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洋画評だけ見る 直近50作 Archive

映画「モンディアリート」  監督:ニコラ・バディモフ

上
少年アブドゥを背負うアーメッドと、ルイザ。

 ストーリーはハッピーエンドで終わる心温まる話です。
 この映画、ユーモアがあってコミカルな映画ですが、これを喜劇映画と言ってしまうと、喜劇俳優やお笑い芸人が出てくる映画だと、誤解を生じるかもしれません。
 一方、話は、フランスの児童養護施設にいたサッカー大好きなアラブ人少年が、フランス人の里親のもとで生活していましたが、マルセイユで行われるワールドカップ・フランス大会に、何とかして行きたい!と、無一文で家出したことから始まります。(里親とは、うまくいっていなかったようです)
 よって、話の筋の方はまじめ(シリアス)なお話です。でもユーモアあるコミカルな映画です。甘辛と言いますか、塩あんの味。

0_20180614213714765.jpg アラブ人少年アブドゥは、アーメッドに出会います。アーメッドもアラブ人です。
 アーメッドは、少年がブラジルチームの大ファンであること、マルセイユのワールドカップ・フランス大会を是非観戦したいことを知ります。
 これが、子供好きでもないアーメッドが、少年アブドゥを連れてマルセイユへ行こうとしたきっかけでした。

 そして実は、アーメッドはマルセイユの地元チームのサッカー選手でした。黄金の腕と呼ばれた名ゴールキーパーでした。
 しかし、あることでチームオーナーの怒りを買い、リンチされチームから追い出されました。
 その後、10年間、アーメッドは母親や兄弟たちがいるマルセイユを離れ今日まで過ごしてきました。しかし、もうオーナーに対する罪滅ぼしはこの10年で終えた、終えたい、帰りたいと思い始めていた矢先に、アブドゥに出会ったのでした。
 だから、アーメッドが、少年アブドゥを連れてマルセイユへ行こうとした、本当のわけはアーメッドの方にありました。

 そしてマルセイユへの珍道中が始まります。
 道中いろんなことがありますが、アーメッドと少年アブドゥにとって、ルイザという若い女性に会ったっことは幸いでした。
 そしてお金のない三人は、アブドゥのためにワールドカップ・フランス大会のチケットを買わなければならないために四苦八苦するのですがうまくいかない。
 そんなうちにマルセイユに着いてしまう。
 そこで、アーメッドは決心し彼の古巣、あのチームオーナーに会いに行くのでした。
 結末は、オーナーからチケットを奪いアブドゥは観戦できました。そしてアーメッドとルイザは結ばれます。

 たわい無い話と言ってしまえばそれまでですが、いい映画です。
 ただし残念ながら今ではもう観られない映画です。(昔、NHKBSで放映された時に録画したのを観て書いています)

 はじめに、まじめ(シリアス)なお話ですが、ユーモアあるコミカルな映画です。甘辛と言いますか、塩あんの味、と言いました。
 シリアスな映画だと思いこんで、その視点だけから本作を観てしまうと、ユーモアあるシーンに、とても違和感を感じてしまうかも知れません。本作に限らず、こういった甘辛な映画を観る時には、柔軟な読解力で楽しみましょう。

オリジナルタイトル:MONDIALITO|CARTE D'IDENTITE|
監督:ニコラ・バディモフ|スイス/フランス|2000年|90分|
脚本: ニコラ・バディモフ、ムサ・マースクリ|撮影: トマ・ハードマイヤー|
出演: ムサ・マースクリ(アーメッド、別名ジョルジュ|エマ・ドゥ・コーヌ(ルイザ)|アントワーヌ・モリーニ(アブドゥ)|アントン・クズネゾフ(ロシア人行商・オレグ)

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映画「クラッシュ」  監督:ポール・ハギス

上

 白人と黒人の二項対立だけでなく、アメリカの様々な人種間のギクシャクを群像劇で観せる映画。
 ストーリーは、数多くのエピソードがパッチワークされ、それぞれに関連を持たせている。
 そこには、拳銃による殺人が3件、交通事故が3件、ハッピーエンドが2件、盛り込まれています。
 貧富による分断、車社会、銃社会のアメリカも映し出します。
 2時間足らずのこの映画で、いわばアメリカの縮図を観せようとするのだから大変。話は複雑を極める。またメッセージは細部に宿っています。

 そんな複雑なエピソード群の中から、4つの話を取り上げてみます。(エピソード間の関連性は、あとで述べるとしよう)
1_20180609143517838.jpg【エピソード1】・・リック地方検事とその妻ジーンの白人夫妻
 夫妻は、映画に出てくる登場人物中、一番の上流階級の人。
1-2_201806091447463f5.jpg 検事は黒人層からの支持をとても意識している。上から目線の妻は、いつもツンツンしていて、家政婦がいつかない。
 そんな夫婦がある日、街中で黒人の二人組に拳銃で脅され、目の前で自家用車を強奪される。
 車を強奪された事は、検事のメンツにかかわる事。それも黒人にだ、心境複雑。
 妻は恐怖心から自宅の玄関ドアのカギを丈夫なものに取り換えようとするが、修理に来たカギ屋のダニエルが黒人だったために、このカギ屋が、車を盗んだ二人組に合いカギを渡すのではと猜疑心に苛まれる。それを聞いていたカギ屋はスペアキーのすべてを夫人の前に置いて帰った。


2_20180609143644157.jpg【エピソード2】・・キャメロンとその妻クリスティンの黒人夫妻
 夫妻は、映画に出てくる登場人物中、二番目に上流の人。
 夫はTVディレクター。TV業界で黒人が生き抜くには、周りの白人たちとそれなりに同調しなければならないらしい。夫は周囲に目配りしながら穏やかに実を取る男。
 妻はそれを理解はするが、心の底では白人にオベッカ使ってと思っているようだ。
2-2_201806091451514e8.jpg そんな夫妻がある日、夫が何かの賞を受賞した夜、車で帰宅のところ、街中で白人のライアン巡査が乗るパトカーに停車させられる。
 夫妻が乗る車は、検事の盗まれた車と同車種、同じ色。
 パトカーに同乗する若い白人巡査ハンセンは、車のナンバーが違いますよと注意するが、ライアン巡査は停車させた。
 夫は妻に車外に出るなと制したが、妻は巡査の理由なき行動に怒りを抑え切れないで車外に出る。
 ライアン巡査は出てきた妻の身体を、身体検査よろしく、まさぐり始める。この屈辱に耐えられない妻は夫の方を見るが結局、夫は巡査に歯向かわなかった。
 それから、この夫婦の仲は崩れ始めた。


3-3_20180609143956208.jpg【エピソード3】・・ファハドとその娘のペルシャ人父娘、カギ屋のダニエルとその幼い娘の黒人の父娘
 ファハド父娘は中間層の下位、ダニエル父娘は下層の上位といった人たち。
3-6.jpg ペルシャ人店主のファハドは、店のドアを修理したくて、カギ屋のダニエルを呼んでカギを交換させたが、カギ屋は、ドアの扉も替えないと防犯にならないと言う。がしかし、ファハドは承知しない。互いに言い争った。
 翌日、誰かによって店はメチャメチャに荒らされた。店はファハドが長年にわたり丹精込めてきた店である。怒り心頭のファハドはダニエルの仕業と決めつけ、ダニエルの自宅前で拳銃を忍ばせ待ち伏せする。
 帰宅したダニエルに、ファハドは拳銃を突きつけ撃とうとしたその時、ダニエルにその娘が飛びついた。
 結果、ファハドはその幼い女の子の背中を至近距離で撃ってしまった。しかし、娘は怪我もなく生きていた。なぜなら空砲であった。
 以前、ファハドが銃砲店で銃弾を購入しようとした時、その店主の白人と揉め、結局、同伴したファハドの娘が、当てずっぽで指し示し買った銃弾が空砲弾だったのが、この奇跡を生んだ。



4_20180609144054954.jpg【エピソード4】・・アンソニーとピーターの黒人二人組
 職に就かず、盗みを働く黒人の男たち。しかしアンソニー曰く、俺たちは黒人からは盗まないと言っている。
 アンソニーとピーターは、【エピソード1】の車の強奪犯だ。
 そしてその夜、ふたりはこの盗んだ車で、前方不注意、アジア系の中年を轢いてしまう。処置に困った二人はある病院の玄関先にこの男を置いて逃げる。ひき逃げだ。



 さてさて、エピソードは相互に関連を持って、ますます広がっていく。
 アンソニーが、停車中の高級車に拳銃を突きつけて乗り込んだが、それは【エピソード2】のTVディレクターの黒人キャメロンの車だった。キャメロンは車を発車させながら、黒人同士2人は揉める。これを外から見ると車は変な運転をするように見える不審車。(かつ【エピソード1】の盗難車と同種同じ色)
 一台のパトカーがこれを追う。【エピソード2】に出てきた若い白人巡査ハンセンが運転するパトカーもあとを追う。追い詰められたキャメロンとアンソニーは銃を構えた巡査に包囲される。
8-0.jpg そこへ割り込んだのが、若い巡査ハンセン。「俺はこのキャメロンを知っている、悪い奴じゃない、大丈夫だ」と言いながら、他の巡査を制し、怒るキャメロンをなだめて、その場は事なきを得た。
 しかしキャメロンはアンソニーの銃を隠し持っていた。一触即発だった。

 一方、キャメロンの妻クリスティンは、夫婦仲が最悪になったことに傷心して精神不安定でいたためだろうか、交通事故で他車と接触し横転、車はひっくり返る。
 だが事態は差し迫る。相手の車からガソリンが漏れ出し、こちらに流れ来る。だが逆さになった車からクリスティンは出られない。シートベルトで宙づりになっている。
 そこへ駆けつけたのが、クリスティンを弄んだ巡査ライアン。初めクリスティンはライアンの救助を拒んだが、車に火が付く。結局彼女はライアンに助けられた。

 そして、若き白人巡査ハンセン。
 疲れての仕事の帰り道、車に乗るハンセンは、夜道でヒッチハイクする1人の黒人青年を拾います。街を出たいと言うその青年は、アンソニーの相棒のピーター。
 車内でのちょっとしたやり取りに、気分を害したハンセンは、降りろとピーターに言う。その時、ピーターがズボンのポケットに手を入れ出そうとしたモノが拳銃かと即断したハンセンは即座に、ピーターを射殺してしまう。そして道端の草むらに置いて逃げてしまった。

 さらには以上に書かなかった男、黒人刑事のグラハム。
 映画冒頭、夜のシーン。グラハムとその妻の乗る車が接触事故を起こす。グラハム刑事が安全運転だったとしたら、相手のアジア系の女が悪いんだろう。この女、やたら悪口雑言、グラハムの妻、ヒスパニック系(メキシコ)の妻に向かって罵っている。
 あとでわかるが、このアジア系の女は夫が緊急入院した病院へ向かう途中。【エピソード4】で、アンソニーとピーターの黒人二人組にひき逃げされた男の妻が、この女。
 そんな騒ぎを横に見て、グラハム刑事は見知った巡査たちに挨拶しながら、道端にいる同僚の刑事に近づいた。「どうした、事件発生か?」「そう、若い黒人の射殺死体だ」。(映画の観客はわかる、これはハンセン巡査が射殺したピーターだ)
 そして死体を確認したグラハム刑事は驚きを押し殺した。その男はグラハム刑事の弟だった。

 最後に言い残したエピソードふたつ。
 グラハム刑事の交通事故の日のその昼、グラハム刑事は【エピソード1】のリック地方検事の息がかかった刑事フラナガンに呼び出される。その呼び出しは、グラハム刑事が担当する事件についてだった。
 担当の事件とは、白人刑事による黒人刑事射殺事件。黒人刑事が乗る車を制しようとした白人刑事は、その黒人刑事から発砲を幾度も受ける。そして白人刑事が撃った一発が黒人刑事の致命傷になった事件。互いに刑事だと知っていたのか?
 翌日、黒人刑事の車から多量の札束が発見される。黒人刑事の汚職事件に発展する。
 これにリック地方検事がストップをかけた。黒人を悪者にしては支持者が減る。汚職の件は握りつぶして、白人刑事に罪を着せるようにしたい。そこでフラナガン刑事がグラハム刑事を呼び出したのだ。グラハムは実直な刑事、フラナガンが言う地方検事の意向を嫌う。だがフラナガンはここで、グラハムの弟ピーターの犯罪歴をほのめかす。ピーターの件を見逃す代わりに、地方検事の意向を飲めという。グラハムは承知した。

 しかし、折角の弟への思いが結果的にはグラハム刑事にとってみじめなことになった。
 まずは、その夜に弟の死体と対面したこと。そして死体の身元確認のために来院したグラハムの母がグラハムに対して示した態度。「お前より私は死んだ弟に寄り添うよ!」
 もとよりグラハムと母との関係は疎遠だった。多忙なグラハムは時々は母の部屋を訪ねたが母は終始無口だった。
 観客は思う。この黒人家庭の母子の間にも、出世した息子との貧富と正義による分断の思いがあることを。

 
 ちなみに、【エピソード4】のアンソニーとピーターの黒人二人組のひとりアンソニーは、ひき逃げしたアジア系男の乗っていたバンを盗むのだが、バンの後部ドアを開けると、アジア系男女難民の一団が閉じ込められていた。
 アンソニーは盗難車を売り買いする男にバンを売ろうとするが、店の男は難民たちだけを高額で買うぞと言われる。しかし、アンソニーはこれを無視して、中華街に車を走らせ、路上で彼らを解放した。(これはとってつけた話だ※)

 私たちはペルシャ人とアラブ人の区別がつくだろうか?
 【エピソード3】でファハドが銃砲店の店員と揉めたのは、店員が彼をアラブ人だと思い毛嫌いしたからだった。
 アンソニーは、ひき逃げした男を、難民の人々を一応に中国人と言う。人を理解することは難しい。
 観ごたえある映画でした。

 ※ライアン巡査は父親思いの息子で父子だけの家ではいい息子。父親の会社では黒人従業員に良い待遇で接していたとのこと。これも付けたり的というかこだわるねぇ。

オリジナルタイトル:Crash
監督:ポール・ハギス|アメリカ|2004年|112分|
原案:ポール・ハギス|脚本:ポール・ハギス、ボビー・モレスコ|撮影監督:マイケル・ミューロー|
出演:地方検事リック(ブレンダン・フレイザー)|その妻ジーン(サンドラ・ブロック)|TVディレクターのキャメロン(テレンス・ハワード)|その妻クリスティン(サンディ・ニュートン)|ライアン巡査(マット・ディロン)|ハンセン巡査(ライアン・フィリップ)|ペルシャ人店主ファハド(ショーン・トーブ)|カギ屋ダニエル(マイケル・ペーニャ)|アンソニー(クリス・“リュダクリス”ブリッジス)|ピーター(ラレンツ・テイル)|グラハム刑事(ドン・チードル)|グラハムの母(ビバリー・トッド)|フラナガン刑事(ウィリアム・フィクナー)|ほか

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映画「木靴の樹」  監督:エルマンノ・オルミ

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 時は20世紀一歩手前の19世紀末。
 イタリアの小作人たちの日常を群像劇として観せる。
 この映画、はるかな遠景を眺めるように、ゆったり構えて広い視野で観るといい。
 あるいはタイムスリップしたと思って観るのがいい。


 イタリアの北方、アルプス山脈に近い町、ベルガモ周辺に広がる農村地帯。
 広大な大地を所有する大地主と、地主につかえる管理人。
 そして小作人たちとその家族。老人、夫を亡くした妻と子沢山、恋する若い男女、働き遊ぶ子たち、生れたばかりの赤ん坊。
 種まき、とうもろこしの収穫。馬と荷車、干し草、牛の搾乳、解体される豚、水たまりのアヒル、うろつく犬、服地の行商人、放浪する乞食。
 そんな中にある、小作人たちの週一の寄り合い、結婚式、町のお祭りといったハレの時間。

3-0_20180528095043693.jpg しかし、そうした小作人たち農民の、一見、何の変化もない様に見える19世紀末の日常は、ゆるりと20世紀を迎えようとしている。
 そんな変化を映画は、小作人の子供の通学、工場勤めの娘たち、町(都会)の人々の新しさ、社会主義の芽生えなどのシーンで表現する。

 「木靴の樹」という題名に注目しすぎると、この映画の一部分しか見ないことになる。
 地主の領地内のすべては地主の物だから、領地内の道に沿って立ち並ぶ木を切り倒し、子供のための木靴を作った小作人一家は、この地を追われることになるのだが、地主と小作人という対立構図だけで本作を観てしまうと、本作の良さが半減してしまうだろう。

4_201805280952355b6.jpgオリジナルタイトル:L'albero degli Zoccoli
監督・脚本・撮影:エルマンノ・オルミ|イタリア|1978年|187分|
出演:ルイジ・オルナーギ(バティスティ)|フランチェスカ・モリッジ(バティスティーナ)|オマール・ブリニョッリ(ミネク)|ほか多数





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映画「大いなる休暇」  監督:ジャン=フランソワ・プリオ

上

1-0_20180519202308381.jpg カナダはケベック州の沖合にある、島民120人の小さな離島のお話。
 心温まるストーリーで、少しドタバタ喜劇です
 
 島民はかつて漁業で生計を立てていたが、今は皆、廃業して一様に生活保護を受けている。
 しかし支給金の月額では、2週間分の生活費しかまかなえない。
 働き甲斐を無くした島民は、ただただ、ぼんやりした毎日を過ごす。(なぜ漁業を辞めざるを得なかったかは映画は語らない)

 そんな折、ある会社がこの島に工場を建設したいという話が浮上した。
 工場が出来て島民が工場で働けるようになったら素晴らしい!
 しかし、それには条件があった。条件とは島に常勤の医師がいる事であった。
 この島には長らく医師はいないのだ。代理医者と称して精肉店のおやじが危なげな処置をしていた。
 工場進出という湧いて出た美味しい話があるのに、医師がいなくてはどうにもならない。
 クシの歯が欠けるように、少しずつ住民は島を離れ本土へ移住していく。

2-0_201805192017374da.jpg  こんな状況を打開すべく、村長のジェルマンはあれこれ策を考えていたその矢先に、いい話が来た。
 本土に移住していった男から、自然豊かな「へんぴな島」に住みたいという若い医師がいるという。
 そしてその医師クリストファー・ルイスがついに島へやって来る。

 村長ジェルマンは、田舎者であるがちょっとした策士であり、行動派である。
 医師が島に定住してもらうには、どうすればいいか。まず島の家々の外観をきれいにした。
 そして何よりも、医師が好きだというクリケットを、この島でも盛んにやっているというウソを、島民たちで装う。(実は島民はクリケットの「ク」の字も知らないのだ。このシーンは幾つもある可笑しいシーンのひとつ)
 次の策は、医師の家の電話盗聴だ。これは彼が好きな物事調査だ。
 彼の好きな料理が分かると、島でひとつのレストラン&バーのメニューに急遽追加するなど、医師向けのウソは増えていく。

 ま、そんな努力が実って医師は島を気に入りだし、島の娘を好きになるが、次の難題が発覚。
 工場進出の企業に、別の所から誘致話が持ち上がり、そこと競り合う形となった。企業の社長は基本的に島に工場を建てたいのだが・・・、別の誘致先からは工場が来るなら5万ドルの補助をするとのこと。 
 しかし、この島ではどうあがいても5万ドルは捻出できない。

 島には生活保護の支給金を支払うため「だけ」に、銀行の出張所がある。
 島民が彼をATMのような支店長と呼ぶその男に、村長は銀行融資を迫る。気弱なその男は、恐る恐る本店に融資の旨を伝えたが、折り返しの返事は、島の出張所の廃止とATMの設置だった。
 支店長は落胆し、かつ怒りがこみ上げ自暴自棄。勝手に銀行の金庫から5万ドルを出金し、村長に進呈した。

 金が用意できた村長たちは、ヘリで島に降り立った、工場進出の社長たち視察団を迎える。
 そこでまた難題。200人以上の住民の地に工場を作るのだと・・。
 しかし負けない村長は社長たちの前で、また島民を使って200人以上いることを演出した。(島民たちは大変だ!)

3-0_20180519202710a0c.jpg 契約一歩手前に来て、またもや苦難。
 医師に、あれもこれもウソをついてきたことが、好きになった娘の口からバレる。
 医師は、好きな彼女ができたことに後ろ髪を引かれながらも、島を離れると村長に言った。

 だが、契約に来る社長はじめのお偉方の日程は決まっていた。
 そこで村長、まだ負けない。島に物資を運んでくる小さな船の船長を説き伏せ医師に仕立てるが・・。

 村長はじめ島民たちは実にまじめに、生活と生きがいとを求めて、「ウソ」を医師と社長につくが、所詮ウソはウソ。ついに、どん詰まり。
 だが、これを救ったのは、なんと医師のクリストファー・ルイスだった。(終)
 真面目で可笑しいお話、観てのお楽しみ!

