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邦画評だけ見る 直近50作 Archive

映画「ふりむいた花嫁」 主演 : 倍賞千恵子, 淡島千景, 伴淳三郎  監督 : 番匠義彰

上2



 昭和36年(1961年)のカラー娯楽作品、喜劇です。
 映画が語るのは、江戸時代から続く老舗「隅田」という、どじょう料理店を営む一家の話です。
 しっかりした脚本・演出を味わいつつ、さりげなく巧い演技というものを知ってほしい。

1-1_20180212193513891.jpg コミカルな役回りは、伴淳三郎、桂小金治、千之赫子、大泉滉らが主に担い、ラブストーリーは倍賞千恵子と山本豊三、淡島千景と伴淳三郎が担います。

 よってこの映画、伴淳三郎が主役の作品と言っていい。
 伴淳は、憧れのスター俳優といった風な看板は無いがしかし、名脇役というジャンルには収まらない存在感ある巧い俳優だ。
 はしゃがず抑えた演技と、笑いを誘うちょっとした仕草のセンスに、あらためて注目したい。
 これにあわせてか、桂小金治も比較的抑えて演技しているところが好ましい。また千之赫子、大泉滉はともに、伴淳・小金治とは違う角度から笑いを誘う。
 淡島千景が色っぽいが、淡島に対してピチピチ20歳の倍賞千恵子が、この映画の売りなんだろうが、これら俳優に森繁久彌とフランキー堺が加わると、どこの何の映画か分からなくなってしまうな、などと詰まらぬ事を考えた。

 さて、お話です。
 老舗どじょう料理店「隅田」のあるじ・亀太郎(伴淳三郎)には、新一(小坂一也)、その妹の春江(倍賞千恵子)と二人の子はいるが、妻は亡くしている。
 店は有名店で、観光バスのコースにもなっている。由造(桂小金治)や光子(千之赫子)、ベテランのおふく(高橋とよ)といった店の者は毎日大忙しの大繁盛。
 春江も店を手伝い、父にかわって帳場も接客もこなしている。生まれた時から、どじょう屋の中で育った春江はこの店この商売が大好き。

 一方、長男・新一は家の商売にまったく関心がない。大学時代から演劇の道を目指し、卒業後は就職もせず民放テレビドラマのエキストラ(端役)をしている。
 だから、新一に店を継いでほしいと思う父と、長男との口論はいつものこと。中に入るのは春江だ。
 そしてある日、次期連続ドラマで、ついに新一に主役級の役がまわってきた。
 そんなことで父は、娘・春江に婿を迎えることを考え始めた。さて由緒あるどじょう屋に最適な婿とは・・。

 次に男と女の話。
 亀太郎が組合の会合に行くと言っていつも行く先は、実は蓮子(淡島千景)がマダムのバー。
 ここでは亀太郎はある会社の社長さんということになっていて、本当の社長さんで福原という男(三井弘次)と亀太郎とが、店に来てはマダムの取り合いになっている。

 父がそうなら娘の春江は、「隅田」に来た中島という近所に住む男(山本豊三)と親しくなって行く。がしかし、父親は以前から付き合いのある、若きどじょう研究家の南小路邦麿(大泉滉)を勧めるのであった。

 父娘がそうならば、調理場を任されている由造(桂小金治)は、店に雇われの光子(千之赫子)と前からいい仲。だが由造は、あるじ亀太郎から「この店はお前が頼り」と言われ、それを盗み聞きした光子は、あるじは由造と春江さんを一緒にさせようとしていると早合点し悶々とする次第。(亀太郎が調理場の頭から婿養子になったのを知ってのこと) 
 ところが由造も「可愛い春江さんと一緒になってこの店のあるじになれるのかも・・」と思う期待の気持ちも隠せない。
 というわけで、何やらそれぞれにひと悶着ありそうな。

1-2_201802121937276ab.jpg ここで話を混ぜっ返す役が、春江の恋人となった中島君。
 その日、中島は「隅田」の店の奥、春江の家の居間にいた。つまり春江さんと結婚します宣言をしに来たのだが、結果は散々なことになってしまう。
 亀太郎はどじょう研究家の男が念頭にあり、サラリーマンの中島なんて問題外、そのうえ(誰にも言えないが)一番頭に来たのは、なぜか、蓮子を狙うあの福原が社長の会社・福原商事に、中島が勤めていることであった。
 春江はとうとう家出する。兄の新一が家を飛び出て住んでいる下宿に、かくまってもらった。

 さらには、混ぜっ返された話をまとめに入ったのは、バーのマダム蓮子(淡島千景)でした。
 新一の演劇仲間にキリ子(芳村真理)という俳優の卵がいて、この子が偶然にも蓮子の姪だった。そんなことが切っ掛けで、蓮子は新一から、春江と中島の仲を裂こうとするのが、常連客の亀太郎だと知ったわけ。
 それからのその日、今度は蓮子が春江の家の居間にいる。
 亀太郎はドキリとした。あの時のあの事を思い出したのだ。
 それは蓮子の店で、亀太郎は蓮子から真面目な顔で「あなたがお客の中で一番信頼できる方、私のこれからのことを相談したい方」と聞いた忘れられぬ一言。だから亀太郎はドキリとしたのち、ニヤリとした。

 しかし、蓮子の話は春江と中島の結婚を認めなさいという申し出であった。さらには「私が母親役として式に出たい」とまで言われて、亀太郎はうんと言う以外に言うことはなかった。「こりゃ、蓮子が「隅田」の女将になるかも・・」

 式は無事済んだが、亀太郎の隣に座る蓮子、その仲睦まじい二人の様子に妬き通しの福原社長であった。
 それから、亀太郎と蓮子はご苦労様を言い、そのあと亀太郎は意を決して言った。「俺の嫁になってくれないか」
 「ごめんなさい。夫に死に別れて5年、亡くした夫が忘れられない女なんです」

 しょんぼり店に帰って来た亀太郎は由造(桂小金治)に「お冷だ」と言う。「水じゃない」「へい、かしこまりました、特級冷や」(終わり)

 あれっ、「隅田」の跡取りはどうなるんだ?って話は残されたままで終わります。老舗の家の結婚は難しいようですね。
 ちなみに聞いた話ですが、この「隅田」のモデルになったであろう浅草の名店のお嬢さんが、これまた江戸時代からの老舗和菓子屋に嫁いだとか。
 最後に1961年の映画をちょっと。(ひっくり返して見ても1961、という腕時計のTVコマーシャルがあった年)

 東京浅草を舞台にした話の「ふりむいた花嫁」の製作年、1961年(昭和36年)を軸に、日本を見渡してみると・・
 東京の郊外、私鉄沿線では「喜劇 駅前団地」で、とんだ騒動がありました。(監督:久松静児)
 もうひとつの郊外、新しく宅地開発された丘陵地では、社内結婚した若夫婦が大家の二階を間借りしています。「二階の他人」(監督:山田洋次)
 銀座四丁目交差点では、スリの女と若い男がすれ違っていました。「セクシー地帯」(監督:石井輝男)
 「隅田」がある浅草の夜の街の影には、身寄りのない少年もいるんです。「不良少年」(監督:羽仁進)
 横須賀、軍港の街じゃ、やくざの抗争が報じられています。「豚と軍艦」(監督:今村昌平)
 東京大阪間を走る特急列車の食堂車では、コックとウェイトレスとの恋が・・・。「特急にっぽん」(監督:川島雄三)
 その大阪駅の構内では詐欺を商売にする男たちに気を付けましょう。「猫と鰹節 ある詐話師の物語」(監督:堀川弘通)
 そして京都伏見では、老舗の造り酒屋の一家で、やはり、あれやこれやがありました。「小早川家の秋」(監督:小津安二郎)
 それぞれ映画のタイトル名をクリックして、記事をお読みください。
監督:番匠義彰|1961年|89分|
脚本:笠原良三|撮影:生方敏夫|
出演:伴淳三郎(三田亀太郎)|小坂一也(新一)|倍賞千恵子(春江)|三井弘次(福原康之助)|淡島千景(マダム蓮子)|山本豊三(中島和男)|大泉滉(南小路邦麿)|芳村真理(キリ子)|高橋とよ(女中頭おふく)|千之赫子(女中光子)|下村朱実(女中トミ子)|桂小金治(職人由造)|中村是好(鳶職寅吉)|ほか

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映画「強虫女と弱虫男」 主演:乙羽信子  監督:新藤兼人

1_20180209180846c34.jpg

 強い女が主人公の喜劇映画。
 女のバイタリティー(生活力)がスクリーンから溢れ出る迫力、力作です。

 時は昭和43年、映画の舞台となるのは京都祇園と、もうひとつは九州の筑豊。
 母フミ子(乙羽信子)と長女キミ子(山岸映子)は、ネグリジェ・キャバレー「平安母艦」のホステス。
 祇園の四条通から、(たぶん)「花見小路通上ル」あたりの夜の街で、母娘同じ店で働いている。

0 母フミ子と長女キミ子は、大勢いる店のホステス達を尻目に、客への積極的営業で店一番の成績。「はい、おビールいただきましょうネ」
 さらに母娘は、客たちの中から金づるになる「カモ」を探していた。
 母フミ子が見つけ出したのが西陣の織元のじいさん(若宮忠三郎)。店に内緒で小遣いをくれる。
 もう一人は長女キミ子についた客で、母フミ子は“本命のカモはこの男だ!”と言って策略を練って、娘がものにした男が権兵衛(観世栄夫)。権兵衛は「寿司食おう」といってキミ子を連れ出し、織元のじいさんより多額の小遣いをくれる。
 権兵衛は、京の街の外れに畑を持つ大地主(豪農)の一人息子。30歳代半ばの独身でバツ2。

 母フミ子には、長女キミ子の下に長男次女がいて、年上の夫・善造(殿山泰司)がいる。
 善造は筑豊の炭鉱の鉱夫で、これまで一家の生計を担ってきたが、炭鉱が閉鎖。その後は、年老いた善造の転職はままならず、一家5人は生活保護を受ける日々だった。
 善造一家らが住んでいた炭鉱の木造社宅は、閉山後、地元の代議士が買い上げ、この男が大家となる。
 善造ら家賃滞納の住人たちは、大家から嫌がらせを受けている。家の隣にわざと養鶏場を作り、鶏の騒音や悪臭で住人を追い出そうとする。
 善造の家では、生活保護の金で密かに買った白黒テレビや洗濯機があって、これについて大家はあれこれ言う。誰かの密告か。
 さらには、京都へ出稼ぎに行ったフミ子らの収入があるだろと、生活保護受給停止をちらつかせ善造を脅した。これに対し夫婦は形式上、離婚手続きをとって対抗する。
 それでも社宅住人達は立ち退かないので、大家は強硬手段に出た。

 さて、京都。権兵衛の屋敷。(歴史ある大屋敷)
 権兵衛の母(毛利菊枝)は権兵衛を叱っている。家の金を勝手に使って怒られている。
 しかもキャバレーの女・キミ子と結婚したいと言う権兵衛に、母は呆れてなすすべがない。
 最初の嫁は西陣のお嬢さんで家事ができなくて追い出され、二人目は姑に虐められて出て行ったらしい。そして親離れできない一人息子・権兵衛。

 一方、キミ子は、母フミ子の策略に従って、権兵衛に誘われるままにホテルで処女を与えていた。
 このことでキミ子は売春の罪で捕まった。(警察が知ったのは、権兵衛の母の指図で権兵衛の友人が動いた結果だった)
 キミ子もしたたかな女。(映画では言わないが、キミ子も家族を養う意気込みが凄い)
 権兵衛の母はフミ子を呼び出し直談判、10万円を差し出して、手を引いてくれと下手に出た。フミ子は金は受け取ったが、権兵衛の母が用意した証文にはサインしなかった。「私は字が書けません」と。

 さてさてキミ子に惚れ、どうしても結婚したい権兵衛は、フミ子キミ子が住む一間の貸間を訪ねる。
 だが母親フミ子はこの求婚の願い出を蹴った。
 蹴られて気持ちの行き場を失った権兵衛は、かっとなって思わず手元にあった果物ナイフでフミ子の腹を刺した。
 示談で済ませたい権兵衛の母であったが、フミ子はがんとして裁判を選んだ。そして勝つ。
 しかし、その後、家にやくざが押し入り、フミ子は殴られた。(この男が本作一番の強い男) 

 そののちフミ子は娘キミ子を連れて、筑豊の家に帰ってきた。
 帰ってみれば、夫・善造が大家の娘を妊娠させたという騒ぎ。(娘は飛び切り美人だが重度の知的障害がある)
 いや、善造だけじゃなく、社宅の男二人も交わったと言う。
 これをもって、大家は住人を追い出せると踏んでいた。
 だが実は濡れ衣、フミ子は大家を前にして、この一難をなんなくやり過ごす。(実は大家が3人を脅迫しての嘘の自白であった)

 それからまた日が過ぎて、フミ子と娘キミ子が列車に乗っている。
 駅弁を食べながら、「大阪にしようか、でもやっぱり京都よね」
 「あんた、権兵衛に惚れてたんじゃない?」
 ふたりの屈託ない笑い。(終)
 
 昭和40年代の「空気」を体現するネグリジェ・キャバレー「平安母艦」の店内シーンが圧巻。(経験ないが)
 くわえて、キャバレー店の海軍軍服姿の主任(戸浦六宏)が漫画チックさを添えている。
 総じて、新藤兼人作品のうちで好きな映画です。
 エネルギッシュないい映画なので、どこかの映画専門チャンネルで放映して欲しい。
監督・脚本:新藤兼人|1968年|107分|
撮影:黒田清巳
出演:フミ子(乙羽信子)|キミ子(山岸映子)|権兵衛(観世栄夫)|平安母艦の主任(戸浦六宏)|善造(殿山泰司)|フミ子の常連客(若宮忠三郎)|権兵衛の母親(毛利菊枝)|権兵衛の友人・川原(草野大悟)|炭鉱社宅住人・ステテコ(山村弘三)|炭鉱社宅住人・フンドシ(宮田勝)|権兵衛側の弁護士・熊谷(浜田寅彦)|フミ子の長男(中学生)の担任の先生・矢島教師(小川吉信)|キャバレーの歌手(佳川ヨコ)|大家の娘?竜(中村良子)|山野(武周鴨)|オミツ(川口敦子)|

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映画「歌行燈」(1943年)  監督:成瀬巳喜男

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 話は明治の30年頃。
1-0_201801291259301d7.png 将来を期待されていた観世流の能楽師、恩地喜多八(花柳章太郎)がある事でしくじり、父親で家元の恩地源三郎に「二度と謡を口にするな」と言われ、勘当(破門)される。

 その後、喜多八はあてもなく東京を離れ、地方の盛り場で三味線を弾き、当時はやりの博多節を、客の求めに応じて歌う「流し」稼業に落ちていった。(博多節とは花柳界のお座敷唄。喜多八の様な稼業を博多節の「門付け」と言う。街を流し歩き、待合茶屋や呑み屋の前に立って唄い、客や芸者からお金を頂く商売)

2-0_20180129130102072.png 喜多八のしくじりとは、伊勢に住み名古屋辺りじゃ著名な謡曲の師匠、宗山という盲目老人を自殺に追いやったことであった。
 事の発端は、喜多八はじめ家元総出の名古屋公演の折り、ある客が喜多八の芸は未熟だと批判し、ついては「宗山先生に教えを請え」と言われたことから始まった。

 さて、無事に名古屋公演を終えた家元・恩地源三郎と、喜多八の叔父・辺見雪叟は、喜多八を伴い、骨休みにと前から計画していた伊勢に逗留する。これは喜多八にとっては好都合であった。
 宿に着いてのその夜、喜多八は宿をそっと抜け、宗山の家を探し出し、その家に上がり込んだ。

 俺は観世流家元の倅、恩地喜多八だ、田舎者の宗山とやらに、観世流の芸の高さを思い知らせよう。
 一方、盲目の宗山は突然の客人・喜多八を、駆け出しの能楽師と思い、自信たっぷりに謡を披露し始める。
 喜多八は鼓を打つかわりに、その謡に合わせて腿を叩く。そして徐々に、宗山の拍子を先導し、謡の息の間合いを縮めていく。 
 追い詰められて宗山は、ついに息が切れ畳に打っ伏した。(このシーンはお侍で言えば道場破りだ)
 宗山は喜多八に頭を下げ教えを請うとしたが、喜多八は意気揚々とその場を去った。振り返れば若気の至りであった。

 翌早朝、宿に新聞記者が押し寄せていた。宗山の自殺だ。
 家元・恩地源三郎は、記者たちの前で倅の喜多八の非を謝罪し、その場で即座に喜多八を破門にした。

 こうして博多節の門付けとなった喜多八は、三重県辺りで毎日をうつろに漫然と過ごしていた。
 そんなある日、喜多八は同業の門付け芸人・次郎蔵と出会い意気投合する。
 そして奇遇にも、この次郎蔵を介して喜多八は、宗山の娘・お袖(山田五十鈴)を知ることになる。

 父を亡くしたお袖は、親戚に家を追い出されて芸者になっていた。だが、不幸にもお袖に音楽の才が無い。三味も弾けぬ芸者は芸者と言えぬ。身を売るしかない。
 これを不憫に思う喜多八はお袖に舞を教えた。お袖は喜び懸命に習った。それは喜多八の思う罪滅ぼしでもあった。そしていつしか、ふたりに恋が芽生え始める。

 さて、家元・恩地源三郎は、一門に喜多八に優る謡の担い手が育たず悶々としていたが、それでも名古屋興行を決行した。
 そののち、源三郎は弟の辺見雪叟と再び、伊勢の宿にいた。二人はあらためて時の巡りを感じ、その思いを打ち払うべく、芸者でも呼ぼうか、となった。

 街の芸者たちは他の大きなお座敷に呼ばれていたのだろう。芸者置屋にただ一人残ったお袖が源三郎の座敷に呼ばれる。
 そこで、芸の無いお袖は、おずおずと源三郎に舞をみせた。
 さすが家元たちである。その舞の動作に観世流を直観する。これはまぎれもなく喜多八が教えたに違いない!
 そこに、この様子を庭の隅から見ていた喜多八が登場し、お袖は宗山の娘であること、そしてお袖を救い罪滅ぼししたことを話す。
 これを聞いた源三郎は破門勘当を許し、喜多八お袖はじめ叔父も喜び涙ぐむのであった。めでたしめでたし。

 原作者は泉鏡花。
 泉鏡花のあの、装飾音符連射の、艶ある幻想的表現、あれを映画にするのはとても難題。
 そして山田五十鈴の演技だが、1935年溝口監督「マリアのお雪」に、当時18歳で主演した山田五十鈴のあの素晴らしい演技とは、比べようがない出来。(「マリアのお雪」の記事はこちらから、どうぞ)
 別な見方をすれば、本作製作は昭和18年、戦争のさ中によくこんな映画が作れたものだと思う。戦意高揚の影響はフィルム上、「一億で背負へ、誉の家と人」というスローガンと下記の写真だけだ。(東宝のマークの下に東南アジアの地図)

 ちなみに、喜多八が歌う博多節が実にいい。(街の人々がそれを惚れ惚れと聴くシーンがある)
 最後にどうでもいいことだが、喜多八が東京から姿を消したあと、父親が言うセリフ。「たぶん、京都大阪か、あるいは伊勢近江あたりにいるんだろう」の、伊勢近江が気になった。特に近江だ。明治の頃、近江は今よりずっと栄えていたんだと思った次第。
監督:成瀬巳喜男|1943年|93分|
原作:泉鏡花 『歌行燈』|脚本:久保田万太郎 |撮影:中井朝一|
出演:恩地喜多八(花柳章太郎)|お袖(山田五十鈴)|喜多八の父・恩地源三郎(大矢市次郎)|喜多八の叔父・辺見雪叟(伊志井寛)|お袖の父・宗山(村田正雄)|門付け芸人の次郎蔵(柳永二郎)|ほか

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映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」(2016年) 主演:神木隆之介、長瀬智也  監督:宮藤官九郎

上

 奇想天外、波乱万丈なドタバタ喜劇でありながらも悲劇、かつ純情恋愛物語。
 そして、ロックバンドのお話でもあり、さらには輪廻転生、これがストーリーの要となります。
 125分、一気にみせます。

1-0_20180118102841587.jpg 高校生の大助(神木隆之介)の乗る修学旅行の観光バスが突然、断崖絶壁から真っ逆さまに転落。
 気が付きゃ、大助は地獄にいた。どうして、俺が地獄なんだ。それより、俺、死んだの?
 なぜに地獄なのか、それはあまりにも不条理、ほんに些細な罪とは言えぬ罪だった。
 バスに乗っていたほかのクラスメイトは、ここにいない。皆は天国なのか・・。俺だけかよ!

 そんな大助の前に、鬼のキラーK(長瀬智也)が現れる。
 キラーKは地獄のロックバンドのリーダーでギター&ボーカルであった。
 (バンドメンバーは、ドラムのCOZY(桐谷健太)、ベースの邪子(清野菜名))

 お話は、このキラーKと大助を軸に、地獄絵図の世界と生前の世界とを交互に描いていく。
 二つの世界を結ぶのは、大助の輪廻転生。大助はさまざまな動物となって何度も現世に現れる。そして現世で見たことを地獄以外には行けない鬼のキラーKに話す。
 (現世に比べて地獄の時間の歩みは遅く、地獄のちょっとした時間が現世では1年2年であったりする。結果、現世の未来へのタイムマシンの様相を呈する)

2-0_20180118103018cc6.jpg この舞台仕掛けの中、大助はあこがれの同級生ひろ美(森川葵)のその後を知り、またキラーKの彼女なおみ(尾野真千子)のその後も知ることとなる。それぞれの恋愛に共通するは純情恋愛物語。

 さて地獄では、ド派手なロックバンドの決戦が繰り広げられる。
 なぜか地獄にいる、大助の同級生・じゅんこ(皆川猿時)率いる地獄のガールズバンドは強敵であった。

 しかし、そんなことより、大助あこがれのひろ美ちゃん、キラーKのなおみちゃんのことが気にかかかるわけでありますが、映画はそれをちゃんと語ります。
 さらには、ついに大助は天国に行けたのですが・・・。(この天国の様子が可笑しいです。仏(荒川良々)、神(瑛蓮))

 兎に角、ひっちゃかめっちゃかなストーリーなのですが、宮沢りえ(20年後のひろ美)、烏丸せつこ(牛頭)、田口トモロヲ(馬頭)、みうらじゅんも出演しています。
 また、憂歌団の木村充輝(小鬼)や、ギタリストのChar(鬼)や、シシド・カフカ(地獄のガールズバンド・ドラマー)らも出ています。

 サウンドについて言えば、ハードロックな演奏が大半だが、キラーKがバンドを従えて大助に対して歌うファンキーな曲がいいし、大助の同級生で転落事故の生存者であったが40歳代になって不倫で地獄へ落ちた松浦(古舘寛治)が一人でキーボードを弾くシーンでのファンキーな演奏がいい。

監督・脚本:宮藤官九郎|2016年|125分|
撮影:相馬大輔|
下出演:関大助(神木隆之介)|キラーK、生前は近藤善和(長瀬智也)|近藤善和の彼女・なおみ、あだ名は死神(尾野真千子)|大助が想いを寄せる同級生・手塚ひろ美(森川葵)|COZY(桐谷健太)|邪子(清野菜名)|大助の同級生・じゅんこ(皆川猿時)|大助の同級生で生存者であったが不倫で地獄へ落ちた松浦(古舘寛治)キラーKからウェストバックと呼ばれる|閻魔大王のえんま校長(古田新太)|20年後のひろ美(宮沢りえ)|地獄のガールズバンド・ドラマー(シシド・カフカ)|地獄のガールズバンド・ベーシスト(清)|大助の母親(坂井真紀)|仏(荒川良々)|神(瑛蓮)|MOJA・MJ(みうらじゅん)|鬼ギタリスト(Char)|ジゴロック挑戦者(野村義男)|ジゴロック挑戦者(ゴンゾー)|地獄の軽音楽部(福田哲丸)|地獄の軽音楽部(一ノ瀬雄太)|地獄の軽音楽部(藤原一真)|地獄の軽音楽部(柳田将司)|歌うたいの小鬼(木村充輝)|鬼警備員(関本大介)|緑鬼(ジャスティス岩倉)|牛頭(烏丸せつこ)|馬頭(田口トモロヲ)|鬼野(片桐仁)|

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映画「心に花の咲く日まで」 主演:淡島千景  監督:佐分利信

上

 いい映画を見つけました。よく出来た作品です。
 「昭和30年」を生きる、すず子(淡島千景)という女の日常を、あたたかく描く映画です。
 穏やかな喜劇でありますが、スパイスを効かせた突飛なエピソードが所々に仕掛けられています。

1-0_20180110122812af3.png 畑が続く武蔵野の郊外に住むすず子は、夫の笹山三吉(芥川比呂志)と赤ちゃんの三人暮らし。
 三吉は造船会社の技師でしたが、会社が倒産し今は無職。
 そんなことで夫にかわってすず子が、習い覚えた洋裁でわずかな稼ぎをしています。
 三吉はというと、好きな交響曲「田園」のレコードを聴きながら子守りや家事をし、時に造船の研究をしています。
 すず子は、呑気で優しいそんな三吉が好きですが、二人そろって銭湯にも行けない貧しさが、いつまでも続けられないと思っています。
 三吉はあれこれ職探しをしていますが、贅沢にも選り好みしています。それは、なにしろ、三吉は口下手で人との応対が上手くないため。すず子も仕方ないなと夫を見守っています。でも時々いら立ちます。

 さて、こんな一家を見守る人々がいます。
 すず子と同窓の原さん(丹阿弥谷津子)は、この家に少しのお金を貸したり時折、土産を持ってきます。原さんは、友達のすず子が心配ですし、いい旦那と暮らしているすず子を羨ましく思っています。実は原さんは妾の生活をしているのです。(そんな気持ちをすず子に吐露するシーンがあります)

 すず子の実家は都内にある大きな家です。父親は既に他界しているようで、いまは裕福ではありませんが、母親は健在です。弟も陰ながら姉を気遣います。
 そして、造船会社の元上司たちも三吉の行く末を心配しています。

2-0_20180110122932fd0.jpg 続いて、突飛なエピソードとなる喜劇的登場人物も、この一家を見守っています。
 いや、すず子と三吉が世話しているといった方がいいかもしれない二人が、すず子の家の隣に住む、森下さん(杉村春子)と、その愛人で森下さんよりずっと年下の志野君(仲谷昇・当時26歳)。(三吉が志野君と呼ぶのです) 
 森下さんと、美男子で小説家志望の変人で女たらしの志野君とのドタバタは、この映画に賑わいを添えます。

 そして、すず子の姉(文野朋子)。姉は出戻りで実家にいます。離婚がそうさせるのでしょうか、姉は独善的でガメツイ女です。すず子が盲腸で入院し、その入院費が払えないという時、姉は金を貸そうかと言います、銀行利子で。

 結局、入院費は三吉が家の家具や大切な蓄音機を売って払いました。
 退院後、家に帰ったすず子は、家ががらんとしているのに驚きます。
 三吉が売らずに残したものは、すず子のミシン、ベビーバスケット、三吉の造船研究模型、そしてテニスラケット。
 学生時代、三吉はテニスが上手で、すず子は三吉のその姿に惚れたのでした。


