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邦画評だけ見る 直近50作 Archive

映画 「夜叉」  監督:降旗康男

上


 田中裕子を愛でる映画です。

1-0_2017061914235620d.png 任侠映画は今も好まないが、高倉健主演の「夜叉」を、前世紀に観たような気がしたので、今回あらためて観てみたら・・。
 高倉健のおはこ、無口で無表情な演技よりも、田中裕子の無言と微かに移ろう田中の表情の方が、ずっと雄弁だった。

2-0_20170619142734972.png 修治(高倉健)は、人斬り夜叉と言われた大阪ミナミのやくざであったが、覚醒剤で金を稼ぐな、という彼の主張が、組の中で通らず彼は干された。加えて、かたぎの女である冬子(いしだあゆみ)との結婚を機に、修治は足を洗い冬子の実家、福井県敦賀で漁師となった。

 修治の妻、冬子はこの漁師町で生まれた。15年前、冬子は大阪に働きに出て、やくざ者とは知らず修治と出会ったのであった。
 螢子(田中裕子)はミナミから流れて来て、この漁師町で「蛍」という名の呑み屋をはじめた女。螢子は子連れであり、彼氏はミナミのヤクザ、失島(北野武)であった。

 螢子と冬子の、それぞれの修治への愛。それは、ミナミのやくざな世界の中の愛、敦賀湾の漁師町の愛。

 脚本は練りが不足している。説明のためのモノクロ回想シーンは、どれも安っぽくて頂けない。
 ただし、秀逸なシーンが三つ。本作の全体を支える要です。
 ・螢子の店で、修治と冬子が客として酒を飲むシーン。修治をめぐって、螢子と冬子との間でスパークする激しく静かな火花。
 ・ある夜、修治宅を訪れた螢子が、二人だけの話がしたくて彼を海際に呼び出すシーン。螢子が修治に、ぼそっと言う。「冬子さん、嫌いや」
 ・夫に献身的で日ごろ大人しい冬子が、修治と螢子の関係を知ったその夜、冬子は修治に向かって、苦しい胸のうちから絞り出すように言う凄んだセリフ、「私はあなたの妻です!」 この一瞬、女優いしだあゆみが光る。
  かつて人斬り夜叉と言われた男も、この一言には敵わなかったというお話でした。

 
監督:降旗康男|1985年|128分|
脚本:中村努|撮影:木村大作|
出演:修治(高倉健)|螢子(田中裕子)|冬子(いしだあゆみ)|冬子の母親うめ(乙羽信子)|失島(北野武)|啓太(田中邦衛)|啓太の妻とら(あき竹城)|修治が属した組の組長の妻塙松子(奈良岡朋子)|修治の舎弟トシオ(小林稔侍)|親爺(大滝秀治)|修治が若い頃の女夏子(檀ふみ)|組員(寺田農)|ミナミの組長(下條正巳)|

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映画 「君と歩こう」  監督:石井裕也

上
田舎を出るノリオと明美先生。2人の明るい駆け落ちが始まった。

 田舎に住む、34歳の独身女性教師と高校生男子との駆け落ち喜劇話。

 映画は、よくある話の人物設定を否定してみせる。
 つまり、34歳男性教師が若い女子高校生と駆け落ちするのではなく、だ。
 また、その愛は極端に淡い。
 キスさえなく男子は童貞のまま、よくある男女の愛には程遠く、とりあえず切羽つまった駆け落ちでもない。

 そして話の筋は、基本、喜劇だが、奇妙で突飛で写実的じゃない。
 しかし一方で、どうしようもなく現実的でもあり、このふたつの要素がまだらに入り混じるところが、監督の喜劇なんだろう。

 大きく欠けてしまった心を抱く者同士、ノリオと明美。ふたりは自身のそれを言わない。
 だからこそ、優しい。 これは愛?

1-0 教師の明美(目黒真希)は、高校生のノリオ(森岡龍)に対し、自分は駆け落ちのプロだという。
 その日、ノリオは明美にせかされ、住み慣れた田舎を後に、ふたりは東京へ出た。

 まずは、ふたりはそれぞれの携帯電話を渋谷川に捨てる。
 そして、日当たりのいい部屋を借りた。明美はノリオに言う。
 「私はお金持ちなの。前々から言ってるとおり、ノリオは勉強して弁護士になるの。勉強しなさい。」 「はい先生」
 
 明美:「How are you?」 明美はいつもノリオに、こう問いかけるが、
 ノリオ:「ア、アム、アム・・・」
 明美:「I'm fine thank you. and you? でしょう」
 ノリオは覚えが悪い。

 話が進むうちにわかること。
 ノリオの両親はそろって自殺した。
 ノリオと明美の出会いは、両親の自殺のその直後、後追い自殺しようと、ノリオが首つりしている、「その最中」に、明美先生が家庭訪問に訪れたのだった。
 その後、ノリオはひとりで自宅に住み続けるが、家はゴミ屋敷になっていた。

 さて、明美とノリオの話に、サブストーリーが3つ絡んで、明美とノリオの東京生活が明らかになって行く。
 サブの話のひとつは、高校生同士(吉谷彩子、前野朋哉)の恋愛で女子が妊娠。この女子がカラオケ屋でバイトをしていて、この店で明美先生もノリオに内緒でバイトを始めるが、ノリオの前では要領がいい先生は意外にも、役立たず・・。さらには、そんな様子をノリオが見てしまう。
 一方、この女子高生を気遣うノリオを遠目に目撃した明美先生は、ノリオが浮気していると嫉妬する。
 結局、駆け落ちのプロ・明美先生は、このカップルを駆け落ちさせようと奮闘することに。
 次ぎのサブストーリーは、ノリオが偶然出会った謎の女性・康代(勝俣幸子)に、ノリオは公園の多目的トイレで童貞を奪われる。
 三つ目は、両親がいない野球ファン少年・安太郎(渡部駿太)がノリオに出会う話。

 そして、こんな何やかにやがあった、3年後。
 田舎を出たはずのノリオは、田舎の自宅に戻っていた。
 そしてある日、ノリオは畑の中のバス停で、バスを降りたばかりの、明美先生を発見する。
 明美はノリオに、笑顔を返すのであった。

下2監督・脚本:石井裕也|2009年|90分|
撮影:高木風太|
出演:田中明美(目黒真希)|佐伯ノリオ(森岡龍)|女子高生・一瀬メグミ(吉谷彩子)|男子高生・竹友(前野朋哉)|野球好きな安太郎(渡部駿太)|謎な女・康代(勝俣幸子)|ノリオの同級生のひとり・康隆(中村無何有)|ほか

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映画 「憲兵とバラバラ死美人」  監督:並木鏡太郎

上2
殺された女、百合子(三重明子)

 時は昭和12年、仙台歩兵第四連隊の敷地内で発覚した猟奇殺人事件のお話。

1-0_20170506211933332.png 連隊内で飲料水として使っている井戸から、若い女性の胴体が引き上げられます。その女性は妊娠していました。
 さて、殺人犯は連隊兵士だとみて、地元警察ではなく、憲兵隊が捜査を開始します。

 この映画は60年前に製作された娯楽作品です。映画公開当時は「バラバラ死美人」というショッキングな内容を楽しめたのかも知れませんが、今の感覚で観ると、犯罪ミステリー映画です。衝撃度への期待は裏切られます。でも、悪くはないです。

2-0_20170506214044305.png
 映画の内容は、1950年代によく作られた、刑事事件ドラマや怪談もの映画の、典型的なスタイルをとりながらも、コミカルさも忘れない作りです。
 ただし本作では、犯人捜査をする主役の刑事を、憲兵隊の曹長(下士官)に置き換えています。
 当時の、典型的なドラマ・スタイルを楽しみましょう。
 
 遺体発見後、憲兵の小坂曹長(中山昭二)が、仙台連隊長の招きで東京からやってきます。彼は腕利きの捜査官です。
 一方、地元、仙台の憲兵隊も捜査を始めていて、小坂曹長と事件解明でつばぜり合いになります。

 殺された女性、百合子(三重明子)、犯人の君塚軍曹(江見俊太郎)、この二人の登場シーンは少ないのですが、共に存在感ある俳優で、とても印象に残ります。この映画の見どころです。

 主演の小坂曹長(中山昭二)は、憲兵にしては温和な性格。地道に証拠を探し推理し、また地元警察の老刑事をうまく活用します。
 その小坂曹長の部下、高山(鮎川浩)は、曹長を助けながらも、コミカルで軽妙な演技をしています。

 東京から来た小坂曹長と高山が宿とした家は、高山の幼なじみの、しの(江畑絢子)という女性の家でした。この、しのの快活さと、高山の可笑しさが楽しいです。高山は、しのが好きです。
 また、しのの姉、喜代子(若杉嘉津子)は、飲み屋を切り盛りする、色っぽい独身女性。彼女は小坂曹長に一目惚れ、曹長もまんざらでもない。

 こういうサイドストーリーを脇に従えながら、小坂曹長と高山による犯人捜査は続けられます。
 そして、犯人逮捕のため、小坂曹長は満洲へ渡ります。
 満洲へ移動した仙台歩兵第四連隊に犯人の君塚軍曹もいて、彼はさらに連隊を離れてハルピンに逃げていました。 
 
 ちなみに、地元憲兵隊によって誤認逮捕され、取り調べで拷問にあう恒吉軍曹(天知茂、この時26歳)。若いながらも既に、あの天知茂特有の薄暗い魅力たっぷりです。

監督:並木鏡太郎|1957年|73分|
原作:小坂慶助|脚色:杉本彰|撮影:山中晋|
出演:小坂徳助曹長(中山昭二)|小坂の部下でヒラの憲兵・高山忠吉(鮎川浩)|被害者・伊藤百合子(三重明子)|殺人犯の軍曹・君塚八太郎(江見俊太郎)|小坂が宿にした家のあるじ・加島喜代子(若杉嘉津子)|喜代子の妹で高山の幼なじみ・加島しの(江畑絢子)|萩山憲兵曹長(細川俊夫)|刈田憲兵伍長(小高まさる)|井部憲兵隊長(倉橋宏明)|坂本憲兵大尉(高松政雄)|金田(三村俊夫)|田所(明日香実)|恒吉軍曹(天知茂)|山本(西一樹)|細井(浅見比呂志)|酒井(築地博)|小俣軍曹(池月正)|内務班の古年兵A(山岡正義)|内務班の古年兵B(宇田勝哉)|西村衛生伍長(館正三郎)|高梨(加藤章)|田中(小浜幸夫)|守谷刑事部長(岬洋二)|馬渡老刑事(久保春二)|医師の石川博士(児玉一男)|石川博士の助手(千葉徹)|鴨下妙子(松浦浪路)|清の家の女将(津路清子)|文子(小野彰子)|老姿およし(五月藤江)|歯科医(武村新)|村井夫人(高岡久美子)|

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映画 「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年) 監督:伊丹万作 (せんごくきたん きまぐれかじゃ)

上
「ヒゲの勘十」と「気まぐれ冠者」(片岡千恵蔵)

 この映画は、映画監督で俳優だった伊丹十三の父、伊丹万作(1900 - 1946)が、昭和10年に作ったコミカルな時代劇映画です。(トーキー作品)

1-0_20170423103831cee.jpg 表看板の主役は片岡千恵蔵で、浪人の「気まぐれ冠者」を演じていますが、この気まぐれ冠者に連れ添う、太っちょでちょっとヌケてる「髯(ヒゲ)の勘十」、この役を演ずる田村邦男という俳優が、とても素晴らしい。味があります。
 この人を主役として観るほうが、たぶん、この映画を楽しめると思います。(彼は日本大学相撲部出身だったそうです)
 (※冠者とは「若者」の意。ここでは、気まぐれ野郎ってな感じか)

 話の展開はゆったり進みます。
 旅する浪人の二人、気まぐれ冠者と髯(ヒゲ)の勘十は、山賊一味ともつながりがある、風来坊です。
 この二人は、ある藩が主催する御前試合の会場前を通りかかりました。(※殿さまの面前で行う武術試合)
 槍が得意な勘十が、これは面白そうだと、御前試合に飛び入り参加したことがきっかけで、二人は殿さまに家来として雇われることとなります。
 (どうでもいい事ですが……気まぐれ冠者は、のんきな殿さまから、「給与(禄)はいくら欲しいか」と出し抜けに聞かれ、たじろぎながらも抜け目なく希望金額を言います。勘十は、その額の多さに驚きます。
 しかし、すぐさま、殿の側近から予算的余裕は無いからねと耳打ちされた殿は、結局、気まぐれ冠者の希望金額を値切ります。でも一軒家が与えられます。厚遇ですよね。)


 さて、二人が仕官したこの国(藩)は、隣りの国が攻めてくることを恐れています。
 そこで、隣国が「攻めて来ないように」する、何か良い方法は無いものかと、殿さまはじめ家来たちは、これまでにも幾度も思案したのですが、良いアイデアは出てきません。
 まあ、この国はとても平和主義の国で、戦争は避けたいし、家来の武術レベルも低いようです。そして家来はみんな、間が抜けたのんびり屋です。おまけに殿さまは、はっきり言って阿呆です。
    ……………………………………
 そんななか、気まぐれ冠者は、隣国を偵察してみようと考えて、殿さまの許可を得ます。
 気まぐれ冠者は勘十を連れて、隣国に入りますが、不覚にも二人は捕まってしまい、城の牢屋に入れられてしまいます。
 しかし、牢屋の床の、ある敷石を持ち上げると、その下には地下へ降りて行ける抜け穴があることを発見し、二人は迷路のような抜け穴をたどって行きました。
 そして、行き止まりまで来ると、抜け道に天井がありました。気まぐれ冠者は勘十を踏み台にして、その天井を押し上げ、上の様子を見て、あっと驚きます。次に、どれどれと勘十も上の様子を見て驚きます。
 天井ように見えたのは、実は城内の部屋の床で、二人はその部屋の畳を持ち上げていたのです。そして、その部屋は、なんと、この国のお姫様、椿姫(市川春代)の部屋でありました。

 ひとり、この部屋にいた姫は、突然、床下から現れた二人を怖がっていましたが、気まぐれ冠者は絶妙に姫におべっかを使い、姫を懐柔することに成功します。
 そして、二人は、殿さまの前(お白州)に引き出されますが、殿の脇にいる姫の計らいで、殿さまは二人を釈放します。この国の殿さまも、バカ殿のようです。

 さて、ここから、気まぐれ冠者が考え出した、敵国攪乱(かくらん)作戦が始まります。
 その作戦の秘密兵器は、金の卵です。まずは金の卵を国中に知らしめます。
 そして、気まぐれ冠者と勘十、そして彼らの手下数名(知り合いの山賊)が、忍者姿となって行動し始めます。
 この国の、あちこちの農家のニワトリ小屋に、金の卵をそっと置いて行きます。そのうち、この国の人々は、そして殿さまも家来も、金の卵を産むニワトリを巡って、我を忘れ夢中になって行きます。国中が翻弄されます。隣国侵略どころではありません。作戦大成功。

 そんなわけで、気まぐれ冠者と勘十は馬にまたがり、この国で新たに手下にした人々を従えて、意気揚々と凱旋の途に就くのでした。めでたし。(馬にまたがって凱旋するシーンは、中国大陸を感じますね)

 本来、88分の尺の作品だそうですが、現存は75分なので、観れないシーンがあります。
 また、古い映画なので、音声が聞き取りにくい。よって、元は分かりやすい大衆向け仕立ての映画なのですが、話がイマイチ分からない。
 そのうえ、気まぐれ冠者と勘十が仕官した国の殿さま(伊藤隆世)と、隣国の殿さま(ジョウ・オハラ)の様子が似ているので、コンガラガル。(仕官した国の殿さまには、長いあごヒゲがある)
 それでも、ホンワリした、いい喜劇映画と言えるでしょう。

 本作の制作は1935年。この頃の時代背景。
 1931年、柳条湖事件に端を発して満洲事変が勃発、関東軍により満洲全土が占領される。その後、関東軍主導の下に同地域は中華民国からの独立を宣言し、1932年、満洲国建国に至った。
 こんな世情になかで、当時の人々は、この映画を観ていました。
 
 
この映画は、トーキーです。つまり無声映画じゃないです。
日本初のトーキーは1927年。
1938年当時でも、日本では映画製作の3分の1は、まだ無声映画だったそうです。

監督・原作・脚本:伊丹万作|1935年|88分 (現存75分)|トーキー、モノクロ|
製作:片岡千恵蔵プロダクション|撮影:石本秀雄|
出演:片岡千恵蔵(気まぐれ冠者)|田村邦男(髯の勘十)|伊藤隆世(殿様)|ジョウ・オハラ(敵国の殿様)|市川春代( 椿姫 敵国のお姫様)|尾上華丈(木曽猿)|瀬川路三郎( 関羽左衛門)|香川良介(隠密横目氏)|林誠之助(金神)|駒井燿(百足)|ほか

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映画 「羅生門」  監督:黒澤明

上2

 女優、京マチ子を愛でる映画です。
1-0_20170409235658056.jpg
 時は平安時代のある日。人けのない山間の道を、平安京の中央官庁に勤務する官人の金沢(森雅之)は、妻の真砂(京マチ子)を乗せた馬の手綱を引き、亰へと向かっていた。
 偶然、その道端に居た盗賊の多襄丸(三船敏郎)は、通り過ぎる馬上の真砂の美しさに一目惚れ。
 この女を奪いたい、その一心で多襄丸は、ふたりの行く手に立ちはだかった。そうして格闘の末、多襄丸は金沢を縛り上げ、彼の目前で妻の真砂を犯した。その後、金沢は死体で発見される。

 どうも、そこまでは確か、らしい。
 と言うのは、それは検非違使庁(けびいちしちょう)のお白洲に呼び出された、この事件の関係者らの供述から、推測される。
 被疑者は、縄で縛られた盗賊・多襄丸。証人は、金沢の妻・真砂と、巫女(霊能者)の降霊術によって呼び出された金沢の霊。加えて、死体の第一発見者の杣売の男(志村喬)、生前の金沢を見かけた旅法師(千秋実)、弱っていた多襄丸を捉えた男(加東大介)。
 しかし、多襄丸、真砂、金沢の霊、それぞれの供述が大きく食い違う。誰が金沢を、真砂の短刀で殺したのか。

 さて、お白州の後日、土砂降りの雨の中、羅生門の下で雨宿りする、死体の発見者の杣売の男が、下人の男(上田吉二郎)と旅法師に、お白州で言えなかった真実を語り出す。杣売の男は、事件に関わりたくなかったのだ。

 多襄丸、真砂、金沢の霊、この3名の供述は、カメラに向かってなされる。つまり、検非違使庁の役人(裁判官)は観客となる。
 そして、この3名の供述と杣売の男が見た真実が、それぞれ映像として再現され、映画は進む。
 京マチ子が、4名の供述でまったく異なる真砂を演じ分ける。これが見事。(観てのお楽しみ)
 少し残念なのは、多襄丸の供述時のセリフが硬いこと。

  「羅生門」(らしょうもん)とは、平安京の中央を南北に貫く朱雀大路の南端にあった都の正門、羅城門(らじょうもん)のこと。のちに、平安京の西側半分および七条以南の地は、荒廃してしまう。羅城門が見る影も無い本作は、その頃の話と思われる。


英語表記:Rashomon
監督:黒澤明|1950年|88分|
原作:芥川龍之介|脚本:黒澤明 、橋本忍|撮影:宮川一夫|
出演:多襄丸(三船敏郎)|金沢武弘(森雅之)|金沢の妻・真砂(京マチ子)|杣売(志村喬)|旅法師(千秋実)|下人(上田吉二郎)|旅免(加東大介)|巫女(本間文子)|

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映画 「やくたたず」   監督:三宅唱

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 いい映画です。
1-0_20170324165718a12.jpg どこにでもいるような男子高校生三人の、極々日常的な時間の流れが、カメラによって切り取られ、映画に映し出される。ストーリーというほどの物語性は無い。
 大筋の台本はあるんだろうが、たぶんセリフや演技は俳優に任せている。演技の巧さは求めてはいない、カメラの前で構えなく、極、自然に振る舞えることが大事であった。
 本作をつまらないと思うのは自由だが、映像そのものが、言外に何やら静かに語っているのが分かると、この映画、気に入ると思う。
 
 話の舞台は、雪降る札幌郊外のそのまた外れ。車は通るが人影は見当たらない、殺風景な雪景色。
 枯草茂る小さな丘陵を越えれば、海。モノクロ映像が、白い雪原と冷たい空気を強調する。

 防犯機器の取付施工をする小さな会社に伊丹という従業員がいて、彼を慕って高校3年生の三人が、バイト気分で仕事を手伝いしはじめる。「やくたたず」です。
 高校3年生とはいっても、まだまだ幼い、三人はじゃれ合うように日々を過ごす。
 彼らの先輩、伊丹が勤めるこの会社は、年配のオーナー社長と若い女性従業員一人だけ(この映画の紅一点)。 そして、小さな事務所小屋と機材倉庫に古ぼけた日産サニートラック1台。
 それに、伊丹の友人で刑事の、おとなしい次郎が登場人物に加わり、そして物語と言えることは、日産サニートラックが盗難にあうことぐらい。それも事件と言うほどもない事件。
 これで76分間、最後まで飽きずに観てしまえる。いい映画です。それとカメラワークがイカしてる。お試しあれ。
 

監督・脚本・撮影:三宅唱|2010年|76分|
出演:柴田貴哉|玉井英棋|山段智昭|櫛野剛一|足立智充|南利雄|片方一予|須田紗妃|


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映画 「いなべ」   監督:深田晃司

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直子と智広のふたりが行く。

 38分の短編映画です。短編ならではの、さらりとした良さがある静かな映画です。
 起承転結の、起・承が穏やかに推移し、ラスト近くで一気に、転と結が用意されているお話です。

1-0_201703182041556fb.jpg 三重県いなべ市の郊外、田園地帯に、長男の智広(松田洋昌)と、歳の離れた高校生の妹、そして母親と祖母の一家4人が住んでいる。その妹は母親が再婚して生まれた娘らしい。
 そこへ智広の姉の直子(倉田あみ)がひょっこり、17年ぶりに帰って来た。幼児を抱えている。高齢出産は大変だったのよと言う。夫はあとから来るらしい。母親は仕事で夜にならないと帰って来ない。この話は、母親が帰宅するまでの数時間の物語。

 妹は直子を知らない。それほどに、直子はこれまで家に近づかなかったし、まったく音信不通だった。兄の智広から話を聞いた妹は、この人があの幻の姉なのねとつぶやく。
 直子は若い頃、家出をした。わけは、直子の英語の家庭教師をしていた男性だった。直子はこの年上の男を慕っていた。将来、この人と結婚してもいいと思うほどだった。ところが、この男は母親と一緒になった。そして直子は家を出た。その後、その男は世を去る。そんな17年を経て、直子が今日、帰って来たのだ。

 直子は智広を連れて、幼い頃を懐かしむように家の近所を歩く。そして直子は林に入って、昔、密かに土に埋めて隠したものを探し出す。それに付き合う、久しぶりの弟気分の智広。
 この姉弟がそんな散歩をするうちに夕暮れが近づく。五重塔のような展望台にふたりは登った。
 展望台からの見晴らしは素晴らしく、夕闇に浮かぶ街の灯りが遠くに綺麗に輝きだす頃。展望台に吹く風が、何か座りの悪いふたりの気持ちを揺らせて、ここよりも、どこか、ずっと向こうのどこかへ、ふたりの心を、ふっと奪い去って行くような、なぜかそんな心もとなさを智広は感じていた。

 直子は智広に、「会えて良かった」と言った。そののち、直子と智広はふたりして家へ帰るはずだったが、家に帰って来たのは智広ひとりだった。
 智広が玄関を開けると、母親が智広の帰りを待ちあぐねていた。母親は言った。「直子の夫だと言う男の人が来てるのよ...。」(あとは映画を観てね)

 滝のシーンはGoodだし、智広の妹がその友人と自転車に乗るシーンは、直子のこれまでを説明する為のシーンだが、自然で良い。だが、直子と智広が散歩するシーンが全体にやや冗長。広場で男4人がサッカーボールをけり合うシーンは、もうヒトヒネリしないとなんのこっちゃになってしまう。

下




監督・脚本:深田晃司|2013年|38分|
撮影 根岸憲一
出演:智広(松田洋昌)|直子(倉田あみ)|伊藤優衣|井上みなみ|望月皇希|康光岐|鈴木Q太郎|西田幸治|哲夫|桂三輝|ほんこん|

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映画 「安珍と清姫」 若尾文子,市川雷蔵  監督:島耕二

上

 安珍・清姫伝説をもとにした、大人の日本昔話といった内容の映画。
 自由奔放なな姫、若尾文子(清姫)と、まじめ一徹な僧侶、市川雷蔵(安珍)、このふたりの魅力につきる映画です。
 1960年の映画ですが、今でも十分に鑑賞に堪えます。
 話はとても古く、平安時代から伝承され、紀州(和歌山県日高郡)道成寺という寺に伝わる話です。

1-0_20170226142424cf0.png おてんばで勝ち気な清姫が狩猟の途中、姫が射た矢が流れ矢となって安珍の腕に当たってしまいます。これがふたりの運命の出会いでありました。
 安珍と連れの僧は、奥州白河より熊野に参詣に来た旅の僧であり、修行中の身でした。
 だから信心一途の安珍は、僧の戒律を守るため、傷の手当をしようと近づく清姫を避けます。清姫を美しいと思うが故に、なおさら避けます。そして安珍は己の煩悩と戦うこととなります。

 かたや清姫は、自身の過失を詫びつつも、自分を避ける、無視しようとする安珍に腹が立ちます。そのうえ、清姫は里の荘官(庄司)の美しい娘、プライドを傷つけられた思い。だから清姫はなんとか、安珍の僧の仮面をはがして、安珍の気を無理にでも自分へ引き付けたい。
 実はそれは安珍への恋だったのですが、清姫は自分のうぬぼれの方が勝り、恋とは気付きませんでした。
 ある夜、安珍が傷を癒やすため、里のいで湯にひとり入っていると、そこへ清姫が現れ、一糸まとわず湯に入ってきます。何やら妖しい色気さえ漂う姫は、安珍を誘います。そうして勝ち気な清姫は、安珍の心が自分に向いていることを安珍に白状させ、あたかも勝ったがごとく高らかに笑うのでした。

 しかしそののち、清姫は安珍への愛に気付きます。清姫は、煩悩に苦しみながら里を去り道成寺へ向かう安珍を追います。
 道成寺への途中、安珍は滝に入っての修行(滝行)のため、仮小屋に滞在します。そこへ清姫が追い付きました。
 そしてふたりは、ついに結ばれます。しかし悲しいかな、このふたりの愛は何処まで行っても悲恋なのです。僧の戒律を破った安珍は、煩悩の苦しみに加えて、自戒の念に苛まれていきます。

 安珍は姫から逃げるように道成寺へひた走ります。そして、彼を追う清姫は、とうとう川に身を投げてしまうのでした。
 その夜、道成寺の境内に異変が起きます。雷鳴と嵐のなか、大蛇に化身した清姫が・・・。