 余談1:同じく、離島の人々のコミカルな映画に「ウェイクアップ!ネッド」がありました。
     アイルランドにある離島で起きた出来事。宝くじで12億円を仕留めた独身の島民が当たったその日に死亡。それを島民全員で何とかして横取りしたい。そして宝くじ会社の調査員が島にヘリで降り立った・・・。 
 余談2:オドレイ・トトゥ主演の映画「アメリ」(2001)に出てくる同じようなシーンが、本作「大いなる休暇」の中に2回あります。 
 (下線部をクリックしてそれぞれの映画の記事をご覧ください)

オリジナルタイトル:La Grande seduction(SEDUCING DOCTOR LEWIS)
監督:ジャン=フランソワ・プリオ|カナダ|2003年|110分|
脚本:ケン・スコット|撮影:アレン・スミス|
出演:村長ジェルマン・ルサージュ(レイモン・ブシャール)|クリストファー・ルイス(デヴィッド・ブータン)|アンリ・ジルー(ブノワ・ブリエール)|イヴォン・ブルネ(ピエール・コラン)|エヴ・ボーシュマン(リュシー・ロリエ)|スティーヴ・ロラン(ブルーノ・ブランシェ)|エレーヌ・ルサージュ(リタ・ラフォンテーム)|クロティルド・ブルネ(クレモンス・デロシェ)|モンシュール・デュプレ(ドナルド・ピロン)|リチャード・オジェ(ケン・スコット)|

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映画「シンプルメン」  監督:ハル・ハートリー

写真
兄ビル、弟デニス、謎のエリナ、人妻ケイト

 とてもシンプルなお話。
 主要な登場人物から脇役に至るまで、誰もが実にシンプルな人々だ。

1-0_20180515120320323.png 彼らは単純な人。
 良く言えば、偽りや飾りのない、ありのままの感情で生きる、率直な人。
 それは我々の日常では、ありえないほどのシンプルさ。阿呆にみえるかもしれない。
 こういう設定だから自ずと、このお話は喜劇。
 喜劇でありながら、この映画は、我々が日ごろ、いかに自身の心を抑制して生きているかを「お前、それでいいの?」と我々に言っているようだ。

 そして、登場人物たち、自分の感情に正直な人たちを、監督ハル・ハートリーは優しく抱擁する。
 話は、ビルとその弟デニスが、長らく会わぬ父を探し、見つけ出すまでの間に出会った人々との、あれやこれや。
 話の引き金は父親が引いた。
 父は元は有名な野球選手、その後テロ容疑者とされ、家族を捨て逃亡の23年経った今、逮捕された男。ビルと弟デニスは、この父に面会しようとしたが、父親はすでに脱走した後だった。
 兄弟は、母親が持っていた父親の連絡先電話番号を頼りに父に会いに行こうと旅立った。
 そして出会う人々。服役した夫が帰宅するだろうことを嫌う妻ケイト、ケイトの家に居候する謎のルーマニア人の女エリナ、ケイトの夫と親友のマーティン、ビルを追う地元警察官、ガソリンスタンドの男ふたり。そしてちょい役の女子学生。みな個性あるシンプルな人間たち。

 父親はじめ、窃盗犯のビルなど登場人物それぞれに割り当てられるエピソードは、どれもいささか奇異。奇異だが、そこに登場人物に対する監督特有のこだわりが込められている。
 演技についてだが、一瞬だが一呼吸を置いてのセリフ回しや、ケイト、デニス、マーティン三人のダンスなど、これも監督のこだわりだ。これらを楽しみながら観てみよう。

オリジナルタイトル:SIMPLE MEN
監督・脚本:ハル・ハートリー|アメリカ|1992年|106分|
撮影:マイケル・スピラー|
出演:ビル・マッケイブ(ロバート・バーク)|デニス・マッケイブ(ウィリアム・セイジ)|ケイト(カレン・サイラス|ケイトの元夫ジャックの親友マーティン(マーティン・ドノヴァン)|ビル、デニスの父ウィリアム(ジョン・マッケイ)|ルーマニア人のエリナ(エリナ・レーヴェンソン)|女学生キム(ホリー・マリー・コームズ)|
下


【 ハル・ハートリー監督の映画 】
 これまでに取り上げた監督作品です。画像をクリックしてご覧ください。
 この監督の作品は、一度ハマるとクセになる魅力があります。
 上記「シンプルメン」に登場する俳優たちは下記の映画でも個性ある常連。ただし、「アンビリーバブル・トゥルース」と「トラスト・ミー」に出演のエイドリアン・シェリー(1966年-2006年)は監督業もする女優でした。
写真
「アンビリーバブル
    ・トゥルース」
1989年
写真
「トラスト・ミー」1991年
  
写真
「愛・アマチュア」1992年
  

写真
「ヘンリー・フール 」1997年
写真
「はなしかわって」2011年


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映画「ブリキの太鼓」  監督:フォルカー・シュレンドルフ

上

1-0_20180511163533957.jpg 3歳にして「大人の世界」を忌み嫌い、その後も幼児のように生きたオスカルという男の話です。
 この作品は、観る者の興味、視点の違いで、異なって見える映画かも知れない。そんな二面性いや三面性があります。

 そのうちの一面は、ストーリーのバックグランドとして配置されている、物語当時のポーランドの時代性、これを冷徹に語る側面。
 それは第二次世界大戦へ突き進むナチスドイツに対するポーランドの有り様と、そして当時のポーランド国内の民族的差別とを、庶民の目から生々しく描いている側面です。

 ふたつ目の面は、当時を生きる人々の赤裸々な性を、あからさまに描く側面。
 オスカルの両親と周辺の人々、およびオスカル自身のそれです。
 これがメインテーマのごとく映画は語ります。

 三つ目は、ダークなファンタジーの側面。
 オスカルは3歳にして二つの超能力を持っていました。
 まずは自身の身体的成長を止められること。
 もうひとつは、「ブリキの太鼓」を叩きながら、叫びとも聞こえる奇声を発すると、その衝撃波で標的としたガラス窓やグラスを、一瞬にして砕き散らす能力です。(コミカルなシーンとして描かれます)
 これは、オスカルがのちにサーカス団(慰問団)に加わり、芸として見せるシーンもありますが、大人の淫らな性や(たぶん本質的には)戦争や憎しみ合いも含め、「大人の世界」を嫌ったオスカルの叫びと警告であったのかもしれません。

2-0_20180511164649f27.jpg
 さて、この映画が語るお話をなぞってみましょう。
 1924年生れのオスカルは大人になることを避け、自らの意思で身体の成長を3歳で止めました。
 映画はこの、いつまでも幼児に見えるオスカルの顛末を軸に、ポーランドの都市ダンツィヒ(現在のグダニスク)周辺を舞台に、隣国ナチスドイツを歓迎しその思想に心酔し、ドイツの敗戦でこの悪夢から目覚めたポーランドの人々の、うつろな心模様を描きます。

 また映画は初めに、1899年から語り始め、ポーランドの少数民族カシューブ族(カシュバイ人)の出自であったオスカルの母方の祖母を登場させ、カシューブ族とポーランド人との民族的乖離を暗示します。(この話全体は、疎外されたカシューブ族の祖母の視点を基点にしているように思えます)
 さらに、ナチスに賛同する人々と、反ナチス・ポーランド人との内戦、またユダヤ人差別とシナゴーグ放火暴動など、ポーランドに住むユダヤ人を排斥する反ユダヤ主義のポーランド人の様子も描き出しています。


 そんなことを背景にして、さて、映画はオスカルと彼周辺の人々の話をどう語るのか。それは欲情の物語でありました。
 オスカルの奇麗な母親アグネスは同時に二人の男を愛していました。夫アルフレートと、アグネスのいとこ(従兄)で愛人のヤンです。
 アグネスは夫と生活を共にしながらも、ヤンとの間にできたであろう子・オスカルを育てています。(オスカルはヤンが実父だと思っている)
 そしてアグネスは再度ヤンの子を宿すが、これまた夫アルフレートはとても寛容でありました。しかしアグネスは体調不良と精神の混乱で自殺、あっけない死でありました。
 こんな日々の中、夫アルフレートは時と共に他の多くのポーランド人同様にナチスに心酔していく。
 独り身になって子育てと、自身が営む店のやりくりに苦労していたアルフレートは、ある日、アグネスの母親(オスカルの祖母)から一人の少女を住み込みの小間使いとして紹介されます。16歳のマリアです。オスカルと同い年。時は1940年。

3-0_20180511165213ff7.jpg この出会いはオスカルの初恋となりました。
 オスカルは、いまだに外見は幼児だが16歳の男です。マリアの肉体に魅かれます。
 そして、表向きの父親アルフレートもマリアを求めました。
 マリアが妊娠します。その子はクルトと名付けられます。その後もオスカルは、クルトを密かに自分の子だと思い続けました。

 オスカルのもうひとつの出会い。
 それはサーカス団の芸人たちでありました。とりわけ、10歳で成長を止めたと言う、小人症の団長ベブラじいさんとは息が合いました。
 そののちオスカルはサーカス団に加わり、慰問隊として(第二次世界大戦の)戦場を巡ります。
 この間、同じく団員のひとりで小人症の女性と恋に落ちます。短いでしたが幸せな日々を過ごすことができました。

 さあ、話は徐々にラストを迎え始めます。
 クルトが3歳になる日、オスカルは帰郷しクルトに新品のブリキの太鼓をプレゼントしました。そしてナチスドイツの敗戦。
 このドイツ敗戦によるポーランドの混乱の中、オスカルの父アルフレートは戦勝国ソ連軍兵隊に射殺されます。(射殺したソ連兵が能面づらの東洋系青年であったことが少し気になります)

 埋葬に参列したのは、オスカル、彼の祖母、マリア、クルト、墓守のユダヤ人でした。
 オスカルは3歳からずっと太鼓を手放しませんでしたが、父の埋葬時に、持っていたブリキの太鼓を墓穴に投げ入れます。それは、オスカルの決意表明でした。彼は止めていた自身の肉体的成長を開始することにしたのです。この時、オスカル21歳、1945年のことでした。

 ラストシーン、オスカルは祖母に言われます。「我々はポーランド人でもドイツ人でもない。お前はここにいてもしようがない、西へ旅立ちなさい」 
 そう言われてオスカルは列車に乗って旅立ちました。(終)

 ちなみに、1939年9月1日のドイツ軍によるポーランド侵攻が第二次世界大戦の始まりとされています。

オリジナルタイトル:Die Blechtrommel
監督:フォルカー・シュレンドルフ|西ドイツ、フランス|1979年|142分|
原作:ギュンター・グラス(1959年発表)|
脚色:ジャン・クロード・カリエール 、 フォルカー・シュレンドルフ 、 フランツ・ザイツ|撮影:イゴール・ルター|
出演:オスカル・マツェラート(ダーフィト・ベンネント)|父アルフレート・マツェラート(マリオ・アドルフ)|母アグネス・マツェラート(アンゲラ・ヴィンクラー)|若き後妻マリア・マツェラート(カタリーナ・タールバッハ)|母アグネスの従兄ヤン・ブロンスキ(ダニエル・オルブリフスキー)|母アグネスの母親アンナ・コリャイチェク(若年期:ティーナ・エンゲル、老年期:ベルタ・ドレーフス)|母アグネスの父親ヨーゼフ・コリャイチェク(ローラント・トイプナー)|ブリキの太鼓を供給し続けたユダヤ人の玩具店オーナー・ジグムンド・マルクス(シャルル・アズナヴール)|ほか
下2

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映画「エスケイプ・フロム・トゥモロー」  監督:ランディ・ムーア

上

 妻子を連れてディズニーランドに来た男ジムの不幸な顛末。

5-0_20180505144113878.png 家族四人、前日に、ディズニーランドを目の前にしたホテルに一泊しての、次の朝。
 さあ、これからディズニーランドへ!という時に、ジムの携帯が鳴った。(休暇中に会社から電話が来るのは嫌なものだ)

 この電話で、働き盛りのジムは、勤め先の友人から(会社の決定だと前置きされて)突然の解雇を言い渡された。
 だが、家族でこれから楽しい時を過ごそうという、この日、ジムはクビになったことを妻に言いそびれる。

4-0_20180505144520ab4.jpg 映画は、理由が思いつかない突然の解雇によって、幸せな日常から暗い非日常へ、一気に転落したジムの、苦しい心境を、同時にプレッシャーからの逃避を表現する。(ジムは幻影を見始める)
 加えて映画は、こんな時にも、妻子に対し「良きパパ」を演じようとするジムの(現実逃避との)格闘を表していく。
 
 次いで、この不幸をトリガーにして、「良きパパ」の限界線にいるジムの目線を借りて、映画はディズニーランドという、「楽しい虚構」を実態ある世界に作り上げた、その仕組まれた作りごとを突く。(とても嫌なことがあると、目の前の楽しいことに対し、一気に批判的になるものだ)

 さらに映画は、一度嫌なことに会うと嫌なことが続きがち、というよくある「いら立ちの連鎖」を、シーン各所にうまく織り込みながら、一方で、プレッシャーからの逃避から来る、見知らぬ若い女性へのチョッカイや酒の暴飲といった、「良きパパ」ジムの、いけない誘惑との葛藤を可笑しくしてみせる。

 以上のようなことを踏まえ、話は、始めは、ディズニーランドでありがちな家族の行動/感情を示しながら、話の進行につれてジムの心に「いら立ちの連鎖」が鬱積し、後半ついに、ジムはSFの世界に迷い込み、悪夢に取り込まれて精神が爆発する。
 ちょっと、映画「未来世紀ブラジル」のラストシーンが心をかすめた。

オリジナルタイトル:Escape from Tomorrow
監督・脚本:ランディ・ムーア|アメリカ|2013年|90分|
撮影:ルーカス・リー・グラハム|
出演:ジム(ロイ・アブラムソン)|エミリー(エレナ・シューバー)|サラ(ケイトリン・ロドリゲス)|ソフィー(ダニエル・サファディ)|イザベル(アネット・マヘンドリュ)|科学者(スタッス・クラッセン)|看護師(エイミー・ルーカス)|

2_20180506145539a30.png









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映画「パパは、出張中!」  監督:エミール・クストリッツァ

上
妻のセーナ、マリク、兄ミルザ、メーシャ

 マリク6歳の父、メーシャの浮気が引き起こした思わぬ展開は、不運にもマリク一家に苦難を与えることになります。(しかしラストは苦いですが、ハッピーエンドで終わります)

01-_20180427113923b92.jpg 思わぬ事態になった原因は、メーシャの浮気もさることながら、1950年のユーゴスラビアの政治情勢でした。 
 当時、独自の社会主義を目指すユーゴスラビアは、反ソ連(反スターリン)の姿勢でした。

 ある日、愛人と一緒にいたメーシャは、ソ連を批判するユーゴスラビアの新聞の挿絵を見て、「これはやりすぎだ」と、つぶやきました。(挿絵は下記)
 のちにこのことを、愛人はユーゴスラビア人民委員会のお偉方にふと漏らしました。
 お偉方は、メーシャのつぶやきを「親ソ連」的発言ととって、メーシャを国家反逆の罪で、強制労働させることになります。(裁判なんて開かれません)

 映画は、こんな時代のユーゴスラビアのサラエヴォを舞台に、主に6歳のマリク目線で、2年間の間に起った出来事を、語っていきます。(つまり柔らかい語り口です、ナレーションはマリクです)

 事の発端。
 メーシャが「これはやりすぎだ」とつぶやいた逢瀬の時、愛人は「奥さんといつ離婚してくれるの」とメーシャに強く迫っていました。
 その翌日、愛人は女性グライダー乗りとして、人民委員会主催のグライダー曲芸飛行ショーに出場しました。
 メーシャは奥さんと二人の息子(マリクと兄ミルザ)を連れ、多くの見学者が集まった飛行場にいました。

 そこには人民委員会のお偉方も参列しています。このお偉方がメーシャに近づいて来ました。
 そうです、このジーヨというお偉方は、メーシャの義理の兄、つまりメーシャの妻セーナの実の兄なのです。
 さてショーが終わり、メーシャの愛人はジーヨの車に乗ります。この時です、「これはやりすぎだ」発言を、愛人はジーヨに軽い気持ちで話してしまいます。(ジーヨがメーシャの義理の兄であることは、愛人も知っていましたから)

2-0_20180427115051598.jpg その夜すぐ、メーシャは人民委員会へ呼び出され、義兄ジーヨのオフィスで彼の口から、遠くの地での強制労働を告げられます。
 しかしその夜は、メーシャの息子マリクの、割礼の祝いの日でした。
 メーシャの家の食卓には、メーシャ、妻セーナ、二人の息子、同居のセーナの両親など、そしてジーヨがいます。
 ですが、皆沈みがち。メーシャもセーナもセーナの両親(つまりジーヨの両親)の誰もが、ジーヨに話しかけません。
 そしてセレモニーが終わるや否や、メーシャは強制労働の炭鉱へと家を出ました。(ジーヨは家の外に、連行するための車を待たせていました)

 この日から「パパは出張中」の日々が始まるわけです。(妻セーナは息子たちに父親は出張中ということにしたのです)
 なぜなら、日ごろからメーシャは仕事で家を空けることはたびたびでしたから。(ちなみに、実はこれまでメーシャの浮気は出張中のことでしたし、セーナは相手は知りませんが感づいていました)

 そののち、セーナは兄ジーヨの家を訪れます。セーナは夫へ送る荷物を持っていました。
 しかし兄は、メーシャがどこにいるのか、いつ帰れるのかの問いに答えません。このことは誰にも言うな、会いに来るな、と言うばかりでした。(ジーヨは独り身ですが、彼の家には女がいました)

 炭鉱での強制労働は厳しいものでしたが、一度だけ、セーナはマリクを連れて炭鉱を訪問できました。
 この時、セーナは夫に、どうしてこういう事になったのかと問いますが、「わからない、ジーヨに聞け」と言います。
 セーナは「ジーヨは何も言わない、そういえばジーヨの家にあのグライダー乗りの女性がいたけれど、あの人に聞こうか?」
 「やめとけ」と言い、メーシャは話題を変えました。
 後日、セーナはグライダー乗りに会いに行きます。女の勘は鋭いです。セーナはその女に襲い掛かりました。
 
 続いた強制労働もやっと終わり、メーシャは、今度はこれまたサラエヴォから遠い田舎ズヴォルニクという所へ移され、その地である上司の元で仕事を始めます。
 ここでは家族を呼び寄せることができました。家族4人はまたひとつになれました。

 ここでちょっと、メーシャの下の息子マリクのこと。
 父親が強制労働へ行ったあと、マリクは夢遊病になり、夜、家を出て出歩くようになります。ストレスです。
 日ごろの「パパは出張中」とは明らかに違うことを、幼いながらもマリクは感じ取っていました。(夢遊病のシーンは、監督の持ち味であるコミカルな仕立てです)
 ズヴォルニクに引っ越してからマリクは、あるロシア系の男の一人娘マーシャを好きになります。幼い恋、相思相愛でした。
 ですが、マーシャは不治の病におかされていました。幼い恋は長くは続きませんでした。

03-.jpg そんなある日、メーシャに恩赦がでました、やっとサラエヴォに帰れるのです。
 帰ってまもなく、メーシャの義弟(妻セーナの弟)の結婚式がありました。一族郎党が集まりました。
 3人目の子をお腹に宿すセーナは、兄ジーヨに近づきもしません。
 メーシャはジーヨに、すべて水に流そうと少し話しました。ジーヨはアル中のように酒に酔っています、重度の不眠症に陥っていました。

 そのジーヨの横に、メーシャの元愛人がいます。(この2人は公然の関係になったようです)
 そして、こともあろうに、メーシャは、式をよそに人気のない部屋に元愛人を連れ込み、「なぜジーヨに言ったのか」と問い詰めながらも、ふたりは激しく交わります。でも、この様子をマリクはじっと見つめていました。
 (このあと、元愛人はトイレで首吊り自殺を図ろうとしますが失敗しました)

 この時もうひとり、式をよそにして、そっと出て行く男がいました。彼は自らの意思で老人ホームに入所するため、いま旅立とうとしています。
 その男は、ジーヨ、新郎(次男)、セーナの父親ムザフェルでした。
 ムザフェルはマリクの兄ミルザにこう言いました。「やつらに言っておけ、政治なんてクソ食らえだと」

 ラスト。ラジオからはユーゴ対ソ連のサッカー試合の実況中継が流れます。
 ユーゴはソ連を負かし金メダルを取りました。人々はじっとこれを聴き喜んでいます。1952年のことでした。

オリジナルタイトル:Otac na sluzbenom putu(When Father Was Away on Business)
監督:エミール・クストリッツァ|ユーゴスラビア|1985年|136分|
脚本:アブドゥラフ・シドラン|撮影:ヴィルコ・フィラチ|
出演:マリク(モレノ・デバルトリ)|父メーシャ(ミキ・マノイロヴィッチ)|母セーナ(ミリャナ・カラノヴィッチ)|セーナの兄で人民委員会のジーヨ(ムスタファ・ナダレヴィチ)|グライダー乗りで体操教師のアンキッツァ(ミーラ・フルラン)|マリクの祖父ムザフェル(パヴレ・ヴイシッチ)|マリクの恋人マーシャ(シルヴィア・プハリッチ)|ほか
3下










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【 エミール・クストリッツァ監督の映画 】
 これまでに掲載した作品です。画像をクリックしてお読みください。