 話は、三吉の元上司が、三吉に研究所の職を世話するところで穏やかに終わります。
 この映画、ところどころでフォトジェニックなシーンを見せます。(お見逃しなく)
 そんなシーンも手伝って、この映画の中を吹く、ふくよかなそよ風が感じられれば、いいですね。これが本作の肝です。 
 小津映画などでの杉村春子の役回りに慣れ親しんだ向きには、この映画の森下さん役の演技が写実風に見えるかもしれませんが、そうではありません。

監督:佐分利信|1955年|109分|
原作:田中澄江|脚本:田中澄江、井手俊郎|撮影:藤井静|
出演:笹山三吉(芥川比呂志)|笹山すず子(淡島千景)|森下さん(杉村春子)|志野君(仲谷昇)|すず子の母親・山崎とき(長岡輝子)|すず子の姉・山崎たか子(文野朋子)|すず子の弟・山崎良(飯田紀美夫)|すず子と同窓の原さん(丹阿弥谷津子)|ほか

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映画「川の底からこんにちは」 主演:満島ひかり  監督:石井裕也

上

 「どうせ、私は中の下」だしと言い、何事もはなから「しょうがない」と諦め、流されるままに生きて来た佐和子(満島ひかり)。
 しかし映画後半、佐和子の、開き直っての大進撃に、スカッとするお話。
1-0_20171215101247bdf.png
 佐和子は、家出のついでに、高校の先輩を引っかけて駆け落ち。
 東京へ出て、はや5年。
 この間、愛に恵まれず、先輩含め4人の男に次々に捨てられ、今は派遣でOL、独り住まい。
 5人目の男は職場の正社員、健一(遠藤雅)で、彼はバツイチ子供一人付。
 佐和子に結婚の意思はないのに、健一は娘に、佐和子のことを「新しいお母さん」と言っている。

 父親が入院したという知らせが佐和子に来た。良くないらしい。
 叔父は、見舞いを期に、実家に帰って来いと佐和子に言う。
 母親は既に他界していて、父親は一人でいる。
 
 佐和子の実家はシジミを販売している自営業。
 近くの湖から採れるシジミを漁師から買い上げ、パックに詰めて出荷する。
 出荷作業の工場には10数人のおばちゃんが働いていて、みな漁師の主婦。
 だけど実家の商売はまったくの右肩下がりの廃業寸前。

2-0_20171215102349ad9.png 健一は突然会社を辞めて、佐和子の実家へ子連れで行くと、ある日出し抜けに佐和子に言った。ハッ?私、聞いてないし!
 佐和子はこの5年、一度も実家に帰ってない。帰らない帰れない事情がある。
 それは父親に対する嫌悪感。工場の女を家に連れ込んだ現場を見てしまった。まだ多感の年ごろだった。

3-0_20171215102751d63.jpg しかし、ま、とにかく、佐和子と健一親子は実家に帰ってきた。見舞いもした。
 叔父だけは佐和子を気遣うが、周囲の視線、とりわけシジミ工場のおばちゃん達は、佐和子は父親を捨て駆け落ちした女だ言い、冷たい。

 そんななか、こともあろうに健一が工場の女と駆け落ちする。女は工場で唯一若い女、佐和子の同窓。

 このことが佐和子の心のスイッチをオンにした。ここから佐和子の人生、ヤケッパチの大進撃が始まった。
 私が商売を立て直す!
 思いもよらぬこの気迫に父親もおばちゃん達も、佐和子に惚れた。
 あとは観てのお楽しみ。

 いい映画です。娯楽作品に仕上がっています。

監督・脚本:石井裕也|2009年|112分|
撮影:沖村志宏|
出演:木村佐和子(満島ひかり)|新井健一(遠藤雅)|新井加代子(相原綺羅)|木村忠男(志賀廣太郎)|木村信夫(岩松了)|遠藤進(菅間勇)|塩田敏子(稲川実代子)|塩田淳三(猪俣俊明)|村岡友美(鈴木なつみ)|斎藤響子(牧野エミ)|月島さん(工藤時子)|杉山さん(安室満樹子)|中島さん(しのへけい子)|江口さん(よしのよしこ)|高木正樹(並樹史朗)|サユリ(山内ナヲ)|モトカ(丸山明恵)|腸内洗浄スタッフ(目黒真希)|川上良男(森岡龍)|ギャル(廣瀬友美)|医者(潮見諭)|保育園の先生(とんとろとん)|

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映画「天の茶助」 主演:松山ケンイチ  監督:SABU

上

 あなたの現在過去そのすべては、天界の、大勢いる人生脚本家のひとりが執筆した脚本に書かれている。
 あなた担当のその人生脚本家は、今このときも書き続けている。あなたのすぐの未来を、先の未来を。

0_201712051850155e3.jpg このユニークなドラマ設定がなかなか良い。
 挿入される有名映画のパロディ(下記)や、コミカルなシーンもいい。アクションシーンも悪くない。
 また、時系列の中で、その間の推移を語る説明シーン、これをヒョイと省略ジャンプする場面切り返しに、スピード感があって荒削りで斬新だ。
 沖縄の伝統芸能エイサーの踊り、あの衣装、太鼓の響きの中に、天界から降りた主人公・茶助らを放り込んだのもGood。
 松山ケンイチを選んだキャスティングもいい、こんなお話には、たぶん彼が一番最適だ。
 白塗り顔の、狂気警官の鋭い笑いはスクリーンを突きぬけて行く。テント芝居の役者のよう。

 だが、良いのは、ここまで。
 情に訴えるシーンが、とても冗長。ゆったり見せて堪能してもらおうとの顧客サービスが見え見えで、観ていてしんどい。
 そのほか、各所に、分かりやすさの配慮が散りばめられていて、ここまでしなきゃいけないんだ。
 茶助の念力で不治の病人を直すシーンで、茶助の念力疲れを、目の下のクマのメイクで表現させるところは、遊びかな。
 とにかく、良い/良くないが、マダラ模様を呈して展開して行く。
 売れなきゃが第一なんだろうけれども、プロデューサー・市山尚三のお考えか。着想が良いだけに、踏ん張ればもっといい作品になったのに、残念。

 ストーリーはこんな感じ。
 天界でお茶くみをしている茶助(松山ケンイチ)は、ある人生脚本家が担当する脚本中の女性ユリ(大野いと)に惚れていた。
 しかし、脚本を盗み見するとユリは、この先、交通事故死するようだ。
 そうなるのは、他の人生脚本家が書いている脚本の中で、ある男が自暴自棄になって車を暴走させるからである。人生脚本家は他の脚本家が書く内容を曲げられない。

 ユリの人生を書く脚本家は茶助に言った。「ユリを救えるのはお前だけだ。下界へ行け。私は脚本でお前を支援するから。」
 このあとは観てのお楽しみ、かな。

監督・原作・脚本:SABU|2015年|105分|
プロデューサー:市山尚三|撮影:相馬大輔|
出演:早乙女茶助(松山ケンイチ)|新城ユリ(大野いと)|骨董店の種田潤一(大杉漣)|ラーメン屋の彦村ジョー(伊勢谷友介)|チャーリー・ポン(田口浩正)|早乙女茶子(玉城ティナ)|白塗警官(オラキヲ)|康夫(今野浩喜)|根岸一輝(RYO)|加賀謙一(DJ KEIN)|ヒットマン(山田親太朗)|黒竜会:黒木(寺島進)|ほか

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 映画「タイタニック」や「ゴースト/ニューヨークの幻」のほかに、ウォン・カーウァイの香港映画「恋する惑星」のサングラス女性や、アニメ「有頂天家族」に出くるような商店街アーケード屋根上シーンもあった。
 また、ラーメン屋の彦村(伊勢谷友介)が女優の女性と出会い頭にぶつかるシーンは、「ノッティングヒルの恋人」ですね。
 そのほかに私が連想した映画。
 天界から降りてきた男の背に羽があるのはヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」、狂気じみた白塗り顔の男は、岩井俊二監督の「スワロウテイル」に出てくる男を思い出す。
 アーケード街で格闘する強い男は、真利子哲也監督の「ディストラクション・ベイビーズ」をイメージした。天界の人生脚本家たちの白装束は韓国映画の「祝祭」を連想した。
 それと病気を治す茶助の不思議な念力は「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」あたりかな。
 (画像をクリックしてお読みください)

写真
「恋する惑星」
写真
「ベルリン・天使の詩」
写真
「スワロウテイル」
写真
「ディストラクション・ベイビーズ」
写真
「祝祭」





映画「雁」(がん) 1953年 主演:高峰秀子 監督:豊田四郎

上





0_201712031104205da.jpg















 明治13年(1880年)ころのお話です。
 明治になったとは言え、人々の心は、まだまだ江戸時代のままだったでしょう。そんなことを念頭に観てみましょう。
 舞台は、下谷練塀町(秋葉原駅周辺)と、上野不忍池あたり。

 練塀町の裏店(裏通りの貧乏長屋)に住む父娘、名は老父の善吉と、その一人娘のお玉(高峰秀子)。
 老父は飴細工をして売り歩く飴屋だが、もう歳で商売ができないようでした。また、お玉に稼ぎはなかった。

 高利貸しの末造(東野英治郎)は、ちょいと金が貯まって妾が欲しい。そこで、おさん(飯田蝶子)という女が動いて、未造にお玉を勧めた。この話がうまくいけば、おさんは未造からの借金が帳消しになるのだった。
 おさんは出戻りのお玉に言った、これで父親も楽ができるんだよ。また、おさんは未造のことを呉服屋の旦那だと言って嘘をつき、事をすんなりすすめようとした。

 未造がお玉のために用意した小さな妾宅 は、不忍池の池端から坂を登ったその道沿いにあった。
 未造は家に妻子を置いて、妾宅に頻繁に通った。だが、浮気はばれる。人の口に戸は立てられぬ。
 早くも未造の妻(浦辺粂子)は、お玉という女と、この妾宅の場所を密かに突き止めていた。お玉は未造の妻の影に怯えた。
 
 妾にならざるを得なかったお玉だったが、まだ二十歳を過ぎたかくらいの若さ。
 ある日、妾宅の前を行く東大生の岡田(芥川比呂志)に、お玉は恋心を抱くようになる。岡田の方もまんざらでもない。
 しかし、これは悲恋に終わるのであった。


 観終えて思うのは、高峰秀子の演技が妙に硬い。どうしたんだろう。
 それに演出手法が古典的。例えば、同監督の「泣虫小僧」は1938年製作だが、そんな古さはないのに。(「泣虫小僧」の記事は下線部をクリックしてご覧ください)

監督:豊田四郎|1953年|104分|
原作:森鴎外|脚色:成澤昌茂|撮影:三浦光雄|
出演:お玉(高峰秀子)|その父親・善吉(田中栄三)|高利貸しの末造(東野英治郎)|その妻・お常(浦辺粂子)|岡田(芥川比呂志)|木村(宇野重吉)|お玉の住む妾宅の隣家に住む和裁のお師匠・お貞(三宅邦子)|ほか

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【 豊田四郎監督の映画 】

 これまでに記事にした作品です。(画像をクリックしてお読みください)


写真
「泣虫小僧」
写真
「夫婦善哉」
写真
「猫と庄造と二人のをんな」
写真
「雪国」
写真
「珍品堂主人」
写真
「新・夫婦善哉」
写真
「台所太平記」
写真
「波影」


映画「西陣の姉妹」 監督:吉村公三郎

1_20171130084141042.jpg
長女・芳江(三浦光子)、次女・久子(宮城野由美子)、三女・富子(津村悠子)


 生活の糧を失う弱者たちを、新藤兼人が「京都」を舞台に脚本化、これに「偽れる盛装」「夜の河」と京都を描くを得意とする監督、吉村公三郎が腕を振るう。(下線部から当該記事をご覧ください)
 物語は昭和27年ごろ、西陣の織元の老舗「大森屋」の三姉妹を描く。

 振り返れば戦前から、和装のニーズは減っていた(と、セリフにある)。
 くわえて、手工業から機械化工業化へと進む中、京都西陣は手工業の伝統を守り、かつ高級品を生産するがゆえに沈滞、衰勢の状況であった。

 日本中の呉服屋に名の通った老舗大森屋、ここのあるじ大森孫三郎がある日、ピストル自殺。
 しかるべき各方面に借金を重ねても資金繰りがうまく行かずのことであった。
 残されたのは、妻のお豊(東山千栄子)と、長女・芳江(三浦光子)、次女・久子(宮城野由美子)、三女・富子(津村悠子)の三姉妹に、番頭の幸吉(宇野重吉)や大森屋の機(はた)を織る織り子たちと、西陣にある下請け工場(こうば)の織り子たち。そして莫大な借金。

2_201711300845125bc.jpg もとより、妻のお豊と三姉妹の女四人の誰もが、大森屋の今後を考えることはできなかった。
 そこで番頭の幸吉が、再建に向けての手はずを整えた。幸吉の申し出にお豊が承諾したのだ。幸吉は番頭でありながら心底、大森屋の人間であった。
 しかし、結果これがうまくいかなかった。肝心の問屋が破産し納品できなかったのだ。

 織り子たちがざわめき始める。
 わけても、高利貸しの男・高村(菅井一郎)が一気に高圧的な態度に出る。
 高村は既に、大森屋のあるじに金を貸していた。そして番頭・幸吉の手はずには、高村からの新たな借金も含まれていたのだ。
 高村は大森屋所蔵の掛け軸、器など道具類を持っていく。
 一方、下請けの織り子達が、何かしらの金を求めて談判にくる。
 これらに対応したのは、唯一気丈な次女・久子(宮城野由美子)であった。

 また、高村の高圧的な態度に刃向かったのは、日ごろ従順でおとなしい番頭の幸吉であった。
 事件の発端は偶然の出来事だった。
 高村に差し出す大森家の道具類の中に、袋に納めた日本刀があった。その日本刀を高村が、幸吉の手から強引に奪い取ろうとしたその時、高村は袋ごと刀の鞘(さや)の部分を握って引っ張ったため、結果、抜き身の刀を幸吉が持つ格好になり、そのままに幸吉は高村をじっと見た。

 そして幸吉は日本刀片手に高村に歩み寄る。恐れをなした高村は後ずさりし玄関へ。ここで幸吉が高村に切りつける。
 傷を負った高村は、あわてふためいて大森家を飛び出し、大通りへ。
 刀を持って追いかける高村。この沙汰を見守る通り沿いの人々。
 ついに警察が駆け付け、野次馬が取り囲む中、幸吉は現行犯逮捕。

 結局、人が中に入り情状酌量の末、幸吉は大森家に戻って来る。
 戻った幸吉の胸に次女・久子が顔を埋める。これまでの久子の緊張が解けて行く瞬間であった。

 しかし、大森家に金を貸した人々、高村はじめ、大森屋あるじと幼なじみの佐藤(進藤英太郎)などは、ついに土地家屋の引き渡しを迫る。
 そんな中、久子は幸吉に頼みごとを言う。戦争で夫を亡くした姉の芳江(三浦光子)と結婚してくれと。
 これを聞いて幸吉は静かに驚く。私はあなたが好きだった、そしてそれをご存知ですよね。久子は承知とうなずいた。
 そののち、大森屋の人々は散り散りに去り、家屋が取り壊され、敷地が露わになったころ、久子は西陣を去っていくのであった。

 菅井一郎演ずる悪役・高村の悪行に観客が打ちのめされる中、大通りを逃げ走る高村を、幸吉が日本刀を片手に追いかけるシーンで、観るものみな、幸吉アッパレと溜飲を下げることになるのでしょう。

 大森屋のあるじは、祇園の芸者・染香(田中絹代)を囲っていた。あるじの死後、この染香は、あるじが彼女のために建てた家を売って金に換え、妻のお豊に差し出した。また、再びお座敷に出ることにした染香は、お茶屋で高村に会うが皆の前で彼を罵倒する。ここでも観客は喜ぶだろう。

 大森屋が自殺した現場は、先斗町の鴨川に面したお茶屋の座敷であった。彼は幼なじみの佐藤(進藤英太郎)をこのお茶屋に呼んで再度の借金を頼んだが素気無く断られてしまう。そのあとの自殺であった。
 映画冒頭、このお茶屋の外観をカメラは鴨川から構える。二階でどんちゃん騒ぎをする景気のいい人々を撮影し、そして一階の大森屋がいる部屋を映し出す。

 番頭の幸吉が、兄に会うシーン。このシーンは堀川にかかる橋の上。2人が立つ背景に路面電車(京電)が堀川の鉄橋を渡っていくのが見える。ここは、堀川中立売。
 京電とは私鉄・京都電気鉄道でのちに京都市電に併合された。堀川を走るこの京電は北野天満宮から京都駅間を走った。
 吉村公三郎監督の1956年製作の「夜の河」では、京電が堀川の橋を渡って川の東を走るシーンが出てくる。
 ついでに言えば、1952年の本作「西陣の姉妹」では街の道は舗装されていない。「夜の河」ではアスファルト舗装はされてないが、奇麗に地固めされているのが見える。

監督:吉村公三郎|1952年|110分|
脚本:新藤兼人|撮影:宮川一夫|
出演:長女・芳江(三浦光子)|次女・久子(宮城野由美子)|三女・富子(津村悠子)|西陣の織元「大森屋」の主人・大森孫三郎(柳永二郎)|その妻・お豊(東山千栄子)|番頭の横山幸吉(宇野重吉)|大森屋の主人の二号さんで祇園の元芸者・染香(田中絹代)|大森屋の主人と幼なじみで西陣出の男・佐藤義右衛門(進藤英太郎)|高利貸しの男・高村義雄(菅井一郎)|三女・富子の婚約者・安井浩(三橋達也)|大森屋の直雇いの織り子(織工)の長・次郎爺(殿山泰司)|番頭の幸吉の兄、名古屋で工場を経営・横山岩次(近衛敏明)|ほか

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映画「スワロウテイル」 映画音楽に魅せられて 主演:CHARA 監督:岩井俊二

上

 日本のどこか、海沿いの都市、その市街の外れにある、円都(イェンタウン)と呼ばれる無法のバラック集落地区に、中国系不法移民たちが住んでいる。

1-0_201711171315104b1.png 映画冒頭で私たちはたちまち、この移民たちの日常世界に引き込まれる。
 それは、中国語をベースに片言の日本語・英語が混じる無国籍風のセリフ、かつシーンの様子も、いかにも無法地域らしく怪しげで素晴らしいからだ。ロケ地選択と美術の仕事の勝利だろう。

2-0_201711171316336f7.png 映画は、この円都(イェンタウン)での物語を第一章にして、次に円都の暮らしから離脱する主人公らの新たな展開を第二章にする二部構成。
 映画全体を通して思うに、正直言って脚本が弱い。
 弱いが、これを補って余りあるものにしているのは、なんと言ってもCHARA自身の魅力と彼女の歌。
 加えてやはり、映像イメージが牽引する無法の街のシーンの作りだ。

 ミュージシャンで女優のCHARAの魅力とは、少女っぽい舌足らずな中国語のセリフかも知れない。
 歌は、恥ずかし気に歌いだす「マイウェイ」もいいが、映画ラストに流れる「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」がいいですね。
 当時、この歌はヒットしてよく流れていました。曲の冒頭の、哀愁のある儚げなシンセサイザーの音色がいいし、もちろんCHARAのウィスパーボイスが魅力的です。
 映画製作の1996年はバブル崩壊の直後。そんな厭世的な気分が映画の背景にあるような気がします。 

 
監督・原作・脚本:岩井俊二|1996年|149分|
撮影:篠田昇|音楽:小林武史|主題歌:YEN TOWN BAND|美術:種田陽平|
出演:ヒオ・フェイホン(三上博史)|グリコ(CHARA)|アゲハ(伊藤歩)|リョウ・リャンキ(江口洋介)|マオフウ(アンディ・ホイ)|ラン(渡部篤郎)|鈴木野(桃井かおり)|シェンメイ(山口智子)|レイコ(大塚寧々)|星野(洞口依子)|医者(ミッキー・カーチス)|葛飾(渡辺哲)|須藤(塩見三省)|浅川(武発太郎)|アーロウ(シーク・マハメッド・ベイ)|ホァン(小橋賢児)|ワン(翁華栄)|アゲハの母・ユリコ(藤井かほり)|デイブ(ケント・フリック)|金髪男(ローリー寺西)|本田(田口トモロヲ)|楠木(鈴木慶一)|監査官(山崎一)|亀和田(北見敏之)|パンク男(光石研)|ロリータ店長(酒井敏也)|インタビュアー(クリス・ペプラー)|藤田(陰山泰)|ツェン(顧暁東)|ニハット(アブラハム・レビン)|チュンオン(楊錠宇)|クラブの客(浅野忠信)|少女アゲハ(鴨川寿枝)|YEN TOWN BAND(ブライアン・バートン―ルイス、カーク・D・ハバード、カレブ・ジェイムズ、アリ・モリズミ・MTV、 C.J.、ダニエル・グルーンバウム)|

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映画「あらくれ」(1957) 主演:高峰秀子 監督:成瀬巳喜男

上

 明治に生まれ、大正の時代を生きる女、お島(高峰秀子)の話。

1-0_20171112165819fbe.jpg お島は「あらくれ」な女、世間・風習に逆らって荒々しく振る舞い生きる女だと映画は言う。
 夫に盾突き、取っ組み合いの夫婦喧嘩をしたり、夫の浮気相手の女と組んずほぐれつの格闘をする。そして大抵、お島は勝つ。
 たしかに時として、お島は乱暴を働く女だが、果たして「あらくれ」な女だろうか。
  
 お島は、養女として育てられた。
 年ごろになった頃、養子先の家が一方的に決めた縁談を嫌い、祝言当日にお島はその家を飛び出した。
 そののち東京に出て、病で妻を亡くした缶詰屋の鶴さん(上原謙)と結婚。だが鶴さんの浮気が続き、夫婦仲は破綻、ついに離婚。

 離婚したはいいが、世間にお島の居場所はない。
 実家を出たきりの実兄を頼って、お島は見知らぬその地へ行くが、そこの旅館の女将に金を借りた兄が行方不明になる。お島は、仕方なく、その旅館の女中として働き始めた。

 旅館の若旦那、浜屋(森雅之)の妻は病弱で、静養のため実家にいた。そんなことで若旦那はお島に恋してしまう。
 やがて妻の身体が回復し実家から妻が帰って来る。板挟みになった若旦那は、お島を妾にして関係を続けようとするが、お島はこれを嫌い、再び東京へ出た。

2-0 縫製の店で働き始めたお島は、職場の男、小野田(加東大介)と所帯を持ち、洋服仕立て屋を始める。
 しかし、一緒になってお島は小野田に商才が無いことに気付き始める。そのうえ小野田は、女(三浦光子)とねんごろになり、家まで持たせる始末。
 業を煮やしたお島は、店の若い職人(仲代達矢)と小僧を連れて温泉地へ出かけた。それは、3人で新しく店を開こうという相談のためであった。

 
 たしかに、お島は男勝りで才覚がある。
 一方、登場する男たちは皆、器が小さく、お島が抵抗しようとすると、世間体を持ち出し、女を見くだす態度をとる。
 映画は、そんな男尊女卑がまかり通る時代に生きる女の自活を描こうとしている。

 がしかし、観終わってみれば、高峰秀子の演技は印象に残るが、男たちの人物像がどれも紋切り型で、結果、相対するお島の人物像も平板になってみえる。よって作品としてはいささか凡庸な印象だ。
 本作は原作と趣が少々違うかも知れない。

監督:成瀬巳喜男|1957年|121分|
原作:徳田秋声『あらくれ』1915年(大正4年)|脚色:水木洋子|撮影:玉井正夫|
出演:お島(高峰秀子)|缶詰屋の主・鶴さん(上原謙)|田舎の旅館の若旦那・浜屋(森雅之)|洋服の仕立て職人・小野田(加東大介)|お島の実父(東野英治郎)|お島の実母(岸輝子)|お島の兄・壮太郎(宮口精二)|お島の姉・おすず(中北千枝子)|お島の養父・喜助(坂本武)|お島の養母・おとら(本間文子)|作太郎(谷晃)|植源の隠居(林幹)|植源の隠居の息子・房吉(田中春男)|鶴さんの幼なじみで小野田の女になった女・おゆう(三浦光子)|浜屋の妻・お君(千石規子)|精米所の主人(志村喬)|お島の伯母(沢村貞子)|お島の店の職人・木村(仲代達矢)|ほか

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映画「喜劇 駅前旅館」 監督:豊田四郎

上






 本作は1958年の製作。このころの日本映画は良く出来ている。
 脚本も演出も、俳優の技量も、娯楽性も、文句なしにハイレベル。
 ベテラン俳優の、さりげない一挙手一投足に、感情表現の絶妙な味があることにも注目してほしい。

 東京の「東玄関」上野駅の駅前旅館150軒や飲食店街は、多くの旅行客に親しまれ繁盛して来た。
 そして昨今、修学旅行の団体客が、毎日のように旅館街にどっと押し寄せてくる!

