラック1台。
 それに、伊丹の友人で刑事の、おとなしい次郎が登場人物に加わり、そして物語と言えることは、日産サニートラックが盗難にあうことぐらい。それも事件と言うほどもない事件。
 これで76分間、最後まで飽きずに観てしまえる。いい映画です。それとカメラワークがイカしてる。お試しあれ。
 

監督・脚本・撮影:三宅唱|2010年|76分|
出演:柴田貴哉|玉井英棋|山段智昭|櫛野剛一|足立智充|南利雄|片方一予|須田紗妃|


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映画 「いなべ」   監督:深田晃司

上
直子と智広のふたりが行く。

 38分の短編映画です。短編ならではの、さらりとした良さがある静かな映画です。
 起承転結の、起・承が穏やかに推移し、ラスト近くで一気に、転と結が用意されているお話です。

1-0_201703182041556fb.jpg 三重県いなべ市の郊外、田園地帯に、長男の智広(松田洋昌)と、歳の離れた高校生の妹、そして母親と祖母の一家4人が住んでいる。その妹は母親が再婚して生まれた娘らしい。
 そこへ智広の姉の直子(倉田あみ)がひょっこり、17年ぶりに帰って来た。幼児を抱えている。高齢出産は大変だったのよと言う。夫はあとから来るらしい。母親は仕事で夜にならないと帰って来ない。この話は、母親が帰宅するまでの数時間の物語。

 妹は直子を知らない。それほどに、直子はこれまで家に近づかなかったし、まったく音信不通だった。兄の智広から話を聞いた妹は、この人があの幻の姉なのねとつぶやく。
 直子は若い頃、家出をした。わけは、直子の英語の家庭教師をしていた男性だった。直子はこの年上の男を慕っていた。将来、この人と結婚してもいいと思うほどだった。ところが、この男は母親と一緒になった。そして直子は家を出た。その後、その男は世を去る。そんな17年を経て、直子が今日、帰って来たのだ。

 直子は智広を連れて、幼い頃を懐かしむように家の近所を歩く。そして直子は林に入って、昔、密かに土に埋めて隠したものを探し出す。それに付き合う、久しぶりの弟気分の智広。
 この姉弟がそんな散歩をするうちに夕暮れが近づく。五重塔のような展望台にふたりは登った。
 展望台からの見晴らしは素晴らしく、夕闇に浮かぶ街の灯りが遠くに綺麗に輝きだす頃。展望台に吹く風が、何か座りの悪いふたりの気持ちを揺らせて、ここよりも、どこか、ずっと向こうのどこかへ、ふたりの心を、ふっと奪い去って行くような、なぜかそんな心もとなさを智広は感じていた。

 直子は智広に、「会えて良かった」と言った。そののち、直子と智広はふたりして家へ帰るはずだったが、家に帰って来たのは智広ひとりだった。
 智広が玄関を開けると、母親が智広の帰りを待ちあぐねていた。母親は言った。「直子の夫だと言う男の人が来てるのよ...。」(あとは映画を観てね)

 滝のシーンはGoodだし、智広の妹がその友人と自転車に乗るシーンは、直子のこれまでを説明する為のシーンだが、自然で良い。だが、直子と智広が散歩するシーンが全体にやや冗長。広場で男4人がサッカーボールをけり合うシーンは、もうヒトヒネリしないとなんのこっちゃになってしまう。

下




監督・脚本:深田晃司|2013年|38分|
撮影 根岸憲一
出演:智広(松田洋昌)|直子(倉田あみ)|伊藤優衣|井上みなみ|望月皇希|康光岐|鈴木Q太郎|西田幸治|哲夫|桂三輝|ほんこん|

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映画 「安珍と清姫」 若尾文子,市川雷蔵  監督:島耕二

上

 安珍・清姫伝説をもとにした、大人の日本昔話といった内容の映画。
 自由奔放なな姫、若尾文子(清姫)と、まじめ一徹な僧侶、市川雷蔵(安珍)、このふたりの魅力につきる映画です。
 1960年の映画ですが、今でも十分に鑑賞に堪えます。
 話はとても古く、平安時代から伝承され、紀州(和歌山県日高郡)道成寺という寺に伝わる話です。

1-0_20170226142424cf0.png おてんばで勝ち気な清姫が狩猟の途中、姫が射た矢が流れ矢となって安珍の腕に当たってしまいます。これがふたりの運命の出会いでありました。
 安珍と連れの僧は、奥州白河より熊野に参詣に来た旅の僧であり、修行中の身でした。
 だから信心一途の安珍は、僧の戒律を守るため、傷の手当をしようと近づく清姫を避けます。清姫を美しいと思うが故に、なおさら避けます。そして安珍は己の煩悩と戦うこととなります。

 かたや清姫は、自身の過失を詫びつつも、自分を避ける、無視しようとする安珍に腹が立ちます。そのうえ、清姫は里の荘官(庄司)の美しい娘、プライドを傷つけられた思い。だから清姫はなんとか、安珍の僧の仮面をはがして、安珍の気を無理にでも自分へ引き付けたい。
 実はそれは安珍への恋だったのですが、清姫は自分のうぬぼれの方が勝り、恋とは気付きませんでした。
 ある夜、安珍が傷を癒やすため、里のいで湯にひとり入っていると、そこへ清姫が現れ、一糸まとわず湯に入ってきます。何やら妖しい色気さえ漂う姫は、安珍を誘います。そうして勝ち気な清姫は、安珍の心が自分に向いていることを安珍に白状させ、あたかも勝ったがごとく高らかに笑うのでした。

 しかしそののち、清姫は安珍への愛に気付きます。清姫は、煩悩に苦しみながら里を去り道成寺へ向かう安珍を追います。
 道成寺への途中、安珍は滝に入っての修行(滝行)のため、仮小屋に滞在します。そこへ清姫が追い付きました。
 そしてふたりは、ついに結ばれます。しかし悲しいかな、このふたりの愛は何処まで行っても悲恋なのです。僧の戒律を破った安珍は、煩悩の苦しみに加えて、自戒の念に苛まれていきます。

 安珍は姫から逃げるように道成寺へひた走ります。そして、彼を追う清姫は、とうとう川に身を投げてしまうのでした。
 その夜、道成寺の境内に異変が起きます。雷鳴と嵐のなか、大蛇に化身した清姫が・・・。

 余計なことですが、仮小屋でのシーンは、なかなか色っぽいです。ご注目。
 本作を観て思い出すのが、2016年の映画「仁光の受難」。これ、安珍・清姫伝説を下敷きにしています。ですが清姫ではなく、村の女達や山女。やたらモテる修行僧の女難の話、喜劇です。
 本作 「安珍と清姫」と同じく、平安時代の話として、女狐の化身との愛の話、内田吐夢の「恋や恋なすな恋」は、大川橋蔵と瑳峨三智子の競演。これもファンタジー作品です。
 若尾文子つながりで言うと、「初春狸御殿」。これはミュージカル。本作 「安珍と清姫」と同じく、若尾文子と市川雷蔵の競演。  
 ちなみに、本木雅弘主演の修行僧の映画「ファンシイダンス」は、僧自ら禁を破りまくるお話でした。
 以上、文中の下線部をクリックして、当該4作の過去記事をお読みください。

英語タイトル:The Priest and the Beauty
監督:島耕二|1960年|85分|
脚本:小国英雄|撮影:小原譲治|
出演:安珍(市川雷蔵)|清姫(若尾文子)|清姫の父で里の荘官・清継(見明凡太朗)|清姫と結婚したい里の長者・友綱(片山明彦)|連れの僧・道覚(小堀阿吉雄)|桜姫(浦路洋子)|早苗(毛利郁子)|増全(荒木忍)|義円(南部彰三)|佐助(花布辰男)|渚(毛利菊枝)|ほか

下


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映画 「どっこい生きてる」   監督:今井正

上
 早朝、日雇いの仕事を求めて、木造の臨時職安前に押し寄せる人々 (これは実写だろう)


0 非戦闘員を無差別に殺傷した東京大空襲から6年経った1951年、占領下の東京の街中の様子とは、どうだったのか、を知る映画。
 観たいと思う方は多くないと思われる映画だが、機会があれば観ておくことをお勧めします。

 進駐軍こそ映画に出てこないが、空爆で破壊されたビルの残骸や、焼け跡のもろもろの瓦礫がまだ街のあちこちにあるのです。
 その瓦礫の撤去や河川改修の作業(日雇い仕事)を職安が提供している。
 多くの人々に職がないのだ。職安が斡旋を開始する早朝、人々は急ごしらえの木造の臨時職安前に、押し合いへし合い、ひしめく。
 多くの人々に金がない。その日、家族が食うものが買えないのだ。
 しかし日雇いで得た金は僅か、数日の食費も賄えない。
 運よく、なんとか勤め先が見つかっても、給料日までを食いつなぐ生活費がないために、その職を諦めざるをえない、そしてまた日雇い生活に戻ってしまう悪循環。(前借りはできない)

 主人公の毛利(河原崎長十郎)は妻と二人の子を抱えている。毛利は毎朝職安に出かけるが、日雇いの職にありつけないこともある。
 家族はみな、着の身着のままだ。粗末な掘っ建て小屋の貸家に住んでいるが、家賃が滞っている。さらには、家主が土地を売ったために立ち退きを余儀なくされる。
 毛利は妻子を、東北にある妻の実家へ帰した。定職に就けて金が出来たら、東京に呼び戻す予定だった。

 うな垂れる毛利は簡易宿泊所にころがりこんだ。日雇いで知り合った顔があちこちに見受けられた。(宿泊所は大部屋雑魚寝)
 日雇い仲間で毛利と気の合う水野(木村功)は、毛利より若いが明るくしっかり者。水野は、その外観が、小学校の二階建て木造校舎のような戦災者共同住宅に住んでいる。(炊事洗濯便所は共同) 一家一間の部屋に、じいさんと妻子ほか、なんと計7人が住んでいる。
 毎朝、職安に出かけては、日雇いをする日々が続く。

 そのうち毛利は旋盤の職を見つけたが、給料日まで食っていく金が、手元に無いがために、悶々としていた。
 それを聞いた水野の計らいで、共同住宅の住人の秋山婆さん(飯田蝶子)が動いた。共同住宅の住人に毛利のために募金を訴え、毛利が食いつなげる金が集まった。

 だが、その夜、簡易宿泊所内で毛利はその金を盗まれる。
 翌朝、旋盤の工場に初出勤したが、工場主から、受注予定の仕事がキャンセルになったので、雇えないと言われる。(実は、工場主の妻が毛利の貧しい風采を見て信頼がおけない怪しい輩と判断したのだった)
 行き詰った毛利は、簡易宿泊所の男に誘われ盗みを働く。警官に追われ逃げる毛利は、ふと気づくと、追い出された家の前にいた。そして、毛利の姿を見かけた大家は言った。上野警察から呼び出しがかかっているよと。

 毛利は観念して出頭したが、話の要件は毛利の妻子の引取りであった。無賃乗車で上野に帰って来たのだ。
 田舎の実家では、六畳に何人もが寝起きする状態だったらしい。田舎とて包容力がなくなっていた。

 上野駅近くで、毛利一家は途方に暮れる。もう、一家心中しかない。
 その前に、子たちに楽しい思いをさせようと遊園地へ。
 だが、ちょっと目を離した隙に息子が池に落ち溺れる。毛利は池に飛び込み息子を救った。
 そして夫婦は思った。生きよう。
 
下監督:今井正|1951年|102分|
脚本 岩佐氏寿 、 平田兼三 、 今井正|撮影 宮島義勇中尾駿一郎、植松永吉|
出演:毛利修三(河原崎長十郎)|妻さと(河原崎しづ江)|子供雄一(河原崎労作)|子供民代(町田よし子)|簡易宿泊所に住む男・花村(中村翫右衛門)|水野(木村功)|水野の妻(岸旗江)|水野の父(市川笑太郎)|水野の妹(今村いづみ)|水野良(寺田勝之)|水野健(寺田健)|秋山婆さん(飯田蝶子)|藤木(四代目中村梅之助)|班長野田(中村公三郎)|現場の男(坂東秀弥)|吉田製作所主(瀬川菊之丞)|妻きみ(川路夏子)|大家山川(河原崎国太郎)|トラックの男(花沢徳衛)|簡易宿泊所亭主(松本染升)|



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映画 「パルコフィクション」   監督:矢口史靖、鈴木卓爾

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 矢口史靖監督の「裸足のピクニック」(1993)、「ひみつの花園」(1997)、「アドレナリンドライブ」(1999)を、面白い映画として観て来た者にとって 、本作「パルコフィクション」(2002)は、前三作の延長線上にある映画として観れる。
 奇天烈な展開、作り手のひねくれた遊び心が嬉しい喜劇映画。(文中の下線部をクリックすると、その映画記事が読めます)

 でも矢口映画ヒット作「ウォーターボーイズ」(2001)を気に入った人は 「パルコフィクション」を多分、受け入れないだろう。作風が違う。

 これは監督の二面性とも言えるが、しかし残念ながら、「ウォーターボーイズ」は、その後の「スウィングガールズ」 (2004)や「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常」(2014)と同様に、凡庸な映画。
 認められて、予算がつく映画製作を任されるようになり、監督として箔がついたのでしょうが・・・、惜しいです。
 ただし「ロボジー」 (2012)はいい映画。「ハッピーフライト」 (2008)はなんとか観れる。

 本作 「パルコフィクション」は、あのパルコを舞台に6話の構成になっている。
 「パルコ誕生」、「入社試験」、「バーゲン」を矢口史靖が監督・脚本を担当し、「はるこ」、「見上げてごらん」、「ポップコーンサンバ」を鈴木卓爾が監督・脚本を担当している。どれも面白い。
 第三話「バーゲン」は、行定勲監督の映画「きょうのできごと」を思い出す。

監督・脚本:矢口史靖、鈴木卓爾 |2002年|65分|
発案:安田裕子|撮影監督:白尾一博|
出演:パルコ役員(田中要次)|老人(相馬剛三)|鈴木徹(小島大輝)|徹の父(寺十吾)|徹の担任教師(椎名令恵)|老人の息子(森下能幸)|コンビニ店員(山中聡)|医師(伊藤智之)|看護婦(元木千早)|花子(真野きりな)|東大男(近藤公園)|面接官(福田勝洋)|新入社員(大高敏宏)|新入社員(古澤弘年)|新入社員(出雲勝麿)|新入社員(小松玲子)|新入社員(池崎真理)|木下イズミ(村上東奈)|ムラチュー(高橋健太)|木下はるこ(進藤幸)|屋上の作業員(田邊年秋)|バーはるこの客(佐藤佐吉)|5歳のはるこ(森田季砂)|斧(鈴木卓爾)|極悪トリオ・甲(宇野孝信)|極悪トリオ・乙(山口大輔)|極悪トリオ・丙(野田幸祐)|バーはるこの子ママ (松村奈緒)|イズミの母(吉野晶)|パルコの店員(唯野未歩子)|パルコの店員(中村靖日)|パルコの店員(紫とも)|パルコのCM(真野きりな)|パルコのCM(近藤公園)|原井鈴子(猫田直)|塩野谷恵子(塩野谷恵子)|店長(紫とも)|パルコの客(坂井三恵)|店員(稲田千花)|警備員(荒川良々)|山谷美都子(唯野未歩子)|大須観三(荒川良々)|荒間素敵子 (田村たがめ)|司(徳井優)|セラピス( 緒方明)|渡部(松永大司)|ジコディ(ジェニファー・ホルメス)|美都子の少女時代(松村奈緒)|美都子の同僚(吉野晶)|

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映画 「ディストラクション・ベイビーズ」   監督:真利子哲也

上

1-0_2017020209333779e.jpg

 世間から、「はみ出た」者たちへの哀歌。そして、覚醒し始めるモンスターの物語。あるいは、痛そうな映画。
 
 ある日、何の前触れもなく、やがて駆出し、そして、その一瞬、暴発する怒り。仕掛けるケンカとその痛みと血の味は、覚醒し始める暗黒の悪の予感と快感を誘い、男はなかば陶酔の中。

 愛媛県の松山から、さほど遠くない小さな漁村で、その男、泰良(柳楽優弥)は養父(でんでん)のもとに育った。
 高校生の泰良はいつもケンカ沙汰。ある日、ふいっとふらり無一文で松山の街に出る。あては何もない。
 泰良は行き当たりばったりに、通りすがりの男や街のヤクザ相手に、ケンカをいきなり仕掛ける。打ちのめされるが、再度は勝つ。この繰り返しで泰良は徐々に、そして確信的に、バイオレンスの奥にある甘い味に目覚め、心の闇の中で陶酔していく。

 泰良に出会った裕也(菅田将暉)は、臆病な男だったが、泰良の腕力を利用し、泰良を従え、通行人に乱暴を働きながら、松山の街を我が物顔で歩き出す。裕也の心の奥に潜んでいた、こんな悪の衝動が路上に転がり出たのだ。
 そんな裕也を、いささか小馬鹿にした目で見る泰良。泰良は裕也に従っているとは、まったく思ってない。

 裕也が強奪したベンツに、偶然、キャバクラ嬢の那奈(小松菜奈)がいた。
 那奈は身柄を拘束されながら、裕也と泰良の3人は、このベンツで深夜の松山市街を離れた。
 翌日、山の中の道で、泰良は車を降りる。しばらくして戻って来た泰良の服に血が着いている。どこかでまた、乱暴したらしい。泰良を追って来た男が、泰良に叩きのめされ路面に倒れた。 

 それまでトランクに入れられていた那奈が運転をさせられる。と、走りだそうとするその時、車は何かに乗り上げる。倒れていた男だった。裕也は那奈にその男をトランクに入れさせる。
 あっ、那奈は慌てた。その男が意識を取り戻したのだ。那奈はなぜか反射的に、男の首を渾身の力で絞めた。それを見た泰良と裕也は、少しの驚きを感じながらも、ニヤリとするのだった。

 警察に追われていた泰良が、祭りの夜、松山に現れた。泰良の人相はがらりと変わっていたのだった。

 全体的に、セリフの聞きやすさを嫌い、わざと低めの音量になっている。とりわけ泰良のセリフの数は僅か。その中で立ち上がってくる「異様さ」を表現するのが、泰良・役の柳楽優弥の仕事。だが、その顔に幼さが残るせいか迫力に欠ける感じ。高校生という設定だからか? 少し残念。(もっとも、映画によくある安っぽいヤサグレ男ではないが。)
 バイオレンス・モンスターで思い出すのが、2014年の韓国映画「その怪物」だが、この映画は優男で迫力がなかった。 (下線部をクリックして「その怪物」の記事をご覧ください)

1-5_20170202101351566.jpg【 真利子哲也監督の映画 】
これまでに記事にした作品です。
以下のタイトル名をクリックしてお読みください。
イエローキッド」 2009、「NINIFUNI」 2011、
同じ星の下、それぞれの夜  FUN FAIR」 2012
【 柳楽優弥出演の映画 】
誰も知らない」 2004  監督:是枝裕和 お薦め

監督:真利子哲也|2016年|108分|
脚本:真利子哲也、喜安浩平|撮影:佐々木靖之|
出演:柳楽優弥(芦原泰良)|菅田将暉(北原裕也)|小松菜奈(那奈)|村上虹郎(芦原将太)|池松壮亮(三浦慎吾)|北村匠海(健児)|三浦誠己(河野淳平)|でんでん(近藤和雄)|ほか

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映画 「変魚路」   監督:高嶺剛

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ミサイラーと、白髪の山の神と、イフェ―パタイジョーのオブジェ(守り神?)