写真
「アンダーグラウンド」
写真
「ジプシーのとき」
写真
「黒猫・白猫」
写真
「ウェディング・ベルを鳴らせ!」




映画「ポエトリー アグネスの詩」  監督:イ・チャンドン

上3
1-00_20180419100150005.jpg





 女子中学生の水死体が川を流れ下るシーンを、映画は冒頭、いきなり観客に投げて寄越す。

 この話を語る前にまず、主人公ミジャ(ユン・ジョンヒ)の話から始めよう。
 ミジャは60歳半ばの温和なおばあちゃん、中3男子の孫と二人暮らし。
 その孫の母親(ミジャの娘)は別居していて、釜山に住んで働いている。ミジャは娘から仕送りを受けているんだろうが、孫との生活に余裕はない。
 それでミジャは、ある老人の介護で生活費を稼いでいる。その男は脳梗塞か何かの後遺症で障害があり、手足が不自由、口がきけない。
 孫のジョンウクは、おばあちゃんっ子。幼いころからミジャに育てられた様子で、中3にしては幼い大人しい子、ミジャに爪を切ってもらう始末。

 ミジャは最近、詩に興味がある。詩を書いてみたい。そこで詩の教室に通い始めた。
 さて、こんな平凡なおばあちゃんのミジャが、話が進むうちに、冒頭シーンの女子中学生の自殺事件に苦しめられることになる。

 ミジャがこの事件に遭遇したのは、病院の救急外来入口で、女子中学生の母親が泣き叫ぶのを見た時であった。
2-00_20180419100956b44.jpg そして次に、ミジャを苦しめることが発覚する。
 それは、孫のジョンウクはじめ彼の同級生6人が、自殺した女子中学生ヒジンを、生前、学校で数回にわたりレイプしていた事実。

 このことをミジャは、同級生6人のうちの1人、ギボムの父親から呼び出されて聞いた。
 ミジャは家に帰り、ヒジンの事をそれとなくジョンウクに聞くが、さしたる反応はない。
 一方、ギボムの父親ら、同級生5人の父親たちは密かに集まり、今後の対応を相談している。
 ここは息子たちの将来を考え、向こうの親と示談で納めたい。ほかに事の次第を知っているのは校長はじめそれぞれの担任だけ。だが、地元紙の記者が動き始めたらしい、秘密裏に進めたい。

 相談の結果、父親たちは示談の提示金額を3000万ウォンと決めた。1人頭500万ウォン、ミジャはこれをギボムの父親から知らされた。
 しかし、ミジャにそういう金は無い。ギボムの父親はミジャに向かって「釜山の娘に出してもらいなさい」と言う。だがミジャは、娘に事件も示談金のことも伝えない。(この家庭内事情を映画は語らない)

 相談相手もなく、追い詰められるミジャはある決断をする。
 ミジャは介護で通っている老人の男に身を許した。男は会長と呼ばれていて資産家のようだ、そして男はミジャが好き。(今までも迫られることがあった)
 そして後日、ミジャは男に500万ウォンを「くれ」と筆談で話す。(ミジャが筆談するわけは男の娘が傍にいるのだ)
 くれ、とは返済することができないからだと書き添える。男は脅迫かと筆談で返す。
 結局ミジャは身を挺して500万ウォンを手にし、ギボムの父親に渡すことができた。


下 60歳半ばのミジャを観客は、世知に疎い、認知症初期と診断された、詩作にあこがれる、頼りないおばあさんと思うかも知れない。(ミジャのセリフに、これまでの人生に苦労は絶えなかったとあるが、それを映画は語らない)
 一方、ギボムの父親はじめとする加害者の父親たちは、40歳前後の働き盛りの男たちだ。自ずとミジャと相いれない。
 加害者5人の父親の集まりにミジャも出るが、ミジャはすぐに退散してしまう。
 ミジャは父親たちから、示談の交渉役にされてしまうが、ミジャは自殺した女子ヒジンの母親と世間話をしただけで交渉の話はできなかった。
 また、孫のジョンウクに対し、問い詰めないし、怒らない。

 ミジャは優しい。人当たりがやわらかい。
 だがミジャは、ぼんやりしているわけじゃない。洞察力があり、よく考えているが、いかんせん問題解決に時間がかかる。決断が後手になる。
 ミジャは正義感が強い。
 孫の事より、自殺したヒジンやその母親に意識が行く。加害者の父親たちのやり方に懐疑的だ。

 ミジャは、考えがはっきりした時、想定したことが現実になる時、すでに覚悟はできている強い女性。
 ある日刑事が現れ、ミジャの前で孫のジョンウクが連行される。ミジャは少しも動じなかった。
 詩教室の最終日に提出の宿題、詩一編をミジャはきちんと提出した。それは美しい感動を呼ぶ詩であった。(映画中で示される)
 しかし、その教室にミジャの姿は無かった。(ミジャは前日に提出していた)
 ミジャはどこへいったのか?

 ラスト、映画は人影のない大きな橋上のシーンを観客に見せる。
 そこは女子中学生ヒジンの水死体が流れ行った川にかかる橋だった。

オリジナルタイトル:시 (詩)
監督・脚本:イ・チャンドン|韓国| 2010年|139分|
撮影:キム・ヒョンソク
出演:ミジャ(ユン・ジョンヒ)|ジョンウク(イ・デヴィッド)|ギボムの父(アン・ネサン)|ヒジンの母(パク・ミョンシン)|キム・ヨンタク・詩作教室の先生(キム・ヨンテク)|ほか

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映画「未来世紀ブラジル」  監督:テリー・ギリアム

上

 SFコメディだが、とてもシリアス。
 未来のどこかの国の話。(映画製作年1985年)
 この国では、国民のあらゆる個人情報が日々徹底的に掌握・管理され、国民は全体主義的に支配されている。

1-0_20180414110246946.jpg これをつかさどるのが情報省。(話の舞台となる組織)
 省というからには行政機関の一つのようだが、テロ対策に対応できる武力(警察機能)と、闇の裁き(公正な法なき裁判機能)を持ち、よって一省庁でありながら国家権力として絶大な力を持っている。(司法府・立法府は映画に出てこない)

 話は、日々膨大に発生する、行政手続き遂行に全力を注ぐ「役人」だけで事は終始する。彼らの視野に、国民や公正なんてハナから無い。これがこの映画の怖さの主因。

 ある日、その膨大な行政手続きのひとつに書類記載ミス(人名の間違い)が発生した。これがこの物語の発端だった。
 このミスによって、無実の男がある日突然、テロ容疑者として情報省情報はく奪局にて拘束され、彼らの手による拷問の末、男は死亡。
 この検挙時費用を、情報省は男の妻に過大請求したため、後日、省は払い戻ししなければならなくなった。(これもミス)
 ここで登場するのが主人公サム。サムは払い戻しのために男の妻に会いに行くことになった。
 サムは情報省記録局の役人。(省内では情報はく奪局が出世コースで、記録局の人材は落ちこぼれらしい)

2-0_20180414110435870.jpg サムは出世を望まない男。時折見る夢の世界に浸っている。その夢は、美しき女性が登場し、サムは背に翼があり、悠然と空を飛ぶスーパーマン。サムは夢が覚めても、夢の女性に恋してる。

 その女性にそっくりな女(トラックドライバー)が、記録局の入口カウンターに来ていた。サムはこれを目撃する。
 この出会いがサムの平凡な人生を一変させることになった。
 その女は、人名間違いで殺された男の部屋の階上に住んでいて、事の次第を知る女であった。女は残された妻に代わり情報省記録局に書類手続きに来ていたのだった。
3-0_20180414110832b25.jpg
 一方、はく奪局は、省のミスのすべてを隠すため、この女の逮捕に踏み切った。
 これを知ったサムは、この女の身を心配し、役人の職を投げ出し彼女に近づき、そして一緒に逃走する。サムは勇敢であった。

 もうひとつ、サムの人生を変える出会いがあった。
 その男の名はタトル。これぞ、はく奪局がミスなく書類に記載すべき名であった当のテロ容疑者である。
 タトルの容疑行為は、ビルマンションの不法な配線配管修理。なぜ不法か? この国ではこのサービスは国が直接提供するサービスであるから。(この国では、パイプ、チューブ、ダクトによって家々は通信回線、電気ガス上下水道、空調のサービスを受けているが、情報省が日々掌握すべき個人情報を得続けるには通信回線を管理下に置いておかねばならない。しかしパイプ、チューブ、ダクトがどこも、ぐちゃぐちゃに入り組んでいて、どれが通信回線かすら不明な状態。だから配線配管修理は一括して国営なのかな)
 このタトルがサムの部屋の配線配管修理に現れたのである。
 くわえてタトルは、高層ビルからワイヤーを使って地上に滑り降りる、スーパーマンのように謎の男。

4-0_2018041411120562f.jpg 結局、サムは情報省はく奪局に逮捕され拷問を受ける。
 その最中、サムはタトル率いる一群が彼を救いに来る幻想をみる。
 そして、ついに精神を破壊されたサムは、幸せな夢を見る。それは彼がこれまで見てきた夢物語の、そのハッピーエンドだった。

 ちなみに、この映画の製作年1985年とは、一般的にはオフィスにパソコン(社内LAN)があるかないかの時代、それも16ビットのパソコンであった。世はインターネットやコンピュータによる高度情報化社会への憧れがあった時代。(同時に不安もあったが、ネット上の個人情報についての目立った見識はなかった)
 当時、そんな新しい時代感覚を反映した本作に驚きと斬新さ(アナログ感覚も含め)を覚えたが、今観るとさすがに、その辺はあまり意識に上がらず、情報省の人権無視の横暴さが、行政手続きの中で淡々と行われる怖さを感じます。



オリジナルタイトル:Brazil
監督:テリー・ギリアム|イギリス|1985年|142分|
脚本:テリー・ギリアム 、 トム・ストッパード 、 チャールズ・マッケオン|
撮影:ロジャー・プラット|
出演:サム・ローリー(ジョナサン・プライス)|ジル・レイトン(キム・グライスト)|アーチボルド・ハリー・タトル(ロバート・デ・ニーロ)|ミスター・カーツマン(イアン・ホルム)|アイダ・ローリー(キャサリン・ヘルモンド)|スプー(ボブ・ホスキンス)|ジャック・リント(マイケル・パリン)|ミスター・ウォーレン(イアン・リチャードソン)|ミスター・ヘルプマン(ピーター・ヴォーン)|ドクター・ジャフェ(ジム・ブロードベント)|


下
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映画「トラスト・ミー」  監督:ハル・ハートリー

上

 高校生の女の子マリアと、30歳過ぎの独身マシューとの「純愛物語」風喜劇。

1-0_201804081006385b6.jpg かつ、マリアとマシューそれぞれの家の、子離れできないひとり親と、親離れできない子との、愛の絆の物語。
 とは言え、その絆とは時に、マリアの母のマリアへの、マシューの父のマシューへの、過度な介入であり、家庭内モラル・ハラスメントである。(マリアの父親は映画冒頭、死去。)
 それでも、マリアもマシューも、家では良い子であろうとしている。
 だが、そうそう子供ではない高校生と、かたや30過ぎの男。ともに、幼いと言えば実に幼い。

 この映画、賢者もスーパースターも出てこない。
 極々、普通の人の、その弱い所の内面を優しく可笑しくして見せる。
 ここら辺がハル・ハートリー監督の持ち味かな。

 マリアは、アメフト部の男の子と付き合っていて、妊娠してしまうが、それを聞いて若い彼は逃げた。
 母親に言わせれば、マリアはその方面の知識があまり無かったらしい。マリアは友人に相談して堕ろすか悩んでいる。

2-0_201804081008492c8.jpg マシューはと言えば、職を転々としている。(過去には刑務所にも入った)
 テレビ組み立ての小さな工場で、おばさん工員に交じって働いているが、マシューはテレビが嫌いで辞めてしまう。
 父親の紹介で今度はテレビ修理の店で働き始める。
 相変わらずテレビは嫌いだが、マリアに求婚した以上、今後の生活がかかっている。
 
 さてお話の顛末は観てのお楽しみ。
オリジナルタイトル:Trust
監督・脚本:ハル・ハートリー|アメリカ、イギリス|1991年|107分|
撮影:マイケル・スピラー|
出演:マリア(エイドリアン・シェリー)|マシュー(マーティン・ドノヴァン)|マリアの母ジーン(メリット・ネルソン)|マシューの父ジム(ジョン・マッカイ)|マリアの姉ペグ(イーディ・ファルコ)|

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映画「未知への飛行」  監督:シドニー・ルメット

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米ソ間のホットラインと米国大統領

 1964年製作の米ソ冷戦時代のSF映画。
 話は緊迫感がラストまで続き、112分一気に観せます。 

1-0_20180328172332b89.jpg アメリカ空軍のB-58爆撃機がモスクワに核爆弾(水爆)を投下するまでの話を、ホワイトハウス、ペンタゴン、ネブラスカ州オマハの戦略空軍司令部、およびモスクワへ進撃するB-58爆撃機の4者間で行われる指示/連携を描く一方、ホワイトハウスとソ連側とのホットラインでのやりとりを映画は観せていく。

 しかし、これはアメリカがソ連に仕掛けた戦争(奇襲攻撃)ではなかった。
 空軍司令部にある軍事情報集中センターの、電子機器モジュールの誤作動が原因で、モスクワ核攻撃の司令信号が、洋上上空にいた核爆弾搭載のB-58爆撃機へ発信されてしまったのだ。
 モスクワへ進路を取ったB-58編隊へ、軍司令部は慌てて交信しようとしたが、ソ連の常設の電波妨害で交信不能。
 そこでしかたなく、軍はB-58編隊を自軍ジェット機で撃墜しようとしたが、ジェット機は燃料切れで相次いで海に墜落。
 そうこうするうちに、B-58はある一線を越えてしまう。
 ある一線とは、進撃ルート途中のある一線を越えてしまうと、例え大統領であろうが、攻撃司令の解除が出来なくなる地点。
 つまり交信で攻撃中止を伝えたとしても、それは敵の仕業(偽情報)だとして信じるなと、空軍兵士は徹底的に教え込まれている。

 ホワイトハウス(その地下室)には、アメリカ合衆国大統領(ヘンリー・フォンダ)と通訳のバック(ラリー・ハグマン)の2人だけ。そしてソ連とつながる電話(ホットライン)がひとつ。(ソ連側については、映画は電話音声でしか表現しない)
 ペンタゴンや空軍およびソ連高官とのやり取りの中で、大統領が出した苦渋の決断は、B-58編隊撃墜をソ連へ依頼したことであった。

 ソ連軍は、ジェット戦闘機や地対空ミサイルなどで、B-58、4機を撃墜したものの、その4機はいずれも核爆弾を積んでいない機体であった。
 ソ連軍の攻撃をかわした、編隊長グレイディ大佐が乗る核弾頭搭載のB-58一機は、モスクワへと突き進む。
 ソ連側はもう打つ手が無い。B-58はあと数分でモスクワ上空に達するのであった。
 そして、ここで大統領がとった二つ目の苦渋の決断とは、ソ連を納得させるための驚愕の司令であった・・・。

 観終えて思うのは、米国大統領のこの最後の決断は、果たしてソ連の納得を得られるのだろうか。
 大統領の意思に反して、ここから米ソの核戦争が始まるのではないだろうか。
 
 核爆発による電磁パルス(EMP)発生で起こる電子機器の誤作動について。
 1950年代、核実験が行われた際、近くの米軍軍事施設の電子機器に不具合が生じたらしい。また1962年、太平洋上空での核実験で1400キロ離れたハワイで警報機、信号機の誤作動がみられたらしい。そして現在も各国で電磁パルスの軍事研究が行われているらしい。(2018.3.25朝日新聞、想定外を考える「電磁パルスで機器誤作動」)
 こんなことを想定すると、誤作動による、あるいは意図的に起こす誤作動で、今後、紛争が起きる可能性は大だ。

 1959年、アメリカをはじめとする西側との平和共存路線を模索してのフルシチョフの訪米(雪解け)も、1960年のU2型機事件※で米ソの平和共存は暗礁に乗り上げた。(1961年ベルリンの壁構築、キューバ危機と米ソの平和共存が崩れる)
 U2型機事件の4年後の本作は、(シリアスなSF映画であるだけに)、話は牧歌的に思える。

 本作と同年製作の、似たテーマの映画に、スタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」があるが、これは喜劇仕立てであったがために救われている。(下線部から記事をご覧いただけます)

 ※U-2撃墜事件とは、1960年にソ連を偵察飛行していたアメリカ合衆国の偵察機、ロッキードU-2が撃墜され、偵察の事実が発覚した事件。その後、予定されていたパリでの米ソ首脳会談が中止されるなど大きな影響があった。(wikipediaによる)

オリジナルタイトル:Fail Safe
監督:シドニー・ルメット|アメリカ|1964年|112分|
原作:ユージン・バーディック 、ハーヴェイ・ホイラー著「未確認原爆投下指令/フェイル・セイフ」
脚本:ウォルター・バーンスタイン|撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド
出演:アメリカ合衆国大統領(ヘンリー・フォンダ)|ブラック将軍(ダン・オハーリー)|グロテシェル教授(ウォルター・マッソー)|ボーガン将軍(フランク・オーヴァートン)|バック(ラリー・ハグマン)|グレイディ大佐(エドワード・ビンズ)|ラスコブ下院議員(ソレル・ブック)|カッシオ大佐(フリッツ・ウィーヴァー)|スウェンソン国防長官(ウィリアム・ハンセン)|コリンズ(ドム・デルイーズ)|フォスター(ダナ・エルカー)|ゴードン・ナップ(ラッセル・コリンズ)|

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映画「はじまりのうた」 監督:ジョン・カーニー

上

 今年に入って3か月間に観た映画のうちで、一番のいい映画。良く出来ている。
 ニューヨークを背景にしたラブロマンス映画として観ていいのですが・・。

1-0_2018032013400674e.jpg この映画の一番の魅力は、ソングライターを目指すグレタ(キーラ・ナイトレイ)が自作曲を歌うシーン。
 キーラ・ナイトレイが歌う、そのかすれ声の歌が朴訥で儚げで、なかなかいいのだ。
 そういうシーンはいくつもあるが、特に、
 映画冒頭、小さなライブハウスに客として座っていたグレタが、突然ステージで歌う羽目になるシーンの曲「ア・ステップ・ユー・キャント・テイク・バック」(1)(上の画像)と、
 別れた彼氏デイブに電話で聴かせる曲「ライク・ア・フール」(2)と、
 そして学生の頃にデイブの前で歌った曲「「ロスト・スターズ」(3)が良い。
 まず聴いてほしい。
 本作のオリジナル・サウンドトラック(HMV&BOOKS onlineの試聴こちら)の中の12曲目が(1)、7曲目が(2)で、5曲目が(3)です。

 作った歌が、まだ自分の中だけにいる時のガラス細工のような至福感((1)の曲)や、あたかも天からの啓示で歌が生れて輝くその一瞬の時の((2)の曲)や((3)の曲)に、思いを馳せて欲しい。(監督は歌作りを知っている人間だな)
 この3曲を聴いてグッと来なきゃ、この映画の良さの半分しか楽しめない。(と思う)

2-0_20180320134334f6b.jpg 次いでこの映画に、「ビジネスの成功に走る音楽業界」が「歌自身が持つ本来の魅力」を軽んじることへの苦言が、本作に織り込まれていることに注目したい。
 それは、音楽プロデューサーのダンと、ダンが創設したレーベル会社の社長サウルとの確執で表現されている。(これでダンはついに首になる)
 また監督は、音楽業界への苦言を、グレタと彼氏デイブとの恋愛関係にも影響させている。

 さてグレタとデイブとの関係だが、それは大学時代からの付き合い。ともに歌を作り歌うことが好きな軽音楽サークルの一員だった。
 グレタの作詞作曲の才能に嫉妬するデイブだったが、歌唱力はデイブの方が断然巧い。
 卒業後デイブはミュージシャンの道を歩み、ついにメジャーデビューを果たす。レコード会社はふたりが住む広いアパートも用意した。
 だがこの頃からグレタとデイブの間に亀裂が生じ始める。きっかけはデイブの浮気。デイブはグレタから去った。
 そして水面下でのもうひとつの亀裂は、売上至上志向の音楽業界がするサウンドプロデュースに対するふたりの意見の違い。

 デイブが去ったのちに、グレタは苦しい胸の内をその場で作った自作曲「ライク・ア・フール」(2)に託し電話でデイブに聴かせた。
 この事で、デイブは我に返り、結局グレタの元に舞い戻るのである。(改めてグレタの作る歌に惚れもした)
 そして我に返ったデイブは自身の新作アルバムに、学生時代にグレタが作った「ロスト・スターズ」(3)を入れた。

3-0_20180320140809341.jpg ふたりの再会時に、その曲をグレタに聴かせるのだが、グレタはそのアレンジが気に入らない。「この売れ線アレンジは私の歌に合わない」と。二人の関係は戻りそうにない。
 グレタ:「制作段階で曲の良さが消えちゃってる。この曲バラードなのにポップスになってるわ」
 「でもヒットさせたいだろ」「なぜ?」「君の作った曲が売れたらすごい」「だけど曲の良さが失われたら意味ないわ、曲は繊細よ」「でもライブでは盛り上がるんだ、一気にヒートアップする」「・・・・・」
 ラスト近く、デイブは女性ファンで満席のライブコンサートにグレタを招待し、「ロスト・スターズ」をグレタ風にギター弾き語りで歌って見せてみせた。観客は大いに感激している。
 グレタはこれをステージの袖で聴いたあと、会場を出、夜の街を自転車で走る、微笑みを浮かべて。