 余計なことですが、仮小屋でのシーンは、なかなか色っぽいです。ご注目。
 本作を観て思い出すのが、2016年の映画「仁光の受難」。これ、安珍・清姫伝説を下敷きにしています。ですが清姫ではなく、村の女達や山女。やたらモテる修行僧の女難の話、喜劇です。
 本作 「安珍と清姫」と同じく、平安時代の話として、女狐の化身との愛の話、内田吐夢の「恋や恋なすな恋」は、大川橋蔵と瑳峨三智子の競演。これもファンタジー作品です。
 若尾文子つながりで言うと、「初春狸御殿」。これはミュージカル。本作 「安珍と清姫」と同じく、若尾文子と市川雷蔵の競演。  
 ちなみに、本木雅弘主演の修行僧の映画「ファンシイダンス」は、僧自ら禁を破りまくるお話でした。
 以上、文中の下線部をクリックして、当該4作の過去記事をお読みください。

英語タイトル:The Priest and the Beauty
監督:島耕二|1960年|85分|
脚本:小国英雄|撮影:小原譲治|
出演:安珍(市川雷蔵)|清姫(若尾文子)|清姫の父で里の荘官・清継(見明凡太朗)|清姫と結婚したい里の長者・友綱(片山明彦)|連れの僧・道覚(小堀阿吉雄)|桜姫(浦路洋子)|早苗(毛利郁子)|増全(荒木忍)|義円(南部彰三)|佐助(花布辰男)|渚(毛利菊枝)|ほか

下


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映画 「どっこい生きてる」   監督:今井正

上
 早朝、日雇いの仕事を求めて、木造の臨時職安前に押し寄せる人々 (これは実写だろう)


0 非戦闘員を無差別に殺傷した東京大空襲から6年経った1951年、占領下の東京の街中の様子とは、どうだったのか、を知る映画。
 観たいと思う方は多くないと思われる映画だが、機会があれば観ておくことをお勧めします。

 進駐軍こそ映画に出てこないが、空爆で破壊されたビルの残骸や、焼け跡のもろもろの瓦礫がまだ街のあちこちにあるのです。
 その瓦礫の撤去や河川改修の作業(日雇い仕事)を職安が提供している。
 多くの人々に職がないのだ。職安が斡旋を開始する早朝、人々は急ごしらえの木造の臨時職安前に、押し合いへし合い、ひしめく。
 多くの人々に金がない。その日、家族が食うものが買えないのだ。
 しかし日雇いで得た金は僅か、数日の食費も賄えない。
 運よく、なんとか勤め先が見つかっても、給料日までを食いつなぐ生活費がないために、その職を諦めざるをえない、そしてまた日雇い生活に戻ってしまう悪循環。(前借りはできない)

 主人公の毛利(河原崎長十郎)は妻と二人の子を抱えている。毛利は毎朝職安に出かけるが、日雇いの職にありつけないこともある。
 家族はみな、着の身着のままだ。粗末な掘っ建て小屋の貸家に住んでいるが、家賃が滞っている。さらには、家主が土地を売ったために立ち退きを余儀なくされる。
 毛利は妻子を、東北にある妻の実家へ帰した。定職に就けて金が出来たら、東京に呼び戻す予定だった。

 うな垂れる毛利は簡易宿泊所にころがりこんだ。日雇いで知り合った顔があちこちに見受けられた。(宿泊所は大部屋雑魚寝)
 日雇い仲間で毛利と気の合う水野(木村功)は、毛利より若いが明るくしっかり者。水野は、その外観が、小学校の二階建て木造校舎のような戦災者共同住宅に住んでいる。(炊事洗濯便所は共同) 一家一間の部屋に、じいさんと妻子ほか、なんと計7人が住んでいる。
 毎朝、職安に出かけては、日雇いをする日々が続く。

 そのうち毛利は旋盤の職を見つけたが、給料日まで食っていく金が、手元に無いがために、悶々としていた。
 それを聞いた水野の計らいで、共同住宅の住人の秋山婆さん(飯田蝶子)が動いた。共同住宅の住人に毛利のために募金を訴え、毛利が食いつなげる金が集まった。

 だが、その夜、簡易宿泊所内で毛利はその金を盗まれる。
 翌朝、旋盤の工場に初出勤したが、工場主から、受注予定の仕事がキャンセルになったので、雇えないと言われる。(実は、工場主の妻が毛利の貧しい風采を見て信頼がおけない怪しい輩と判断したのだった)
 行き詰った毛利は、簡易宿泊所の男に誘われ盗みを働く。警官に追われ逃げる毛利は、ふと気づくと、追い出された家の前にいた。そして、毛利の姿を見かけた大家は言った。上野警察から呼び出しがかかっているよと。

 毛利は観念して出頭したが、話の要件は毛利の妻子の引取りであった。無賃乗車で上野に帰って来たのだ。
 田舎の実家では、六畳に何人もが寝起きする状態だったらしい。田舎とて包容力がなくなっていた。

 上野駅近くで、毛利一家は途方に暮れる。もう、一家心中しかない。
 その前に、子たちに楽しい思いをさせようと遊園地へ。
 だが、ちょっと目を離した隙に息子が池に落ち溺れる。毛利は池に飛び込み息子を救った。
 そして夫婦は思った。生きよう。
 
下監督:今井正|1951年|102分|
脚本 岩佐氏寿 、 平田兼三 、 今井正|撮影 宮島義勇中尾駿一郎、植松永吉|
出演:毛利修三(河原崎長十郎)|妻さと(河原崎しづ江)|子供雄一(河原崎労作)|子供民代(町田よし子)|簡易宿泊所に住む男・花村(中村翫右衛門)|水野(木村功)|水野の妻(岸旗江)|水野の父(市川笑太郎)|水野の妹(今村いづみ)|水野良(寺田勝之)|水野健(寺田健)|秋山婆さん(飯田蝶子)|藤木(四代目中村梅之助)|班長野田(中村公三郎)|現場の男(坂東秀弥)|吉田製作所主(瀬川菊之丞)|妻きみ(川路夏子)|大家山川(河原崎国太郎)|トラックの男(花沢徳衛)|簡易宿泊所亭主(松本染升)|



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映画 「パルコフィクション」   監督:矢口史靖、鈴木卓爾

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 矢口史靖監督の「裸足のピクニック」(1993)、「ひみつの花園」(1997)、「アドレナリンドライブ」(1999)を、面白い映画として観て来た者にとって 、本作「パルコフィクション」(2002)は、前三作の延長線上にある映画として観れる。
 奇天烈な展開、作り手のひねくれた遊び心が嬉しい喜劇映画。(文中の下線部をクリックすると、その映画記事が読めます)

 でも矢口映画ヒット作「ウォーターボーイズ」(2001)を気に入った人は 「パルコフィクション」を多分、受け入れないだろう。作風が違う。

 これは監督の二面性とも言えるが、しかし残念ながら、「ウォーターボーイズ」は、その後の「スウィングガールズ」 (2004)や「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常」(2014)と同様に、凡庸な映画。
 認められて、予算がつく映画製作を任されるようになり、監督として箔がついたのでしょうが・・・、惜しいです。
 ただし「ロボジー」 (2012)はいい映画。「ハッピーフライト」 (2008)はなんとか観れる。

 本作 「パルコフィクション」は、あのパルコを舞台に6話の構成になっている。
 「パルコ誕生」、「入社試験」、「バーゲン」を矢口史靖が監督・脚本を担当し、「はるこ」、「見上げてごらん」、「ポップコーンサンバ」を鈴木卓爾が監督・脚本を担当している。どれも面白い。
 第三話「バーゲン」は、行定勲監督の映画「きょうのできごと」を思い出す。

監督・脚本:矢口史靖、鈴木卓爾 |2002年|65分|
発案:安田裕子|撮影監督:白尾一博|
出演:パルコ役員(田中要次)|老人(相馬剛三)|鈴木徹(小島大輝)|徹の父(寺十吾)|徹の担任教師(椎名令恵)|老人の息子(森下能幸)|コンビニ店員(山中聡)|医師(伊藤智之)|看護婦(元木千早)|花子(真野きりな)|東大男(近藤公園)|面接官(福田勝洋)|新入社員(大高敏宏)|新入社員(古澤弘年)|新入社員(出雲勝麿)|新入社員(小松玲子)|新入社員(池崎真理)|木下イズミ(村上東奈)|ムラチュー(高橋健太)|木下はるこ(進藤幸)|屋上の作業員(田邊年秋)|バーはるこの客(佐藤佐吉)|5歳のはるこ(森田季砂)|斧(鈴木卓爾)|極悪トリオ・甲(宇野孝信)|極悪トリオ・乙(山口大輔)|極悪トリオ・丙(野田幸祐)|バーはるこの子ママ (松村奈緒)|イズミの母(吉野晶)|パルコの店員(唯野未歩子)|パルコの店員(中村靖日)|パルコの店員(紫とも)|パルコのCM(真野きりな)|パルコのCM(近藤公園)|原井鈴子(猫田直)|塩野谷恵子(塩野谷恵子)|店長(紫とも)|パルコの客(坂井三恵)|店員(稲田千花)|警備員(荒川良々)|山谷美都子(唯野未歩子)|大須観三(荒川良々)|荒間素敵子 (田村たがめ)|司(徳井優)|セラピス( 緒方明)|渡部(松永大司)|ジコディ(ジェニファー・ホルメス)|美都子の少女時代(松村奈緒)|美都子の同僚(吉野晶)|

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映画 「ディストラクション・ベイビーズ」   監督:真利子哲也

上

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 世間から、「はみ出た」者たちへの哀歌。そして、覚醒し始めるモンスターの物語。あるいは、痛そうな映画。
 
 ある日、何の前触れもなく、やがて駆出し、そして、その一瞬、暴発する怒り。仕掛けるケンカとその痛みと血の味は、覚醒し始める暗黒の悪の予感と快感を誘い、男はなかば陶酔の中。

 愛媛県の松山から、さほど遠くない小さな漁村で、その男、泰良(柳楽優弥)は養父(でんでん)のもとに育った。
 高校生の泰良はいつもケンカ沙汰。ある日、ふいっとふらり無一文で松山の街に出る。あては何もない。
 泰良は行き当たりばったりに、通りすがりの男や街のヤクザ相手に、ケンカをいきなり仕掛ける。打ちのめされるが、再度は勝つ。この繰り返しで泰良は徐々に、そして確信的に、バイオレンスの奥にある甘い味に目覚め、心の闇の中で陶酔していく。

 泰良に出会った裕也(菅田将暉)は、臆病な男だったが、泰良の腕力を利用し、泰良を従え、通行人に乱暴を働きながら、松山の街を我が物顔で歩き出す。裕也の心の奥に潜んでいた、こんな悪の衝動が路上に転がり出たのだ。
 そんな裕也を、いささか小馬鹿にした目で見る泰良。泰良は裕也に従っているとは、まったく思ってない。

 裕也が強奪したベンツに、偶然、キャバクラ嬢の那奈(小松菜奈)がいた。
 那奈は身柄を拘束されながら、裕也と泰良の3人は、このベンツで深夜の松山市街を離れた。
 翌日、山の中の道で、泰良は車を降りる。しばらくして戻って来た泰良の服に血が着いている。どこかでまた、乱暴したらしい。泰良を追って来た男が、泰良に叩きのめされ路面に倒れた。 

 それまでトランクに入れられていた那奈が運転をさせられる。と、走りだそうとするその時、車は何かに乗り上げる。倒れていた男だった。裕也は那奈にその男をトランクに入れさせる。
 あっ、那奈は慌てた。その男が意識を取り戻したのだ。那奈はなぜか反射的に、男の首を渾身の力で絞めた。それを見た泰良と裕也は、少しの驚きを感じながらも、ニヤリとするのだった。

 警察に追われていた泰良が、祭りの夜、松山に現れた。泰良の人相はがらりと変わっていたのだった。

 全体的に、セリフの聞きやすさを嫌い、わざと低めの音量になっている。とりわけ泰良のセリフの数は僅か。その中で立ち上がってくる「異様さ」を表現するのが、泰良・役の柳楽優弥の仕事。だが、その顔に幼さが残るせいか迫力に欠ける感じ。高校生という設定だからか? 少し残念。(もっとも、映画によくある安っぽいヤサグレ男ではないが。)
 バイオレンス・モンスターで思い出すのが、2014年の韓国映画「その怪物」だが、この映画は優男で迫力がなかった。 (下線部をクリックして「その怪物」の記事をご覧ください)

1-5_20170202101351566.jpg【 真利子哲也監督の映画 】
これまでに記事にした作品です。
以下のタイトル名をクリックしてお読みください。
イエローキッド」 2009、「NINIFUNI」 2011、
同じ星の下、それぞれの夜  FUN FAIR」 2012
【 柳楽優弥出演の映画 】
誰も知らない」 2004  監督:是枝裕和 お薦め

監督:真利子哲也|2016年|108分|
脚本:真利子哲也、喜安浩平|撮影:佐々木靖之|
出演:柳楽優弥(芦原泰良)|菅田将暉(北原裕也)|小松菜奈(那奈)|村上虹郎(芦原将太)|池松壮亮(三浦慎吾)|北村匠海(健児)|三浦誠己(河野淳平)|でんでん(近藤和雄)|ほか

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映画 「変魚路」   監督:高嶺剛

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ミサイラーと、白髪の山の神と、イフェ―パタイジョーのオブジェ(守り神?)


 唐の世が大和の世になって、大和の世がアメリカ世に、アメリカ世が大和の世に・・・
 という歌が、三線一本で歌われて映画が始まります。

 高嶺剛監督の映画は、これまでに、「パラダイスビュー」(1985)と「ウンタマギルー」(1989)を取りあげてきました。(下線部をクリックして過去記事をお読みください)
 どちらの映画も、沖縄の地と文化にしっかりと根差す映画で、沖縄のいにしえをモチーフに取り入れ、かつウチナーグチのセリフでした。
 この「変魚路」も、その路線は変わりありません。しかし、お話の様相は変わった風に思えます。
 ひとつは、現在未来よりも、しきりに過去を振り返るようなシーンがあります。それは、沖縄の良きいにしえを今も継承すると言う風じゃなく、主人公たちの少年時代の古い写真(敗戦直後の頃か)が何度も映し出されます。回顧の念でしょうか。
 もうひとつは、登場人物の多くが年配者たち(出演者たちが老いました)で、若い人の愛といったことは出てきません。
 一方、そうした事と釣り合いを取ろうとするかのように、映画表現は過激になっています。
 沖縄芝居(大衆演劇)や沖縄の民話のイメージを背景にしながらも、突拍子もない調子はずれなシーンが前後の脈略なく現れ、かつ、それらをコラージュした表現が多く出てきます。もちろん可笑しなユルいシーンもあります。


3_201701311231263fc.jpg 監督(1948- )が老いたのでしょうか? 総じて映画の角が丸くなりました。怒りが遠のいた。もっとはっきり言えば、何やら、世に対する「あきらめ」とでもいうようなものが感じ取れます。
 映画表現はハチャメチャではありますが、穏やかなお話でした。
 「パラダイスビュー」や「ウンタマギルー」が良かったと思う方は、「変魚路」を難解な映画と思わず観てください。


監督・脚本:高嶺剛|2016年|82分|
撮影:高木駿一、平田守|
音楽:坂田明|ヨハン・バットリング|ポール・ニルセン・ラブ|大城美佐子|大工哲弘|嘉手苅林昌|CONDITION GREEN|北村三郎|
出演:平良進(タルガニ)|北村三郎(パパジョー)|大城美佐子(カメ)|川満勝弘(ミサイラー)|ほか


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映画 「さくらん」   監督:蜷川実花  脚本:タナダユキ

上

 この映画は安野モヨコの漫画をもとにし、(だから基本、女性向けで)、そして、やたら極彩色な写真家・蜷川実花と、「モル」「百万円と苦虫女」の映画監督・脚本家のタナダユキと、椎名林檎との、3人による共作の映画。
 江戸時代や時代劇や遊郭モノが好きな人は敬遠するかもしれないけれど、たまにはこういう映画もそれなりに悪くない。

1-0_201701251405554b3.jpg これでもかという濃厚な色使いで埋め尽くされる映像は、結果、その色彩に酔う感覚で心地良く思う人や、外国人を狙っているんだろう。
 でも映像を観てると、室内インテリアや着物が、残念ながら安っぽい。いま出来上がりました的で、衣装や大道具に、まだ味(色味)がしみ込んでない感じがする。色に深みが無く、なぜか色紙を思い浮かべてしまう。
 色彩じゃない方の「色」は、女優3人の白い背中を拝めるくらい。そもそも、この映画に粘っこい男性目線はない。

 男性と言えば、店の使用人・倉之助(椎名桔平)。倉之助は、吉原遊廓の遊女で主人公の日暮(土屋アンナ)の相手役。
 この倉之助はイケメンで、イケメンの役どころだからこその、いつもの宿命で、なにやら「場」から浮いているのが可笑しい。
 でも、だからこそ、遊郭の中庭にいる倉之助は、店の2階にいる日暮と、「ロミオとジュリエット」ができるし、ラストでは満開の桜の中を、ふたりして走れるのである。こういうところが、倉之助が映える活躍の場なのだ。

 さて主役の土屋アンナは女優として「見せる」が、あの一本調子の演技は変わらない。
 あとふたりの花魁、高尾(木村佳乃)、粧ひ(菅野美穂)も、極彩色に埋もれて、演技はかすれ気味。
 ま、しかし、時代劇に挑戦するのは良い。

 この映画を作った人は、製作にあたって参考に、川島雄三の映画 「幕末太陽傳」を観てるだろう。
 また、遊郭を扱った破天荒なインディーズ映画、林海象の「音曲の乱」は、もし予算がたっぷりあったなら、「さくらん」に近い極彩色を得たかもしれない。
 男性目線が多い中、周防正行の映画「舞妓はレディ」は、遊郭じゃなく祇園だが、かわいい舞妓目線の映画だった。
 (上記文中、下線部は当該映画の記事へのリンクです。クリックして、当ブログの記事をお読みください)
 

監督:蜷川実花|2007年|111分|
原作:安野モヨコ|脚本:タナダユキ|撮影:石坂拓郎|音楽:椎名林檎|
出演:きよ葉/日暮(土屋アンナ)|倉之助(椎名桔平)|惣次郎(成宮寛貴)|高尾(木村佳乃)|粧ひ(菅野美穂)|光信(永瀬正敏)|若菊(美波)|大工(山本浩司)|坂口(遠藤憲一)|幼いきよ葉(小池彩夢)|しげじ(山口愛)|お蘭(小泉今日子)|楼主(石橋蓮司)|女将(夏木マリ)|ご隠居(四代目市川左團次)|清次(安藤政信)|桃花(蜷川みほ)|花屋(小栗旬)|

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映画 「さらば愛しき大地」   監督:柳町光男

上

 映画の舞台は茨城県鹿嶋市、海と霞ヶ浦に挟まれた平たい地域。
 そこは田んぼが一面に広がる田園風景、そして疎らに点在する農家。
1-0_20170123155834c4f.jpg その一軒が主人公、幸雄(根津甚八)の家だ。幸雄は代々農家のこの家の長男。

 映画は、男女の愛と、衰退していく農業になすすべもない農家の、悲哀を描きながらも、その地に根ざす風土へのこみ上げる郷愁を伝えようとしている。

 幸雄の家は、米作と僅かな養豚じゃ今や食えなくて、(それは、老いた両親と嫁・文江(山口美也子)に任せ)、幸雄自身はダンプトラックを買って、生コン用川砂のピストン運搬を請け負っている。現金収入が入る。この家は俺が支えていると、幸雄は殿様気分。家族を見下して、いい気分。文江との関係は、もとより良くない。

 だが、幸雄はすぐカッとなる、つまらぬことで酒で荒れる。自尊心が強い一方、劣等感が強い。
 特に弟に対してだ。子供のころから頭が良く、品行方正な弟の明彦(矢吹二朗)には、いまも母親から多くの愛情が注がれている。その明彦は、独身で東京で働き東京に住んでいる。

 ある日、幸雄と文江の息子二人が、不幸にも、近所の水辺で遊んでいて水死してしまう。
 さすがの幸雄も、身重の文江も両親も、嘆いても嘆ききれない毎日であった。
 このことは幸雄、文江を精神的に不安定にさせ、二人の関係は疎遠の一途をたどる。

 母と二人暮らしの順子(秋吉久美子)。その母親が若い男と駆け落ちした。順子が知る限り、母親の駆け落ちはこれで3回目。
2-0_20170123160222583.png ひとり残された順子を、通りかかった幸雄がトラックに乗せたことが発端で、幸雄は順子と住む家を借り、嫁・文江と順子との、二重生活が始まる。
 互いの悲しみを舐めあう関係であった。
 それは、川砂運搬がそれなりに高収入だったから成り立った。とは言え、幸雄は文江のいる実家に帰ろうとはしなかった。

 やがて順子との間にも子供が出来、そこだけ見れば、幸せな一家に見えた。実家では、文江は第三子を出産し、幸雄の両親と農作業に相変らず追われていた。
 そこへ、東京にいた明彦が実家に帰って来た。明彦も川砂の運搬業を始め、瞬く間まに小さな事務所を構え事務員も置くに至る。

 そのうち、幸雄は覚醒剤に手を出すようになった。
 幸雄は川砂運搬の発注元の生コン会社の部長とうまくやって、仕事を多く回してもらっていたが、先方からは幸雄に運搬の手配管理も任されるようになるが、幸雄にそういう才はなく、また組織的な行動や指示に馴染めなかった。
 明彦と比べて幸雄は、という劣等感がまた頭をもたげる。荒れ始める。順子にもつらく当たるようになる。幸雄はひとり捨て鉢になり、自暴自棄、自滅への道を歩み出す。
 一方、明彦は結婚が決まった。相手は事務所の女の子だ。

 ついに、幸雄は包丁で順子を刺し殺す。覚醒剤による幻覚が順子の命を奪った。
 映画のラスト。実家の庭先では、明彦夫婦、文江とその子、両親が、ワイワイやっている。子ブタが集団で豚舎から脱走したのだ。
 そこには、やりきれないほどに繰り返しの何ごともない日々と、一時の幸せ、そして覚醒剤と殺人が、大した違和感なく同居している妙な風景であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 地元社会を浮遊する幸雄と順子に対し、対称的な位置づけで描かれる家族や友人など地元に根付く人々。彼らはいわば古い慣習伝統に生きる人々だ。しかし、そんな彼らの中にも、生きにくい地元に(ささやかだが)あらがう者もいた。
 映画は幸雄と順子を主人公にするが、ふたりを取り巻く人々の生きざまも見つめたい。なぜなら、この映画は取り巻く人々あっての物語なのだ。 
 作品としては、幸雄の妻役の山口美也子、幸雄の母親役・日高澄子、父親役・奥村公延および幸雄の同僚役・蟹江敬三たちの、しっかりした脇役が素晴らしく、彼らによる勝利とみるべきだ。

3-0_20170123162335d49.png監督・脚本:柳町光男|1982年|130分|
撮影:田村正毅
出演:山沢幸雄(根津甚八)|順子(秋吉久美子)|幸雄の弟・山沢明彦(矢吹二朗)|幸雄の正妻・山沢文江(山口美也子)|幸雄の母・山沢イネ(日高澄子)|幸雄の父・山沢幸一郎(奥村公延)|幸雄の同僚・大尽(蟹江敬三)|その妻・フミ子(中島葵)|順子の母(佐々木すみ江)|実家に呼んだ霊媒師(白川和子)|ほか

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<さ行> の邦画  これまでに記事にした映画から。 2017.1.5 現在

 これまでに記事にした邦画から、<さ行> の映画を並べてみました。

 下の画像をクリックして、その映画記事をご覧ください。
 五十音順に並べています。
 
 <さ行>以外の邦画は、こちらからどうぞ。 (邦画の五十音順リストです)
1サーカス五人組 2サイドカーに犬 3サウダーヂ 4さゞなみ 2 5殺人狂時代3 6サマータイムマシン・ブルース 7鮫肌男と桃尻女 8さよなら歌舞伎町 9残菊物語 10 33号車応答なし 11ジ、エクストリーム、スキヤキ 12しあわせのかおり 13幸福のスイッチ 14潮騒 4 15四季・ユートピアノ 16事件記者 17事件記者 18地獄 19時代屋の女房 20下町の太陽 21しとやかな獣 22死の十字路3 23芝居道 24下妻物語 25十九歳の地図 26集金旅行 27十字路 28渋滞 29縮図 30修羅雪姫 31修羅雪姫 怨み恋歌 32純愛物語 33少年 34少年探偵団~第一部 妖怪博士 35女経 36ジョゼと虎と魚たち 37白河夜船 38白い息/ファの豆腐 39新・夫婦善哉 40深呼吸の必要 41心中天網島 42新宿泥棒日記 43洲崎パラダイス 赤信号 44スチャラカ社員 45スリー☆ポイント 46精神 47贅沢な骨 48世界はときどき美しい2 49セクシー地帯2 50絶唱 51洗濯機は俺にまかせろ 52その夜の侍 53空の穴 54ソレイユのこどもたち

映画 「幕末太陽傳」   監督:川島雄三

上2






1-0_20161229142257ca7.jpg








 佐平次 (フランキー堺)は仲間と連れだって、女郎屋で飲めや歌えの豪勢な遊びをするが、実は無一文。
 勘定を払えず、女郎屋の納戸(布団部屋)に留め置かれる。「居残り佐平次」のお話は、ここから始まるのです。

 女郎屋があるこの町は、東海道五十三次の第一番目の宿場町、品川宿。
 品川宿の町並みは海沿いに連なっていて潮の香りがするところ。女郎屋の部屋からは、広い海が見渡せて絶景地。東京湾の波がひたひたと岸辺を洗う。女郎屋の裏は、もう舟着き場だ。
 実は佐平次、結核にかかっていて、良くない咳をする。医者から転地療養を勧められていた。風光明媚な品川宿は、転地療養には最適の地。つまり、佐平次の居残りは、初めっから確信犯だった。

 さて佐平次、払えぬ勘定を女郎屋で働いて返そうとする。
 店の使用人たちに分け入って、使用人たちより上手に客あしらい。客からのチップをかすめ取る。
 また、客とのもめごとで女郎が困っていると、間に入って、太鼓持ち(男芸者)よろしく、なだめすかして問題解決。女郎から、ハイお駄賃。番頭よりも機転がきく佐平次は、そのうち、店のあるじから重宝がられるようになる。世渡り上手。

 これに加え、指名ナンバーワンを競い合う、女郎・こはる(南田洋子)と、おそめ(左幸子)のドタバタを映画は描きます。
 一方、「曾根崎心中」があるなら「品川心中」も、なんて洒落を女郎たちに言ってた、貸本屋金造(小沢昭一)が、憧れのおそめと舟着き場から飛び込んで・・・なんてエピソードも交え、あれやこれやの女郎屋を映画は面白おかしく描きます。そうそうそれから、こはるとおそめは、頼りになる男・佐平次を巡っても競い合います。

 ところで、そんな日々が過ぎて行くなか、佐平次と共鳴し合う男が二人現れます。
 その一人は、高杉晋作(石原裕次郎)でした。
 高杉も居残りだ。志士たちと一緒に遊んだ代金60両が払えない。
 高杉はこれまでに海の向こう上海を経験している。当時にしちゃ広い視野の持ち主だ。また、密かに江戸小唄(流行歌)の作家でもあった。硬軟を持ち合わせている男。
 一方、佐平次は、横浜でどうやって手に入れたのか、結核に効く蘭方(舶来の医術)の新薬を飲んでいる。佐平次は器用な男だがとりわけ、高杉が持つ舶来懐中時計を修理できる。この時、高杉は佐平次にシンパシーを感じたのです。そして佐平次も同様でした。
 のちに、高杉を見送る佐平次は、別れ際に高杉に言い放った。「サムライにしておくには、もったいない男だ!」 