 唐の世が大和の世になって、大和の世がアメリカ世に、アメリカ世が大和の世に・・・
 という歌が、三線一本で歌われて映画が始まります。

 高嶺剛監督の映画は、これまでに、「パラダイスビュー」(1985)と「ウンタマギルー」(1989)を取りあげてきました。(下線部をクリックして過去記事をお読みください)
 どちらの映画も、沖縄の地と文化にしっかりと根差す映画で、沖縄のいにしえをモチーフに取り入れ、かつウチナーグチのセリフでした。
 この「変魚路」も、その路線は変わりありません。しかし、お話の様相は変わった風に思えます。
 ひとつは、現在未来よりも、しきりに過去を振り返るようなシーンがあります。それは、沖縄の良きいにしえを今も継承すると言う風じゃなく、主人公たちの少年時代の古い写真(敗戦直後の頃か)が何度も映し出されます。回顧の念でしょうか。
 もうひとつは、登場人物の多くが年配者たち(出演者たちが老いました)で、若い人の愛といったことは出てきません。
 一方、そうした事と釣り合いを取ろうとするかのように、映画表現は過激になっています。
 沖縄芝居(大衆演劇)や沖縄の民話のイメージを背景にしながらも、突拍子もない調子はずれなシーンが前後の脈略なく現れ、かつ、それらをコラージュした表現が多く出てきます。もちろん可笑しなユルいシーンもあります。


3_201701311231263fc.jpg 監督(1948- )が老いたのでしょうか? 総じて映画の角が丸くなりました。怒りが遠のいた。もっとはっきり言えば、何やら、世に対する「あきらめ」とでもいうようなものが感じ取れます。
 映画表現はハチャメチャではありますが、穏やかなお話でした。
 「パラダイスビュー」や「ウンタマギルー」が良かったと思う方は、「変魚路」を難解な映画と思わず観てください。


監督・脚本:高嶺剛|2016年|82分|
撮影:高木駿一、平田守|
音楽:坂田明|ヨハン・バットリング|ポール・ニルセン・ラブ|大城美佐子|大工哲弘|嘉手苅林昌|CONDITION GREEN|北村三郎|
出演:平良進(タルガニ)|北村三郎(パパジョー)|大城美佐子(カメ)|川満勝弘(ミサイラー)|ほか


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映画 「さくらん」   監督:蜷川実花  脚本:タナダユキ

上

 この映画は安野モヨコの漫画をもとにし、(だから基本、女性向けで)、そして、やたら極彩色な写真家・蜷川実花と、「モル」「百万円と苦虫女」の映画監督・脚本家のタナダユキと、椎名林檎との、3人による共作の映画。
 江戸時代や時代劇や遊郭モノが好きな人は敬遠するかもしれないけれど、たまにはこういう映画もそれなりに悪くない。

1-0_201701251405554b3.jpg これでもかという濃厚な色使いで埋め尽くされる映像は、結果、その色彩に酔う感覚で心地良く思う人や、外国人を狙っているんだろう。
 でも映像を観てると、室内インテリアや着物が、残念ながら安っぽい。いま出来上がりました的で、衣装や大道具に、まだ味(色味)がしみ込んでない感じがする。色に深みが無く、なぜか色紙を思い浮かべてしまう。
 色彩じゃない方の「色」は、女優3人の白い背中を拝めるくらい。そもそも、この映画に粘っこい男性目線はない。

 男性と言えば、店の使用人・倉之助(椎名桔平)。倉之助は、吉原遊廓の遊女で主人公の日暮(土屋アンナ)の相手役。
 この倉之助はイケメンで、イケメンの役どころだからこその、いつもの宿命で、なにやら「場」から浮いているのが可笑しい。
 でも、だからこそ、遊郭の中庭にいる倉之助は、店の2階にいる日暮と、「ロミオとジュリエット」ができるし、ラストでは満開の桜の中を、ふたりして走れるのである。こういうところが、倉之助が映える活躍の場なのだ。

 さて主役の土屋アンナは女優として「見せる」が、あの一本調子の演技は変わらない。
 あとふたりの花魁、高尾(木村佳乃)、粧ひ(菅野美穂)も、極彩色に埋もれて、演技はかすれ気味。
 ま、しかし、時代劇に挑戦するのは良い。

 この映画を作った人は、製作にあたって参考に、川島雄三の映画 「幕末太陽傳」を観てるだろう。
 また、遊郭を扱った破天荒なインディーズ映画、林海象の「音曲の乱」は、もし予算がたっぷりあったなら、「さくらん」に近い極彩色を得たかもしれない。
 男性目線が多い中、周防正行の映画「舞妓はレディ」は、遊郭じゃなく祇園だが、かわいい舞妓目線の映画だった。
 (上記文中、下線部は当該映画の記事へのリンクです。クリックして、当ブログの記事をお読みください)
 

監督:蜷川実花|2007年|111分|
原作:安野モヨコ|脚本:タナダユキ|撮影:石坂拓郎|音楽:椎名林檎|
出演:きよ葉/日暮(土屋アンナ)|倉之助(椎名桔平)|惣次郎(成宮寛貴)|高尾(木村佳乃)|粧ひ(菅野美穂)|光信(永瀬正敏)|若菊(美波)|大工(山本浩司)|坂口(遠藤憲一)|幼いきよ葉(小池彩夢)|しげじ(山口愛)|お蘭(小泉今日子)|楼主(石橋蓮司)|女将(夏木マリ)|ご隠居(四代目市川左團次)|清次(安藤政信)|桃花(蜷川みほ)|花屋(小栗旬)|

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映画 「さらば愛しき大地」   監督:柳町光男

上

 映画の舞台は茨城県鹿嶋市、海と霞ヶ浦に挟まれた平たい地域。
 そこは田んぼが一面に広がる田園風景、そして疎らに点在する農家。
1-0_20170123155834c4f.jpg その一軒が主人公、幸雄(根津甚八)の家だ。幸雄は代々農家のこの家の長男。

 映画は、男女の愛と、衰退していく農業になすすべもない農家の、悲哀を描きながらも、その地に根ざす風土へのこみ上げる郷愁を伝えようとしている。

 幸雄の家は、米作と僅かな養豚じゃ今や食えなくて、(それは、老いた両親と嫁・文江(山口美也子)に任せ)、幸雄自身はダンプトラックを買って、生コン用川砂のピストン運搬を請け負っている。現金収入が入る。この家は俺が支えていると、幸雄は殿様気分。家族を見下して、いい気分。文江との関係は、もとより良くない。

 だが、幸雄はすぐカッとなる、つまらぬことで酒で荒れる。自尊心が強い一方、劣等感が強い。
 特に弟に対してだ。子供のころから頭が良く、品行方正な弟の明彦(矢吹二朗)には、いまも母親から多くの愛情が注がれている。その明彦は、独身で東京で働き東京に住んでいる。

 ある日、幸雄と文江の息子二人が、不幸にも、近所の水辺で遊んでいて水死してしまう。
 さすがの幸雄も、身重の文江も両親も、嘆いても嘆ききれない毎日であった。
 このことは幸雄、文江を精神的に不安定にさせ、二人の関係は疎遠の一途をたどる。

 母と二人暮らしの順子(秋吉久美子)。その母親が若い男と駆け落ちした。順子が知る限り、母親の駆け落ちはこれで3回目。
2-0_20170123160222583.png ひとり残された順子を、通りかかった幸雄がトラックに乗せたことが発端で、幸雄は順子と住む家を借り、嫁・文江と順子との、二重生活が始まる。
 互いの悲しみを舐めあう関係であった。
 それは、川砂運搬がそれなりに高収入だったから成り立った。とは言え、幸雄は文江のいる実家に帰ろうとはしなかった。

 やがて順子との間にも子供が出来、そこだけ見れば、幸せな一家に見えた。実家では、文江は第三子を出産し、幸雄の両親と農作業に相変らず追われていた。
 そこへ、東京にいた明彦が実家に帰って来た。明彦も川砂の運搬業を始め、瞬く間まに小さな事務所を構え事務員も置くに至る。

 そのうち、幸雄は覚醒剤に手を出すようになった。
 幸雄は川砂運搬の発注元の生コン会社の部長とうまくやって、仕事を多く回してもらっていたが、先方からは幸雄に運搬の手配管理も任されるようになるが、幸雄にそういう才はなく、また組織的な行動や指示に馴染めなかった。
 明彦と比べて幸雄は、という劣等感がまた頭をもたげる。荒れ始める。順子にもつらく当たるようになる。幸雄はひとり捨て鉢になり、自暴自棄、自滅への道を歩み出す。
 一方、明彦は結婚が決まった。相手は事務所の女の子だ。

 ついに、幸雄は包丁で順子を刺し殺す。覚醒剤による幻覚が順子の命を奪った。
 映画のラスト。実家の庭先では、明彦夫婦、文江とその子、両親が、ワイワイやっている。子ブタが集団で豚舎から脱走したのだ。
 そこには、やりきれないほどに繰り返しの何ごともない日々と、一時の幸せ、そして覚醒剤と殺人が、大した違和感なく同居している妙な風景であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 地元社会を浮遊する幸雄と順子に対し、対称的な位置づけで描かれる家族や友人など地元に根付く人々。彼らはいわば古い慣習伝統に生きる人々だ。しかし、そんな彼らの中にも、生きにくい地元に(ささやかだが)あらがう者もいた。
 映画は幸雄と順子を主人公にするが、ふたりを取り巻く人々の生きざまも見つめたい。なぜなら、この映画は取り巻く人々あっての物語なのだ。 
 作品としては、幸雄の妻役の山口美也子、幸雄の母親役・日高澄子、父親役・奥村公延および幸雄の同僚役・蟹江敬三たちの、しっかりした脇役が素晴らしく、彼らによる勝利とみるべきだ。

3-0_20170123162335d49.png監督・脚本:柳町光男|1982年|130分|
撮影:田村正毅
出演:山沢幸雄(根津甚八)|順子(秋吉久美子)|幸雄の弟・山沢明彦(矢吹二朗)|幸雄の正妻・山沢文江(山口美也子)|幸雄の母・山沢イネ(日高澄子)|幸雄の父・山沢幸一郎(奥村公延)|幸雄の同僚・大尽(蟹江敬三)|その妻・フミ子(中島葵)|順子の母(佐々木すみ江)|実家に呼んだ霊媒師(白川和子)|ほか

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<さ行> の邦画  これまでに記事にした映画から。 2017.1.5 現在

 これまでに記事にした邦画から、<さ行> の映画を並べてみました。

 下の画像をクリックして、その映画記事をご覧ください。
 五十音順に並べています。
 
 <さ行>以外の邦画は、こちらからどうぞ。 (邦画の五十音順リストです)
1サーカス五人組 2サイドカーに犬 3サウダーヂ 4さゞなみ 2 5殺人狂時代3 6サマータイムマシン・ブルース 7鮫肌男と桃尻女 8さよなら歌舞伎町 9残菊物語 10 33号車応答なし 11ジ、エクストリーム、スキヤキ 12しあわせのかおり 13幸福のスイッチ 14潮騒 4 15四季・ユートピアノ 16事件記者 17事件記者 18地獄 19時代屋の女房 20下町の太陽 21しとやかな獣 22死の十字路3 23芝居道 24下妻物語 25十九歳の地図 26集金旅行 27十字路 28渋滞 29縮図 30修羅雪姫 31修羅雪姫 怨み恋歌 32純愛物語 33少年 34少年探偵団~第一部 妖怪博士 35女経 36ジョゼと虎と魚たち 37白河夜船 38白い息/ファの豆腐 39新・夫婦善哉 40深呼吸の必要 41心中天網島 42新宿泥棒日記 43洲崎パラダイス 赤信号 44スチャラカ社員 45スリー☆ポイント 46精神 47贅沢な骨 48世界はときどき美しい2 49セクシー地帯2 50絶唱 51洗濯機は俺にまかせろ 52その夜の侍 53空の穴 54ソレイユのこどもたち

映画 「幕末太陽傳」   監督:川島雄三

上2






1-0_20161229142257ca7.jpg








 佐平次 (フランキー堺)は仲間と連れだって、女郎屋で飲めや歌えの豪勢な遊びをするが、実は無一文。
 勘定を払えず、女郎屋の納戸(布団部屋)に留め置かれる。「居残り佐平次」のお話は、ここから始まるのです。

 女郎屋があるこの町は、東海道五十三次の第一番目の宿場町、品川宿。
 品川宿の町並みは海沿いに連なっていて潮の香りがするところ。女郎屋の部屋からは、広い海が見渡せて絶景地。東京湾の波がひたひたと岸辺を洗う。女郎屋の裏は、もう舟着き場だ。
 実は佐平次、結核にかかっていて、良くない咳をする。医者から転地療養を勧められていた。風光明媚な品川宿は、転地療養には最適の地。つまり、佐平次の居残りは、初めっから確信犯だった。

 さて佐平次、払えぬ勘定を女郎屋で働いて返そうとする。
 店の使用人たちに分け入って、使用人たちより上手に客あしらい。客からのチップをかすめ取る。
 また、客とのもめごとで女郎が困っていると、間に入って、太鼓持ち(男芸者)よろしく、なだめすかして問題解決。女郎から、ハイお駄賃。番頭よりも機転がきく佐平次は、そのうち、店のあるじから重宝がられるようになる。世渡り上手。

 これに加え、指名ナンバーワンを競い合う、女郎・こはる(南田洋子)と、おそめ(左幸子)のドタバタを映画は描きます。
 一方、「曾根崎心中」があるなら「品川心中」も、なんて洒落を女郎たちに言ってた、貸本屋金造(小沢昭一)が、憧れのおそめと舟着き場から飛び込んで・・・なんてエピソードも交え、あれやこれやの女郎屋を映画は面白おかしく描きます。そうそうそれから、こはるとおそめは、頼りになる男・佐平次を巡っても競い合います。

 ところで、そんな日々が過ぎて行くなか、佐平次と共鳴し合う男が二人現れます。
 その一人は、高杉晋作(石原裕次郎)でした。
 高杉も居残りだ。志士たちと一緒に遊んだ代金60両が払えない。
 高杉はこれまでに海の向こう上海を経験している。当時にしちゃ広い視野の持ち主だ。また、密かに江戸小唄(流行歌)の作家でもあった。硬軟を持ち合わせている男。
 一方、佐平次は、横浜でどうやって手に入れたのか、結核に効く蘭方(舶来の医術)の新薬を飲んでいる。佐平次は器用な男だがとりわけ、高杉が持つ舶来懐中時計を修理できる。この時、高杉は佐平次にシンパシーを感じたのです。そして佐平次も同様でした。
 のちに、高杉を見送る佐平次は、別れ際に高杉に言い放った。「サムライにしておくには、もったいない男だ!」 

 もう一人、佐平次と共鳴し合う男は、女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)だ。
 ある日、徳三郎は吉原遊郭の附馬を連れて家に帰ってくる。(附馬とは、勘定の不足を回収するため、遊客と一緒に家までついて行く遊郭の使用人)
 あるじからしてみれば愚息!の徳三郎だが、そんな徳三郎は自分の店で粋に立ち働く居残り佐平次に、共感を覚える。佐平次のやつ、ああして真面目にみえるが、実は俺と同じ、やさぐれだ。
 やがて佐平次と徳三郎は、店の使用人たちに交じって、賭け事に興じる仲になる。一方、佐平次は、徳三郎のなかに、徳三郎にゃ不似合いな、正義の心を発見しシンパシーを感じるのです。この二人には、無頼という同じ血が流れている。(徳三郎の正義感って何さ?、は観てのお楽しみ)

 やがて高杉は、大志を抱いて志士たちと共に女郎屋を去る。徳三郎は、幼なじみの女中おひさ(芦川いづみ)と駆け落ちを決め、女郎屋を去って行く。
 佐平次はというと、勘定の返済はもうとうに済ませていて、今や居残りでは無くなっていた。さりとて、このまま皆と一緒にこの女郎屋で働く気もない。
 何かぽつんと取り残されたような格好だった。結局、高杉や徳三郎らを見送った佐平次も、女郎屋を去るのであった。