 ストーリーの構成が面白い。
 グレタがライブハウスで突然用意もなく歌う羽目になるシーン、映画はこの同じシーンをストーリーが進むなかで3度繰り返す。
 1度目は映画冒頭にあって、このシーンでグレタが無名のソングライターだと分かる。
4-0_20180320140943a52.jpg 2度目はグレタがいるライブハウスに、音楽プロデューサーのダンが偶然に居合わせ、グレタの自作曲に惚れるシーンとなる。
 この出会いは、ダンがグレタをシンガーソングライターとしてプロデュースすることへと発展し、また、歌に対するふたりのセンスが一致して、いつしか歳の差のある「淡い恋らしきもの」へと進む。
 3度目は次にいう話の帰着シーンとして出てくる。
 彼氏デイブと別れ、悲しみに沈むグレタを、学生時代からの音楽仲間で現在ストリートミュージシャンのスティーヴに救われるが、グレタは引きこもりがち。
 そこで、スティーヴが自分が出演するライブハウスにグレタを連れ出したことで3度目のシーンとなる。つまりスティーヴが突然、客にグレタを紹介し、座って聴いてい彼女を無理やりステージに上げたのだった。(上記画像のシーン)

5-0_20180320141057a4a.jpg そして映画はもうひとつのストーリーを用意している。
 グレタと音楽プロデューサーのダンは意気投合し、ダンのもとでアルバムのレコーディングが始まる。
 だが、そのデモテープは、ダンが創設したレーベルの社長サウルに否定されるが、グレタとダンはネットでアルバムを発表し、絶大なフォロー数と多くのダウンロード数を得ることになった。(ラストのエンディングまで観てね)
 そして次回のアルバムはヨーロッパで野外録音しようとか話は進むのです。



 ちなみに、グレタとデイブとダン、この三人の関係はどうなるか、気になるところ。
 デイブのコンサートのあとグレタは、ダンと一緒に好きな歌を聴き合った‎iPhone二股ケーブルを郵送でダンに送り返した。(巧い脚本!)
6-0_20180320141217c2d.jpg ついでに、グレタを助けるスティーヴにも注目してあげよう。いい男だよ。

 なにしろこの映画、多くのことを語っているので、例えばダンの家族の家庭不和に視線が行き過ぎると、映画の良さが見えてこなかったりする。
 とは言え、その家庭不和によって家を出たダンは精神的に参ってしまい、プロデューサーの仕事に専念できず、ヒット曲を産み出せないスランプにいた。そんな中で、酔っ払って街をうろついて、ふと入った店でダンはグレタと出会えたのであった。
 スランプ以前のダンはラップ・ミュージシャンをスターダムに押し上げたりと、著名なプロデューサーであった。そのラッパーはダンへの感謝の気持ちで、グレタのアルバムを制作する資金を援助するのである。
オリジナルタイトル:BEGIN AGAIN
監督:ジョン・カーニー|アメリカ|2013年|104分|
脚本:ジョン・カーニー|撮影:ヤーロン・オーバック|
出演:グレタ(キーラ・ナイトレイ)|音楽プロデューサーのダン(マーク・ラファロ)|グレタの彼氏デイブ・コール(アダム・レビーン)|グレタの学生時代からの友人スティーヴ(ジェームズ・コーデン)|ダンが創設したレーベルの社長サウル(ヤシーン・ベイ)|ダンの娘バイオレット(ヘイリー・スタインフェルド)|ダンの妻ミリアム・ハート(キャサリン・キーナー)|ダンがスターダムに押し上げたラップ・ミュージシャンのトラブルガム(シーロー・グリーン)|ほか


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映画「幸せをつかむ歌」 主演:メリル・ストリープ  監督:ジョナサン・デミ

上

01-.png 女優メリル・ストリープが貧乏なロックミュージシャンを演じる映画。

 30歳代で離婚し、家庭を後にしたリッキー(メリル・ストリープ)が、その後20年間、家庭を一切顧みず、50歳半ばになって、ある事をきっかけに初めて家族と再会する話です。

 ある事とは、リッキーが産んだ娘ジュリー(メイミー・ガマー)が、ジュリーの夫の浮気が原因で精神的に参ってしまい出戻った事。
 ジュリーの引きこもりは激しく、元夫ピート(ケヴィン・クライン)や再婚の奥さんでは手におえず、ピートがリッキーにヘルプの電話をしたことから物語は始まる。

 あわせてこの映画、登場人物の設定を対極的に対比させ、階層社会の上と下や、成功者と敗者のコントラストをはっきりと見せます。
 ただし人生、幸せか不幸せかは、階層の上下ではないことも映画は語ります。

 その昔、リッキーはピートとの結婚後も3人の子を出産後もロックミュージシャンになる夢を抱き続けていた。かたや夫ピートはビジネスでの成功を目指していた。
 そして離婚後20年ほどが経ち、リッキーは貧乏バンド生活で格安モーテル住まいの独身。夫ピートはビジネスに成功し大邸宅住まい、富裕層の黒人女性を妻にし、妻はリッキーが産んだ子3人を育てあげた。

 もう少し、お話のことを言うと・・。 
 1970年から1980年代、ロックが一番輝きロックしていた頃、リッキーはピートと結婚した。
 リッキーはきっと育児や家事にも専念していたのだろう。(このころリッキーは白人中流以上の層にいた)
 しかしリッキーはロッカーになりたいという若いころからの夢を捨てきれず結局、夫婦の関係は崩れ、子たちを残して家を出た。
 
 その後、リッキーはアルバムを一枚出すまでには至ったが、あとが続かなかった。
02-.jpg そして今、ライブハウスでRICKI AND THE FLASHというバンドで歌っている。(演奏曲はこちら映画公式サイト、外部リンク)
 RICKI AND THE FLASHは、有名曲をカバーするしがないバンドだが、いい演奏をする。店の客も乗っている。
 リッキーは、バンドのギタリストのグレッグ(リック・スプリングフィールド)と、いい仲。互いにバツイチ似たような境遇。
 ライブハウスの客は、バンドメンバーたちと同じ50歳代、そして同じような下層生活レベル。また、バンドも客たちも、ごく普通に白人黒人が混じっている。

 一方、ピートはモーリーン(オードラ・マクドナルド)と再婚し、今や高級住宅街(ゲーテッドコミュニティ)に大きな家を構えている。
 ピート夫妻を取り巻く人々は上流階級の白人たちだけで、黒人は妻のモーリーンだけのようだ。
3-0_2018031821434115c.jpg リッキーが産んだ子たちは、出戻りのジュリー、ゲイのアダム、近々結婚するジョシュ。
 兄妹間の人間関係は悪いし、父親ピートとの関係も悪い。(継母モーリーンとの関係は描かれていない)
 そんななかにリッキーが20年のブランクののち急に現れたわけですから、ジュリーがリッキーを無視するのは当たり前。

 さてさて、お話はどう展開しますやら、それは観てのお楽しみ。ハッピーエンドで終わります。
 本作の監督ジョナサン・デミについて言えば、2008年の作「レイチェルの結婚」の方が出来がいい。題名下線部から記事をご覧ください。
オリジナルタイトル:RICKI AND THE FLASH
監督:ジョナサン・デミ|アメリカ|2015年|101分|
脚本:ディアブロ・コディ|撮影:デクラン・クイン|
出演:リッキー愛称リンダ(メリル・ストリープ)|元夫ピート(ケヴィン・クライン)|出戻った娘ジュリー (メイミー・ガマー)|リッキーの彼氏グレッグ(リック・スプリングフィールド)|ピートの妻モーリーン(オードラ・マクドナルド)|息子ジョシュ(セバスチャン・スタン)|ジョシュの結婚相手エミリー(ヘイリー・ゲイツ)|息子アダム(ニック・ウェストレイト)|

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映画「ボッカチオ'70」 監督:マリオ・モニチェリ、フェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ヴィットリオ・デ・シーカ

上







 イタリア喜劇映画です。
 4人の監督による4作品オムニバス。それぞれに主役の女優を立てて、その女性の奔放さを語ります。
 タイトル名「ボッカチオ'70」の「'70」は、本作製作年の8年後はこうなるかも、と語り、笑いを誘おうとしているのでしょうか。

 第1話「レンツォとルチアーナ」と第4話「くじ引き」は、イタリアの庶民層が主人公で、第2話「アントニオ博士の誘惑」は上流階級、第3話「仕事中」は貴族のお話。

1-0_20180310162557725.jpg いま観かえすと、第1話「レンツォとルチアーナ」が一番にいい出来だ。
 若い男女のレンツォとルチアーナのすなおさが清々しいし、1962年当時のイタリアのつつましい都市生活が垣間見れる。
 妊娠したと思い込んでの急ぐ結婚、親戚や職場に内緒で、会社帰りに立ち寄るようにして挙げるスピード略式結婚式と、この式を挙げる教会の要領いい対応。(ちなみに結婚行進曲は教会内にあるジュークボックスから流れる)

 式を挙げたその日から、新郎レンツォはルチアーナの狭い実家(アパートで5人家族)の一員となり、新婚を味わえないと嘆くレンツォ。結局、共稼ぎの2人が越した先は当時としては、未来をちょっと感じさせる新築高層のアパート。

 ふたりが勤務するビスケット工場、嫌な上司、退職金、転職、会計士資格試験準備、ローン返済計画、新婚旅行計画などのエピソードは、今も観る者の共感を呼ぶことでしょう。
 ふたりは引っ越し、転職し、レンツォは給料は少し上がったが夜勤の仕事。朝帰りの夫を待ってルチアーナは朝、出勤していきます。


20_20180310162707a53.jpg 第4話の「くじ引き」の主役はソフィア・ローレン。一般的にはこの第4話がお気に入りになるかもしれない。
 ソフィア・ローレン演ずるゾーエは、射的場の女。
 田舎のこの町で売られる闇くじで、これに当選するとゾーエとベッドを共にすることができる。だから町中の男たちはワクワク。
 今回のラッキー男は教会の童貞中年男、そしてゾーエの心を射抜いた男も現れる。イタリアの田舎の粗野を味わいましょう。

 第2話の「アントニオ博士の誘惑」は、初めて観ると意表を突いた話で、それなりに面白いかもしれないが、改めて観ると、社会的な道徳的な既成概念を単純化先鋭化していて(それで笑いを取ろうとしているが面白くない)、なかには偏見や差別につながる表現もあり、フェリーニ作だが駄作。
  
 第3話の「仕事中」は、ヴィスコンティの出自である貴族の「結婚」をテーマにした室内劇仕立ての話。
 まだ新婚の域なのに早や倦怠期中の夫婦、資金力ある貴族の親の庇護から抜け独立し、仕事をすると言い出した主人公プーペ夫人(ロミー・シュナイダー)のお嬢様的思いつき、娼婦と遊びそれが新聞ネタになった夫はプーペの親の金にすがる。
 そんな夫婦の駆け引きを描きます。
製作年:1962年|上映時間:165分|製作国:イタリア、フランス|
第1話レンツォとルチアーナ」 Renzo e Luciana
監督・脚本:マリオ・モニチェリ、共同脚本:ジョヴァンニ・アルピーノ、イタロ・カルヴィーノ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、撮影:アルマンド・ナンヌッツィ、主演:マリサ・ソリナス、ジェルマーノ・ジリオーリ
第2話アントニオ博士の誘惑」 Le tentazioni del dottor Antonio
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ、共同脚本:エンニオ・フライアーノ、ゴッフレード・パリーゼ、トゥリオ・ピネリ、ブルネロ・ロンディ、撮影:オテッロ・マルテッリ、主演:ペッピーノ・デ・フィリッポ、アニタ・エクバーグ
第3話仕事中」 Il lavoro
監督・脚本:ルキノ・ヴィスコンティ、共同脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ、撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ、主演:ロミー・シュナイダー、トーマス・ミリアン、パオロ・ストッパ
第4話くじ引き」 La riffa
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ、脚本:チェーザレ・ザヴァッティーニ、撮影:オテッロ・マルテッリ、主演:ソフィア・ローレン

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映画「誘惑されて棄てられて」 イタリア映画  監督:ピエトロ・ジェルミ

上
ペッピーノとアニェーゼ

 「誘惑されて棄てられて」とは、なんとも悲しい題名ですが、これはビターなドタバタ・コメディです。
 お話は、シチリアに住む2人、16歳の娘アニェーゼとペッピーノが結婚に至るまでの、てんやわんやな物語。
 ただしラブロマンスではない。アニェーゼとペッピーノは互いに敵対しながらも、結婚してしまいます。なぜ?

1-0_2018030510014608b.jpg 脚本は監督自身の作。監督は本作の舞台、イタリアの離島シチリア島※の社会規範を喜劇仕立てで批判しています。(※シチリアはイタリアの自治州)

 そのシチリアの社会規範を体現する役回りが、アニェーゼの父親ヴィンチェンツォ。この喜劇の主人公です。
 家長であるヴィンチェンツォは、唯一の誇りである「名誉」を最優先にして生きる男。(シチリアの社会規範、その1)
 だから世間体を悪くすることには断固立ち向かうのです。

 さて、物語の切っ掛けは、アニェーゼの姉で太っちょのマティルドに、父が認める許婚(いいなずけ)のペッピーノがいるのですが、このペッピーノが美人のアニェーゼに手を出して妊娠させてしまったことでした。
 苦しむアニェーゼは教会で懺悔しますが、ことはどうにもなりません。
 ヴィンチェンツォにとっては、このことが世間に知れては、彼の名誉(家名、家長責任等)が大きく傷つきます。こうなったら、何としてもアニェーゼとペッピーノを結婚させなければ・・。

 一方、ペッピーノは開き直ります。婚約者マティルドをないがしろにして置きながら、婚前交渉を許したアニェーゼを尻軽女と罵り、俺はアニェーゼとは結婚しないと、彼の両親にわめきます。

 これを聞くに及んだヴィンチェンツォは怒り心頭、怒髪天をつく。アニェーゼも愛想が尽きました。
 姉のマティルドとの婚約は流れ、アニェーゼは今後誰とも結婚できないかもしれない。憎っくきペッピーノ!

 そこでヴィンチェンツォは、いとこの弁護士に極秘で相談します。
 弁護士は「これは未成年誘惑罪だ、ペッピーノはアニェーゼと結婚する以外に罪は免れない。しかし法の力で結婚させては噂の種になるだろ?」と言うと、「奴を殺す!」と怒鳴るヴィンチェンツォを制して「いや、それでは殺人罪で20年になる」
 しかしと、弁護士は刑法を読み上げる。
 「法には『自己の配偶者、娘、姉、妹が不法なる肉体関係を結ぶ時、これを発見し激昂の上殺害せる者は、3年以上7年の刑に処す』とある」と・・。
 つまり、シチリアでは「名誉を汚された」場合、殺人の罪はとても軽いのです。(シチリアの社会規範、その2)
2-0_20180305100559139.jpg
 ヴィンチェンツォは早速、気弱な長男アントニオに拳銃を持たせ、隠れ住むペッピーノを射殺しに行かせます。
 一方、これを知ったアニェーゼは警察に告げ、警察が現場に急行し二人を連行します。人殺しは回避できました。

 そして事件は殺人未遂事件として裁判になります。
 ペッピーノはアニェーゼはもとから淫乱な女だったと証言します。(そういうシーンが挿入されます)
 ま、とにかく、これは喜劇ですから、裁判シーンは可笑しく混乱します。何も解決しません。

 ヴィンチェンツォは、徐々に世間に漏れ出す不名誉にいら立ちを隠せません。
 そんななか、彼にひとつのアイデアが浮かび、ペッピーノ一家を巻き込んで、自力で解決しようとします。
 つまり、公権力に頼らず、自分の力で問題を解決しようとします。(シチリアの社会規範、その3)
 
 先に書いた通り、どの道、ペッピーノの未成年誘惑罪はアニェーゼと結婚する以外に罪を免れないのですが、しかし法の力で結婚したとなれば、ヴィンチェンツォは笑い者になってしまうわけです。
 これを切り抜けるアイデアは、ペッピーノによる強引な誘拐結婚という大芝居でした。衆目を集める狙いで、町の祭りのさ中に行われました。これでヴィンチェンツォに限らずペッピーノの両親も面目が立ったわけです。??
 その社会の人々にとって、正しく至極当たり前だとして、日々空気のように存在する「規範」が、おかしい事もあるわけです。
 それは本作のように、シチリア独特の風習や法律であったりします。広くみれば、その規範の範囲はひとつの国、あるいは、ある時代であったりします。

3_2018030510100064a.jpg ちなみに、姉のマティルドは父親から貧乏貴族の独身男性(→)を紹介されますが、ペッピーノ事件に翻弄されて貴族男は去りました。かわいそうにマティルドはその後、修道院に入ります。
 
 町の警察署で、壁に貼ってあるイタリア全土の地図を前にして、警部がシチリア島を手で隠しながら嘆くシーンが印象に残ります。
 もうひとつ印象に残るのは、アニェーゼ役の女優ステファニア・サンドレッリがとても妖艶。その後この女優は妖艶さが売りになったそうです。
オリジナルタイトル:Sedotta e Abbandonata
監督:ピエトロ・ジェルミ|イタリア|1963年|115分|
脚本:ピエトロ・ジェルミ 、ルチアーノ・ビンチェンツォーニ 、アージェ&スカルペッリ|
撮影:アイアーチェ・パロリン|
出演:アニェーゼ(ステファニア・サンドレッリ)|ペッピーノ(アルド・プリージ)|アニェーゼの父ヴィンチェンツォ(サーロ・ウルツィ)|アニェーゼの姉マティルド(パオラ・ビッジョ)|アニェーゼの兄アントニオ(ランド・ブッツァンカ)|ほか

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映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」  監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

上


 これはなかなかいい映画、見ごたえもある。(ビターな喜劇です) 
 スーパーヒーローの賞味期限が過ぎ、ハリウッドから見放された映画俳優リーガンが、過去の栄光にさいなまれながらも、演劇の道で再起しようする話。

1-0_20180224204517a23.jpg 主人公リーガンの心模様がよく描かれています。
 そしてカメラが実に元気がよい。
 楽屋裏の狭い通路を行く俳優を、揺れずブレずに追いかけるシーンが幾度もある。
 またシーン遷移が途切れなく滑らか、この工夫が楽しい。
 さらには、VFX(特撮)でリーガンの超能力(?)が表現される。

 では、お話です。
 リーガン(マイケル・キートン)は、かつて、スーパーヒーロー映画「バードマン」シリーズで絶大な人気を得た映画俳優だったが、乗りに乗った波は消え去り、今は落ち目。
 落ち込むリーガンの耳には、何かとリーガンを批判するバードマンのささやき(幻聴)が、うるさく聞こえる始末。

 しかしリーガンは負けてはいない、再起を目指す。
 レイモンド・カーヴァーの小説を舞台化してブロードウェイで上演しようと準備は進む。
 自ら脚色・演出・主演を手がけ、不足の資金は自らねん出し、プロデューサーには、リーガンの弁護士で友人のジェイクがあたる。
 現場とプロデューサー間によくあることだが、懸命だが気分屋で感情爆発のリーガンと、冷静沈着なジェイク両者の口論は絶えない。

 この2人を取り巻く登場人物。(この映画は、ブロードウェイの劇場舞台裏に集う人々の群像劇でもあります)
 リーガンの娘サム(エマ・ストーン)は父親の付き人、薬物依存症で最近まで入院していた。父娘のコミュニケーションはうまくいっていない。
 リーガンの芝居に出演する女優レズリー(ナオミ・ワッツ)は、今回ブロードウェイ初出演で胸いっぱい。
 同じく出演女優ローラ(アンドレア・ライズボロー)は、リーガンの愛人。妊娠したと言われるが・・。
 楽屋を訪れるシルヴィア(エイミー・ライアン)は、リーガンの元妻でサムの母親。2人が会うと、良かった昔を思い優しく語らうが、次の瞬間には口喧嘩しシルヴィアは去るといった塩梅。

2-0_201802242047462d9.jpg さて、リーガンは相手役に最適の男優が見つからず壁にぶち当たっていた。
 そこへ舞い込んだうまい話。
 それは、ブロードウェイ初出演のレズリーが「私の恋人マイクはどう?」という提案だった。
 その恋人とは、なんとブロードウェイ舞台俳優として著名なマイク(エドワード・ノートン)だった。
 おまけにレズリーは台本の読み合わせを、自宅でマイク相手にやっていたので、マイクはすでにセリフを覚えていた。もちろんリーガンは喜んでマイクを起用した。

 プレビュー公演が始まる。(本公演開幕前に、2〜3週間の期間を設けておこなうリハーサル的な試験公演)
 ところがこのマイク、芝居は巧いが、あまりにも自由奔放な性格。
 リーガンに対し言いたい放題を言う。リーガンは痛いところを突かれ爆発する毎日、ついに取っ組み合いのけんかとなる。
 またマイクは、舞台の小道具であるジンを本物のジンにすり替え、公演中の舞台上で飲む。これに腹を立てたリーガンは、その日の公演を途中で終わらせた。
 さらにマイクは、リーガンの娘サムに言い寄り、いつしかサムもその気になる。(口も巧い)

 そしてもう一人、リーガンにとって大変手ごわい相手が、ニューヨーク・タイムズの辛辣な演劇批評家、タビサ・ディッキンソンという女性。
 プレビュー公演も観ず、ハナからリーガンを酷評するつもりだ。元・娯楽映画俳優ごときが、ブロードウェイの舞台に立つこと自体が許せないらしい。