 もう一人、佐平次と共鳴し合う男は、女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)だ。
 ある日、徳三郎は吉原遊郭の附馬を連れて家に帰ってくる。(附馬とは、勘定の不足を回収するため、遊客と一緒に家までついて行く遊郭の使用人)
 あるじからしてみれば愚息!の徳三郎だが、そんな徳三郎は自分の店で粋に立ち働く居残り佐平次に、共感を覚える。佐平次のやつ、ああして真面目にみえるが、実は俺と同じ、やさぐれだ。
 やがて佐平次と徳三郎は、店の使用人たちに交じって、賭け事に興じる仲になる。一方、佐平次は、徳三郎のなかに、徳三郎にゃ不似合いな、正義の心を発見しシンパシーを感じるのです。この二人には、無頼という同じ血が流れている。(徳三郎の正義感って何さ?、は観てのお楽しみ)

 やがて高杉は、大志を抱いて志士たちと共に女郎屋を去る。徳三郎は、幼なじみの女中おひさ(芦川いづみ)と駆け落ちを決め、女郎屋を去って行く。
 佐平次はというと、勘定の返済はもうとうに済ませていて、今や居残りでは無くなっていた。さりとて、このまま皆と一緒にこの女郎屋で働く気もない。
 何かぽつんと取り残されたような格好だった。結局、高杉や徳三郎らを見送った佐平次も、女郎屋を去るのであった。

 佐平次に、これという大志は無い。だが、高杉に出会い、大志を抱く者を身近にした佐平次は、大志を持てる器のある人間を密かに羨望する。佐平次のその気持ちの裏返しが、「サムライにしとくにゃ、もったいない男だ!」というセリフに出た。 
 利に聡く新しもの好きな佐平次は、でも所詮、やさぐれな男。
 そして、その場その場はチョコチョコ器用に立ち回れるが、自分の道、俺の人生を見い出せないでいる。おまけに結核、先は長くないかもしれぬ。
 頃は、明治まであと6年の幕末。世はおおいに揺らぎ始め、不安な日々は足早に過ぎて行く。
 はたして佐平次は、その後、明治の世を見たのだろうか。

 川島雄三監督の映画 「貸間あり」の主人公・与田五郎(フランキー堺)も佐平次と同類の男だった。(「貸間あり」の記事はこちらからお読みください)
 
監督:川島雄三|日活|1957年|110分|
脚本:山内久、川島雄三、今村昌平|撮影:高村倉太郎|
出演:居残り佐平次(フランキー堺)|高杉晋作(石原裕次郎)|女郎おそめ(左幸子)|女郎こはる(南田洋子)|貸本屋金造(小沢昭一)|女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)|女郎屋の女中おひさ(芦川いづみ)|やり手おくま(菅井きん)|女郎屋の主人・伝兵衛(金子信雄)|その女房お辰(山岡久乃)|番頭善八(織田政雄)|生粋の品川っ子・若衆喜助(岡田眞澄)|女郎屋の客・千葉の杢兵衛大尽(市村俊幸)|女郎屋の客・仏壇屋倉造(殿山泰司)|その息子で店で鉢合わす清七(加藤博司)|佐平次の連れ・気病みの新公(西村晃)|佐平次の連れ・呑込みの金坊(熊倉一雄)|ガエン者権太(井上昭文)|ガエン者玄十(榎木兵衛)|久坂玄瑞(小林旭)|志道聞多(二谷英明)|伊藤春輔(関弘美)|ほか多数
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【川島雄三監督の映画】
 これまでに記事にした映画から。
 それぞれ、題名をクリックしてお読みください。

 「貸間あり」、「洲崎パラダイス 赤信号」、
 「しとやかな獣」、「雁の寺」、「特急にっぽん




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映画 「あの手この手」 (1952)   監督:市川崑

上

 40代半ばの共働き中年夫婦と、この夫婦の家にある日飛び込んできたアコちゃん(久我美子、当時21歳)との、スッタモンダの喜劇映画。

0_20161213175730423.jpg 家のあるじ・鳥羽(森雅之)は大学勤めの平凡な先生だが、小説を書いている。もちろん名のある作家ではないが、文芸雑誌に連載ものを載せている。おっとりした大人しい性格。 
 それに対して、鳥羽の妻・近子(水戸光子)は、しゃきしゃきしたキャリアウーマン。彼女も先生をしているが、もっぱらそれ以外の仕事で、いつも忙しい。近子は、朝日新聞・大阪本社の文化部顧問をしていて、身の上相談では世間に名が通っている。日に何通か、相談の手紙が自宅にも来る。そのほか、婦人同盟の役員や、家庭裁判所の調停委員もしている行動派。
 夫婦はディンクスで、子はいない。鳥羽は、いつの頃からか、近子を「奥さん」と呼ぶようになった。(たぶん戦後からだろう) 夫婦の力関係は、誰が見ても近子の方が上。

 ある日突然、アコちゃんが、大阪郊外のこの家に飛び込んできた。アコは近子の姪で、伊勢志摩の実家を飛び出して来たのだ。
 母親を早くに亡くし、祖母に育てられたアコ。その祖母は、アコの父親(婿養子)に対し、とても専制的。だからか、アコは鳥羽の家に転がり込んですぐ、近子の尻に敷かれる鳥羽に同情し、と言うより、アコは鳥羽を応援するようになる。

 さてドラマは、鳥羽、近子、アコの三人に加えて、近所の開業医・野呂(伊藤雄之助)とその妻(望月優子)、そしてカメラマンの天平君(堀雄二)と、鳥羽家のお手伝いさんが加わり、話はややこしくなって行く。そして、なんとアコは密かに鳥羽に恋をする・・・。さらには近子が・・・。

 アコを演じる久我美子の演技が、オーバー気味でいささか漫画風。だが、昭和27年当時、子が出来ないんじゃなくディンクスで共稼ぎの夫婦はマレだっただろう。おまけに夫は大学教授で作家、妻は行動的な文化人。つまり、ほぼあり得ない夫婦と、現代的で向こう見ずなアコ、これでちょうど釣り合いが取れたドラマ設定だった。だから、喜劇になり得た。(本作公開の昭和27年は、GHQ廃止、進駐軍去る、日本に主権回復の年)

監督:市川崑|1952年|大映|92分|
原作:京都伸夫|脚色:和田夏十、市川崑|撮影:武田千吉郎|
出演:アコちゃん(久我美子)|鳥羽さん(森雅之)|近子夫人(水戸光子)|天平君(堀雄二)|お手伝いさん鈴江(津村悠子)|野呂ドクター(伊藤雄之助)|野呂夫人(望月優子)|アコの祖母(毛利菊枝)|アコの父(南部彰三)|秋山(三上哲)|鳥羽が行きつけのバーのマダム星子(平井岐代子)|女代議士(大伴千春)|PPP編集長(近衛敏明)|評論家(荒木忍)|小説家(伊達三郎)|新聞社の文化部長(原聖四郎)|

【市川崑監督の映画】  これまでに記事にした作品です。タイトル名をクリックしてお読みください。

 「暁の追跡」(1950) 池部良、杉葉子、伊藤雄之助ほか
 「足にさわった女」(1952) 越路吹雪、池部良、ほか
 「億万長者」(1954) 久我美子、山田五十鈴、木村功、ほか
 「」(1957) 京マチ子、船越英二、山村聡、ほか
 「満員電車」(1957) 川口浩、笠智衆、杉村春子、ほか
 「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」(1959) 若尾文子、京マチ子、野添ひとみ、ほか
 「女経 (物を高く売りつける女)」(1960) 山本富士子、船越英二、野添ひとみ、ほか

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映画 「ハワイアン・ドリーム」   監督:川島透

上
ボコボコのキャデラックに乗る、山際(ジョニー大倉)、川添(時任三郎)

 いや~、大した映画じゃないんですが・・・。
 全編、ハワイ(ホノルル)ロケのせいか、出演者がのびのびしている。いや、観る方の気が、easygoingになってくる、そんな映画。
 挿入の音楽も、あれこれ懐かしく、気分を楽しくしてくれる。(曲目は下記) しかし、この選曲、どういうチョイスなんでしょう。

0 お話の方は、ハワイに不法入国している、川添(時任三郎)と、山際(ジョニー大倉)が巻き起こす事件。
 二人は、日系アメリカ人を装って、観光客にマリファナと偽って、変なもの(ウーロン茶の茶カス)を路上で売っている。

 山際の彼女は日系アメリカ人で、レイコ・ケイン(桃井かおり)といい、ラジオのディスクジョッキーと、バーを営んでいる。川添の彼女も日系女性で、カレン・サイトウ(タムリン・トミタ)といって、ニューヨークに行ってダンスで成功したい希望を抱いている。
 レイコ・ケインの店には、ショーキチ・島村(殿山泰司)やケンジ・大原(多々良純)が、いつもタムロしている。

 ある事が元で、ピアス警部に目をつけられた川添と山際は、警部に不法入国の弱みを握られ、モランという男の逮捕について、警察に協力せざるを得ない羽目になる。
 モランというイタリア系アメリカ人は、10年前にハワイに現れ、ハワイの裏社会で一大勢力を築いたボス。
 ピアス警部は何とかモランを逮捕したいが、これまで、警察にシッポをつかませない。そこで警部は、モランがシッポを出すように仕向けることを、川添と山際に協力要請した。

 だが、なにしろ相手は大ボスだし、アメリカの巨大タバコ会社の陰謀も絡んでいる。
 さて、川添と山際はどういう作戦でモランのシッポをつかもうとするのでしょうか・・・。
 カーアクションもあります。ラブシーンもあります。殿山泰司も可笑しいです。
 たまには、こんな映画も、どうでしょうか。

<挿入歌> 
夢の続き:竹内まりや(主題歌)|Do Wah Diddy Diddy|Do You Wanna Dance|Mr. Moonlight|Be My Baby|Super Board|Oh, Pretty Woman|Sukiyaki:坂本九|AMAPOLA:山下達郎|After Glow:カシオペア|MACHINE GUN HEART:PINK|Somebody To Love|DISCO KING:B&J's|Hawaii, I Love You|Girl's in Love With Me:芳野藤丸|(For You) I'd Chase A Rainbow:カラパナ|JULIETTE:カラパナ|Traumatic:竹中正義An Old Fashioned Love SongPipe Line|Just a Love Song:村田和人|それ以外の曲:加藤和彦|


監督・脚本:川島透|1987年|東宝|111分|
撮影 前田米造|音楽 加藤和彦 、 朝妻一郎|
出演:川添達彦(時任三郎)|山際翔史(ジョニー大倉)|レイコ・ケイン(桃井かおり)|カレン・サイトウ(タムリン・トミタ)|ショーキチ・島村(殿山泰司)|ケンジ・大原(多々良純)|ヒューバート・ロレンス(ディーン・ターナー)|ハリー・ゴールドマン(ジム・デマレスト)|ピアス警部(G・W・ベイリー)|ルディ・モラン(ビンセント・バケッタ)|


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日本映画 「ぼくらの亡命」  監督:内田伸輝  ~第17回東京フィルメックス上映作品   

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその12回目、やっと最終回です。
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「ぼくらの亡命」  日本|2016|116分|
 監督:内田伸輝 (UCHIDA Nobuteru)
1_20161201130649bad.jpg
 今年のフィルメックスに出品された2本の邦画は、なかなか力作、いい出来だ。(もう一本は、庭月野議啓 監督の「仁光の受難」。この記事はこちらから。)
 本作「ぼくらの亡命」も、観たあとに新鮮な印象が残る。公開してほしい。

 主人公の昇は、二十歳代だろうか、ホームレスのように見える。
 彼は数年に渡り、そんな生活を続けている。
 だが昇には、後見人がいる。そのころ昇は未成年だったのだろう、昇の親が死んだあと、叔父が後見人として彼について今に至っている。
 だから、生活最低限程度の金が昇の口座に振り込まれている。かつ、時々、叔父は昇を訪ねて、彼の近況を心配する。

0_20161201134407b36.jpg 昇は、郊外の林のなかで、ひとりテント生活をしている。人を寄せ付けない引きこもりの暮らし。叔父も追い払われる。
 食事はコンビニに頼り、持ち物と言えば、街に出るための古びた自転車と習字道具くらいだ。彼は紙に墨で、彼がよく思わない人間の名前などを書き散らし、それをテントに張り付けている。彼流の儀式のようだ。
 昇はチラシ入れのバイトも時々しているが、まったくやる気がない様子。雇い主がそんな彼を雇おうとするのも、雇い主が昇の親に恩義あってのことらしい。要するに、昇という男は、今もって大人になりえていない、甘やかされてきた子供だった。

 ある日、昇は樹冬という女に街で出会う。
 樹冬は売春をしている。昇は樹冬を好きになったのだろう、彼女をそういう境遇から救い出そうとした。
 まず昇は街頭の物陰から、樹冬と売春斡旋の男(美人局:つつもたせ)とを、隠れて観察する。そして、昇は客を装い、樹冬に近づく。(スーツを叔父から借りてだ)
 樹冬と話しすることが出来た昇は、美人局の男から逃げたい樹冬に、一案を提案する。昇が誘拐犯になり樹冬を誘拐する、身代金を美人局の男に要求する、こういう段取りだった。
 だが、その男はまるっきり、取り合わない、関心さえない様子。樹冬の替えになる女は、いくらでもいるのだ。
 この事態に樹冬は動揺する。結局、樹冬は男のマンションで男を刺してしまう。そのあと、昇がそのマンションに忍び込み、男の死を確認した。

 ふたりは逃亡する。東京を離れ、ロシア領の島へ渡るのだ。亡命だ。
 しかし、所詮、そんなことはおもちゃのような戯言。所持金が底をつく。昇は電話で叔父に、叫びながら金を要求するが、叔父は振り込まない、早く帰って来いと電話の向こうで言うだけであった。
 そして、売春斡旋の男の死亡記事が、いつまで経っても、新聞に出ない。樹冬は言う。ほんとに死んでたの?
 北海道にさえも行けないふたりは、千葉辺りの浜辺でテントを張っている。食物にも事欠く。樹冬は安いウィスキーをがぶ飲みする。昇は墨でなにやら書き始める。誰が見ても、ふたりの愛は、徐々に崩れていくようであった。

 そんな日が続くある日、樹冬は近くに住む一人住まいの男に出会い、その男は樹冬を自宅に招き優しくいたわった。柔らかいベッド、温かい朝食。この事態に樹冬は動揺するどころか、心は決まる。
 昇は去りゆく樹冬に向かって叫ぶ。「愛している、戻って来てくれ!」 そして・・・・。(ここら辺で止めときます)

 昇の、この叫びのセリフは、とても陳腐に見えるが、シーンでは、案外すんなりと受け入れられる。監督の力だろう。

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日本映画 「仁光の受難」  監督:庭月野議啓  ~第17回東京フィルメックス上映作品

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその第6回です。
 いい映画です!
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「仁光の受難」  Suffering of Ninko|日本|2016|70分|
 監督:庭月野議啓 (NIWATSUKINO Norihiro)
1_20161129095902256.jpg




0_20161129120903f77.jpg






 これは、いい映画。今年のフィルメックス上映作品中、1、2を争う いい出来の映画。
 とにかく面白いエンターテインメント作品で時代劇、かつ妖怪譚。

 江戸時代の話。ある寺に仁光(辻岡正人)という若い坊主がいた。
 仁光は、寺の坊主達の誰よりも熱心な見習うべき修行僧であった。
 しかし彼には坊主として、ある致命的な欠陥があった。

 この寺の坊主が幾人かの集団となって、近くの町へ托鉢に出かけると、なぜか毎回、町の女は、待ってましたとばかりに仁光を目指して群がってくるのだ。
 (托鉢:僧の修行の1つ。家々を巡り、家の門(かど)に立ち経文を唱え、持った鉢に米や金銭の施しを受ける。)
 群がってくる女は、若いのだけでなく、年配の女もいる。みな争って、仁光の衣の袖を引き、手を握り、頬を撫でる。もちろん、仁光は押し黙ったまま、女達を振り払い避けるのである。決して仁光が自ら誘うのではない。受難(女難)である。
 こんなことで、仁光の噂は遠くの村落まで拡がって行った。
 寺の住職は、仁光に托鉢禁止を言い付けたが、町の女たちは、托鉢に来た坊主たちに仁光が来ない不平不満をぶつけた。
 一方、ひとり境内の掃除をしていた仁光は、境内の林間に幻想を見る。全裸の若い女が仁光を誘うのだった。

 立派な修行僧の仁光とて、はやり男であった。ついに、淫らな妄想が止めどなく心に沸き起こりはじめる。
 ある日彼は、ひとり修行の旅に出た。東海道を西へ上った。そして滝に入って厳しい修行(滝行(たきぎょう))もした。だが、山奥の森で女たちの幻想を見てしまう。街道の町では女が寄ってくる。
 
 仁光はひとりの浪人に出会う。人斬りの快感が忘れられない男だった。ふたりには通底するものがあった。
 そしてふたりは、ある村の頼みで、村の男を誘い精気を吸う山女を、成敗することになるのだが・・・。

 ここら辺で止めておきます。この映画、ぜひ日本での公開を望みます。
 映画には、曼荼羅や広重の絵などを使ったアニメや、一部VFXも挿入され、表現を豊かにしています。これらは、みな監督自らの制作だそうです。
 この「仁光の受難」は自主製作ですが、庄内映画村でも撮影しています。(自主映画、初!)
 クラウドファンディングで資金を集めたそうで、製作費は総額ゼロ3つに至ったとのこと。


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映画 「あん」  主演:樹木希林  監督:河瀬直美

上

 なんとも、すなおな映画です。
 樹木希林(主人公:徳江さん)の演技を称える映画です。
 筋のその先を急いで追わず、映画が語る、ゆったりした語り口に身を委ねましょう。

1-0_2016111114105308c.jpg 商店街から外れた所にある、どら焼きの店が話の舞台です。
 馴染み客は近所の女子中学生達で、店内のカウンターは3人座れば満席の小さな店。
 どら焼き屋の千太郎(永瀬正敏)は無口な男で、中学生にからかわれても反応しない。
 
 あのどら焼き屋の男(千太郎)は、なんと悲しい目をしてるんだろう、店の前を通る度にそう思う女性がいました。
 その名は徳江(樹木希林)といい、70歳半ばでしょうか、あとで分かることですが、徳江はハンセン病患者専用の施設に住む女性です。
 まだ10代の若い頃にハンセン病を患い、それ以来その施設で隔離されて来た徳江は、とっくに完治した今もそこに住み続けています。他に住むべき所も身よりもないのでしょう。
 「あのどら焼き屋の男の目は、施設に入った頃の自分の目と同じだ」 徳江はそう思い、同時に、店に関心を持つに至ります。

 桜が満開のある日、徳江はだめもとで、店で雇ってくれないかと、どら焼き屋の千太郎に申し出ます。
 実は徳江はあんを作るのが得意です。これまで施設内で、試行錯誤を重ね楽しみながら、あんを手作りしてきたのです。施設の生活は、とにかく時間が有り余るほどあるのです。その味と風味は優れていて、もちろん周りの患者に好評です。しかし徳江は、施設外で働いたことが無かったのです。

 この徳江に、千太郎と、そしてどら焼き屋のオーナー(浅田美代子・・・悪役です)が加わり話は進みます。
 どうやら千太郎には過去に過ちがあって、店のオーナーの旦那に、大きな額の金を工面してもらっていた。刑務所を出所後、千太郎はオーナーのこの店で働き、毎月売上金を収め、かつ少しずつ借金を返していく生活でありました。もちろん独身です。

 徳江の作るあんに感心した千太郎は彼女を雇うことになるのですが、徳江がハンセン病患者だという噂を聞き付けたオーナーが千太郎に徳江を追い出せと言います。そしてほどなく、噂は街に流れ出し、徳江のあんで行列ができるほどになった店は閑古鳥が鳴くようになってしまいます。
 さらに話に加わって来るのは、店に来る常連の中学生・ワカナ(内田伽羅)。彼女は母子家庭の一人娘で母からの愛情が薄い子でした。さて、あとは映画を観てください。
 穏やかな語り口の映画ですが、ハンセン病に対する誤解偏見差別への怒りが込められています。これを機会にハンセン病についての基本は押さえておきましょう。
 残念なのは、ラストの締めが甘い。我慢しましょう。
 
監督:河瀬直美|2015年|113分|
原作:ドリアン助川|脚本:河瀬直美|撮影:穐山茂樹|
出演:徳江(樹木希林)|千太郎(永瀬正敏)|桂子(市原悦子)|ワカナ(内田伽羅)|ワカナの母(水野美紀)|ワカナの部活の先輩・陽平(太賀)|どら春のオーナー(浅田美代子)|オーナーが可愛がっている甥っ子・若人(兼松若人)|

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映画 「鶴八鶴次郎」 (1938年)  監督:成瀬巳喜男

上2








1-00_20161024093639965.jpg








 女優・山田五十鈴、当時、21歳を愛でる映画。(昭和13年)
 彼女の凛とした存在感が冴える。

 鶴八鶴次郎というコンビで売出し中の、鶴八(山田五十鈴 )と、鶴次郎(長谷川一夫)。
 鶴八の母親(先代鶴八)は新内の名人で名をはせた人で、その娘・鶴八は、母親に才能を見込まれて、幼い頃から新内を教え込まれてきた。
 相方の鶴次郎も、先代鶴八の一番弟子で才能を延ばしてきた男であった。

 よってふたりは、子供の頃から先代鶴八のもとで、幼なじみのようであったし、いつの頃からは互いに淡い恋心も芽生えていた。
 そんな、若くて実力ある、鶴八鶴次郎の人気は破竹の勢いで、ふたりが出演する演芸場はいつも満席。鶴八鶴次郎は互いに相手を、差し替えのきかない、息の合った最高の相方と思っている。だからこそ世間はふたりの関係をうわさしているのです。

 鶴次郎の番頭・佐平(藤原釜足)は機転が利くしっかりした男で、鶴次郎のマネージャー。
 先代鶴八からのひいき筋の旦那(パトロン)である松崎(大川平八郎)は、先代が他界した後も、あたたかな目で若き鶴八の面倒をみている。
 また、太夫元(興行責任者)の竹野(三島雅夫)は、プロデューサーとして鶴八鶴次郎の人気と才能を見抜いていて、まだ若い二人を、芸能界重鎮の反対もある中を押して、名人会へ出演させることを決めた芸能界の実力者。

 鶴八鶴次郎の名人会出演は大成功であった。しかし、その後、鶴次郎は芸人として落ちぶれていくことになる。
 その直接の原因は、鶴八と鶴次郎の仲たがいだった。ふたりが舞台を降りたあと、楽屋で鶴次郎は決まって鶴八の三味の今日の出来に文句を言った。しかし、これはいつものことであった。些細な一点を指摘される鶴八にはメンツがある。芸人の意地と意地がぶつかり合う。(良く言えば切磋琢磨と言えなくもない)
 その一方で、大いにほめる時もある。また、平素の二人は仲がいい。そんな、お天気模様なふたりに、番頭・佐平は慣れっこになっている。しかし、名人会で成功したふたりがいる高みでの仲たがいと意地の張り合いは、二人にとってコンビ解消への運命となった。

 実は、仲たがいの真相は、鶴次郎の嫉妬であった。鶴次郎は鶴八を心底好きだった。だが彼は、鶴八のパトロン・松崎への、自身で思い込んでしまった嫉妬に負けてしまう。(鶴八と松崎はきれいな関係だったのに)
 一方、これまで芸一筋で身を立ててきた鶴八だが、先のことを考えれば、女として、収まるところに収まりたい。その相手とは、鶴次郎と思い続けていたのに・・・。

 コンビ解消後、鶴次郎は東京から姿を消した。鶴八は富豪の松崎の妻となった。
 鶴次郎の心はすさみ、芸は荒れ、客のまばらな地方の場末にひとり沈んでいた。そして時は過ぎていった。

 見兼ねた佐平マネージャーは、鶴八鶴次郎を再結成する計画を鶴八に承諾させて、鶴次郎を東京へ連れ帰った。そして、公演は成功した。だが、その最終日、楽屋で、またもや、鶴次郎は鶴八の三味の出来に些細な注文を付けた。
2-1_201610241227006b6.png 佐平は止めたが、鶴八は怒って楽屋を後にした。
 (ついさっきまで鶴八は思っていた。 「芸人の子はやはり芸人、今回の復帰公演で気付いた、私は芸で生きて行きたい、芸は生きがいだ。」 鶴次郎の言動は、そう鶴八が思った矢先の事であった。彼女は松崎の妻として一生を終えるかもしれないことに疑問を抱いていたのだ。)

 鶴八が去ったあと、楽屋で、鶴次郎は佐平に言った。「俺はいまも鶴八が好きだ。だが、田舎の場末で思い至ったことは、芸人であることがつくづく嫌になったこと。鶴八は芸人じゃなく、松崎の妻として幸せになって欲しい」と。
 これを聞いた佐平いわく、「じゃなんですか、さっき、鶴八に言ったことは嘘なんですか。」

 今、この映画を観る人は、好きなら好きと言えば!という思いが募る。ひんぱんに顔を突き合わせて来た関係なのに、好きと、はっきり意思表示しない昔の話(昭和13年)に、違和感を感じる。だがこのこと以上に、違和感がある事がある。
 一時は、夫婦の約束をし、さらには、演芸場の主人(席亭主)になりたいという鶴次郎の夢を、(二人の金で演芸場を買い取り) 実現していたのに、結局、悲劇となってしまう。
 その原因は、やはり鶴次郎の松崎への嫉妬だ。鶴八が、足りない資金を松崎から調達していたのだが、それを鶴次郎に言わなかった。それが鶴次郎をさらに嫉妬へと追い込んだ。
 振り返ってみると、鶴次郎と松崎の接点は無い。富豪の旦那と、先代鶴八という女芸人に拾われた(までは言い過ぎかもしれないが)男・鶴次郎との、身分の格差。昭和13年当時、少なくとも芸能界において、この格差は、ものも言えぬ壁だったのでしょう。当時の観客は、それを理解して観ていたのでしょう。(でも、そうでしょうか、鶴次郎は単に小心な男であったのかもしれない)

 それでも、腑に落ちない点がある。鶴八の、芸人の娘の、芸への執着心。それに引き替え、地方の場末で辛酸を舐めたとは言え、鶴次郎は芸を捨てる、そのあっけなさ。これが、この話を尻切れトンボにしている。
 よって、この映画は、山田五十鈴、当時、21歳を愛でるだけ、の映画になる。

 山田五十鈴 (当時18歳)の、きりりとした存在感を示す映画に、溝口健二の「マリアのお雪」(1935年)がある。こちらは、お薦め! 
 さらには、同じく溝口健二の「残菊物語」(1939年)がある。これは明治時代の歌舞伎界の話で、主人公の男は地方で辛酸を舐めたのち、妻や友人たちの手によって、立ち直る話だった。 (以前に書いた 「マリアのお雪」、「残菊物語」の記事は、それぞれ、題名をクリックしてお読みください)