1-0_201711041139566da.png 戦後、修学旅行が再開され、さらに本格化したのが、この映画の時代、1950年代。
 戦前は、修学旅行は「国家神道教育」に通じる神社を目的地としていたが、戦後、これが自由化され、さらには修学旅行は誰もが行くものとして一般化された。
 よって修学旅行の行き先は、交通の利便性や社会見学先を考えると日本の「首都」東京になり、かつ団体客の受け入れ可能な宿泊旅館を考慮すると、自ずと上野であった。

 このことで、焼野原から復興してきた上野の駅前旅館街は一変した。
 大型の旅館は、黙っていても、各地の学校から予約が入るという、ウハウハ極楽状態。もう上野駅前で客引きする必要は無くなっていた。
 
 こんなことを背景に「喜劇 駅前旅館」は始まる。
 大型旅館の柊元(くきもと)旅館、ここのベテラン番頭の次平(森繁久彌)は、玄関で騒ぐ修学旅行生たちを目の前にして嘆く。「これは旅館じゃない、流れ作業の工場だ」
 40歳代の次平は客引きのプロ。次平を頼って来るリピーター一般客も多い。旅館一同の、宿泊客に対する丁寧なおもてなし。
 しかし、修学旅行生の団体客を相手にすると、旅館は、彼らの一日のスケジュールに沿って流れ作業のように動く。次平はこれを、もはや旅館業の工場化だという。

2-0_20171104114124f04.png 本作公開時の宣伝文句は、「舌三寸で客を引き、胸三寸で恋のせる、番頭家業の裏おもて」。
 旅館街のそばにある飲み屋の女将、お辰(淡島千景)の店に、次平や他の旅館の番頭たち(伴淳三郎、多々良純ら)の口達者な常連が集まる。お辰は前々から次平に気があるが、次平にその気があるのや無いのやら。

 くわえて、恋物語がもう二つ。
 はとバスの添乗員の小山欣一(フランキー堺)は、柊元旅館の可愛い女中、お京(三井美奈)が好き。ふたりのその先はいかに。
 もうひとつの話は、次平の昔の女、於菊(淡路恵子)が柊元旅館に客として現れる。さてこちらの展開は・・。

 そして、団体客の物語。
 関西女子高の修学旅行生を引率する老先生(左卜全)、同じく四国男子高の先生(藤村有弘)、同じく東北女子高の先生(若水ヤエ子)に、山田紡績の社員旅行を引率するおばさん社員(浪花千栄子)が、話に騒ぎを持ち込む。

 さらには、上野界隈のやくざの頭(山茶花究)が率いる一団が、客引きを巡って、あるいは旅館の女中の引き抜きや麻薬売買で騒ぎを起こす。
 さてさて、このあと、すったもんだのお話はどうなりますでしょうか、それは観てのお楽しみ。
 ちなみに、柊元旅館主人(森川信)、その妻(草笛光子)も話に味を添えています。
 
監督:豊田四郎|1958年|109分|
原作:井伏鱒二|脚色:八住利雄|撮影:安本淳|
出演:生野次平(柊元旅館番頭):森繁久彌|柊元三治(柊元旅館主人):森川信|柊元お浜(柊元旅館内儀):草笛光子|柊元梅吉(柊元旅館中番):藤木悠|柊元お京(柊元旅館女中):三井美奈|柊元お松(柊元旅館女中):都家かつ江|高沢(水無瀬ホテル番頭):伴淳三郎|春木屋番頭:多々良純|杉田屋番頭:若宮忠三郎|小山欣一(添乗員):フランキー堺|お辰(辰巳屋女主人):淡島千景|於菊:淡路恵子|相田(関西女子高校先生):左卜全|広見(四国男子高校先生):藤村有弘|保健の先生(山田紡績):浪花千栄子|女の先生(東北女高):若水ヤエ子|カッパのボス株:山茶花究|カッパA:大村千吉|カッパB:西条悦朗|カッパC:堺左千夫|カッパD:水島直哉|辰巳屋小女:小桜京子|山田(紡績所長):谷晃|芸者:三田照子|女学生:市原悦子|

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映画「青空娘」 主演:若尾文子  監督:増村保造

下






1-00_201710260754521ec.png





















 いい映画ですね。
 娯楽映画の喜劇をベースにした、継子(ままこ)いじめと、まだ見ぬ実母を探す話。
 そして、

 この物語の中、主人公・小野有子18歳(若尾文子)は、苦境をはねのけ、青空の下、爽やかに駆け抜けて行きます。


 喜劇的な役回りは、有子が卒業した女子高の恩師で独身の二見先生(菅原謙二)、有子に一目惚れするお坊ちゃん青年の広岡(川崎敬三)、有子の実父小野栄一の大邸宅の女中・八重(ミヤコ蝶々)、そしてちょい役ですが、穏やかな広岡の母親(東山千栄子)や、気っぷのいいキャバレーの女支配人(清川玉枝)。
 これに対し、有子を虐める悪役は、小野の正妻・達子(沢村貞子)にその長女照子。

 そもそも、有子の不幸のもとは、父親の小野栄一(信欣三)だ。
 栄一は今は大手町にある会社の社長だが、若いころ、職場の女性と恋愛し、有子が生まれた。しかし、これは不倫であった。
 それまでに栄一は、上司の役員に押し切られて、その娘・達子(沢村貞子)と結婚していた。だが結婚当初から栄一は、達子に愛を感じることはなかった。

2-0_20171025103255905.png 有子は生まれてすぐに、伊豆の海近い、母親の実家に預けられた。そして母・三村町子(三宅邦子)は姿を消す。
 それから18年後、祖母に育てられ高校を卒業した有子は、父親の招きで、東京にある父親の自宅で暮らすことになっていた。
 その直前、祖母が他界。祖母は死に際に、東京の母は実の母ではないと有子に告げた。
 次女の有子はこれまで、兄姉そして弟の4人のうち、自分だけが伊豆にいることに疑問を持ってはいたが、誰もそのわけを言う者はいなかったし、有子も深くは考えて来なかった。

 そして、高校を卒業した有子は東京へ。
 しかし、大邸宅で有子を待っていたのは正妻・達子の冷たい仕打ちだった。
 つまり、次の女中が見つかるまでは(というレトリックで)、その日から、有子は女中としてこの家に住むことになった。なんと彼女にあてがわれた一室は階段下の納戸であった。(まるでハリー・ポッターのようだ)
 有子を不憫に思うのは、この家の古女中の八重(ミヤコ蝶々)、八重は有子を暖かく、面白おかしく励ます。

 そこへ父親が出張先から帰宅。有子との再会を喜ぶ間もなく、父親は、妻・達子の有子に対する待遇に驚き、冷たく短い夫婦喧嘩。
 そして父親が折れた。それから達子へ愚痴。有子を呼ぶことについて、あんなに何度も、頭を下げて頼んだのに、この様か。
 しかし、有子は歳に似合わず大人の対応であった。つまり、女中として同居することに異を唱えなかった。八重は有子に、女中仕事を教え始め、有子は積極的に女中であろうとした。

3-0_2017102510491822e.jpg そんなある日、さる会社社長の御曹司である広岡(川崎敬三)が、この家に現れる。広岡は、長女の照子が招いた遊び仲間のひとりで、照子は彼を好いていた。(照子も社長令嬢だ)
 しかし、広岡は女中の有子に一目ぼれしてしまう。このことから、照子はそれまで以上に有子を憎むようになるし、母・達子も同様だった。

 そんなこんなで、自宅で有子とゆっくり話せない父親は、彼女を会社に呼んだ。
 有子は父親から、実母とのいきさつを初めて聞き、母の写真を見せられた。初めて見る、私のお母さん。

 女中であろうとした有子だったが、正妻・達子と照子の虐めに耐えかねて、ついに伊豆へ帰ってしまう。
 煮え切らぬ父親と、有子を愛する広岡、そして不憫に思う女中・八重は、有子を案じる以外に手の打ちようはなかった。

 
 ここから話は急展開。
 帰郷した有子に、叔母が言った。つい先日、お前の母親が訪ねてきたと。私のお母さんは生きている。東京にいるらしいことが分かる。
 東京に戻った有子は、恩師・二見先生(菅原謙二)に会う。(有子の卒業後、先生は教師を辞め、東京の広告制作プロダクションのデザイナーになっていたのだ)

5_2017102511323909e.png 教え子恩師の一線を越えて密かに有子を愛する二見先生と、結婚を前提に付き合いたいと公言する広岡の二人は、有子の母親探しに協力する。
 そして、有子は母親の三村町子(三宅邦子)に会えたのであった。

 
 喜劇と悲劇で挟んだ「王子様との恋」サンドイッチをお楽しみください。 
 くわえて、映画が語る物語の展開に沿って、映像が実に的確で分かりやすい表現をしていることに注目してほしい。
 有子を実家に預けた母は悲しみを抱き満州へ、そして現地で結婚。これは、戦前、たぶん昭和14、15年ごろ。中国東北部に満州国という日本の傀儡政権があったころ。母は戦後、帰国し二見先生の勤務先の雑居ビルの掃除婦をしていた。

監督:増村保造|1957年|88分|
原作:源氏鶏太|脚色:白坂依志夫|撮影:高橋通夫|
出演:小野有子(若尾文子)|有子が通った高校の恩師・二見桂吉(菅原謙二)|有子に一目惚れした広岡良輔(川崎敬三)|その母親・広岡静江(東山千栄子)|有子の実父・小野栄一(信欣三)|その正妻・小野達子(沢村貞子)|その長女・小野照子(穂高のり子)|同じくその長男・小野正治(品川隆二)|同じくその次男・小野弘志(岩垂幸彦)|有子の実母・三村町子(三宅邦子)|小野家の女中・八重(ミヤコ蝶々)|小野家に出入りする魚屋・哲五郎(南都雄二)|有子のお婆さん(滝花久子)|有子の友人・信子の叔母でキャバレーの支配人(清川玉枝)|
6-2.png
有子の部屋は、階段下の納戸
写真
女中であろうとする有子
6-3.png
ブルジョアは鯛、私らはイカ
     
6-4.png
有子を諦める二見先生
写真
失恋乾杯に付き合う女支配人
6-6.jpg
広岡と始まる新しい人生


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上2
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映画「薔薇大名」 監督:池広一夫

下
月太郎の婚約者・お小夜と、横恋慕のスリ師・お京。
だが、この男、月太郎じゃなく、実は奥州棚倉藩の若君・小笠原左馬之助であった。


 時代劇です。陽気でおバカな喜劇話です。
 大名行列など冗長なシーンは早回しで観せますし、悲しいシーンも含め音楽はユーモラスなジャズ風。
 でも、ストーリーは凝っています。

 「薔薇大名」の「薔薇」の意は、若君の腕に薔薇のようなアザがあるからで、他意はない。
 私は池広一夫というこの監督の映画が好きで、本作は監督の第一作目らしい。
 1シーンだけの特別出演で市川雷蔵が突然出てくるが、ほかは主役も含め、一般的には余り知名度がない俳優ばかり。
 でも今となっては、これがかえって新鮮でいい! 

1-1_20171006115730085.png 話は、ある藩の若君・左馬之助と、曲芸一座の芸人・月太郎の、その姿かたちがソックリであったことから始まる。
 そして、月太郎に恋する、同じ一座の芸人娘・お小夜と、月太郎に横恋慕のスリ稼業の女、この2人の女が話に花を添える。
 さらには、若君/月太郎、この瓜二つの2人の立場が入れ替わった事が、つまり偽・若君が、結局は、若君の藩の内紛を解決することになるという、藩をあげての大騒動に発展する。
 では、若君と町人の月太郎がなぜ入れ替わったのか?

2-1_201710061159044fc.png

 密かに江戸市中に滞在する小笠原左馬之助(小林勝彦)は、実は奥州棚倉藩(福島県)の若君。
 その棚倉藩では、城主の跡目争いという陰湿な内紛が起きていた。
 現城主(左馬之助の父親)は、悪者家老の指図で長期間に渡り藩医から毒を盛られ衰弱していた。
 家老は城主と若君を暗殺し、家老派の新たな城主をうちたてようと企んでいるのだ。
 これに気づいた左馬之助はひとり江戸に出て急ぎ毒薬の勉強をし、藩医が薬と称する毒薬の証拠を握ろうとしていた。
 しかし、左馬之助が国元から突然姿を消した事とそのわけは極秘であり、父親はじめ藩の誰もが知らぬことであった。
 だが、家老は若君が江戸にいることを嗅ぎつけ、暗殺団を江戸へ送り、若君は切られて大川に落ちた。

3-0_20171006120128172.png 一方、そんなことなど知る由もない城主派の侍たちも、若君を探しに江戸に来ていた。
 城主の寿命があとわずか、一刻も早く若君を見つけ出し、国元へ帰ってもらわないと、家老派の思うがままになってしまう。わが藩、存亡の危機。
 そんなある日の江戸市中、城主派の侍が月太郎(小林勝彦)を見かける、あ!若君だ! いや、人違いだ!俺は月太郎だ! 
 結局、月太郎は城主派に拘束されるが、彼の腕に若君の証拠の「薔薇」のアザがないことが分かり、今度は若君に化けて身代わりで国元へ行ってくれと懇願される。
 このお礼は100両という多額で、月太郎は婚約者の病父の薬代を思い、大役を引き受け、大名駕籠に乗せられて、侍たちと国元の奥州棚倉藩(福島県)へ。

 さらに一方、そんなことなど知る由もない、月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)。
 突如姿を消した月太郎から奥州棚倉へ行くとだけ知らされたお小夜は、一座の座長を説き伏せ、一座の面々とともに棚倉へ巡業の旅に出る手はずとなった。
 そんな時に、月太郎がお小夜の前に現れた。ずぶ濡れで傷を負っていた。どうしたの!
 優しく介抱された左馬之助だが、知らぬ町人に自分が誰かも言えず、なりゆきで月太郎を演ずることとなる。
 お小夜は左馬之助を月太郎だと疑いすらしない。(左馬之助は侍言葉で話すんだけどね) お小夜は「いつまで芝居の真似をしてるのよ」てな感じ。(喜劇ですから)

5 -0 しかし、一座の棚倉への巡業スケジュールはもう変更できず、お小夜と左馬之助と一座全員は旅に出た。
 旅の途中、左馬之助は、本陣(大名専用の宿)の準備の様子や、街道を駆け抜ける早馬から、胸騒ぎを覚える。
 その夜、旅籠の一室で左馬之助はお小夜に抱いてと迫られ、左馬之助はおおいに戸惑う。

 そこへ、市川雷蔵扮する町人が「いちゃいちゃする声がうるせぇ、宿は貸し切りじゃねぇんだ」と、部屋に飛び込んで来る。
 そして市川雷蔵は左馬之助に向かって、本心をこの女に打ち明けろと言い残して去る。(無理やりの筋書きで可笑しい)
 そこでついに左馬之助はお小夜に、自分は月太郎じゃない、それに月太郎が藩騒動に巻き込まれているらしく、危険だと告げる。
 これを聞いて心配するお小夜に、「この小笠原左馬之助が彼を救える」と言う。お小夜はお願いいたしますと頭を下げた。

 さて、ラスト近く。
 月太郎こと偽若君と城主派一行が、城内に入る。
 また、曲芸一座は城主の招きと偽って、これも城内へ。(若君の計らいだろう) 
 そのうち、偽若君の腕にアザがないことが家老派にばれて一大事。だがそこへ一座が現れる。

7-0.png そおして、時代劇のお約束事、家老一派と城主派のチャンチャンバラバラ。
 若君の武道達人の技、月太郎とお小夜らの曲芸の技が敵をやっつけます。
 加えて、一座の出し物、中に入った人を消す魔法の箪笥や、一座巡業に付いて来た、月太郎に横恋慕のスリ師・お京が大活躍します。めでたしめでたし。


監督:池広一夫(池廣一夫)|1960年|68分|
原作:陣出達朗|脚色:淀川新八|撮影:本田平三|
出演:月太郎、小笠原左馬之助(小林勝彦)|月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)|スリ稼業の女・お京(宮川和子)|ほか多数

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映画「お父さんと伊藤さん」 上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也 監督:タナダユキ

上
さすが年の功、伊藤さんは、お父さんのあしらいが上手。

1-0_20170930124809c6c.png
 拍手!脚本が良く出来ていて、演出に抜け目がない。
 息子娘の世代も、父親の世代も楽しめるビターな喜劇。

 話は、妻を亡くした頑固な父親の、たらい回し。
 そんな意固地な父親を持つ息子娘であれば、あるいは、あんな息子娘を持つ父親であれば、こうなる事もある、というこわい話。

 その、あんな息子娘とは。
 長男の潔(長谷川朝晴)と嫁・理々子(安藤聖)の夫婦のところに父親(藤竜也)が同居している。
 夫婦は父親との生活に辟易している。そのうえ、夫婦は中学受験の双子を抱えている。
 特に理々子は義父との関係がもう破綻状態。義父の姿を見るだけで吐き気を催すくらいに精神的に追い詰められている。

 そこで潔は逡巡しながらも、妹の彩(上野樹里)に父親を引き受けてもらいたいと乞うた。
 「未来永劫ってわけじゃない。子供の受験が終わる来年春までの半年でいいんだ」
 切羽詰まった潔は、父親というものは娘と相性がいいという神話にすがったのかもしれない。
 しばらくぶりに会った兄妹だったが、しかし、彩は「ごめん、ほんとにごめん」と断った。
 潔は知らなかった。彩は独り住まいではなかった。伊藤(リリー・フランキー)という男と同居しているのだった。(兄妹はこんな程度に疎遠であった)

 彩は34歳、本屋でアルバイトをしている。会社を辞めてからはバイトの仕事しか見つからない。
 伊藤は54歳。彩とはコンビニのバイト先で知り合った。今は学校給食のバイトをしている。
 彩は伊藤の過去をよく知らない。知る必要もないと思っている。20の歳の差はあるが、本人たちに違和感はない。

 さて、兄と会ってのち帰宅した彩は、玄関に見慣れぬ靴を発見。
 おお、伊藤さんがお父さんと話してる!

 話はここから、父親の秘密も絡んで、てんやわんやの展開になります。あとは観てのお楽しみ。

下2監督:タナダユキ|2016年|119分|
原作:中澤日菜子|脚本:黒沢久子|撮影:大塚亮|
出演:山中彩(上野樹里)|伊藤康昭(リリー・フランキー)|山中潔(長谷川朝晴)|山中理々子(安藤聖)|叔母の小枝子(渡辺えり)|お父さん(藤竜也)|ほか

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映画「或る女」(1942年) 主演:田中絹代 監督:渋谷実

上


 話は、明治から大正にかけての、「或る女」の10年を描いている。

1-1_20170923130911f26.png 席主※(坂本武)の計らいで、寄席で下働きしている、おしげ(田中絹代)。(※寄席のあるじ)
 このおしげに向かって、寄主に雇われている元落語家の男・柴田(河村黎吉)が、話していいものか、いけないものかと迷いながらも、話始める。
 「実はね、三楽が東京に帰ってきているらしい」と、くわえて「子もいてね、おまけにカミさんが病に伏せってしまい、金に大層、困ってるらしい」
 これを聞いて、おしげは「僅かばかりだけど、お金ならあるわ」、しかし柴田は「そりゃ、いけねえよ」

 そこへやって来た席主は即座に、「おしげさんに、三楽のことなんか言うもんじゃない」と柴田を制した。続けて、おしげには、「三楽は、あんたにあんなに苦労をかけた男だ、もうかかわりなさんな」と三楽を罵りながら言った。
 これに対しおしげは、「もう10年も前のことだもの、今じゃ何とも思わないわ」

2-0_20170923131120b96.png そして映画は10年前にさかのぼる。(明治の終わり頃)
 そのころ、三楽という芸人(徳大寺伸)は東京じゃ少しばかり売れ始めていた。
 寄席で働く若き娘おしげは、三楽の舞台と舞台を降りた後の短い逢瀬をいつも心待ちにしていた。三楽のほうも、まんざらではなかった。
 だが、彼に欲があった。上方の舞台に出て一旗揚げたいと、三味線の女を連れて東京を去った。三楽はこの女と、既に出来ていたのだった。
 おしげは、突然の失恋に心砕かれ、席主にそれまでの礼も言わず、故郷の田舎へ帰った。

 故郷の家には、兄とその子の二人が住んでいる。この親子は困窮していた。兄は少ない蓄えを人に騙され奪われ、また借金で家は抵当に入っていた。
 しかし兄の子・勇は、幼いながらも進学を望んでいた。将来大きな船の船員になりたいという。

 おしげは自身の悲しみを心の底に押しやって、この世に身内はこの三人、力合わせて勇を育ててやりましょうと、兄を励ます。
 おしげは東京に戻って働き、稼いだお金は兄の子・勇の教育費にと、兄は借金返済にと、兄妹はそれぞれ再び働き始めた。

 そう、おしげのこの頑張りは、どこから来るのだろうか。
 それは、おしげが失った自身の生きがいを新たに見つけたから。つまり、三楽への想いから、実の母子のようにして勇を育てる愛へと、気持ちを切り替えたから。
 それでも、おしげは、三楽への愛を今も心に抱き続けている。そして、だから、私は一生結婚はしないと決心していた。

 東京に戻ったおしげは、斡旋屋の紹介で、あるお屋敷の住み込み女中の職を得る。
 安定したこの職は、兄のもとへ送金するに十分であった。
 この家の娘は病弱で家に閉じこもったままで日々を過ごしていたが、おしげが来たことで親しい話相手ができ、おしげを慕った。

 だが不幸なことに、この娘に好きな人がいたが、相手の家から一方的に婚約が破棄され、娘は失意に陥った。
 たまたま、おしげは田舎の兄の家に帰っていた。そこへおしげに会いたくて娘が一人でやって来た。だが病弱な娘は、儚くもここで体調を崩し世を去ってしまう。屋敷の主は、これをおしげのせいにし、おしげは突然に解雇された。

 理不尽に思いながらも、おしげは挫けない。
 顔の広い柴田の紹介で、勇のため、おしげは料理屋で働き始めた。
3-0_201709231321415ff.png そんなある日、勇(佐野周二)がおしげに会いに来た。商船大学を成績二位で卒業したことを報告に。
 とても喜ぶおしげは勇を連れて、大学の寮じゃ食べられない美味しいものをご馳走しようと、上等な店のうなぎやへ。おしげが勇に酌をするその仕草は玄人の様だった。
 勇はおしげに言った、「叔母さんは料理屋なんかで働く女性じゃない。僕は嫌だ、無理を言うようだが仕事を変えてほしい」と訴えた。「これからは僕は給金をもらえて、採用前提の試用期間航海に出る。お金の方はもう大丈夫。無理しないで田舎に帰ってゆっくりして」
 (当時、商船大卒の航海士とは、日航のパイロット以上の高給とりだった。くわえて勇が知識人になったせいだろう、自分を養ってくれた大事な叔母には飲み屋の女でいて欲しくなかった、勇はそう思っていた)

 しかし、おしげは田舎に帰らず、東京のミシン縫製の町工場で働き始める。(私はもう畑仕事はできない)
 ある日、工場でおしげが倒れた。彼女の人生は、これまで働き詰めの毎日であった。

 このことを聞きつけた席主は、弱ったおしげを手厚く介抱し、快復したおしげは再び寄席で働くことになった。
 こうして、おしげの10年が過ぎた。

 さて、冒頭シーンの続きに映画は戻る。
 おしげは、幾何かの金を口座から下ろし、三楽一家が住む家へ向かった。
 どぶに掛かる小橋を渡って、おしげは三楽の粗末な家の玄関先に立った。
 驚く三楽はおしげを家にあげた。儀礼的な挨拶の後、おしげが差し出す金に、三楽は躊躇するも手を出そうとしたが、三楽の妻はこれを制した。

 そこへ突如、勇が柴田の案内でやって来た。勇は叔母を苦しめた三楽を罵りに来たのだった。
 それはおしげに代わって誰かがいつか言うべき三楽に対する罵りであった。
 その三楽は、そう言ってもらえて私もすっきりした、長年の胸のつかえがやっととれたと感謝し泣いた。
 荒んだ場をおしげと柴田が納め、三楽夫婦はおしげの金を受け取ったのであった。
 
 脚本が弱いが、田中絹代の優れた演技でもっている映画。
 戦時中に製作・公開されたものだが、戦時下の影響はない。ただし、映画が始まる前に「一億の誠で包め兵の家」というスローガンが映し出される。

 映画に石油ランプと白熱電球のあかりが出てくる。
 電灯は、大正11年頃には東京市内のほぼ全域に普及したらしい。
 よって、おしげの10年は、明治末期から大正時代にかけての話なんだろう。

 それと映画に出てくる知らない言葉。
 「おちょうもく」:金銭の異称。江戸時代までの銭貨は中心に穴があり、その形が鳥の目に似ていたところからいう。「お鳥目」
 「おちょうばさん」:帳場とは商店・旅館・料理屋などで,帳簿をつけ勘定をする所。会計場。
           おしげは料理屋で「お帳場さん」も兼ねてた仕事をしていた。
 「アプレンティス」:見習いを意味する英語。卒業した勇が見習いで航海に出ることをおしげに言うシーンで勇が言う言葉。

監督:渋谷実|1942年|96分|
脚本:池田忠雄、津路嘉郎|撮影:森田俊保|
出演:おしげ(田中絹代)|実兄の一人息子・勇(佐野周二)|柴田(河村黎吉)|良吉(斎藤達雄)|三楽(徳大寺伸)|おたま(木暮実千代)|筆子(文谷千代子)|小せい(伏見信子)|樋口(坂本武)|お豊(忍節子)|お松(三村秀子)|勇の少年時代(津田晴彦)|藤子未亡人(葛城文子)|下宿のお母さん(飯田蝶子)|料亭の女将(吉川満子)|おとし(高松栄子)|昌子(森川まさみ)|敬一郎(日守新一)|徳さん(水島亮太郎)|お兼(松尾千鶴子)|城太郎(大塚紀男)|半玉(森和美)|

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映画「朧夜の女」(おぼろよの女) 1936年 監督:五所平之助

下
 照子


 時は昭和の初め頃、叔父に連れられ行った先の銀座のバー、そこの女と出来てしまった初心な大学生の初恋の顛末。

01-_20170919135736160.jpg 大学生の誠一(徳大寺伸)は、父を早くに亡くし、母のお徳(飯田蝶子)が女手一つで育てた一人息子。すれてない箱入り息子でいい男。
 お徳は、牛や(牛鍋屋)で働いているが、若いころは芸者だった様子。どこかの店の主人風の旦那に頼まれ、唄、三味線の個人教授をしている。

 誠一を銀座のバーに連れ出した張本人の叔父・文吉(坂本武)は、お徳の実兄で昔は粋な遊び人だった。
 その文吉が収まるところにやっと収まって所帯を持った、その妻が、おきよ(吉川満子)という女。
 この夫婦には子がいない。神社の石段下で張物屋を営んでいる。(着物の洗濯屋さん:お客の着物を抜糸して反物にし洗濯する稼業。洗い張り。)
 以上こんな登場人物の描写が話の前段にあって、映画は物語のその先を語り始める。

2-0_20170919140548d74.jpg バーの女・照子(飯塚敏子)は、昔風にありていに言えば、芸者上がりの女給だ。
 だが照子は数年前までは芝神明で指折りの芸者だった。旦那(パトロン)がついて芸者を辞めたが、その旦那が急死、照子の人生は下り坂となっていた。

 文吉は芝神明にいた照子を覚えていた。照子も客として文吉を覚えていた。銀座のバーは再開の場でもあった。
 さて、その後、誠一と照子は密かに会い文通を交わした。ふたりの愛は純であった。しかし誠一はこのことを母親に言えないでいる。

 そしてある日、誠一は照子から妊娠したことを告げられる。
 誠一は驚き戸惑うが、照子は心の奥底で、これを機に身を引くことを決めていた。
 誠一さんは勉強をして将来偉くなる人。子一人、私ひとりでもちゃんと育てていける・・。

 かたや、悩み抜いた誠一は、叔父・文吉に打ち明ける。(死んでも母親には言えない)
 文吉は驚きはしたが、すぐさま、こう思った。自慢の甥が自分を頼りにしてくれた嬉しさ、照子はまったく知らぬ女じゃないこと、さらにはわが身を振り返れば、身に覚えがないことでは無い。
 そこで文吉は思案の末、自分が照子と浮気して子をこしらえてしまった、という嘘を思いつく。そして、これを妻のおきよに言った。

 これを聞いたおきよは、大いに悲しむ一方、これまでの文吉の放蕩を思うと、そんなには驚かなかった。
 誠一と照子の関係を未だ知らぬ母・お徳は、兄の放蕩ぶりを「いい歳して」と非難するも、義姉として子供の出来ないおきよに言う。「兄さんは女ときっぱり分かれる、その代わり、子は家で育てると言ってる。辛いだろうけど、いっそ育ててみれば。赤ちゃんは可愛いよ。世間は、おきよさんはよく出来た嫁だと、ほめそやすよ。」

 ひとつ目の嘘が通って文吉は、慌てて空き家を探し、土手下の家に照子を住まわせる。
 つまり今度はこれ、姉のお徳に対しての嘘。文吉と照子のこの愛の巣に、お徳は便所の傍の軒に吊り下げる「吊り下げ手洗い器」や何やかにやを買いそろえてやってくる。