 ともあれ、プレビュー公演は続く。
 そんなある日、公演中、下手(しもて、舞台左脇)に下がったリーガンは衣装を着替え、次の出番を待つ間に、ちょっとタバコが吸いたくなった。
 楽屋口のドアを開けタバコを吸っていると、ドアが急に締まり、衣装の裾がドアに挟まってしまう。裾を引くが抜けない。魔が差した。時間は無い。
3-0_2018022420542668d.jpg 挟まった衣装を脱ぎ捨てると、パンツ一枚の姿。仕方ない。この格好で劇場表玄関へと向かった。そこはニューヨークの街の中。人々は「あっ、バードマン!」と口々に叫ぶ。
 なんとか出番に間に合ったリーガンは客席後方から、パンツ一丁で登場する。
 芝居が終わり、今日はいつになく熱演だったと言われるが・・。
 翌朝の新聞はこれを記事にした。それよりも、街の通行人たちによる投稿動画の拡散でネットは大騒ぎ。
 
 こんなあり様のなか、さすがのリーガンも鬱(うつ)の一歩手前になる。  
 頭の中、真っ白状態のリーガンは、現実から解き放たれた浮遊感を感じるようになった。NYの空中をバードマンになって飛んでいるのだ。
 リーガンを批判し続けてきた、心の中のあのバードマンがこの時、リーガンに大きな勇気を与えているのだった。

 とにかく何回かのプレビュー公演は劇場を満席にできた。
 そして本公演が始まる。パンツ一枚の動画のおかげで、チケット前売りは完売。プレミアムまでつく。
 その初日、ついにあの辛辣な演劇批評家も客席に現れる。

4-0_20180224205647bf1.jpg しかし、この日、リーガンはある重大な決意を持って舞台に立った。(その決意とは、観てのお楽しみ)
 その翌朝、辛辣批評家による絶賛の記事がニューヨーク・タイムズに掲載されたのだが・・・。
 ちなみにラストシーンはさらに、観てのお楽しみ。

オリジナルタイトル:BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ|アメリカ|2014年|120分|
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 、 ニコラス・ヒアコボーネ 、 アレクサンダー・ディネラリス・Jr. 、 アルマンド・ボー|
撮影監督:エマニュエル・ルベツキ|
出演:リーガン・トムソン(マイケル・キートン)|ジェイク(ザック・ガリフィアナキス)|マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)|ローラ(アンドレア・ライズボロー)|シルヴィア(エイミー・ライアン)|サム(エマ・ストーン)|レズリー(ナオミ・ワッツ)|ほか

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映画「鶴は翔んでゆく」 旧題名「戦争と貞操」 (1957年)  監督:ミハイル・カラトーゾフ

上


1-0_201802230931043af.jpg


 ヴェロニカとボリスは結婚を誓い合ったものの、戦争が始まり志願兵となったボリスは戦場へ、しかし彼は行方不明となる。
 ヴェロニカは後ろ髪を引かれながらも、ボリスのいとこ・マルクと結婚してしまうのだが・・。

 よくあるストーリーだが、主役ヴェロニカを演ずる女優タチアナ・サモイロワの美貌と表情が、この映画を魅力あるものにしています。
 また、カメラがいい仕事をしている。
 雑踏の中を行くヴェロニカを、俯瞰気味に構えて追い続けるシーンなど観ると、他の映画のカメラは怠けているんじゃないかとさえ思えてくる。

2-0_2018022309451751d.png

 ところが残念なことに脚本がいささか粗雑。
 話の軸足は、戦場よりも銃後の話にあるんだが、エピソードを詰め込みすぎて、その一つひとつを十分にこなせずに次へと進むためか、何やら先を急いでいる感じが否めない。そしてラストシーンは強引なエンディングだね。

 ナチスドイツによるモスクワ空襲のさ中、ヴェロニカがマルクに襲われてしまう。そののち、ふたりは結婚することになるが、タチアナ・サモイロワの悲しい表情が印象に残る。

オリジナルタイトル:Летят журавли
英語タイトル:THE CRANES ARE FLYING

監督:ミハイル・カラトーゾフ|ソ連|1957年|97分|
脚本:ヴィクトル・ローゾフ|撮影:セルゲイ・ウルセフスキー|
出演:ヴェロニカ(タチアナ・サモイロワ)|ボリス(アレクセイ・バターロフ)|ボリスの父親ヒョードル(ワシリー・メルクーリエフ)|ボリスのいとこマルク(アレクサンドル・シュウォーリン)|ボリスの姉イリーナ(スベトラーナ・ハリトーノワ)|ボリスの友人ステパン(ヴァレンタイン・ズブコフ)|ヴォロヂャ(コンスタンチン・ニキーチン)|ボリスの祖母(アントニーナ・ボグダノワ)|チェルノフ(ボリス・ココーフキン)|アンナ(エカテリーナ・クプリヤノヴァ)

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映画「ウェイクアップ!ネッド」 監督:カーク・ジョーンズ

上

1-0_20180219205348cf6.jpg これはイギリスの隣国アイルランドにある離島で起きた出来事。
 この小さな島の住人の誰かが一枚の宝くじを買い、なんと12億円を当てたのです。(約700万アイルランドポンド)

 こんな時、誰しも私が当てましたなんて言わないもの。島民は新聞記事で知りました。
 さあいったい誰が当てたのか。ジャッキーとマイケルはその誰かをつきとめようと行動に出ます。
 島で一軒の呑み屋に出かけたり、目星をつけた人々を自宅に招待してパーティを開き様子を見ましたが、それと思しき奴がいない。
 しかしパーティが終わってはたと気づいた。招待客の一人ネッドが来なかったのだ。奴は感づいたか。

 ジャッキーがネッドの家に行くと、ネッドは家のソファに座った姿で死んでいた。片手に宝くじを持って。ネッドは一人住まいなのです。
 ここでジャッキーは、マイケルをネッドに仕立てて、ネッドの賞金を横取りしようと考えます。

 宝くじの社員がヘリに乗って島を訪れます。
 島に着陸し用意された車で、その社員はネッドの家へ向かおうとしますが道が分からず海べりに出た。
 ちょうどこの時、ジャッキーとマイケルが海水浴をしていた。
 ジャッキーは道案内をしようと言い、その社員の車に乗りネッドの家へ。マイケルは着替える時間もなく慌てて裸でバイクにまたがりネッドの家へ。
 なんとか間に合って、マイケルは宝くじの社員に対しネッドを演じた。

2_20180219205648e4a.jpg そおしてジャッキーとマイケルは12億円を折半したかって? いやいや、それは観てのお楽しみ。
 ← ちなみに、映画冒頭のこのシーンに騙されないようにね。

オリジナルタイトル:Waking Ned Devine
監督・脚本:カーク・ジョーンズ|イギリス|1998年|92分|
撮影:ヘンリー・ブラーム|
出演:ジャッキー(イアン・バネン)|マイケル(デイビット・ケリー)|アニー(フィオヌラ・フラナガン)|ネッド(ジミー・キーオ)|リジー(エイリーン・ドロミー)|ほか

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映画「ガッジョ・ディーロ」  監督:トニー・ガトリフ

上

 ルーマニアの辺境にあるロマ集落にたどり着いた一人のフランス人青年、ステファン(ロマン・デュリス)。
 ロマ語もルーマニア語も解さないステファンが、なぜここへ来たのか。

 ステファンの父親は世界を旅する男であった。ステファンは父親を慕っていたのだろう。父親が旅先で録音した、遺品のカセットテープをこれまで幾度も繰り返し聴いてきた。それは哀愁あるロマの女の歌声であった。
 ステファンはその歌声の向こうに、父親が抱いた旅路のロマンを夢想した。そして、いつしかステファンはロマ音楽の魅力に取り憑かれる。ステファンはテープレコーダーと幾本ものカセットテープを持ってルーマニアへ旅立った。

1-0_20180202124406cc2.png 映画のタイトル名「ガッジョ・ディーロ」とは、ロマ語で「愚かなよそ者」を意味する。
 地元のルーマニア人も近づかないロマ集落に、ある日突然、ステファンが現れる。集落は一斉に、にわとり泥棒だなどと、ざわめき始める。

2-0_20180202124549c25.jpg そんなロマ人のなかで、ステファンに好意を抱く老人がいた。イシドールだ。
 イシドールの一人息子が警察沙汰で遠くの刑務所へ連れ去られたその日に、ステファンが集落に現れた。イシドールはしばらく会えない息子への思いを、ステファンに投影することで気が安らぐのであった。
 そうしてイシドールはなにかとステファンの面倒をみてやった。ロマ語も教えた。

 もう一人、ステファンに好意を抱くロマが現れる。サビーナ(ローナ・ハートナー)だ。ローナ・ハートナーはルーマニアの女優、歌手、作曲家。(ウィキペディアによる)
 そのうち、ふたりに恋が芽生える。ステファンはイシドールやサビーナの助けで集落に受け入れられるようになる。
 そしてステファンは、ここへ来た目的だったロマ音楽の収録を始めた。

 映画は各シーンで、ロマの素晴らしい演奏をドキュメンタリー風に見せ、また人の心あたたかくも貧しい生活の様子を伝える。
 観客はいつしか、自身もこの集落に滞在するかのような気持ちになる。(そうなれば、本作が好きになるかもしれない)

 ラスト近くになって、映画はロマに対する差別を言う。
 刑期を終えてイシドールの息子が帰ってきた。父親はじめ集落の人々は彼の帰還を大いに喜んだが、息子は自分を警察に密告したルーマニア人を酒場で見つけ襲った。
 そののち、ロマの集落を多数のルーマニア人が襲撃し、あばら家のような家々を焼き払う。この時イシドールの息子は焼死した。

 ラストシーン。
 ステファンは車に乗り、集落をあとにした。だが何を思ったのか、荒野を走る一本道の途中で車を止めた。
 そしてステファンはそっとつぶやいた。「俺ってバカだな」
 車を降り立ったステファンは、おもむろに路肩に穴を掘り、録りためたカセットテープを次々に壊して埋めた。
 その壊す音で目を覚ました女が、後部座席からむっくりと起き上がった。サビーナであった。

 たぶんふたりは、ステファンの母が待つパリへ行くのだろう。
 ステファンは大人として目覚めたのだ。
 父親が抱いた旅路のロマンをなぞってロマの人々を慕う気持ちから、目の前にいるサビーナを一人の女として愛することへと。

 映画のなかで流れるロマ・ミュージックを楽しんでください。

 ※ご参考
 1991年にはブカレスト近郊のボランタン村でロマの家100軒が数百名の暴徒に襲われ、焼き討ちに遭う事件が起きている。
 伊藤千尋・著『「ジプシー」の幌馬車を追った』p.218、1999年発行(ウィキペディアによる)
オリジナルタイトル:Gadjo Dilo
監督・脚本・音楽:トニー・ガトリフ|フランス、ルーマニア|1997年|100分|
撮影:エリック・ギシャール|
出演:フランス人青年ステファン(ロマン・デュリス)|ロマの女性サビーナ(ローナ・ハートナー)|ロマの老人イシドール(イシドール・サーバン)|その他にイシドール・サーバンはじめ、多数のロマ人素人俳優が登場する。

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映画「スペースボール」 監督:メル・ブルックス

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1-0_20180131203116a7c.jpg 「スター・ウォーズ」のパロディ版です。
 とことん、おバカなSFコメディ。気分転換したい時にでもご覧ください。
 なにしろ徹底的に「スター・ウォーズ」をおちょくってます。さらにラスト近くで「エイリアン」も出てきます。

 ウィキペディアによると、パロディ版を作るにあたってジョージ・ルーカスが快諾したとのこと。だから、躊躇なく正面切って堂々と製作していて、それが本作をいい映画にしています。笑えます。

 話は、スペースボール星人が自身の星の大気を使い果たし、ドルイデア星から大気を奪おうとする。
 スペースボール星のスクルーブ大統領(メル・ブルックス監督)と、チビのダーク・ヘルメット(リック・モラニス)は、ドルイデア星の王女・ヴェスパ姫を拉致して、ヴェスパ姫の父親・ローランド王を脅し、大気を覆い囲むバリアを解除する「暗証番号」を聞き出そうとする。
2-0_20180131203252b79.jpg ローランド王から、100万宇宙ドルの賞金を出すから姫を取り返してくれと頼まれたローン・スターとバーフは、スペースボール星人と戦うのである。
 さらには、聖者ヨーグルト(メル・ブルックス監督が二役)は、ローン・スターに力シュワルツの力(フォース)を授ける。そしてローン・スターは、ダーク・ヘルメットとライトセイバーもどきで一戦を交える。
 さてさて、このあとは、観てのお楽しみ。
オリジナルタイトル:Spaceballs
監督:メル・ブルックス|アメリカ|1987年|96分|
脚本:メル・ブルックス、 トーマス・ミーハン 、ロニー・グラハム|
撮影:ニック・マクリーン|
出演:イーグル5号の船長ローン・スター(ビル・プルマン)|ローン・スターとタグを組む乗組員、人間と犬のミックスのバーフ(ジョン・キャンディ)|ドルイデア星のヴェスパ姫(ダフネ・ズニーガ)|スペースボール星のスクルーブ大統領/聖者ヨーグルト(メル・ブルックス)|ダーク・ヘルメット(リック・モラニス)|ヴェスパ姫の父親・ローランド王(ディック・バン・パテン)|ヴェスパ姫の結婚相手・アクビ王子(ジム・J・ブロック)|ヴェスパ姫の召使ロボットのドット(ロレーン・ヤーネル)|

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映画「断絶」(1971年) 監督:モンテ・ヘルマン

上3

1-0_20180124161343139.jpg
 The Driver(ジェームズ・テイラー)とThe Mechanic(デニス・ウィルソン)、この二人の男がアメリカの各州を放浪するアメリカン・ニューシネマ。
 オリジナルタイトルは「Two-Lane Blacktop」(アスファルト舗装道路)。

 彼ら二人が乗る車は、レース仕様に改造した1955年型シボレー。モンスターなエンジンを積んでいる。兎に角、速い!
 改造車マニアやスピード狂がどの州にもいて、直線コースでスピードを競うドラッグレースが各地で日常的に行われている。
 The DriverとThe Mechanicの二人は、そんなドラッグレースを渡り歩き、レースに勝って賭け金を得ては又、次のレースを求めて各地を巡るのだ。
 二人はレースに対しとてもストイックで、その生きざまはアウトサイダー。

 この話に華を添えるがThe Girl(ローリー・バード)という家出娘。ヒッチハイクで気の向くままに放浪している。
 ストーリーは、The Girlが1955年型シボレーに拾われて進んでいく。

2-0_20180124162908edf.jpg さらにはGM製マッスルカー、ポンティアック・GTOの新車に乗る中年男、G.T.O(ウォーレン・オーツ)が登場する。
 G.T.Oは何やら孤独を背負う中年。ヒッチハイクの人を乗せては、を繰り返しながら、行く当てもなくこいつも放浪している変人。
 The Driver、The Mechanic、The Girlの若いの3人が無口なのに対して、このおっさんはヒッチハイカーにその都度、有ること無いこと口から出まかせ、よくしゃべる。

 映画は、1955年型シボレー組とポンティアック・GTOの、一般道長距離レースを軸にゆっくり展開するが、話に起承転結はない。カーアクションを求める向きは肩透かしを食らう。(ただし、ラストシーンは意味深長だ)

 おそらく映画は、語られる話(=近景)の向こうにある、1971年のアメリカを感じ取ってくれと言っている。
 つまり、映画で表現される様々な中に、作者が思う1971年のアメリカが比喩的に表現されている。それをくみ取って観てみましょう。

 ちなみに、The Driver役のジェームズ・テイラー、The Mechanic役のデニス・ウィルソンは、ともに著名なミュージシャン。
 ついでに言うと、漫画家、大友克洋の作品「ハイウェイスター」は、この「断絶」にインスパイアされたと思う。1955年型シボレーは、1950年代のトヨペット・クラウンになっている。
オリジナルタイトル:Two-Lane Blacktop|
監督:モンテ・ヘルマン|アメリカ|1971年|102分|
原作:ウィル・コリー|脚本:ルディ・ワーリッツァー、ウィル・コリー|
撮影:ジャック・デールソン|
出演:The Driver:ジェームズ・テイラー|G.T.O:ウォーレン・オーツ|The Girl:ローリー・バード|The Mechanic:デニス・ウィルソン|

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映画「国際市場で逢いましょう」(2014年) 監督:ユン・ジェギュン

上1
上2
















 朝鮮半島に住む人々の親子親戚の強い絆と、生き抜くエネルギーを描く、結末はハッピーエンドなドラマ。
 コミカルなシーンもたくさんある娯楽映画ですが同時に、朝鮮民族が背負った苦難の歴史を通史として見せてくれます。

01-_20180112134526771.jpg 話は、南北の軍事境界線で半島が分断されることになる朝鮮戦争(1950-53)で、北側に住んでいた親子6人の一家が住む場所を追われ、無数の難民の波に飲まれるところから始まる。
 世界を二分する冷戦が朝鮮半島におよぼしたこの戦争は、たまたま北や南に住む庶民にとっては、外国が絡む、降ってわいたような内戦だったのかもしれません。

 とにかく、米軍の軍艦(難民引き揚げ救助船)に、間際で乗船できなかった父親と末の妹とに生き別れとなってしまった母親と子供3人は、釜山に住む父方の叔母の家に落ち着いた。(ここが国際市場と呼ばれる商店街)
02-.png そのころ、釜山の街は米軍兵士がたくさんいて、ちょうど日本の戦後直後の進駐軍によるギブミーチョコレートの様相そのものであった。そして、北から避難した人々は釜山の人々から「アカ」と呼ばれ始める。

 主人公となる、一家の幼い長男・ドクス(ファン・ジョンミン)は、生き別れとなる間際に、父親から「私にかわってお前が家長になるんだ。家長はどんな時でも自分よりも家族のことが優先だ」と、家族の団結と幸せを任されたのであった。

 青年となったドクスはお金を稼ぐため、政府の試験に合格し、西ドイツの炭鉱に炭鉱労働者として2年間派遣される。
 その稼ぎは、家族の生活費はもちろんだが、次男のソウル大学の学費のためでもあった。
 たしかに稼ぎは良かったけれども、ドクスが落盤事故に会うといった危険な仕事でもあった。
 しかし西ドイツの地でドクスにとって見返りもあった。それは、看護師として派遣されていた、のちに妻となる韓国人女性・ヨンジャ(キム・ユンジン)と出会えたことであった。

 (このあたりの史実は下記のKBS WORLD Radio のサイトに掲載の「コリア70年 西ドイツへ向かった韓国の青年たち」に詳しいようです)
 http://world.kbs.co.kr/japanese/program/program_kpanorama_detail.htm?No=10037233

 帰国後ドクスはヨンジャと結婚したが、国際市場で商いをする叔母の店を手伝うも、ドクス一家を養う金は生まれない。
 ドクスはベトナム戦争最中のベトナムへ兵隊としてではなく出稼ぎに行く。(韓国軍のベトナム派兵は1964-72)
 がしかし、現地でドクスは片足を負傷し義足となった。

3-1_201801121349260c0.png それからまた時が経ち、弟妹も結婚し孫達も生まれ一家は大人数となった。
 そんなころ、南北分断の結果、離散してしまった家族との再会の場として、テレビ番組が放送されていた。
 これに出演したドクスは、父親には会えなかったものの、幸運にも末の妹と再会できた。
 妹はアメリカ人の養子となってアメリカにいたのであった。

 余生を生きる今、ドクスは回想する。 父親から「私にかわってお前が家長になるんだ。家長はどんな時でも自分よりも家族のことが優先だ」と、家族の団結と幸せを任されたことが、なんとか成し遂げられたと・・。


下

オリジナルタイトル:국제시장
監督・脚本:ユン・ジェギュン|韓国|2014年|127分|
撮影:チェ・ヨンファン|
出演:ドクス(ファン・ジョンミン)|その妻ヨンジャ(キム・ユンジン)|ドクスの親友で西ドイツ、ベトナムにも一緒に行ったダルグ(オ・ダルス)|ドクスの父親(チョン・ジニョン)|ドクスの母親(チャン・ヨンナム)|ドクスの叔母(ラ・ミラン)|ドクスの上の妹クッスン(キム・スルギ)|ほか

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映画「希望のかなた」(2017年) 監督:アキ・カウリスマキ

上

1-0_2018010321382586f.jpg アキ・カウリスマキ監督「節」が楽しめます。
 フィンランドにたどり着いたシリア難民青年の話ですが、深刻さは余り感じ無い軽い作りです。
 加えて、監督独特の、いつものトボケた可笑しさも織り込まれています。でも、難民流入問題を軽んじているわけではありません。
 また、監督の映画が好きな方は、常連俳優たちの登場や、監督好みの音楽が楽しめます。
 
 青年カーリドは、戦乱のシリア北部の都市アレッポを離れ、トルコ、ギリシャ、ハンガリー、ポーランドを経てフィンランドのヘルシンキの港にたどり着く。
 カーリドは早速、警察に出向き難民申請を願い出て、難民の一時滞在収容施設に落ち着いた。
 施設にはシリア、イランやアフリカ諸国からの多くの申請者がいる。