 新内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 三味線音楽は、唄物と語り物に大別される。 語り物は浄瑠璃物ともいわれ、義太夫、豊後系浄瑠璃の新内・常磐津・富本・清元(江戸浄瑠璃4派)等がある。新内は、鶴賀新内が始めた浄瑠璃の一流派。
 だから鶴八鶴次郎は、買い取った演芸場の名を、鶴賀亭とした。
 
下2監督:成瀬巳喜男|1938年|89分|
製作:森田信義|原作:川口松太郎|脚本:成瀬巳喜男|撮影:伊藤武夫|
出演:鶴八(山田五十鈴 1917-2012)|鶴次郎(長谷川一夫 1908-1984)|鶴次郎の番頭・佐平(藤原釜足)|鶴八のひいき筋の旦那(パトロン)・松崎(大川平八郎)|太夫元(興行責任者)の竹野(三島雅夫)|ほか

【 成瀬巳喜男監督の映画 】  これまでに記事にした作品です。
 (以下、題名をクリックしてお読みください)

 「乙女ごころ三人姉妹」(1935年) 「サーカス五人組」(1935年)
 「芝居道」(1944年) 出演:山田五十鈴、長谷川一夫
 「あにいもうと」(1953年) 出演:京マチ子、久我美子
 「夫婦」(1953年) 出演:上原謙、三國連太郎、杉葉子
 「流れる」(1956年) 出演:山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、田中絹代

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映画 「パラダイスビュー」   監督:高嶺剛

上

 沖縄返還(1972年)直前の、村人たちを描く群像劇。

1-0_20161012130855481.png 群像劇とはいっても、はっきりしたストーリーはない。取っ散らかした、たくさんのエピソードを、映画は気ままに映し出す。

 レイシュー(小林薫)は米軍の仕事をしていたが、クビになった。(ストライキに加担し過ぎたようだ)
 小遣い稼ぎにハブ捕りをしているが、ほかに何することもないボンヤリした毎日だ。アリの背に背番号を張り付けたりしている。祖母と母親(平良とみ)それに妹のビンダレー(職業:沖縄民謡歌手)の四人暮らし。
 レイシューは独身だが、長年連れ添っている愛人ジュール(りりィ)がいる。レイシューは米軍払下げの軍用トラックを使って、チョイ悪な仲間たちと海上トラックの商売を始めようとしている。妹のビンダレーは、サムライ姿の男(巡業の一座か村芝居の座員か)に、しつこく付きまとわれている。
 映画後半でレイシューの祖母は、米軍の軍事演習の流れ弾が当たって死亡する。

 ヤマトンチュ(本土の人)のイトー(細野晴臣)は、植物学者らしい。沖縄に生息する未知の不思議な植物の採集と研究をしている。
 彼は沖縄の地に根付くためにウチナーンチュの女性と結婚したいと思っていた。そしてナビー(小池玉緒)と知り合った。
 ナビーの母親は、本土の男との結婚に躊躇していたが、本土復帰を前にして、「いずれ日本復帰するから日本人と結婚しなさい」と言って許すつもりであった。

 しかし、ナビーが毛遊び(もうあしび)に参加して、妊娠したことが発覚した。ナビーの母親が問い詰めたところ、相手はレイシューらしい。これを聞いたナビーの2人の兄たちは困った。妹の幸せを壊した男レイシューは兄たちの親友でもあった。

 困った母親は、ある盲目の男を訪ね相談をする。
 この男は村人からフィリピナースと呼ばれている。戦前、フィリピンへ出稼ぎに行って、彼の地で女と一緒になり子供を設けていたが火事で子を亡くした。そして単身、村に帰って来た男。ナビーの母親とフィリピナースは、フィリピンへ行く前には相思相愛の仲だった。
 ナビーの2人の兄は、ロックバンドのメンバーで、近くハノイへ行く。米軍の基地を慰問で巡るツアーに参加するらしい。(まだベトナム戦争のさ中だ)



3-0_20161012132548b82.png チルー(戸川純)は、村の家々の家事手伝いをしている女。母親は村で飯屋(呑み屋)を営んでいる。チルーは、レイシューに思いを寄せているが、母親はこれをよく思っていない。またチルーは、レイシューとジュールのことが気がかりだ。
 ある日、チルーは夢を見た。レイシューのマブイ(魂)が、彼の体を離れ落ち、彼のそのマブイを犬が食ってしまう夢。自分のマブイを失くした者は、神隠しに会うと昔から言われている。チルーの夢は神秘的予言であった。

 レイシューは神隠しに会い、森の中をさ迷う。
 映画は、沖縄土着の不思議も映し出す。マブイを落とす、虹豚、淫豚草、神隠しに会う、土を食べてその呪力を解くなど、村人の日常に隣接するあちらの世界を描きます。村人のひとりアガダニースーに至っては、森の中で神と親しくしている。
 レイシューが神隠しに会うきっかけは、少年院を脱走した男達による護送車襲撃事件だった。レイシューは、祖母の葬儀の夜、村人と取っ組み合いをし、警察に取り押さえられ、護送車に乗っていたのだ。そして、彼は闇夜の中、脱走し、その後神隠しに会った。

 1972年の沖縄返還が近づくにつれ、沖縄独立の気運が反復帰運動として盛り上がりを見せる頃だった。日本政府は神経をとがらせていた。だから、その余波で、レイシューは村人との些細なケンカで、警察に連行されたのだ。(映画は、村人の一部がこの反復帰運動に加わる様子も描いている。)

 ラスト近く。虹豚に腹部を食われたレイシューは、村はずれの道端で倒れている。たまたま、通りかかったナビーの兄たちらに発見されるが、もう手遅れだった。
 青空の下、レイシューは、一本道をひとり、よろよろと歩いて行くのであった。

 毛遊び(もうあしび)とは、かつて沖縄で広く行われていた慣習。主に夕刻から深夜にかけて、若い男女が野原や海辺に集って飲食を共にし、歌舞を中心として交流した集会をいう。映画は、このほかにも、種々の沖縄の風習を話に織り込んでいます。

4‐0 映画には、沖縄民謡歌手の嘉手苅林昌 (鍋修理屋)や照屋林助 (陽気な歯医者)らが出演しています。
 映画音楽の担当は、元はっぴいえんど元YMOの細野晴臣。このころの細野晴臣は、ワールドミュージック(沖縄音楽含む)とコンピュータミュージックが交差する時代を築いたひとり。
 ちなみに、照屋林助演ずる歯医者は、照屋林助の師匠・小那覇 舞天(おなは ぶーてん、1897-1969)をなぞっている。小那覇は、沖縄の演劇人、かつ歯科医師。沖縄のチャップリンと呼ばれた人。


監督・脚本・美術:高嶺剛|1985年|113分|
撮影:東司丘宇天|音楽:細野晴臣|
出演:ゴヤ・レイシュー(小林薫)|村の女・チルー(戸川純)|レイシューの祖母ゴヤ・パーパー(大宣味静子)|レイシューの母親ゴヤ・カマド(平良とみ)|レイシューの妹で歌手のゴヤ・ビンダレー(谷山洋子)|イトー(細野晴臣)|イトーと結ばれるはずだったタカシップ・ナビー(小池玉緒)|ナビーの兄タカシップ・ミッチャー(コンディション・グリーン・エディ)|ナビーの兄タカシップ・マチュー(コンディション・グリーン・カッチャン)|ナビーの母親タカシップ・モーシー(関好子)|チルーの母カナー(北島角子)|チルーの義父タルガニ(島正太郎)|チョッチョイ(辺土名茶美)|レイシューの愛人ジュール(りりィ)|リョースケ(平良進)|ナビーの母親の昔の恋人フィリピナース(北村三郎)|サムライ姿の男(宮里栄弘)|助役(森田豊一)|アガダニースー(グレート宇野)|鍋修理屋(嘉手苅林昌 1920-1999)|歯医者(照屋林助 1929-2005)|村長(大宣味小太郎)|ほか

【 高嶺剛監督の映画 】
 これまでに記事にした作品から。
  (タイトルをクリックしてご覧ください)

 「ウンタマギルー」  
 出演:小林薫、戸川純  (1989年)


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映画 「舞妓はレディ」   監督:周防正行

上

 いい娯楽映画ですね。
 こういう明るく楽しい喜劇は好きです。気晴らししたい時にはぜひ観るといいでしょう。

1-0_20160923143730d0c.jpg 春子役の上白石萌音を、富司純子、田畑智子、岸部一徳ら大勢が支えています。
 この映画はミュージカル映画の部類でしょうが、ミュージカルに抵抗ある人も楽しめます。(私がそうです)
 ミュージカルとはいっても、歌や踊り(ダンス)以外のシーンが大部分ですし、思いのほか、歌も踊りも馴染みやすい。
 それは、音楽の周防義和、作詩の周防正行・種ともこ、そして振付のパパイヤ鈴木が、なかなかいい仕事をしているからです。
 ストーリーはすなおで、そんな脚本の上で、力ある俳優たちが楽しそうに演技するなか、上白石萌音が光ります。

 春子(上白石萌音)が「舞妓になりたい」と下八軒という花街を訪ねるところから始まる、この話は、(古い映画の話になりますが)溝口健二の「祇園囃子」の出だしを思い出します。当時20歳の若尾文子が、やはり舞妓になりたいと祇園を訪ねるのです。
 また、同じく若尾文子主演のミュージカル映画「初春狸御殿」の歌や踊りありの和製ミュージカルの華やかさも思い出します。
 そう考えると、「舞妓はレディ」はとても現代的な映画ですが、日本映画のこれまでの流れを脈々と受け継いでいるとも思えます。
 ちなみに下八軒とは上七軒のもじりです。

 (「祇園囃子」・「初春狸御殿」の記事は題名をクリックしてお読みください。)

 
監督・脚本:周防正行|2014年|135分|
撮影:寺田緑郎|音楽:周防義和|作詞 :周防正行、種ともこ|振付:パパイヤ鈴木|
出演:お茶屋「万寿楽」の人々(置屋兼業)・・・西郷春子(上白石萌音)|万寿楽の女将・小島千春(富司純子)|舞妓の百春(田畑智子)|芸妓の里春(草刈民代)|芸妓の豆春(渡辺えり)|男衆の青木富夫(竹中直人)|万寿楽に出入りする亰大学の言語学者・京野法嗣(長谷川博己)|
馴染みの旦那衆・・・北野織吉(岸部一徳)|高井良雄(髙嶋政宏)|市川勘八郎(小日向文世)|馴染の客(津川雅彦)|
その他の出演者・・・花街生まれの大学院生・西野秋平(濱田岳)|万寿楽の女将が舞妓の頃の好きな人で映画スター・赤木裕一郎(妻夫木聡)|鳴物の師匠(彦摩呂)|ほか

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映画 「泥の河」   監督:小栗康平

上
左がうどん屋の信雄、奥が宿舟の銀子、そして弟の喜一。(もやった宿舟の上で)
信雄と喜一は仲良し。

1‐0


 いい映画です。観たあと、じんわりします。
 暗い話だと言って切り捨てるには、あまりにもったいない。

 映画は、大阪の市中を流れる川の岸で、うどん屋を営む親子3人と、舟(宿舟)を住まいとして生きる母子3人との、あたたかい交流を描いています。
 うどん屋の店(兼住居)は、川の岸といっても、コンクリート階段を降りた堤防の内側にあって、また、舟を住まいとする一家は川伝いに転々としていて、ちまたでは廓舟と呼ばれているのです。そんな舟が、たまたまうどん屋の向こう岸に停泊したことから、話は始まります。

 どちらも川の家ですが、貧富の差があります。しかし、それぞれの家の子ども達は、毎日を一生懸命生きています。貧しい境遇の子たちの愛らしさを描きながらも、映画は話の底では、大人の哀愁を語っています。

 「もはや戦後ではない」という新聞の見出しが、映画に出てきます。
 この映画は昭和31年の話ですが、この年、時の政府は経済白書の結びで、そう言いました。一様に貧しかった終戦直後から10年が経って、人びとが幾ばくかの余裕を感じ始める頃でもあったのでしょう。しかしその一方で、相変わらず貧しく、世間から取り残されたようにして暮らす人々がいたことを、映画は語ります。

 戦場で、何度も死を覚悟する場面に出くわしながらも、生きて帰るんだと踏ん張って生き抜いた男たち。
 そんな男たちが、復員し、焼け野原のゼロベースから、なんとか生活の糧を得るようになったその矢先に、不幸にも呆気なく死んでいく。
 馬に荷車を引かせて、やっと貯まった金で、中古のトラックを買った男(うどん屋の客・芦屋雁之助)が不慮の事故で死んでしまう(映画冒頭で)。また、宿舟の亭主は、はしけの現場でいい仕事をしていたそうだが、妻子を残して事故死したという。
 こんな出来事を身近にして、戦場を生き抜いた、うどん屋のあるじ・晋平(田村高廣)は、そんな男達にやるせなさを抱きます。
 だから晋平は、息子の信雄と親しくなった宿舟の子・喜一とその姉の銀子に優しくします。また晋平と妻・(藤田弓子)の人柄は、うどん屋を、貧しいが懸命に働く男達の集う店にしています。
 
 晋平の息子・信雄は、ある日、ひょいと現れた宿舟の子・喜一とすぐに友達になりました。天神祭の時には、晋平から50円ずつ小遣いをもらってふたりは出かけます。喜一はお金を持って祭りに行くのは初めてや!と言います。
 喜一は学校に行っていません。信雄の友達が、喜一をあからさまに避ける様子を映画は映しています。他の場面では、宿舟を悪く言う客を晋平は店から追い出しました。

 喜一の母親(加賀まりこ)は、夜間、宿舟へ客を入れて収入を得ています。うどん屋の客の噂では、ほかの場所では喜一が客引きをしていると言っています。そんな姉弟ですが、ふたりは決してぐれたりはしていません。母親の言うことは聞き、喜一は近くの公園から水道水をバケツで運んだり、銀子は炊事洗濯をしています。信雄の母親が、銀子に洋服をあげようとするのですが、銀子はていねいに断ります。
 喜一の母親は、夫を亡くして以来、舟に閉じこもったままです。でも少しの間は働きに出たようですが、また舟に引きこもりました。たぶん、急に夫を亡くしたことから、精神的に快復できないでいるのでしょう。

 信雄は喜一とすぐ親しくなりましたが、しかし、ふいに現れた廓舟という存在は、まだ子供の信雄にとっても、やはり違和感は拭えなかったようです。それは売春に対する先入観ではなく、漠然と怖いという感情でした。喜一の母親と会った信雄は、その時そう感じたようです。
 ある夜、喜一に招かれて宿舟に入った信雄は、喜一から「秘密」を見せられます。灯火ランプ用のアルコールを浴びた川蟹に火をつけるのです。火をつけられた蟹は闇夜の舟べりを這いまわり、やがて動かなくなる。
 不思議だが何か嫌なものを見たという、いささかねっとりした感触を信雄は感じます。親しい喜一との距離が開く瞬間でした。
 
 その日、何の前触れもなく、宿舟はもやい綱を解き、曳き船に曳かれて静かに去って行きます。
 驚いた信雄は川岸を走って舟を追いかけます。舟上には誰の姿も見えません。舟はどんどんと、どこかへ行ってしまいます。(映画はここでエンドを迎えます。) 


2-0_201609221442388ea.jpg ちなみに、信雄はもうひとつ、不思議なものを見ています。
 幻想的なシーンです。まだ薄暗い早朝、家の窓からぼんやり川面を見ていると、釣り餌のゴカイ採りのじいさんが小舟の中にいるのですが、次の瞬間、じいさんは川に落ちて、川面に浮かんでいるのが遠目に黒い影になって見え、そして音も無く漂っている。しかし、そのうち姿は消えてしまいます。

 父親に付き添われて信雄は、近所の交番に出向きますが、要領の得ない証言を繰り返すばかり。結局、死体は発見できません。うどん屋の客が言うに、川の底は泥が2メートルは積もっているだろうと。
 この川には、さまざまな人びとの、さまざまな思いも沈んでいるのしょう。


監督:小栗康平|1981年|105分|
原作:宮本輝(1977年『文芸展望』18号初出)|脚本:重森孝子|撮影:安藤庄平|
出演:板倉晋平(田村高廣)|その妻・貞子(藤田弓子)|その息子・信雄(朝原靖貴)|宿舟の女・松本笙子(加賀まりこ)|その長女・銀子(柴田真生子)|その長男で信雄の友・喜一(桜井稔)|タバコ屋(初音礼子)|倉庫番(西山嘉孝)|釣り餌のゴカイ採りのじいさんが川に落ちたのを信雄が目撃して警察に尋問をうける、その巡査(蟹江敬三)|橋の上にいる信雄にスイカをあげるため橋下を通過する舟からスイカを放り上げた・屋形舟の男(殿山泰司)|佐々木房子(八木昌子)|中古トラックを買ったんだと言いながら信雄の店でかき氷を食い、そのあと対向車に馬が驚きそのはずみで荷車の下敷きになって死んだ・荷車の男(芦屋雁之助)|



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<か行> の邦画  これまでに記事にした邦画から。 2016.9.12現在

 これまでに記事にした邦画から、<か行> の映画を並べてみました。

 下の画像をクリックして、その映画記事をご覧ください。
 五十音順に並べています。
 
 <か行>以外の映画は、こちらからどうぞ。 (邦画の五十音一覧リストです)

1怪異談 生きてゐる小平次 2怪談海女幽霊 3海炭市叙景 5顔 6顔役 7牡蠣工場 8駆込み女と駆出し男 9カケラ 10風切羽 (かざきりば) 10貸間あり 11ガス人間第一号 12風と樹と空と 13風の歌を聴け 14風の子 風の又三郎 15かぞくのくに 16神様のカルテ 10亀は意外と速く泳ぐ 17亀虫 18ガラスの中の少女 19川下さんは何度もやってくる 20河内カルメン 21川の底からこんにちは 22雁の寺 23祇園の姉妹 24祇園囃子 27喜劇 駅前温泉 25喜劇 駅前団地 28喜劇 女は度胸 29 喜劇 にっぽんのお婆あちゃん 26喜劇 夫婦善哉 30キッドナップ・ブルース 31狐と狸 32揮発性の女 33きみにしか聞こえない 34きみはいい子 35凶気の桜 36教祖誕生 37きょうのできごと 38魚影の群れ 39霧の旗 40空気の無くなる日 41草を刈る娘 (思春の泉) 42クズとブスとゲス 43くちづけ 44グッド・ストライプス 45雲の上 46狂った一頁 47狂った野獣 48クレージーの大爆発 49クワイエットルームにようこそ 50競輪上人行状記 51月光仮面 魔人の爪 52けものがれ、俺らの猿と 53喧嘩犬 54原子力戦争 Lost Love 55現代インチキ物語 騙し屋 (だましや) 56ゲンと不動明王 57恋の花咲く 伊豆の踊子 58恋や恋なすな恋 59荒野のダッチワイフ 60ゴーヤーちゃんぷるー 61極道ペテン師 62ココニイルコト 63ゴジラ 64午前中の時間割り 66古都 67孤独なツバメたち  デカセギの子どもに生まれて 68小早川家の秋 69こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 70ゴムテッポウ 71米 72今宵ひと夜を 4 - 帰って来た若旦那 65こだまは呼んでいる



映画 「イン・ザ・プール」  出演:オダギリジョー、松尾スズキ、田辺誠一、市川実和子   監督:三木聡

上
プールに侵入した大森は、泳げるうれしさのあまり、スーツ姿のままで飛び込んだ!


1‐0 この馬鹿馬鹿しいコメディに、ついて行けるかどうかが、いい映画と感じるか、つまらんアホくさと感じるかの分水嶺。
 あるいは、オダギリジョーに、あんな役?あんなことさせるの! が分水嶺かも。
 あるいは、原作は原作、映画は映画として、別なものとして切り分けて楽しめるかどうかが、分水嶺。そんな映画です。

 メンタルヘルスケアが必要な人が増えてますってな話です。
 登場人物は、サラリーマンの男2人に、フリーライターの女、そして神経科の医師。

 中間管理職の大森(田辺誠一)は、何かと神経使う毎日。ふとしたことで始めた趣味のスイミングにハマる。泳いでいるとまるで羊水の中にいるようで、日頃のプレッシャーに弱った心がプールでゆっくりと解き放たれる。2時間泳ぐと気分スッキリ。だが、徐々にスイミングに取り憑かれていく。

 田口(オダギリジョー)は、優しい人だが、決断が鈍く優柔不断、言い返せない男。 
 妻にいい様にされ見切りをつけられ、職場の同僚や上司からも面倒な仕事を押し付けられる。
 この田口、最近、勃起が続く。これは都合悪い。通勤途中も職場でも帰宅しても勃起しっぱなし。誰が見ても、ズボンのその部分が膨らんでいて、外から丸分かり。
3‐0 で、泌尿器科へ行くが、これは神経科だろうと言われ、精神科医・伊良部(松尾スズキ)と出会う。

 ライターの岩村(市川実和子)は、フトある事が気になりだしたら、「いてもたっても」の女。
 ガスコンロ消したっけ、から始まる不安の増大。アイロンのコンセント抜いたっけ、エアコン消したっけ、玄関ドア施錠したっけ、不安の種が次々。
 翌日からは「ヨシッ」の指さし確認でスッキリし、だがそれでもダメで、ビデオカメラ片手に消す抜く施錠の様子を自撮りして、出かけてから不安になったら自撮りを再生して安心している。
 それでもダメで、自分は強迫神経症ではないかと気になりだし、図書館で徹底的に調べるが、ついに、やはり精神科医・伊良部の診察を受けることにした。


 伊良部の患者となった田口と岩村を、伊良部はうれしそうに弄ぶ。ふたりは暇な医師のオモチャとなった。

 田口は、病院でも伊良部医師にいいようにされる。ついには、医学研究の珍しい対象にされ、さすがにここで田口、爆発! そしてスッキリ、勃起が治った。

 岩村は、幼い頃を思い出す。廃棄された冷蔵庫の中に入った友達が、「また開けてね」と言われて閉めた、あのドア、開けたっけ?
 彼女は伊良部医師に付き添われ、20年も経った現場へと向かうのであった。

 中間管理職の大森は、その後いろいろあって、泳げていない。
 「泳ぎたい!泳いで正常に戻さなくては!」 その一心で深夜、大森は大型ハンマーを振り上げながら、プール施設の玄関へと走る。そして、ドアのガラスをたたき割るのであった。

 伊良部医師はと言うと、2人の患者が去ってしまい、憂いの時がまた始まっていた。


 こういうムチャクチャな話、好きです。
 3つの短編小説(原作)を、ひとつにまとめ上げたので、まとまりは無い。無いが、ムチャクチャ話なので良しとする。
 ちなみに、原作小説3作を、うまくひとつに仕立てた映画 「きみはいい子」 (監督:呉美保)は、巧い、いい出来。
 (「きみはいい子」は題名クリックしてお読みください。下記も題名をクリック。)
 付け加えて、台湾映画で3つの話をまとめた「台湾の暇人」がハチャメチャな映画だった。



44_2016090615160397c.jpg監督:三木聡|2005年|101分|
原作:奥田英朗(「イン・ザ・プール」「勃ちっ放し」「いてもたっても」の3編の短編小説)|脚本:三木聡|撮影:小林元|
出演:精神科医・伊良部一郎(松尾スズキ)|水泳依存症の大森和雄(田辺誠一)|勃起の田口哲也(オダギリジョー)|ライターの岩村涼美(市川実和子)|看護師マユミちゃん(MAIKO)|映画冒頭の佐俣教授(森本レオ)|前西室長(岩松了)|編集長(ふせえり)|吉沢部長(きたろう)|大森が性病で通う姫乃木医師(三谷昇)|大森の不倫相手のOL(真木よう子)|刑事(嶋田久作)|ほか

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映画 「風の又三郎」   映画音楽に魅せられて  監督:島耕二

上


 宮沢賢治の「風の又三郎」を初めて映画化した、1940年の作品。

1-0_201608311247275fa.png 夏休みが終わって9月1日の朝一番、山の学校に生徒が登校して来ます。
 転げるように駆けて来た子たちは、がらんとした教室に見慣れぬ男の子を発見します。

 (原作「風の又三郎」の冒頭から) 

 どっどど どどうど どどうど どどう
 青いくるみも吹きとばせ
 すっぱいかりんも吹きとばせ
 どっどど どどうど どどうど どどう

 谷川の岸に小さな学校がありました。
 教室はたった一つでしたが生徒は三年生(映画では五年生)がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。
 運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗の木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴く岩穴もあったのです。
 さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。(原作冒頭より)
 
 さて、その「どっどど どどうど」の歌です。
 時々、ふと、思い出します。
 一度聞くと、耳に残る旋律。そして、やはり、二百十日の風音を表わす擬音がとても印象的ですね。





監督:島耕二|1940年|98分|
原作:宮沢賢治|脚本:永見隆二、小池慎太郎|撮影:相坂操一|作曲:杉原泰蔵|
出演:三郎=片山明彦|先生=中田弘二|三郎の父=北龍二|嘉助の姉=風見章子|一郎の祖父=林寛|洋服の男=見明凡太郎|一郎=大泉滉|嘉助=星野和正|佐太郎=中島利夫|耕助=小泉忠|悦治=杉利成|承吉=南沢昌平|小助=河合英一|佐太郎の妹かよ=久見京子|一郎の兄=西島悌四郎|







 上記の、原作の冒頭、その先も思い出したいなら、ぜひ、青空文庫をお読みください。(下記URLをクリック)
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/462_15405.html

青空文庫は、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、図書館のようにインターネット上に集めようとする活動です。
 著作権の消滅した作品と、「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを、電子化した上で揃えています。詳しくはこちらからどうぞ。(外部リンクです) 

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映画 「トワイライト ささらさや」   主演:新垣結衣、大泉洋  監督:深川栄洋  

上
サヤとユウタロウの子、ユウスケ。
実は、このユウスケが主人公かも知れない。



 新垣結衣、大泉洋主演のビターな喜劇映画で、いいところもあるんですがね・・・、でも、あきまへん。

1‐0 下手くそな落語家・ユウタロウ(大泉洋)とサヤ(新垣結衣)は寄席で出会い、結婚。子供も出来て、これからという時にユウタロウは交通事故で他界。映画はここから始まる。

 ユウタロウの葬儀のさなかに突然、見知らぬ年配の男が現れ、サヤに詰め寄ってユウタロウの父だと名乗り、孫のユウスケを渡してほしいと迫った。
 一方、ユウタロウ、実は、サヤとユウスケが心配で成仏できないでいて、さっきから式場内の参列者の間をウロウロしていた。(もちろん誰にも見えない) さらに今、父親がサヤから、息子ユウスケを取りあげようとしている!