 佐平次に、これという大志は無い。だが、高杉に出会い、大志を抱く者を身近にした佐平次は、大志を持てる器のある人間を密かに羨望する。佐平次のその気持ちの裏返しが、「サムライにしとくにゃ、もったいない男だ!」というセリフに出た。 
 利に聡く新しもの好きな佐平次は、でも所詮、やさぐれな男。
 そして、その場その場はチョコチョコ器用に立ち回れるが、自分の道、俺の人生を見い出せないでいる。おまけに結核、先は長くないかもしれぬ。
 頃は、明治まであと6年の幕末。世はおおいに揺らぎ始め、不安な日々は足早に過ぎて行く。
 はたして佐平次は、その後、明治の世を見たのだろうか。

 川島雄三監督の映画 「貸間あり」の主人公・与田五郎(フランキー堺)も佐平次と同類の男だった。(「貸間あり」の記事はこちらからお読みください)
 
監督:川島雄三|日活|1957年|110分|
脚本:山内久、川島雄三、今村昌平|撮影:高村倉太郎|
出演:居残り佐平次(フランキー堺)|高杉晋作(石原裕次郎)|女郎おそめ(左幸子)|女郎こはる(南田洋子)|貸本屋金造(小沢昭一)|女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)|女郎屋の女中おひさ(芦川いづみ)|やり手おくま(菅井きん)|女郎屋の主人・伝兵衛(金子信雄)|その女房お辰(山岡久乃)|番頭善八(織田政雄)|生粋の品川っ子・若衆喜助(岡田眞澄)|女郎屋の客・千葉の杢兵衛大尽(市村俊幸)|女郎屋の客・仏壇屋倉造(殿山泰司)|その息子で店で鉢合わす清七(加藤博司)|佐平次の連れ・気病みの新公(西村晃)|佐平次の連れ・呑込みの金坊(熊倉一雄)|ガエン者権太(井上昭文)|ガエン者玄十(榎木兵衛)|久坂玄瑞(小林旭)|志道聞多(二谷英明)|伊藤春輔(関弘美)|ほか多数
3_20161229142839fe0.jpg

【川島雄三監督の映画】
 これまでに記事にした映画から。
 それぞれ、題名をクリックしてお読みください。

 「貸間あり」、「洲崎パラダイス 赤信号」、
 「しとやかな獣」、「雁の寺」、「特急にっぽん




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映画 「あの手この手」 (1952)   監督:市川崑

上

 40代半ばの共働き中年夫婦と、この夫婦の家にある日飛び込んできたアコちゃん(久我美子、当時21歳)との、スッタモンダの喜劇映画。

0_20161213175730423.jpg 家のあるじ・鳥羽(森雅之)は大学勤めの平凡な先生だが、小説を書いている。もちろん名のある作家ではないが、文芸雑誌に連載ものを載せている。おっとりした大人しい性格。 
 それに対して、鳥羽の妻・近子(水戸光子)は、しゃきしゃきしたキャリアウーマン。彼女も先生をしているが、もっぱらそれ以外の仕事で、いつも忙しい。近子は、朝日新聞・大阪本社の文化部顧問をしていて、身の上相談では世間に名が通っている。日に何通か、相談の手紙が自宅にも来る。そのほか、婦人同盟の役員や、家庭裁判所の調停委員もしている行動派。
 夫婦はディンクスで、子はいない。鳥羽は、いつの頃からか、近子を「奥さん」と呼ぶようになった。(たぶん戦後からだろう) 夫婦の力関係は、誰が見ても近子の方が上。

 ある日突然、アコちゃんが、大阪郊外のこの家に飛び込んできた。アコは近子の姪で、伊勢志摩の実家を飛び出して来たのだ。
 母親を早くに亡くし、祖母に育てられたアコ。その祖母は、アコの父親(婿養子)に対し、とても専制的。だからか、アコは鳥羽の家に転がり込んですぐ、近子の尻に敷かれる鳥羽に同情し、と言うより、アコは鳥羽を応援するようになる。

 さてドラマは、鳥羽、近子、アコの三人に加えて、近所の開業医・野呂(伊藤雄之助)とその妻(望月優子)、そしてカメラマンの天平君(堀雄二)と、鳥羽家のお手伝いさんが加わり、話はややこしくなって行く。そして、なんとアコは密かに鳥羽に恋をする・・・。さらには近子が・・・。

 アコを演じる久我美子の演技が、オーバー気味でいささか漫画風。だが、昭和27年当時、子が出来ないんじゃなくディンクスで共稼ぎの夫婦はマレだっただろう。おまけに夫は大学教授で作家、妻は行動的な文化人。つまり、ほぼあり得ない夫婦と、現代的で向こう見ずなアコ、これでちょうど釣り合いが取れたドラマ設定だった。だから、喜劇になり得た。(本作公開の昭和27年は、GHQ廃止、進駐軍去る、日本に主権回復の年)

監督:市川崑|1952年|大映|92分|
原作:京都伸夫|脚色:和田夏十、市川崑|撮影:武田千吉郎|
出演:アコちゃん(久我美子)|鳥羽さん(森雅之)|近子夫人(水戸光子)|天平君(堀雄二)|お手伝いさん鈴江(津村悠子)|野呂ドクター(伊藤雄之助)|野呂夫人(望月優子)|アコの祖母(毛利菊枝)|アコの父(南部彰三)|秋山(三上哲)|鳥羽が行きつけのバーのマダム星子(平井岐代子)|女代議士(大伴千春)|PPP編集長(近衛敏明)|評論家(荒木忍)|小説家(伊達三郎)|新聞社の文化部長(原聖四郎)|

【市川崑監督の映画】  これまでに記事にした作品です。タイトル名をクリックしてお読みください。

 「暁の追跡」(1950) 池部良、杉葉子、伊藤雄之助ほか
 「足にさわった女」(1952) 越路吹雪、池部良、ほか
 「億万長者」(1954) 久我美子、山田五十鈴、木村功、ほか
 「」(1957) 京マチ子、船越英二、山村聡、ほか
 「満員電車」(1957) 川口浩、笠智衆、杉村春子、ほか
 「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」(1959) 若尾文子、京マチ子、野添ひとみ、ほか
 「女経 (物を高く売りつける女)」(1960) 山本富士子、船越英二、野添ひとみ、ほか

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映画 「ハワイアン・ドリーム」   監督:川島透

上
ボコボコのキャデラックに乗る、山際(ジョニー大倉)、川添(時任三郎)

 いや~、大した映画じゃないんですが・・・。
 全編、ハワイ(ホノルル)ロケのせいか、出演者がのびのびしている。いや、観る方の気が、easygoingになってくる、そんな映画。
 挿入の音楽も、あれこれ懐かしく、気分を楽しくしてくれる。(曲目は下記) しかし、この選曲、どういうチョイスなんでしょう。

0 お話の方は、ハワイに不法入国している、川添(時任三郎)と、山際(ジョニー大倉)が巻き起こす事件。
 二人は、日系アメリカ人を装って、観光客にマリファナと偽って、変なもの(ウーロン茶の茶カス)を路上で売っている。

 山際の彼女は日系アメリカ人で、レイコ・ケイン(桃井かおり)といい、ラジオのディスクジョッキーと、バーを営んでいる。川添の彼女も日系女性で、カレン・サイトウ(タムリン・トミタ)といって、ニューヨークに行ってダンスで成功したい希望を抱いている。
 レイコ・ケインの店には、ショーキチ・島村(殿山泰司)やケンジ・大原(多々良純)が、いつもタムロしている。

 ある事が元で、ピアス警部に目をつけられた川添と山際は、警部に不法入国の弱みを握られ、モランという男の逮捕について、警察に協力せざるを得ない羽目になる。
 モランというイタリア系アメリカ人は、10年前にハワイに現れ、ハワイの裏社会で一大勢力を築いたボス。
 ピアス警部は何とかモランを逮捕したいが、これまで、警察にシッポをつかませない。そこで警部は、モランがシッポを出すように仕向けることを、川添と山際に協力要請した。

 だが、なにしろ相手は大ボスだし、アメリカの巨大タバコ会社の陰謀も絡んでいる。
 さて、川添と山際はどういう作戦でモランのシッポをつかもうとするのでしょうか・・・。
 カーアクションもあります。ラブシーンもあります。殿山泰司も可笑しいです。
 たまには、こんな映画も、どうでしょうか。

<挿入歌> 
夢の続き:竹内まりや(主題歌)|Do Wah Diddy Diddy|Do You Wanna Dance|Mr. Moonlight|Be My Baby|Super Board|Oh, Pretty Woman|Sukiyaki:坂本九|AMAPOLA:山下達郎|After Glow:カシオペア|MACHINE GUN HEART:PINK|Somebody To Love|DISCO KING:B&J's|Hawaii, I Love You|Girl's in Love With Me:芳野藤丸|(For You) I'd Chase A Rainbow:カラパナ|JULIETTE:カラパナ|Traumatic:竹中正義An Old Fashioned Love SongPipe Line|Just a Love Song:村田和人|それ以外の曲:加藤和彦|


監督・脚本:川島透|1987年|東宝|111分|
撮影 前田米造|音楽 加藤和彦 、 朝妻一郎|
出演:川添達彦(時任三郎)|山際翔史(ジョニー大倉)|レイコ・ケイン(桃井かおり)|カレン・サイトウ(タムリン・トミタ)|ショーキチ・島村(殿山泰司)|ケンジ・大原(多々良純)|ヒューバート・ロレンス(ディーン・ターナー)|ハリー・ゴールドマン(ジム・デマレスト)|ピアス警部(G・W・ベイリー)|ルディ・モラン(ビンセント・バケッタ)|


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日本映画 「ぼくらの亡命」  監督:内田伸輝  ~第17回東京フィルメックス上映作品   

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその12回目、やっと最終回です。
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「ぼくらの亡命」  日本|2016|116分|
 監督:内田伸輝 (UCHIDA Nobuteru)
1_20161201130649bad.jpg
 今年のフィルメックスに出品された2本の邦画は、なかなか力作、いい出来だ。(もう一本は、庭月野議啓 監督の「仁光の受難」。この記事はこちらから。)
 本作「ぼくらの亡命」も、観たあとに新鮮な印象が残る。公開してほしい。

 主人公の昇は、二十歳代だろうか、ホームレスのように見える。
 彼は数年に渡り、そんな生活を続けている。
 だが昇には、後見人がいる。そのころ昇は未成年だったのだろう、昇の親が死んだあと、叔父が後見人として彼について今に至っている。
 だから、生活最低限程度の金が昇の口座に振り込まれている。かつ、時々、叔父は昇を訪ねて、彼の近況を心配する。

0_20161201134407b36.jpg 昇は、郊外の林のなかで、ひとりテント生活をしている。人を寄せ付けない引きこもりの暮らし。叔父も追い払われる。
 食事はコンビニに頼り、持ち物と言えば、街に出るための古びた自転車と習字道具くらいだ。彼は紙に墨で、彼がよく思わない人間の名前などを書き散らし、それをテントに張り付けている。彼流の儀式のようだ。
 昇はチラシ入れのバイトも時々しているが、まったくやる気がない様子。雇い主がそんな彼を雇おうとするのも、雇い主が昇の親に恩義あってのことらしい。要するに、昇という男は、今もって大人になりえていない、甘やかされてきた子供だった。

 ある日、昇は樹冬という女に街で出会う。
 樹冬は売春をしている。昇は樹冬を好きになったのだろう、彼女をそういう境遇から救い出そうとした。
 まず昇は街頭の物陰から、樹冬と売春斡旋の男(美人局:つつもたせ)とを、隠れて観察する。そして、昇は客を装い、樹冬に近づく。(スーツを叔父から借りてだ)
 樹冬と話しすることが出来た昇は、美人局の男から逃げたい樹冬に、一案を提案する。昇が誘拐犯になり樹冬を誘拐する、身代金を美人局の男に要求する、こういう段取りだった。
 だが、その男はまるっきり、取り合わない、関心さえない様子。樹冬の替えになる女は、いくらでもいるのだ。
 この事態に樹冬は動揺する。結局、樹冬は男のマンションで男を刺してしまう。そのあと、昇がそのマンションに忍び込み、男の死を確認した。

 ふたりは逃亡する。東京を離れ、ロシア領の島へ渡るのだ。亡命だ。
 しかし、所詮、そんなことはおもちゃのような戯言。所持金が底をつく。昇は電話で叔父に、叫びながら金を要求するが、叔父は振り込まない、早く帰って来いと電話の向こうで言うだけであった。
 そして、売春斡旋の男の死亡記事が、いつまで経っても、新聞に出ない。樹冬は言う。ほんとに死んでたの?
 北海道にさえも行けないふたりは、千葉辺りの浜辺でテントを張っている。食物にも事欠く。樹冬は安いウィスキーをがぶ飲みする。昇は墨でなにやら書き始める。誰が見ても、ふたりの愛は、徐々に崩れていくようであった。

 そんな日が続くある日、樹冬は近くに住む一人住まいの男に出会い、その男は樹冬を自宅に招き優しくいたわった。柔らかいベッド、温かい朝食。この事態に樹冬は動揺するどころか、心は決まる。
 昇は去りゆく樹冬に向かって叫ぶ。「愛している、戻って来てくれ!」 そして・・・・。(ここら辺で止めときます)

 昇の、この叫びのセリフは、とても陳腐に見えるが、シーンでは、案外すんなりと受け入れられる。監督の力だろう。

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日本映画 「仁光の受難」  監督:庭月野議啓  ~第17回東京フィルメックス上映作品

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその第6回です。
 いい映画です!
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「仁光の受難」  Suffering of Ninko|日本|2016|70分|
 監督:庭月野議啓 (NIWATSUKINO Norihiro)
1_20161129095902256.jpg




0_20161129120903f77.jpg






 これは、いい映画。今年のフィルメックス上映作品中、1、2を争う いい出来の映画。
 とにかく面白いエンターテインメント作品で時代劇、かつ妖怪譚。

 江戸時代の話。ある寺に仁光(辻岡正人)という若い坊主がいた。
 仁光は、寺の坊主達の誰よりも熱心な見習うべき修行僧であった。
 しかし彼には坊主として、ある致命的な欠陥があった。

 この寺の坊主が幾人かの集団となって、近くの町へ托鉢に出かけると、なぜか毎回、町の女は、待ってましたとばかりに仁光を目指して群がってくるのだ。
 (托鉢:僧の修行の1つ。家々を巡り、家の門(かど)に立ち経文を唱え、持った鉢に米や金銭の施しを受ける。)
 群がってくる女は、若いのだけでなく、年配の女もいる。みな争って、仁光の衣の袖を引き、手を握り、頬を撫でる。もちろん、仁光は押し黙ったまま、女達を振り払い避けるのである。決して仁光が自ら誘うのではない。受難(女難)である。
 こんなことで、仁光の噂は遠くの村落まで拡がって行った。
 寺の住職は、仁光に托鉢禁止を言い付けたが、町の女たちは、托鉢に来た坊主たちに仁光が来ない不平不満をぶつけた。
 一方、ひとり境内の掃除をしていた仁光は、境内の林間に幻想を見る。全裸の若い女が仁光を誘うのだった。

 立派な修行僧の仁光とて、はやり男であった。ついに、淫らな妄想が止めどなく心に沸き起こりはじめる。
 ある日彼は、ひとり修行の旅に出た。東海道を西へ上った。そして滝に入って厳しい修行(滝行(たきぎょう))もした。だが、山奥の森で女たちの幻想を見てしまう。街道の町では女が寄ってくる。
 
 仁光はひとりの浪人に出会う。人斬りの快感が忘れられない男だった。ふたりには通底するものがあった。
 そしてふたりは、ある村の頼みで、村の男を誘い精気を吸う山女を、成敗することになるのだが・・・。

 ここら辺で止めておきます。この映画、ぜひ日本での公開を望みます。
 映画には、曼荼羅や広重の絵などを使ったアニメや、一部VFXも挿入され、表現を豊かにしています。これらは、みな監督自らの制作だそうです。
 この「仁光の受難」は自主製作ですが、庄内映画村でも撮影しています。(自主映画、初!)
 クラウドファンディングで資金を集めたそうで、製作費は総額ゼロ3つに至ったとのこと。


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映画 「あん」  主演:樹木希林  監督:河瀬直美

上

 なんとも、すなおな映画です。
 樹木希林(主人公:徳江さん)の演技を称える映画です。
 筋のその先を急いで追わず、映画が語る、ゆったりした語り口に身を委ねましょう。

1-0_2016111114105308c.jpg 商店街から外れた所にある、どら焼きの店が話の舞台です。
 馴染み客は近所の女子中学生達で、店内のカウンターは3人座れば満席の小さな店。
 どら焼き屋の千太郎(永瀬正敏)は無口な男で、中学生にからかわれても反応しない。
 
 あのどら焼き屋の男(千太郎)は、なんと悲しい目をしてるんだろう、店の前を通る度にそう思う女性がいました。
 その名は徳江(樹木希林)といい、70歳半ばでしょうか、あとで分かることですが、徳江はハンセン病患者専用の施設に住む女性です。
 まだ10代の若い頃にハンセン病を患い、それ以来その施設で隔離されて来た徳江は、とっくに完治した今もそこに住み続けています。他に住むべき所も身よりもないのでしょう。
 「あのどら焼き屋の男の目は、施設に入った頃の自分の目と同じだ」 徳江はそう思い、同時に、店に関心を持つに至ります。

 桜が満開のある日、徳江はだめもとで、店で雇ってくれないかと、どら焼き屋の千太郎に申し出ます。
 実は徳江はあんを作るのが得意です。これまで施設内で、試行錯誤を重ね楽しみながら、あんを手作りしてきたのです。施設の生活は、とにかく時間が有り余るほどあるのです。その味と風味は優れていて、もちろん周りの患者に好評です。しかし徳江は、施設外で働いたことが無かったのです。