 さて話は変わって、フィンランド人のヴィクストロムという男は、アル中の妻を置いて家を出、賭博で大金を得て、その金でレストランを買った。
 その頃、カーリドは難民申請が却下され、シリアへの強制送還の決定が出る。
 帰国したくないカーリドは施設を抜け出し街をさ迷い、ヴィクストロムのレストランの前の物陰に潜んでいた。
 ヴィクストロムはカーリドを見つけ、この店で彼を雇い、倉庫に住まわすことになる。

 映画はさらに、レストランの従業員たちとの可笑しなシーン、ヘルシンキのネオナチがカーリドをつけ狙う話、シリアを出てから生き別れとなったカーリドの妹との再会などの話を語ります。 
 そしてラスト、ネオナチに襲われたカーリドの運命は・・。 

オリジナルタイトル:TOIVON TUOLLA PUOLEN
監督・脚本:アキ・カウリスマキ|フィンランド|2017年|98分|
撮影:ティモ・サルミネン
出演:カーリド(シェルワン・ハジ)|ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)|カラムニウス(イルッカ・コイヴラ)|ニルヒネン(ヤンネ・ヒューティアイネン)|ミルヤ(ヌップ・コイブ)|ヴィクストロムの妻(カイヤ・パカリネン)|ミリアム(ニロズ・ハジ)|マズダク(サイモン・フセイン・アルバズーン)|洋品店の女店主(カティ・オウティネン)|収容施設の女性(マリヤ・ヤルヴェンヘルミ)|

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映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」 主演:ヘレン・ミレン 監督:サイモン・カーティス

上
「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」

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 事実に基づいた映画ですが、ハラハラワクワクのエンターテイメントな仕上がりになっています。
 この有名な絵画の背景を知ることができる面白い映画です。
 映画は、絵画の所有権を巡って主人公が裁判で勝訴するストーリーですが、法廷内の論争シーンは多くなく簡潔。よって字幕を懸命に追わないと置いて行かれるという様なことはありません。

 オーストリアのユダヤ人実業家がクリムトに描かせた妻の肖像画(1907年完成)は、戦時中、ナチスドイツによって強奪され、戦後その絵は、オーストリア政府の美術館にて所有されていたました。(ウィーンのベルヴェデーレ宮殿内にあるオーストリア・ギャラリーという美術館)

2-0_201712181613257fe.jpg しかし、肖像画に描かれた女性アデーレの姪にあたるマリア・アルトマン(アメリカ在住)は、この肖像画の所有権をめぐってオーストリア政府を相手取り裁判を起こし、2006年にやっとオーストリア政府から取り戻しました。
 映画はこのマリア・アルトマンを主人公(ヘレン・ミレン)にして、ことの顛末を物語にしています。

 事実はこうでした。
 実業家のフェルディナント・ブロッホ=バウアーの妻アデーレ(1881- 1925)は、自分の肖像画をオーストリア・ギャラリーに寄贈するようにと遺言を残し、1925年に死去しました。
 しかしその後、夫のフェルディナント(1864- 1945)は、肖像画の所有権はもともと自分にあるとして、絵画をオーストリア政府へ寄贈せず、遺言で甥姪に相続するとして1945年に死去しました。(芸術愛好家フェルディナントはクリムトへの発注主でありクリムトのパトロンでした)

 つまりオーストリア政府はアデーレの遺言に基づき肖像画を所有してきました。
 一方、相続人の一人、マリア・アルトマンは弁護士とともに、叔父のフェルディナントの遺言書を資料館から発見し、オーストリア政府を相手取り訴訟を起こします。

 この有能な若き弁護士は、マリア・アルトマンの友人の息子ランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)でした。
 ランディの祖父は、オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクというのも興味深い話です。
 
 肖像画は、138 x 138 cm 、油彩で描かれその上に金彩を施した絵画。
 勝訴までは「黄金のアデーレ」と呼ばれた肖像画は、その後「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」という名に変わりました。
 マリア・アルトマンは勝訴したのち、絵は家に置かず、美術館で公開展示していました。
 そこへ、ナチスがユダヤ人から強奪した美術品を収集することを使命とする人※が、この絵を買い取りました。
 買取額は156億円(1億3500万ドル)で、現在ニューヨークのノイエ・ガレリエに展示されているそうです。

 ※ロナルド・ローダー
 ノイエ・ガレリエは、かつてナチスがユダヤ人から収奪した美術品を現代の所有者から取り戻し、所蔵。
 ローダーは自身が駐オーストリア米国大使だったころからこの問題に取り組んでおり、「ユダヤ人損害賠償世界機構(World Jewish Restitution Organization)」の一員であり、クリントン政権時代にはナチスの略奪事件の査問委員会にも属していた。
 ローダーは本作の獲得について「これは我々にとってのモナ・リザである」とコメントしている。(なるほど)
 (wikipediaの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」から引用)
 ノイエ・ガレリエの公式サイト:http://www.neuegalerie.org/

 ちなみに、20世紀初頭、画家クリムトは上流階級の婦人たちの肖像画を多く手がけていたようです。

オリジナルタイトル:WOMAN IN GOLD
監督:サイモン・カーティス|アメリカ、イギリス|2015年|109分|
脚本 アレクシ・ケイ・キャンベル
出演:マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)|弁護士ランドル・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)|ほか

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映画「影」(1956年) ポーランド  監督:イェジー・カワレロウィッチ

上2



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 ポーランド人民共和国、時は1950年代、共産主義時代初期のころの話。
 (ポーランドの共産主義時代1945~1989年)

 炭坑労働者ミクラは、ビスクピックというボスに頼まれて、密かに男たちを坑内に入れたのであった。
 しかし男たちは、坑道内で爆薬を仕掛けたテロを実行し、多くの犠牲者が出る大事件となった。
 ミクラは驚いた。そして俺が疑われると感じたミクラは、実行犯の侵入を依頼した男を急いで探し、事の次第を問いただしたかった。

 男が乗ったという列車が、まさに駅を発車しようとしていた。
 ミクラは、その列車に飛び乗り、男を探して車内を巡った。男はいた。男はミクラを見て車内通路を逃げる。そして男はついに、走る列車から飛び降りた。だが即死であった。

 その飛び降り現場を若い男女が偶然に目撃し警察へ連絡した。
 男の死体はさっそく警察に運ばれ、医師クニシンによる検死が始まった。

 一方、男が飛び降りたそのあと、ミクラは次の駅で降りたところで、駅員に無賃乗車で捕まった。
 そののち警察はミクラの供述から、この列車飛び降り事故の真相を知ることとなった。

 映画はこの話を語る中で、2つの回想シーンを挿入する。
 その1つは、飛び降り死した男を検死する医師クニシンの語る話。

 回想は第二次世界大戦中の1943年にクニシンが体験した事件。
 当時、ポーランドはナチスドイツの占領下にあった。若きクニシンはレジスタンスとして活動していた。
 ある日、クニシンらレジスタンスは、活動資金を得るため、あるドイツ人高利貸しの店を襲い金を奪おうとしていた。
 そこへ別の男たちが店に来て銃撃戦となった。だが、相手はドイツ軍ではなかった。
 あとで分かった事だが、撃ち合った双方は組織こそ違え、ともにレジスタンスの男たちであった。
 これは明らかに意図的にレジスタンス組織間の争いを誘う誰かの企てであった。
 双方のレジスタンス組織に、店襲撃計画と襲撃時間を勧めたのは一体誰なのだろうか。だが当時、ことは謎に終わった。

 今にしてクニシンは振り返る。銃撃戦のあと、負傷した男を抱きかかえ、通りに出ると、ちょうどビスクピックが荷台付自転車に乗ってそこを通りかかった。クニシンは負傷した男をその荷台に乗せて現場を去ることができたのだ。
 それにしてもビスクピックの出現は偶然だったのか。ちなみに、ビスクピックという男は、クニシンらレジスタンスの活動拠点を提供していた男であった。

2-0_20171209175457979.jpg もう1つの回想は、列車飛び降り事件の捜査を総指揮する老刑事カルボウスキーが、ビスクピックという名を部下から聞いて思い出した話だった。
 それは終戦直後の混乱時期(1946年)に、カルボウスキーが政府軍兵士として体験した襲撃作戦であった。
 当時、「小隊」と呼ばれる武装集団がいて、村々で略奪を繰り返し、村人たちを虐待し恐れられていた。
 しかし、この「小隊」の戦闘能力は優れていて、政府軍はいまだ彼らを鎮圧できずにいた。
 そこでカルボウスキーら志願兵は、その身分を偽り、武装集団の本陣に入り込み、隠し持った手りゅう弾で首領ら幹部を亡き者にした。
 この襲撃作戦で判明したことは、「小隊」が政府軍兵士の中に、スパイたちを潜り込ませていたことだった。これを画策した人物は、ビスクピックという名の男だったと、当時、カルボウスキーは聞かされた、ということであった。

 以上、映画は、3つの出来事に謎の男を登場させる。
 これが「影」である。それぞれのビスクピックという名の男は同一人物なのか。

 映画は、謎の「影」を登場させたスリラー仕立ての作品である。
 だが、なぜ、「影」を悪者とするのだろうか。
 「影」とは、たぶん、1939年以来、ソ連に刃向かい続けたポーランド亡命政府なのだろう。

 映画のテーマは学ぶべき重要なことだが、映画の作りは、総じて巧くない。傑作とはとても言い難い。 

オリジナルタイトル:CIEN|The Shadow|
監督:イェジー・カワレロウィッチ|ポーランド|1956年|98分|
脚本:アレクサンドル・シチボル・リルスキ|撮影:イェジー・リップマン|
出演:医師クニシン(ズィグムント・ケンストウィッチ)|ビスクピック(イグナチー・マホフスキー)|ミクラ(タデウシュ・ユラシュ)|カルボウスキー(アドルフ・フロニッキー)|ヤシチカ(エミール・カレウィッチ)|ほか

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台湾映画「ジョニーは行方不明」,ワン・ビン監督香港映画「ファンさん」,インドネシア映画「見えるもの、見えざるもの」 ~第18回東京フィルメックス上映作品

この3作品の中では、冒頭の「ジョニーは行方不明」が抜きんでて良い。

『ジョニーは行方不明』   Missing Johnny|強尼・凱克|【コンペティション対象作品】
台湾|2017|105分|監督:ホァン・シー(HUANG Xi)|
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 いい映画です。
 インコを飼う女と、知的障害が少しある少年、そして建物修理便利屋の男が登場する。舞台は台北の街。

 女がひとり住むアパートに少年の家族も住んでいる。だからこの2人は見知らぬ関係ではない。
 便利屋の男が働く現場に少年も下働きとして働いているが、男が少年を雇っているわけではない。
 女の部屋はアパート屋上にあるペントハウスで、その屋根に登って、ある日、男が雨漏り修繕をする。

 映画はこのように、3人は互いに浅い関係にあることを示していく。
 観客の方は、ここから次に何か物語が紡ぎだされるのではと期待しつつ待つことになるが、この導入部的なものが、物語の前奏曲的なものが、実は後半まで続いていく。
 その前奏曲に描き込まれるのは、台北の都会の中で、3人それぞれが抱える孤独の事情だ。
 この前奏曲はとても静かで繊細で美しい。

 そして映画はラストに向かう。
 同郷の男がアパートに現れる。女はこの男に長年囲われて来たのだが、その夜、もう耐えきれずに女は部屋を出て逃げる。
 出たところに偶然、便利屋の車が駐車していた。
 買い物を終えた便利屋が車に乗ろうとして、車内の女に気付く。ふたりの無言が続く。
 そしておもむろに便利屋は車を走らせる。

 ラストシーン。一番の見せ場である。
 夕暮れの台北市街を背景に、高速道路インターチェンジの遠景映像。
 その遠景の中、女を乗せた車が突然、インターチェンジ入口へ向かう登り坂で止まってしまう。エンジン故障で道をふさいでしまった。
 すぐに渋滞発生。車を降りて慌てる男と女。女は車を懸命に押す、後ろの車の運転手も手伝い始める。
 やがて、後続車が動き出す。
 陽が落ちるのは早い。映像は夜景となり、幾重にも交差する高速道にたくさんのヘッドライトが行き交う。
 それは台北に住む幾多の人生が行き交う夜景。その中に男と女もいる。 
 そして、どこかから舞い降りた安堵が観客を包む。

 本監督のデビュー作。
 あのホウ・シャオシェン監督に教えを受けて来たとのこと。
 作柄は、ホウ・シャオシェンに通ずるところもあるが、より繊細で21世紀的。
写真
便利屋の男
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知的障害が少しある少年

『ファンさん』   Mrs. Fang|方繡英|【特別招待作品】
香港、フランス、ドイツ |2017| 87分|監督:ワン・ビン (WANG Bing)|
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 認知症の老婆が自宅で衰弱死していく。
 その様子を凝視する監督独特のスタイルで映画はすすむ。

 老婆はもう話はできない、表情は無く意識はもうろうとしている。娘や息子や孫、親せきが集まって来る。
 彼らはベッドサイドで老婆を見守りながらも、静かではない。

 彼らの間で会話が絶えない。大きな声の話。
 それは、親族の集まり具合が悪いの、誰それがどうのこうのといった話。向こうの人はよく言い合いよくしゃべる。
 こういうシーンが長回しで続く。
 そおして、このごく普通の田舎の人々それぞれの生活意識が少し見えてくる。

 今回の作品は定点観測だ。撮影場所は屋外もあるが、多くはこの家のベッドサイド。
 一点を掘り下げる。がしかし、展開に乏しく飽きる。字幕に現れない情報を我々が取れないからかもしれない。

 安らかな死とは言えなくとも、事故死や突然の死ではない限り、見送る時、当事者は意外に冷静なものだ。
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『見えるもの、見えざるもの』   The Seen and Unseen|【コンペティション対象作品】
インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール|2017|86分|監督:カミラ・アンディニ(Kamila ANDINI)|
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 仲の良い双子の姉弟の話。
 弟がある日突然に倒れ入院した。脳腫瘍だった。
 病室で姉が弟に寄り添う。
 弟に寄せる姉のその思いを、バリの民話になぞらえて映画は幻想的に表現していく。

 こういう表現はアニメに向いている。
 実写だと、どうしても、大人が振り付けをした子供の芝居にしか見えない。
 そうは言っても、白い服の精霊(?)役の子供たちが、身体を丸くして病室の床や草原をマリのようにゆっくり転がる振り付けは、実写でも幻想的だった。舞踏派の舞台のようであれは悪くない。

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中国映画「相愛相親」,「天使は白をまとう」,「氷の下」 ~第18回東京フィルメックス上映作品

これら3作品の中では、「相愛相親」がいい出来です。

『相愛相親』   Love Education|相愛相親|【特別招待作品】
中国、台湾|2017|120分|監督・主演:シルヴィア・チャン(Sylvia CHANG)|
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 女性監督(兼主演)によるホームドラマ、女性目線の映画です。
 喜劇的な場面があり、女性観客の間から時折クスクス笑いが聞こえました。
 また、シーンの切り返しに独特のリズムがあって、これが心地良い印象を与えています。 

 中年の主人公が母親の遺骨を、父親が眠る故郷の墓に埋葬しようとするが、故郷に住む父親の先妻に断固反対される話です。

 父親はその昔、先妻を故郷に残し出稼ぎに出た切り、故郷へ帰らず、都会で知り合った女性と結婚。この女性が主人公の母親でした。
 この間永い間、先妻は夫が帰って来るのを辛抱強く待ちました。そして遺骨となって帰って来てからは墓守をして来たわけです。だから故郷の村人たちは先妻の肩を持ちます。

 こんな筋書きを飾るエピソードが三つ。
 ひとつが、埋葬騒動を番組ネタにしようとするテレビ局。
 ふたつめは、主人公の娘。娘は当初、この内輪もめを客観視していましたが、そのうちに、孤独に生きる先妻に興味を持ち始め彼女に近づいていきます。
 もうひとつは、主人公の夫。尻に敷かれても、おっとりした夫。この俳優、いい味を出していますが俳優ではない。
 (本業は映画監督で名はティエン・チュアンチュアン。「青い凧」「ジャスミンの花開く」「ルアンの歌」「五月の恋」などで知られる人物)
 もちろん主人公を演ずる監督のシルヴィア・チャンもいいですね。

 ちなみに映画に出てくるシーンですが。
 TSUTAYAがやっている書店を中心にした生活提案型の店舗のような店、あちらの新幹線、モダンなマンションの部屋などなど、どれも日本と変わらない。いわゆる中国っぽいと思えるシーンは、先妻の住む古風な家屋くらいでしょうか。
 映画は、現代の中国の都会に住む家族の様子がよくわかります。
写真
娘は彼氏と家出し先妻の家へ。
彼氏はミュージシャン。
写真
その昔は夫が好きだった。
そんなことさえ忘れていた妻。

『天使は白をまとう』   Angels Wear White|嘉年華|【特別招待作品】
中国|2017|107分|監督:ヴィヴィアン・チュウ(Vivian QU)|
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 ふたりの少女が主人公のお話です。
 家出をし各地を転々としたのち、この海辺のリゾート地へ流れ着いた16歳の少女(左写真)。
 彼女は小さな(ラブ)ホテルで住み込みの従業員をしている。

 もうひとりは、私立名門校の小学生の女の子。母親と二人住まいだが、母は娘の面倒を見ない女。
 この子は同級生と一緒に、地元の名士に誘われホテルで一泊し援助交際をしたが、16歳の従業員が従業員としてこのことを目撃する。

 のちにこれが発覚し事件となり、地元警察が動き出して、小学生の少女二人は親同伴で病院にて検査を受けることになる。
 名士関係者やホテルのオーナーはもみ消しを図るが、噂は広がる。
 名士は少女の親に金で働きかける。今後の教育費の面倒をみると。
 ついに警察も名士の味方をする。事件は無かったことになってしまう。そして少女たちは・・。

 脚本が練れていない。物語を巧く物語れていないのだ。
 また、二人の少女の心の様子が描き切れていない。俳優のだんまりだけでは伝わらない。ただし、小学生役の少女の目つきは、多部未華子のように鋭い。
 根底にある社会批判がぬるいのは、致し方ないか。 
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『氷の下』   The Conformist|氷之下|【コンペティション対象作品】
中国|2017|126分|監督:ツァイ・シャンジュン(CAI Shangjun)|
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 う~ん辛い。

 コワモテ風を狙っているようだが、脚本が空中分解している。
 それを知ってか、126分間、客を飽きさせないようにと、あるいは驚かそうと、次から次へと肩に力が入った映像が出てくる。
 カメラは頑張っていたが、私は映画の終わるのが待ち遠しかった。









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映画「ブロンクス物語 愛につつまれた街」 監督:ロバート・デ・ニーロ

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「犯人は誰だ」 幼いカロジェロが目撃証人となった。みな、街のギャングだ。
犯人である組のボス、ソニーは目の前にいる。横で父親はハラハラする。



写真
カロジェロ9歳














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この金は誰から貰った?と父は問う
     
写真
カロジェロはボスから目をかけられ、
賭博場のサイコロ振りで小遣いをもらう。

 ニューヨークはマンハッタン北辺の、ハーレム川の向こう、そこはブロンクス。
 時は1960年代。ブロンクスの、その一区画は当時イタリア系暴力団が支配する街だった。
 これは、この街に生まれ育った少年の成長を綴るお話。そして、人種差別の偏見を越えたラブストーリー。

 少年・カロジェロと両親が暮らす家は、通りに面した3階建ての3階。
 そして隣りの店は、街のギャングの溜まり場だ。地下室は賭博の場になっていた。
 こんな環境は、自ずと9歳のカロジェロに「街のスター」である、組のボスや組員たちへの好奇心や憧れをすり込んだ。

1-0_201710281144562a0.jpg 組のボス、ソニー(チャズ・パルミンテリ、本作の脚本を書いている)は、街の住人から表向き尊敬されつつも、人々を恐怖心で支配していた。
 一方、ソニーは気に入った人間には気配りする男。教養は無いものの、人生哲学を持っていて、刑務所では難しい本を読んでいたらしい。

 ある日、カロジェロは家の前にいて、ソニーが男を射殺する現場を目撃する。
 その直後、その現場で、駆け付けた刑事は容疑者たちを集め、幼いカロジェロを目撃証人にして犯人識別を始めた。

 通りに幾人かの人の目があったはずなのに、警察に対しカロジェロを目撃証人とした、街の人々。それでいて、事の行方は面白そうだと様子をうかがう街の野次馬。

 そんな人だかりの中、息子から事件の様子を既に聞いていた父親・ロレンツォ(ロバート・デ・ニーロ)は、息子がソニーを犯人と言わないかと気を揉んだ。だが、カロジェロは「ここに犯人はいない」と言った。
2-00_201710281202044d9.jpg この時からカロジェロが17歳になるまで、ソニーとは親子のような関係が続いた。(映画は主に、このふたりの様子を描いていく)

 ソニーは何かとカロジェロに便宜を払い可愛がった。だがカロジェロは悪の道へは行かなかった。
 それはソニーがカロジェロを、自分のような道に行かせたくなかったこと(つまりソニーのカロジェロへの恩返し)、くわえて正義感ある父親・ロレンツォの存在があったからこそだった。

 黒人女性ジェーン(タラル・ヒックス)との出会い。人種を越えた愛。
 ロレンツォは、ブロンクスを巡るスクールバスの運転手だ。
 高校生になったカロジェロ17歳は、父親が運転するバスに乗っていた時、同じ高校に通うジェーンに一目惚れしてしまう。ジェーンの方もそうだった。