 この危機に直面し、ユウタロウの霊は、自分の師匠(小松政夫)の身体に乗り移り、師匠の声を借りてサヤに言う。「逃げろ!どこか遠くへ早く」 
 はじめ、何が起こったのか理解できないサヤは戸惑い、同時に父親の存在を隠していたユウタロウに怒りをぶつけ、しかしともあれ、迫る父親からサヤは子供を抱いて逃げた。

 サヤは不幸な女であった。両親を早くに亡くし親を知らない。祖母に育てられたが既に他界し、唯一の肉親、叔母も最近亡くなった。だが、ユウタロウに出会えて幸せになった。そしてその矢先の不幸であった。

 サヤは今、その叔母の家へと向かっている。「ささら」という小さな田舎町にある。
 突然のよそ者に、「ささら」の町は好奇心をそそられ、同時にユウスケの愛らしさに誘われて、近所のおばあちゃん達がサヤのもとに寄って来て、何かと面倒をみてくれる。お夏(富司純子)、久代(波乃久里子)、珠子(藤田弓子)の3人だ。
 さらには、サヤはエリカ(福島リラ)と知り合いになり、また駅員の佐野(中村蒼)はサヤに一目惚れ。そして、ユウタロウの霊も彼らに加わる。
 
 つまりユウタロウの霊は、この町で最初にお夏(富司純子)に乗り移り、次にエリカの一人息子4歳位のダイヤに、そして駅員の佐野に乗り移り、サヤに対面する。(これらの乗り移ってのシーンは、なかなかの出来です。特に富司純子とダイヤ役の子役。)
 そして対面できたサヤとユウタロウのふたりは、互いに心を打ち明け、喜び怒り懐かしみ悲しむのであった。
  
 さてついに、おばあちゃん達3人とエリカらが、サヤを見守る中、ユウタロウの父親が「ささら」の町に現れ、サヤの家に来た。
 ここから先は、(少しだけ言うと、ユウタロウは、なんと、ユウスケに乗り移ったのであったが・・・・) 観てのお楽しみと言いたいところだが、残念。

 総じて、ビターな喜劇映画でいいんですが、イマイチの出来です。赤ん坊のユウスケの可愛さに助けられた映画です。
 最悪なのは、映画のラストに付け加えた、あの長ったらしい劇場での(説明)シーンは、まったくもって興ざめで頂けない。このシーンは監督自身の作風じゃない。他からの意図なのだろう。「神様のカルテ 2」もこうだった。こういうことは、「映画」をダメにしますよ。

 結婚し子供ができたが夫婦の片方が他界し霊となる、こういうあらすじでは、何と言っても、永作博美、佐々木蔵之介主演の 「夫婦フーフー日記」 が格段に良い。(お薦め)
 また、妻が他界し再婚するが先妻が霊となる、こういうあらすじでは、萩原健一、室井滋、山口智子主演の 「居酒屋ゆうれい」 が可笑しい。(それぞれの映画の記事は、題名をクリックしてお読みください。)


中監督:深川栄洋|2014年|114分|
原作:加納朋子|脚本:山室有紀子、深川栄洋|撮影:安田光|
出演:新垣結衣(サヤ)|大泉洋(ユウタロウ)|中村蒼(駅員の佐野)|福島リラ(スナックの女・エリカ)|富司純子(お夏)|波乃久里子(サヤの叔母の家に住んでいた久代)|藤田弓子(サヤの叔母の家の向かいに住む珠子)|小松政夫(師匠)|石橋凌(ユウタロウの父)|寺田心(エリカの一人息子・ダイヤ)|つるの剛士(久代の息子・義男)|ほか

【 深川栄洋監督の映画 】  ~ これまでに記事にした作品です。題名をクリックしてお読みください。

 半分の月がのぼる空」  主演:忽那汐里、池松壮亮
 神様のカルテ」       主演:櫻井翔、宮崎あおい  これはいい映画です!
 神様のカルテ 2」      お薦めしません。

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映画 「浅草四人姉妹」   監督:佐伯清

上
左から四女・恵美子、長女・美佐子、父、三女・千枝子、次女・幸子、手前は母


 浅草の街に住む 仲のいい四人姉妹を、さらりとスケッチする大人の喜劇。
 そして、登場人物の心情を細やかに描く、無理のない、いい脚本。
 ストーリーは、はじめは明るく軽快で、途中、相次ぎ事がこんがらがって、幸せそうで可哀想で、ラストは一抹の寂しさを残して終わります。
 姉妹の両親は、浅草の飲食店街で小さな呑み屋をやっていて、店の奥が居間、2階は川の字で寝る姉妹の部屋になっている。

 時は昭和27年、7月。浅草は夏を迎えようしている。
 大柄でさっそうと歩く、四人姉妹の長女・美佐子は、家族や近所の人から「姉ちゃん先生」と呼ばれ一目置かれている。
1‐0 美佐子は小さな病院の勤務医(内科医)で、27歳くらい、独身。毎日、都電に乗って通勤している。この先まだまだ、医学の勉強をするつもり。幼い頃から美佐子は男勝りの女の子であった。
 家族で唯一の男性、父親の藤吉(三島雅夫)は、お人好しで、「我が家は女護ヶ島(にょごがしま)だ」といって家族女性群に頭が上がらない。よって美佐子が一家の柱となっている。

 次女の幸子は、最近芸妓の道を選んだ。舞踊を極めたい。日頃は住込みで置屋にいるようだ。母親・梅子(沢村貞子)は、若い頃、浅草で名の通った芸妓だったので、幸子を応援している。
 三女の千枝子(杉葉子)は、洋裁店に勤めていて洋裁が好き。ファッションに敏感なオシャレな娘。長女・美佐子に似て行動的。
 四女の恵美子は、高校生でまだ子供っぽいが、将来、国会議員になって女性の地位向上に貢献したいという志。幼なじみの三平とは、いい仲。

 さて、そんな一家だが、話は相次いで、こんがらがってくる。
 まずは、次女の幸子。初めての客・村川に一目ぼれしてしまうが、村川に妻子あり。片思いの重症で寝込んでしまう。
 次は美佐子の話。勤務先の病院に外科医の田中という男がいて、彼は前々から美佐子に気があるが、美佐子はまったくもって気にも留めていない。
 ある日の、病院屋上で催された院内ビヤーガーデン・パーティ。飲める美佐子は大いに飲み、はずみで田中医師とダンスする。酔った美佐子の心は、なぜか田中医師の胸の中で解放され、気持ち良かった(のだろう)、その時、思わず漏らした一言、「これは、どういう気持ちなのかしら?」。
 田中はその一言を聞いて、美佐子が恋に目覚めたと思い、一方、これまで色恋に縁のなかった美佐子は、あとになっておっとりと、この気持ちは恋、と分かる。
 そんな折、三女の千枝子が急に腹痛を訴え美佐子の病院に入院。盲腸だった。これがなんと、田中医師との出会いであった。
 この時、四人姉妹の3人が恋に落ち、うち2人は恋敵のてんやわんや。

 結局、千枝子は田中医師とめでたく結婚。美佐子は、誰にも言えぬ辛い日々を過ごしながらも、明日への一歩を踏み出し始める。次女の幸子は、片思いの重症でずっと寝込んでいたが、ある日、地震でびっくり飛び起きた拍子に、病魔退散。四女の恵美子は、三平と並んで店の手伝いをしている。


さっそうと通勤する美佐子
下2 この話の背景には、兵士の戦死の影響で、男性の人口が女性に比べて大変少ない結婚難の時代だったことがあげられる。
 だが映画冒頭で、夕食時に母親が、慶応卒のお見合い写真を四人姉妹に見せるが、またぁ!と言って、誰も見ようとしない。女性もキャリア形成の時代だと映画は言っている。
 美佐子は近隣からも「姉ちゃん先生」と呼ばれているのは、家の近所の病人を嫌がらずに診察するからだ。家に往診用のカバンをいつも用意している。医院がまだ少なかった時代なのだろう。
 ちなみに、映画製作の1952年(昭和27年)は、連合国軍による日本占領が終わり日本に主権が回復した年。戦争終結、GHQ廃止。日本とアメリカ合衆国との安全保障条約発効。これより、日本は明日に向かって発展を目指すことになる。


監督:佐伯清|1952年|84分|
脚本:井手俊郎 、 橋村美保|撮影:横山実|
出演:長女・美佐子(相馬千恵子)|次女・幸子(関千恵子)|三女・千枝子(杉葉子)|四女・恵美子(岩崎加根子)|父・藤吉(三島雅夫)|母・梅子(沢村貞子)|四女・恵美子の彼氏・三平(高島忠夫)|五郎(井上大助)|加代(飯田蝶子)|姉ちゃん先生の同僚で外科医・田中(山内明)|次女の幸子の客・村川 (二本柳寛)|四人姉妹のお見合いをすすめられた慶応大卒の春山(田中春夫)|その父(小堀誠)|ほか

四女・恵美子と同級生たち。浅草六区の興行街。
下3 映画は終戦からまだ7年しか経っていない頃の話です。
 本作に地震にあうシーンがあるが、「地震、雷、空襲、親父」というセリフが出てくる。空襲がまだ生々しい頃だった。
 浅草寺の本堂も空襲で焼失、だから映画ではその姿はない。映画公開(1952年(昭和27年)8月7日)の、その前年に本堂再建工事が始まっている。そんな様子が遠景で映画に映っている。
 飲酒のシーンの大方が、美味しそうにビールを飲むシーン。映画公開が夏であったからだろうが、ビール原料になる大麦などの戦時下統制が解除になって、生産が大いに進んだ年だったらしい。
 院内で美佐子と田中医師が、消毒用の純正アルコールを水で割って飲むシーンがある。一杯飲む度に都度、名のあるウィスキーの銘柄を言いながらグイッと、そしてまたグイッと。これで美佐子は酔っぱらい、田中医師との恋を知る。ウィスキーは高価だったようだ。

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映画 「皆月」 (みなづき)  出演:奥田瑛二、吉本多香美、北村一輝   監督:望月六郎

上風俗嬢の由美



1-new.png









 男と女と男の話。

 諏訪という中年サラリーマンで、うだつ上がらぬ どん臭い男が、ある日突然、妻に逃げられ狼狽える。
 おまけに、苦労して貯めた住宅資金2000万円の貯金通帳も妻と共に消えていた。40過ぎて諏訪は結婚し、ふたりの生活は6年で終わった。
 しかし今、暗い部屋にポツンといる諏訪の頭によぎる情景は、いい女だった妻とのセックスであった。
 意気消沈しきった独り身の諏訪は、働く意欲も萎え、勤務先の大手ゼネコンに未練無く、退職金もらって早々に辞めるつもり。
 
 逃げた妻の弟はアキラといい、新宿にある小さな組の下っ端で、乱暴なヤクザ。
 アキラは、どん臭い諏訪を、これまでも一応「兄貴」と呼び、それなりに慕ってきた、案外、義理堅い男。
 姉の失踪を諏訪から聞いたアキラは、諏訪をなだめようと、新宿に呼び出して一緒に飲んだ。組長に頼み込んで、諏訪に組のパソコン仕事を世話しようとも言う。

 飲んだ後、アキラに連れられて言われるままに入った新宿の風俗店で、諏訪は由美という女に出会う。
 (アキラは由美を知っていて、諏訪のために、店の女の中から由美を指名したのだろう。)
 風俗初体験の、風采の上がらない、その上、嫁に逃げられたと言う、このさえない客から、近く 「退職金が入る」 と聞かされた、その一言が、借金に追われる由美の気を引いた。そして、由美には諏訪とのセックスが良かった。

 その後、日は過ぎて、諏訪はあらためてひとりでこの店に来店し、由美を指名した。「何もしなくていい」という諏訪は、由実といると何か気持ちが落ち着くようだ。由美も諏訪を見て何か変わったとみたが、逃げた女房をまだ思う女々しいオッサンだとも思った。
 こうして、由美のあとをよろよろした足取りで付いて来る様子のオッサンに、由美はまるでペットに向けてのような、いとおしさを感じはじめていた。(これはのちに由美がアキラに述懐している) そうしてなんだかんだあって、由美は自分のマンションに諏訪を引き入れる。
 しかしこの時アキラは、諏訪が由美と同居することを良く思っていない。由美の狙いは、兄貴の退職金目当てだと。だから、アキラは由美のマンションで諏訪の眼前で、由美に万札を投げつけ、風俗嬢は所詮こんなもんだと言って、由美をレイプした。

 アキラが出て行ったあと、アキラには想定外であったが、諏訪はマンションに留まり、泣き崩れる由美を慰める。
 このことは、由美にとっても意外であった。諏訪も出て行くと思った。でも、今ここにいてくれる。それが、うれしかった。由美は諏訪に心の内を吐きだした。これが、諏訪への気持ちが愛に変わるきっかけとなった。

 そして、その後、3つのことが発覚する。
 1つは、諏訪の勤務先が破たんし、諏訪は退職金がもらえなくなったこと。
 2つ目は、アキラからの情報で、ある男の居場所が分かったこと。かつて、由美はこの男に金を騙し取られて、借金するはめになったのだ。 
 アキラは由美を連れ、それに諏訪もくっ付いて3人は、その男の養鶏場を訪ね、男に取られた金の一部を回収できた。その際、アキラは男を必要以上にたたきのめしたため、男は死亡する。
 3つ目に分かったことは、諏訪の妻の失踪について。失踪は実は駆け落ちで、その相手はアキラの組の組員・高岡だった。
 アキラはこのことに薄々気づいていたが、これまで諏訪に言わないでいた。しかし、高岡の実家が石川県皆月であることが分かり、駆け落ちの2人はきっと皆月へ行くだろう。そういう事がアキラの耳に入ったのだ。
 そんなことで、アキラと諏訪は、そして、旅の準備をした由美を見てアキラが言う「お前も行くのか」と、またもや3人は車に乗り、石川県へ向かった。

 このあとは、映画をご覧くださいってところだが、アキラと諏訪と由美の人生は、新たな展開を迎えます。
 ラストはちょっと綺麗にまとめ過ぎたな。観客サービスだが、ま、これもよしか。
 言葉少なに語る、アキラと諏訪と由美3人の心情を、丹念に読み取りながら観ることが、この作品をいいものにします。
 ちなみに、実はこの映画の主役はアキラかもしれません。アキラを演ずる北村一輝がいい味出してます。
 
下

監督:望月六郎|1999年|日活|114分|
原作:花村萬月|脚色:荒井晴彦|撮影:石井浩一|
出演:諏訪憲雄(奥田瑛二)|アキラ(北村一輝)|由美(吉本多香美)|諏訪の妻・沙夜子(荻野目慶子)|高岡(篠原さとし)|由美の金を騙し取った男・養鶏業の荻原(斉藤暁)|新宿公衆便所の男(西沢仁)|ほか 



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映画 「雷魚」 (黒い下着の女 雷魚)    監督:瀬々敬久

上

1-0_20160808170350b71.png 映画の舞台は、利根川沿いにJR成田線が走る、千葉県香取市小見川あたり。
 細い運河があちこちに流れ、埋め立て地には大きな敷地のプラント工場ある。どこも、人けのない荒んだ風が吹く風景。

 紀子は孤独な女であった。
 そして、この女は慢性膵臓炎と、その上、椎間板ヘルニア、ふたつの持病を抱え、これまで幾度も入退院を繰り返してきた。 
 現在もまた入院中だが、夫さえ見舞いに来ない。
 紀子は不倫相手の男に電話したが、その男も冷たかった。今や不倫の関係も途絶えてしまったようだ。女は病床でひとり沈んでいる。

 駅前の、その電話ボックスにテレクラの広告があった。それを見て、紀子は電話した。
 その少し前、勤め先へ欠勤の電話をする柳井という男がいた。
 休みをとった柳井は、テレクラで会った女の電話番号を書き連ねた手帳片手に、あちこちに電話をかけたが今日の相手が見つからない。その後いつものテレクラに行き、誰かからの電話を待っていた。そこへ紀子からの電話がかかって来た。柳井の車に乗った紀子はラブホへ向かった。

紀子はホテルを出て、柳井の車でここまで来た。
2-0_20160808170635584.png そして、ことが終わったあと、紀子はシャワーを浴びていた。そこへ柳井が入って来た。彼女は隠し持っていたナイフで、いきなり男をめった刺しにした。バスルームの床は多量の血でヌルヌルになった。そして、女はシャワーホースで、弱った柳井の首を絞めた。

  紀子はホテルを出て荒地に着いた。そこで柳井の車を捨て、車内に付いた指紋を拭きとった。その様子は落着き手慣れている。実は殺しは二回目であった。前回も偶然に出会った男だったらしい。

 紀子は容疑者として警察に連行され事情聴取を受けたが、とりあえず帰される。
 なぜなら、男女ふたりの目撃者が別室から紀子を見て面通しをしたが、それぞれが目撃した女は彼女ではない、ということになったからであった。

 署から出て来た紀子は、竹原という男に声をかけられた。目撃者として署に呼ばれた二人のうちのひとりだ。
 「人を殺すってどんな感じですか?」 竹原はガソリンスタンドで働いている。紀子が乗った車がラブホに向かう途中、そのスタンドで給油していた。その時、竹原は紀子を間近で目撃したが、署でそれを否定した。

 紀子は竹原をラブホに誘い出した。竹原は言った。「俺を殺したいんだろ?」 その時一瞬、紀子の目は大きく見開いた。
 彼女がシャワーを浴びに行ってから時間が経つのが気になって、竹原がバスルームを覗くと、紀子はシャワーフックにかけた紐で首を吊っていた。竹原が慌てて首の紐をはずすと、女の息はまだあった。
 紀子は焦点が合わぬ目で、ぼんやり竹原を見た。竹原は「それ」を理解して、次の瞬間、紀子の首を紐で締め上げた。
 竹原は紀子の死体を車で運び、運河に浮かぶ小舟に乗せ、ガソリンをかけ、火を放った。


3-1監督:瀬々敬久|1997年|国映=新東宝|75分|
原案 瀬々敬久|脚本 井土紀州 、 瀬々敬久|
撮影 斉藤幸一|スチール 佐藤初太郎 、 本田あきら|
出演:高原紀子(佐倉萌)|ガソリンスタンドの店員・竹原和昭(伊藤猛)|テレクラで出会った男・柳井裕幸(鈴木卓爾)|美智子(穂村柳明)|目撃者のひとり、知的障害のある女・節子(のぎすみこ)|田中(外波山文明)|安藤刑事(佐野和宏)|坂田刑事(岡田智弘)|洋子(河名麻衣)|パジャマの男(佐々木和也)|看護婦(吉行由実)|子供服の店員(泉由紀子)|

【 瀬々敬久監督の映画 】
 これまでに記事にした作品です。クリックしてご覧ください。

 アナーキー・インじゃぱんすけ 見られてイク女」 (1999年)
 HYSTERIC (ヒステリック)」 (2000年)  ヘヴンズ ストーリー」 (2010年)


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映画 「ロマンス・ロード」  監督:むらまつしんご

上

 ひとりの男を同時に愛してしまった、ごく普通の女の子二人のその後を、コメディタッチで描く物語。 見慣れぬタイトルなのでレンタルしたが、残念な映画でした。

 ふたりはともに彼に見切りをつけ、やがて友人となる。
 失意のふたりは旅先で、新作を書けずに悩んでいる(人気の)恋愛小説家と出会い親しくなった。その小説家から「実は自分の恋愛経験は乏しいのです」と聞いたふたりは、彼と一対一で模擬デートを繰り返して恋愛指南をし執筆協力をする。これを元に小説家は、このふたりと自分自身を新作の登場人物として小説に仕上げようとする。そのうち、三人に恋愛感情が・・・。それも小説に織り込んで行く小説家。そして、ラストは意外な展開。またもや、同時に失恋するふたり。

 話のアイデアは、可笑しくて面白い。そして脚本も、まあいいとするなら、その先がいけない。 脚本はあくまで紙の上の世界、その先は俳優の仕事であり、同時に映画監督の仕事なのだが・・・。
 男とのめぐりあわせが良くない二人が、恋敵の関係から友人関係に変化し、著名小説家に恋愛指南を施し、その過程で三角関係が生まれ、結果、ふたり共また失恋するという、奇妙で微妙ないきさつを巧みに表現するには、俳優と監督にそれ相応の技量が要求される。

 さらにこの映画では、俳優が演ずる役に、観客が自分自身か、あるいは身の回りにいる人を重ね合わせて、そうかも、そうよね、と感じさせようとしている。舞台の上にいる人、美男美女のスターが演じるのではなく、観客の普通の日常感覚を、観客と同じ目線で語る身近な映画にしようとしている。
 観客が身近に感じられる人物を作るには、どこにもいるような人物を作ることになる。見た目も特別じゃなく、台詞が日常の自然なさまになる俳優。だからといって、普通を求めて普通っぽい俳優を起用すれば、普通の人を描けるというものでもない。自然体のさまが欲しくて、ど素人を主役に起用する方法もあるが、これはそれなりの工夫が必要だ。

 「普通」を映画にするのは、思いのほか、難しい。
 優れた俳優は、例えスターであっても、普通の人の日常感覚を体現できるものだ。ただし、予算があればの話。
 映画を作るのは難しい。


 監督・脚本:むらまつしんご|2012年|115分|
 出演:中村 はるな、太田 順子、土屋 裕樹ほか

 例えば、川で取った魚は水槽の中じゃ冴えない、水槽は魚にとって普通じゃないからだ。いきいきした魚を撮るには、カメラが川 (セットじゃなくロケ地) に入って行かねばならない。
 例えば、不幸な主人公の「普通」さを求めた、大島渚の「少年」、羽仁進の「不良少年」、先日記事にした洋画 「自由はパラダイス」などは、みな俳優志望でもない素人を主役に据えているが、それぞれ念入りに工夫している。

下【 一夜一話の 歩き方 】

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映画 「特急にっぽん」  フランキー堺、団令子、白川由美  監督:川島雄三

上

宣伝のための撮影写真            
1-0_2016072112085900b.png




















 忙しくてゆっくり休む間もない、スピード優先のせわしない時代になりました、と言いたい昭和36年の喜劇映画。

 話は終始、東海道本線を走る列車の中の出来事を追う、群像劇。
 特急「こだま」の、東京-大阪間の所要時間は6時間30分、最高速度は120 km/h。このスピード感がすばらしく最先端に思える時代でした。(新幹線開通以前の時代)

 喜一(フランキー堺)は、「こだま」の食堂車に乗り込む日本食堂(株)のコック助手。コック長に言わせると筋がいいらしい。喜一の夢は、一流ホテルのコックになりたい。
 サヨ子(団令子)は、同じく日本食堂に勤務し、「こだま」の食堂車のウェイトレス達や車内販売(ワゴンサービス)する女子乗務員のリーダー役。喜一と結婚の約束をしている。サヨ子の夢は喜一と結婚して小さな食堂を開店したい、そう彼に言い続けている。しかし、喜一は喜一で男のロマンがある。だから、喜一は彼女は好きだが、結婚と職場をセットにされると、どうしても煮え切らない態度になる。

2-0_20160721122637b4a.jpg 「こだま」に乗務する彼らは関西人で、日々、大阪東京をせわしなく行き来し、東京では車両基地近くの、会社の営業所兼宿泊所で一泊している。
 東京で「こだま」に乗務するその朝、いつまでも煮え切らぬ喜一に対し、業を煮やしたサヨ子はとうとう喜一に言った。「今日、列車が大阪に到着(6時間半後)するまでに態度をはっきりさせて」と迫る。
 一方、国鉄の客室乗務員の今出川(白川由美)が列車内で喜一に、笑顔でささやきかけているのを、サヨ子はじめ日本食堂の連中が何度か目撃している。これに嫉妬し、結婚につて悩み出すサヨ子、まんざらでもない喜一。

 美人の今出川から、「ちょっとお話したいことがあるの」と言われ、最近いい気分になっていた喜一だが、今日二人だけになった場で聞いた「ちょっとお話したい」の話の中味は、今出川が東京で開業する予定のレストランに「コックとして来ていただけないかしら?」というリクルート話。これを聞いた喜一は喜んだが、サヨ子のことを思うと苦しい。彼は乗務員室にひとり閉じこもり悩む。下り特急「こだま」は、いま静岡あたりを走っている。

 さあ、さらにいろんな話が絡んで来る。
 チューインガム製造会社の社長・岸和田は、「こだま」の常連客で、ジェット機の美人スチュワーデスよろしく、以前から今出川に惚れている。それで、彼女にレストランの開業資金を出そうとしている。
 もうひとり、常連客が乗車している。甲賀げん(沢村貞子)という裕福そうなおばさん。甲斐甲斐しく、てきぱき立ち働くサヨ子を、前々から気に入っていて、是非、息子の嫁にしたい。今日は、嫌がる息子も連れて来た。

 さて、熱海から乗って来たチャイナドレスの色っぽい女が、岸和田社長の隣りに座った。これが色仕掛けで社長にちょっかいをかけている。この女、熱海や京都で店を持っているらしい。社長は、今出川からチャイナドレスへ乗り換えようとし始めた。
 そのころ、京都から今出川宛に、走る「こだま」に電話が入る。今出川の彼氏からだ。彼は寺の息子らしい。今出川は彼を愛しているが、寺の嫁にはなりたくない。東京でレストランを始めたい今出川に彼は、「寺を継がなくてもよくなったから、もう大丈夫、東京へ行ける」 そんな知らせの電話だった。
 さらには、鉄道公安職官(今の鉄道警察隊)が三人、東京から密かに乗車している。人相の悪いふたりの男の行動に目を光らせている。あとで分かるが、そのボスは・・・・だった。さてさて、喜一、サヨ子、今出川はこのあと、いかがなことに相成りますやら・・・。
 加えて映画は、乗客達の可笑しな様子と一緒に、爆弾持ち込みの噂が車内に流れたり、踏切内で立ち往生するトラックを発見し急停車したりのドッキリを、楽しく描いて行きます。

朝の車両基地(電車区)で休む、特急「こだま」             
3-0_20160721125312dd5.png 東京での一泊は、元気ハツラツの女の子達は宿泊所で過ごしますが、コック達は電車区で停車中の「こだま」内で車中泊なんですね。賄いの朝食は一同、食堂車の中でとっている。関西人が納豆を食べているが、まだ食べ慣れない様子。
 女の子たちの入浴シーンや、喜一とほかのコックとのけんかシーンや、「こだま」乗車未経験の観客向けシーンなど、観客サービスは十分。しかし・・・。
 この映画、観たいと長らく願っていた映画のひとつなんですが、同じく川島雄三監督の「貸間あり」など下記の作品に比べれば、出来は並みでした。

【川島雄三監督の映画】  ~ これまでに記事にした映画から。

 「貸間あり」、「洲崎パラダイス 赤信号」、
 「しとやかな獣」、「雁の寺


監督:川島雄三|1961年|東宝| 85分|
原作:獅子文六「七時間半」|脚色:笠原良三|撮影:遠藤精一|
出演:フランキー堺(矢板喜一)|団令子(藤倉サヨ子)|白川由美(今出川有女子)|小沢栄太郎(さくらガムの社長・岸和田太市)|中島そのみ(チャイナドレスの謎の女・伊藤ヤエ子)|沢村貞子(甲賀げん)|滝田裕介(その息子・甲賀恭雄)|太刀川寛(佐川英二)|森川信(コック長の渡瀬政吉)|中山豊(若山)|安達国晴(大川)|丘寵児(食堂長森山)|佐羽由子(ヒロ子)|紅美恵子(セツ子)|中真千子(ヨシ子)|柳川慶子(ケイ子)|芝木優子(キミ子)|横山通乃(望月みち子)|小西ルミ(井上さかえ)|佐多契子(向井たか子)|田武謙三(酔いどれ老人)|石田茂樹(専務車掌影山)|堺左千夫(公安官青木)|大塚国夫(営業所の男)|谷村昌彦(上野)|平凡太郎(下谷)|塩沢とき(女将)|