 この徳江に、千太郎と、そしてどら焼き屋のオーナー(浅田美代子・・・悪役です)が加わり話は進みます。
 どうやら千太郎には過去に過ちがあって、店のオーナーの旦那に、大きな額の金を工面してもらっていた。刑務所を出所後、千太郎はオーナーのこの店で働き、毎月売上金を収め、かつ少しずつ借金を返していく生活でありました。もちろん独身です。

 徳江の作るあんに感心した千太郎は彼女を雇うことになるのですが、徳江がハンセン病患者だという噂を聞き付けたオーナーが千太郎に徳江を追い出せと言います。そしてほどなく、噂は街に流れ出し、徳江のあんで行列ができるほどになった店は閑古鳥が鳴くようになってしまいます。
 さらに話に加わって来るのは、店に来る常連の中学生・ワカナ(内田伽羅)。彼女は母子家庭の一人娘で母からの愛情が薄い子でした。さて、あとは映画を観てください。
 穏やかな語り口の映画ですが、ハンセン病に対する誤解偏見差別への怒りが込められています。これを機会にハンセン病についての基本は押さえておきましょう。
 残念なのは、ラストの締めが甘い。我慢しましょう。
 
監督:河瀬直美|2015年|113分|
原作:ドリアン助川|脚本:河瀬直美|撮影:穐山茂樹|
出演:徳江(樹木希林)|千太郎(永瀬正敏)|桂子(市原悦子)|ワカナ(内田伽羅)|ワカナの母(水野美紀)|ワカナの部活の先輩・陽平(太賀)|どら春のオーナー(浅田美代子)|オーナーが可愛がっている甥っ子・若人(兼松若人)|

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映画 「鶴八鶴次郎」 (1938年)  監督:成瀬巳喜男

上2








1-00_20161024093639965.jpg








 女優・山田五十鈴、当時、21歳を愛でる映画。(昭和13年)
 彼女の凛とした存在感が冴える。

 鶴八鶴次郎というコンビで売出し中の、鶴八(山田五十鈴 )と、鶴次郎(長谷川一夫)。
 鶴八の母親(先代鶴八)は新内の名人で名をはせた人で、その娘・鶴八は、母親に才能を見込まれて、幼い頃から新内を教え込まれてきた。
 相方の鶴次郎も、先代鶴八の一番弟子で才能を延ばしてきた男であった。

 よってふたりは、子供の頃から先代鶴八のもとで、幼なじみのようであったし、いつの頃からは互いに淡い恋心も芽生えていた。
 そんな、若くて実力ある、鶴八鶴次郎の人気は破竹の勢いで、ふたりが出演する演芸場はいつも満席。鶴八鶴次郎は互いに相手を、差し替えのきかない、息の合った最高の相方と思っている。だからこそ世間はふたりの関係をうわさしているのです。

 鶴次郎の番頭・佐平(藤原釜足)は機転が利くしっかりした男で、鶴次郎のマネージャー。
 先代鶴八からのひいき筋の旦那(パトロン)である松崎(大川平八郎)は、先代が他界した後も、あたたかな目で若き鶴八の面倒をみている。
 また、太夫元(興行責任者)の竹野(三島雅夫)は、プロデューサーとして鶴八鶴次郎の人気と才能を見抜いていて、まだ若い二人を、芸能界重鎮の反対もある中を押して、名人会へ出演させることを決めた芸能界の実力者。

 鶴八鶴次郎の名人会出演は大成功であった。しかし、その後、鶴次郎は芸人として落ちぶれていくことになる。
 その直接の原因は、鶴八と鶴次郎の仲たがいだった。ふたりが舞台を降りたあと、楽屋で鶴次郎は決まって鶴八の三味の今日の出来に文句を言った。しかし、これはいつものことであった。些細な一点を指摘される鶴八にはメンツがある。芸人の意地と意地がぶつかり合う。(良く言えば切磋琢磨と言えなくもない)
 その一方で、大いにほめる時もある。また、平素の二人は仲がいい。そんな、お天気模様なふたりに、番頭・佐平は慣れっこになっている。しかし、名人会で成功したふたりがいる高みでの仲たがいと意地の張り合いは、二人にとってコンビ解消への運命となった。

 実は、仲たがいの真相は、鶴次郎の嫉妬であった。鶴次郎は鶴八を心底好きだった。だが彼は、鶴八のパトロン・松崎への、自身で思い込んでしまった嫉妬に負けてしまう。(鶴八と松崎はきれいな関係だったのに)
 一方、これまで芸一筋で身を立ててきた鶴八だが、先のことを考えれば、女として、収まるところに収まりたい。その相手とは、鶴次郎と思い続けていたのに・・・。

 コンビ解消後、鶴次郎は東京から姿を消した。鶴八は富豪の松崎の妻となった。
 鶴次郎の心はすさみ、芸は荒れ、客のまばらな地方の場末にひとり沈んでいた。そして時は過ぎていった。

 見兼ねた佐平マネージャーは、鶴八鶴次郎を再結成する計画を鶴八に承諾させて、鶴次郎を東京へ連れ帰った。そして、公演は成功した。だが、その最終日、楽屋で、またもや、鶴次郎は鶴八の三味の出来に些細な注文を付けた。
2-1_201610241227006b6.png 佐平は止めたが、鶴八は怒って楽屋を後にした。
 (ついさっきまで鶴八は思っていた。 「芸人の子はやはり芸人、今回の復帰公演で気付いた、私は芸で生きて行きたい、芸は生きがいだ。」 鶴次郎の言動は、そう鶴八が思った矢先の事であった。彼女は松崎の妻として一生を終えるかもしれないことに疑問を抱いていたのだ。)

 鶴八が去ったあと、楽屋で、鶴次郎は佐平に言った。「俺はいまも鶴八が好きだ。だが、田舎の場末で思い至ったことは、芸人であることがつくづく嫌になったこと。鶴八は芸人じゃなく、松崎の妻として幸せになって欲しい」と。
 これを聞いた佐平いわく、「じゃなんですか、さっき、鶴八に言ったことは嘘なんですか。」

 今、この映画を観る人は、好きなら好きと言えば!という思いが募る。ひんぱんに顔を突き合わせて来た関係なのに、好きと、はっきり意思表示しない昔の話(昭和13年)に、違和感を感じる。だがこのこと以上に、違和感がある事がある。
 一時は、夫婦の約束をし、さらには、演芸場の主人(席亭主)になりたいという鶴次郎の夢を、(二人の金で演芸場を買い取り) 実現していたのに、結局、悲劇となってしまう。
 その原因は、やはり鶴次郎の松崎への嫉妬だ。鶴八が、足りない資金を松崎から調達していたのだが、それを鶴次郎に言わなかった。それが鶴次郎をさらに嫉妬へと追い込んだ。
 振り返ってみると、鶴次郎と松崎の接点は無い。富豪の旦那と、先代鶴八という女芸人に拾われた(までは言い過ぎかもしれないが)男・鶴次郎との、身分の格差。昭和13年当時、少なくとも芸能界において、この格差は、ものも言えぬ壁だったのでしょう。当時の観客は、それを理解して観ていたのでしょう。(でも、そうでしょうか、鶴次郎は単に小心な男であったのかもしれない)

 それでも、腑に落ちない点がある。鶴八の、芸人の娘の、芸への執着心。それに引き替え、地方の場末で辛酸を舐めたとは言え、鶴次郎は芸を捨てる、そのあっけなさ。これが、この話を尻切れトンボにしている。
 よって、この映画は、山田五十鈴、当時、21歳を愛でるだけ、の映画になる。

 山田五十鈴 (当時18歳)の、きりりとした存在感を示す映画に、溝口健二の「マリアのお雪」(1935年)がある。こちらは、お薦め! 
 さらには、同じく溝口健二の「残菊物語」(1939年)がある。これは明治時代の歌舞伎界の話で、主人公の男は地方で辛酸を舐めたのち、妻や友人たちの手によって、立ち直る話だった。 (以前に書いた 「マリアのお雪」、「残菊物語」の記事は、それぞれ、題名をクリックしてお読みください)

 新内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 三味線音楽は、唄物と語り物に大別される。 語り物は浄瑠璃物ともいわれ、義太夫、豊後系浄瑠璃の新内・常磐津・富本・清元(江戸浄瑠璃4派)等がある。新内は、鶴賀新内が始めた浄瑠璃の一流派。
 だから鶴八鶴次郎は、買い取った演芸場の名を、鶴賀亭とした。
 
下2監督:成瀬巳喜男|1938年|89分|
製作:森田信義|原作:川口松太郎|脚本:成瀬巳喜男|撮影:伊藤武夫|
出演:鶴八(山田五十鈴 1917-2012)|鶴次郎(長谷川一夫 1908-1984)|鶴次郎の番頭・佐平(藤原釜足)|鶴八のひいき筋の旦那(パトロン)・松崎(大川平八郎)|太夫元(興行責任者)の竹野(三島雅夫)|ほか

【 成瀬巳喜男監督の映画 】  これまでに記事にした作品です。
 (以下、題名をクリックしてお読みください)

 「乙女ごころ三人姉妹」(1935年) 「サーカス五人組」(1935年)
 「芝居道」(1944年) 出演:山田五十鈴、長谷川一夫
 「あにいもうと」(1953年) 出演:京マチ子、久我美子
 「夫婦」(1953年) 出演:上原謙、三國連太郎、杉葉子
 「流れる」(1956年) 出演:山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、田中絹代

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映画 「パラダイスビュー」   監督:高嶺剛

上

 沖縄返還(1972年)直前の、村人たちを描く群像劇。

1-0_20161012130855481.png 群像劇とはいっても、はっきりしたストーリーはない。取っ散らかした、たくさんのエピソードを、映画は気ままに映し出す。

 レイシュー(小林薫)は米軍の仕事をしていたが、クビになった。(ストライキに加担し過ぎたようだ)
 小遣い稼ぎにハブ捕りをしているが、ほかに何することもないボンヤリした毎日だ。アリの背に背番号を張り付けたりしている。祖母と母親(平良とみ)それに妹のビンダレー(職業:沖縄民謡歌手)の四人暮らし。
 レイシューは独身だが、長年連れ添っている愛人ジュール(りりィ)がいる。レイシューは米軍払下げの軍用トラックを使って、チョイ悪な仲間たちと海上トラックの商売を始めようとしている。妹のビンダレーは、サムライ姿の男(巡業の一座か村芝居の座員か)に、しつこく付きまとわれている。
 映画後半でレイシューの祖母は、米軍の軍事演習の流れ弾が当たって死亡する。

 ヤマトンチュ(本土の人)のイトー(細野晴臣)は、植物学者らしい。沖縄に生息する未知の不思議な植物の採集と研究をしている。
 彼は沖縄の地に根付くためにウチナーンチュの女性と結婚したいと思っていた。そしてナビー(小池玉緒)と知り合った。
 ナビーの母親は、本土の男との結婚に躊躇していたが、本土復帰を前にして、「いずれ日本復帰するから日本人と結婚しなさい」と言って許すつもりであった。

 しかし、ナビーが毛遊び(もうあしび)に参加して、妊娠したことが発覚した。ナビーの母親が問い詰めたところ、相手はレイシューらしい。これを聞いたナビーの2人の兄たちは困った。妹の幸せを壊した男レイシューは兄たちの親友でもあった。

 困った母親は、ある盲目の男を訪ね相談をする。
 この男は村人からフィリピナースと呼ばれている。戦前、フィリピンへ出稼ぎに行って、彼の地で女と一緒になり子供を設けていたが火事で子を亡くした。そして単身、村に帰って来た男。ナビーの母親とフィリピナースは、フィリピンへ行く前には相思相愛の仲だった。
 ナビーの2人の兄は、ロックバンドのメンバーで、近くハノイへ行く。米軍の基地を慰問で巡るツアーに参加するらしい。(まだベトナム戦争のさ中だ)



3-0_20161012132548b82.png チルー(戸川純)は、村の家々の家事手伝いをしている女。母親は村で飯屋(呑み屋)を営んでいる。チルーは、レイシューに思いを寄せているが、母親はこれをよく思っていない。またチルーは、レイシューとジュールのことが気がかりだ。
 ある日、チルーは夢を見た。レイシューのマブイ(魂)が、彼の体を離れ落ち、彼のそのマブイを犬が食ってしまう夢。自分のマブイを失くした者は、神隠しに会うと昔から言われている。チルーの夢は神秘的予言であった。

 レイシューは神隠しに会い、森の中をさ迷う。
 映画は、沖縄土着の不思議も映し出す。マブイを落とす、虹豚、淫豚草、神隠しに会う、土を食べてその呪力を解くなど、村人の日常に隣接するあちらの世界を描きます。村人のひとりアガダニースーに至っては、森の中で神と親しくしている。
 レイシューが神隠しに会うきっかけは、少年院を脱走した男達による護送車襲撃事件だった。レイシューは、祖母の葬儀の夜、村人と取っ組み合いをし、警察に取り押さえられ、護送車に乗っていたのだ。そして、彼は闇夜の中、脱走し、その後神隠しに会った。

 1972年の沖縄返還が近づくにつれ、沖縄独立の気運が反復帰運動として盛り上がりを見せる頃だった。日本政府は神経をとがらせていた。だから、その余波で、レイシューは村人との些細なケンカで、警察に連行されたのだ。(映画は、村人の一部がこの反復帰運動に加わる様子も描いている。)

 ラスト近く。虹豚に腹部を食われたレイシューは、村はずれの道端で倒れている。たまたま、通りかかったナビーの兄たちらに発見されるが、もう手遅れだった。
 青空の下、レイシューは、一本道をひとり、よろよろと歩いて行くのであった。

 毛遊び(もうあしび)とは、かつて沖縄で広く行われていた慣習。主に夕刻から深夜にかけて、若い男女が野原や海辺に集って飲食を共にし、歌舞を中心として交流した集会をいう。映画は、このほかにも、種々の沖縄の風習を話に織り込んでいます。

4‐0 映画には、沖縄民謡歌手の嘉手苅林昌 (鍋修理屋)や照屋林助 (陽気な歯医者)らが出演しています。
 映画音楽の担当は、元はっぴいえんど元YMOの細野晴臣。このころの細野晴臣は、ワールドミュージック(沖縄音楽含む)とコンピュータミュージックが交差する時代を築いたひとり。
 ちなみに、照屋林助演ずる歯医者は、照屋林助の師匠・小那覇 舞天(おなは ぶーてん、1897-1969)をなぞっている。小那覇は、沖縄の演劇人、かつ歯科医師。沖縄のチャップリンと呼ばれた人。


監督・脚本・美術:高嶺剛|1985年|113分|
撮影:東司丘宇天|音楽:細野晴臣|
出演:ゴヤ・レイシュー(小林薫)|村の女・チルー(戸川純)|レイシューの祖母ゴヤ・パーパー(大宣味静子)|レイシューの母親ゴヤ・カマド(平良とみ)|レイシューの妹で歌手のゴヤ・ビンダレー(谷山洋子)|イトー(細野晴臣)|イトーと結ばれるはずだったタカシップ・ナビー(小池玉緒)|ナビーの兄タカシップ・ミッチャー(コンディション・グリーン・エディ)|ナビーの兄タカシップ・マチュー(コンディション・グリーン・カッチャン)|ナビーの母親タカシップ・モーシー(関好子)|チルーの母カナー(北島角子)|チルーの義父タルガニ(島正太郎)|チョッチョイ(辺土名茶美)|レイシューの愛人ジュール(りりィ)|リョースケ(平良進)|ナビーの母親の昔の恋人フィリピナース(北村三郎)|サムライ姿の男(宮里栄弘)|助役(森田豊一)|アガダニースー(グレート宇野)|鍋修理屋(嘉手苅林昌 1920-1999)|歯医者(照屋林助 1929-2005)|村長(大宣味小太郎)|ほか

【 高嶺剛監督の映画 】
 これまでに記事にした作品から。
  (タイトルをクリックしてご覧ください)

 「ウンタマギルー」  
 出演:小林薫、戸川純  (1989年)


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映画 「舞妓はレディ」   監督:周防正行

上

 いい娯楽映画ですね。
 こういう明るく楽しい喜劇は好きです。気晴らししたい時にはぜひ観るといいでしょう。

1-0_20160923143730d0c.jpg 春子役の上白石萌音を、富司純子、田畑智子、岸部一徳ら大勢が支えています。
 この映画はミュージカル映画の部類でしょうが、ミュージカルに抵抗ある人も楽しめます。(私がそうです)
 ミュージカルとはいっても、歌や踊り(ダンス)以外のシーンが大部分ですし、思いのほか、歌も踊りも馴染みやすい。
 それは、音楽の周防義和、作詩の周防正行・種ともこ、そして振付のパパイヤ鈴木が、なかなかいい仕事をしているからです。
 ストーリーはすなおで、そんな脚本の上で、力ある俳優たちが楽しそうに演技するなか、上白石萌音が光ります。

 春子(上白石萌音)が「舞妓になりたい」と下八軒という花街を訪ねるところから始まる、この話は、(古い映画の話になりますが)溝口健二の「祇園囃子」の出だしを思い出します。当時20歳の若尾文子が、やはり舞妓になりたいと祇園を訪ねるのです。
 また、同じく若尾文子主演のミュージカル映画「初春狸御殿」の歌や踊りありの和製ミュージカルの華やかさも思い出します。
 そう考えると、「舞妓はレディ」はとても現代的な映画ですが、日本映画のこれまでの流れを脈々と受け継いでいるとも思えます。
 ちなみに下八軒とは上七軒のもじりです。

 (「祇園囃子」・「初春狸御殿」の記事は題名をクリックしてお読みください。)