 さて文吉、お徳が去ったあと、ポツンと座る照子、そこへ誠一が現れる。
 誠一は言う、こんな嘘はやめよう。俺は母親に正直に言う、結婚しよう。叔父や叔母にこれ以上迷惑はかけられない、俺は卑怯だ、と。しかし、照子は誠一の訴えを受け流すだけだった。

 それからそんなに時を経ず、照子は妊娠中毒症で急遽入院する。そして、あっけなく世を去る。
 土手下の家で通夜が行われた。霊前には文吉の友人やお徳もいる。そこへ誠一が現れた。これに気づいた文吉は彼を家の外に連れ出す。
 「もうこれ以上の嘘は、耐えられない、母親にすべてを言う。」と泣く誠一を制して文吉は言う。「この世の中、嘘も正しいことがある、何よりも照子は今もそれを望んでいる」と。


 なにしろ80年以上前の映画です。
 世間の常識が、今と違うことを理解して観ましょう。
 それと、近代を対象にした都市民俗学?とでも言いましょうか、銀座のバーの様子、そこで働くキラキラ衣装の少女、牛鍋屋の様子、張物屋の職人の仕事風景、寄席の様子、一般家屋の室内などに注目しても面白いかもしれません。

監督:五所平之助|1936年|111分|
原作:五所亭|脚本:池田忠雄|撮影:小原譲治
出演:照子、バーでの源氏名(飯塚敏子)|誠一(徳大寺伸)|文吉(坂本武)|お徳(飯田蝶子)|おきよ(吉川満子)|医師(佐分利信)|町内の旦那衆(河村黎吉、野本正一、新井淳)|職人(青野清、谷麗光)|芸者(忍節子)|牛やの女(岡村文子、江坂静子)|女給(朝見草子、立花泰子)|女中(大関君子)|牛やの主人(水島亮太郎)|学生(大山健二、阿部正三郎、金光嗣郎)|講釈師(一龍斎 貞丈)|

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映画 「石合戦」 監督:若杉光夫

上
石合戦。右方向の対岸にいる相手陣営と石の投げ合い。
このシーンは、仮設の木の橋の上から撮っている。


 兵庫県の山あいにある、のどかな村の人々を描く映画。

 川を挟んで二手に分かれた子たちが、互いに対岸の子たちに向けて、河原の石の投げ合いをしている。石合戦だが、男の子の遊びでもある。
 どちらの陣営の子も、同じ小学校に通っているが、仲が悪い。
 仲が悪いのは、その子らの親たちが仲が悪いからなのだ。いや、親だけじゃなく祖父母の代も、昔から仲が悪い。
 かつて、石が顔に当って失明した人も村人の中にいる。
 映画は、村の大人同士のつまらぬ人間関係が、そのまま子たちの人間関係に影響するのだと言っている。

 県会議員の大野という男は、この村で大人たちの頂点の座にいるらしい。彼の家は戦前までは大地主だった。
 村一番の真面目な男・松蔵(宇野重吉)は、戦後、この大野から僅かな土地を買った。
 この極めてまっとうな方法で土地を買った松蔵に大野は苛立っていた。大野に寄り添い、大野の為なら、何かあればひと肌脱ぎます、なんて言う人々に乞われて、大野は土地を手離す、なんていうストーリーが好きな男なのだ。松蔵はそうではなかった。

 子たちが川遊びしていたその日、この大野の旦那が、川にかかる仮設の橋を渡っていた。
 そこへ、松蔵の子が橋の下から手を伸ばし、大野の足を引っ張り、彼を川へ落としてしまった。
 子どもの悪戯だったが、大野は怒った。大野は松蔵を村八分にしてしまう。村八分にされて松蔵の子も、村の子たちから村八分にされてしまう。

1-0_20170824193604438.jpg 主人公の男の子・竹丸(浜田光夫)は、村の神社の一人息子。
 がき大将の正反対で、石合戦が怖いし、仮設の低い橋から川に未だに飛び込めない。(その落差1メートルほど)
 竹丸の母親(山田五十鈴)は病で長年、伏せっている。竹丸の父親(小沢栄太郎)は、神社の神主で、夏の祭りの収支がマイナスなのが頭痛の種。(賽銭などの収益-諸費用の支出)
 「ここは好きじゃない大野にすがるしかないな。」なにしろ、大野は小学校の校舎新築で業者と癒着し、大金を懐にしたらしい。(村中の噂)

 さて、大野が川に落とされたあと、河原にいた子らの中に、大野は竹丸の姿を見た。
 そして、大野は竹丸を密かに呼んで、誰が俺を川に落としたのだと問いただした。大野得意の甘言と脅し(アメとムチ)を竹丸に示し、つい、やったのは松蔵の子だと竹丸は言ってしまう。
 これが噂となって広がり、竹丸は子らから村八分となってしまう。

 話の展開はいくつかのエピソードと共に進む。
 竹丸の母が大阪の病院に緊急入院する。村の合併話が、大野の先導で進む。
 小学校の若い教師・渡辺先生(内藤武敏)が子たちの石合戦を止めさせる。また、渡辺先生が「アカ」だという噂を真に受ける大野は、先生を辞任に追い込もうとする。それを支援する小学校校長や村長といった村のお偉いサンたち。
 そして、大野が贈収賄で逮捕される。
 一方、竹丸の母がこの世を去る。真剣に神に祈った竹丸は、神殿で暴れる。

 そうしてラストは少々強引だが、ハッピーエンドに。
 竹丸の家は村では裕福だ。この竹丸の生活環境と、村の貧しい家の子の境遇を映画は対比してみせる。
 渡辺先生のシーンでは、子供対象の教育映画っぽい雰囲気があって鼻白むシーンはあるが、これを乗り越えられると、昭和30年当時の日本が垣間見れる。

監督:若杉光夫|1955年|91分|
原作:上司小剣|脚色:松丸青史 、 吉田隆一 、 村山亜土|撮影:仲沢半次郎|
出演:竹丸(浜田光夫)|その父・上神満臣(小沢栄太郎)|その妻・鴻子(山田五十鈴)|小学校の教師・渡辺正男(内藤武敏)|県会議員の大野剛造(嵯峨善兵)|松蔵(宇野重吉)|ほか

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映画 「無花果の顔」(いちじくの顔) 監督:桃井かおり 出演:山田花子、石倉三郎

上

 一家四人の門脇というウチの、幸せの変遷を描く映画。
 今までにないタイプの喜劇映画です。いくつものエピソードが絡みます。それと、お伽噺の要素を持ち合わせていて、ちょっとシュールです。音楽はいいセンス。

1-0_2017081915362933d.png 表通りの裏手、門脇の家。
 ちゃぶ台がある一家団らんの和室と縁側、無花果(いちじく)の木が植わった中庭、中庭に沿って濡れ縁伝いの先にある風呂場は薪で沸かす風呂、赤い冷蔵庫やカラフルなガラス瓶が並ぶ台所とその一角がミシン仕事のスペース。

 妻(桃井かおり)は、夫思いの世話女房。(いささか古いタイプの女性像の設定だ)
 夫(石倉三郎)は水道・ガス管のベテラン配管工。茹でたジャガイモに塩辛を乗せて風呂上りのビールを美味そうに飲む。(仲睦まじいが、少々ズレた夫婦の会話は、新作落語の登場人物のよう)
 今夜の夕食は、ちゃぶ台でチーズフォンデュ。今夜は、娘(山田花子)に息子(HIROYUKI)も加わって久々に家族団らんのひと時。

 さて、何でもなく過ぎる日々から、ちょっとした物語は始まる。
 夫が何やら忙しい。家を空けたと思ったら、現場に近いウィークリーマンションを借りたという。
 夜間の徹夜仕事らしい。でも、よくよく聞くと仕事じゃない。昔、職人仲間が手抜き工事をした建物がリニューアル中で、夫は誰もいない夜間の現場に密かに侵入し、当時の手抜き工事の配管をボランティアで、ていねいに直しているのだ。黙ってればわかりゃしない事を。ひとがいいったらありゃしない。

1-00_20170819154711f30.png ボランティアの案件が無事終わり、やっと通常の仕事を始めた矢先、夫が現場で倒れ死亡。(脳溢血か心筋梗塞か)
 急な死に直面し家族はぼんやりしている。職場の面々が通夜に来る。妻の弟(光石研)が心配してそっと姉に聞く。生命保険は?労災は? そんなこと知らないわよ。

 妻は、娘(山田花子)が一人住まいしている部屋に転がり込む。娘はちょっとした小説家で雑誌に連載を書いている。

 妻は仕事を見つけた。料理が美味いきちんとした飲み屋で働き始める。その店の主人(高橋克実)が、ある日、求婚する。
 門脇のあの家を素敵にリニューアルして、二人が住み始める。門脇の娘息子も、店の主人の娘も祝福している。

 娘(山田花子)が赤ちゃんを出産した。娘が嫌がった年上の男(岩松了)の子だったが、娘はひとりで育てるという。
 最近、妻(桃井かおり)の様子が変だ。新しい夫(高橋克実)は心配する。優しい夫は妻を温かく包み込むのであった。(一応、これでめでたしめでたし)
 そして、こんな人々の生きざまを庭先からじっと見守ってきた、これからも見守って行く無花果の木。それから、門脇家の娘は、幼い頃から、この無花果の木と通じ合えているようだ。



2-0_20170819155439615.png 配慮された細やかな脚本が、生活のリアルな質感を呼びます。例えば、通夜の準備シーンでは。
 缶の箱に納めた古い家族の写真の数々(娘が父親の写真を探している、葬式なんだという実感や経験を思い起こさせる)。
 生臭い握りより稲荷寿司か太巻きよネと言いながら、通夜客のために、出前の店選びに悩む妻。そして夫が死んだのに、寿司屋の女将とあてどもないオバサン会話を続ける妻。(死をまだ実感できない経験が思い浮かぶ)、等々。

 可笑しな会話があちこちに挿入されています。例えば、斎場にて。
 「どうして焼くの、まだ生き返るかもしれないのに、私、認めないから」 
 「火で焼いたら熱いでしょ お父さんかわいそうでしょ それでなくてもおとうさん暑がりなのに」
 娘:「死んだんだからしょうがないでしょ」
 妻:「親を燃やして、しょうがないでしょという言い草はないでしょ」

3-1_20170819155735034.png シュールな側面。例えば、夫が借りたウィークリーマンションでの夢想のシーン。
 隣家の若い女(金魚の化身?)が、マンションの部屋に・・・。

 当時、観た印象はわからん映画でしたが、今回観てみると、ウ~ン、いい映画です。
 大人のお話ですね、この映画は。

監督・脚本:桃井かおり|2006年|94分|
撮影:釘宮慎治|音楽:Gilad Benamram|音楽プロデューサー:Kaz Utsunomiya|美術:安宅紀史|
出演:娘(山田花子)|息子(HIROYUKI)|母(桃井かおり)|父(石倉三郎)|新しい父親(高橋克実)|娘の彼氏(岩松了)|母の弟(光石研)|父親が借りたウィークリーマンションの隣に住む謎の女(渡辺真起子)|ほか

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映画 「泣虫小僧」(泣蟲小僧)  監督:豊田四郎

上
左から、菅子と啓吉、そして蓮子。


 泣虫になってしまいそうな小僧、啓吉11歳の姿を追えば、幸せ薄い少年物映画。
 啓吉の母・貞子とその妹三人の四人姉妹に注目すれば、1938年(昭和13年)当時の、進んだ女性が見えて来る映画。

1-0_20170810172134c98.jpg 貞子(栗島すみ子)は二児の母。小さな一軒家に住んでいるが、夫を亡くし生活に困っている。女手で喫茶店を開業するらしい。やり手だ。
 貞子には愛人がいる。この家で一緒に住むことになるが、男は商売に失敗したようで、うな垂れている。
 啓吉はこの男を避ける。啓吉の幼い妹は母親から、男をパパと呼ばされる。

 貞子は啓吉を、貞子の次妹・寛子に預けようとする。(今回が初めてではなさそう)
 寛子は「またぁ」と迷惑がるが、姉に言えない。自分に替わって夫・勘三に断わりを言わそうとするが、勘三は人がいい。「引き受けましょう」と義姉に、つい言ってしまう。
 勘三は小説家だが売れない。生活は楽じゃない。だから勘三は寛子の尻の下。
 始終暇な勘三は啓吉と相性がいい、啓吉も好きな叔父さん。しかし、寛子は啓吉を追い出したい。

 ある日、勘三は啓吉を連れて、私鉄沿線、郊外に住む蓮子(市川春代)を訪ねる。
 蓮子は、貞子をはじめとする四人姉妹の末の妹。まだ二十歳前だが、画家(志望)の夫と二人暮らし。
 この夫婦は妙に明るいが、料金不払いで電気を止められている。そんな生活を知った勘三は啓吉を連れて、すごすごと帰って行く。

 結局、啓吉は菅子のもとに落ち着く。菅子は四人姉妹の三番目、アパートの一室を借りて一人住まい。
 会社勤めをしているようだ。勘三に優しい。勘三も菅子に、なつく。
 菅子は勘三に問うた。「叔母さんの誰が好き?」 勘三の返事は「おかあさん」
 
 末の妹・蓮子も三番目の菅子も現代っ子だ。蓮子は少々飛んでいるアート系モダンガールなら、菅子は自立する女性、職業婦人といったところか。(とにかくこの四人姉妹はみな揃って、勢いがいい)

 下の姉妹ふたりが、姉の貞子を訪ねる。「啓吉は、やっぱり母親の元が一番よ」と自立する女・菅子がきっぱりと言う。(末っ子の蓮子は、姉の前では物言えない。)
 そんなことで、啓吉は母親に引き取られる。

 啓吉が体操の授業中に用務員室に呼ばれる。行ってみれば、お母さん。よそ行きの着物姿だ。
 貞子は用務員の男に聞かれないよう、部屋を出て啓吉に言った。「急に九州へ行かなくちゃならないのよ。すぐ、帰って来るから、ね。」
 啓吉は泣きそうになりながらも、母の言うことを信ずるよりほか無かった。

 学校が終わって、家に帰ると家は家具ひとつ無い、もぬけの殻。
 貞子は、啓吉の妹だけを連れて、愛人の元へ行ってしまった。

 啓吉が頼りにしたのは、菅子おばさんだけだった。小説家の勘三おじさんは頼りにならない。
 それは啓吉が勘三の家に世話になっている頃の話だ。
 勘三は、その夜、啓吉を飲み屋に連れだし、啓吉は店で寝込んでしまう。目を覚ますと勘三おじさんの姿が無い。啓吉は慌てて呑み屋を出て、勘三を探して夜の街をさ迷う。(それは勘三がトイレに立った隙だった、勘三は啓吉がいなくなったことに気付かず、深酒でその店でつぶれてしまう。)
 さ迷う啓吉を憐れに思い救ったのは、尺八吹きの男であった。
 一人住まいの男は、啓吉を一晩泊めて、朝飯を食わせてやり、そして男は啓吉を励ました。辛い時は誰でもある、そんな時は歌を歌うんだ、と。

 映画製作年の1938年(昭和13年)は、国家総動員法施行の年、ヒトラー青少年団来日。
 映画のシーンで、家の上を軍用機が飛んでいく。 
 公開当時の観客は、この作品をどんなふうに観たのでしょうか。

 ちなみに本作から連想する映画に、少年と家族をテーマにしたものでは、大島渚の「少年」(1969年)、是枝裕和の「誰も知らない」(2004年)、小栗康平の「泥の河」(1981年)。洋画ではフランソワ・トリュフォーの 「大人は判ってくれない」(1959年)などが思い浮かびます。
 四人姉妹の映画では佐伯清の「浅草四人姉妹」。戦後復興期の女性の姿を描いていました。
 (映画タイトル名をクリックして記事をお読みください)

 <これまでに記事にした映画から>
 出演女優の栗島すみ子は、成瀬巳喜男の「流れる」に、やはり特別出演ということで出演していました。
 二番目の妹役の逢初夢子は、島津保次郎の「隣の八重ちゃん」(1934年)の八重ちゃん役や、山田洋次の「霧の旗」 に出演。
 末の妹役の市川春代は、マキノ正博の「鴛鴦歌合戦」(1939年)、伊丹万作の「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年)に出演していました。
 
監督:豊田四郎|1938年|80分|
原作:林芙美子|脚色:八田尚之|撮影:小倉金弥|
出演:泣虫小僧の田崎啓吉11歳(林文夫)|啓吉の母親・貞子(栗島すみ子)|貞子の次妹・寛子(逢初夢子)|貞子のその次の妹・中橋菅子(梅園龍子)|貞子の末の妹・蓮子(市川春代)|貞子の愛人・吉田善吉(一木礼司) |寛子の夫で小説家の松山勘三(藤井貢)|蓮子の夫で画家の瀬良三石(高島敏郎)|
尺八吹きの男・水上竜山(山口勇)| 啓吉の幼い妹・礼子(若葉喜代子)|寛子の子・伸太郎(横山一雄)|

【 豊田四郎の映画 】~これまでに記事にした作品です。 

夫婦善哉」「猫と庄造と二人のをんな」「雪国」「珍品堂主人」「新・夫婦善哉」「台所太平記」 「波影

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映画 「故郷」(1972) 倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆、渥美清  監督:山田洋次

上
砕石を満載し、今にも沈みそうな木造運搬船が、小舟を曳いてゆっくり瀬戸内の海を行く。船は老朽化している。
写真
船長で一家のあるじ、精一。
写真
船の機関士でもある、妻の民子。子供が二人いる。

 

 どっしりと腰を据えた脚本、じっくり観るに値する、いい映画。

1-0_20170723141037d2f.png 話の舞台は、瀬戸内海に浮かぶ小島と、海上を行きかう木造の砕石運搬船という、日ごろ馴染みのないドラマ設定が、観る者に異色な印象を与えてくれる。
 くわえて、ドキュメンタリー映画の要素も加わり、1972年当時のライブな感覚が味わえる。

 広島県の倉橋島という島に住む、石崎一家の物語です。
 一家の稼業は、一抱えもある砕石を採石場で積み込み、沿岸の埋立て地造成現場の沖合まで航行し、そこで石を海に投棄する仕事。
 この砕石専用の運搬船は「石船」と呼ばれ、特に倉橋島の各家では、この石船を持ち稼業に励む家々が多かったのです。

 石崎の家は、精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦に、子が二人、そして精一の父(笠智衆)の、五人家族。
 夫婦はそろって船に乗るので、子は専ら祖父が面倒をみている。
 海を見下ろす島の丘には、小さな畑があって民子はそこで野菜を作っているが、買い物に行く間がなく、毎日の食材に困ることがある。
 それを補ってくれているのが、軽トラ行商の魚屋の松下(渥美清)だ。家族同然で、「今日の余りモノだよ」と言って、気安く魚を分けてくれるのだ。

 倉橋島は今も、のどかな様相を見せるが、この島にも時代の波が押し寄せていた。
 石船の運搬単価は下落し、ダンプトラックの陸送に取って代わろうとしていた。これに対抗するには、船体を大きくした鋼鉄船に乗り換えるしかなかった。しかし、石崎に毛頭そんな金はない。
 そんなことより、石崎の早急の課題は、今の木造船のエンジンが寿命に来ていること。砕石運搬の仕事を差配してくれる親方に相談したが、金の融通は無理だった。

 かつて精一と一緒に船に乗っていた弟は、先のない石船の仕事に見切りをつけ、島を離れて今は勤め人になっていた。
 そして、ついに、精一も石船稼業を諦めた。
 人の紹介で、広島県尾道にある造船所に勤めることになったのだ。家族の移住である。精一の父は島に残ることになった。

 東京から来てこの島に移り住んだ魚屋の松下(渥美清)が、映画の中で独り言のように言っている。倉橋島というこんないい島に、どうして住み続けることが出来ないんだろうね。
 また精一は、零細な稼業に押し寄せる時代の波について、妻の民子にこう言っている。「なんで、わしらは大きなもんに勝てんのかいの・・・」と。


監督:山田洋次|1972年|96分|
原作:山田洋次|脚本:山田洋次、宮崎晃|撮影:高羽哲夫|
出演:石崎精一(井川比佐志)|精一の妻・民子(倍賞千恵子)|精一の実父・石崎仙造(笠智衆)|精一の弟・石崎健次(前田吟)|魚屋の松下松太郎(渥美清)|ほか

【 山田洋次の映画 】 ~これまでに記事にした作品から (下記題名をクリック)

二階の他人」「下町の太陽」「馬鹿が戦車でやって来る」「霧の旗」「故郷

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映画 「ジヌよさらば かむろば村へ」  監督・脚本:松尾スズキ

上2


1-0_20170719110447be0.jpg 松尾スズキ監督2015年作のドタバタ喜劇です。こういう質のいい映画をつくる監督に拍手!
 くわえて阿部サダヲの芯のある演技が、この映画の柱になってます。
 なにしろ脚本がいい! (近年、他監督の新作邦画の多くが、その脚本がいかに駄作か・・・・)
 各所にみられる気の利いた可笑しいセリフも聞き逃しなく。

 東北のある村に、頼りなさげな若い男が一人ふらりと現れる。100万円で廃屋のような古い農家住宅を買ったらしい。
 この、かむろば村は限界集落一歩手前。村では、村長・天野与三郎(阿部サダヲ)は、まだ若い。

 天野村長は、この頼りなさげな男・高見武晴(松田龍平)を、まるで身内のように「タケ」と呼んで、親身に世話をする。
 タケは元銀行員。ムリな融資と回収不能の連鎖から、タケは精神的に参ってしまった。そして退職。病名はカネ恐怖症。カネを見るも触るもダメ。身体がガクガクしてきて、その場で気絶する。(本作の題にあるジヌとは銭ということらしい)
 だからカネを使わない生活を探して、タケはかむろば村にたどり着いた次第。

 カネを使わない生活。それは現物支給の生活。
 タケがはじめた便利屋の労働提供は野菜に換わる。村長の店、よろずやの「スーパーあまの」でのバイトも同様で、店の食料品に換わる。ただし、レジはできない。村長の妻・亜希子(松たか子)か、パート店員・いそ子(片桐はいり)がする。

 天野村長は、村に村人に真剣に尽くす。信頼も厚い。(見習え、全国の村長町長よ)
 だが、彼には秘めておきたい過去があった。そしてある日、村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)がやって来た。
 ひとモンチャク起きないわけがない。警察沙汰となった。

 隣り町の町議会議員が、かむろば村を吸収合併することを企んでいる。かむろば村に何やら処理場を作る計画だ。
 そして、かむろば村の村長選挙が始まる。隣り町の町議は、日頃から手なずけておいた村の助役に立候補させた。
 一方、天野村長は自分に替わって頼りなさげなタケを立候補させる。タケはカネにまみれていない。まみれようがない。ついにタケもその気になった。

 ところで、隣り町の町議会議員は、手なずけたい女がいる。村にある旅館の美人女将だ。
 女将は、かむろば村の老人で自称神様の、なかぬっさん(西田敏行)の娘だ。
 この、なかぬっさんは、いい神様で、(重要なシーンで目が不気味に光る)、この話で重要な役回り。天野村長やタケを助けるのだ。
 だが、神様とはいえ寄る年波には勝てぬ。なかぬっさんが他界。そして、どうやら、孫が村の神を引き継いだようだ。
 村長と村の神が代替わりし、かむろば村は次代へと歩み始める。
 

監督・脚本:松尾スズキ|2015年|121分|
原作:いがらしみきお|撮影:月永雄太|
出演:高見武晴、あだ名タケ(松田龍平)|かむろば村村長・天野与三郎(阿部サダヲ)|その妻・天野亜希子(松たか子)|女子高生・青葉(二階堂ふみ)|村長の店「スーパーあまの」のパート店員・いそ子(片桐はいり)|自称かむろば村の神様・なかぬっさん(西田敏行)|なかぬっさんの娘で伊佐旅館の女将・奈津(中村優子)|奈津の息子でなかぬっさんの孫、与三郎との子・進( 田中仁人)|かむろば村の助役・伊吉(村杉蝉之介)|伊吉の妻でや村役場の職員・トキ(伊勢志摩)|伊佐旅館の板前で元やくざ・勝男(オクイシュージ)|タケの農作業の面倒をみる何時も笑顔のみよんつぁん(モロ師岡)|村のやくざ青年で女子高生青葉が好きな青木(荒川良々)|隣の町の町会議員・伊佐旅館の女将・奈津に気がある・青舐(皆川猿時)|村長の過去を知るやくざ・多治見(松尾スズキ)|

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映画 「プープーの物語」  監督:渡邉謙作

写真
フウとスズ










写真
ブルーの色が好きなスズと、オープンカー


1-0_201707141055476be.png
 二人の女子、フウとスズの、大変大変なロードムービー。
 これは、ちょっとやっかいなキテレツ喜劇です。
 その上、軽くてユルくて、くだらない。Good!
 今のご時世じゃ、もうこういう映画はつくれない。

 フウは密かにスズが好き。スズはブルーの色が好き。
 フウはスズに寄りつく男をなぎ倒す。スズは赤ちゃんを抱えてる。
 スズは世のしがらみに頓着しない。その時の気まぐれで爽やかに生きてる、チョット足りない女の子。
 フウはスズが好きだから、そんなスズをいつもフォローする。

 大きく広がる田園風景の中、フウとスズと赤ちゃんのプープーはヒッチハイクの車を待っている。
 そこへ、スズが好きなブルー色のオープンカーがやって来る。はしゃぐスズ。
 着いた先で、オープンカーの男がスズに襲い掛かる、
 察したフウは生まれて初めての人殺しで、男をやっつけたはずが、どっこい生きていて逆襲を喰らう。
 だが次の瞬間、男は眉間に銃弾を受け、即死。
 間一髪のところ、二人を救ったのは、オープンカーの後部トランクから突如現れた、不思議な銀色少年、トランクマン。

1-0_2017071410592830c.png そんな頃、女装の妻とその夫は、自分たちの行方不明の赤ちゃんを探していた。
 この二人組に捕まったフウとスズ、計4人はオープンカーに乗って、彼らの赤ちゃん探しに付き合わされる。

 「きっと、ここよ」とフウは車を止めさせた。そこはスズが赤ちゃんをベビーカーごと、置き去りにした所。
 やっぱり!草原の茂みの中から赤ちゃんの泣き声。
 スズの赤ちゃんを奪おうとする二人組は、フウとスズに銃口を向けるが。どこからともなくドキューン。ここで例のトランクマンが再度ふたりを救った。

 そもそも、フウとスズのこの旅は、赤ちゃんのお父さんに会いに行く旅。
 一方、赤ちゃんのお父さん、木嶋(國村隼)は、スズからの手紙を、楽しい我が家で受け取っていた。

 手紙を読んで木嶋は唸った。たしか、依頼殺人でスズを殺したはずなのに…。
 木嶋はさっそく、あの時の殺人請負人ジョージ(原田芳雄)に会うことにした。結局木嶋は今度はジョージに頼まず、自らスズを狙うことにした。

 執拗な追跡の結果、木嶋がフウとスズの前に現れる。互いに拳銃の撃ち合いが始まり、次ぎの瞬間、木嶋が崩れた。
 そう、ここでもお助けトランクマン!