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映画 「愛と希望の街」  監督:大島渚

上
正夫の一家3人


2-0_201607030802046d3.png 舞台は、川崎から鶴見あたりの海近く、貧しい人々が住む街。
 主人公の正夫の家は、川崎駅前で靴磨きをする病弱な母と、知的障害の妹の一家三人。

 正夫は中学三年生。卒業すれば就職して家計を助けたいが、母親は息子を是非にも全日制の高校へ行かせたい。そして、一家してこの街を出たい、と言う。
 つまり、高校を卒業して息子にいい会社に入ってもらい、いい給料を得て生活レベルを向上させたい。それまでは、なんとか靴磨きの仕事を続けるつもり。しかし、ここんところ、せきが止まらず、靴磨きを休みがちだ。(その上、中学修了すると生活保護は支給されない。)

 正夫は成績が良いらしい。だから、担任の女性教師・秋山先生も、彼を高校へ進学させてやりたいと考えるが、母親の体調を思う正夫の気持ちを汲めば、就職して定時制高校に通うということになるかと思っている。それなら、何とかいい就職先を世話したい。けれど、彼の進路について、母子の意見が合っていないのは、どうしたものかと悩んでいる。

学生服の正夫の足元に木箱、その中にハトが 2羽
3-0_20160703095912723.png 正夫は母親に言われて、駅前の路上で鳩を売ることがある。家で飼っている数羽の鳩だ。たまに売れて家計の足しにできる。一羽350円。
 正夫は売るのをやめたいが、母は彼の言う事を聞かない。それほど家は貧しい。しかし、売る鳩は妹がペットにしている鳩なのだ。
 正夫の気持ちはふたつ。妹の悲しい顔を見たくない。もうひとつは、新しい飼い主が買った鳩を誤って逃がしてしまい、それが正夫の家に舞い戻ってくることがある。妹は喜ぶが、それをまた売る。正夫は後ろめたさを感じている。
 
 ある日、川崎駅前を通りがかった京子という高校二年生が、正夫の鳩を2羽700円で買った。なぜ鳩を売るの? お金が欲しいから。これを機に京子は、ぎこちない様子で鳩を売る、世慣れていない中学生に対して、好奇心を持った。京子は貧しい人と間近に接するのは初めてだったのだろう。ピュアな救済の気持ちが沸き起こる。

 京子の家は富裕層。父親はテレビなどを製造する大手電気メーカー・光洋電機の役員で、館のような大きな家に住んでいる。京子の兄の勇次も父親の会社に勤務している。幸せな家庭だが、京子の弟は病に侵され入院中、そしてこの家に母はいない。

 その後、京子は秋山先生から正夫の家の窮状を知ることになり、京子は父親に光洋電機で正夫を採用してもらえないかと頼んだ。秋山先生は自校にも採用の門戸を開いて欲しいと思い、京子の紹介で光洋電機を訪ね、京子の兄・勇次と労務課の上司に面会するが、当社は地元の中学からは採用しないと断られた。
 この時から勇次は、楚々として見識ある秋山先生に好意を持つようになった。そしてこのことから、勇次は妹・京子の肩を持ち、父親を説き伏せて地元採用を試みることとなった。
 しかし正夫は採用試験を受けるが不採用となる。試験はうまく出来たと聞いていた秋山先生は慌てて勇次に詰め寄る。不採用の理由は、(テストの成績が悪かったわけではなく) 身元調査の結果が悪かったと言う。帰って来た鳩をまた売るという詐欺まがいの行為があったという調査報告が不採用の理由だと言う。秋山先生も京子も、会社の非情を思うと同時に、そんなことをする正夫に裏切られた気持であった。秋山先生は正夫の家に出向き、正夫を非難した。

 このことで、勇次と先生の関係はギクシャクして終わりを告げ、正夫の母親は鳩を売ることを息子に強いたことを悔んだ。
 しかし、正夫はめげることない様子であった。とりあえず正夫は、近所の人が数人勤める小さな町工場で働くことになった。母親は、あんな工場(こうば)で息子を働かせたくなかったと嘆く。先生を怒らせのだから、もう進路指導はないと思う正夫は、卒業後も、その工場で働くのだろうか。
 光洋電機への受験チャンスは、正夫にとっても秋山先生にとっても偶然の棚ボタ話であった。しかし先生や中学校は、正夫の就職をしっかりフォローしなければならないはず。裏切られた思いはあるにせよ、秋山先生は正夫の卒業までに、いい就職先を見つけてあげるのだろうか。また、この先、一家はあの街を出ることが出来るのだろうか。


正夫と母 (上)  家の裏手はドブ川が流れる (下)
4-0_20160703100409236.jpg あらためて観て思うこと。
 採用時の身元調査はたいがい、地域事情に詳しい地元警察のOBが、企業から請け負って行われることが多い。まずは本人や家族などの犯罪歴を確認し、一方で調査対象の近隣を見て回り、どんな人柄ですかなどと周辺で聞き取りをする。鳩のことは近所の誰かから聞いたのだろうが、通常、現実にはこれ位のことで詐欺行為をしたとして、不採用とはしないし出来ないだろう。
 だが、しかし、勇次は母子家庭が理由ではないと言うが実は、住んでいる所が下層の人びとが集まる街であることを会社側が嫌い、不採用にしたと思われる。(たぶん会社側は犯罪や部落問題や在日コリアンの問題などのいざこざを想定し、これを避けようと意識している。)
5-0.png それは当時としても不採用の理由としては言えないので、代わりに鳩の件を不採用理由として取りあげたのだろう。映画ではそこまで踏み込んでいない。もちろん現代では、もうこういう身元調査はあまり行われないだろうが。

 このように、この映画は正夫の進路を題材にして、貧富の格差と、企業の倫理観や社会的責任と、生活や雇用に対するセーフティーネットについて問題提議する作品である。
 今となっては、体制/反体制 (資本家・ブルジョア/労働者階級) といった怒りの構図を抜け出して、もうすこし冷静にこの作品を観る必要があると思う。

 ちなみに、秋山先生が正夫の家に出向き、鳩の件を詐欺まがいだと正夫を前にして非難したのは残念だ。
 京子は、「もう絶対にあんたの所には帰らないから!」と言いながら、正夫の家に逃げ帰った鳩をもう一度、正夫から買った。そして、京子は家に帰り、この鳩を殺してほしいと勇次に頼む。ふたりはベランダに立ち、京子が放った鳩を、失恋した勇次は猟銃で撃った。このラストシーンは視覚的には確かにドラマチックだが、「悪くなった原因は鳩だ」として、ことの問題点を鳩にすりかえる姿勢が気に入らない。
 さらにだが、映画の中の光洋電機がそうであるように、当時、企業が中卒を採用するにおいて、東北など地方での採用に意欲的である一方、地元川崎など大都市部での採用を行わないのは、都市部の生徒の方が (地方の生徒よりも) やっかいな問題を抱え込んでいる可能性が大きいと、企業が考えていたからだ。
 正夫の就職に関する問題点のひとつは、ここから始まっている。一方で、あの街を出て暮らしたいと願う正夫の母親は、世間の本質をとらえていたと言える。



小雨降る日、京子は正夫の家を訪ねた。
その帰り、カサをさし、ふたり並んで歩く姿をアベックだと、はやし立てられる。
ふたりは、はやした少年たちを カサを振り回して追い払った。 「私、ケンカは初めて!」
ふさぐ心が解き放たれ、互いに大声で笑い合った。京子も泥だらけ。
 
下監督・脚本:大島渚|1959年|松竹|62分|
撮影:楠田浩之
出演:正夫(藤川弘志)|その母・くに子(望月優子)|正夫の妹・保江(伊藤道子)|高校二年生の京子(富永ユキ)|その兄・勇次(渡辺文雄)|正夫が通う中学の先生・秋山(千之赫子)|泰三(坂下登)|久原(須賀不二男)|笹島(川村耿平)|いさ子(瓜生登代子)|矢野(土田桂司)|きん(秩父晴子)|大塚(高木信夫)|労務課長(土紀洋児)|



【 京浜工業地帯を舞台とした映画 】 ~これまでに記事にした映画から。
 タイトル名をクリックしてご覧ください。

 「喜劇 女は度胸」  監督:森崎東  主演:倍賞美津子、沖山秀子、渥美清 (1969年) ・・・羽田 (東京都)
 「煉瓦女工」     監督:千葉泰樹 (1940年) ・・・鶴見 (横浜市)
 「めぐりあい」     監督:恩地日出夫  主演:酒井和歌子 (1968年) ・・・川崎

【 大島渚監督の映画 】 ~同じく、これまでに記事にした映画から。

 「少年」、「新宿泥棒日記」、「夏の妹

京子と正夫と秋山先生  川崎駅前にて
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映画 「ピース オブ ケイク」  主演:多部未華子、綾野剛  2015年  監督:田口トモロヲ

上

 こういう映画を、観てしまった・・・。
バイト先はレンタルビデオ屋
1-0_2016070115141873e.jpg ひとを好きになるのはその時の勢い。しかし、こんなはずじゃなかったってこともある。
 人生、そうそう うまくはいかない。 
 自分の人生、自分が決めると主役気分でいたいが、相手や自分の弱さや、通りすがる運命とやらに振り回されて・・・。でも、この映画はハッピーエンド。

 その夜その時、志乃(多部未華子)の頬に爽やかな風が吹いたらしい。
 それはアパートのお隣の部屋に住む、京志郎(綾野剛)という男に初めて会ったその時だった。

 志乃は今日このアパートに越してきた。これまでの嫌なことすべて振り切って、心機一転、転居してきたのだ。
 のちに分かったこと二つ。始めたばかりのバイト先の店長がこの京志郎だったこと。京志郎は彼女あかり(光宗薫)と住んでいること。
 だが、そのうちまもなく、あかりは行方不明に。志乃はわだかまりを抱えつつも、いつしか京志郎を受け入れる。
 しかし事はそううまく行かない。あとでわかるのだが、京志郎はあかりと会っていた。顛末は観てのお楽しみ。

2‐0 男目線から見て、実際この映画みたいな、自ら招いた三角関係って、あるよね?
 成り行きで始まり、結局良くも悪くも、成り行き任せに身を任す、ドロっとした恋愛と別れ、そして・・・。
 原作は漫画。脚本では、吹き出しをセリフにし(当然だが)、漫画でモノローグ表現にしている箇所も、志乃(多部未華子)に語らせている。これが頻繁で、しつこいのが残念。
 

監督:田口トモロヲ|2015年|121分|
原作:ジョージ朝倉|脚本:向井康介|撮影:鍋島淳裕|
出演:多部未華子(梅宮志乃)|綾野剛(菅原京志郎)|光宗薫(あかり)|松坂桃李(天ちゃん)|木村文乃(ナナコ)|菅田将暉(川谷)|柄本佑(正樹)|峯田和伸(千葉)|中村倫也(多田)|安藤玉恵(黒沢年子)|森岡龍(キンジ)|山田キヌヲ(神田)|宮藤官九郎(阿佐ヶ谷ロフトの店長)|廣木隆一(天ちゃん出演映画の監督)|ほか


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映画 「亀は意外と速く泳ぐ」  主演:上野樹里  監督:三木聡

上
夫からの電話。いつも、これと言った話は無く 「カメにエサをやったか」 で終わる。
夫のペットのカメの亀太郎を、ベランダから投げ捨てたい衝動に駆られるスズメであった。

1‐0

 夫は海外へ単身赴任してしまい、ひとりポツンと毎日を送る、主婦・片倉スズメ(上野樹里)のお話。
 これは実話なのか、それとも暇を持て余す女の誇大妄想なのか。
 話は、てんでばらばら無秩序に破天荒に意味なく展開するおバカな話なので、アホらしくて途中で投げ出す人もいる。

 とにかく、スズメはスパイになった。
 募集広告を見たのだ。(なにしろスパイの募集なので、誰にも見つからないところに、誰にも見つからないサイズのポスターが貼ってあった。偶然、ひょんなことでスズメはこれを見つけた。)
 電話して、言われるままにスズメは、目立たぬ古びた普通のアパートの一室を訪ねた。そこに住むクギタニ夫婦(岩松了、ふせえり)は、日本支部のスパイの元締めであった。指示命令は、どこかの国のスパイ組織から、クギタニ夫婦に知らされる。とは言っても、もう10年来、組織から何の音沙汰はないらしい。夫妻は辛抱強く指示を待ち、日々を送っているようだ。
 一応、面接はあった。面接結果は、スズメがあまりに普通、なのでスパイに適任、ということで合格。そして、なんと、その場で500万円の分厚い札束を渡された。活動資金だと言う。
 スズメは思う。目立たなく普通でいることは難しい。スパイになって、今まで過ごしてきた身の回りやこの街に対しての「見る目」が変わったように思える。それが刺激的で、この非日常感がスズメには嬉しい。

4-0_2016062615580445f.png いつかもし、組織から指示が出たなら、商店街の街頭放送で宣伝アナウンスをするクギタニの妻が、宣伝アナウンスに交えて集合時間を伝える事にしていた。

 誰に・・・? 
 無職でいつもパチンコ屋にいる夫はもとより、商店街のそこそこの味のラーメン屋(松重豊)も普通の豆腐屋(村松利史)も、実はベテランのスパイであった。集合場所は、近くのあの公園と決めていた。

 そしてついに、その時が来た!
 「南国ムードで疲れたあなたをお出迎え。グランドキャバレー・ファイアーダンスは冬でも熱気むんむん。明日午後9時からはサービスタイムでハッスルタイム。」
 これを聞いた皆は驚いた。ついいに来た! 明日の午後9時、公園集合だ。

 集まったのは、クギタニ夫婦にラーメン屋と豆腐屋とスズメ。そして、いつも公園のベンチにいるホームレスの婆さんの6人。
 その時、ベンチの下の公園の地面が静かに動きだし、秘密の入り口が現れた。そして・・・・。

 とまあ、基本こんな話だが、本筋の話のまわりには、たくさんのくだらんエピソードが散らばってます。
 スズメの幼なじみで、掴みどころのない謎の女・扇谷クジャク(蒼井優)は、このエピソード群のなかで登場します。
 中西刑事(伊武雅刀)の部下の福島を演じる俳優・嶋田久作。彼がかつて演じたのが映画 「帝都物語」 の魔人(加藤保憲)だったが、そのイメージを思いだすと可笑しい。
 何故なら 「亀は意外と速く泳ぐ」 では彼は鉄棒の逆上がりができないで、伊武雅刀に笑われる。



監督・脚本:三木聡|2005年|90分|
撮影:小林元|
出演:上野樹里 - 片倉スズメ|蒼井優 - スズメの幼なじみ・扇谷クジャク|
下0岩松了 - スパイの元締め・クギタニシズオ|ふせえり - その妻・クギタニエツコ|要潤 - 学生時代にスズメの憧れの男子だった・加東先輩|松重豊 - スズメが街一番と言う、そこそこの味のラーメン屋のオヤジ(実はスパイの仲間)|村松利史 - 豆腐屋のオヤジ(やはり実はスパイの仲間で射撃のプロ、頻繁に海外へ行く)|森下能幸 - 最中屋のおじさん(豆腐屋の隣りの店)|緋田康人 - スズメがベランダの排水詰まりの修繕を頼んだ水道屋(実は現代版の岡っ引き、つまり刑事の手先)|温水洋一 - 永久パーマという名の美容院のおじさん|松岡俊介 - 韮山|水橋研二 - 白バイ警官|岡本信人 - スズメの父親(ひとりで住んでいる)|伊武雅刀 - 中西刑事|嶋田久作 - その部下・福島刑事(鉄棒が出来ない男)|柿嶋孝雄 - 加東先輩の息子|? - ホームレスの婆さん|亀の「亀太郎」|


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<あ行> の邦画  これまでに記事にした邦画から。 2016.6.14

00_2016062108400748a.jpg
 これまでに記事にした邦画から、<あ行> の映画を並べてみました。
 題名をクリックして、ご覧ください。
 <か行>以降は、こちらからどうぞ。(邦画の五十音一覧リストです)

無題000
監督:溝口健二
1937
監督:久松静児
1959
監督:蔵原惟繕
1966
監督:舛田利雄
1958
監督:枝川弘
1955
監督:市川崑
1950
監督:鈴木英夫
1965
監督:市川崑
1952
監督:滝田洋二郎
2005
監督:上利竜太
2010
監督:ドナルド・リチー
1962
監督:冨永昌敬
2010
監督:矢口史靖
1999
監督:市川崑
1957
監督:瀬々敬久
1999
監督:市川崑
1959
監督:成瀬巳喜男
1953
監督:森谷司郎
1968
監督:北野武
1991
監督:桜井秀雄
1966
監督:清水邦夫/田原総一朗
1971
監督:飯塚健
2012
監督:稲垣浩
1956
監督:吉田喜重
1963
監督:清水宏
1936
監督:松田健太郎
2009
監督:清水宏
1938
監督:真利子哲也
2009
監督:森崎東
1985
監督:野村岳也
1966
監督:渡邊孝好
1994
監督:斎藤寅次郎
1930
監督:深作欣二
1992
監督:緒方明
2004
監督:吉村公三郎
1951
監督:藤田敏八
1974
監督:小津安二郎
1959
監督:溝口健二
1953
監督:清水宏
1941
監督:太田浩児
1961
監督:本多猪四郎
1959
監督:林海象
1996
監督:横浜聡子
2009
監督:高嶺剛
1989
監督:内田けんじ
2005
監督:田中登
1976
監督:仰木豊
2006
監督:岡本喜八
1963
監督:衣笠貞之助
1958
監督:五所平之助
1954
監督:市川準
1999
監督:行定勲
1997
監督:ジャン・ユンカーマン
2015
監督:新城卓
1983
監督:市川崑
1954
監督:マキノ正博
1939
監督:柴田剛
2004
監督:成瀬巳喜男
1935
監督:清水宏
1957
監督:真利子哲也
2012
監督:冨永昌敬
2012
監督:富田克也
2012
監督:望月六郎
1997
監督:鍛冶昇
1966
監督:阪本順治
1998
監督:林海象
1992
監督:井上梅次
1962
監督:井上春生
2008
    


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映画 「貸間あり」  主演:フランキー堺、淡島千景  監督:川島雄三  

上


1-0-0.jpg 喜劇役者が勢ぞろいした映画です。品質は天下一品!
 主人公の五郎(フランキー堺)を軸として、芸達者な俳優たちによる、息の合った素晴らしい群像劇が展開されます。
 ですが、喜劇映画を期待すると肩透かしを食らうかもしれません。何故かと言うと、ドタバタでおかしいのですが、余り笑えない変な映画なのです。

 あるシーンでは、あらかじめ緻密に計算されたスラップスティック・コメディが、ドミノ倒しのように連続するのが観られます。また、しつこいくらいに繰り返されるギャグもあります。加えて、瞬発的で突飛な言動がシーンのあちこちで飛び交います。ただし、そのどれもがアドリブではなく、また上方漫才のような馴れ合い的な笑いでもない。
 さらには、このスラップスティック・コメディやギャグ、その多くは、お話の展開に組せず、そのシーンのその場においてその場限り、あまり意味を持たせていません。よって総じて、突飛で奇異な印象を受ける向きもあろうかと思います。前衛的と言えるかもしれません。私は、ロシア映画 「フルスタリョフ、車を!」をちょっと連想しました。

 お話も一風変わっています。
 通天閣がすぐそこに見えて、大阪の街を眼下に一望できる高台に、底辺で生きる人々が住んでいます。
 そこは土塀に囲まれていて、屋敷門と広い玄関があり、かつては立派なお屋敷だったようです。しかし今は空襲を免れたボロ屋敷。とは言っても大きい家です。アパート屋敷と称している。この屋敷の各部屋に借家人たちが住んでいます。隣りの部屋との境がふすま越しの部屋もありますし、五郎(フランキー堺)は二階の広い洋間にいます。借家人のひとり、お千代(乙羽信子)の送別会をした大広間もある。

2-0-0 登場人物は様々です。
 屋敷の土間でこんにゃく製造の作業場を持つ洋吉(桂小金治)、屋敷内で骨董店を営む老人・宝珍堂とその若い妻で性的欲求不満のお澄、愛人稼業で生計を立てている・お千代(乙羽信子)、エロ写真売りのハラ作(藤木悠)、自称・保険屋の野々宮(益田喜頓)、塗り薬を発明し売出そうとしている熊田(山茶花究)と彼が庭で飼う蜂の一群、洋酒密売で儲けている明るくエネルギッシュで厚かましい女(清川虹子)、化粧品販売員の女(市原悦子)と愛する無職の夫。これに加えて、借家人たちの食事の世話をするスットンキョーな賄いのおミノ(浪花千栄子)、御隠居の大家。
 ここは底辺の人びとの梁山泊とも言えるかもしれません。

 そして映画冒頭、この梁山泊に、江藤実(小沢昭一)という学生が、五郎(フランキー堺)を訪ねてきます。
 江藤実は五郎に大学受験の代行をして欲しい。まずは予備校の模擬試験の受験代行を、と言う。五郎は渋々これを引き受けることになる。五郎は金に困っている。
 
 さて、これらの人びとを背景にして、フランキー堺、淡島千景の二人が主役を演じます。
 ボロ屋敷の借家人・五郎(フランキー堺)が住む洋間には、大きなアマチュア無線機、タイプライター、放送局用テープレコーダー、足踏みオルガン、和太鼓、天体望遠鏡、ミシン、地球儀、書籍などが所狭しと置いてある。
 五郎は物知りでインテリで器用貧乏を絵に描いたような男。どうすれば何々になれるかの、「どうすればシリーズ」全50巻の著者で、英仏独露の翻訳、懸賞小説の著述代行屋で、受験準備指導。そして大学受験代行のように他人に頼まれればなんでも引き受けてしまう気性。

3‐0 例えば、こんにゃく屋の洋吉(桂小金治)に頼まれてその製造方法を伝授したり、結婚話が決まり田舎に帰るお千代(乙羽信子)の旦那三人とのお別れ会(手切れ会)の幹事役や、しまいには宝珍堂にその妻(慢性欲求不満)からの離縁、その根拠捏造のために間男を頼まれ、五郎が女に逆レイプされそうになったり・・・。いやはや、ボロ屋敷の連中には凄いのがいます。
 ま、要するに、お人好しで気安く引き受けて、うまくこなせてしまう。でもどれも、片手間。これが彼の悩み。男として本業も無く、これで良いのか? 内心、忸怩(じくじ)たる思い。

 そんなある日、五郎「先生」のもとにユミ子(淡島千景)がやって来た。陶芸の美術品カタログの制作を先生にお願いしているらしい。ユミ子はモダンな作品を得意とする陶芸家で、街中にオシャレな陶芸ショップを開いている。一本筋の通ったキャリアある独身女性だ。

 このユミ子が、ボロ屋敷に住むことになる。長年、空いている荒れた部屋に、だ。 なぜ? それは、屋敷内の庭に陶芸窯や作業場が作れること。もうひとつの理由は、五郎先生のお傍に・・・。
 もちろん、五郎もその気だし、ユミ子がそう思ってくれることが嬉しい。だが、器用な彼が一番に苦手とするは、好きだと素直に言えないこと。確かに、その方面では初心そのもの。そしてさらに五郎が悩むのは、さしたる本業を持たずフラフラしている自分自身の情けなさ。何としても、今の自分から早く脱却しないと、ユミ子さんに好きだと言えない。彼はそう思っている。
 
 結局、勝ち気なユミ子は、大学受験代行のため九州へ出かけた五郎を追いかけて、彼が泊まる旅館へと向かいます。だが、それを知った五郎は逃げます。旅館の長~い廊下を出口に向かって一目散に五郎は逃げて行きます。それはまるで、映画 「幕末太陽傳」 の居残り佐平次(フランキー堺)のように。

 お話の組み立ては、起承転結を期待するとガッカリするかもしれません。たくさんのエピソードは散らかったままです。だからと言って粗雑な作りの映画じゃありません。実に凝った映画です。
 そして、この映画の見どころは、芸達者な俳優たちによる、息の合った素晴らしい群像劇です。そして、喜劇という手法を使って、(真正面から描くシリアスな映画では出来ない・・・)、斜めの視点から、喜怒哀楽の底辺でうごめく人びとの闊達(かったつ)さを描いているのだと思います。天下一品です。

 
 ロシア映画 「フルスタリョフ、車を!」 (1998年) 監督:アレクセイ・ゲルマン
  「貸間あり」では、ボロ屋敷に住む住人たちが次々に登場し、カメラの前に現れます。その場限りの奇異な会話やギャグがあります。五郎の部屋に置いてあるモノは、昭和34年当時の一般家庭のモノと比べて奇異です。こんなことが私に、「フルスタリョフ、車を!」を連想させました。もちろん、そのスピーディさ・えげつなさは「フルスタリョフ、車を!」の方がはるかに凌いでいますが。  「フルスタリョフ、車を!」の記事はこちらから


下0監督:川島雄三|1959年|東宝|112分|
原作:井伏鱒二|脚色:川島雄三 、 藤本義一|撮影:岡崎宏三|
出演:フランキー堺:与田五郎|淡島千景:津山ユミ子|乙羽信子:お千代|浪花千栄子:おミノ|清川虹子:島ヤスヨ|桂小金治:洋さん(谷洋吉)|山茶花究:熊田寛造|藤木悠:ハラ作(西原作一)|小沢昭一:江藤実|市原悦子:宣伝カーのウグイス嬢で化粧品販売員の高山教子|加藤春哉:その夫・高山彦一郎|渡辺篤:骨董屋の宝珍堂|西岡慶子:その妻・お澄|益田キートン:保険屋の野々宮真一|沢村いき雄:ボロ屋敷の大家で御隠居|加藤武:小松|西川ヒノデ:岸山|長谷川みのる:刑事|津川アケミ:登勢|中林真智子:女店員|頭師満:宏|宮谷春夫:四方山|青山正夫:菩提寺|守住清:地廻り|楠栄二:記者|


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映画 「贅沢な骨」  主演:麻生久美子、つぐみ  監督:行定勲

上
サキコとミヤコ。 マンションの屋上にて

 ふたりの女と一人の男とのラブストーリー。
 ミヤコ(麻生久美子)は、サキコ(つぐみ)という年下の女と一緒に住んでいる。サキコは無職でミヤコに養われている。

1-0_20160613164700194.jpg ミヤコはホテトル嬢だ。不感症だからこの商売をやっていけるとサキコに言っている。
 実は、ミヤコの心は空洞らしい。だから、安心を求めて誰かと繋がっていたい。それで、サキコと一緒にいる。それで、たくさんの男たちと繋がっていたいため、ホテトル嬢をしている。ミヤコはそう思っている。

 ある日、ミヤコはアキヲ(永瀬正敏)という客と出会う。会った時から、ミヤコとアキヲは気が合った。ホテルのベッドで、アキヲを相手にミヤコは生まれて初めてイッタ。
 そののち、ミヤコの方から商売抜きでアキヲを誘った。そのうち、ミヤコはサキコも連れて三人で遊ぶようになる。
 サキコの入院中に、ミヤコは自分のマンションにアキヲを引き入れた。サキコは事態を察して、このマンションを出て身を引くと言う。