 だが同じブロンクスでも、カロジェロが住む一画はイタリア人の街、ジェーンが住む街は黒人街。ふたつの街はいつもいがみ合っていた。ふたりの間に壁は無くても、ふたりの周囲はそうではなかった。
 イタリア人地区を通り過ぎようとする黒人たちが襲われることもしばしばであった。しかしカロジェロはこれには加わらない。どうして彼らを虐めるのかと。
 そんな街の雰囲気のなか、カロジェロが黒人女性と付き合うことは非難の的だった。
 悩んだカロジェロは父親に話すが、正義感ある父親ではあったが、反対した。
 ソニーにも話した。彼は反対しなかった上に、付き合うに値する女性かを判断する方法を教えてくれた。

 カロジェロの幼なじみの連中は、街の不良になっていた。ソニーはカロジェロに、あんな奴らに近づくなといつも言われるが、長年の付き合いもある。カロジェロは、彼らとつるむ時はつるんでいた。

 ある夜、彼らは車に乗って黒人街へ行き、拳銃と火炎瓶で一軒の店を襲撃した。
 彼らの襲撃は成功したかにみえたが、投げた火炎瓶を1人の黒人が投げ返し、彼らの車は炎上、彼ら全員が焼死した。
 
 実は、この事件の直前、彼らに誘われたカロジェロも、これから襲撃しようとする車に悶々としながらも乗っていた。
 その様子を見かけたのか、走る車にソニーの車が近づき、ソニーはカロジェロに降りろと命令した。
 そしていつもの小言、こいつらに近づくな。そしてカロジェロはソニーの車に乗せられ、その場を去ったのだ。結果、カロジェロはソニーのおかげで命拾いをした。

3-1_201710281215259e6.jpg ソニーが死んだ。
 かつて父親をソニーに殺された男が、ソニーを撃ったのだ。即死であった。
 葬儀に加わったカロジェロは、ソニーの手下たちの誰もが悲しまずにいることを、冷めた目で眺めていた。
 カロジェロは、葬儀が終わっても、棺の前にひとりいた。そして、眠るソニーに言った。「これからもジェーンと付き合っていくよ」 

 警察に嘘をつき悪者ソニーを救ったカロジェロの心の迷いに注目してください。
 父親はカロジェロに「大人になれば分かる」と言うが、これじゃ子供には分からないですね。それと脚本上、父親の存在が薄い。
 カロジェロがサイコロを振って、もらった多額の金をソニーに返すと父親が妻に言うシーン、稼ぎのいい仕事を紹介するとソニーから言われたが断ったと妻に言うシーン、この時、妻は残念がります。妻は正義より現実主義者のようで、可笑しいです。

 ちなみに映画では、40曲ほどの1960年代のポップスが流れています。シナトラやビートルズやボブ・ディランも聴こえてきます。
 曲は、場面に合わせて白人ポップスと黒人ポップスを使い分けています。例えば黒人街のシーンでは例えばジェームズ・ブラウンのソウルが流れます。
 カロジェロの父はスクールバスを運転しながらジャズを聴いてます。でも17歳のカロジェロはジャズが嫌いです。
 カロジェロの幼なじみは、黒人ポップスのドゥーワップを嫌っています。

 映画のサウンドトラック曲目リスト:http://www.imdb.com/title/tt0106489/soundtrack

下 12 左端オリジナルタイトル:A Bronx Tale|
監督:ロバート・デ・ニーロ|アメリカ|1994年|121分|
脚本:チャズ・パルミンテリ|撮影:レイナルド・ヴィラロボス|
出演:カロジェロ・アネロ(リロ・ブランカート・ジュニア)|ロレンツォ・アネロ(ロバート・デ・ニーロ)|ソニー(チャズ・パルミンテリ)|
カーマイン(ジョー・ペシ)|9歳のカロジェロ(フランシス・キャプラ)|ジェーン・ウィリアムズ(タラル・ヒックス)|ロジーナ・アネロ(キャスリン・ナルドゥッチ)|ジミー(クレム・カセルタ)|エディ(エディ・モンタナーロ)|ジョジョ(フレッド・フィッシャー)|

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映画「シークレット・サンシャイン」 監督:イ・チャンドン

上2

 
 とても良く出来た、いい映画です。
 脚本も演出も女優チョン・ドヨンの演技も、どれもが素晴らしい出来。

1-0_2017102214411826c.jpg ですが、テーマは実に重いです。(ここで引いても結構)
 家族愛、夫との死別、誘拐犯による息子の死、神の愛・救い(信仰の喜び)と癒えぬ心、救われぬ信仰、自殺未遂、救いのないその先。

 映画は、総じては安易な表現(例えば劇画的な)にならず、リアルでていねいな描写に徹しています。
 もう少し言えば、登場人物のその場の様を、セリフに頼らず上手に感情表現し、映像表現しています。 
 主人公のみならず脇役たちについても、いるいるそんな人がというように活き活きと描かれ、映画の中で息づいています。
 
 未亡人シネ(チョン・ドヨン)は一人息子のジュンを連れ、ソウルから密陽(ミリャン)に引っ越してきた。
 港町プサンから北へ入ったこの小さな街は、亡夫の故郷であった。シネは、母子の人生の再出発を、夫が愛したこの街に託したのだった。

 シネは、ものをストレートに言う女で勝気。夫の親・親戚と、またシネの唯一の肉親である実弟とも疎遠なのは、彼女のそういう性格がそうしているのかもしれない。

 シネは商店街にある住宅付き店舗でピアノ教室を始めた。
 ソウルという大都会から来たそんな未亡人シネに、田舎街の人々の視線が集まるのは当然だった。

 シネは、同じ商店街で自動車修理店を開くキムという独身男性(ソン・ガンホ)と知り合いになる。キムは下心を抑えながら、新参者のシネの面倒を親切にみてやり始める。
 そんな中、シネは、郊外の土地を買う不動産投資の姿勢をキムに見せ始める。キムはさっそく彼の人脈で不動産屋を紹介した。
 しかし実は、シネにそんな金はない。街の人々の、未亡人母子へ向けての好奇心や哀れみを強く感じるシネは、持ち前の勝気さから、こんな虚勢を張ったのだ。

2-0_201710221443474a5.png だが、未亡人が金を持っているという噂は、男の心に悪を呼び込む。(これが息子ジュンの誘拐、身代金要求につながってしまう)

 シネは身代金を指定場所に置き、警察が動き出し、そして無情にも、シネは息子ジュンの死に遭遇する。(誘拐犯がジュンを殺してしまった)

 一方、シネに哀れみを感じた信者たちは、彼女にクリスチャン信仰を勧めた。
 その時、シネは言った、「なぜ神はジュンの命を奪ったの」

 子を失ったシネの悲しみは、絶望の域を超え耐えがたきものだった。
 張り裂ける心を抱えるシネは、すがるように救いを求めて、ついに教会の扉を開けた。

 従順な信者になったシネは、神のあふれる愛を感じ始める。教会での礼拝、布教活動、地域集会に加わることで、語り合える友もでき、シネはやっと心の安定を得られるようになる。心は癒され幸せであった。
 しかし、家でひとりポツンといる時、シネはジュンの気配を感じ、聞こえるはずのないジュンの声を聞くのであった。

 シネの信仰が深まるなか、彼女は、「汝(なんじ)の敵を愛し許せ」という神の言葉通りに、誘拐殺人犯の男を許そうと思うと信者仲間に打ち明ける。
 自動車修理店のキムは、シネが刑務所で男と面会しようとするのを止める。牧師は「あなたが刑務所に行くとき、神はともにいます」と言った。信者に付き添われ、キムの運転で、シネは刑務所へ向かい、男と面会する。

03-.png 「神の恩寵と愛を伝えるために、私はここへ来ました」
 これに対し男は言った。
 「神は、この罪深き罪人にも訪れました。私の罪を許したのです」
 「えっ、神が・・・罪を許したですって?」
 「そして、心の平安が訪れました、あなたのためにも私は祈ります」

 なんというすっきりした男の笑顔!男は刑務所内で信者になっていたのだった。
 シネの動揺はあまりに強烈であった。刑務所の駐車場で彼女は気を失い倒れてしまった。
 家に戻ったシネは狂気のさた、信者集会所のガラス窓に石を投げつけ、そのあと家で手首を切って自殺を図り、血まみれで前の道にさ迷い出て、精神病棟に入院。
 
 なぜにシネは・・・。
 退院後、信者の集まりでシネは吐くように言う。
 「汝の敵を愛し許せと神は言うが、許したくても、私は許せない。
  男は、もう神に許されて、心やすらかだって言った。
  私が男を許す前に、なぜ神は許したの?
  私が苦しんでいる時に、あの男はすでに許され、救われていたわ。
  なぜ、そんなことが!」

 その後のシネは、まるで抜け殻の様だった。

 韓国の人口の約3割がキリスト教徒で、キリスト教が最大勢力の宗教らしい。
 シネとの出会いから、ここまで、キムはずっとシネを案じている。このキムという男にも注目してください。
 ちなみに、タイトル名「シークレット・サンシャイン」は、シネが住み始めた街・「密陽」の「密」をシークレット、「陽」をサンシャインと読んで名付けたと、トークショーで監督が言っていた。


オリジナルタイトル:밀양(ミリャン)|密陽 Secret Sunshine|
監督:イ・チャンドン|韓国|2007年|142分|
原作:イ・チョンジュン|脚本:イ・チャンドン|
出演:イ・シネ(チョン・ドヨン)|キム・ジョンチャン(ソン・ガンホ)|ジュンが通う塾の教師・誘拐殺人犯(チョ・ヨンジン)|シネの弟・ミンギ(キム・ヨンジェ)|シネの一人息子ジュン(ソン・ジョンヨプ)|犯人の娘チョンア(ソン・ミリム)|薬局の女性キム執事(キム・ミヒャン)|カン長老(イ・ユンヒ)|シン社長(キム・ジョンス)|洋品店の女主人(キム・ミギョン)|牧師(オ・マンソク)|

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映画「ピンク・キャデラック」(1989年) 監督:バディ・ヴァン・ホーン

下


下4

 ご存知、ハリウッド映画俳優クリント・イーストウッド主演の映画。
 ですが、相手役の女性ルーを演じる女優バーナデット・ピータースが光ります。

1-0_20171020151830618.jpg この小柄な女優は、特にミュージカル女優として有名だそうですが、この映画で演ずるルーという女は、見るからに貧相。そしてノータリンで弱弱しい。
 しかし、そのルーのおバカさ、行てまえ(やっちまえ)的無謀さが、映画をコメディーにしています。そして、ルーに振り回される、クリント・イーストウッド演ずるトム。

 トムは離婚して独身。仕事は、保釈金が払えない人間に代わって保釈金を立替負担する会社の下請け。
 つまり、この会社が立替えた金を「払わない」踏み倒し人間を見つけ出して、身柄を拘束する仕事で、トムはフリーでやっている。

 ルーは偽札所持で逮捕の女。立替金を返済しない人物リストの一人。トムがこの案件を請け負った。
 しかし偽札は実は、家庭内暴力をするルーの夫が、ある組織に属していて、組織がらみの犯罪であることが分かってくる。
 この組織は武装し、白人至上主義を唱えるネオナチ集団。(これがアクションシーンのネタになっている)

 ルーが所持していた偽札以外に、組織は大量の偽札を持っていた。
 夫は組織に言われて、その大量の偽札を自分の車に隠している。この車が夫愛用のピンク・キャデラック。

 一方、ルーは夫に愛想も尽きて顔見りゃ憎らしい状態で家出。赤ん坊を乗せ、このキャデラックで姉の家へ行こうとした。
 でも、なんとしたことか、走るキャデラックから、お札が舞い散っていく! 組織はルーを追う。
 しかし実は、車に積んであった札は・・・。

 あとは観てのお楽しみ。
  
オリジナルタイトル:PINK CADILLAC|
監督:バディ・ヴァン・ホーン|アメリカ|1989年|122分|
脚本:ジョン・エスコウ|撮影:ジャック・N・グリーン|
出演:クリント・イーストウッド(トム・ノワック)|バーナデット・ピータース(ルー・アン・マクグィン)|マイケル・デ・バレス(アレックス)|ジェフリー・ルイス(リッキー・Z)|ティモシー・カーハート(ロイ・マクグィン)|ほか

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2-1_20171020153255d1b.jpg    2-2_20171020153257e4e.png









映画「偉大なるマルグリット」 監督:グザヴィエ・ジャノリ

上

 話は悲劇なのですが、それ以上に喜劇的であります。
 夫の冷めた愛を取り戻したいがために歌う主人公の音痴がとても印象に残りますが、映画が語る本質は悲しい愛の物語なのです。

1-0_20171013211911588.png 時は1920年、フランスの郊外。
 大邸宅に住む貴族の女性マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)は裕福な資産家です。
 夫のジョルジュ・デュモンの爵位は、マルグリットが買いました。
 夫は大きなビジネスをしていますが、その資金はやはり夫人が提供しています。

 ですがマルグリットは、夫に対して金のことで恩着せがましい物言いをすることはありません。
 彼女はまったくの天然の気質で、夫を純粋に愛しています。
 かたや夫は、マルグリットに対し負い目を感じ続けていて、もはや夫の心はマルグリットから離れて久しいのです。
 しかし妻と離婚すれば金は消え失せます。夫は女と不倫をして憂さを晴らしています。

 夫婦に子はなく、夫は仕事で、あるいは浮気で家を空けることも多いようです。
 ですから、マルグリットは大邸宅にひとりいて、寂しいのです。

 マルグリットはクラシック音楽の愛好家です。音楽が彼女の心を慰めます。
 邸宅には彼女のための音楽室があり、ピアノと蓄音機があって多数のSPレコードを集めています。
 マルグリットは歌うことも趣味にしています。歌曲の譜面をたくさん持っています。
2-0_201710132120243e0.jpg インド人の執事マデルボスは彼女の歌にあわせてピアノ伴奏をします。オペラの歌曲を歌うときは、舞台衣装を着て歌います。
 そうです、マルグリットはオペラの舞台衣装や小道具も集めているのです。
 執事のマデルボスはオペラ歌手になり切ったマルグリットを写真撮影します。撮った写真はまるで有名なオペラ歌手のようです。執事はマルグリットの秘め事遊びのお相手をしています。

 でもマルグリットの本当は、歌を歌う妖艶な姿を夫に見てほしいのです。彼女は夫の愛の復活を求めているのでした。
 しかし、そんなマルグリットを、夫は陰でバケモノだと言います。

 なぜなら、マルグリットは大の音痴でした。そのうえ、自分が音痴であることを認識できないのです。彼女は先天的に歌唱能力が欠けている障害を持っているのでした。(詳細下記) 
 ですが、マルグリットは戦災孤児救済などのために、邸宅内でオーケストラ付の慈善コンサートを幾度も催します。
 観客は親しい貴族たちです。彼らはマルグリットの奇声に未だに慣れていません。ですが演奏が終わると誰もが笑顔で彼女を褒め称えます。
 夫の気遣いは計り知れません。邸宅内でひとり歌うのであれば、その時どんな舞台衣装を着ようが、夫は黙認しています。
 しかしコンサートを催す度に、夫の心は悲しいことに、ますますマルグリットから離れていくのです。

2-1_201710132122023ff.png そんなある日の邸宅内コンサートに、新聞記者と前衛的な挿絵画家、この二人の若者が密かに忍び込みます。
 そして彼らはマルグリットの圧倒的奇声に遭遇しぶったまげるわけです。特に画家は彼女を絶賛します。そして新聞記事になりました。
 つまり、夫が関係者に口外禁止にしていたマルグリットの奇声が、世間にばれてしまいました。

 さて、このシーンを導入に、映画はマルグリットの奔放さを語り始めます。
 挿絵画家はモンパルナスあたりの芸術家たち自由人の一人なのでしょうか、前衛急進的な反体制派の男です。
 この画家に誘われるままに、彼女は夜の街でジャズが流れる当時最先端のとんがった店で踊ります。(マルグリットの音楽的感性 下記)
 1人で夜の街にいること自体が初体験のマルグリットは、大いに開放感を味わいます。一人遊びに飽いたもう一人のマルグリットなのでしょうか。

2-2_20171013212350e40.png 画家が主催するアバンギャルドな催しに、マルグリットが出演し店は大騒動になり、その内容が反体制的であったことから、画家もマルグリットも警察に連行されてしまいます。世間は彼女のことをますます知ることになりました。
 画家はマルグリットに歌の先生を紹介します。そして、マルグリットは大劇場でリサイタルを開くことになります・・。

 話は飛んで、物語の結末は精神病棟でした。そこで何が行われようとするのか・・・これも観てのお楽しみ、いや悲しみましょう。 
 マルグリットを本当に思いやるのは、マルグリットの生きざまをフィルムに収めることに執心する執事と、皮肉なことに夫の不倫相手の女だけでした。

 観終わって残念なことは、脚本上、マルグリットの夫の人物描写が弱いこと。
 音痴の歌手というヒントは実話から得たようです。その人物とはアメリカのソプラノ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンス(1868-1944)という女性。歌唱能力が完全に欠落していたそうです。現在でもこの歌手のCDがあります。
 参考wikipediaサイト https://ja.wikipedia.org/wiki/フローレンス・フォスター・ジェンキンス
 なお、メリル・ストリープ主演映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」(2016年)は未見。

 ★先天性失音楽症による歌唱能力の欠如とは 参考サイト 「脳の活動によって音から音楽になる」 
  http://music-specialty.com/musicology/brain-activity.html

 ★マルグリットの音楽的感性について
  歌唱能力欠如のマルグリットですが、音楽を聴く感性は鋭いようです。
  画家に紹介されて彼女はひとりで前衛オペラ「道化師」を見に行き、いたく感銘を受けます。
  ちなみにこの音楽会会場にはプロのサクラ手配師がいて10人のサクラが拍手やブラボーを叫んでいます。
  「現代歌曲は人気がないので」と言う小人症の手配師の言が印象的です。
 
オリジナルタイトル:MARGUERITE|
監督:グザヴィエ・ジャノリ|フランス|2015年|129分|
脚本・脚色:グザヴィエ・ジャノリ|脚本協力:マルシア・ロマーノ|撮影:グリン・スピーカート|
出演:マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)|ジョルジュ・デュモン(アンドレ・マルコン)|アトスペッジーニ(ミシェル・フォー)|アゼル(クリスタ・テレ)|マデルボス(デニス・ムプンガ)|リュシアンボーモン(シルヴァン・デュエード)|キルフォンプリースト(オベール・フェノワ)|フェリシテ(ソフィア・ルブット)|ディエゴ(テオ・チョルビ)|ほか

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映画「女と男のいる舗道」 監督:ジャン=リュック・ゴダール

上


1-0_20171010213421399.jpg ナナを演じる女優アンナ・カリーナが、映画全編84分間、ずっと出ずっぱりの映画です。
 総じてセリフの少ない中、加えてあっさりした演出のもと、アンナ・カリーナの存在の味が、この映画のイメージを決定しています。
 カメラは、いつもアンナ・カリーナに寄り添いながらも、彼女の存在感に頼ることなく、素晴らしい撮影を実現しています。
 スチールカメラ撮影での、しっかりした構図力が基本にないと、こういう映像は撮れないように思います。(他にあるようで、なかなか無いものです)

 舞台はパリ。子持ちのナナは子を置いて離婚し、女優を目指すが現実はレコードショップの店員をして、しがない独り身人生を送っている。しかし、パリでの生活には薄給のナナ。結局、娼婦の道を歩むことになります。

 映画は12の章で成り立っています。
 ストーリーは12章を通して展開されますが、各章はそれぞれに異なるモチーフを持って語ります。
 全編を終始一本の話で描く映画では、時に、どこかに冗長なシーンが入りがちですが、本作の作りはそういうことが入る隙はなく、緻密さが印象に残ります。
 
 2階のビリヤード場で、ジュークボックスから流れるロックンロールで、ひとり踊るナナのシーンがいいです。
 話は悲しい話ですが、重く暗くならずドライ。映像はとてもスタイリッシュ。
 ゴダールの作だからと、かたく構えず肩の力を抜いて自分の目で楽しく観ましょう。
 

オリジナル・タイトル:Vivre sa vie: Film en douze tableaux|自分の人生を生きる、12のタブローに描かれた映画|
監督:ジャン=リュック・ゴダール|フランス|1962年|84分|
原作:マルセル・サコット|脚本:ジャン=リュック・ゴダール|撮影:ラウール・クタール|音楽:ミシェル・ルグラン|
出演:ナナ(アンナ・カリーナ)|ラウール(サディ・レボ)|ポール(アンドレ・ラバルト)|イヴェット(ギレーヌ・シュランベルジェ)|ほか

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【 ゴダールの映画 】

いままでに取り上げた作品です。画像をクリックしてお読みください。
写真
「アルファヴィル」
写真
「勝手にしやがれ」
写真
「小さな兵隊」

映画「ラスト・ショー」  監督:ピーター・ボグダノヴィッチ

上
ソニー、デュアンとジェイシー


 1951年、アメリカはテキサス、白人だけのさびれた小さな田舎町。
 映画は、この町に住む高校生たちの恋、友情を描くとともに、高校を卒業し社会へ出ていく道筋の、それぞれの選択を見守って描いています。