 そおして、フウとスズとプープーに、再び幸せな日々が始まるのでした。めでたしめでたし。なんぢゃ!このケッタイな話は・・。

 あの鈴木清順が脇役の老人で現れる。舞台セリフっぽい長セリフです。
 挿入のサウンド、いいセンス。
 軽く受け流して観ましょうね。
 

監督・脚本:渡邉謙作|1998年|73分|
原案:ミッキー・ケン・ケン・ブー|撮影:村石直人|音楽:三宅純|
出演:スズ(上原さくら)|フウ(松尾れい子)|木嶋(國村隼)|ジョージ(原田芳雄)|トランクマン(山中零)|老人(鈴木清順)|
オープンカーの男、職業ゴルファー(桜井大造)|イルカ(津田充昭)|ゲスオ(大森立嗣)|写真の男(ジョー山中)|ほか

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映画 「飢餓海峡」 監督:内田吐夢

上
函館警察の元刑事弓坂(右)は、当時追っていた男・犬飼に10年の時を経て、
このとき初めて会った。(東舞鶴警察留置場にて)


 「飢餓海峡」の飢餓とは、直截的には、主人公ふたりの貧しい出自を、海峡とは津軽海峡を指すが、題名の意味合いは、あまりに貧しい生まれであったが故に、どちらの人生も、(対岸の)幸せに至れなかったことの不幸を表わしている。(原作:水上勉)

 物語は、北海道を放浪していた犬飼(三國連太郎)という極貧の生まれの男と、青森県下北半島にある恐山のふもとに住む、やはり貧しい家の娘・八重(左幸子)、このふたりそれぞれの顛末を描く大作。(182分)

1-0_2017062915305344e.png 時は昭和22年、北海道にいた犬飼が、網走刑務所を出所した二人組に出会ったことから、話は始まる。
 当時、放浪中の身であった犬飼は、彼らの仲間になった訳ではなかったが、旅の道連れとなっていた。
 列車に乗った3人。その車内で犬飼は、この二人組が北海道岩内町の質屋を狙って強盗を働き大金を手にした事、その時、質屋の家族を殺し家に火を放った事を、それとなく薄々知る。逃亡する二人組と、この時点でも旅の道連れの犬飼であった。

 列車を降りた3人は海岸へと向かう。警察の目を避けて、津軽海峡を舟で渡ろうと言うのである。
 時はちょうど、青函連絡船が台風で転覆事故を起こしたその直後であった。
 遭難者救助のため地元消防団ら大勢が、次々に小舟で沖合に出て行こうとする、その騒動の最中であった。
 犬飼は二人組に言われるままに消防団員を装い、小舟一艘を借りた。

 日が暮れた荒海の沖合での出来事だった。
 二人組が仲間割れの喧嘩を始め、一人が海に落ちる。ついで片割れが犬飼に襲い掛かった。犬飼は身を守った結果その男は海に落ちた。深夜の出来事であった。(これは10年後、犬飼が東舞鶴警察の刑事の尋問に答えた発言であり虚偽かもしれないが、犬飼の真の告白かもしれない)

 結局早朝、犬飼一人が下北半島の海岸に、辛うじてたどり着いた。そうして犬飼はここで初めて、二人組が持っていた大金を確認した。大きな幸せを感じた瞬間であった。この金でこれからの人生が開ける!
 同時に、貧しく過ぎた自分の過去が、心の中で走馬灯のように駆け巡った。何をやってもうまく行かない人生だった。
 そして次に彼はおびえ始めた。自分が強盗殺人放火の犯人と疑われる、二人組を殺したと疑われる。当然であった。彼は乗って来た小舟を壊し、燃やしてしまう。

 食うものも無く、行く宛も無く、山林をさ迷った犬飼は、トロッコのような森林鉄道列車を見て飛び乗った。
 彼が八重に会ったのはこの時だった。
 ひどく汚れた身なりだがいい男の犬飼を見て、八重は食べていたおにぎりを二つ、犬飼にやった。
 そのあと、八重が仲居兼娼婦をする小さな旅館で、八重は犬飼に風呂をすすめ爪を切ってやったりの世話を丁寧にしてやった。
 八重は困った人を前にしての親切心だったのかもしれないが、見知らぬこの男に心が揺れたのは確かであった。
 一方、犬飼は、たぶん、生まれて初めての、真っ直ぐな親切に、やはり心が揺れていたのかもしれない。ふたりは交わった。

 犬飼は、「なんも悪い事した銭や無いから、好きにつこうたらええ」と手に入れた金から、八重にとっては大金の額を、そこにあった新聞紙に包んで、お礼として八重に渡した。そして犬飼は急ぎ旅館を後にした。(このふたりが再会するのは10年後であった)

 八重の家は貧しい上に借金を抱えていた。
 母親は死に、年老いた父親(加藤嘉)は林業で働くが稼ぎは少ない。仕方なく旅館で働く八重であったが、この金で貧しい暮らしから抜け出せる。借金を返済できる、父親の生活の足しにもできるから、自分は東京へ行きたい。東京に出て心機一転、堅気の働きがしたい。そう考えた八重は迷わず、同郷の知り合いを頼りに上京する。
 始め、間口一間の呑み屋に雇われ、次に娼婦となり、やがて芸者となって10年の時が過ぎた。生活は安定し、貯金を貯め、八重はそれなりに満足であった。

 一方、この10年の間に、犬飼多吉は樽見京一郎と名に変え、 京都府北部、日本海に面する舞鶴で会社経営をする実業家になっていた。
 大きな屋敷に住み、大陸引上げの女と結婚し、地元に、また故郷の小さな村に多額の寄付をする篤志家としても名をはせていた。

 ある日、八重はふと見た新聞記事の顔写真に、釘付けになった。犬飼さんだ!女の直感であった。記事には樽見京一郎の多額の寄付のことを礼賛していた。
 八重は居ても立っても居られない、住所が掲載されているその記事の切り抜きを持って、その日に舞鶴へ向かった。八重はただ犬飼に会って一言、10年前の礼を言いたかったのである。

2-0_2017062915392876c.jpg しかし八重を前にして、恰幅のいい樽見京一郎は、何の事やらと知らぬ存ぜぬを押し通そうとする。だが、間近に見る男は犬塚である。八重は懸命に話しかけた。ついに犬塚は白状する、そして犬塚の心がまたしても大きく揺れ、八重の首を絞めてしまう。
 そのあと犬塚は八重に茶を出した書生も殺し、深夜、二人の死体を心中に見せかけ海に投げた。

 八重には、この10年間ずっと後生大事にしていた物があった。それは、親切のお礼だと犬塚が言って、札束を新聞紙に包んだ、その古新聞紙と、犬塚の爪を切った時のその爪であった。(この古新聞の一面記事は青函連絡船転覆事故)
 八重は、犬塚が津軽海峡を渡って来た事も、二人組の大金を得ていた事も何も知らなかった。
 八重が知っているのは、弓坂という刑事が八重を訪ねて来て、「見知らぬ大男を見なかったか」と聞かれ、嘘をついた事だけだった。

 東舞鶴警察の刑事たち(高倉健ほか)が動き出す。
 調べが進むうちに樽見の犯行という線が濃厚になる。八重の遺体から例の多額寄付の新聞記事切り抜きが発見されたのだ。さらに見つかったのは、彼女が持っていた青函連絡船転覆事故を報じる古新聞。
 刑事たちは、樽見と八重の関係を探りはじめる。

 八重の父親が娘の遺体を引き取りに来た時、東舞鶴警察は、10年前に函館警察の刑事が八重を捜していたことを知る。
 そして、函館警察の元刑事弓坂(伴淳三郎)が呼び出される。 
 10年前、弓坂は北海道岩内町の質屋強盗殺人放火事件を追っていた。加えて青函連絡船転覆事故による遭難水死の遺体のうち、身元不明の2体が、網走刑務所を出所した二人組である事までは突きとめていた。そして、この二人の死体の額には、ともに妙な打撲の傷があった。小舟のオールによるものか。
 さらには当時、小舟を借りに来た男がその舟を燃やしたであろう灰も確認し、男が下北半島にたどり着いた事は明らかである事も突きとめていた。
 加えて東舞鶴警察は、10年目の宿帳から樽見の筆跡を確認した。
 ついに、樽見京一郎が東舞鶴警察に呼び出された。さて、このあと結末はいかに!!


監督:内田吐夢|1964年|182分|
原作:水上勉|脚色:鈴木尚之|撮影:仲沢半次郎|
出演:犬飼多吉/樽見京一郎(三國連太郎)|杉戸八重(左幸子)|樽見の妻・敏子(風見章子)|八重の父・長左衛門(加藤嘉)|函館警察の刑事・弓坂吉太郎(伴淳三郎)|弓坂の妻・織江(進藤幸)|網走刑務所を出所した二人組の一人・沼田八郎(最上逸馬)|網走刑務所を出所した二人組の一人・木島忠吉(安藤三男)|戸波刑事(岡野耕作)|佐藤刑事(菅原正)|岩内署長(志摩栄)|朝日館主人(曽根秀介)|朝日館女中(牧野内とみ子)|札幌の警部補(北山達也)|和尚(山本麟一)|漁師辰次(大久保正信)|下北の漁師(矢野昭)|下北の巡査(西村淳二)|巫子(遠藤慎子)|大湊の巡査(田村錦人)|富貴屋のおかみ(荒木玉枝)|煙草屋のおかみ(河村久子)|記者A(室田日出男)|池袋の警官(久保一)|警視庁の係官(北峰有二)|唐木刑事(鈴木昭夫)|堀口刑事(関山耕司)|嘱託医(斎藤三男)|味村時雄(高倉健)|ほか
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映画 「夜叉」  監督:降旗康男

上


 田中裕子を愛でる映画です。

1-0_2017061914235620d.png 任侠映画は今も好まないが、高倉健主演の「夜叉」を、前世紀に観たような気がしたので、今回あらためて観てみたら・・。
 高倉健のおはこ、無口で無表情な演技よりも、田中裕子の無言と微かに移ろう田中の表情の方が、ずっと雄弁だった。

2-0_20170619142734972.png 修治(高倉健)は、人斬り夜叉と言われた大阪ミナミのやくざであったが、覚醒剤で金を稼ぐな、という彼の主張が、組の中で通らず彼は干された。加えて、かたぎの女である冬子(いしだあゆみ)との結婚を機に、修治は足を洗い冬子の実家、福井県敦賀で漁師となった。

 修治の妻、冬子はこの漁師町で生まれた。15年前、冬子は大阪に働きに出て、やくざ者とは知らず修治と出会ったのであった。
 螢子(田中裕子)はミナミから流れて来て、この漁師町で「蛍」という名の呑み屋をはじめた女。螢子は子連れであり、彼氏はミナミのヤクザ、失島(北野武)であった。

 螢子と冬子の、それぞれの修治への愛。それは、ミナミのやくざな世界の中の愛、敦賀湾の漁師町の愛。

 脚本は練りが不足している。説明のためのモノクロ回想シーンは、どれも安っぽくて頂けない。
 ただし、秀逸なシーンが三つ。本作の全体を支える要です。
 ・螢子の店で、修治と冬子が客として酒を飲むシーン。修治をめぐって、螢子と冬子との間でスパークする激しく静かな火花。
 ・ある夜、修治宅を訪れた螢子が、二人だけの話がしたくて彼を海際に呼び出すシーン。螢子が修治に、ぼそっと言う。「冬子さん、嫌いや」
 ・夫に献身的で日ごろ大人しい冬子が、修治と螢子の関係を知ったその夜、冬子は修治に向かって、苦しい胸のうちから絞り出すように言う凄んだセリフ、「私はあなたの妻です!」 この一瞬、女優いしだあゆみが光る。
  かつて人斬り夜叉と言われた男も、この一言には敵わなかったというお話でした。

 
監督:降旗康男|1985年|128分|
脚本:中村努|撮影:木村大作|
出演:修治(高倉健)|螢子(田中裕子)|冬子(いしだあゆみ)|冬子の母親うめ(乙羽信子)|失島(北野武)|啓太(田中邦衛)|啓太の妻とら(あき竹城)|修治が属した組の組長の妻塙松子(奈良岡朋子)|修治の舎弟トシオ(小林稔侍)|親爺(大滝秀治)|修治が若い頃の女夏子(檀ふみ)|組員(寺田農)|ミナミの組長(下條正巳)|

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映画 「君と歩こう」  監督:石井裕也

上
田舎を出るノリオと明美先生。2人の明るい駆け落ちが始まった。

 田舎に住む、34歳の独身女性教師と高校生男子との駆け落ち喜劇話。

 映画は、よくある話の人物設定を否定してみせる。
 つまり、34歳男性教師が若い女子高校生と駆け落ちするのではなく、だ。
 また、その愛は極端に淡い。
 キスさえなく男子は童貞のまま、よくある男女の愛には程遠く、とりあえず切羽つまった駆け落ちでもない。

 そして話の筋は、基本、喜劇だが、奇妙で突飛で写実的じゃない。
 しかし一方で、どうしようもなく現実的でもあり、このふたつの要素がまだらに入り混じるところが、監督の喜劇なんだろう。

 大きく欠けてしまった心を抱く者同士、ノリオと明美。ふたりは自身のそれを言わない。
 だからこそ、優しい。 これは愛?

1-0 教師の明美(目黒真希)は、高校生のノリオ(森岡龍)に対し、自分は駆け落ちのプロだという。
 その日、ノリオは明美にせかされ、住み慣れた田舎を後に、ふたりは東京へ出た。

 まずは、ふたりはそれぞれの携帯電話を渋谷川に捨てる。
 そして、日当たりのいい部屋を借りた。明美はノリオに言う。
 「私はお金持ちなの。前々から言ってるとおり、ノリオは勉強して弁護士になるの。勉強しなさい。」 「はい先生」
 
 明美:「How are you?」 明美はいつもノリオに、こう問いかけるが、
 ノリオ:「ア、アム、アム・・・」
 明美:「I'm fine thank you. and you? でしょう」
 ノリオは覚えが悪い。

 話が進むうちにわかること。
 ノリオの両親はそろって自殺した。
 ノリオと明美の出会いは、両親の自殺のその直後、後追い自殺しようと、ノリオが首つりしている、「その最中」に、明美先生が家庭訪問に訪れたのだった。
 その後、ノリオはひとりで自宅に住み続けるが、家はゴミ屋敷になっていた。

 さて、明美とノリオの話に、サブストーリーが3つ絡んで、明美とノリオの東京生活が明らかになって行く。
 サブの話のひとつは、高校生同士(吉谷彩子、前野朋哉)の恋愛で女子が妊娠。この女子がカラオケ屋でバイトをしていて、この店で明美先生もノリオに内緒でバイトを始めるが、ノリオの前では要領がいい先生は意外にも、役立たず・・。さらには、そんな様子をノリオが見てしまう。
 一方、この女子高生を気遣うノリオを遠目に目撃した明美先生は、ノリオが浮気していると嫉妬する。
 結局、駆け落ちのプロ・明美先生は、このカップルを駆け落ちさせようと奮闘することに。
 次ぎのサブストーリーは、ノリオが偶然出会った謎の女性・康代(勝俣幸子)に、ノリオは公園の多目的トイレで童貞を奪われる。
 三つ目は、両親がいない野球ファン少年・安太郎(渡部駿太)がノリオに出会う話。

 そして、こんな何やかにやがあった、3年後。
 田舎を出たはずのノリオは、田舎の自宅に戻っていた。
 そしてある日、ノリオは畑の中のバス停で、バスを降りたばかりの、明美先生を発見する。
 明美はノリオに、笑顔を返すのであった。

下2監督・脚本:石井裕也|2009年|90分|
撮影:高木風太|
出演:田中明美(目黒真希)|佐伯ノリオ(森岡龍)|女子高生・一瀬メグミ(吉谷彩子)|男子高生・竹友(前野朋哉)|野球好きな安太郎(渡部駿太)|謎な女・康代(勝俣幸子)|ノリオの同級生のひとり・康隆(中村無何有)|ほか

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映画 「憲兵とバラバラ死美人」  監督:並木鏡太郎

上2
殺された女、百合子(三重明子)

 時は昭和12年、仙台歩兵第四連隊の敷地内で発覚した猟奇殺人事件のお話。

1-0_20170506211933332.png 連隊内で飲料水として使っている井戸から、若い女性の胴体が引き上げられます。その女性は妊娠していました。
 さて、殺人犯は連隊兵士だとみて、地元警察ではなく、憲兵隊が捜査を開始します。

 この映画は60年前に製作された娯楽作品です。映画公開当時は「バラバラ死美人」というショッキングな内容を楽しめたのかも知れませんが、今の感覚で観ると、犯罪ミステリー映画です。衝撃度への期待は裏切られます。でも、悪くはないです。

2-0_20170506214044305.png
 映画の内容は、1950年代によく作られた、刑事事件ドラマや怪談もの映画の、典型的なスタイルをとりながらも、コミカルさも忘れない作りです。
 ただし本作では、犯人捜査をする主役の刑事を、憲兵隊の曹長(下士官)に置き換えています。
 当時の、典型的なドラマ・スタイルを楽しみましょう。
 
 遺体発見後、憲兵の小坂曹長(中山昭二)が、仙台連隊長の招きで東京からやってきます。彼は腕利きの捜査官です。
 一方、地元、仙台の憲兵隊も捜査を始めていて、小坂曹長と事件解明でつばぜり合いになります。

 殺された女性、百合子(三重明子)、犯人の君塚軍曹(江見俊太郎)、この二人の登場シーンは少ないのですが、共に存在感ある俳優で、とても印象に残ります。この映画の見どころです。

 主演の小坂曹長(中山昭二)は、憲兵にしては温和な性格。地道に証拠を探し推理し、また地元警察の老刑事をうまく活用します。
 その小坂曹長の部下、高山(鮎川浩)は、曹長を助けながらも、コミカルで軽妙な演技をしています。

 東京から来た小坂曹長と高山が宿とした家は、高山の幼なじみの、しの(江畑絢子)という女性の家でした。この、しのの快活さと、高山の可笑しさが楽しいです。高山は、しのが好きです。
 また、しのの姉、喜代子(若杉嘉津子)は、飲み屋を切り盛りする、色っぽい独身女性。彼女は小坂曹長に一目惚れ、曹長もまんざらでもない。

 こういうサイドストーリーを脇に従えながら、小坂曹長と高山による犯人捜査は続けられます。
 そして、犯人逮捕のため、小坂曹長は満洲へ渡ります。
 満洲へ移動した仙台歩兵第四連隊に犯人の君塚軍曹もいて、彼はさらに連隊を離れてハルピンに逃げていました。 
 
 ちなみに、地元憲兵隊によって誤認逮捕され、取り調べで拷問にあう恒吉軍曹(天知茂、この時26歳)。若いながらも既に、あの天知茂特有の薄暗い魅力たっぷりです。

監督:並木鏡太郎|1957年|73分|
原作:小坂慶助|脚色:杉本彰|撮影:山中晋|
出演:小坂徳助曹長(中山昭二)|小坂の部下でヒラの憲兵・高山忠吉(鮎川浩)|被害者・伊藤百合子(三重明子)|殺人犯の軍曹・君塚八太郎(江見俊太郎)|小坂が宿にした家のあるじ・加島喜代子(若杉嘉津子)|喜代子の妹で高山の幼なじみ・加島しの(江畑絢子)|萩山憲兵曹長(細川俊夫)|刈田憲兵伍長(小高まさる)|井部憲兵隊長(倉橋宏明)|坂本憲兵大尉(高松政雄)|金田(三村俊夫)|田所(明日香実)|恒吉軍曹(天知茂)|山本(西一樹)|細井(浅見比呂志)|酒井(築地博)|小俣軍曹(池月正)|内務班の古年兵A(山岡正義)|内務班の古年兵B(宇田勝哉)|西村衛生伍長(館正三郎)|高梨(加藤章)|田中(小浜幸夫)|守谷刑事部長(岬洋二)|馬渡老刑事(久保春二)|医師の石川博士(児玉一男)|石川博士の助手(千葉徹)|鴨下妙子(松浦浪路)|清の家の女将(津路清子)|文子(小野彰子)|老姿およし(五月藤江)|歯科医(武村新)|村井夫人(高岡久美子)|

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映画 「戦国奇譚 気まぐれ冠者」(1935年) 監督:伊丹万作 (せんごくきたん きまぐれかじゃ)

上
「ヒゲの勘十」と「気まぐれ冠者」(片岡千恵蔵)

 この映画は、映画監督で俳優だった伊丹十三の父、伊丹万作(1900 - 1946)が、昭和10年に作ったコミカルな時代劇映画です。(トーキー作品)

1-0_20170423103831cee.jpg 表看板の主役は片岡千恵蔵で、浪人の「気まぐれ冠者」を演じていますが、この気まぐれ冠者に連れ添う、太っちょでちょっとヌケてる「髯(ヒゲ)の勘十」、この役を演ずる田村邦男という俳優が、とても素晴らしい。味があります。
 この人を主役として観るほうが、たぶん、この映画を楽しめると思います。(彼は日本大学相撲部出身だったそうです)
 (※冠者とは「若者」の意。ここでは、気まぐれ野郎ってな感じか)

 話の展開はゆったり進みます。
 旅する浪人の二人、気まぐれ冠者と髯(ヒゲ)の勘十は、山賊一味ともつながりがある、風来坊です。
 この二人は、ある藩が主催する御前試合の会場前を通りかかりました。(※殿さまの面前で行う武術試合)
 槍が得意な勘十が、これは面白そうだと、御前試合に飛び入り参加したことがきっかけで、二人は殿さまに家来として雇われることとなります。
 (どうでもいい事ですが……気まぐれ冠者は、のんきな殿さまから、「給与(禄)はいくら欲しいか」と出し抜けに聞かれ、たじろぎながらも抜け目なく希望金額を言います。勘十は、その額の多さに驚きます。
 しかし、すぐさま、殿の側近から予算的余裕は無いからねと耳打ちされた殿は、結局、気まぐれ冠者の希望金額を値切ります。でも一軒家が与えられます。厚遇ですよね。)


 さて、二人が仕官したこの国(藩)は、隣りの国が攻めてくることを恐れています。
 そこで、隣国が「攻めて来ないように」する、何か良い方法は無いものかと、殿さまはじめ家来たちは、これまでにも幾度も思案したのですが、良いアイデアは出てきません。
 まあ、この国はとても平和主義の国で、戦争は避けたいし、家来の武術レベルも低いようです。そして家来はみんな、間が抜けたのんびり屋です。おまけに殿さまは、はっきり言って阿呆です。
    ……………………………………
 そんななか、気まぐれ冠者は、隣国を偵察してみようと考えて、殿さまの許可を得ます。
 気まぐれ冠者は勘十を連れて、隣国に入りますが、不覚にも二人は捕まってしまい、城の牢屋に入れられてしまいます。
 しかし、牢屋の床の、ある敷石を持ち上げると、その下には地下へ降りて行ける抜け穴があることを発見し、二人は迷路のような抜け穴をたどって行きました。
 そして、行き止まりまで来ると、抜け道に天井がありました。気まぐれ冠者は勘十を踏み台にして、その天井を押し上げ、上の様子を見て、あっと驚きます。次に、どれどれと勘十も上の様子を見て驚きます。
 天井ように見えたのは、実は城内の部屋の床で、二人はその部屋の畳を持ち上げていたのです。そして、その部屋は、なんと、この国のお姫様、椿姫(市川春代)の部屋でありました。

 ひとり、この部屋にいた姫は、突然、床下から現れた二人を怖がっていましたが、気まぐれ冠者は絶妙に姫におべっかを使い、姫を懐柔することに成功します。
 そして、二人は、殿さまの前(お白州)に引き出されますが、殿の脇にいる姫の計らいで、殿さまは二人を釈放します。この国の殿さまも、バカ殿のようです。

 さて、ここから、気まぐれ冠者が考え出した、敵国攪乱(かくらん)作戦が始まります。
 その作戦の秘密兵器は、金の卵です。まずは金の卵を国中に知らしめます。
 そして、気まぐれ冠者と勘十、そして彼らの手下数名(知り合いの山賊)が、忍者姿となって行動し始めます。
 この国の、あちこちの農家のニワトリ小屋に、金の卵をそっと置いて行きます。そのうち、この国の人々は、そして殿さまも家来も、金の卵を産むニワトリを巡って、我を忘れ夢中になって行きます。国中が翻弄されます。隣国侵略どころではありません。作戦大成功。

 そんなわけで、気まぐれ冠者と勘十は馬にまたがり、この国で新たに手下にした人々を従えて、意気揚々と凱旋の途に就くのでした。めでたし。(馬にまたがって凱旋するシーンは、中国大陸を感じますね)

 本来、88分の尺の作品だそうですが、現存は75分なので、観れないシーンがあります。
 また、古い映画なので、音声が聞き取りにくい。よって、元は分かりやすい大衆向け仕立ての映画なのですが、話がイマイチ分からない。
 そのうえ、気まぐれ冠者と勘十が仕官した国の殿さま(伊藤隆世)と、隣国の殿さま(ジョウ・オハラ)の様子が似ているので、コンガラガル。(仕官した国の殿さまには、長いあごヒゲがある)
 それでも、ホンワリした、いい喜劇映画と言えるでしょう。

 本作の制作は1935年。この頃の時代背景。
 1931年、柳条湖事件に端を発して満洲事変が勃発、関東軍により満洲全土が占領される。その後、関東軍主導の下に同地域は中華民国からの独立を宣言し、1932年、満洲国建国に至った。
 こんな世情になかで、当時の人々は、この映画を観ていました。
 
 
この映画は、トーキーです。つまり無声映画じゃないです。
日本初のトーキーは1927年。
1938年当時でも、日本では映画製作の3分の1は、まだ無声映画だったそうです。

監督・原作・脚本:伊丹万作|1935年|88分 (現存75分)|トーキー、モノクロ|
製作:片岡千恵蔵プロダクション|撮影:石本秀雄|
出演:片岡千恵蔵(気まぐれ冠者)|田村邦男(髯の勘十)|伊藤隆世(殿様)|ジョウ・オハラ(敵国の殿様)|市川春代( 椿姫 敵国のお姫様)|尾上華丈(木曽猿)|瀬川路三郎( 関羽左衛門)|香川良介(隠密横目氏)|林誠之助(金神)|駒井燿(百足)|ほか

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映画 「羅生門」  監督:黒澤明

上2

 女優、京マチ子を愛でる映画です。
1-0_20170409235658056.jpg
 時は平安時代のある日。人けのない山間の道を、平安京の中央官庁に勤務する官人の金沢(森雅之)は、妻の真砂(京マチ子)を乗せた馬の手綱を引き、亰へと向かっていた。
 偶然、その道端に居た盗賊の多襄丸(三船敏郎)は、通り過ぎる馬上の真砂の美しさに一目惚れ。
 この女を奪いたい、その一心で多襄丸は、ふたりの行く手に立ちはだかった。そうして格闘の末、多襄丸は金沢を縛り上げ、彼の目前で妻の真砂を犯した。その後、金沢は死体で発見される。