2-0_20160613164935d9a.jpg だが、アキヲがサキコに関心を持つようになる。そして、ミヤコはふたりの関係を目撃してしまう。女ふたりの間に気まずい空気が漂い始める。今度はミヤコがふたりの邪魔をしないようにと、部屋を空けることが多くなった。
 しかし結局、サキコはアキヲを受け入れなかった。アキヲはふたりから遠ざかる。

 ミヤコは、やはりサキコとふたりでいる時が一番だと思う。サキコもそう思った。
 そんな矢先、ミヤコが死んでしまう。

 映画冒頭に、ミヤコはサキコに、喉の奥に鰻の骨が刺さって取れないでいると言う。「それは贅沢な悩みだよね」 とサキコはミヤコに返していた。だが、これは咽頭がんの症状だった。

 脚本がサキコの人物像を描けていないがために、サキコが入院することになったビル屋上からの衝動的な飛び降り行為や、アキヲを受け入れなかった理由が、ぼんやりしてしまっている。よって、ミヤコとサキコの、互いが互いを必要としていることが見えてこない。
 この映画、お薦めじゃないですが、先日記事にしたフランス映画 「ママと娼婦」 を観ていて、「贅沢な骨」での三角関係を思い出したので、ここに書いてみました。「ママと娼婦」の記事は、こちらから
 

監督:行定勲|2001年|105分|
脚本:行定勲 、 益子昌一|撮影:福本淳|
出演:ミヤコ - 麻生久美子|サキコ - つぐみ|新谷アキヲ - 永瀬正敏|素子 - 渡辺真起子:サキコの継母・・・縫いぐるみをサキコに渡す女|医師 - 光石研:ミヤコを診察する医師|眼鏡の客 - 田中哲司:ミヤコの客・・・鉄チャンか|花火のカップル - 津田寛治、小林美貴|危険な情事番頭 - 森下能幸:ミヤコが働くホテトルの男|病院の廊下でバレエを踊る少女 - 高木まり子|看護婦 - 山本麻里|クラブの女 - 川村カオリ:ミヤコを誘惑するレズビアン|クラブのDJ - 朝本浩文|

 【行定勲監督の映画】  ~これまでに記事にした作品です。

 「OPEN HOUSE」  出演:椎名英姫、南果歩
 「ロックンロールミシン」  出演:池内博之、りょう、加瀬亮
 「きょうのできごと」  出演:田中麗奈、妻夫木聡、池脇千鶴
 

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映画 「喜劇 女は度胸」  主演:倍賞美津子、沖山秀子、渥美清  監督:森崎東

上
学は、レコード店でひとり クラシック音楽を試聴していた。


 少しビターな娯楽映画ですが、面白い。

 桃山 学(河原崎建三) に一目惚れし、アタックしたのは愛子(倍賞美津子)の方だった。
 そして、学が愛子にプレゼントした一冊の詩集がもとで、学が大変な誤解をし、そのせいで二人の愛の道のりは、大きく遠回りすることになった。
 さらには、この誤解がもとで、学の兄・勉吉(渥美清)の結婚が本決まりし、またこの誤解がもとで、学の両親(花澤徳衛、清川虹子)は、ささくれ立った夫婦の絆を、辛くも繫ぎ止めることができた。
 学が言うに、この一連の騒動はぜ~んぶ、兄さんが悪いのである。学は気弱なインテリだった。だから、兄(渥美清)や父親(花澤徳衛)が、大酒飲みで女好きで下品な人種に思え、学は日ごろから耐えきれないでいた。

母親と学、そして兄の勉吉
1-0_20160611143545238.png この映画の舞台は、東京都大田区。東京湾に突き出た羽田空港がすぐそばの運河沿い。
 学の家も、学が勤める町工場も運河岸にある。運河に沿って、空港利用客向けに大きな看板がいくつも連なって立っている。 
 愛子は、四ツ星電機の工員で女子寮(相部屋)に住んでいる。

 さて、学が愛子にプレゼントした詩集だが・・・、シーンは学の家の中。
 勉吉がちゃぶ台の前で声に出して詩集を読み上げている。それを聞いて、学は驚いた。
 なぜ、勉吉がゲーテの詩を読んでいるのか! その赤い装丁は愛子にあげた本に似ている。当然、学は兄に聞いた。その本、どうしたの。「俺の彼女だよ、ひとみチャン。コールガールだよ。どうせ本名じゃないけどな。四ツ星電機の工員だ。」 
 これを聞いた学は驚愕した。愛子はコールガールか! 四ツ星電機の工員がコールガールをしている、そんなうわさは学も聞いていた。

 実は、学が愛子にプレゼントした詩集だが・・・、
 女子寮で、愛子と同じ部屋の笑子(沖山秀子)が勝手に借りて寮から持ち出した。持ち出した先は、ホテルというより、木造のあいまい宿。つまり笑子はコールガールを副業としていた。その常連客が、学の兄の勉吉(渥美清)。勉吉は何を思ったか、その詩集を笑子から借りて家に持ち帰った。(もちろん笑子は、勉吉に弟がいることも、その彼女が愛子だということも知る由もない。)

 その日のデートは学にとって辛かった。大きな誤解の中にいる学は、「なぜ詩集が」やコールガールのことを率直に問いただせなくて、遠回しに愛子に辛く当たった。愛子は、わけが分からず、かつ不快になって、学に平手打ちを食らわし帰ってしまう。
 後日、学は斡旋屋(有島一郎)で「ひとみチャン」なる女を指名し、恐るおそる そのアパートの部屋へ向かった。
 そこは、ひとみチャン(笑子)の部屋であった。笑子は寮を出たのだ。学が訪れた時、部屋は留守だった。学は部屋の前にいた。そこへ愛子が笑子を訪ねて来た。ふたりは出会い、互いに驚くが、その驚く中身が違う。そこへ笑子が帰って来た。

2-0_20160611144141fff.png これで学の誤解は解けた。しかし、愛子は疑われていたことに大いに傷つく。また、面と向かって確かめない態度が気に入らない。そこへ、勉吉の鼻歌が聞こえてきた。学は兄に会うのを避けて、その場から逃げた。

 部屋には愛子と笑子と勉吉。勉吉は笑子に所帯を持とうかと、すき焼き鍋を前に話している。
 そのうち、窓辺に座って外をぼんやり眺めている愛子に気付く勉吉。傷つき悲しそうな愛子を見て、相談に乗ってやる。そして言う。「そんなウジウジした男、結婚してもいいことない。別れろ別れろ。」 愛子もそうだと思う。(この愛子が自分の弟の彼女だとは、勉吉はまだ知らない。)

 愛子は意を決して別れを言うため、学の「下宿」へ向かった。居たのは父親(花澤徳衛)だった。下宿じゃないんですか? えっ?お父さんですか? 学は自分の家の事、家族の事を愛子に偽っていたのだ。
 学は父親に言っていたのだろう。結婚したい女性がいるが、アルバイトでコールガールをしているかもしれないので悩んでいると。それを聞いていた父親は、「こう言っちゃ何だが・・・、その、そういう商売をした女が家庭を持つってぇのは親としては・・・」と割りとストレートに言いだした。愛子は怒る。「とにかく別れますと伝えてください!」と吐き捨てるように言い帰ろうとした。(父親は愛子の疑いが晴れたことを、まだ知らされてなかった・・・。)


3-0_201606111559041db.png そして、ここが映画の山場。
 その時、学が帰ってくる。学は玄関先で、愛子に何度目かの平手打ちを食らう。
 そこへ、酔った勉吉が笑子を連れて親に婚約発表しようと楽しげに帰って来た。
 そこで勉吉と笑子は驚く。勉吉の驚きは、愛子の彼氏が学であったこと。笑子の驚きは、客だった男が勉吉の父親だったこと。すぐさま、父親は学の嫁になる女の様子を窺いに客として行っていたのだと。続いて、学、勉吉、愛子、笑子の4人それぞれが次々に言い合う。愛子と笑子の間でも言い合うことに。可笑しい! 
 観客も知らないすべてが明らかになって行く。 (観てのお楽しみ。)

 そして、この取っ散らかった事態を収拾したのが、学の母(清川虹子)。それまで無口であった母は、肝っ玉母さんだった。学、勉吉、愛子、笑子と自分の旦那を家に上げて話をまとめていく。だが、その中で母親の告白があり、そのことで勉吉と父親が取っ組み合い、包丁騒ぎから運河にドボン。その隙に、母親は、息子たちの嫁になろうとする愛子と笑子に、ある頼みをするのであった。そして、夜が明ける。

 若い倍賞美津子と沖山秀子。特に若い頃の沖山秀子(1945 - 2011)を見てください。



下監督:森崎東|1969年|松竹|90分|
原案:山田洋次|脚本:大西信行 、 森崎東|撮影:高羽哲夫|
出演:桃山泰三(花澤徳衛)|桃山ツネ(清川虹子)|桃山勉吉(渥美清)|桃山学(河原崎建三)|白川愛子(倍賞美津子)|笑子(沖山秀子)|コールガール斡旋屋の黒田甚兵衛(有島一郎)|春子(春川ますみ)|路子(中川香奈)|太一(大橋壮多)|次郎(佐藤蛾次郎)|スミエ(久里千春)|

【森崎東監督の映画】 ~これまでに記事にした作品です。

 「時代屋の女房」、「生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言」、「街の灯」(これはお薦めしません)

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映画 「煉瓦女工」  監督:千葉泰樹

上岸辺で子守りする、みさ。

いつも明るい みさ。
1-0_20160531225247cc2.jpg













 時は戦前の日本、物語はスラム街に生きる底辺の人々を描いた群像劇です。
 そのタッチは淡々としていて、むやみに悲惨さを振り回さず、時にコミカルさも交えています。この冷静な表現スタンスがこの映画の魅力を支えています。

2‐0
 横浜の鶴見の海べり、運河岸近くのここら辺りに住む人々の様子はこんなです。
 長屋は、まるで時代劇に出てくるように安普請ですし、周りの家々も相当にくたびれています。
 大工や釣舟屋といった定職に就く者も、その稼ぎは少なく、妻や娘がメリヤス工場の女工をしていたり、家で手内職をしている。夫が浪曲(浪花節)、妻は三味線という大道芸(辻芸)を生業にする者もいます。
 家庭をかえりみず家を出て行ったきりの夫もいる。残された妻はヨイトマケ(建設現場の日雇い)に出て僅かな稼ぎを得る。
 しかし、もうどうしようもなくて夜逃げする一家、病弱な体で無理をし亡くなる者もいる。また新たに、この街に転がり込んでくる者もいます。

 この映画は群像劇だが、どちらかと言うと、大人達より子供達に重心を置いて描いている。
 大工の父親、手内職する母親を両親に持つ みさ(矢口陽子)は子守りと家事を手伝う娘。みさは夜間小学校に通っている。大道芸の家の娘・千代と、釣舟屋の娘・菊子は、夜間小学校の、みさの級友だ。

 千代は大人になったら芸者になると言う。病弱な菊子は、姉たちが勤める工場の身体検査に不合格とされ、家族からは冷たいあしらいを受けている。結局、小さな工場で雇ってもらえることになり学校を退学する。夜勤もあるのだろう。千代の一家は夜逃げした。
 一方、朝鮮人のチュイが入学してきた。チュイの一家は日本に来てまもないらしい。みさはチュイと親しくなった。だが、そのチュイも学校をやめた。なんと結婚するのだという。チュイ一家が住む朝鮮人たちの家々は川向うにあって、みさの住むスラム街より、さらに貧しい。

 この映画が持つドキュメンタリー性に注目したい。
 下記の夜間小学校に関する論文は、この映画の背景を理解するのに役立つ。



3-0_20160531234418ea0.jpg 夜間小学校 (国民夜学校)
 こういう小学校が昭和20年まであった。基本的に12歳以上の児童が対象だが、特例として10歳以上でも対象とした。児童労働との関係で出来た学校だ。表 だが実際には、12歳未満の児童も通学していたし、上は20歳前後の例も決して稀ではなかったようだ。また、朝鮮人の子供らも多数入学していた。
 この映画の教室シーンで、みさや千代やチュイが役柄とは言え、どう見ても小学校児童にはみえないのが気になったが、そういうわけがあった。右記の参考資料の表(クリックして拡大)は、夜間小学校の在籍生徒の年齢構成、生徒の職業、朝鮮人の生徒数状況を示しています。
 (参考文献:首都大学東京 機関リポジトリ 「東京における夜間小学校の成立と展開」)
 http://www.repository.lib.tmu.ac.jp/dspace/bitstream/10748/2917/1/20009-8-003.pdf

チュイの結婚式はチュイの家でおこなわれた。
4-1_20160531235526c28.jpg 


  
監督:千葉泰樹|1940年製作(公開は1946年)|63分|
原作:野澤富美子|脚本:八田尚之|撮影:中井朝一|
出演:みさ:矢口陽子|みさの父:三島雅夫|みさの母:三好久子|みさの弟:小高たかし|浪曲師の春風亭梅風:徳川夢声|梅風の妻:水町庸子|その娘・千代:悦ちゃん|家を出て消息不明だったが妻を亡くし、映画ラストでは子供たちを育てる決心をした林造:小沢栄太郎|ヨイトマケに出る林造の妻お兼:赤木蘭子|林造の長男一郎:小高まさる|夜学の先生:信欣三|引っ越してきた4人家族・おきん:藤間寿子|同・政吉:松本克平|同・政吉の妻お作:清川虹子|同・音松:宇野重吉|釣舟屋:中村栄二|釣舟屋の妻:小峯ちよ子(小峰千代子)|釣舟屋の娘康江:志賀夏江|釣舟屋の娘幸子:戸川弓子|釣舟屋の娘菊子:草島競子|チュイ:椿澄枝|チュイの父:滝沢修|チュイの母:原泉|張さん:大町文夫|

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映画 「ファンシイダンス」  監督:周防正行

上
 やっちゃイケナイことをやりたい、この気持ちはほんとうは誰にでもある。
 それが寺で修業中の修行僧なら、なおさらだ。この映画はその不真面目さと理不尽さを喜劇に仕立てた。

 陽平(本木雅弘)の実家は寺だが、住職の父親は戒律など皆目気にしない。生臭坊主なんて言葉はとっくに蒸発している。気楽なもんだ。これで生計が成り立つ。おかげで陽平は東京の大学に行けた。
 陽平は寺の後継ぎを嫌がっていたが、でも就活はしない。一年間、この永平寺のような厳格な寺で修行し認めてもらえば、後継ぎの「資格」が得られる。一年かかる長~い採用試験だが、会社にこき使われるサラリーマンになるより、自営業で自由で楽ちんな寺の住職、という選択肢は十分にあり得る。檀家という固定客も寺の不動産もある。

陽平と郁生と寺の坊主・光輝(竹中直人)
1-0_201605051447128ed.jpg 結局、陽平はたいして迷わず禅寺へ行った。行ったら、寺の前で陽平の弟・郁生(大沢健)がいた。郁生も坊主になりたい。陽平は長男だからあとを継ぐが、継げない郁生の方が坊主という職種(業種)に憧れている。そんなことで、ほかの修行僧と共にこの兄弟の修行の日々が始まる。

 修行は確かに厳しいものだったが、修行僧たちは昨日までは、その辺にいる兄ちゃん達な訳だから、そう簡単には世俗を忘れられない。肉や寿司やケンタッキーフライドチキンや甘いモノが食いたい。若い姉ちゃんにも会いたい。我慢できない。
 しかし、修行が進むうちに分かって来たことは、寺の坊主たちも陰で戒律を犯して、食っちゃいけないモノを食い、カツラかぶってキャバクラに行き、墓場で女の子とデートしていた。陽平には彼女・真朱(鈴木保奈美)がいる。寺の中では、好色坊主が修行僧を物色している。さてさて、結末はいかに。

監督・脚本:周防正行|1989年|101分|
原作:岡野玲子|撮影:長田勇市|
出演:陽平(本木雅弘)|真朱(鈴木保奈美)|郁生(大沢健)|英峻(彦摩呂)|珍来(田口浩正)|慈安(近田和生)|良好(渡浩行)|洋西(ポール・シルバーマン)|一裕(入江則雅)|晶彗(甲田益也子)|光輝(竹中直人)|寿流(菅野菜保之)|南拓然住職(村上冬樹)|アツシ(みのすけ)|硫一(大槻ケンヂ)|マドンナ(広岡由里子)|お婆さん(原ひさ子)|女性レポーター(河合美智子)|社員(柄本明)|社員(蛭子能収)|飛行機の乗客(大杉漣)|塩野厳生(宮琢磨)|塩野静子(宮本信子)|

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映画 「熱海ブルース」  監督:ドナルド・リチー

上

 出演俳優の素の良さと熱海の温泉街を素材に、16ミリモノクロフィルム、セリフなし、アンニュイなジャズサウンドの三つで味付けし、それにコミカル味を少々加えた短編ラブストーリー。

1-0_20160423123531226.png 話は簡単明瞭、行きずりの恋。若い女がひとり、熱海に行く。海を望む旅館で男に出会う。互いに少ずつ魅かれ合い、ついに愛を交わし、だが男はすぐにその場を去る。それを知らずに女は幸せに浸っている・・・。

 ストーリーを追う娯楽作品ではない。50年以上前の公開当時は、とても斬新な印象を与えたのだろう。
 いま観ても新鮮で古さを感じない。かつ観終えたあとに清涼感が残る。またこれは作り手の想定外だが、かつての熱海の風景が、爽やかなノスタルジーを感じさせてくれる。
 ちなみに、本作を観たあとに、続けて何かほかの邦画を観ると、きっとその映画が厚化粧に感じるだろう。

 ドナルド・リチーの作品群の中では、実験映画の色合いがいちばん薄い映画だと思う。
 ドナルド・リチーとは、どういう人?  wikipediaへのリンク https://ja.wikipedia.org/wiki/ドナルド・リチー

 「熱海ブルース」では、温泉街でのロケ風景が作品に生き生きした息吹きを与えている。
 こうした意図で、主人公を街の雑踏に置いて撮るシーンは、当時ほかにもあった。
 例えば、羽仁進の「不良少年」(1961年)、今井正の「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」(1962年)これらはともに浅草だ。石井輝男の「セクシー地帯」(1961年)は銀座だった。(題名のリンクは当ブログ記事にリンクしています)
 加えて言えば、こういう意図はモノクロだからこそいきる手法。モノクロは不要な雑多なものを削ぎ取って、ライブ感ある息吹きだけを抽出する。モノクロはいい。
 「熱海ブルース」、私は好きですね。そして、ドナルド・リチーが版画が好きなのが分かる。

英語タイトル:Atami Blues
監督:ドナルド・リチー|1962年|20分|
脚本:マリー・エヴァンス|撮影:ヒラノヒデトシ|音楽:武満徹|
出演:ワダチエコ|スズキトモスケ|

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映画 「グッド・ストライプス」  主演:菊池亜希子、中島歩  監督:岨手由貴子

上2




1‐0






 出会って4年、共に28歳。ふたりの愛は終わろうとしていた。

 真生(中島歩)が、長期出張でインドへ発った。
 しばらくして、人恋しさかホームシックからだろうか、真生は現地のホテルから、緑(菊池亜希子)に盛んにメールを送るようになった。緑は、気の入らない返事を返していたが、そのうち返事は途絶える。真生は、自分のあほさ加減に気付いてメールを止めた。

 真生が日本を離れて3か月経ったある日、緑からメールが来た。妊娠したようだという。
 真生は急いで帰国し、その足で彼の母親が勤務する病院へふたりして行った。母親は産婦人科の医師。緑は初対面。真生の母親による診察結果は妊娠5か月だった。もう中絶はできない。

 この話の行く先を決めたのは、真生が緑を、母親の病院に連れて行ったことだった。
 意識には無かったかもしれないが、一人息子の真生は母親にジャッジを求めたのかもしれない。この時から真生の母親は緑に対し、遠慮しながらも、しゅうとめとして立ち振る舞い始める。結局、ふたりは別れなかった。真生も緑も、真生の母親に背中を押されたかのように、これからのことを前向きに考え出した。
2‐0 終わろうとしていたふたりの愛は、とりあえず立ち止まったようだ。
 真生と緑はそれぞれ一人住まいをやめて、結婚を前提に同居することにした。だが、ふたりの愛はまだ結婚するということに追いついていない。

 真生も緑も、4年付き合って来た割には、互いに自分の世界を相手に見せてこなかった。
 真生は友人たちとの集まりに、緑を初めて連れて行った。緑は真生を連れて、何年も帰っていない田舎の実家へ向かった。そこで真生は、上京する以前の緑の過去を垣間見ることが出来た。
 一方、真生は躊躇していたが父親とコンタクトをとった。父親は真生がまだ幼い頃に家を出たきりで、その後一度も会っていない。ホテルのロビーで父子は少しの時間を共にした。そののち、父親に招かれて真生と緑は、父親が住む和歌山へ行った。そして、同居している父親の愛人が妊娠していることを知った。真生は言いようのない感情が込み上げてくるのを抑えることが出来なかった。

 夜、真生は父親の家をぷいと出て行った。そのあと、緑は真生の愛犬の散歩に出た。緑は夜道を走る車を避けようとして、誤って深い用水路に落ちてしまう。幸運にも用水路の水位は浅かったが足を骨折して立ち上がれないでいる。そこへ真生が現れる。どうした、大丈夫か。この時、立ち止まっていたふたりの愛が歩き始めた。
 (なぜ、ここに緑がいることを知ったかは、映画を観てください) しばらくして地元消防団員たちによって緑は救出された。
 そして、和歌山の病院を退院して東京へ帰って来たふたりは、間もなく神前結婚式を挙げた。

 グッド・ストライプス。真生と緑は、互いに平行線をたどるようにこれまで来たが、やっと一本の線に合流しました、というお話。 
 表面的にはほんわかドラマだが、身につまされるという方もいらっしゃるかもしれない。
 ちなみに真生と父親は、これからも平行線のまま。緑と彼女の姉も平行線のままなんだろう。こうした平行線の人間関係のたくさんを遠目から見ると、世の中、ストライプス(縞模様)に見えるということかな。



下監督・脚本:岨手由貴子|2015年|119分|
撮影:佐々木靖之|
出演:菊池亜希子(萬谷緑)|中島歩(南澤真生)|臼田あさ美(裕子・緑の親友) |井端珠里(祥子・真生の元同級生)|相楽樹(萬谷桜・緑の妹)|山本裕子(萬谷美幸・緑の姉)| 唐木ちえみ(萬谷しのぶ・緑の母)|大崎章(萬谷和男・緑の父)|杏子(南澤里江・真生の母)|うじきつよし(吉村仁志・真生の父)|中村優子(工藤紗代子・真生の父の恋人)|蕨野友也(ヤーモン・真生の友達)|木ノ本嶺浩(ホーリー・真生の友達)|上原拓馬(タケオ・真生の友達)|

 【菊池亜希子の映画】 ・・・これまで記事にした映画2本。
 「白い息/ファの豆腐」、「森崎書店の日々


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映画 「女経」 (じょきょう)  主演:若尾文子、山本富士子、京マチ子  監督:増村保造、市川崑、吉村公三郎

上

 「女経」では、3つのお話が語られています。
 それぞれのお話は1話完結で、それぞれの主演女優は若尾文子、山本富士子、京マチ子と豪華競演。
 その上、増村保造、市川崑、吉村公三郎の3人の監督の腕比べを楽しむ映画でもあります。

 どの話も、女道楽な男たちが出会った女性たちを、コミカルに時にしっとり、場面によってはシリアスに描いています。
 女は男にだまされ、男は女にいい様ににされる。もちろん、この逆もあり、またどちらでもあり、どちらでもないこともあります。
 さあ、軽快な音楽に乗って、さっそく第1話が始まります。

 制作年:1960年|大映|101分(総時間)|
 原作:村松梢風|脚本:八住利雄 (第1話・2話・3話とも)|

「耳を噛みたがる女」   主演:若尾文子、川口浩

上







2-0_20160409113558210.png




 紀美(若尾文子)の家は、隅田川の川岸につないだ木造船だ。
 ここから紀美は銀座のキャバレーへ出勤している。父親は飲んだくれで、一家4人の生活は紀美が支えている。
 紀美の生きがいは、金を蓄えること。、紀美は店で目星を付けた客たちに、愛人っぽく色気を使い、身体は使わずに金を貢がせ、私腹を肥やしている。こんな手練手管でせっせと巻き上げた金で、紀美は兜町で株を買う。

 紀美は、店の常連客・正巳(川口浩)を商売抜きで好き。
 正巳は社長の息子でただいま後継者として修行中の身。正巳も紀美にまんざらでもない。ないが、正巳は明日、親の言いつけで親が決めた女性と仕方なく結婚する。
3‐0 そして独身最後の夜を楽しみたい正巳は、半分、友達にそそのかされて、紀美とホテルで一夜を過ごした。
 そんな事とはつゆ知らず、紀美は幸せいっぱいだった。正巳に、心の内のいろんな事をすなおに話せた。

 だが翌朝、目覚めると正巳がいない。言いようのないわびしさを抱えてホテルを出、紀美は店の同僚の五月(左幸子)のアパートに転がり込む。紀美はそこで、五月宛には来ていた正巳の結婚式の招待状を見ることになる。むなしい気持ちで紀美は五月のベッドで寝入ってしまう。

 だが、なんとそこへ、正巳が現れた。
 正巳は遅ればせながらこの段になって気付いたのだ。「あとにも先にもあんなに惚れてくれた女は今までいやしない。俺は紀美が本当に好きになったのかもしれない」 これを聞いた友人はすかさず言う。「おい、お前、今日、結婚するんだぜ」 
 友達が制するのをきかず正巳は、このアパートへ駈け込んで来たのだ。
 「何しに来たのよ」 「結婚しよう」
 突然、紀美が笑い出す。「どうしたんだよ」
 「嬉しいのよ、とっても嬉しいのよ。だけどね・・・。ウソなのよ ゆうべ言ったこと、みんなウソなのよ」
 「お金ちょうだい。ホテルを逃げ出したまんまで済むと思ったら大まちがいよ」 
 「(結婚しようって)本気で言ってるんだぜ。俺を嫌いなのか」
 「生活力の無い気まぐれなお坊ちゃん、今は若くてちょおとハンサムだけど・・・」
 「きみはウソつきだね」 「だまされて悔しい? きっと育ちが悪いのよね、アタシ」

 「あばよ」の捨てぜりふを残し正巳は出て行った。
 しばらくして戻って来た五月に向かって、紀美は言う。「アタシと結婚したいんだってさ、どう?この腕」
 「馬鹿だね、あんたって人は」 
 「アタシはダルマ船育ちよ。失恋なんてヘッチャラ、風邪ひいたようなもんよ。さて今夜からまたモリモリ稼ぎます」

 かつて紀美は、式の日取りが決まっていながら(初恋の彼に)ふられた経験があった。だから正巳の結婚相手に同じ思いをさせたくない、と紀美は五月に言うが・・・。
 ここで観客は、紀美が言う事をまともに受けちゃ、話が薄っぺらくなります。映画がいいたいことは、もう少し複雑ですね。

監督:増村保造|撮影:村井博|
出演:若尾文子(紀美)|川口浩(会社社長の跡取り息子・正巳)|左幸子(紀美が勤めるキャバレーの同僚で友人・五月)|田宮二郎(正巳の友人・春本)|ほか


「物を高く売りつける女」   主演:山本富士子、船越英二

上

1-0_20160409204827bc0.png








 深いスランプから脱せずに苦しむ流行作家の三原(船越英二)は、世間を嫌い鎌倉に身を潜めていた。
 映画はいささか幻想的なシーンから始まる。
 人影の無い鎌倉の海岸で、三原は悲しげな風情の妖艶な女と出会う。女は爪子(山本富士子)といい、後日、三原は女の屋敷に招かれた。どうやら一人住まいらしい。がらんとした古風な家だ。
 座敷に通された三原は、風呂をすすめられる。湯船に浸かったころ、がらりと風呂の引き戸が開いて、驚いたことに爪子が入って来て、三原の背中を流してくれた。
 風呂から出てさっぱりしたところで、三原は爪子から、この屋敷の処分に困っている、この家を買ってくれないかと言われる。金にさほど不自由しない三原は、言われるままの金額で買うことにした。それからまもなく、三原は前金を持ってふたたび屋敷を訪れ、爪子が差し出す契約書に押印した。三原は、これでこの爪子を屋敷ごと買えたと思っていた。

2-0-1.png ところが数日して、屋敷を訪れた三原は玄関先で、爪子からの手紙を発見する。しばらく東京へ行っていると書いてあった。
 家はもぬけの殻である。三原はハッとした。女狐にだまされた!