 
監督・脚本:周防正行|2014年|135分|
撮影:寺田緑郎|音楽:周防義和|作詞 :周防正行、種ともこ|振付:パパイヤ鈴木|
出演:お茶屋「万寿楽」の人々(置屋兼業)・・・西郷春子(上白石萌音)|万寿楽の女将・小島千春(富司純子)|舞妓の百春(田畑智子)|芸妓の里春(草刈民代)|芸妓の豆春(渡辺えり)|男衆の青木富夫(竹中直人)|万寿楽に出入りする亰大学の言語学者・京野法嗣(長谷川博己)|
馴染みの旦那衆・・・北野織吉(岸部一徳)|高井良雄(髙嶋政宏)|市川勘八郎(小日向文世)|馴染の客(津川雅彦)|
その他の出演者・・・花街生まれの大学院生・西野秋平(濱田岳)|万寿楽の女将が舞妓の頃の好きな人で映画スター・赤木裕一郎(妻夫木聡)|鳴物の師匠(彦摩呂)|ほか

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映画 「泥の河」   監督:小栗康平

上
左がうどん屋の信雄、奥が宿舟の銀子、そして弟の喜一。(もやった宿舟の上で)
信雄と喜一は仲良し。

1‐0


 いい映画です。観たあと、じんわりします。
 暗い話だと言って切り捨てるには、あまりにもったいない。

 映画は、大阪の市中を流れる川の岸で、うどん屋を営む親子3人と、舟(宿舟)を住まいとして生きる母子3人との、あたたかい交流を描いています。
 うどん屋の店(兼住居)は、川の岸といっても、コンクリート階段を降りた堤防の内側にあって、また、舟を住まいとする一家は川伝いに転々としていて、ちまたでは廓舟と呼ばれているのです。そんな舟が、たまたまうどん屋の向こう岸に停泊したことから、話は始まります。

 どちらも川の家ですが、貧富の差があります。しかし、それぞれの家の子ども達は、毎日を一生懸命生きています。貧しい境遇の子たちの愛らしさを描きながらも、映画は話の底では、大人の哀愁を語っています。

 「もはや戦後ではない」という新聞の見出しが、映画に出てきます。
 この映画は昭和31年の話ですが、この年、時の政府は経済白書の結びで、そう言いました。一様に貧しかった終戦直後から10年が経って、人びとが幾ばくかの余裕を感じ始める頃でもあったのでしょう。しかしその一方で、相変わらず貧しく、世間から取り残されたようにして暮らす人々がいたことを、映画は語ります。

 戦場で、何度も死を覚悟する場面に出くわしながらも、生きて帰るんだと踏ん張って生き抜いた男たち。
 そんな男たちが、復員し、焼け野原のゼロベースから、なんとか生活の糧を得るようになったその矢先に、不幸にも呆気なく死んでいく。
 馬に荷車を引かせて、やっと貯まった金で、中古のトラックを買った男(うどん屋の客・芦屋雁之助)が不慮の事故で死んでしまう(映画冒頭で)。また、宿舟の亭主は、はしけの現場でいい仕事をしていたそうだが、妻子を残して事故死したという。
 こんな出来事を身近にして、戦場を生き抜いた、うどん屋のあるじ・晋平(田村高廣)は、そんな男達にやるせなさを抱きます。
 だから晋平は、息子の信雄と親しくなった宿舟の子・喜一とその姉の銀子に優しくします。また晋平と妻・(藤田弓子)の人柄は、うどん屋を、貧しいが懸命に働く男達の集う店にしています。
 
 晋平の息子・信雄は、ある日、ひょいと現れた宿舟の子・喜一とすぐに友達になりました。天神祭の時には、晋平から50円ずつ小遣いをもらってふたりは出かけます。喜一はお金を持って祭りに行くのは初めてや!と言います。
 喜一は学校に行っていません。信雄の友達が、喜一をあからさまに避ける様子を映画は映しています。他の場面では、宿舟を悪く言う客を晋平は店から追い出しました。

 喜一の母親(加賀まりこ)は、夜間、宿舟へ客を入れて収入を得ています。うどん屋の客の噂では、ほかの場所では喜一が客引きをしていると言っています。そんな姉弟ですが、ふたりは決してぐれたりはしていません。母親の言うことは聞き、喜一は近くの公園から水道水をバケツで運んだり、銀子は炊事洗濯をしています。信雄の母親が、銀子に洋服をあげようとするのですが、銀子はていねいに断ります。
 喜一の母親は、夫を亡くして以来、舟に閉じこもったままです。でも少しの間は働きに出たようですが、また舟に引きこもりました。たぶん、急に夫を亡くしたことから、精神的に快復できないでいるのでしょう。

 信雄は喜一とすぐ親しくなりましたが、しかし、ふいに現れた廓舟という存在は、まだ子供の信雄にとっても、やはり違和感は拭えなかったようです。それは売春に対する先入観ではなく、漠然と怖いという感情でした。喜一の母親と会った信雄は、その時そう感じたようです。
 ある夜、喜一に招かれて宿舟に入った信雄は、喜一から「秘密」を見せられます。灯火ランプ用のアルコールを浴びた川蟹に火をつけるのです。火をつけられた蟹は闇夜の舟べりを這いまわり、やがて動かなくなる。
 不思議だが何か嫌なものを見たという、いささかねっとりした感触を信雄は感じます。親しい喜一との距離が開く瞬間でした。
 
 その日、何の前触れもなく、宿舟はもやい綱を解き、曳き船に曳かれて静かに去って行きます。
 驚いた信雄は川岸を走って舟を追いかけます。舟上には誰の姿も見えません。舟はどんどんと、どこかへ行ってしまいます。(映画はここでエンドを迎えます。) 


2-0_201609221442388ea.jpg ちなみに、信雄はもうひとつ、不思議なものを見ています。
 幻想的なシーンです。まだ薄暗い早朝、家の窓からぼんやり川面を見ていると、釣り餌のゴカイ採りのじいさんが小舟の中にいるのですが、次の瞬間、じいさんは川に落ちて、川面に浮かんでいるのが遠目に黒い影になって見え、そして音も無く漂っている。しかし、そのうち姿は消えてしまいます。

 父親に付き添われて信雄は、近所の交番に出向きますが、要領の得ない証言を繰り返すばかり。結局、死体は発見できません。うどん屋の客が言うに、川の底は泥が2メートルは積もっているだろうと。
 この川には、さまざまな人びとの、さまざまな思いも沈んでいるのしょう。


監督:小栗康平|1981年|105分|
原作:宮本輝(1977年『文芸展望』18号初出)|脚本:重森孝子|撮影:安藤庄平|
出演:板倉晋平(田村高廣)|その妻・貞子(藤田弓子)|その息子・信雄(朝原靖貴)|宿舟の女・松本笙子(加賀まりこ)|その長女・銀子(柴田真生子)|その長男で信雄の友・喜一(桜井稔)|タバコ屋(初音礼子)|倉庫番(西山嘉孝)|釣り餌のゴカイ採りのじいさんが川に落ちたのを信雄が目撃して警察に尋問をうける、その巡査(蟹江敬三)|橋の上にいる信雄にスイカをあげるため橋下を通過する舟からスイカを放り上げた・屋形舟の男(殿山泰司)|佐々木房子(八木昌子)|中古トラックを買ったんだと言いながら信雄の店でかき氷を食い、そのあと対向車に馬が驚きそのはずみで荷車の下敷きになって死んだ・荷車の男(芦屋雁之助)|



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<か行> の邦画  これまでに記事にした邦画から。 2016.9.12現在

 これまでに記事にした邦画から、<か行> の映画を並べてみました。

 下の画像をクリックして、その映画記事をご覧ください。
 五十音順に並べています。
 
 <か行>以外の映画は、こちらからどうぞ。 (邦画の五十音一覧リストです)

1怪異談 生きてゐる小平次 2怪談海女幽霊 3海炭市叙景 5顔 6顔役 7牡蠣工場 8駆込み女と駆出し男 9カケラ 10風切羽 (かざきりば) 10貸間あり 11ガス人間第一号 12風と樹と空と 13風の歌を聴け 14風の子 風の又三郎 15かぞくのくに 16神様のカルテ 10亀は意外と速く泳ぐ 17亀虫 18ガラスの中の少女 19川下さんは何度もやってくる 20河内カルメン 21川の底からこんにちは 22雁の寺 23祇園の姉妹 24祇園囃子 27喜劇 駅前温泉 25喜劇 駅前団地 28喜劇 女は度胸 29 喜劇 にっぽんのお婆あちゃん 26喜劇 夫婦善哉 30キッドナップ・ブルース 31狐と狸 32揮発性の女 33きみにしか聞こえない 34きみはいい子 35凶気の桜 36教祖誕生 37きょうのできごと 38魚影の群れ 39霧の旗 40空気の無くなる日 41草を刈る娘 (思春の泉) 42クズとブスとゲス 43くちづけ 44グッド・ストライプス 45雲の上 46狂った一頁 47狂った野獣 48クレージーの大爆発 49クワイエットルームにようこそ 50競輪上人行状記 51月光仮面 魔人の爪 52けものがれ、俺らの猿と 53喧嘩犬 54原子力戦争 Lost Love 55現代インチキ物語 騙し屋 (だましや) 56ゲンと不動明王 57恋の花咲く 伊豆の踊子 58恋や恋なすな恋 59荒野のダッチワイフ 60ゴーヤーちゃんぷるー 61極道ペテン師 62ココニイルコト 63ゴジラ 64午前中の時間割り 66古都 67孤独なツバメたち  デカセギの子どもに生まれて 68小早川家の秋 69こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 70ゴムテッポウ 71米 72今宵ひと夜を 4 - 帰って来た若旦那 65こだまは呼んでいる



映画 「イン・ザ・プール」  出演:オダギリジョー、松尾スズキ、田辺誠一、市川実和子   監督:三木聡

上
プールに侵入した大森は、泳げるうれしさのあまり、スーツ姿のままで飛び込んだ!


1‐0 この馬鹿馬鹿しいコメディに、ついて行けるかどうかが、いい映画と感じるか、つまらんアホくさと感じるかの分水嶺。
 あるいは、オダギリジョーに、あんな役?あんなことさせるの! が分水嶺かも。
 あるいは、原作は原作、映画は映画として、別なものとして切り分けて楽しめるかどうかが、分水嶺。そんな映画です。

 メンタルヘルスケアが必要な人が増えてますってな話です。
 登場人物は、サラリーマンの男2人に、フリーライターの女、そして神経科の医師。

 中間管理職の大森(田辺誠一)は、何かと神経使う毎日。ふとしたことで始めた趣味のスイミングにハマる。泳いでいるとまるで羊水の中にいるようで、日頃のプレッシャーに弱った心がプールでゆっくりと解き放たれる。2時間泳ぐと気分スッキリ。だが、徐々にスイミングに取り憑かれていく。

 田口(オダギリジョー)は、優しい人だが、決断が鈍く優柔不断、言い返せない男。 
 妻にいい様にされ見切りをつけられ、職場の同僚や上司からも面倒な仕事を押し付けられる。
 この田口、最近、勃起が続く。これは都合悪い。通勤途中も職場でも帰宅しても勃起しっぱなし。誰が見ても、ズボンのその部分が膨らんでいて、外から丸分かり。
3‐0 で、泌尿器科へ行くが、これは神経科だろうと言われ、精神科医・伊良部(松尾スズキ)と出会う。

 ライターの岩村(市川実和子)は、フトある事が気になりだしたら、「いてもたっても」の女。
 ガスコンロ消したっけ、から始まる不安の増大。アイロンのコンセント抜いたっけ、エアコン消したっけ、玄関ドア施錠したっけ、不安の種が次々。
 翌日からは「ヨシッ」の指さし確認でスッキリし、だがそれでもダメで、ビデオカメラ片手に消す抜く施錠の様子を自撮りして、出かけてから不安になったら自撮りを再生して安心している。
 それでもダメで、自分は強迫神経症ではないかと気になりだし、図書館で徹底的に調べるが、ついに、やはり精神科医・伊良部の診察を受けることにした。


 伊良部の患者となった田口と岩村を、伊良部はうれしそうに弄ぶ。ふたりは暇な医師のオモチャとなった。

 田口は、病院でも伊良部医師にいいようにされる。ついには、医学研究の珍しい対象にされ、さすがにここで田口、爆発! そしてスッキリ、勃起が治った。

 岩村は、幼い頃を思い出す。廃棄された冷蔵庫の中に入った友達が、「また開けてね」と言われて閉めた、あのドア、開けたっけ?
 彼女は伊良部医師に付き添われ、20年も経った現場へと向かうのであった。

 中間管理職の大森は、その後いろいろあって、泳げていない。
 「泳ぎたい!泳いで正常に戻さなくては!」 その一心で深夜、大森は大型ハンマーを振り上げながら、プール施設の玄関へと走る。そして、ドアのガラスをたたき割るのであった。

 伊良部医師はと言うと、2人の患者が去ってしまい、憂いの時がまた始まっていた。


 こういうムチャクチャな話、好きです。
 3つの短編小説(原作)を、ひとつにまとめ上げたので、まとまりは無い。無いが、ムチャクチャ話なので良しとする。
 ちなみに、原作小説3作を、うまくひとつに仕立てた映画 「きみはいい子」 (監督:呉美保)は、巧い、いい出来。
 (「きみはいい子」は題名クリックしてお読みください。下記も題名をクリック。)
 付け加えて、台湾映画で3つの話をまとめた「台湾の暇人」がハチャメチャな映画だった。



44_2016090615160397c.jpg監督:三木聡|2005年|101分|
原作:奥田英朗(「イン・ザ・プール」「勃ちっ放し」「いてもたっても」の3編の短編小説)|脚本:三木聡|撮影:小林元|
出演:精神科医・伊良部一郎(松尾スズキ)|水泳依存症の大森和雄(田辺誠一)|勃起の田口哲也(オダギリジョー)|ライターの岩村涼美(市川実和子)|看護師マユミちゃん(MAIKO)|映画冒頭の佐俣教授(森本レオ)|前西室長(岩松了)|編集長(ふせえり)|吉沢部長(きたろう)|大森が性病で通う姫乃木医師(三谷昇)|大森の不倫相手のOL(真木よう子)|刑事(嶋田久作)|ほか

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映画 「風の又三郎」   映画音楽に魅せられて  監督:島耕二

上


 宮沢賢治の「風の又三郎」を初めて映画化した、1940年の作品。

1-0_201608311247275fa.png 夏休みが終わって9月1日の朝一番、山の学校に生徒が登校して来ます。
 転げるように駆けて来た子たちは、がらんとした教室に見慣れぬ男の子を発見します。

 (原作「風の又三郎」の冒頭から) 

 どっどど どどうど どどうど どどう
 青いくるみも吹きとばせ
 すっぱいかりんも吹きとばせ
 どっどど どどうど どどうど どどう

 谷川の岸に小さな学校がありました。
 教室はたった一つでしたが生徒は三年生(映画では五年生)がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。
 運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗の木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴く岩穴もあったのです。
 さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。(原作冒頭より)
 
 さて、その「どっどど どどうど」の歌です。
 時々、ふと、思い出します。
 一度聞くと、耳に残る旋律。そして、やはり、二百十日の風音を表わす擬音がとても印象的ですね。





監督:島耕二|1940年|98分|
原作:宮沢賢治|脚本:永見隆二、小池慎太郎|撮影:相坂操一|作曲:杉原泰蔵|
出演:三郎=片山明彦|先生=中田弘二|三郎の父=北龍二|嘉助の姉=風見章子|一郎の祖父=林寛|洋服の男=見明凡太郎|一郎=大泉滉|嘉助=星野和正|佐太郎=中島利夫|耕助=小泉忠|悦治=杉利成|承吉=南沢昌平|小助=河合英一|佐太郎の妹かよ=久見京子|一郎の兄=西島悌四郎|







 上記の、原作の冒頭、その先も思い出したいなら、ぜひ、青空文庫をお読みください。(下記URLをクリック)
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/462_15405.html

青空文庫は、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、図書館のようにインターネット上に集めようとする活動です。
 著作権の消滅した作品と、「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを、電子化した上で揃えています。詳しくはこちらからどうぞ。(外部リンクです) 

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映画 「トワイライト ささらさや」   主演:新垣結衣、大泉洋  監督:深川栄洋  

上
サヤとユウタロウの子、ユウスケ。
実は、このユウスケが主人公かも知れない。



 新垣結衣、大泉洋主演のビターな喜劇映画で、いいところもあるんですがね・・・、でも、あきまへん。

1‐0 下手くそな落語家・ユウタロウ(大泉洋)とサヤ(新垣結衣)は寄席で出会い、結婚。子供も出来て、これからという時にユウタロウは交通事故で他界。映画はここから始まる。

 ユウタロウの葬儀のさなかに突然、見知らぬ年配の男が現れ、サヤに詰め寄ってユウタロウの父だと名乗り、孫のユウスケを渡してほしいと迫った。
 一方、ユウタロウ、実は、サヤとユウスケが心配で成仏できないでいて、さっきから式場内の参列者の間をウロウロしていた。(もちろん誰にも見えない) さらに今、父親がサヤから、息子ユウスケを取りあげようとしている!