 どうも、そこまでは確か、らしい。
 と言うのは、それは検非違使庁(けびいちしちょう)のお白洲に呼び出された、この事件の関係者らの供述から、推測される。
 被疑者は、縄で縛られた盗賊・多襄丸。証人は、金沢の妻・真砂と、巫女(霊能者)の降霊術によって呼び出された金沢の霊。加えて、死体の第一発見者の杣売の男(志村喬)、生前の金沢を見かけた旅法師(千秋実)、弱っていた多襄丸を捉えた男(加東大介)。
 しかし、多襄丸、真砂、金沢の霊、それぞれの供述が大きく食い違う。誰が金沢を、真砂の短刀で殺したのか。

 さて、お白州の後日、土砂降りの雨の中、羅生門の下で雨宿りする、死体の発見者の杣売の男が、下人の男(上田吉二郎)と旅法師に、お白州で言えなかった真実を語り出す。杣売の男は、事件に関わりたくなかったのだ。

 多襄丸、真砂、金沢の霊、この3名の供述は、カメラに向かってなされる。つまり、検非違使庁の役人(裁判官)は観客となる。
 そして、この3名の供述と杣売の男が見た真実が、それぞれ映像として再現され、映画は進む。
 京マチ子が、4名の供述でまったく異なる真砂を演じ分ける。これが見事。(観てのお楽しみ)
 少し残念なのは、多襄丸の供述時のセリフが硬いこと。

  「羅生門」(らしょうもん)とは、平安京の中央を南北に貫く朱雀大路の南端にあった都の正門、羅城門(らじょうもん)のこと。のちに、平安京の西側半分および七条以南の地は、荒廃してしまう。羅城門が見る影も無い本作は、その頃の話と思われる。


英語表記:Rashomon
監督:黒澤明|1950年|88分|
原作:芥川龍之介|脚本:黒澤明 、橋本忍|撮影:宮川一夫|
出演:多襄丸(三船敏郎)|金沢武弘(森雅之)|金沢の妻・真砂(京マチ子)|杣売(志村喬)|旅法師(千秋実)|下人(上田吉二郎)|旅免(加東大介)|巫女(本間文子)|

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映画 「やくたたず」   監督:三宅唱

上

 いい映画です。
1-0_20170324165718a12.jpg どこにでもいるような男子高校生三人の、極々日常的な時間の流れが、カメラによって切り取られ、映画に映し出される。ストーリーというほどの物語性は無い。
 大筋の台本はあるんだろうが、たぶんセリフや演技は俳優に任せている。演技の巧さは求めてはいない、カメラの前で構えなく、極、自然に振る舞えることが大事であった。
 本作をつまらないと思うのは自由だが、映像そのものが、言外に何やら静かに語っているのが分かると、この映画、気に入ると思う。
 
 話の舞台は、雪降る札幌郊外のそのまた外れ。車は通るが人影は見当たらない、殺風景な雪景色。
 枯草茂る小さな丘陵を越えれば、海。モノクロ映像が、白い雪原と冷たい空気を強調する。

 防犯機器の取付施工をする小さな会社に伊丹という従業員がいて、彼を慕って高校3年生の三人が、バイト気分で仕事を手伝いしはじめる。「やくたたず」です。
 高校3年生とはいっても、まだまだ幼い、三人はじゃれ合うように日々を過ごす。
 彼らの先輩、伊丹が勤めるこの会社は、年配のオーナー社長と若い女性従業員一人だけ(この映画の紅一点)。 そして、小さな事務所小屋と機材倉庫に古ぼけた日産サニートラック1台。
 それに、伊丹の友人で刑事の、おとなしい次郎が登場人物に加わり、そして物語と言えることは、日産サニートラックが盗難にあうことぐらい。それも事件と言うほどもない事件。
 これで76分間、最後まで飽きずに観てしまえる。いい映画です。それとカメラワークがイカしてる。お試しあれ。
 

監督・脚本・撮影:三宅唱|2010年|76分|
出演:柴田貴哉|玉井英棋|山段智昭|櫛野剛一|足立智充|南利雄|片方一予|須田紗妃|


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映画 「いなべ」   監督:深田晃司

上
直子と智広のふたりが行く。

 38分の短編映画です。短編ならではの、さらりとした良さがある静かな映画です。
 起承転結の、起・承が穏やかに推移し、ラスト近くで一気に、転と結が用意されているお話です。

1-0_201703182041556fb.jpg 三重県いなべ市の郊外、田園地帯に、長男の智広(松田洋昌)と、歳の離れた高校生の妹、そして母親と祖母の一家4人が住んでいる。その妹は母親が再婚して生まれた娘らしい。
 そこへ智広の姉の直子(倉田あみ)がひょっこり、17年ぶりに帰って来た。幼児を抱えている。高齢出産は大変だったのよと言う。夫はあとから来るらしい。母親は仕事で夜にならないと帰って来ない。この話は、母親が帰宅するまでの数時間の物語。

 妹は直子を知らない。それほどに、直子はこれまで家に近づかなかったし、まったく音信不通だった。兄の智広から話を聞いた妹は、この人があの幻の姉なのねとつぶやく。
 直子は若い頃、家出をした。わけは、直子の英語の家庭教師をしていた男性だった。直子はこの年上の男を慕っていた。将来、この人と結婚してもいいと思うほどだった。ところが、この男は母親と一緒になった。そして直子は家を出た。その後、その男は世を去る。そんな17年を経て、直子が今日、帰って来たのだ。

 直子は智広を連れて、幼い頃を懐かしむように家の近所を歩く。そして直子は林に入って、昔、密かに土に埋めて隠したものを探し出す。それに付き合う、久しぶりの弟気分の智広。
 この姉弟がそんな散歩をするうちに夕暮れが近づく。五重塔のような展望台にふたりは登った。
 展望台からの見晴らしは素晴らしく、夕闇に浮かぶ街の灯りが遠くに綺麗に輝きだす頃。展望台に吹く風が、何か座りの悪いふたりの気持ちを揺らせて、ここよりも、どこか、ずっと向こうのどこかへ、ふたりの心を、ふっと奪い去って行くような、なぜかそんな心もとなさを智広は感じていた。

 直子は智広に、「会えて良かった」と言った。そののち、直子と智広はふたりして家へ帰るはずだったが、家に帰って来たのは智広ひとりだった。
 智広が玄関を開けると、母親が智広の帰りを待ちあぐねていた。母親は言った。「直子の夫だと言う男の人が来てるのよ...。」(あとは映画を観てね)

 滝のシーンはGoodだし、智広の妹がその友人と自転車に乗るシーンは、直子のこれまでを説明する為のシーンだが、自然で良い。だが、直子と智広が散歩するシーンが全体にやや冗長。広場で男4人がサッカーボールをけり合うシーンは、もうヒトヒネリしないとなんのこっちゃになってしまう。

下




監督・脚本:深田晃司|2013年|38分|
撮影 根岸憲一
出演:智広(松田洋昌)|直子(倉田あみ)|伊藤優衣|井上みなみ|望月皇希|康光岐|鈴木Q太郎|西田幸治|哲夫|桂三輝|ほんこん|

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映画 「安珍と清姫」 若尾文子,市川雷蔵  監督:島耕二

上

 安珍・清姫伝説をもとにした、大人の日本昔話といった内容の映画。
 自由奔放なな姫、若尾文子(清姫)と、まじめ一徹な僧侶、市川雷蔵(安珍)、このふたりの魅力につきる映画です。
 1960年の映画ですが、今でも十分に鑑賞に堪えます。
 話はとても古く、平安時代から伝承され、紀州(和歌山県日高郡)道成寺という寺に伝わる話です。

1-0_20170226142424cf0.png おてんばで勝ち気な清姫が狩猟の途中、姫が射た矢が流れ矢となって安珍の腕に当たってしまいます。これがふたりの運命の出会いでありました。
 安珍と連れの僧は、奥州白河より熊野に参詣に来た旅の僧であり、修行中の身でした。
 だから信心一途の安珍は、僧の戒律を守るため、傷の手当をしようと近づく清姫を避けます。清姫を美しいと思うが故に、なおさら避けます。そして安珍は己の煩悩と戦うこととなります。

 かたや清姫は、自身の過失を詫びつつも、自分を避ける、無視しようとする安珍に腹が立ちます。そのうえ、清姫は里の荘官(庄司)の美しい娘、プライドを傷つけられた思い。だから清姫はなんとか、安珍の僧の仮面をはがして、安珍の気を無理にでも自分へ引き付けたい。
 実はそれは安珍への恋だったのですが、清姫は自分のうぬぼれの方が勝り、恋とは気付きませんでした。
 ある夜、安珍が傷を癒やすため、里のいで湯にひとり入っていると、そこへ清姫が現れ、一糸まとわず湯に入ってきます。何やら妖しい色気さえ漂う姫は、安珍を誘います。そうして勝ち気な清姫は、安珍の心が自分に向いていることを安珍に白状させ、あたかも勝ったがごとく高らかに笑うのでした。

 しかしそののち、清姫は安珍への愛に気付きます。清姫は、煩悩に苦しみながら里を去り道成寺へ向かう安珍を追います。
 道成寺への途中、安珍は滝に入っての修行(滝行)のため、仮小屋に滞在します。そこへ清姫が追い付きました。
 そしてふたりは、ついに結ばれます。しかし悲しいかな、このふたりの愛は何処まで行っても悲恋なのです。僧の戒律を破った安珍は、煩悩の苦しみに加えて、自戒の念に苛まれていきます。

 安珍は姫から逃げるように道成寺へひた走ります。そして、彼を追う清姫は、とうとう川に身を投げてしまうのでした。
 その夜、道成寺の境内に異変が起きます。雷鳴と嵐のなか、大蛇に化身した清姫が・・・。

 余計なことですが、仮小屋でのシーンは、なかなか色っぽいです。ご注目。
 本作を観て思い出すのが、2016年の映画「仁光の受難」。これ、安珍・清姫伝説を下敷きにしています。ですが清姫ではなく、村の女達や山女。やたらモテる修行僧の女難の話、喜劇です。
 本作 「安珍と清姫」と同じく、平安時代の話として、女狐の化身との愛の話、内田吐夢の「恋や恋なすな恋」は、大川橋蔵と瑳峨三智子の競演。これもファンタジー作品です。
 若尾文子つながりで言うと、「初春狸御殿」。これはミュージカル。本作 「安珍と清姫」と同じく、若尾文子と市川雷蔵の競演。  
 ちなみに、本木雅弘主演の修行僧の映画「ファンシイダンス」は、僧自ら禁を破りまくるお話でした。
 以上、文中の下線部をクリックして、当該4作の過去記事をお読みください。

英語タイトル:The Priest and the Beauty
監督:島耕二|1960年|85分|
脚本:小国英雄|撮影:小原譲治|
出演:安珍(市川雷蔵)|清姫(若尾文子)|清姫の父で里の荘官・清継(見明凡太朗)|清姫と結婚したい里の長者・友綱(片山明彦)|連れの僧・道覚(小堀阿吉雄)|桜姫(浦路洋子)|早苗(毛利郁子)|増全(荒木忍)|義円(南部彰三)|佐助(花布辰男)|渚(毛利菊枝)|ほか

下


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映画 「どっこい生きてる」   監督:今井正

上
 早朝、日雇いの仕事を求めて、木造の臨時職安前に押し寄せる人々 (これは実写だろう)


0 非戦闘員を無差別に殺傷した東京大空襲から6年経った1951年、占領下の東京の街中の様子とは、どうだったのか、を知る映画。
 観たいと思う方は多くないと思われる映画だが、機会があれば観ておくことをお勧めします。

 進駐軍こそ映画に出てこないが、空爆で破壊されたビルの残骸や、焼け跡のもろもろの瓦礫がまだ街のあちこちにあるのです。
 その瓦礫の撤去や河川改修の作業(日雇い仕事)を職安が提供している。
 多くの人々に職がないのだ。職安が斡旋を開始する早朝、人々は急ごしらえの木造の臨時職安前に、押し合いへし合い、ひしめく。
 多くの人々に金がない。その日、家族が食うものが買えないのだ。
 しかし日雇いで得た金は僅か、数日の食費も賄えない。
 運よく、なんとか勤め先が見つかっても、給料日までを食いつなぐ生活費がないために、その職を諦めざるをえない、そしてまた日雇い生活に戻ってしまう悪循環。(前借りはできない)

 主人公の毛利(河原崎長十郎)は妻と二人の子を抱えている。毛利は毎朝職安に出かけるが、日雇いの職にありつけないこともある。
 家族はみな、着の身着のままだ。粗末な掘っ建て小屋の貸家に住んでいるが、家賃が滞っている。さらには、家主が土地を売ったために立ち退きを余儀なくされる。
 毛利は妻子を、東北にある妻の実家へ帰した。定職に就けて金が出来たら、東京に呼び戻す予定だった。

 うな垂れる毛利は簡易宿泊所にころがりこんだ。日雇いで知り合った顔があちこちに見受けられた。(宿泊所は大部屋雑魚寝)
 日雇い仲間で毛利と気の合う水野(木村功)は、毛利より若いが明るくしっかり者。水野は、その外観が、小学校の二階建て木造校舎のような戦災者共同住宅に住んでいる。(炊事洗濯便所は共同) 一家一間の部屋に、じいさんと妻子ほか、なんと計7人が住んでいる。
 毎朝、職安に出かけては、日雇いをする日々が続く。

 そのうち毛利は旋盤の職を見つけたが、給料日まで食っていく金が、手元に無いがために、悶々としていた。
 それを聞いた水野の計らいで、共同住宅の住人の秋山婆さん(飯田蝶子)が動いた。共同住宅の住人に毛利のために募金を訴え、毛利が食いつなげる金が集まった。

 だが、その夜、簡易宿泊所内で毛利はその金を盗まれる。
 翌朝、旋盤の工場に初出勤したが、工場主から、受注予定の仕事がキャンセルになったので、雇えないと言われる。(実は、工場主の妻が毛利の貧しい風采を見て信頼がおけない怪しい輩と判断したのだった)
 行き詰った毛利は、簡易宿泊所の男に誘われ盗みを働く。警官に追われ逃げる毛利は、ふと気づくと、追い出された家の前にいた。そして、毛利の姿を見かけた大家は言った。上野警察から呼び出しがかかっているよと。

 毛利は観念して出頭したが、話の要件は毛利の妻子の引取りであった。無賃乗車で上野に帰って来たのだ。
 田舎の実家では、六畳に何人もが寝起きする状態だったらしい。田舎とて包容力がなくなっていた。

 上野駅近くで、毛利一家は途方に暮れる。もう、一家心中しかない。
 その前に、子たちに楽しい思いをさせようと遊園地へ。
 だが、ちょっと目を離した隙に息子が池に落ち溺れる。毛利は池に飛び込み息子を救った。
 そして夫婦は思った。生きよう。
 
下監督:今井正|1951年|102分|
脚本 岩佐氏寿 、 平田兼三 、 今井正|撮影 宮島義勇中尾駿一郎、植松永吉|
出演:毛利修三(河原崎長十郎)|妻さと(河原崎しづ江)|子供雄一(河原崎労作)|子供民代(町田よし子)|簡易宿泊所に住む男・花村(中村翫右衛門)|水野(木村功)|水野の妻(岸旗江)|水野の父(市川笑太郎)|水野の妹(今村いづみ)|水野良(寺田勝之)|水野健(寺田健)|秋山婆さん(飯田蝶子)|藤木(四代目中村梅之助)|班長野田(中村公三郎)|現場の男(坂東秀弥)|吉田製作所主(瀬川菊之丞)|妻きみ(川路夏子)|大家山川(河原崎国太郎)|トラックの男(花沢徳衛)|簡易宿泊所亭主(松本染升)|



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映画 「パルコフィクション」   監督:矢口史靖、鈴木卓爾

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 矢口史靖監督の「裸足のピクニック」(1993)、「ひみつの花園」(1997)、「アドレナリンドライブ」(1999)を、面白い映画として観て来た者にとって 、本作「パルコフィクション」(2002)は、前三作の延長線上にある映画として観れる。
 奇天烈な展開、作り手のひねくれた遊び心が嬉しい喜劇映画。(文中の下線部をクリックすると、その映画記事が読めます)

 でも矢口映画ヒット作「ウォーターボーイズ」(2001)を気に入った人は 「パルコフィクション」を多分、受け入れないだろう。作風が違う。

 これは監督の二面性とも言えるが、しかし残念ながら、「ウォーターボーイズ」は、その後の「スウィングガールズ」 (2004)や「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常」(2014)と同様に、凡庸な映画。
 認められて、予算がつく映画製作を任されるようになり、監督として箔がついたのでしょうが・・・、惜しいです。
 ただし「ロボジー」 (2012)はいい映画。「ハッピーフライト」 (2008)はなんとか観れる。

 本作 「パルコフィクション」は、あのパルコを舞台に6話の構成になっている。
 「パルコ誕生」、「入社試験」、「バーゲン」を矢口史靖が監督・脚本を担当し、「はるこ」、「見上げてごらん」、「ポップコーンサンバ」を鈴木卓爾が監督・脚本を担当している。どれも面白い。
 第三話「バーゲン」は、行定勲監督の映画「きょうのできごと」を思い出す。

監督・脚本:矢口史靖、鈴木卓爾 |2002年|65分|
発案:安田裕子|撮影監督:白尾一博|
出演:パルコ役員(田中要次)|老人(相馬剛三)|鈴木徹(小島大輝)|徹の父(寺十吾)|徹の担任教師(椎名令恵)|老人の息子(森下能幸)|コンビニ店員(山中聡)|医師(伊藤智之)|看護婦(元木千早)|花子(真野きりな)|東大男(近藤公園)|面接官(福田勝洋)|新入社員(大高敏宏)|新入社員(古澤弘年)|新入社員(出雲勝麿)|新入社員(小松玲子)|新入社員(池崎真理)|木下イズミ(村上東奈)|ムラチュー(高橋健太)|木下はるこ(進藤幸)|屋上の作業員(田邊年秋)|バーはるこの客(佐藤佐吉)|5歳のはるこ(森田季砂)|斧(鈴木卓爾)|極悪トリオ・甲(宇野孝信)|極悪トリオ・乙(山口大輔)|極悪トリオ・丙(野田幸祐)|バーはるこの子ママ (松村奈緒)|イズミの母(吉野晶)|パルコの店員(唯野未歩子)|パルコの店員(中村靖日)|パルコの店員(紫とも)|パルコのCM(真野きりな)|パルコのCM(近藤公園)|原井鈴子(猫田直)|塩野谷恵子(塩野谷恵子)|店長(紫とも)|パルコの客(坂井三恵)|店員(稲田千花)|警備員(荒川良々)|山谷美都子(唯野未歩子)|大須観三(荒川良々)|荒間素敵子 (田村たがめ)|司(徳井優)|セラピス( 緒方明)|渡部(松永大司)|ジコディ(ジェニファー・ホルメス)|美都子の少女時代(松村奈緒)|美都子の同僚(吉野晶)|

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映画 「ディストラクション・ベイビーズ」   監督:真利子哲也

上

1-0_2017020209333779e.jpg

 世間から、「はみ出た」者たちへの哀歌。そして、覚醒し始めるモンスターの物語。あるいは、痛そうな映画。
 
 ある日、何の前触れもなく、やがて駆出し、そして、その一瞬、暴発する怒り。仕掛けるケンカとその痛みと血の味は、覚醒し始める暗黒の悪の予感と快感を誘い、男はなかば陶酔の中。

 愛媛県の松山から、さほど遠くない小さな漁村で、その男、泰良(柳楽優弥)は養父(でんでん)のもとに育った。
 高校生の泰良はいつもケンカ沙汰。ある日、ふいっとふらり無一文で松山の街に出る。あては何もない。
 泰良は行き当たりばったりに、通りすがりの男や街のヤクザ相手に、ケンカをいきなり仕掛ける。打ちのめされるが、再度は勝つ。この繰り返しで泰良は徐々に、そして確信的に、バイオレンスの奥にある甘い味に目覚め、心の闇の中で陶酔していく。

 泰良に出会った裕也(菅田将暉)は、臆病な男だったが、泰良の腕力を利用し、泰良を従え、通行人に乱暴を働きながら、松山の街を我が物顔で歩き出す。裕也の心の奥に潜んでいた、こんな悪の衝動が路上に転がり出たのだ。
 そんな裕也を、いささか小馬鹿にした目で見る泰良。泰良は裕也に従っているとは、まったく思ってない。

 裕也が強奪したベンツに、偶然、キャバクラ嬢の那奈(小松菜奈)がいた。
 那奈は身柄を拘束されながら、裕也と泰良の3人は、このベンツで深夜の松山市街を離れた。
 翌日、山の中の道で、泰良は車を降りる。しばらくして戻って来た泰良の服に血が着いている。どこかでまた、乱暴したらしい。泰良を追って来た男が、泰良に叩きのめされ路面に倒れた。 

 それまでトランクに入れられていた那奈が運転をさせられる。と、走りだそうとするその時、車は何かに乗り上げる。倒れていた男だった。裕也は那奈にその男をトランクに入れさせる。
 あっ、那奈は慌てた。その男が意識を取り戻したのだ。那奈はなぜか反射的に、男の首を渾身の力で絞めた。それを見た泰良と裕也は、少しの驚きを感じながらも、ニヤリとするのだった。

 警察に追われていた泰良が、祭りの夜、松山に現れた。泰良の人相はがらりと変わっていたのだった。

 全体的に、セリフの聞きやすさを嫌い、わざと低めの音量になっている。とりわけ泰良のセリフの数は僅か。その中で立ち上がってくる「異様さ」を表現するのが、泰良・役の柳楽優弥の仕事。だが、その顔に幼さが残るせいか迫力に欠ける感じ。高校生という設定だからか? 少し残念。(もっとも、映画によくある安っぽいヤサグレ男ではないが。)
 バイオレンス・モンスターで思い出すのが、2014年の韓国映画「その怪物」だが、この映画は優男で迫力がなかった。 (下線部をクリックして「その怪物」の記事をご覧ください)

1-5_20170202101351566.jpg【 真利子哲也監督の映画 】
これまでに記事にした作品です。
以下のタイトル名をクリックしてお読みください。
イエローキッド」 2009、「NINIFUNI」 2011、
同じ星の下、それぞれの夜  FUN FAIR」 2012
【 柳楽優弥出演の映画 】
誰も知らない」 2004  監督:是枝裕和 お薦め

監督:真利子哲也|2016年|108分|
脚本:真利子哲也、喜安浩平|撮影:佐々木靖之|
出演:柳楽優弥(芦原泰良)|菅田将暉(北原裕也)|小松菜奈(那奈)|村上虹郎(芦原将太)|池松壮亮(三浦慎吾)|北村匠海(健児)|三浦誠己(河野淳平)|でんでん(近藤和雄)|ほか

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映画 「変魚路」   監督:高嶺剛

1_20170131114326e19.jpg




2-0








ミサイラーと、白髪の山の神と、イフェ―パタイジョーのオブジェ(守り神?)


 唐の世が大和の世になって、大和の世がアメリカ世に、アメリカ世が大和の世に・・・
 という歌が、三線一本で歌われて映画が始まります。

 高嶺剛監督の映画は、これまでに、「パラダイスビュー」(1985)と「ウンタマギルー」(1989)を取りあげてきました。(下線部をクリックして過去記事をお読みください)
 どちらの映画も、沖縄の地と文化にしっかりと根差す映画で、沖縄のいにしえをモチーフに取り入れ、かつウチナーグチのセリフでした。
 この「変魚路」も、その路線は変わりありません。しかし、お話の様相は変わった風に思えます。
 ひとつは、現在未来よりも、しきりに過去を振り返るようなシーンがあります。それは、沖縄の良きいにしえを今も継承すると言う風じゃなく、主人公たちの少年時代の古い写真(敗戦直後の頃か)が何度も映し出されます。回顧の念でしょうか。
 もうひとつは、登場人物の多くが年配者たち(出演者たちが老いました)で、若い人の愛といったことは出てきません。
 一方、そうした事と釣り合いを取ろうとするかのように、映画表現は過激になっています。
 沖縄芝居(大衆演劇)や沖縄の民話のイメージを背景にしながらも、突拍子もない調子はずれなシーンが前後の脈略なく現れ、かつ、それらをコラージュした表現が多く出てきます。もちろん可笑しなユルいシーンもあります。


3_201701311231263fc.jpg 監督(1948- )が老いたのでしょうか? 総じて映画の角が丸くなりました。怒りが遠のいた。もっとはっきり言えば、何やら、世に対する「あきらめ」とでもいうようなものが感じ取れます。
 映画表現はハチャメチャではありますが、穏やかなお話でした。
 「パラダイスビュー」や「ウンタマギルー」が良かったと思う方は、「変魚路」を難解な映画と思わず観てください。


監督・脚本:高嶺剛|2016年|82分|
撮影:高木駿一、平田守|
音楽:坂田明|ヨハン・バットリング|ポール・ニルセン・ラブ|大城美佐子|大工哲弘|嘉手苅林昌|CONDITION GREEN|北村三郎|
出演:平良進(タルガニ)|北村三郎(パパジョー)|大城美佐子(カメ)|川満勝弘(ミサイラー)|ほか


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映画 「さくらん」   監督:蜷川実花  脚本:タナダユキ

上

 この映画は安野モヨコの漫画をもとにし、(だから基本、女性向けで)、そして、やたら極彩色な写真家・蜷川実花と、「モル」「百万円と苦虫女」の映画監督・脚本家のタナダユキと、椎名林檎との、3人による共作の映画。
 江戸時代や時代劇や遊郭モノが好きな人は敬遠するかもしれないけれど、たまにはこういう映画もそれなりに悪くない。

1-0_201701251405554b3.jpg これでもかという濃厚な色使いで埋め尽くされる映像は、結果、その色彩に酔う感覚で心地良く思う人や、外国人を狙っているんだろう。
 でも映像を観てると、室内インテリアや着物が、残念ながら安っぽい。いま出来上がりました的で、衣装や大道具に、まだ味(色味)がしみ込んでない感じがする。色に深みが無く、なぜか色紙を思い浮かべてしまう。
 色彩じゃない方の「色」は、女優3人の白い背中を拝めるくらい。そもそも、この映画に粘っこい男性目線はない。

 男性と言えば、店の使用人・倉之助(椎名桔平)。倉之助は、吉原遊廓の遊女で主人公の日暮(土屋アンナ)の相手役。
 この倉之助はイケメンで、イケメンの役どころだからこその、いつもの宿命で、なにやら「場」から浮いているのが可笑しい。
 でも、だからこそ、遊郭の中庭にいる倉之助は、店の2階にいる日暮と、「ロミオとジュリエット」ができるし、ラストでは満開の桜の中を、ふたりして走れるのである。こういうところが、倉之助が映える活躍の場なのだ。

 さて主役の土屋アンナは女優として「見せる」が、あの一本調子の演技は変わらない。
 あとふたりの花魁、高尾(木村佳乃)、粧ひ(菅野美穂)も、極彩色に埋もれて、演技はかすれ気味。
 ま、しかし、時代劇に挑戦するのは良い。

 この映画を作った人は、製作にあたって参考に、川島雄三の映画 「幕末太陽傳」を観てるだろう。
 また、遊郭を扱った破天荒なインディーズ映画、林海象の「音曲の乱」は、もし予算がたっぷりあったなら、「さくらん」に近い極彩色を得たかもしれない。
 男性目線が多い中、周防正行の映画「舞妓はレディ」は、遊郭じゃなく祇園だが、かわいい舞妓目線の映画だった。
 (上記文中、下線部は当該映画の記事へのリンクです。クリックして、当ブログの記事をお読みください)
 