 場面は替わって東京都内。爪子は馴染みの不動産屋の店先にいた。
 しかるべき仲介手数料を稼いだ爪子は自宅に帰り、商売道具である高価な着物の手入れをしていた。
 そこへ、なんと三原が忽然と現れた。驚く爪子。
 三原は爪子に詰め寄り、言った。「君と結婚すればノイローゼにもならないし、小説の種もつきない」(なるほど!)
 そして、三原はにやりと笑った。爪子も微笑み返すのであった。

 さて、爪子の居場所を三原はなぜ分かったのか、それは作家の好奇心。詳しくは映画をご覧ください。

監督:市川崑|撮影:小林節雄
出演:山本富士子(土砂爪子)|船越英二(流行作家の三原靖)|野添ひとみ(ドミノ)|菅原謙二(不動産屋の大石)|潮万太郎(不動産屋の百々)|大辻伺郎(爪子と一緒に鎌倉に付いて行った不動産屋の使いっぱしりの男)|ほか


「恋を忘れていた女」   主演:京マチ子

上

1-0_20160410191136ce2.jpg お三津(京マチ子)は先斗町の売れっ子芸妓であった。
 三条大橋の西詰、三条通り沿いあたりにある、碇家という老舗旅館の息子と恋仲になり、お三津は碇家の女将となった。
 しかし、早くに夫に先立たれたお三津は、碇家に居づらくなっていた。お三津の苦労はここから始まる。
 碇家のあるじで義父の五助(中村鴈治郎)は、お三津の身体と引き換えに碇家に留まることを認め、お三津に碇家の経営をさせた。(と、ここまでは映画の要所要所で都度分かる事柄)

 さて、それからお三津の才覚が花ひらく。その当時、落ち目であった碇家を、修学旅行生相手の宿として建て直す一方で、木屋町にバーを開き、先斗町でお茶屋を営むまでになった。しかし、商いに没頭するお三津は、いつしか恋を忘れた女になっていた。

 昔からお三津とそりの合わない夫の妹・弓子(叶順子)が、突然にやって来て、兄に預けた金があると言って受け取りに来た。結婚資金にしたいらしい。だが、お三津は体よく素気無く断った。これに怒った弓子はお三津対し、芸者あがりで碇家に居座った女、金儲け一筋で女を忘れた女などと口汚く罵った。

 ある日、お三津の技芸時代の彼氏から、会いたいと電話があった。お三津は、懐かしさと好奇心とでも言えばいいか、そんな気持ちで、木屋町の自分の店「ちゃいか」で兼光と会った。会ってすぐ、お三津は兼光の真意が分かった。金の無心であった。と、その時、京都府警が店に乗り込んできた。兼光は詐欺で追われていたのであった。
 木屋町から脇へ入った石畳の路地で、お三津は連行されて行く兼光の後姿をいつまでも見つめていた。

 このところ、身のまわりで、立て続けにいろんなことがあって、お三津は少々疲れていた。そんなある日、弓子が再び来て、東京へ帰ると言う。そして、弓子が金の話を言い出すだろう前に、お三津はさっぱりした表情で、まとまった金を弓子の前に差し出した。
 「なあ、弓子はん。あんさんらにあやかって、うちももう一遍、探してみよう思う。女のほんまの幸せっちゅうもんを。もう手遅れかもしれまへんけど・・・」と照れてみせるお三津であった。※↓

監督:吉村公三郎|撮影:宮川一夫
出演:京マチ子(お三津)|中村鴈治郎(亡き夫の父親・五助)|叶順子(亡き夫の妹・弓子)| 川崎敬三(弓子の恋人・吉須)|根上淳(お三津の芸妓時代の恋人・兼光)|ほか


 さあ、三作ならべて思うに、まずは、第2話の出来が良くない。女狐に化かされている最中が、もっさりした舞台演劇風ないしは時代劇風で、都内に場を移してからは、軽いTVドラマ風。この落差は、分かりやすさを狙ったものだが、狙っただけに、余りに見え透いたものに仕上がった。もちろん、山本富士子ファンにとっては、兎に角、いい映画なのだろうが。
 次に、第3話。これは、京マチコの一人芝居と言っていいくらいだ。他の2作が幾分コミカルなのに対し、第3話はシリアス。シリアスを好む向きにはいい映画になるのだろう。ただ、義妹の弓子とのセリフに、映画が語りたいことが直截に出てしまっていて、身もふたもない。例えば、東京へ発つ弓子を前にしての京マチ子のセリフ※↑。ま、脚本に問題ありですね。
 しかしともあれラストシーン、京マチ子がひとり三条大橋に佇む、これだけで最後のシーンを飾れるのは素晴らしいにつきる。
 よって結局、第1話が一番いいってことになる。しんみりとコミカルのブレンド度合いがほど良い。ただし、3作の中では少し難しい展開。いささかの映画読解力がないと、映画の真意を誤解する。ちなみに川口浩のボンボン風が生きている。

当時の「女経」のポスター、こんな売り方だったらしい。
下2
下 話は変わるが、第3話のワンシーン(右)について。この場所は、鴨川の西岸沿いの道から北を向いて、三条大橋の西詰を見ている。京マチ子はここを歩いて、その先を左に曲がって(三条通りに出て)碇家へ行く。かつて、京阪三条駅周辺から三条大橋を渡って、河原町通りまで行かない三条通りの北側周辺あたりにかけて、修学旅行生を主に受け入れる旅館がいくつもあった。ちなみに、この写真の奥の店は、今はスタバになっている。
 最後に、3作のサブタイトル「耳を噛みたがる女」「物を高く売りつける女」「恋を忘れていた女」、これはあまりにダサい。事務屋が事務的につけたんだろうか。興ざめだ。




 【ピックアップ】  本作の出演者および監督が関係する映画を、過去の記事からピックアップしてみた。

 ◆「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」(1959年)・・・若尾文子、京マチ子、野添ひとみの出演で、監督:市川崑
 ◆「浮草」(1959年)・・・京マチ子、若尾文子、中村鴈治郎、川口浩の出演で、監督:小津安二郎  【撮影:宮川一夫】
 ◆「偽れる盛装」(1951年)・・・京マチ子主演で、監督:吉村公三郎  【この映画は「女経」第3話に近い話です】
 ◆「夜の河」(1956年)・・・山本富士子主演で、監督:吉村公三郎  【第3話と同様に撮影は宮川一夫です】
 ◆「くちづけ」(1957年)・・・野添ひとみ、川口浩出演で、監督:増村保造

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映画 「風と樹と空と」  主演:吉永小百合、浜田光夫  監督:松尾昭典

上


1‐0






 吉永小百合主演の青春映画。
 地方の高校生の幼い青春と、そして東京へ働きに出て世間を知った苦い青春。映画は、その移りゆく青春の過渡期を爽やかに描いています。
 多喜子(吉永小百合)と一緒に、同郷から東京に出て来た仲間5人は、到着した上野駅からそれぞれの勤め先へと分かれて行った。
 多喜子は、安川という家のお手伝いさんとして住み込み始めた。安川の家は大層な邸宅で、高級住宅街にある。一家4人と老・お手伝いさんのばあや(高橋トヨ)がいる。
 映画は、多喜子が生まれ育った世界とは雲泥の差の上流階級をみせながらも、世間知らずの多喜子の快活さを昭和39年風に描いて行きます。

2‐0 仲間5人のうちの武雄と信子は以前からいい関係だった。そして東京に来て間もなく、二人は小さな部屋で一緒に住み始めた。家財道具も満足にない。あまりに早過ぎる結婚に両方の親は今も大反対しているらしい。高一の頃から武雄に好意を持っていた多喜子は、この気持ちの持って行く先が見つからなかった。

 吉夫は、勤務する会社で無口な彼女(山本陽子)を見つけた。多喜子の親友・かね子(大楠道代)は、歌手希望。美容院で働きながら歌を歌える場所を見つけたようだった。しかしその後は、新宿のバーに勤めるようになった。
 多喜子は、急速に大人になって行く、かね子や武雄と信子の後ろ姿を見つめながら、何か自分が置いてきぼりをくった様なわびしいさと同時に、自身の幼さを感じとっていた。

 さて、新二郎(浜田光夫)は多喜子が本当に好きだが、当の多喜子はお友達としか思っていない。そんな新二郎が東京は合わない、工場を辞めて故郷に帰ると言う。多喜子を嫁にするにしても今の給料じゃとても養えない。2万5000円くらいの稼ぎがないとね。俺はいったん多喜子を諦める。そう言って新二郎は自ら自分の人生の舵を切った。
 とにかく、新二郎に限らず東京で働き始めた彼らは、程なく、世間での自分たちの地位を十分に知ることとなった。

 新二郎が上野を発つその日、安川の長男三郎から言われて、多喜子は自分が新二郎を好きなことに気付かされる。そして、あわてて上野駅のホームに向かうが列車は既に発車していた。

 高卒で働く月給は、当時1万円ちょっとぐらいだったようです。(1963年山田洋次監督の「下町の太陽」の記事から。詳しくは題名をクリックしてご覧ください)


下監督:松尾昭典|1964年|日活|86分|
原作:石坂洋次郎|脚色:三木克巳|撮影:萩原泉|
出演:吉永小百合(沢田多喜子)|浜田光夫(多喜子が好きな手塚新二郎)|田代みどり(新二郎の家出の妹・トミ子)|大楠道代(多喜子の仲間・会田かね子)|和田浩治(多喜子の仲間・高柳武雄)|平山こはる(多喜子の仲間・小石信子)|桝谷一政(多喜子の仲間・黒沢吉夫)|山本陽子(吉夫の彼女・斎藤千絵)|川地民夫(多喜子がお手伝いさんで住みこむ安川家の長男・三郎)|十朱幸代(三郎の彼女・浅井秀子)|永井智雄(三郎の父親・安川家のあるじ)|加藤治子(その妻・弓子)|槙杏子(三郎の妹・澄子)|高橋トヨ(安川家のばあや)|高島稔(安川家に来る御用聞き・肉屋の慎太)|荒木一郎(安川家に来る御用聞き・洗濯屋の六さん)|菅井きん(多喜子の母親・沢田たま子)|中村是好(多喜子の父親・沢田敬一)|紀原土耕(安川家の西村運転手)|水木京一(多喜子の故郷の男・オート三輪の運転手)|桂小かん(ローカル線の駅員)|久遠利三(A鉄工の男)|高田栄子(信子の叔母)|北出桂子(ヴイナス美容院の女)|野村隆(レストラン精養軒のボーイ)|二木草之助(酔漢)|茂手木かすみ(若い女)|野呂圭介(若い男)|福田トヨ(中年の女)|近江大介(上野駅の駅員)|河上信夫(老人)|

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映画 「おゆきさん」  主演:和泉雅子、笠智衆   監督:鍛冶昇

上
駅へ迎いに出たおゆきは、平山のあとについて歩く。初対面の二人。(多摩川の土手沿いの道)


 和泉雅子主演の青春映画だが、笠智衆の起用によって深みが出て、大人の映画となった。
 つまり、親の気持ちが分からないと、魅力の半分しか見えてこない。

 おゆき(和泉雅子)は両親を早くに亡くし、深川に住む口うるさい遠縁の叔母(武智豊子)に育てられた。中学を卒業すると、おゆきはすぐに働きに出た。
 今回の「お手伝いさん」の仕事は、おゆきにとって初めてのことであったが、人の紹介で田園調布のお宅に住み込みで働くこととなった。
1-0_20160326130606ef6.png その家のあるじは、大学教授の平山良吉(笠智衆)。妻の正子と一人娘の洋子(松尾嘉代)の三人家族。一家は円満である。家族は家の中では平山をタタと呼んでいる。ただ、平山が頑固なために、この家にはお手伝いさんが居つかない。今度のお手伝いさんはどうだろうかと、毎度のことながら妻と娘は気をもんでいる。

 平山宅の最寄駅、東急東横線・田園調布駅を下車してきた平山を、迎えに出たおゆき。映画はこのシーンから始まる。
 明治生まれの頑固者の平山は、娘の洋子が結婚相手を勝手に決めたことに憤慨している。前もって平山に相談すら無かったのだ。つまり洋子は現代的。妻の正子は夫の気持ちを理解する一方、娘の気持ちも分かる。もっとも平山も仕事柄、日頃、助手や院生らの若いのと付き合っているから、若い女性の気持ちがまったく分からないではないが、父親としてとなると事は違う。

2-0_20160326131952cd9.png そんななか、新しいお手伝いさんのおゆきが住み込みで働き始める。
 珍しいことに、初対面の時から平山は、おゆきとは相性がいいようだ。おゆきの方でも、平山に違和感はなかった。

 ちょうどそのころ、平山にとっては、娘が結婚して自分から離れていくという男親ならではの哀愁、その前触れが平山の心をよぎり始めるころであった。もちろん、そんな心の内は家族にも見せない。(これを演じてみせる笠智衆) そんな平山は、おゆきが持つ少し古風なたたずまいをこころよく感じていた。

 おゆきは活発で、天真爛漫な現代的女性だが、平山が感じたその快さとは、田園調布のような郊外には無い、いささか古風だが下町情緒残る深川、その空気を吸って育ったおゆきが発する粋、とでもいうようなものなのかもしれない。
 また、おゆきはおゆきで、親を知らぬ故に父親というものへの憧れから、平山に父親の匂いを感じとっていた。
 いつしか平山とおゆきの間に、父娘に似た感情が行き来し始めた。平山はおゆきを、大学の野球大会や歌舞伎や食事に連れて行った。正月には日本髪を結わせてやった。

 しかし、おゆきは父親に甘える経験が無い。また、父親に口答えする経験もない。結婚のことで平山と娘の洋子が不和になってることに口を挟んだおゆきは、出過ぎたことと平山から平手打ちを食らった。その瞬間、おゆきは経験したことのない感情を覚えた。それは赤の他人が言い過ぎたことの自戒はさることながら、平手に二人目の娘に対する父親を感じて、おゆきはハッとしたのである。なぜなら、平山は他人に暴力をふるう類いの人間ではないことを、おゆきは知っているからだ。もちろん、平山はすぐに謝った。謝ったが、思わず手を出してしまった事を心の中で整理できずに動揺する平山であった。

3-0 ところが、ここに水を差すことが起きた。叔母がやって来ておゆきに、あの家のお手伝いさんを辞めなと言う。平山との関係をうわさする話を聞いたとのこと。
 それは、確かに大学の助手らが冗談で話されていたことではあったが、彼らも本意ではない。助手らも、美人のおゆきに憧れていた。

 そして、映画はいくつものエピソードを加えながら、洋子は無事、彼氏と結婚し、おゆきはというと、平山の願いから、なんと平山家の養女となったことを描く。さらには、おゆきは平山の研究室の助手・川田という男と相思相愛になり結婚が決まった。めでたしめでたし。
 登場人物たちの人情を細やかに描いた映画です。

平山とおゆき
下



監督:鍛冶昇|1966年|79分|
原作:塩田良平|脚色:倉本聰|撮影:藤岡粂信|
出演:おゆき・祐紀子(和泉雅子)|平山良吉教授(笠智衆)|その妻・平山正子(小夜福子)|その娘・平山洋子(松尾嘉代)|川田・・おゆきを好きになる男、院生(新克利)|碌ちゃん・・花屋で働く男、おゆきの幼なじみ(松山政路)|おゆきを育てた伯母・・深川に住む(武智豊子)|木所・・平山洋子の結婚相手(平田大三郎)|木所の父・・北鎌倉に住む(高野誠二郎)|木所の母(原恵子)|川田の父(若宮忠三郎)|みどり・・川田の婚約者だったが交通事故で死亡(瞳美沙)|本吉・・おゆきを紹介した人(山田禅二)|佐伯教授(浜村純)|阿部教授(小泉郁之助)|村田教授(伊藤寿章)|山内・・助手か院生(野村隆)|吉田・・助手か院生(浜口竜哉)|後藤・・助手か院生(平塚仁郎)|ほか


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叔母に言われて、平山家を離れたおゆき。(深川にて)
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映画 「かぞくのくに」  主演:安藤サクラ、井浦新  監督:ヤン・ヨンヒ

上
娘のリエ(安藤サクラ)、息子のソンホ(井浦新)、そして両親。25年ぶりの再会。


 1972年に、北朝鮮へ息子を、ひとりで移住させた家族の話。
 ヤン・ヨンヒ監督自らの体験をもとにした映画です。

 1997年の夏、両親とその娘リエ(安藤サクラ)は、朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)の一室で、息子のソンホ(井浦新)との面会を待っている。その部屋には、ほかにも我が子や兄弟との面会を待っている家族がいる。
 その皆が、病気治療のため、北朝鮮から帰って来たのだ。やがて、付き添いの人間とともにソンホらが部屋に現れた。

1‐0 一時帰国したうちの1人が、一同を前にして声高らかに、北朝鮮からのメッセージを伝えた。
 「偉大なる金日成(キム・イルソン)大元師様と、親愛なる金正日(キム・ジョンイル)将軍様のご配慮のもと、日本を訪問されたご家族(つまりソンホ達)が、病気治療の任務を立派に終えられますよう。 (また) わが祖国の社会主義建設に貢献するため、無事にピョンヤンへ戻れますよう、 祈っております。」

 このあと、それぞれに親子、兄弟が抱き合った。誰もが、北朝鮮へ渡ってからこの間一度も帰国していなかった。ソンホは、実に25年前ぶりの家族との再会だ。面会の後、皆は我が子を連れてそれぞれに自宅へ帰った。3か月間の滞在日程である。
 ソンホが乗り込んだ両親の車は足立区千住にある自宅に向かったが、一台の車が自宅前まで尾行を続けた。北朝鮮の監視であった。その後も監視の車は自宅前を動かなかった。

 病院でのソンホの診断結果は、脳腫瘍だった。もし手術するにしても、3か月間という短い滞在では、術後の手当や観察が途中で終わってしまう。そのあとを北朝鮮の病院が引き継げるのか。国交が無い上に北朝鮮の病院の状況を日本では把握できない。そもそも、北朝鮮の病院で治療不可能とされて来日しているのだから、医師もソンホの両親もリエも、どうすることもできない。

 一方ソンホは、幼なじみの在日コリアンの友人たちと会えた。ホンギ、ジュノ、チョリそしてスニ。楽しい一時を過ごせた。ソンホにとって特に、スニに会えたことは嬉しかった。なにしろ25年前、当時このふたりは16歳、淡い恋仲だったのだ。ソンホは北朝鮮で結婚し三人の子がいる。スニも医師と結婚している。彼女は夫に言って、もっといい病院を探すように頼むと言ってくれる。

2‐0 さて、なぜソンホは16歳にして北朝鮮へ移住することとなったのだろう。
 現在、彼の父親は、朝鮮総連の東京都本部の副委員長だ。25年前、父親はすでに幹部候補だったのだろう。その当時、朝鮮総連は「北朝鮮は豊かで理想の国」だと盛んに喧伝し、在日コリアンの移住を誘った帰還運動※というのがあった。朝鮮総連の父は、職務柄からも、この運動に16歳の息子を託したのだ。朝鮮へ発つ間際に、ソンホ少年は、叔父に言ったらしい。「僕が行かないと父さんに迷惑がかかるかな・・・」と。 
 しかしその後、彼の国は誰が何処から見ても、豊かで理想の国とはならなかった。

 一時訪日してまだ間もないある日、ソンホら訪日組全員に、突如、帰国命令が出た。みな、治療も始まったばかりである。
 ソンホはリエに言う。「いつも、こうなんだ。突如、命令が出て絶対服従。楽だよ、自ら何も考えなくて済む、思考停止の人生だ。」
 リエは、兄が帰って来た嬉しさと同時に、北朝鮮への恨みの気持ちが膨らんでいた。彼女は、家の前に止まっている車に近づき、乗っている監視の人間に毒づく、そういうシーンがある。また、兄から工作員にならないかと言われるが、そういうことを兄に言わせる北朝鮮が大嫌いと罵った。
 一方、ソンホは父親からの何かしらの言葉を待っていた。だが結局ソンホは、父の口から何も聞くことは出来なかった。また、ソンホの気持ちを代弁する叔父も、兄であるソンホの父親に意見を言うが、父親はだんまりを通した。
 さて、ソンホの父親は朝鮮総連の事務所で、北朝鮮の人間に対して、急な帰国命令を非難した。私は東京都本部の副委員長だが、ひとりの父親でもあると。これに対し、北朝鮮の男は言い返した。帰れば、私にも子供がいる。(命令に逆らって日程を延ばせば、私がどういうことになるのか理解しろ) 誰もが絶対服従なのだ。
 ソンホの母親(宮崎美子)は、帰る息子にスーツ・Yシャツ・ネクタイ・靴など一式を用意した。あわせて、母親は、監視の北朝鮮の男にも同様の一式を用意していた。息子をよろしく、という願いであった。
 
 映画冒頭で、次の一文が映し出される。
 1959年から20数年にわたり、約9万人以上の在日コリアン(在日韓国・朝鮮人)が北朝鮮へ移住した。
 「帰国者」と呼ばれる彼らが日本へ戻ることは困難を極めている。

 この映画のテーマは重大で広く知られるべきものだ。ただ、劇映画としては可もなく不可もなくである。
 2004年製作のドキュメンタリー映画に、三女が自ら進んで北朝鮮へ移住した、在日コリアン家族の記録がある。映画 「HARUKO ハルコ」 だ。母親チョン・ビョンチュン(金本春子)は済州島で生まれた87歳。その息子で在日二世の長男は朝鮮総連の映画カメラマンだった。在日コリアンの家族の歴史が分かる映画です。こちらから一夜一話の映画感想記事をご覧ください。

 なお、吉永小百合の主演で、浦山桐郎が1962年に監督した映画「キューポラのある街」は、帰還運動に対して、余りにも無批判すぎる。一夜一話では、今後もこの映画を取り上げないと思う。
母が用意したスーツを着て、家を出るソンホ。
右から、リエ、叔父、母、そして奥に父親が。
下 ※在日コリアンの帰還運動
 在日コリアン、つまり在日韓国人と在日朝鮮人を募って、北朝鮮へ集団移住あるいは永住帰国しようとさせた運動のこと。1959年から20数年に渡って行われた。
 
監督・原案・脚本:ヤン・ヨンヒ(梁英姫)|2012年|100分|
撮影:戸田義久
出演:安藤サクラ(リエ)|井浦新(兄のユンソンホ)|津嘉山正種(父)|宮崎美子(母)|諏訪太朗(叔父のテジョ)|ヤン・イクチュン(ヤン同志)|京野ことみ(スニ)|大森立嗣(ホンギ)|村上淳(ジュノ)|省吾(チョリ)|ほか

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映画 「旅するパオジャンフー」  台湾のドキュメンタリー  監督:柳町光男

上

左からアレン、1人おいて葉さん、奥さんと息子。
写真を撮っている後姿が葉さんの先妻の子アホン。
自宅前で。
1‐0









 歌や芸を披露しながら、薬を売り歩く旅芸人たち 「パオジャンフー」。
 柳町光男監督が撮った台湾のドキュメンタリー映画です。
 登場人物はみな、あっけらかんとした、たくましい自由人。アウトローな苦労人たちだ。

  「パオジャンフー」は、香具師(やし)つまりテキヤ。日本で言えば、がまのあぶら売りなどにあたる。
 境内や道端で往来の人々に見世物などを興行し、集まった見物人に民間薬を売る売薬行商人たちだ。

2‐0 葉さん一家の稼業はパオジャンフー。ワンボックスカーで各地を巡る。
 出し物は、葉さんは火吹き、後妻の奥さんは前座で歌、女の子アレンは歌と艶っぽいダンス。そして、雇われの黄さんは口上師で、軽快な語り口でステージに賑わい笑いを演出する重要な役どころ。

 一座のスターのアレンは、葉さんの息子アホン(先妻の子)の彼女。アレンはつい半年前、一座に加わったばかりだが、とても堂々としたステージだ。彼女の父さんは警察官で厳父らしい。1年前に家出した。母さんは自殺したらしい。
 ところで、葉さんの息子アホンは小学校中退。何か頼りない感じの男の子。今もってプラプラしている。仕事は一座の裏方を地味にやっている。だから、アレンに馬鹿にされるが、このふたり互いに好き合っている。
 葉さんの奥さんはというと、若いころに家出して以来、結婚も経験してのち、歌舞団で巡業中に葉さんと出会った。そのころ葉さんはひとり身で、息子のアホンはまだ幼児だった。だから奥さんは、アホンにとっては育ての親。その後、奥さんと葉さんとの間に男の子ができた。これが葉さん一家の一座。

 売り物の薬は、皮ふには何でも効く塗り薬。稼ぎは少ないとこぼす奥さんです。
 そんな折、口上師の黄さんが一座を離れた。これを機会に、アホンが口上師に挑戦するチャンスが巡って来た。一座はアホンを応援する。
 だが実は、この先が心配。アホンにとって避けては通れない兵役が待っている。アホンは気がかりだ。兵役に行っている間、アレンは待っていてくれるだろうか? 
 アレンは彼や一座に後ろ髪引かれながらも、台北に行ってデザインの勉強がしたいと、インタビューでそっと打ち明ける。おお、葉さん一座はこの先、いかに!

 さて、映画は葉さん一座以外のパオジャンフーたちを見せてくれる。
 今は引退した呉さんは、いい声で歌を披露しながら、昔のパオジャンフーの様子を語ってくれる。蛇使いのアミンは、その芸と、毒蛇に噛まれる凄さを語る。
 そのほか、幾組かのパオジャンフーたちの様子が映画に映し出される。

 からっとしたドキュメンタリーです。陽気に気楽に観れます。

 
4‐0監督:柳町光男|日本、台湾|1995年|95分|
撮影:たむらまさき|助監督:王明偉 、 范健祐 、 王蘋 、 森田孝利|
出演:父親(葉天爽)|その奥さん・義母(邱兎搬)|息子アホン(葉春鴻)|アホンの恋人アレン(黄春蓮)|口上師の黄さん(黄宗斌)|パオジャンフーの大先輩・引退している月琴弾きの呉さん(呉天羅)|蛇使いのアミン(張財明)|パオジャンフーの大先輩・アミン一座の口上師の曽四郎先生|


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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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