 この危機に直面し、ユウタロウの霊は、自分の師匠(小松政夫)の身体に乗り移り、師匠の声を借りてサヤに言う。「逃げろ!どこか遠くへ早く」 
 はじめ、何が起こったのか理解できないサヤは戸惑い、同時に父親の存在を隠していたユウタロウに怒りをぶつけ、しかしともあれ、迫る父親からサヤは子供を抱いて逃げた。

 サヤは不幸な女であった。両親を早くに亡くし親を知らない。祖母に育てられたが既に他界し、唯一の肉親、叔母も最近亡くなった。だが、ユウタロウに出会えて幸せになった。そしてその矢先の不幸であった。

 サヤは今、その叔母の家へと向かっている。「ささら」という小さな田舎町にある。
 突然のよそ者に、「ささら」の町は好奇心をそそられ、同時にユウスケの愛らしさに誘われて、近所のおばあちゃん達がサヤのもとに寄って来て、何かと面倒をみてくれる。お夏(富司純子)、久代(波乃久里子)、珠子(藤田弓子)の3人だ。
 さらには、サヤはエリカ(福島リラ)と知り合いになり、また駅員の佐野(中村蒼)はサヤに一目惚れ。そして、ユウタロウの霊も彼らに加わる。
 
 つまりユウタロウの霊は、この町で最初にお夏(富司純子)に乗り移り、次にエリカの一人息子4歳位のダイヤに、そして駅員の佐野に乗り移り、サヤに対面する。(これらの乗り移ってのシーンは、なかなかの出来です。特に富司純子とダイヤ役の子役。)
 そして対面できたサヤとユウタロウのふたりは、互いに心を打ち明け、喜び怒り懐かしみ悲しむのであった。
  
 さてついに、おばあちゃん達3人とエリカらが、サヤを見守る中、ユウタロウの父親が「ささら」の町に現れ、サヤの家に来た。
 ここから先は、(少しだけ言うと、ユウタロウは、なんと、ユウスケに乗り移ったのであったが・・・・) 観てのお楽しみと言いたいところだが、残念。

 総じて、ビターな喜劇映画でいいんですが、イマイチの出来です。赤ん坊のユウスケの可愛さに助けられた映画です。
 最悪なのは、映画のラストに付け加えた、あの長ったらしい劇場での(説明)シーンは、まったくもって興ざめで頂けない。このシーンは監督自身の作風じゃない。他からの意図なのだろう。「神様のカルテ 2」もこうだった。こういうことは、「映画」をダメにしますよ。

 結婚し子供ができたが夫婦の片方が他界し霊となる、こういうあらすじでは、何と言っても、永作博美、佐々木蔵之介主演の 「夫婦フーフー日記」 が格段に良い。(お薦め)
 また、妻が他界し再婚するが先妻が霊となる、こういうあらすじでは、萩原健一、室井滋、山口智子主演の 「居酒屋ゆうれい」 が可笑しい。(それぞれの映画の記事は、題名をクリックしてお読みください。)


中監督:深川栄洋|2014年|114分|
原作:加納朋子|脚本:山室有紀子、深川栄洋|撮影:安田光|
出演:新垣結衣(サヤ)|大泉洋(ユウタロウ)|中村蒼(駅員の佐野)|福島リラ(スナックの女・エリカ)|富司純子(お夏)|波乃久里子(サヤの叔母の家に住んでいた久代)|藤田弓子(サヤの叔母の家の向かいに住む珠子)|小松政夫(師匠)|石橋凌(ユウタロウの父)|寺田心(エリカの一人息子・ダイヤ)|つるの剛士(久代の息子・義男)|ほか

【 深川栄洋監督の映画 】  ~ これまでに記事にした作品です。題名をクリックしてお読みください。

 半分の月がのぼる空」  主演:忽那汐里、池松壮亮
 神様のカルテ」       主演:櫻井翔、宮崎あおい  これはいい映画です!
 神様のカルテ 2」      お薦めしません。

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映画 「浅草四人姉妹」   監督:佐伯清

上
左から四女・恵美子、長女・美佐子、父、三女・千枝子、次女・幸子、手前は母


 浅草の街に住む 仲のいい四人姉妹を、さらりとスケッチする大人の喜劇。
 そして、登場人物の心情を細やかに描く、無理のない、いい脚本。
 ストーリーは、はじめは明るく軽快で、途中、相次ぎ事がこんがらがって、幸せそうで可哀想で、ラストは一抹の寂しさを残して終わります。
 姉妹の両親は、浅草の飲食店街で小さな呑み屋をやっていて、店の奥が居間、2階は川の字で寝る姉妹の部屋になっている。

 時は昭和27年、7月。浅草は夏を迎えようしている。
 大柄でさっそうと歩く、四人姉妹の長女・美佐子は、家族や近所の人から「姉ちゃん先生」と呼ばれ一目置かれている。
1‐0 美佐子は小さな病院の勤務医(内科医)で、27歳くらい、独身。毎日、都電に乗って通勤している。この先まだまだ、医学の勉強をするつもり。幼い頃から美佐子は男勝りの女の子であった。
 家族で唯一の男性、父親の藤吉(三島雅夫)は、お人好しで、「我が家は女護ヶ島(にょごがしま)だ」といって家族女性群に頭が上がらない。よって美佐子が一家の柱となっている。

 次女の幸子は、最近芸妓の道を選んだ。舞踊を極めたい。日頃は住込みで置屋にいるようだ。母親・梅子(沢村貞子)は、若い頃、浅草で名の通った芸妓だったので、幸子を応援している。
 三女の千枝子(杉葉子)は、洋裁店に勤めていて洋裁が好き。ファッションに敏感なオシャレな娘。長女・美佐子に似て行動的。
 四女の恵美子は、高校生でまだ子供っぽいが、将来、国会議員になって女性の地位向上に貢献したいという志。幼なじみの三平とは、いい仲。

 さて、そんな一家だが、話は相次いで、こんがらがってくる。
 まずは、次女の幸子。初めての客・村川に一目ぼれしてしまうが、村川に妻子あり。片思いの重症で寝込んでしまう。
 次は美佐子の話。勤務先の病院に外科医の田中という男がいて、彼は前々から美佐子に気があるが、美佐子はまったくもって気にも留めていない。
 ある日の、病院屋上で催された院内ビヤーガーデン・パーティ。飲める美佐子は大いに飲み、はずみで田中医師とダンスする。酔った美佐子の心は、なぜか田中医師の胸の中で解放され、気持ち良かった(のだろう)、その時、思わず漏らした一言、「これは、どういう気持ちなのかしら?」。
 田中はその一言を聞いて、美佐子が恋に目覚めたと思い、一方、これまで色恋に縁のなかった美佐子は、あとになっておっとりと、この気持ちは恋、と分かる。
 そんな折、三女の千枝子が急に腹痛を訴え美佐子の病院に入院。盲腸だった。これがなんと、田中医師との出会いであった。
 この時、四人姉妹の3人が恋に落ち、うち2人は恋敵のてんやわんや。

 結局、千枝子は田中医師とめでたく結婚。美佐子は、誰にも言えぬ辛い日々を過ごしながらも、明日への一歩を踏み出し始める。次女の幸子は、片思いの重症でずっと寝込んでいたが、ある日、地震でびっくり飛び起きた拍子に、病魔退散。四女の恵美子は、三平と並んで店の手伝いをしている。


さっそうと通勤する美佐子
下2 この話の背景には、兵士の戦死の影響で、男性の人口が女性に比べて大変少ない結婚難の時代だったことがあげられる。
 だが映画冒頭で、夕食時に母親が、慶応卒のお見合い写真を四人姉妹に見せるが、またぁ!と言って、誰も見ようとしない。女性もキャリア形成の時代だと映画は言っている。
 美佐子は近隣からも「姉ちゃん先生」と呼ばれているのは、家の近所の病人を嫌がらずに診察するからだ。家に往診用のカバンをいつも用意している。医院がまだ少なかった時代なのだろう。
 ちなみに、映画製作の1952年(昭和27年)は、連合国軍による日本占領が終わり日本に主権が回復した年。戦争終結、GHQ廃止。日本とアメリカ合衆国との安全保障条約発効。これより、日本は明日に向かって発展を目指すことになる。


監督:佐伯清|1952年|84分|
脚本:井手俊郎 、 橋村美保|撮影:横山実|
出演:長女・美佐子(相馬千恵子)|次女・幸子(関千恵子)|三女・千枝子(杉葉子)|四女・恵美子(岩崎加根子)|父・藤吉(三島雅夫)|母・梅子(沢村貞子)|四女・恵美子の彼氏・三平(高島忠夫)|五郎(井上大助)|加代(飯田蝶子)|姉ちゃん先生の同僚で外科医・田中(山内明)|次女の幸子の客・村川 (二本柳寛)|四人姉妹のお見合いをすすめられた慶応大卒の春山(田中春夫)|その父(小堀誠)|ほか

四女・恵美子と同級生たち。浅草六区の興行街。
下3 映画は終戦からまだ7年しか経っていない頃の話です。
 本作に地震にあうシーンがあるが、「地震、雷、空襲、親父」というセリフが出てくる。空襲がまだ生々しい頃だった。
 浅草寺の本堂も空襲で焼失、だから映画ではその姿はない。映画公開(1952年(昭和27年)8月7日)の、その前年に本堂再建工事が始まっている。そんな様子が遠景で映画に映っている。
 飲酒のシーンの大方が、美味しそうにビールを飲むシーン。映画公開が夏であったからだろうが、ビール原料になる大麦などの戦時下統制が解除になって、生産が大いに進んだ年だったらしい。
 院内で美佐子と田中医師が、消毒用の純正アルコールを水で割って飲むシーンがある。一杯飲む度に都度、名のあるウィスキーの銘柄を言いながらグイッと、そしてまたグイッと。これで美佐子は酔っぱらい、田中医師との恋を知る。ウィスキーは高価だったようだ。

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映画 「皆月」 (みなづき)  出演:奥田瑛二、吉本多香美、北村一輝   監督:望月六郎

上風俗嬢の由美



1-new.png









 男と女と男の話。

 諏訪という中年サラリーマンで、うだつ上がらぬ どん臭い男が、ある日突然、妻に逃げられ狼狽える。
 おまけに、苦労して貯めた住宅資金2000万円の貯金通帳も妻と共に消えていた。40過ぎて諏訪は結婚し、ふたりの生活は6年で終わった。
 しかし今、暗い部屋にポツンといる諏訪の頭によぎる情景は、いい女だった妻とのセックスであった。
 意気消沈しきった独り身の諏訪は、働く意欲も萎え、勤務先の大手ゼネコンに未練無く、退職金もらって早々に辞めるつもり。
 
 逃げた妻の弟はアキラといい、新宿にある小さな組の下っ端で、乱暴なヤクザ。
 アキラは、どん臭い諏訪を、これまでも一応「兄貴」と呼び、それなりに慕ってきた、案外、義理堅い男。
 姉の失踪を諏訪から聞いたアキラは、諏訪をなだめようと、新宿に呼び出して一緒に飲んだ。組長に頼み込んで、諏訪に組のパソコン仕事を世話しようとも言う。

 飲んだ後、アキラに連れられて言われるままに入った新宿の風俗店で、諏訪は由美という女に出会う。
 (アキラは由美を知っていて、諏訪のために、店の女の中から由美を指名したのだろう。)
 風俗初体験の、風采の上がらない、その上、嫁に逃げられたと言う、このさえない客から、近く 「退職金が入る」 と聞かされた、その一言が、借金に追われる由美の気を引いた。そして、由美には諏訪とのセックスが良かった。

 その後、日は過ぎて、諏訪はあらためてひとりでこの店に来店し、由美を指名した。「何もしなくていい」という諏訪は、由実といると何か気持ちが落ち着くようだ。由美も諏訪を見て何か変わったとみたが、逃げた女房をまだ思う女々しいオッサンだとも思った。
 こうして、由美のあとをよろよろした足取りで付いて来る様子のオッサンに、由美はまるでペットに向けてのような、いとおしさを感じはじめていた。(これはのちに由美がアキラに述懐している) そうしてなんだかんだあって、由美は自分のマンションに諏訪を引き入れる。
 しかしこの時アキラは、諏訪が由美と同居することを良く思っていない。由美の狙いは、兄貴の退職金目当てだと。だから、アキラは由美のマンションで諏訪の眼前で、由美に万札を投げつけ、風俗嬢は所詮こんなもんだと言って、由美をレイプした。

 アキラが出て行ったあと、アキラには想定外であったが、諏訪はマンションに留まり、泣き崩れる由美を慰める。
 このことは、由美にとっても意外であった。諏訪も出て行くと思った。でも、今ここにいてくれる。それが、うれしかった。由美は諏訪に心の内を吐きだした。これが、諏訪への気持ちが愛に変わるきっかけとなった。

 そして、その後、3つのことが発覚する。
 1つは、諏訪の勤務先が破たんし、諏訪は退職金がもらえなくなったこと。
 2つ目は、アキラからの情報で、ある男の居場所が分かったこと。かつて、由美はこの男に金を騙し取られて、借金するはめになったのだ。 
 アキラは由美を連れ、それに諏訪もくっ付いて3人は、その男の養鶏場を訪ね、男に取られた金の一部を回収できた。その際、アキラは男を必要以上にたたきのめしたため、男は死亡する。
 3つ目に分かったことは、諏訪の妻の失踪について。失踪は実は駆け落ちで、その相手はアキラの組の組員・高岡だった。
 アキラはこのことに薄々気づいていたが、これまで諏訪に言わないでいた。しかし、高岡の実家が石川県皆月であることが分かり、駆け落ちの2人はきっと皆月へ行くだろう。そういう事がアキラの耳に入ったのだ。
 そんなことで、アキラと諏訪は、そして、旅の準備をした由美を見てアキラが言う「お前も行くのか」と、またもや3人は車に乗り、石川県へ向かった。

 このあとは、映画をご覧くださいってところだが、アキラと諏訪と由美の人生は、新たな展開を迎えます。
 ラストはちょっと綺麗にまとめ過ぎたな。観客サービスだが、ま、これもよしか。
 言葉少なに語る、アキラと諏訪と由美3人の心情を、丹念に読み取りながら観ることが、この作品をいいものにします。
 ちなみに、実はこの映画の主役はアキラかもしれません。アキラを演ずる北村一輝がいい味出してます。
 
下

監督:望月六郎|1999年|日活|114分|
原作:花村萬月|脚色:荒井晴彦|撮影:石井浩一|
出演:諏訪憲雄(奥田瑛二)|アキラ(北村一輝)|由美(吉本多香美)|諏訪の妻・沙夜子(荻野目慶子)|高岡(篠原さとし)|由美の金を騙し取った男・養鶏業の荻原(斉藤暁)|新宿公衆便所の男(西沢仁)|ほか 



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映画 「雷魚」 (黒い下着の女 雷魚)    監督:瀬々敬久

上

1-0_20160808170350b71.png 映画の舞台は、利根川沿いにJR成田線が走る、千葉県香取市小見川あたり。
 細い運河があちこちに流れ、埋め立て地には大きな敷地のプラント工場ある。どこも、人けのない荒んだ風が吹く風景。

 紀子は孤独な女であった。
 そして、この女は慢性膵臓炎と、その上、椎間板ヘルニア、ふたつの持病を抱え、これまで幾度も入退院を繰り返してきた。 
 現在もまた入院中だが、夫さえ見舞いに来ない。
 紀子は不倫相手の男に電話したが、その男も冷たかった。今や不倫の関係も途絶えてしまったようだ。女は病床でひとり沈んでいる。

 駅前の、その電話ボックスにテレクラの広告があった。それを見て、紀子は電話した。
 その少し前、勤め先へ欠勤の電話をする柳井という男がいた。
 休みをとった柳井は、テレクラで会った女の電話番号を書き連ねた手帳片手に、あちこちに電話をかけたが今日の相手が見つからない。その後いつものテレクラに行き、誰かからの電話を待っていた。そこへ紀子からの電話がかかって来た。柳井の車に乗った紀子はラブホへ向かった。

紀子はホテルを出て、柳井の車でここまで来た。
2-0_20160808170635584.png そして、ことが終わったあと、紀子はシャワーを浴びていた。そこへ柳井が入って来た。彼女は隠し持っていたナイフで、いきなり男をめった刺しにした。バスルームの床は多量の血でヌルヌルになった。そして、女はシャワーホースで、弱った柳井の首を絞めた。

  紀子はホテルを出て荒地に着いた。そこで柳井の車を捨て、車内に付いた指紋を拭きとった。その様子は落着き手慣れている。実は殺しは二回目であった。前回も偶然に出会った男だったらしい。

 紀子は容疑者として警察に連行され事情聴取を受けたが、とりあえず帰される。
 なぜなら、男女ふたりの目撃者が別室から紀子を見て面通しをしたが、それぞれが目撃した女は彼女ではない、ということになったからであった。

 署から出て来た紀子は、竹原という男に声をかけられた。目撃者として署に呼ばれた二人のうちのひとりだ。
 「人を殺すってどんな感じですか?」 竹原はガソリンスタンドで働いている。紀子が乗った車がラブホに向かう途中、そのスタンドで給油していた。その時、竹原は紀子を間近で目撃したが、署でそれを否定した。

 紀子は竹原をラブホに誘い出した。竹原は言った。「俺を殺したいんだろ?」 その時一瞬、紀子の目は大きく見開いた。
 彼女がシャワーを浴びに行ってから時間が経つのが気になって、竹原がバスルームを覗くと、紀子はシャワーフックにかけた紐で首を吊っていた。竹原が慌てて首の紐をはずすと、女の息はまだあった。
 紀子は焦点が合わぬ目で、ぼんやり竹原を見た。竹原は「それ」を理解して、次の瞬間、紀子の首を紐で締め上げた。
 竹原は紀子の死体を車で運び、運河に浮かぶ小舟に乗せ、ガソリンをかけ、火を放った。


3-1監督:瀬々敬久|1997年|国映=新東宝|75分|
原案 瀬々敬久|脚本 井土紀州 、 瀬々敬久|
撮影 斉藤幸一|スチール 佐藤初太郎 、 本田あきら|
出演:高原紀子(佐倉萌)|ガソリンスタンドの店員・竹原和昭(伊藤猛)|テレクラで出会った男・柳井裕幸(鈴木卓爾)|美智子(穂村柳明)|目撃者のひとり、知的障害のある女・節子(のぎすみこ)|田中(外波山文明)|安藤刑事(佐野和宏)|坂田刑事(岡田智弘)|洋子(河名麻衣)|パジャマの男(佐々木和也)|看護婦(吉行由実)|子供服の店員(泉由紀子)|