監督:蜷川実花|2007年|111分|
原作:安野モヨコ|脚本:タナダユキ|撮影:石坂拓郎|音楽:椎名林檎|
出演:きよ葉/日暮(土屋アンナ)|倉之助(椎名桔平)|惣次郎(成宮寛貴)|高尾(木村佳乃)|粧ひ(菅野美穂)|光信(永瀬正敏)|若菊(美波)|大工(山本浩司)|坂口(遠藤憲一)|幼いきよ葉(小池彩夢)|しげじ(山口愛)|お蘭(小泉今日子)|楼主(石橋蓮司)|女将(夏木マリ)|ご隠居(四代目市川左團次)|清次(安藤政信)|桃花(蜷川みほ)|花屋(小栗旬)|

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映画 「さらば愛しき大地」   監督:柳町光男

上

 映画の舞台は茨城県鹿嶋市、海と霞ヶ浦に挟まれた平たい地域。
 そこは田んぼが一面に広がる田園風景、そして疎らに点在する農家。
1-0_20170123155834c4f.jpg その一軒が主人公、幸雄(根津甚八)の家だ。幸雄は代々農家のこの家の長男。

 映画は、男女の愛と、衰退していく農業になすすべもない農家の、悲哀を描きながらも、その地に根ざす風土へのこみ上げる郷愁を伝えようとしている。

 幸雄の家は、米作と僅かな養豚じゃ今や食えなくて、(それは、老いた両親と嫁・文江(山口美也子)に任せ)、幸雄自身はダンプトラックを買って、生コン用川砂のピストン運搬を請け負っている。現金収入が入る。この家は俺が支えていると、幸雄は殿様気分。家族を見下して、いい気分。文江との関係は、もとより良くない。

 だが、幸雄はすぐカッとなる、つまらぬことで酒で荒れる。自尊心が強い一方、劣等感が強い。
 特に弟に対してだ。子供のころから頭が良く、品行方正な弟の明彦(矢吹二朗)には、いまも母親から多くの愛情が注がれている。その明彦は、独身で東京で働き東京に住んでいる。

 ある日、幸雄と文江の息子二人が、不幸にも、近所の水辺で遊んでいて水死してしまう。
 さすがの幸雄も、身重の文江も両親も、嘆いても嘆ききれない毎日であった。
 このことは幸雄、文江を精神的に不安定にさせ、二人の関係は疎遠の一途をたどる。

 母と二人暮らしの順子(秋吉久美子)。その母親が若い男と駆け落ちした。順子が知る限り、母親の駆け落ちはこれで3回目。
2-0_20170123160222583.png ひとり残された順子を、通りかかった幸雄がトラックに乗せたことが発端で、幸雄は順子と住む家を借り、嫁・文江と順子との、二重生活が始まる。
 互いの悲しみを舐めあう関係であった。
 それは、川砂運搬がそれなりに高収入だったから成り立った。とは言え、幸雄は文江のいる実家に帰ろうとはしなかった。

 やがて順子との間にも子供が出来、そこだけ見れば、幸せな一家に見えた。実家では、文江は第三子を出産し、幸雄の両親と農作業に相変らず追われていた。
 そこへ、東京にいた明彦が実家に帰って来た。明彦も川砂の運搬業を始め、瞬く間まに小さな事務所を構え事務員も置くに至る。

 そのうち、幸雄は覚醒剤に手を出すようになった。
 幸雄は川砂運搬の発注元の生コン会社の部長とうまくやって、仕事を多く回してもらっていたが、先方からは幸雄に運搬の手配管理も任されるようになるが、幸雄にそういう才はなく、また組織的な行動や指示に馴染めなかった。
 明彦と比べて幸雄は、という劣等感がまた頭をもたげる。荒れ始める。順子にもつらく当たるようになる。幸雄はひとり捨て鉢になり、自暴自棄、自滅への道を歩み出す。
 一方、明彦は結婚が決まった。相手は事務所の女の子だ。

 ついに、幸雄は包丁で順子を刺し殺す。覚醒剤による幻覚が順子の命を奪った。
 映画のラスト。実家の庭先では、明彦夫婦、文江とその子、両親が、ワイワイやっている。子ブタが集団で豚舎から脱走したのだ。
 そこには、やりきれないほどに繰り返しの何ごともない日々と、一時の幸せ、そして覚醒剤と殺人が、大した違和感なく同居している妙な風景であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 地元社会を浮遊する幸雄と順子に対し、対称的な位置づけで描かれる家族や友人など地元に根付く人々。彼らはいわば古い慣習伝統に生きる人々だ。しかし、そんな彼らの中にも、生きにくい地元に(ささやかだが)あらがう者もいた。
 映画は幸雄と順子を主人公にするが、ふたりを取り巻く人々の生きざまも見つめたい。なぜなら、この映画は取り巻く人々あっての物語なのだ。 
 作品としては、幸雄の妻役の山口美也子、幸雄の母親役・日高澄子、父親役・奥村公延および幸雄の同僚役・蟹江敬三たちの、しっかりした脇役が素晴らしく、彼らによる勝利とみるべきだ。

3-0_20170123162335d49.png監督・脚本:柳町光男|1982年|130分|
撮影:田村正毅
出演:山沢幸雄(根津甚八)|順子(秋吉久美子)|幸雄の弟・山沢明彦(矢吹二朗)|幸雄の正妻・山沢文江(山口美也子)|幸雄の母・山沢イネ(日高澄子)|幸雄の父・山沢幸一郎(奥村公延)|幸雄の同僚・大尽(蟹江敬三)|その妻・フミ子(中島葵)|順子の母(佐々木すみ江)|実家に呼んだ霊媒師(白川和子)|ほか

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<さ行> の邦画  これまでに記事にした映画から。 2017.1.5 現在

 これまでに記事にした邦画から、<さ行> の映画を並べてみました。

 下の画像をクリックして、その映画記事をご覧ください。
 五十音順に並べています。
 
 <さ行>以外の邦画は、こちらからどうぞ。 (邦画の五十音順リストです)
1サーカス五人組 2サイドカーに犬 3サウダーヂ 4さゞなみ 2 5殺人狂時代3 6サマータイムマシン・ブルース 7鮫肌男と桃尻女 8さよなら歌舞伎町 9残菊物語 10 33号車応答なし 11ジ、エクストリーム、スキヤキ 12しあわせのかおり 13幸福のスイッチ 14潮騒 4 15四季・ユートピアノ 16事件記者 17事件記者 18地獄 19時代屋の女房 20下町の太陽 21しとやかな獣 22死の十字路3 23芝居道 24下妻物語 25十九歳の地図 26集金旅行 27十字路 28渋滞 29縮図 30修羅雪姫 31修羅雪姫 怨み恋歌 32純愛物語 33少年 34少年探偵団~第一部 妖怪博士 35女経 36ジョゼと虎と魚たち 37白河夜船 38白い息/ファの豆腐 39新・夫婦善哉 40深呼吸の必要 41心中天網島 42新宿泥棒日記 43洲崎パラダイス 赤信号 44スチャラカ社員 45スリー☆ポイント 46精神 47贅沢な骨 48世界はときどき美しい2 49セクシー地帯2 50絶唱 51洗濯機は俺にまかせろ 52その夜の侍 53空の穴 54ソレイユのこどもたち

映画 「幕末太陽傳」   監督:川島雄三

上2






1-0_20161229142257ca7.jpg








 佐平次 (フランキー堺)は仲間と連れだって、女郎屋で飲めや歌えの豪勢な遊びをするが、実は無一文。
 勘定を払えず、女郎屋の納戸(布団部屋)に留め置かれる。「居残り佐平次」のお話は、ここから始まるのです。

 女郎屋があるこの町は、東海道五十三次の第一番目の宿場町、品川宿。
 品川宿の町並みは海沿いに連なっていて潮の香りがするところ。女郎屋の部屋からは、広い海が見渡せて絶景地。東京湾の波がひたひたと岸辺を洗う。女郎屋の裏は、もう舟着き場だ。
 実は佐平次、結核にかかっていて、良くない咳をする。医者から転地療養を勧められていた。風光明媚な品川宿は、転地療養には最適の地。つまり、佐平次の居残りは、初めっから確信犯だった。

 さて佐平次、払えぬ勘定を女郎屋で働いて返そうとする。
 店の使用人たちに分け入って、使用人たちより上手に客あしらい。客からのチップをかすめ取る。
 また、客とのもめごとで女郎が困っていると、間に入って、太鼓持ち(男芸者)よろしく、なだめすかして問題解決。女郎から、ハイお駄賃。番頭よりも機転がきく佐平次は、そのうち、店のあるじから重宝がられるようになる。世渡り上手。

 これに加え、指名ナンバーワンを競い合う、女郎・こはる(南田洋子)と、おそめ(左幸子)のドタバタを映画は描きます。
 一方、「曾根崎心中」があるなら「品川心中」も、なんて洒落を女郎たちに言ってた、貸本屋金造(小沢昭一)が、憧れのおそめと舟着き場から飛び込んで・・・なんてエピソードも交え、あれやこれやの女郎屋を映画は面白おかしく描きます。そうそうそれから、こはるとおそめは、頼りになる男・佐平次を巡っても競い合います。

 ところで、そんな日々が過ぎて行くなか、佐平次と共鳴し合う男が二人現れます。
 その一人は、高杉晋作(石原裕次郎)でした。
 高杉も居残りだ。志士たちと一緒に遊んだ代金60両が払えない。
 高杉はこれまでに海の向こう上海を経験している。当時にしちゃ広い視野の持ち主だ。また、密かに江戸小唄(流行歌)の作家でもあった。硬軟を持ち合わせている男。
 一方、佐平次は、横浜でどうやって手に入れたのか、結核に効く蘭方(舶来の医術)の新薬を飲んでいる。佐平次は器用な男だがとりわけ、高杉が持つ舶来懐中時計を修理できる。この時、高杉は佐平次にシンパシーを感じたのです。そして佐平次も同様でした。
 のちに、高杉を見送る佐平次は、別れ際に高杉に言い放った。「サムライにしておくには、もったいない男だ!」 

 もう一人、佐平次と共鳴し合う男は、女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)だ。
 ある日、徳三郎は吉原遊郭の附馬を連れて家に帰ってくる。(附馬とは、勘定の不足を回収するため、遊客と一緒に家までついて行く遊郭の使用人)
 あるじからしてみれば愚息!の徳三郎だが、そんな徳三郎は自分の店で粋に立ち働く居残り佐平次に、共感を覚える。佐平次のやつ、ああして真面目にみえるが、実は俺と同じ、やさぐれだ。
 やがて佐平次と徳三郎は、店の使用人たちに交じって、賭け事に興じる仲になる。一方、佐平次は、徳三郎のなかに、徳三郎にゃ不似合いな、正義の心を発見しシンパシーを感じるのです。この二人には、無頼という同じ血が流れている。(徳三郎の正義感って何さ?、は観てのお楽しみ)

 やがて高杉は、大志を抱いて志士たちと共に女郎屋を去る。徳三郎は、幼なじみの女中おひさ(芦川いづみ)と駆け落ちを決め、女郎屋を去って行く。
 佐平次はというと、勘定の返済はもうとうに済ませていて、今や居残りでは無くなっていた。さりとて、このまま皆と一緒にこの女郎屋で働く気もない。
 何かぽつんと取り残されたような格好だった。結局、高杉や徳三郎らを見送った佐平次も、女郎屋を去るのであった。

 佐平次に、これという大志は無い。だが、高杉に出会い、大志を抱く者を身近にした佐平次は、大志を持てる器のある人間を密かに羨望する。佐平次のその気持ちの裏返しが、「サムライにしとくにゃ、もったいない男だ!」というセリフに出た。 
 利に聡く新しもの好きな佐平次は、でも所詮、やさぐれな男。
 そして、その場その場はチョコチョコ器用に立ち回れるが、自分の道、俺の人生を見い出せないでいる。おまけに結核、先は長くないかもしれぬ。
 頃は、明治まであと6年の幕末。世はおおいに揺らぎ始め、不安な日々は足早に過ぎて行く。
 はたして佐平次は、その後、明治の世を見たのだろうか。

 川島雄三監督の映画 「貸間あり」の主人公・与田五郎(フランキー堺)も佐平次と同類の男だった。(「貸間あり」の記事はこちらからお読みください)
 
監督:川島雄三|日活|1957年|110分|
脚本:山内久、川島雄三、今村昌平|撮影:高村倉太郎|
出演:居残り佐平次(フランキー堺)|高杉晋作(石原裕次郎)|女郎おそめ(左幸子)|女郎こはる(南田洋子)|貸本屋金造(小沢昭一)|女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)|女郎屋の女中おひさ(芦川いづみ)|やり手おくま(菅井きん)|女郎屋の主人・伝兵衛(金子信雄)|その女房お辰(山岡久乃)|番頭善八(織田政雄)|生粋の品川っ子・若衆喜助(岡田眞澄)|女郎屋の客・千葉の杢兵衛大尽(市村俊幸)|女郎屋の客・仏壇屋倉造(殿山泰司)|その息子で店で鉢合わす清七(加藤博司)|佐平次の連れ・気病みの新公(西村晃)|佐平次の連れ・呑込みの金坊(熊倉一雄)|ガエン者権太(井上昭文)|ガエン者玄十(榎木兵衛)|久坂玄瑞(小林旭)|志道聞多(二谷英明)|伊藤春輔(関弘美)|ほか多数
3_20161229142839fe0.jpg

【川島雄三監督の映画】
 これまでに記事にした映画から。
 それぞれ、題名をクリックしてお読みください。

 「貸間あり」、「洲崎パラダイス 赤信号」、
 「しとやかな獣」、「雁の寺」、「特急にっぽん




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映画 「あの手この手」 (1952)   監督:市川崑

上

 40代半ばの共働き中年夫婦と、この夫婦の家にある日飛び込んできたアコちゃん(久我美子、当時21歳)との、スッタモンダの喜劇映画。

0_20161213175730423.jpg 家のあるじ・鳥羽(森雅之)は大学勤めの平凡な先生だが、小説を書いている。もちろん名のある作家ではないが、文芸雑誌に連載ものを載せている。おっとりした大人しい性格。 
 それに対して、鳥羽の妻・近子(水戸光子)は、しゃきしゃきしたキャリアウーマン。彼女も先生をしているが、もっぱらそれ以外の仕事で、いつも忙しい。近子は、朝日新聞・大阪本社の文化部顧問をしていて、身の上相談では世間に名が通っている。日に何通か、相談の手紙が自宅にも来る。そのほか、婦人同盟の役員や、家庭裁判所の調停委員もしている行動派。
 夫婦はディンクスで、子はいない。鳥羽は、いつの頃からか、近子を「奥さん」と呼ぶようになった。(たぶん戦後からだろう) 夫婦の力関係は、誰が見ても近子の方が上。

 ある日突然、アコちゃんが、大阪郊外のこの家に飛び込んできた。アコは近子の姪で、伊勢志摩の実家を飛び出して来たのだ。
 母親を早くに亡くし、祖母に育てられたアコ。その祖母は、アコの父親(婿養子)に対し、とても専制的。だからか、アコは鳥羽の家に転がり込んですぐ、近子の尻に敷かれる鳥羽に同情し、と言うより、アコは鳥羽を応援するようになる。

 さてドラマは、鳥羽、近子、アコの三人に加えて、近所の開業医・野呂(伊藤雄之助)とその妻(望月優子)、そしてカメラマンの天平君(堀雄二)と、鳥羽家のお手伝いさんが加わり、話はややこしくなって行く。そして、なんとアコは密かに鳥羽に恋をする・・・。さらには近子が・・・。

 アコを演じる久我美子の演技が、オーバー気味でいささか漫画風。だが、昭和27年当時、子が出来ないんじゃなくディンクスで共稼ぎの夫婦はマレだっただろう。おまけに夫は大学教授で作家、妻は行動的な文化人。つまり、ほぼあり得ない夫婦と、現代的で向こう見ずなアコ、これでちょうど釣り合いが取れたドラマ設定だった。だから、喜劇になり得た。(本作公開の昭和27年は、GHQ廃止、進駐軍去る、日本に主権回復の年)

監督:市川崑|1952年|大映|92分|
原作:京都伸夫|脚色:和田夏十、市川崑|撮影:武田千吉郎|
出演:アコちゃん(久我美子)|鳥羽さん(森雅之)|近子夫人(水戸光子)|天平君(堀雄二)|お手伝いさん鈴江(津村悠子)|野呂ドクター(伊藤雄之助)|野呂夫人(望月優子)|アコの祖母(毛利菊枝)|アコの父(南部彰三)|秋山(三上哲)|鳥羽が行きつけのバーのマダム星子(平井岐代子)|女代議士(大伴千春)|PPP編集長(近衛敏明)|評論家(荒木忍)|小説家(伊達三郎)|新聞社の文化部長(原聖四郎)|

【市川崑監督の映画】  これまでに記事にした作品です。タイトル名をクリックしてお読みください。

 「暁の追跡」(1950) 池部良、杉葉子、伊藤雄之助ほか
 「足にさわった女」(1952) 越路吹雪、池部良、ほか
 「億万長者」(1954) 久我美子、山田五十鈴、木村功、ほか
 「」(1957) 京マチ子、船越英二、山村聡、ほか
 「満員電車」(1957) 川口浩、笠智衆、杉村春子、ほか
 「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」(1959) 若尾文子、京マチ子、野添ひとみ、ほか
 「女経 (物を高く売りつける女)」(1960) 山本富士子、船越英二、野添ひとみ、ほか

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映画 「ハワイアン・ドリーム」   監督:川島透

上
ボコボコのキャデラックに乗る、山際(ジョニー大倉)、川添(時任三郎)

 いや~、大した映画じゃないんですが・・・。
 全編、ハワイ(ホノルル)ロケのせいか、出演者がのびのびしている。いや、観る方の気が、easygoingになってくる、そんな映画。
 挿入の音楽も、あれこれ懐かしく、気分を楽しくしてくれる。(曲目は下記) しかし、この選曲、どういうチョイスなんでしょう。

0 お話の方は、ハワイに不法入国している、川添(時任三郎)と、山際(ジョニー大倉)が巻き起こす事件。
 二人は、日系アメリカ人を装って、観光客にマリファナと偽って、変なもの(ウーロン茶の茶カス)を路上で売っている。

 山際の彼女は日系アメリカ人で、レイコ・ケイン(桃井かおり)といい、ラジオのディスクジョッキーと、バーを営んでいる。川添の彼女も日系女性で、カレン・サイトウ(タムリン・トミタ)といって、ニューヨークに行ってダンスで成功したい希望を抱いている。
 レイコ・ケインの店には、ショーキチ・島村(殿山泰司)やケンジ・大原(多々良純)が、いつもタムロしている。

 ある事が元で、ピアス警部に目をつけられた川添と山際は、警部に不法入国の弱みを握られ、モランという男の逮捕について、警察に協力せざるを得ない羽目になる。
 モランというイタリア系アメリカ人は、10年前にハワイに現れ、ハワイの裏社会で一大勢力を築いたボス。
 ピアス警部は何とかモランを逮捕したいが、これまで、警察にシッポをつかませない。そこで警部は、モランがシッポを出すように仕向けることを、川添と山際に協力要請した。

 だが、なにしろ相手は大ボスだし、アメリカの巨大タバコ会社の陰謀も絡んでいる。
 さて、川添と山際はどういう作戦でモランのシッポをつかもうとするのでしょうか・・・。
 カーアクションもあります。ラブシーンもあります。殿山泰司も可笑しいです。
 たまには、こんな映画も、どうでしょうか。

<挿入歌> 
夢の続き:竹内まりや(主題歌)|Do Wah Diddy Diddy|Do You Wanna Dance|Mr. Moonlight|Be My Baby|Super Board|Oh, Pretty Woman|Sukiyaki:坂本九|AMAPOLA:山下達郎|After Glow:カシオペア|MACHINE GUN HEART:PINK|Somebody To Love|DISCO KING:B&J's|Hawaii, I Love You|Girl's in Love With Me:芳野藤丸|(For You) I'd Chase A Rainbow:カラパナ|JULIETTE:カラパナ|Traumatic:竹中正義An Old Fashioned Love SongPipe Line|Just a Love Song:村田和人|それ以外の曲:加藤和彦|


監督・脚本:川島透|1987年|東宝|111分|
撮影 前田米造|音楽 加藤和彦 、 朝妻一郎|
出演:川添達彦(時任三郎)|山際翔史(ジョニー大倉)|レイコ・ケイン(桃井かおり)|カレン・サイトウ(タムリン・トミタ)|ショーキチ・島村(殿山泰司)|ケンジ・大原(多々良純)|ヒューバート・ロレンス(ディーン・ターナー)|ハリー・ゴールドマン(ジム・デマレスト)|ピアス警部(G・W・ベイリー)|ルディ・モラン(ビンセント・バケッタ)|


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日本映画 「ぼくらの亡命」  監督:内田伸輝  ~第17回東京フィルメックス上映作品   

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその12回目、やっと最終回です。
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「ぼくらの亡命」  日本|2016|116分|
 監督:内田伸輝 (UCHIDA Nobuteru)
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 今年のフィルメックスに出品された2本の邦画は、なかなか力作、いい出来だ。(もう一本は、庭月野議啓 監督の「仁光の受難」。この記事はこちらから。)
 本作「ぼくらの亡命」も、観たあとに新鮮な印象が残る。公開してほしい。

 主人公の昇は、二十歳代だろうか、ホームレスのように見える。
 彼は数年に渡り、そんな生活を続けている。
 だが昇には、後見人がいる。そのころ昇は未成年だったのだろう、昇の親が死んだあと、叔父が後見人として彼について今に至っている。
 だから、生活最低限程度の金が昇の口座に振り込まれている。かつ、時々、叔父は昇を訪ねて、彼の近況を心配する。

0_20161201134407b36.jpg 昇は、郊外の林のなかで、ひとりテント生活をしている。人を寄せ付けない引きこもりの暮らし。叔父も追い払われる。
 食事はコンビニに頼り、持ち物と言えば、街に出るための古びた自転車と習字道具くらいだ。彼は紙に墨で、彼がよく思わない人間の名前などを書き散らし、それをテントに張り付けている。彼流の儀式のようだ。
 昇はチラシ入れのバイトも時々しているが、まったくやる気がない様子。雇い主がそんな彼を雇おうとするのも、雇い主が昇の親に恩義あってのことらしい。要するに、昇という男は、今もって大人になりえていない、甘やかされてきた子供だった。

 ある日、昇は樹冬という女に街で出会う。
 樹冬は売春をしている。昇は樹冬を好きになったのだろう、彼女をそういう境遇から救い出そうとした。
 まず昇は街頭の物陰から、樹冬と売春斡旋の男(美人局:つつもたせ)とを、隠れて観察する。そして、昇は客を装い、樹冬に近づく。(スーツを叔父から借りてだ)
 樹冬と話しすることが出来た昇は、美人局の男から逃げたい樹冬に、一案を提案する。昇が誘拐犯になり樹冬を誘拐する、身代金を美人局の男に要求する、こういう段取りだった。
 だが、その男はまるっきり、取り合わない、関心さえない様子。樹冬の替えになる女は、いくらでもいるのだ。
 この事態に樹冬は動揺する。結局、樹冬は男のマンションで男を刺してしまう。そのあと、昇がそのマンションに忍び込み、男の死を確認した。

 ふたりは逃亡する。東京を離れ、ロシア領の島へ渡るのだ。亡命だ。
 しかし、所詮、そんなことはおもちゃのような戯言。所持金が底をつく。昇は電話で叔父に、叫びながら金を要求するが、叔父は振り込まない、早く帰って来いと電話の向こうで言うだけであった。
 そして、売春斡旋の男の死亡記事が、いつまで経っても、新聞に出ない。樹冬は言う。ほんとに死んでたの?
 北海道にさえも行けないふたりは、千葉辺りの浜辺でテントを張っている。食物にも事欠く。樹冬は安いウィスキーをがぶ飲みする。昇は墨でなにやら書き始める。誰が見ても、ふたりの愛は、徐々に崩れていくようであった。

 そんな日が続くある日、樹冬は近くに住む一人住まいの男に出会い、その男は樹冬を自宅に招き優しくいたわった。柔らかいベッド、温かい朝食。この事態に樹冬は動揺するどころか、心は決まる。
 昇は去りゆく樹冬に向かって叫ぶ。「愛している、戻って来てくれ!」 そして・・・・。(ここら辺で止めときます)

 昇の、この叫びのセリフは、とても陳腐に見えるが、シーンでは、案外すんなりと受け入れられる。監督の力だろう。

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日本映画 「仁光の受難」  監督:庭月野議啓  ~第17回東京フィルメックス上映作品

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその第6回です。
 いい映画です!
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「仁光の受難」  Suffering of Ninko|日本|2016|70分|
 監督:庭月野議啓 (NIWATSUKINO Norihiro)
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 これは、いい映画。今年のフィルメックス上映作品中、1、2を争う いい出来の映画。
 とにかく面白いエンターテインメント作品で時代劇、かつ妖怪譚。

 江戸時代の話。ある寺に仁光(辻岡正人)という若い坊主がいた。
 仁光は、寺の坊主達の誰よりも熱心な見習うべき修行僧であった。
 しかし彼には坊主として、ある致命的な欠陥があった。

 この寺の坊主が幾人かの集団となって、近くの町へ托鉢に出かけると、なぜか毎回、町の女は、待ってましたとばかりに仁光を目指して群がってくるのだ。
 (托鉢:僧の修行の1つ。家々を巡り、家の門(かど)に立ち経文を唱え、持った鉢に米や金銭の施しを受ける。)
 群がってくる女は、若いのだけでなく、年配の女もいる。みな争って、仁光の衣の袖を引き、手を握り、頬を撫でる。もちろん、仁光は押し黙ったまま、女達を振り払い避けるのである。決して仁光が自ら誘うのではない。受難(女難)である。
 こんなことで、仁光の噂は遠くの村落まで拡がって行った。
 寺の住職は、仁光に托鉢禁止を言い付けたが、町の女たちは、托鉢に来た坊主たちに仁光が来ない不平不満をぶつけた。
 一方、ひとり境内の掃除をしていた仁光は、境内の林間に幻想を見る。全裸の若い女が仁光を誘うのだった。

 立派な修行僧の仁光とて、はやり男であった。ついに、淫らな妄想が止めどなく心に沸き起こりはじめる。
 ある日彼は、ひとり修行の旅に出た。東海道を西へ上った。そして滝に入って厳しい修行(滝行(たきぎょう))もした。だが、山奥の森で女たちの幻想を見てしまう。街道の町では女が寄ってくる。
 
 仁光はひとりの浪人に出会う。人斬りの快感が忘れられない男だった。ふたりには通底するものがあった。
 そしてふたりは、ある村の頼みで、村の男を誘い精気を吸う山女を、成敗することになるのだが・・・。