【 瀬々敬久監督の映画 】
 これまでに記事にした作品です。クリックしてご覧ください。

 アナーキー・インじゃぱんすけ 見られてイク女」 (1999年)
 HYSTERIC (ヒステリック)」 (2000年)  ヘヴンズ ストーリー」 (2010年)


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映画 「ロマンス・ロード」  監督:むらまつしんご

上

 ひとりの男を同時に愛してしまった、ごく普通の女の子二人のその後を、コメディタッチで描く物語。 見慣れぬタイトルなのでレンタルしたが、残念な映画でした。

 ふたりはともに彼に見切りをつけ、やがて友人となる。
 失意のふたりは旅先で、新作を書けずに悩んでいる(人気の)恋愛小説家と出会い親しくなった。その小説家から「実は自分の恋愛経験は乏しいのです」と聞いたふたりは、彼と一対一で模擬デートを繰り返して恋愛指南をし執筆協力をする。これを元に小説家は、このふたりと自分自身を新作の登場人物として小説に仕上げようとする。そのうち、三人に恋愛感情が・・・。それも小説に織り込んで行く小説家。そして、ラストは意外な展開。またもや、同時に失恋するふたり。

 話のアイデアは、可笑しくて面白い。そして脚本も、まあいいとするなら、その先がいけない。 脚本はあくまで紙の上の世界、その先は俳優の仕事であり、同時に映画監督の仕事なのだが・・・。
 男とのめぐりあわせが良くない二人が、恋敵の関係から友人関係に変化し、著名小説家に恋愛指南を施し、その過程で三角関係が生まれ、結果、ふたり共また失恋するという、奇妙で微妙ないきさつを巧みに表現するには、俳優と監督にそれ相応の技量が要求される。

 さらにこの映画では、俳優が演ずる役に、観客が自分自身か、あるいは身の回りにいる人を重ね合わせて、そうかも、そうよね、と感じさせようとしている。舞台の上にいる人、美男美女のスターが演じるのではなく、観客の普通の日常感覚を、観客と同じ目線で語る身近な映画にしようとしている。
 観客が身近に感じられる人物を作るには、どこにもいるような人物を作ることになる。見た目も特別じゃなく、台詞が日常の自然なさまになる俳優。だからといって、普通を求めて普通っぽい俳優を起用すれば、普通の人を描けるというものでもない。自然体のさまが欲しくて、ど素人を主役に起用する方法もあるが、これはそれなりの工夫が必要だ。

 「普通」を映画にするのは、思いのほか、難しい。
 優れた俳優は、例えスターであっても、普通の人の日常感覚を体現できるものだ。ただし、予算があればの話。
 映画を作るのは難しい。


 監督・脚本:むらまつしんご|2012年|115分|
 出演:中村 はるな、太田 順子、土屋 裕樹ほか

 例えば、川で取った魚は水槽の中じゃ冴えない、水槽は魚にとって普通じゃないからだ。いきいきした魚を撮るには、カメラが川 (セットじゃなくロケ地) に入って行かねばならない。
 例えば、不幸な主人公の「普通」さを求めた、大島渚の「少年」、羽仁進の「不良少年」、先日記事にした洋画 「自由はパラダイス」などは、みな俳優志望でもない素人を主役に据えているが、それぞれ念入りに工夫している。

下【 一夜一話の 歩き方 】

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映画 「特急にっぽん」  フランキー堺、団令子、白川由美  監督:川島雄三

上

宣伝のための撮影写真            
1-0_2016072112085900b.png




















 忙しくてゆっくり休む間もない、スピード優先のせわしない時代になりました、と言いたい昭和36年の喜劇映画。

 話は終始、東海道本線を走る列車の中の出来事を追う、群像劇。
 特急「こだま」の、東京-大阪間の所要時間は6時間30分、最高速度は120 km/h。このスピード感がすばらしく最先端に思える時代でした。(新幹線開通以前の時代)

 喜一(フランキー堺)は、「こだま」の食堂車に乗り込む日本食堂(株)のコック助手。コック長に言わせると筋がいいらしい。喜一の夢は、一流ホテルのコックになりたい。
 サヨ子(団令子)は、同じく日本食堂に勤務し、「こだま」の食堂車のウェイトレス達や車内販売(ワゴンサービス)する女子乗務員のリーダー役。喜一と結婚の約束をしている。サヨ子の夢は喜一と結婚して小さな食堂を開店したい、そう彼に言い続けている。しかし、喜一は喜一で男のロマンがある。だから、喜一は彼女は好きだが、結婚と職場をセットにされると、どうしても煮え切らない態度になる。

2-0_20160721122637b4a.jpg 「こだま」に乗務する彼らは関西人で、日々、大阪東京をせわしなく行き来し、東京では車両基地近くの、会社の営業所兼宿泊所で一泊している。
 東京で「こだま」に乗務するその朝、いつまでも煮え切らぬ喜一に対し、業を煮やしたサヨ子はとうとう喜一に言った。「今日、列車が大阪に到着(6時間半後)するまでに態度をはっきりさせて」と迫る。
 一方、国鉄の客室乗務員の今出川(白川由美)が列車内で喜一に、笑顔でささやきかけているのを、サヨ子はじめ日本食堂の連中が何度か目撃している。これに嫉妬し、結婚につて悩み出すサヨ子、まんざらでもない喜一。

 美人の今出川から、「ちょっとお話したいことがあるの」と言われ、最近いい気分になっていた喜一だが、今日二人だけになった場で聞いた「ちょっとお話したい」の話の中味は、今出川が東京で開業する予定のレストランに「コックとして来ていただけないかしら?」というリクルート話。これを聞いた喜一は喜んだが、サヨ子のことを思うと苦しい。彼は乗務員室にひとり閉じこもり悩む。下り特急「こだま」は、いま静岡あたりを走っている。

 さあ、さらにいろんな話が絡んで来る。
 チューインガム製造会社の社長・岸和田は、「こだま」の常連客で、ジェット機の美人スチュワーデスよろしく、以前から今出川に惚れている。それで、彼女にレストランの開業資金を出そうとしている。
 もうひとり、常連客が乗車している。甲賀げん(沢村貞子)という裕福そうなおばさん。甲斐甲斐しく、てきぱき立ち働くサヨ子を、前々から気に入っていて、是非、息子の嫁にしたい。今日は、嫌がる息子も連れて来た。

 さて、熱海から乗って来たチャイナドレスの色っぽい女が、岸和田社長の隣りに座った。これが色仕掛けで社長にちょっかいをかけている。この女、熱海や京都で店を持っているらしい。社長は、今出川からチャイナドレスへ乗り換えようとし始めた。
 そのころ、京都から今出川宛に、走る「こだま」に電話が入る。今出川の彼氏からだ。彼は寺の息子らしい。今出川は彼を愛しているが、寺の嫁にはなりたくない。東京でレストランを始めたい今出川に彼は、「寺を継がなくてもよくなったから、もう大丈夫、東京へ行ける」 そんな知らせの電話だった。
 さらには、鉄道公安職官(今の鉄道警察隊)が三人、東京から密かに乗車している。人相の悪いふたりの男の行動に目を光らせている。あとで分かるが、そのボスは・・・・だった。さてさて、喜一、サヨ子、今出川はこのあと、いかがなことに相成りますやら・・・。
 加えて映画は、乗客達の可笑しな様子と一緒に、爆弾持ち込みの噂が車内に流れたり、踏切内で立ち往生するトラックを発見し急停車したりのドッキリを、楽しく描いて行きます。

朝の車両基地(電車区)で休む、特急「こだま」             
3-0_20160721125312dd5.png 東京での一泊は、元気ハツラツの女の子達は宿泊所で過ごしますが、コック達は電車区で停車中の「こだま」内で車中泊なんですね。賄いの朝食は一同、食堂車の中でとっている。関西人が納豆を食べているが、まだ食べ慣れない様子。
 女の子たちの入浴シーンや、喜一とほかのコックとのけんかシーンや、「こだま」乗車未経験の観客向けシーンなど、観客サービスは十分。しかし・・・。
 この映画、観たいと長らく願っていた映画のひとつなんですが、同じく川島雄三監督の「貸間あり」など下記の作品に比べれば、出来は並みでした。

【川島雄三監督の映画】  ~ これまでに記事にした映画から。

 「貸間あり」、「洲崎パラダイス 赤信号」、
 「しとやかな獣」、「雁の寺


監督:川島雄三|1961年|東宝| 85分|
原作:獅子文六「七時間半」|脚色:笠原良三|撮影:遠藤精一|
出演:フランキー堺(矢板喜一)|団令子(藤倉サヨ子)|白川由美(今出川有女子)|小沢栄太郎(さくらガムの社長・岸和田太市)|中島そのみ(チャイナドレスの謎の女・伊藤ヤエ子)|沢村貞子(甲賀げん)|滝田裕介(その息子・甲賀恭雄)|太刀川寛(佐川英二)|森川信(コック長の渡瀬政吉)|中山豊(若山)|安達国晴(大川)|丘寵児(食堂長森山)|佐羽由子(ヒロ子)|紅美恵子(セツ子)|中真千子(ヨシ子)|柳川慶子(ケイ子)|芝木優子(キミ子)|横山通乃(望月みち子)|小西ルミ(井上さかえ)|佐多契子(向井たか子)|田武謙三(酔いどれ老人)|石田茂樹(専務車掌影山)|堺左千夫(公安官青木)|大塚国夫(営業所の男)|谷村昌彦(上野)|平凡太郎(下谷)|塩沢とき(女将)|

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映画 「愛と希望の街」  監督:大島渚

上
正夫の一家3人


2-0_201607030802046d3.png 舞台は、川崎から鶴見あたりの海近く、貧しい人々が住む街。
 主人公の正夫の家は、川崎駅前で靴磨きをする病弱な母と、知的障害の妹の一家三人。

 正夫は中学三年生。卒業すれば就職して家計を助けたいが、母親は息子を是非にも全日制の高校へ行かせたい。そして、一家してこの街を出たい、と言う。
 つまり、高校を卒業して息子にいい会社に入ってもらい、いい給料を得て生活レベルを向上させたい。それまでは、なんとか靴磨きの仕事を続けるつもり。しかし、ここんところ、せきが止まらず、靴磨きを休みがちだ。(その上、中学修了すると生活保護は支給されない。)

 正夫は成績が良いらしい。だから、担任の女性教師・秋山先生も、彼を高校へ進学させてやりたいと考えるが、母親の体調を思う正夫の気持ちを汲めば、就職して定時制高校に通うということになるかと思っている。それなら、何とかいい就職先を世話したい。けれど、彼の進路について、母子の意見が合っていないのは、どうしたものかと悩んでいる。

学生服の正夫の足元に木箱、その中にハトが 2羽
3-0_20160703095912723.png 正夫は母親に言われて、駅前の路上で鳩を売ることがある。家で飼っている数羽の鳩だ。たまに売れて家計の足しにできる。一羽350円。
 正夫は売るのをやめたいが、母は彼の言う事を聞かない。それほど家は貧しい。しかし、売る鳩は妹がペットにしている鳩なのだ。
 正夫の気持ちはふたつ。妹の悲しい顔を見たくない。もうひとつは、新しい飼い主が買った鳩を誤って逃がしてしまい、それが正夫の家に舞い戻ってくることがある。妹は喜ぶが、それをまた売る。正夫は後ろめたさを感じている。
 
 ある日、川崎駅前を通りがかった京子という高校二年生が、正夫の鳩を2羽700円で買った。なぜ鳩を売るの? お金が欲しいから。これを機に京子は、ぎこちない様子で鳩を売る、世慣れていない中学生に対して、好奇心を持った。京子は貧しい人と間近に接するのは初めてだったのだろう。ピュアな救済の気持ちが沸き起こる。

 京子の家は富裕層。父親はテレビなどを製造する大手電気メーカー・光洋電機の役員で、館のような大きな家に住んでいる。京子の兄の勇次も父親の会社に勤務している。幸せな家庭だが、京子の弟は病に侵され入院中、そしてこの家に母はいない。

 その後、京子は秋山先生から正夫の家の窮状を知ることになり、京子は父親に光洋電機で正夫を採用してもらえないかと頼んだ。秋山先生は自校にも採用の門戸を開いて欲しいと思い、京子の紹介で光洋電機を訪ね、京子の兄・勇次と労務課の上司に面会するが、当社は地元の中学からは採用しないと断られた。
 この時から勇次は、楚々として見識ある秋山先生に好意を持つようになった。そしてこのことから、勇次は妹・京子の肩を持ち、父親を説き伏せて地元採用を試みることとなった。
 しかし正夫は採用試験を受けるが不採用となる。試験はうまく出来たと聞いていた秋山先生は慌てて勇次に詰め寄る。不採用の理由は、(テストの成績が悪かったわけではなく) 身元調査の結果が悪かったと言う。帰って来た鳩をまた売るという詐欺まがいの行為があったという調査報告が不採用の理由だと言う。秋山先生も京子も、会社の非情を思うと同時に、そんなことをする正夫に裏切られた気持であった。秋山先生は正夫の家に出向き、正夫を非難した。

 このことで、勇次と先生の関係はギクシャクして終わりを告げ、正夫の母親は鳩を売ることを息子に強いたことを悔んだ。
 しかし、正夫はめげることない様子であった。とりあえず正夫は、近所の人が数人勤める小さな町工場で働くことになった。母親は、あんな工場(こうば)で息子を働かせたくなかったと嘆く。先生を怒らせのだから、もう進路指導はないと思う正夫は、卒業後も、その工場で働くのだろうか。
 光洋電機への受験チャンスは、正夫にとっても秋山先生にとっても偶然の棚ボタ話であった。しかし先生や中学校は、正夫の就職をしっかりフォローしなければならないはず。裏切られた思いはあるにせよ、秋山先生は正夫の卒業までに、いい就職先を見つけてあげるのだろうか。また、この先、一家はあの街を出ることが出来るのだろうか。


正夫と母 (上)  家の裏手はドブ川が流れる (下)
4-0_20160703100409236.jpg あらためて観て思うこと。
 採用時の身元調査はたいがい、地域事情に詳しい地元警察のOBが、企業から請け負って行われることが多い。まずは本人や家族などの犯罪歴を確認し、一方で調査対象の近隣を見て回り、どんな人柄ですかなどと周辺で聞き取りをする。鳩のことは近所の誰かから聞いたのだろうが、通常、現実にはこれ位のことで詐欺行為をしたとして、不採用とはしないし出来ないだろう。
 だが、しかし、勇次は母子家庭が理由ではないと言うが実は、住んでいる所が下層の人びとが集まる街であることを会社側が嫌い、不採用にしたと思われる。(たぶん会社側は犯罪や部落問題や在日コリアンの問題などのいざこざを想定し、これを避けようと意識している。)
5-0.png それは当時としても不採用の理由としては言えないので、代わりに鳩の件を不採用理由として取りあげたのだろう。映画ではそこまで踏み込んでいない。もちろん現代では、もうこういう身元調査はあまり行われないだろうが。

 このように、この映画は正夫の進路を題材にして、貧富の格差と、企業の倫理観や社会的責任と、生活や雇用に対するセーフティーネットについて問題提議する作品である。
 今となっては、体制/反体制 (資本家・ブルジョア/労働者階級) といった怒りの構図を抜け出して、もうすこし冷静にこの作品を観る必要があると思う。

 ちなみに、秋山先生が正夫の家に出向き、鳩の件を詐欺まがいだと正夫を前にして非難したのは残念だ。
 京子は、「もう絶対にあんたの所には帰らないから!」と言いながら、正夫の家に逃げ帰った鳩をもう一度、正夫から買った。そして、京子は家に帰り、この鳩を殺してほしいと勇次に頼む。ふたりはベランダに立ち、京子が放った鳩を、失恋した勇次は猟銃で撃った。このラストシーンは視覚的には確かにドラマチックだが、「悪くなった原因は鳩だ」として、ことの問題点を鳩にすりかえる姿勢が気に入らない。
 さらにだが、映画の中の光洋電機がそうであるように、当時、企業が中卒を採用するにおいて、東北など地方での採用に意欲的である一方、地元川崎など大都市部での採用を行わないのは、都市部の生徒の方が (地方の生徒よりも) やっかいな問題を抱え込んでいる可能性が大きいと、企業が考えていたからだ。
 正夫の就職に関する問題点のひとつは、ここから始まっている。一方で、あの街を出て暮らしたいと願う正夫の母親は、世間の本質をとらえていたと言える。



小雨降る日、京子は正夫の家を訪ねた。
その帰り、カサをさし、ふたり並んで歩く姿をアベックだと、はやし立てられる。
ふたりは、はやした少年たちを カサを振り回して追い払った。 「私、ケンカは初めて!」
ふさぐ心が解き放たれ、互いに大声で笑い合った。京子も泥だらけ。
 
下監督・脚本:大島渚|1959年|松竹|62分|
撮影:楠田浩之
出演:正夫(藤川弘志)|その母・くに子(望月優子)|正夫の妹・保江(伊藤道子)|高校二年生の京子(富永ユキ)|その兄・勇次(渡辺文雄)|正夫が通う中学の先生・秋山(千之赫子)|泰三(坂下登)|久原(須賀不二男)|笹島(川村耿平)|いさ子(瓜生登代子)|矢野(土田桂司)|きん(秩父晴子)|大塚(高木信夫)|労務課長(土紀洋児)|



【 京浜工業地帯を舞台とした映画 】 ~これまでに記事にした映画から。
 タイトル名をクリックしてご覧ください。

 「喜劇 女は度胸」  監督:森崎東  主演:倍賞美津子、沖山秀子、渥美清 (1969年) ・・・羽田 (東京都)
 「煉瓦女工」     監督:千葉泰樹 (1940年) ・・・鶴見 (横浜市)
 「めぐりあい」     監督:恩地日出夫  主演:酒井和歌子 (1968年) ・・・川崎