 ここら辺で止めておきます。この映画、ぜひ日本での公開を望みます。
 映画には、曼荼羅や広重の絵などを使ったアニメや、一部VFXも挿入され、表現を豊かにしています。これらは、みな監督自らの制作だそうです。
 この「仁光の受難」は自主製作ですが、庄内映画村でも撮影しています。(自主映画、初!)
 クラウドファンディングで資金を集めたそうで、製作費は総額ゼロ3つに至ったとのこと。


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映画 「あん」  主演:樹木希林  監督:河瀬直美

上

 なんとも、すなおな映画です。
 樹木希林(主人公:徳江さん)の演技を称える映画です。
 筋のその先を急いで追わず、映画が語る、ゆったりした語り口に身を委ねましょう。

1-0_2016111114105308c.jpg 商店街から外れた所にある、どら焼きの店が話の舞台です。
 馴染み客は近所の女子中学生達で、店内のカウンターは3人座れば満席の小さな店。
 どら焼き屋の千太郎(永瀬正敏)は無口な男で、中学生にからかわれても反応しない。
 
 あのどら焼き屋の男(千太郎)は、なんと悲しい目をしてるんだろう、店の前を通る度にそう思う女性がいました。
 その名は徳江(樹木希林)といい、70歳半ばでしょうか、あとで分かることですが、徳江はハンセン病患者専用の施設に住む女性です。
 まだ10代の若い頃にハンセン病を患い、それ以来その施設で隔離されて来た徳江は、とっくに完治した今もそこに住み続けています。他に住むべき所も身よりもないのでしょう。
 「あのどら焼き屋の男の目は、施設に入った頃の自分の目と同じだ」 徳江はそう思い、同時に、店に関心を持つに至ります。

 桜が満開のある日、徳江はだめもとで、店で雇ってくれないかと、どら焼き屋の千太郎に申し出ます。
 実は徳江はあんを作るのが得意です。これまで施設内で、試行錯誤を重ね楽しみながら、あんを手作りしてきたのです。施設の生活は、とにかく時間が有り余るほどあるのです。その味と風味は優れていて、もちろん周りの患者に好評です。しかし徳江は、施設外で働いたことが無かったのです。

 この徳江に、千太郎と、そしてどら焼き屋のオーナー(浅田美代子・・・悪役です)が加わり話は進みます。
 どうやら千太郎には過去に過ちがあって、店のオーナーの旦那に、大きな額の金を工面してもらっていた。刑務所を出所後、千太郎はオーナーのこの店で働き、毎月売上金を収め、かつ少しずつ借金を返していく生活でありました。もちろん独身です。

 徳江の作るあんに感心した千太郎は彼女を雇うことになるのですが、徳江がハンセン病患者だという噂を聞き付けたオーナーが千太郎に徳江を追い出せと言います。そしてほどなく、噂は街に流れ出し、徳江のあんで行列ができるほどになった店は閑古鳥が鳴くようになってしまいます。
 さらに話に加わって来るのは、店に来る常連の中学生・ワカナ(内田伽羅)。彼女は母子家庭の一人娘で母からの愛情が薄い子でした。さて、あとは映画を観てください。
 穏やかな語り口の映画ですが、ハンセン病に対する誤解偏見差別への怒りが込められています。これを機会にハンセン病についての基本は押さえておきましょう。
 残念なのは、ラストの締めが甘い。我慢しましょう。
 
監督:河瀬直美|2015年|113分|
原作:ドリアン助川|脚本:河瀬直美|撮影:穐山茂樹|
出演:徳江(樹木希林)|千太郎(永瀬正敏)|桂子(市原悦子)|ワカナ(内田伽羅)|ワカナの母(水野美紀)|ワカナの部活の先輩・陽平(太賀)|どら春のオーナー(浅田美代子)|オーナーが可愛がっている甥っ子・若人(兼松若人)|

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映画 「鶴八鶴次郎」 (1938年)  監督:成瀬巳喜男

上2








1-00_20161024093639965.jpg








 女優・山田五十鈴、当時、21歳を愛でる映画。(昭和13年)
 彼女の凛とした存在感が冴える。

 鶴八鶴次郎というコンビで売出し中の、鶴八(山田五十鈴 )と、鶴次郎(長谷川一夫)。
 鶴八の母親(先代鶴八)は新内の名人で名をはせた人で、その娘・鶴八は、母親に才能を見込まれて、幼い頃から新内を教え込まれてきた。
 相方の鶴次郎も、先代鶴八の一番弟子で才能を延ばしてきた男であった。

 よってふたりは、子供の頃から先代鶴八のもとで、幼なじみのようであったし、いつの頃からは互いに淡い恋心も芽生えていた。
 そんな、若くて実力ある、鶴八鶴次郎の人気は破竹の勢いで、ふたりが出演する演芸場はいつも満席。鶴八鶴次郎は互いに相手を、差し替えのきかない、息の合った最高の相方と思っている。だからこそ世間はふたりの関係をうわさしているのです。

 鶴次郎の番頭・佐平(藤原釜足)は機転が利くしっかりした男で、鶴次郎のマネージャー。
 先代鶴八からのひいき筋の旦那(パトロン)である松崎(大川平八郎)は、先代が他界した後も、あたたかな目で若き鶴八の面倒をみている。
 また、太夫元(興行責任者)の竹野(三島雅夫)は、プロデューサーとして鶴八鶴次郎の人気と才能を見抜いていて、まだ若い二人を、芸能界重鎮の反対もある中を押して、名人会へ出演させることを決めた芸能界の実力者。

 鶴八鶴次郎の名人会出演は大成功であった。しかし、その後、鶴次郎は芸人として落ちぶれていくことになる。
 その直接の原因は、鶴八と鶴次郎の仲たがいだった。ふたりが舞台を降りたあと、楽屋で鶴次郎は決まって鶴八の三味の今日の出来に文句を言った。しかし、これはいつものことであった。些細な一点を指摘される鶴八にはメンツがある。芸人の意地と意地がぶつかり合う。(良く言えば切磋琢磨と言えなくもない)
 その一方で、大いにほめる時もある。また、平素の二人は仲がいい。そんな、お天気模様なふたりに、番頭・佐平は慣れっこになっている。しかし、名人会で成功したふたりがいる高みでの仲たがいと意地の張り合いは、二人にとってコンビ解消への運命となった。

 実は、仲たがいの真相は、鶴次郎の嫉妬であった。鶴次郎は鶴八を心底好きだった。だが彼は、鶴八のパトロン・松崎への、自身で思い込んでしまった嫉妬に負けてしまう。(鶴八と松崎はきれいな関係だったのに)
 一方、これまで芸一筋で身を立ててきた鶴八だが、先のことを考えれば、女として、収まるところに収まりたい。その相手とは、鶴次郎と思い続けていたのに・・・。

 コンビ解消後、鶴次郎は東京から姿を消した。鶴八は富豪の松崎の妻となった。
 鶴次郎の心はすさみ、芸は荒れ、客のまばらな地方の場末にひとり沈んでいた。そして時は過ぎていった。

 見兼ねた佐平マネージャーは、鶴八鶴次郎を再結成する計画を鶴八に承諾させて、鶴次郎を東京へ連れ帰った。そして、公演は成功した。だが、その最終日、楽屋で、またもや、鶴次郎は鶴八の三味の出来に些細な注文を付けた。
2-1_201610241227006b6.png 佐平は止めたが、鶴八は怒って楽屋を後にした。
 (ついさっきまで鶴八は思っていた。 「芸人の子はやはり芸人、今回の復帰公演で気付いた、私は芸で生きて行きたい、芸は生きがいだ。」 鶴次郎の言動は、そう鶴八が思った矢先の事であった。彼女は松崎の妻として一生を終えるかもしれないことに疑問を抱いていたのだ。)

 鶴八が去ったあと、楽屋で、鶴次郎は佐平に言った。「俺はいまも鶴八が好きだ。だが、田舎の場末で思い至ったことは、芸人であることがつくづく嫌になったこと。鶴八は芸人じゃなく、松崎の妻として幸せになって欲しい」と。
 これを聞いた佐平いわく、「じゃなんですか、さっき、鶴八に言ったことは嘘なんですか。」

 今、この映画を観る人は、好きなら好きと言えば!という思いが募る。ひんぱんに顔を突き合わせて来た関係なのに、好きと、はっきり意思表示しない昔の話(昭和13年)に、違和感を感じる。だがこのこと以上に、違和感がある事がある。
 一時は、夫婦の約束をし、さらには、演芸場の主人(席亭主)になりたいという鶴次郎の夢を、(二人の金で演芸場を買い取り) 実現していたのに、結局、悲劇となってしまう。
 その原因は、やはり鶴次郎の松崎への嫉妬だ。鶴八が、足りない資金を松崎から調達していたのだが、それを鶴次郎に言わなかった。それが鶴次郎をさらに嫉妬へと追い込んだ。
 振り返ってみると、鶴次郎と松崎の接点は無い。富豪の旦那と、先代鶴八という女芸人に拾われた(までは言い過ぎかもしれないが)男・鶴次郎との、身分の格差。昭和13年当時、少なくとも芸能界において、この格差は、ものも言えぬ壁だったのでしょう。当時の観客は、それを理解して観ていたのでしょう。(でも、そうでしょうか、鶴次郎は単に小心な男であったのかもしれない)

 それでも、腑に落ちない点がある。鶴八の、芸人の娘の、芸への執着心。それに引き替え、地方の場末で辛酸を舐めたとは言え、鶴次郎は芸を捨てる、そのあっけなさ。これが、この話を尻切れトンボにしている。
 よって、この映画は、山田五十鈴、当時、21歳を愛でるだけ、の映画になる。

 山田五十鈴 (当時18歳)の、きりりとした存在感を示す映画に、溝口健二の「マリアのお雪」(1935年)がある。こちらは、お薦め! 
 さらには、同じく溝口健二の「残菊物語」(1939年)がある。これは明治時代の歌舞伎界の話で、主人公の男は地方で辛酸を舐めたのち、妻や友人たちの手によって、立ち直る話だった。 (以前に書いた 「マリアのお雪」、「残菊物語」の記事は、それぞれ、題名をクリックしてお読みください)

 新内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 三味線音楽は、唄物と語り物に大別される。 語り物は浄瑠璃物ともいわれ、義太夫、豊後系浄瑠璃の新内・常磐津・富本・清元(江戸浄瑠璃4派)等がある。新内は、鶴賀新内が始めた浄瑠璃の一流派。
 だから鶴八鶴次郎は、買い取った演芸場の名を、鶴賀亭とした。
 
下2監督:成瀬巳喜男|1938年|89分|
製作:森田信義|原作:川口松太郎|脚本:成瀬巳喜男|撮影:伊藤武夫|
出演:鶴八(山田五十鈴 1917-2012)|鶴次郎(長谷川一夫 1908-1984)|鶴次郎の番頭・佐平(藤原釜足)|鶴八のひいき筋の旦那(パトロン)・松崎(大川平八郎)|太夫元(興行責任者)の竹野(三島雅夫)|ほか

【 成瀬巳喜男監督の映画 】  これまでに記事にした作品です。
 (以下、題名をクリックしてお読みください)

 「乙女ごころ三人姉妹」(1935年) 「サーカス五人組」(1935年)
 「芝居道」(1944年) 出演:山田五十鈴、長谷川一夫
 「あにいもうと」(1953年) 出演:京マチ子、久我美子
 「夫婦」(1953年) 出演:上原謙、三國連太郎、杉葉子
 「流れる」(1956年) 出演:山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、田中絹代

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映画 「パラダイスビュー」   監督:高嶺剛

上

 沖縄返還(1972年)直前の、村人たちを描く群像劇。

1-0_20161012130855481.png 群像劇とはいっても、はっきりしたストーリーはない。取っ散らかした、たくさんのエピソードを、映画は気ままに映し出す。

 レイシュー(小林薫)は米軍の仕事をしていたが、クビになった。(ストライキに加担し過ぎたようだ)
 小遣い稼ぎにハブ捕りをしているが、ほかに何することもないボンヤリした毎日だ。アリの背に背番号を張り付けたりしている。祖母と母親(平良とみ)それに妹のビンダレー(職業:沖縄民謡歌手)の四人暮らし。
 レイシューは独身だが、長年連れ添っている愛人ジュール(りりィ)がいる。レイシューは米軍払下げの軍用トラックを使って、チョイ悪な仲間たちと海上トラックの商売を始めようとしている。妹のビンダレーは、サムライ姿の男(巡業の一座か村芝居の座員か)に、しつこく付きまとわれている。
 映画後半でレイシューの祖母は、米軍の軍事演習の流れ弾が当たって死亡する。

 ヤマトンチュ(本土の人)のイトー(細野晴臣)は、植物学者らしい。沖縄に生息する未知の不思議な植物の採集と研究をしている。
 彼は沖縄の地に根付くためにウチナーンチュの女性と結婚したいと思っていた。そしてナビー(小池玉緒)と知り合った。
 ナビーの母親は、本土の男との結婚に躊躇していたが、本土復帰を前にして、「いずれ日本復帰するから日本人と結婚しなさい」と言って許すつもりであった。

 しかし、ナビーが毛遊び(もうあしび)に参加して、妊娠したことが発覚した。ナビーの母親が問い詰めたところ、相手はレイシューらしい。これを聞いたナビーの2人の兄たちは困った。妹の幸せを壊した男レイシューは兄たちの親友でもあった。

 困った母親は、ある盲目の男を訪ね相談をする。
 この男は村人からフィリピナースと呼ばれている。戦前、フィリピンへ出稼ぎに行って、彼の地で女と一緒になり子供を設けていたが火事で子を亡くした。そして単身、村に帰って来た男。ナビーの母親とフィリピナースは、フィリピンへ行く前には相思相愛の仲だった。
 ナビーの2人の兄は、ロックバンドのメンバーで、近くハノイへ行く。米軍の基地を慰問で巡るツアーに参加するらしい。(まだベトナム戦争のさ中だ)



3-0_20161012132548b82.png チルー(戸川純)は、村の家々の家事手伝いをしている女。母親は村で飯屋(呑み屋)を営んでいる。チルーは、レイシューに思いを寄せているが、母親はこれをよく思っていない。またチルーは、レイシューとジュールのことが気がかりだ。
 ある日、チルーは夢を見た。レイシューのマブイ(魂)が、彼の体を離れ落ち、彼のそのマブイを犬が食ってしまう夢。自分のマブイを失くした者は、神隠しに会うと昔から言われている。チルーの夢は神秘的予言であった。

 レイシューは神隠しに会い、森の中をさ迷う。
 映画は、沖縄土着の不思議も映し出す。マブイを落とす、虹豚、淫豚草、神隠しに会う、土を食べてその呪力を解くなど、村人の日常に隣接するあちらの世界を描きます。村人のひとりアガダニースーに至っては、森の中で神と親しくしている。
 レイシューが神隠しに会うきっかけは、少年院を脱走した男達による護送車襲撃事件だった。レイシューは、祖母の葬儀の夜、村人と取っ組み合いをし、警察に取り押さえられ、護送車に乗っていたのだ。そして、彼は闇夜の中、脱走し、その後神隠しに会った。

 1972年の沖縄返還が近づくにつれ、沖縄独立の気運が反復帰運動として盛り上がりを見せる頃だった。日本政府は神経をとがらせていた。だから、その余波で、レイシューは村人との些細なケンカで、警察に連行されたのだ。(映画は、村人の一部がこの反復帰運動に加わる様子も描いている。)

 ラスト近く。虹豚に腹部を食われたレイシューは、村はずれの道端で倒れている。たまたま、通りかかったナビーの兄たちらに発見されるが、もう手遅れだった。
 青空の下、レイシューは、一本道をひとり、よろよろと歩いて行くのであった。

 毛遊び(もうあしび)とは、かつて沖縄で広く行われていた慣習。主に夕刻から深夜にかけて、若い男女が野原や海辺に集って飲食を共にし、歌舞を中心として交流した集会をいう。映画は、このほかにも、種々の沖縄の風習を話に織り込んでいます。

4‐0 映画には、沖縄民謡歌手の嘉手苅林昌 (鍋修理屋)や照屋林助 (陽気な歯医者)らが出演しています。
 映画音楽の担当は、元はっぴいえんど元YMOの細野晴臣。このころの細野晴臣は、ワールドミュージック(沖縄音楽含む)とコンピュータミュージックが交差する時代を築いたひとり。
 ちなみに、照屋林助演ずる歯医者は、照屋林助の師匠・小那覇 舞天(おなは ぶーてん、1897-1969)をなぞっている。小那覇は、沖縄の演劇人、かつ歯科医師。沖縄のチャップリンと呼ばれた人。


監督・脚本・美術:高嶺剛|1985年|113分|
撮影:東司丘宇天|音楽:細野晴臣|
出演:ゴヤ・レイシュー(小林薫)|村の女・チルー(戸川純)|レイシューの祖母ゴヤ・パーパー(大宣味静子)|レイシューの母親ゴヤ・カマド(平良とみ)|レイシューの妹で歌手のゴヤ・ビンダレー(谷山洋子)|イトー(細野晴臣)|イトーと結ばれるはずだったタカシップ・ナビー(小池玉緒)|ナビーの兄タカシップ・ミッチャー(コンディション・グリーン・エディ)|ナビーの兄タカシップ・マチュー(コンディション・グリーン・カッチャン)|ナビーの母親タカシップ・モーシー(関好子)|チルーの母カナー(北島角子)|チルーの義父タルガニ(島正太郎)|チョッチョイ(辺土名茶美)|レイシューの愛人ジュール(りりィ)|リョースケ(平良進)|ナビーの母親の昔の恋人フィリピナース(北村三郎)|サムライ姿の男(宮里栄弘)|助役(森田豊一)|アガダニースー(グレート宇野)|鍋修理屋(嘉手苅林昌 1920-1999)|歯医者(照屋林助 1929-2005)|村長(大宣味小太郎)|ほか

【 高嶺剛監督の映画 】
 これまでに記事にした作品から。
  (タイトルをクリックしてご覧ください)

 「ウンタマギルー」  
 出演:小林薫、戸川純  (1989年)


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映画 「舞妓はレディ」   監督:周防正行

上

 いい娯楽映画ですね。
 こういう明るく楽しい喜劇は好きです。気晴らししたい時にはぜひ観るといいでしょう。

1-0_20160923143730d0c.jpg 春子役の上白石萌音を、富司純子、田畑智子、岸部一徳ら大勢が支えています。
 この映画はミュージカル映画の部類でしょうが、ミュージカルに抵抗ある人も楽しめます。(私がそうです)
 ミュージカルとはいっても、歌や踊り(ダンス)以外のシーンが大部分ですし、思いのほか、歌も踊りも馴染みやすい。
 それは、音楽の周防義和、作詩の周防正行・種ともこ、そして振付のパパイヤ鈴木が、なかなかいい仕事をしているからです。
 ストーリーはすなおで、そんな脚本の上で、力ある俳優たちが楽しそうに演技するなか、上白石萌音が光ります。

 春子(上白石萌音)が「舞妓になりたい」と下八軒という花街を訪ねるところから始まる、この話は、(古い映画の話になりますが)溝口健二の「祇園囃子」の出だしを思い出します。当時20歳の若尾文子が、やはり舞妓になりたいと祇園を訪ねるのです。
 また、同じく若尾文子主演のミュージカル映画「初春狸御殿」の歌や踊りありの和製ミュージカルの華やかさも思い出します。
 そう考えると、「舞妓はレディ」はとても現代的な映画ですが、日本映画のこれまでの流れを脈々と受け継いでいるとも思えます。
 ちなみに下八軒とは上七軒のもじりです。

 (「祇園囃子」・「初春狸御殿」の記事は題名をクリックしてお読みください。)

 
監督・脚本:周防正行|2014年|135分|
撮影:寺田緑郎|音楽:周防義和|作詞 :周防正行、種ともこ|振付:パパイヤ鈴木|
出演:お茶屋「万寿楽」の人々(置屋兼業)・・・西郷春子(上白石萌音)|万寿楽の女将・小島千春(富司純子)|舞妓の百春(田畑智子)|芸妓の里春(草刈民代)|芸妓の豆春(渡辺えり)|男衆の青木富夫(竹中直人)|万寿楽に出入りする亰大学の言語学者・京野法嗣(長谷川博己)|
馴染みの旦那衆・・・北野織吉(岸部一徳)|高井良雄(髙嶋政宏)|市川勘八郎(小日向文世)|馴染の客(津川雅彦)|
その他の出演者・・・花街生まれの大学院生・西野秋平(濱田岳)|万寿楽の女将が舞妓の頃の好きな人で映画スター・赤木裕一郎(妻夫木聡)|鳴物の師匠(彦摩呂)|ほか

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映画 「泥の河」   監督:小栗康平

上
左がうどん屋の信雄、奥が宿舟の銀子、そして弟の喜一。(もやった宿舟の上で)
信雄と喜一は仲良し。

1‐0


 いい映画です。観たあと、じんわりします。
 暗い話だと言って切り捨てるには、あまりにもったいない。

 映画は、大阪の市中を流れる川の岸で、うどん屋を営む親子3人と、舟(宿舟)を住まいとして生きる母子3人との、あたたかい交流を描いています。
 うどん屋の店(兼住居)は、川の岸といっても、コンクリート階段を降りた堤防の内側にあって、また、舟を住まいとする一家は川伝いに転々としていて、ちまたでは廓舟と呼ばれているのです。そんな舟が、たまたまうどん屋の向こう岸に停泊したことから、話は始まります。

 どちらも川の家ですが、貧富の差があります。しかし、それぞれの家の子ども達は、毎日を一生懸命生きています。貧しい境遇の子たちの愛らしさを描きながらも、映画は話の底では、大人の哀愁を語っています。

 「もはや戦後ではない」という新聞の見出しが、映画に出てきます。
 この映画は昭和31年の話ですが、この年、時の政府は経済白書の結びで、そう言いました。一様に貧しかった終戦直後から10年が経って、人びとが幾ばくかの余裕を感じ始める頃でもあったのでしょう。しかしその一方で、相変わらず貧しく、世間から取り残されたようにして暮らす人々がいたことを、映画は語ります。

 戦場で、何度も死を覚悟する場面に出くわしながらも、生きて帰るんだと踏ん張って生き抜いた男たち。
 そんな男たちが、復員し、焼け野原のゼロベースから、なんとか生活の糧を得るようになったその矢先に、不幸にも呆気なく死んでいく。
 馬に荷車を引かせて、やっと貯まった金で、中古のトラックを買った男(うどん屋の客・芦屋雁之助)が不慮の事故で死んでしまう(映画冒頭で)。また、宿舟の亭主は、はしけの現場でいい仕事をしていたそうだが、妻子を残して事故死したという。
 こんな出来事を身近にして、戦場を生き抜いた、うどん屋のあるじ・晋平(田村高廣)は、そんな男達にやるせなさを抱きます。
 だから晋平は、息子の信雄と親しくなった宿舟の子・喜一とその姉の銀子に優しくします。また晋平と妻・(藤田弓子)の人柄は、うどん屋を、貧しいが懸命に働く男達の集う店にしています。
 
 晋平の息子・信雄は、ある日、ひょいと現れた宿舟の子・喜一とすぐに友達になりました。天神祭の時には、晋平から50円ずつ小遣いをもらってふたりは出かけます。喜一はお金を持って祭りに行くのは初めてや!と言います。
 喜一は学校に行っていません。信雄の友達が、喜一をあからさまに避ける様子を映画は映しています。他の場面では、宿舟を悪く言う客を晋平は店から追い出しました。

 喜一の母親(加賀まりこ)は、夜間、宿舟へ客を入れて収入を得ています。うどん屋の客の噂では、ほかの場所では喜一が客引きをしていると言っています。そんな姉弟ですが、ふたりは決してぐれたりはしていません。母親の言うことは聞き、喜一は近くの公園から水道水をバケツで運んだり、銀子は炊事洗濯をしています。信雄の母親が、銀子に洋服をあげようとするのですが、銀子はていねいに断ります。
 喜一の母親は、夫を亡くして以来、舟に閉じこもったままです。でも少しの間は働きに出たようですが、また舟に引きこもりました。たぶん、急に夫を亡くしたことから、精神的に快復できないでいるのでしょう。

 信雄は喜一とすぐ親しくなりましたが、しかし、ふいに現れた廓舟という存在は、まだ子供の信雄にとっても、やはり違和感は拭えなかったようです。それは売春に対する先入観ではなく、漠然と怖いという感情でした。喜一の母親と会った信雄は、その時そう感じたようです。
 ある夜、喜一に招かれて宿舟に入った信雄は、喜一から「秘密」を見せられます。灯火ランプ用のアルコールを浴びた川蟹に火をつけるのです。火をつけられた蟹は闇夜の舟べりを這いまわり、やがて動かなくなる。
 不思議だが何か嫌なものを見たという、いささかねっとりした感触を信雄は感じます。親しい喜一との距離が開く瞬間でした。
 
 その日、何の前触れもなく、宿舟はもやい綱を解き、曳き船に曳かれて静かに去って行きます。
 驚いた信雄は川岸を走って舟を追いかけます。舟上には誰の姿も見えません。舟はどんどんと、どこかへ行ってしまいます。(映画はここでエンドを迎えます。) 


2-0_201609221442388ea.jpg ちなみに、信雄はもうひとつ、不思議なものを見ています。
 幻想的なシーンです。まだ薄暗い早朝、家の窓からぼんやり川面を見ていると、釣り餌のゴカイ採りのじいさんが小舟の中にいるのですが、次の瞬間、じいさんは川に落ちて、川面に浮かんでいるのが遠目に黒い影になって見え、そして音も無く漂っている。しかし、そのうち姿は消えてしまいます。

 父親に付き添われて信雄は、近所の交番に出向きますが、要領の得ない証言を繰り返すばかり。結局、死体は発見できません。うどん屋の客が言うに、川の底は泥が2メートルは積もっているだろうと。
 この川には、さまざまな人びとの、さまざまな思いも沈んでいるのしょう。


監督:小栗康平|1981年|105分|
原作:宮本輝(1977年『文芸展望』18号初出)|脚本:重森孝子|撮影:安藤庄平|
出演:板倉晋平(田村高廣)|その妻・貞子(藤田弓子)|その息子・信雄(朝原靖貴)|宿舟の女・松本笙子(加賀まりこ)|その長女・銀子(柴田真生子)|その長男で信雄の友・喜一(桜井稔)|タバコ屋(初音礼子)|倉庫番(西山嘉孝)|釣り餌のゴカイ採りのじいさんが川に落ちたのを信雄が目撃して警察に尋問をうける、その巡査(蟹江敬三)|橋の上にいる信雄にスイカをあげるため橋下を通過する舟からスイカを放り上げた・屋形舟の男(殿山泰司)|佐々木房子(八木昌子)|中古トラックを買ったんだと言いながら信雄の店でかき氷を食い、そのあと対向車に馬が驚きそのはずみで荷車の下敷きになって死んだ・荷車の男(芦屋雁之助)|



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<か行> の邦画  これまでに記事にした邦画から。 2016.9.12現在

 これまでに記事にした邦画から、<か行> の映画を並べてみました。

 下の画像をクリックして、その映画記事をご覧ください。
 五十音順に並べています。
 
 <か行>以外の映画は、こちらからどうぞ。 (邦画の五十音一覧リストです)

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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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