【 大島渚監督の映画 】 ~同じく、これまでに記事にした映画から。

 「少年」、「新宿泥棒日記」、「夏の妹

京子と正夫と秋山先生  川崎駅前にて
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映画 「ピース オブ ケイク」  主演:多部未華子、綾野剛  2015年  監督:田口トモロヲ

上

 こういう映画を、観てしまった・・・。
バイト先はレンタルビデオ屋
1-0_2016070115141873e.jpg ひとを好きになるのはその時の勢い。しかし、こんなはずじゃなかったってこともある。
 人生、そうそう うまくはいかない。 
 自分の人生、自分が決めると主役気分でいたいが、相手や自分の弱さや、通りすがる運命とやらに振り回されて・・・。でも、この映画はハッピーエンド。

 その夜その時、志乃(多部未華子)の頬に爽やかな風が吹いたらしい。
 それはアパートのお隣の部屋に住む、京志郎(綾野剛)という男に初めて会ったその時だった。

 志乃は今日このアパートに越してきた。これまでの嫌なことすべて振り切って、心機一転、転居してきたのだ。
 のちに分かったこと二つ。始めたばかりのバイト先の店長がこの京志郎だったこと。京志郎は彼女あかり(光宗薫)と住んでいること。
 だが、そのうちまもなく、あかりは行方不明に。志乃はわだかまりを抱えつつも、いつしか京志郎を受け入れる。
 しかし事はそううまく行かない。あとでわかるのだが、京志郎はあかりと会っていた。顛末は観てのお楽しみ。

2‐0 男目線から見て、実際この映画みたいな、自ら招いた三角関係って、あるよね?
 成り行きで始まり、結局良くも悪くも、成り行き任せに身を任す、ドロっとした恋愛と別れ、そして・・・。
 原作は漫画。脚本では、吹き出しをセリフにし(当然だが)、漫画でモノローグ表現にしている箇所も、志乃(多部未華子)に語らせている。これが頻繁で、しつこいのが残念。
 

監督:田口トモロヲ|2015年|121分|
原作:ジョージ朝倉|脚本:向井康介|撮影:鍋島淳裕|
出演:多部未華子(梅宮志乃)|綾野剛(菅原京志郎)|光宗薫(あかり)|松坂桃李(天ちゃん)|木村文乃(ナナコ)|菅田将暉(川谷)|柄本佑(正樹)|峯田和伸(千葉)|中村倫也(多田)|安藤玉恵(黒沢年子)|森岡龍(キンジ)|山田キヌヲ(神田)|宮藤官九郎(阿佐ヶ谷ロフトの店長)|廣木隆一(天ちゃん出演映画の監督)|ほか


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映画 「亀は意外と速く泳ぐ」  主演:上野樹里  監督:三木聡

上
夫からの電話。いつも、これと言った話は無く 「カメにエサをやったか」 で終わる。
夫のペットのカメの亀太郎を、ベランダから投げ捨てたい衝動に駆られるスズメであった。

1‐0

 夫は海外へ単身赴任してしまい、ひとりポツンと毎日を送る、主婦・片倉スズメ(上野樹里)のお話。
 これは実話なのか、それとも暇を持て余す女の誇大妄想なのか。
 話は、てんでばらばら無秩序に破天荒に意味なく展開するおバカな話なので、アホらしくて途中で投げ出す人もいる。

 とにかく、スズメはスパイになった。
 募集広告を見たのだ。(なにしろスパイの募集なので、誰にも見つからないところに、誰にも見つからないサイズのポスターが貼ってあった。偶然、ひょんなことでスズメはこれを見つけた。)
 電話して、言われるままにスズメは、目立たぬ古びた普通のアパートの一室を訪ねた。そこに住むクギタニ夫婦(岩松了、ふせえり)は、日本支部のスパイの元締めであった。指示命令は、どこかの国のスパイ組織から、クギタニ夫婦に知らされる。とは言っても、もう10年来、組織から何の音沙汰はないらしい。夫妻は辛抱強く指示を待ち、日々を送っているようだ。
 一応、面接はあった。面接結果は、スズメがあまりに普通、なのでスパイに適任、ということで合格。そして、なんと、その場で500万円の分厚い札束を渡された。活動資金だと言う。
 スズメは思う。目立たなく普通でいることは難しい。スパイになって、今まで過ごしてきた身の回りやこの街に対しての「見る目」が変わったように思える。それが刺激的で、この非日常感がスズメには嬉しい。

4-0_2016062615580445f.png いつかもし、組織から指示が出たなら、商店街の街頭放送で宣伝アナウンスをするクギタニの妻が、宣伝アナウンスに交えて集合時間を伝える事にしていた。

 誰に・・・? 
 無職でいつもパチンコ屋にいる夫はもとより、商店街のそこそこの味のラーメン屋(松重豊)も普通の豆腐屋(村松利史)も、実はベテランのスパイであった。集合場所は、近くのあの公園と決めていた。

 そしてついに、その時が来た!
 「南国ムードで疲れたあなたをお出迎え。グランドキャバレー・ファイアーダンスは冬でも熱気むんむん。明日午後9時からはサービスタイムでハッスルタイム。」
 これを聞いた皆は驚いた。ついいに来た! 明日の午後9時、公園集合だ。

 集まったのは、クギタニ夫婦にラーメン屋と豆腐屋とスズメ。そして、いつも公園のベンチにいるホームレスの婆さんの6人。
 その時、ベンチの下の公園の地面が静かに動きだし、秘密の入り口が現れた。そして・・・・。

 とまあ、基本こんな話だが、本筋の話のまわりには、たくさんのくだらんエピソードが散らばってます。
 スズメの幼なじみで、掴みどころのない謎の女・扇谷クジャク(蒼井優)は、このエピソード群のなかで登場します。
 中西刑事(伊武雅刀)の部下の福島を演じる俳優・嶋田久作。彼がかつて演じたのが映画 「帝都物語」 の魔人(加藤保憲)だったが、そのイメージを思いだすと可笑しい。
 何故なら 「亀は意外と速く泳ぐ」 では彼は鉄棒の逆上がりができないで、伊武雅刀に笑われる。



監督・脚本:三木聡|2005年|90分|
撮影:小林元|
出演:上野樹里 - 片倉スズメ|蒼井優 - スズメの幼なじみ・扇谷クジャク|
下0岩松了 - スパイの元締め・クギタニシズオ|ふせえり - その妻・クギタニエツコ|要潤 - 学生時代にスズメの憧れの男子だった・加東先輩|松重豊 - スズメが街一番と言う、そこそこの味のラーメン屋のオヤジ(実はスパイの仲間)|村松利史 - 豆腐屋のオヤジ(やはり実はスパイの仲間で射撃のプロ、頻繁に海外へ行く)|森下能幸 - 最中屋のおじさん(豆腐屋の隣りの店)|緋田康人 - スズメがベランダの排水詰まりの修繕を頼んだ水道屋(実は現代版の岡っ引き、つまり刑事の手先)|温水洋一 - 永久パーマという名の美容院のおじさん|松岡俊介 - 韮山|水橋研二 - 白バイ警官|岡本信人 - スズメの父親(ひとりで住んでいる)|伊武雅刀 - 中西刑事|嶋田久作 - その部下・福島刑事(鉄棒が出来ない男)|柿嶋孝雄 - 加東先輩の息子|? - ホームレスの婆さん|亀の「亀太郎」|


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<あ行> の邦画  これまでに記事にした邦画から。 2016.6.14

00_2016062108400748a.jpg
 これまでに記事にした邦画から、<あ行> の映画を並べてみました。
 題名をクリックして、ご覧ください。
 <か行>以降は、こちらからどうぞ。(邦画の五十音一覧リストです)

無題000
監督:溝口健二
1937
監督:久松静児
1959
監督:蔵原惟繕
1966
監督:舛田利雄
1958
監督:枝川弘
1955
監督:市川崑
1950
監督:鈴木英夫
1965
監督:市川崑
1952
監督:滝田洋二郎
2005
監督:上利竜太
2010
監督:ドナルド・リチー
1962
監督:冨永昌敬
2010
監督:矢口史靖
1999
監督:市川崑
1957
監督:瀬々敬久
1999
監督:市川崑
1959
監督:成瀬巳喜男
1953
監督:森谷司郎
1968
監督:北野武
1991
監督:桜井秀雄
1966
監督:清水邦夫/田原総一朗
1971
監督:飯塚健
2012
監督:稲垣浩
1956
監督:吉田喜重
1963
監督:清水宏
1936
監督:松田健太郎
2009
監督:清水宏
1938
監督:真利子哲也
2009
監督:森崎東
1985
監督:野村岳也
1966
監督:渡邊孝好
1994
監督:斎藤寅次郎
1930
監督:深作欣二
1992
監督:緒方明
2004
監督:吉村公三郎
1951
監督:藤田敏八
1974
監督:小津安二郎
1959
監督:溝口健二
1953
監督:清水宏
1941
監督:太田浩児
1961
監督:本多猪四郎
1959
監督:林海象
1996
監督:横浜聡子
2009
監督:高嶺剛
1989
監督:内田けんじ
2005
監督:田中登
1976
監督:仰木豊
2006
監督:岡本喜八
1963
監督:衣笠貞之助
1958
監督:五所平之助
1954
監督:市川準
1999
監督:行定勲
1997
監督:ジャン・ユンカーマン
2015
監督:新城卓
1983
監督:市川崑
1954
監督:マキノ正博
1939
監督:柴田剛
2004
監督:成瀬巳喜男
1935
監督:清水宏
1957
監督:真利子哲也
2012
監督:冨永昌敬
2012
監督:富田克也
2012
監督:望月六郎
1997
監督:鍛冶昇
1966
監督:阪本順治
1998
監督:林海象
1992
監督:井上梅次
1962
監督:井上春生
2008
    


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映画 「貸間あり」  主演:フランキー堺、淡島千景  監督:川島雄三  

上


1-0-0.jpg 喜劇役者が勢ぞろいした映画です。品質は天下一品!
 主人公の五郎(フランキー堺)を軸として、芸達者な俳優たちによる、息の合った素晴らしい群像劇が展開されます。
 ですが、喜劇映画を期待すると肩透かしを食らうかもしれません。何故かと言うと、ドタバタでおかしいのですが、余り笑えない変な映画なのです。

 あるシーンでは、あらかじめ緻密に計算されたスラップスティック・コメディが、ドミノ倒しのように連続するのが観られます。また、しつこいくらいに繰り返されるギャグもあります。加えて、瞬発的で突飛な言動がシーンのあちこちで飛び交います。ただし、そのどれもがアドリブではなく、また上方漫才のような馴れ合い的な笑いでもない。
 さらには、このスラップスティック・コメディやギャグ、その多くは、お話の展開に組せず、そのシーンのその場においてその場限り、あまり意味を持たせていません。よって総じて、突飛で奇異な印象を受ける向きもあろうかと思います。前衛的と言えるかもしれません。私は、ロシア映画 「フルスタリョフ、車を!」をちょっと連想しました。

 お話も一風変わっています。
 通天閣がすぐそこに見えて、大阪の街を眼下に一望できる高台に、底辺で生きる人々が住んでいます。
 そこは土塀に囲まれていて、屋敷門と広い玄関があり、かつては立派なお屋敷だったようです。しかし今は空襲を免れたボロ屋敷。とは言っても大きい家です。アパート屋敷と称している。この屋敷の各部屋に借家人たちが住んでいます。隣りの部屋との境がふすま越しの部屋もありますし、五郎(フランキー堺)は二階の広い洋間にいます。借家人のひとり、お千代(乙羽信子)の送別会をした大広間もある。

2-0-0 登場人物は様々です。
 屋敷の土間でこんにゃく製造の作業場を持つ洋吉(桂小金治)、屋敷内で骨董店を営む老人・宝珍堂とその若い妻で性的欲求不満のお澄、愛人稼業で生計を立てている・お千代(乙羽信子)、エロ写真売りのハラ作(藤木悠)、自称・保険屋の野々宮(益田喜頓)、塗り薬を発明し売出そうとしている熊田(山茶花究)と彼が庭で飼う蜂の一群、洋酒密売で儲けている明るくエネルギッシュで厚かましい女(清川虹子)、化粧品販売員の女(市原悦子)と愛する無職の夫。これに加えて、借家人たちの食事の世話をするスットンキョーな賄いのおミノ(浪花千栄子)、御隠居の大家。
 ここは底辺の人びとの梁山泊とも言えるかもしれません。

 そして映画冒頭、この梁山泊に、江藤実(小沢昭一)という学生が、五郎(フランキー堺)を訪ねてきます。
 江藤実は五郎に大学受験の代行をして欲しい。まずは予備校の模擬試験の受験代行を、と言う。五郎は渋々これを引き受けることになる。五郎は金に困っている。
 
 さて、これらの人びとを背景にして、フランキー堺、淡島千景の二人が主役を演じます。
 ボロ屋敷の借家人・五郎(フランキー堺)が住む洋間には、大きなアマチュア無線機、タイプライター、放送局用テープレコーダー、足踏みオルガン、和太鼓、天体望遠鏡、ミシン、地球儀、書籍などが所狭しと置いてある。
 五郎は物知りでインテリで器用貧乏を絵に描いたような男。どうすれば何々になれるかの、「どうすればシリーズ」全50巻の著者で、英仏独露の翻訳、懸賞小説の著述代行屋で、受験準備指導。そして大学受験代行のように他人に頼まれればなんでも引き受けてしまう気性。

3‐0 例えば、こんにゃく屋の洋吉(桂小金治)に頼まれてその製造方法を伝授したり、結婚話が決まり田舎に帰るお千代(乙羽信子)の旦那三人とのお別れ会(手切れ会)の幹事役や、しまいには宝珍堂にその妻(慢性欲求不満)からの離縁、その根拠捏造のために間男を頼まれ、五郎が女に逆レイプされそうになったり・・・。いやはや、ボロ屋敷の連中には凄いのがいます。
 ま、要するに、お人好しで気安く引き受けて、うまくこなせてしまう。でもどれも、片手間。これが彼の悩み。男として本業も無く、これで良いのか? 内心、忸怩(じくじ)たる思い。

 そんなある日、五郎「先生」のもとにユミ子(淡島千景)がやって来た。陶芸の美術品カタログの制作を先生にお願いしているらしい。ユミ子はモダンな作品を得意とする陶芸家で、街中にオシャレな陶芸ショップを開いている。一本筋の通ったキャリアある独身女性だ。

 このユミ子が、ボロ屋敷に住むことになる。長年、空いている荒れた部屋に、だ。 なぜ? それは、屋敷内の庭に陶芸窯や作業場が作れること。もうひとつの理由は、五郎先生のお傍に・・・。
 もちろん、五郎もその気だし、ユミ子がそう思ってくれることが嬉しい。だが、器用な彼が一番に苦手とするは、好きだと素直に言えないこと。確かに、その方面では初心そのもの。そしてさらに五郎が悩むのは、さしたる本業を持たずフラフラしている自分自身の情けなさ。何としても、今の自分から早く脱却しないと、ユミ子さんに好きだと言えない。彼はそう思っている。
 
 結局、勝ち気なユミ子は、大学受験代行のため九州へ出かけた五郎を追いかけて、彼が泊まる旅館へと向かいます。だが、それを知った五郎は逃げます。旅館の長~い廊下を出口に向かって一目散に五郎は逃げて行きます。それはまるで、映画 「幕末太陽傳」 の居残り佐平次(フランキー堺)のように。

 お話の組み立ては、起承転結を期待するとガッカリするかもしれません。たくさんのエピソードは散らかったままです。だからと言って粗雑な作りの映画じゃありません。実に凝った映画です。
 そして、この映画の見どころは、芸達者な俳優たちによる、息の合った素晴らしい群像劇です。そして、喜劇という手法を使って、(真正面から描くシリアスな映画では出来ない・・・)、斜めの視点から、喜怒哀楽の底辺でうごめく人びとの闊達(かったつ)さを描いているのだと思います。天下一品です。

 
 ロシア映画 「フルスタリョフ、車を!」 (1998年) 監督:アレクセイ・ゲルマン
  「貸間あり」では、ボロ屋敷に住む住人たちが次々に登場し、カメラの前に現れます。その場限りの奇異な会話やギャグがあります。五郎の部屋に置いてあるモノは、昭和34年当時の一般家庭のモノと比べて奇異です。こんなことが私に、「フルスタリョフ、車を!」を連想させました。もちろん、そのスピーディさ・えげつなさは「フルスタリョフ、車を!」の方がはるかに凌いでいますが。  「フルスタリョフ、車を!」の記事はこちらから


下0監督:川島雄三|1959年|東宝|112分|
原作:井伏鱒二|脚色:川島雄三 、 藤本義一|撮影:岡崎宏三|
出演:フランキー堺:与田五郎|淡島千景:津山ユミ子|乙羽信子:お千代|浪花千栄子:おミノ|清川虹子:島ヤスヨ|桂小金治:洋さん(谷洋吉)|山茶花究:熊田寛造|藤木悠:ハラ作(西原作一)|小沢昭一:江藤実|市原悦子:宣伝カーのウグイス嬢で化粧品販売員の高山教子|加藤春哉:その夫・高山彦一郎|渡辺篤:骨董屋の宝珍堂|西岡慶子:その妻・お澄|益田キートン:保険屋の野々宮真一|沢村いき雄:ボロ屋敷の大家で御隠居|加藤武:小松|西川ヒノデ:岸山|長谷川みのる:刑事|津川アケミ:登勢|中林真智子:女店員|頭師満:宏|宮谷春夫:四方山|青山正夫:菩提寺|守住清:地廻り|楠栄二:記者|


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プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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