1-0_20171009135756d7d.jpg その町は、町と言えるほどの町じゃない。
 広い道路の両側にところどころに店があるだけ。
 ハンバーガーにコーヒー等わずかなメニューしかないレストラン、いや食堂、小さなビリヤードの店、そのほかに開いている店舗はガソリンスタンドに薬局くらい。閉館を迎えそうな映画館はある。

 この町で、高校生ソニーが相当にくたびれたボロ車に乗り込んで映画は始まる。
 町の広い道路の真ん中で、無心にホウキで道を掃くビリーは、知的障害のある少年で、ソニーは何かと彼の面倒を見てやっている。
 中年の男サムは食堂とビリヤード場のあるじ、この辺りじゃ皆から一目置かれる男で、気が合うのか、ソニーとビリーの世話を親代わりのようにしている。
 食堂を一人で切り盛りする中年女性は、後で分かるがサムの昔の恋人、彼女に町の情報が集まる。

2-0_20171009135925594.jpg 映画館は、唯一の娯楽の場で、高校生たちは友達同士やデートに使っている。ビリーも常連だ。
 そして、この地域には油田があって掘り当てた人間は金持ちだ。人々の間に貧富の差がある。

 映画はこんな設定を背景に、ソニーとその同級生たちの様子を語ります。
 ソニーの友達デュアンは高校一の美人ジェイシーと付き合っている。
 ジェイシーの家は油田で裕福。母親は娘の彼氏が誰かを気にする。貧乏な家のデュアンじゃなく、油田開発で当てた家の、金持ちの彼氏にしなさいと言う。
 この母親は結構さばけた女で、あからさまに娘に注意忠告する内容が、娘の行動を左右し、結果、物語の先行きを変えていく。そして、デュアンの未練は後を引く。

 ジェイシーに突然ふられたデュアンは、高校卒業後、町を離れ油田の現場で働く。貯めた金で車を買う。それはジェイシーの気を引こうとするかのようだった。

3-0 ソニーは高校時代の彼女と別れ、サムのビリヤード場で働いている。町を離れたデュアンは、ジェイシーがソニーと付き合いださないか気にしているようだ。
 だが、ソニーはふとした切っ掛けで中年の女と関係を持つようになる。
 そんな頃、気まぐれなジェイシーはソニーに近づき始めるが・・。

 小さな町の男女の関係を映画は見せていくが、どこかうら悲しい。
 そして、サムの突然の死。彼の遺言でソニーはビリヤード店をもらうことになる。
 ジェイシーは朝鮮戦争の戦線へ。ビリーは交通事故死。


 印象に残るのは、高校生の青春よりも、ジェイシーの気まぐれを繰るかのようなジェイシーの母親、ソニーが付き合う年上の女、サムの昔の恋人で食堂の女の3人かもしれない。
 
4-0






オリジナルタイトル:The Last Picture Show|
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ|アメリカ|1971年|118分|
原作:ラリー・マクマートリー|脚色:ラリー・マクマートリー 、 ピーター・ボグダノヴィッチ|撮影:ロバート・サーティース|
出演:ソニー(ティモシー・ボトムズ)|デュアン(ジェフ・ブリッジス)|ジェイシー(シビル・シェパード)|サム(ベン・ジョンソン)|ルース(クロリス・リーチマン)|ビリー(サム・ボトムズ)|ジェイシーの母・ロイス(エレン・バースティン)|ほか




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映画「ひつじ村の兄弟」 アイスランド映画 監督:グリームル・ハゥコーナルソン

上


 アイスランドの草原でヒツジを飼育する、仲の悪い兄弟の話。
 映画は、この兄弟の生きざまを、雄大な風景と寒冷地の気候で包み込む。

1-0_20171002092727d46.jpg 兄弟はともに独身で、親から譲り受けた広大な土地に建つ、二軒の家に別れて住んでいる。
 ヒツジ小屋も牧草地も牧羊犬も車も、そのすべてが別々。牧草地の境界線には有刺鉄線の柵がある。

 映画はこの兄弟の弟を中心に話をすすめる。
 それにしても、なぜ40年も、互いにまともな会話をしないで過ごしてきたのか。
 それはどうも相続問題のようだ。
 親は、ヒツジと所有地のすべてを弟に譲ったらしい。そこで優しい弟は、兄のための牧草地とヒツジ、そして古いほうの家を、兄に無償で貸すことにした。
 だが、こういうことのすべてが兄を怒らせ、弟を憎むようになり、よって弟も兄を憎むことになった。


 そんなある日、重大事件が起きる。
 ヒツジの疫病が発覚し、兄弟のヒツジ含め近隣の牧畜農家のヒツジの全部が殺処分の対象となった。
 この地域の人々はみなヒツジの飼育で生活しているのだ。みな困惑した。悩みに悩んで土地を離れる一家も現れる。この先のローンの返済ができないからだ。
 
 強情っ張りの性格は、兄だけでなく大人しそうな弟にも、その血を引いているようだ。
 弟は100頭以上の殺処分を当局に任さず自ら行った。
 なぜなら、殺処分しなかった9頭のヒツジを、獣医当局の監視の目をくぐって家の地下室に隠したのだ。先祖代々のヒツジの血統を守りたいのだ。(このヒツジたちには疫病の様子はないようだ)

 これに気づいた兄は弟に近づいた。兄も、血統を守りたいのだった。
 しかし全頭殺処分の方針を決めた当局がこれを嗅ぎつけた。
 兄弟は9頭のヒツジと牧羊犬を連れて、誰も近づかない冬の山へと向かった。兄弟は初めて力を合わすことになった。
 だが、吹雪のなか、二人はヒツジを見失う。吹雪は容赦なく激しさを増す。
 兄弟は雪穴を掘って中に横たわり、互いに身体を暖め合い、吹雪をやり過ごそうとするのであった。

下

オリジナルタイトル:HRÚTAR|
監督・脚本:グリームル・ハゥコーナルソン|アイスランド、デンマーク|2015年|93分|
撮影:ストゥルラ・ブラント・グロヴレン
出演:グミー(シグルヅル・シグルヨンソン)|キディー(テオドル・ユーリウソン)|当局の獣医カトリン(シャーロッテ・ボーヴィング)|ほか

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映画「マダム・マロリーと魔法のスパイス」 監督:ラッセ・ハルストレム

上2
開店の夜


 気楽に観れる娯楽映画です。
 インド料理を生業とする移民の一家が、フランスの片田舎でレストランを開業する話。二つの愛が芽生えます。

1-0_20170925200941f73.jpg インドで一家は料理屋を営んでいた。
 店は母親が料理し、父親がマネジメントする繁盛店だったが、地元の選挙陣営対立の中、反対陣営を支援する人々によって店が焼き打ちに合い、不幸なことにこの時、一家は母親を亡くし、その地を追われた。
 故国を捨てた一家(父と息子、娘夫婦に2人の子供)は、旧宗主国イギリスへ渡ったが商売がうまく行かず、またイギリスでは良い食材が手に入らずこの地を諦めた。そののちレストラン開業の新たな場所を求めて、一家は今度はヨーロッパ大陸へと向かった。
 
 祖国を離れ西欧のどこかの国でインド料理レストランを開業したいという父親の思いは、父親が息子のハッサンの料理に一目も二目も置いているからこそであった。
 なぜなら、ハッサンは母親の血を受け継いで味覚が鋭く、子供のころから母親に料理を教わっていた。ハッサンも母の教えのすべてを吸収していたのだった。

 一家六人を乗せて車は開業する適地を求め諸国を走った。そしてある日、フランスのある片田舎の町を通りかかる。
 ここで父親は、廃屋に近い一軒の家の前でひらめいた。ここで始めよう。そこは元レストランであった。

 開店の準備が進む中、発覚したことは、道向かいのフランス料理レストランがミシュラン一つ星の店であること。(お話は都合よくできています)
 このレストランのあるじは、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)といい、夫を亡くし自らが女将となって、毎年一つ星を勝ち取っている女性。

2-0_20170925201118f82.jpg さていよいよ開店。100フィートしかはなれていない、道のこっちと向こうだから、一つ星の店にカレーの匂いが流れていく。
 (原題はTHE HUNDRED-FOOT JOURNEY(100フィートの旅))

 マダム・マロリーは勝気のうえにイケズな女。向かいの店の邪魔をする。ハッサンの父も対抗意識を燃やす。
 そんなうちに、インド料理レストランにやっと客が付き始める。
 美味しいのだ!

 ハッサンはマダム・マロリーの店の女性マルグリットと仲良くなっていた。ともに料理人だ。
 ハッサンに貸したフランス料理本をもとに、ハッサンが初めて作ったソースにマルグリットは唸った。そして愛は深まる。

 マダム・マロリーの店のシェフが、深夜、ハッサンの店の石垣に大きな落書きをした。このシェフは移民を蔑視する男であった。
 これにマダム・マロリーが怒り、即座に彼を首にした。
 そして、後釜になんとハッサンを起用する。実はハッサンが素晴らしい料理人であることをマダムは見抜いていたのだ。

 もちろん、短いが修行(下働き)期間を経て、ハッサンは正式にシェフとなる。そうしてその年、店はミシュラン二つ星を獲得するに至る。 
 このころになって、マダムとハッサンの父親の距離が縮まっていった。

 さて、フランスの飲食業界で名をはせたハッサンは、パリの三ツ星高級レストランに引き抜かれる。
 ハッサンは、新進気鋭の若手シェフとしてパリで最新のメニューを次々に編み出し、有名人となった。
 しかし時が経つうちに、ハッサンの心に空洞ができていく。私はインド人、母から教えられたインド料理のその先を極めたい。
 ハッサンは父親の店に帰り、マルグリットとよりを戻し、ふたりで新たなレストランを開業することにした。
 私はここで三ツ星を狙うと・・。
 
オリジナルタイトル:THE HUNDRED-FOOT JOURNEY(100フィートの旅)|
監督:ラッセ・ハルストレム|アメリカ|2014年|122分|
原作:リチャード・C.モライス|脚本:スティーヴン・ナイト|撮影:リヌス・サンドグレン|
出演:マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)|パパ(オム・プリ)|ハッサン(マニッシュ・ダヤル)|マルグリット(シャルロット・ルボン)|市長(ミシェル・ブラン)|マンスール(アミット・シャー)|ジャン=ピエール(クレマン・シボニー)|ポール(ヴァンサン・エルバズ)|トーマス(アントワン・ブランクエフォート)|

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映画「クスクス粒の秘密」 フランス映画 監督:アブデラティフ・ケシシュ

上2










 「クスクス粒の秘密」という題名から、印象としてファンタジックな映画に思われるかもしれないが、そうじゃない。
 フランス南部の港町(セット Sète)に住むチュニジア系移民一世とその子たちの話です。

 総じて、話のタッチは重くなく、比較的軽いですが、「人生、そうそう上手くは行かない」と映画は言っています。しかし、人々はそんな人生をなんとか受け入れ、日々を過ごしています。

 そして、彼らのそんな様子は(傍から見る人には)、時に滑稽じみた様にみえることもあると映画は言っています。


1-0_20170918141944b2f.jpg
 冒頭のいくつかのシーンで映画は、主な登場人物の境遇と人間関係をみせます。
 それは同時に、この港町の現状を語っています。(中小造船業の斜陽、港の漁業の衰退、観光業へのシフト。)

 港のドックで働くスリマーヌは小型船の造船・修理のベテラン、御年60歳でチュニジア系移民一世。実直で無口な男。
 彼の子は4人いて、息子が2人に娘が2人、みな二世。長男長女は既婚。しかし、チュニジア系移民一世の妻スアドとは離婚している。 

 スアドは、チュニジアの伝統料理クスクス((粒状のパスタ))が得意なBIG MAMA。
 子たちとその伴侶や孫たちは母親の家に集って、おふくろの味・クスクスを食べることを楽しみにしている。
 子たちの伴侶はフランス人とロシア人ですが、みな、とても美味しいクスクスが好き。
 しかし、その席にスリマーヌはいない。

2-0_20170918143612705.jpg スリマーヌは愛人ラティファと暮らしている。ラティファもチュニジア系一世だ。
 彼女は小さなホテルと付随するバーを買い取って生計を立てている。そして、ラティファの一人娘リムが母親を手伝っている。リムは20歳で二世。

 スリマーヌはホテルの狭い空き部屋に住んでいる。居候だ。
 ラティファとリムの母娘もホテルの一室を住居としている。
 くわえて、チュニジアの民族音楽バンドの老メンバーも住んでいる。彼らはバーで演奏し生活している。


 さて、こんなシチュエーションをもとに、物語は展開します。
 長年勤めた職場をリストラで追われたスリマーヌは、廃船間際の船を買って船上レストランを始めようと考えます。
 世事に疎いスリマーヌは、リムの助けを借り、資金の手配や役所への諸手続きを始めます。しかし、レストラン経験もなく手元資金もなく、よって信用がありません。でも、船の修理技術はあるスリマーヌは、船の改装だけは済ませました。

 ちなみにこのレストランの売りは、クスクス。
 そうです、スリマーヌは元妻のスアドをコック長にしようという算段。この段で、愛人ラティファはソッポを向きっぱなし。

 信用が容易に得られないと分かったスリマーヌとリムは、お役人や仲間を呼んで、とても美味しいクスクスの船上パーティを企てます。
 バンドのメンバーは、ギャラは出世払いでいいとして、演奏を買って出ます。
 そして彼の息子・娘4人とその伴侶も、このパーティ準備を手伝います。もちろん、前菜やクスクス料理はスアドが作ります。(船にはまだ厨房がありません、スアドは自宅で料理しました)
 彼女はこれまでも、誰かの結婚パーティなどで大量の料理経験はあるのです。準備万端。

 いよいよ、客が船に集まります。酒が出て前菜が出て演奏が始まり、パーティは賑やかに盛り上がります。
 時間を見計らい、スリマーヌの長男次男が車で自宅に戻り、スアドが作った各種のクスクス料理を取りに行きます。そして、いくつかの大鍋を船上に持ち込みました。

 だが、ここで問題が起きます。
 何が問題かというと、長男の浮気相手の女性がパーティに来ていたのを長男が気づき、やばいということで、彼は密かに会場を抜け出し、車でどこかに逃げてしまいます。
 ですが、肝心要のクスクス(粒状のパスタ)を蒸した鍋が、まだ長男の車のトランクの中! これだけを運び出し忘れていたのです。

 事態を知ったスリマーヌはじめ皆は顔面蒼白、もう呆然としています。一方、客たちは、クスクス料理が出てこないことにいら立ち始めます。
 そこへ、ラティファとリムの母娘が客として遅れてやってきました。リムは嫌がる母親を説き伏せてやっとのことで連れて来たのです。なにしろ愛人ですから、この場にそぐわない。(一方、スアドも会場には来ていません)

 お話はここに来て頂点に差し掛かります。急いで話の先を言えば結果的に、ラティファとリムは救世主でした。大活躍!
 かたや、要のスリマーヌはというと、会場を後にして長男を探しに行きますが、彼の混乱ぶりは悪夢のシーンにありがちな展開に・・。(このシーンは冗長ですがご愛敬でみてください)

tunisia-map1.jpg 映画の中で聴こえて来るチュニジア民族音楽バンドが奏でる魅惑的なサウンド、これが流れることで、このフランス映画がチュニジア映画風に観えてきます。お楽しみください。(監督の出自はチュニジアとのこと)

 映画の出来具合については、2013年製作作品「アデル、ブルーは熱い色」の方が、エッジが効いていて、ずっと良い。 

オリジナルタイトル:La graine et le mulet|
監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2007年|135分|
出演:スリマーヌ(アビブ・ブファール)|リム(アフシア・エルジ)|上の娘カリマ(ファリダ・バンケタッシュ)|愛人ラティファ(アティカ・カラウイ)|長男の嫁でロシア人のジュリア(アリス・ユーリ)|下の娘オルファ(サブリナ・オアザニ)|元妻スアド(ブラウイア・マルズーク)|ほか

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映画「夏をゆく人々」 イタリア映画 監督:アリーチェ・ロルヴァケル

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長女ジェルソミーナ、多感な年ごろ


 イタリア半島の中ほどにある大きな湖、この湖畔に住む家族のお話。

1-0_201709151404336b7.jpg 湖周辺の広々とした草原、ここで一家7人は養蜂で生計を立てている。
 でも、男手は父さんだけで、母さんとその子4人姉妹と居候のおばさんの、女6人の家。
 そのうえ、長女ジェルソミーナの下の娘たちは、まだ幼い。

 ミツバチの箱を運んだり、遠心分離機で蜂蜜を抽出したり、バケツに一杯になった蜂蜜を運んだりと、力仕事はたくさんある。
 だから、父さんは女手しかいないことで、いつもイライラしている。(そして家族に対して、しょっちゅうワンマンなふるまい)

 そんな父親をみて、ジェルソミーナは懸命に養蜂の仕事をこなしている。口にこそ出さないが、父親も長女のそんな様子を力強く思っている。

 ある日、無口な少年が少年院からこの家にやって来た。父親は、少年の更生のためのプログラムを利用して男手を手に入れたのだ。家に住み込みで仕事を手伝うことになった。

 自然に優しい農業・畜産・養蜂家などを対象にしたコンクールがテレビ局の主催で開催されるという。
 このことを知ったジェルソミーナは密かにコンクールに応募した。よそ者を嫌う父親は、こういうことには絶対反対することを彼女は知っていました。

 さあ、さて、ここら辺りから物語は思わぬ展開をし始めます。
 話の筋のその先を急いで追う姿勢では、この映画は楽しめません。ゆったりした気分で観ましょう。
 主人公のジェルソミーナ役の女性の、楚々とした雰囲気がいいです。プロの俳優じゃないようです。映画はこのジェルソミーナの存在感で成り立っています。

 父親は家族の中ではワンマンですが、世間に対しては自閉的な男です。
 そんな彼ですが、男手が欲しいがためによそ者の少年を家に迎え入れました。
 一方、ジェルソミーナはそろそろ大人の女になろうとしています。自分の意志でコンクールに応募したように、ジェルソミーナの意識は田舎の一軒家から世間に出ていこうとしています。そんな彼女と彼女の恋を母親も叔母も応援します。

 
 映画の後半ぐらいから、「エトルリア」「エトルリア人」という言葉が出てきます。
 この一家の住む地域は、エトルリアという、紀元前8世紀~紀元前1世紀ごろにイタリア半島中部にあった都市国家群があった場所。
 映画は、そんな歴史の謎めいた不思議さをバックグラウンドに秘めているようです。(それは例えば、この一家の家のそばにロケに来た女優さんの姿を借りて・・)
 

オリジナルタイトル:LE MERAVIGLIE|
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル|イタリア スイス ドイツ|2014年|111分|
撮影:エレーヌ・ルヴァール|
出演:ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)|アンジェリカ(アルバ・ロルヴァケル)|ウルフガング(サム・ルーウィック)|ココ(ザビーネ・ティモテオ)|ミリーカテナ(モニカ・ベルッチ)|アドリアン(アンドレ・M・ヘンニック)|少年更生係イルデ(マルガレーテ・ティーゼル)|ほか

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映画「青いドレスの女」 監督:カール・フランクリン

上
 映画冒頭は、こんなイラストと、T-ボーン・ウォーカーの歌うブルースで始まる。


1-0_201709071744482a8.jpg 原作は推理小説。(黒人の私立探偵小説「イージー・ローリンズ」シリーズの第1作を映画化)
 最近は少なくなってしまった、黒人が主体の映画。(1995年制作)

 時代は1948年、場所はロサンゼルス。
 黒人差別は当然の時代。(公民権運動が本格的に動き出すのは1950年代半ば頃から)

 第二次世界大戦で欧州戦線(黒人部隊)を経験した主人公の黒人青年イージーは、戦後、兵役経験を活かし機械工として造船所や航空機メンテ工場で働いていた。
 イージーは真面目な青年だ。勤め先では社員として勤務。それ故に、黒人ではあるが一定の社会的信頼を得ていた。
 つまり住宅ローンが組めて、(黒人だけの)戸建住宅街に一軒家を持ち、粋な車も持っていた。優雅な独身生活であった。

 しかし、突然の解雇。職探しを始めるが、まともな勤め先がみつからない。ローン返済が滞る。
 そんな折、行きつけのバーのあるじジョッピーから、オルブライトという怪しげな白人の男を紹介される。
 オルブライトはイージーに、ある白人女を探してほしいと札束をちらつかせる。切羽詰まっていたイージーはこの話に乗った。

 話は、市長選挙が絡む。
 ロスの富豪トッド・カーターと、対抗馬のマシュー・テレルという二人の白人が立候補を表明していた。
 ところがカーターは突然、自ら立候補を取り下げた。
 カーターが愛し婚約者となった女性に、「ある問題」があることが発覚し、彼の周囲はカーターに婚約破棄を迫った。その結果、カーターは出馬の意欲も無くなり、失意に沈んでしまったのだった。
 一方のマシュー・テレルは押しの強い男だが、密かなある弱点を持っていた。
  
 イージーは、白人女探しに、市長選挙が絡むこんな背景があるとは知る由も無かった。
 いざイージーが動き始めると、彼の行く先々で殺人現場に遭遇する。警察に連行される。
 そして、彼が探す白人女性、(青いドレスの女)ダフネがイージーの前に現れた。
 彼女はマシュー・テレルの弱みを握っているらしい・・なぜ。
 イージーが足で知り得た事柄が、次の謎を解き明かすことになり、イージーの身の危険は増していく。
 そもそも、カーターの婚約者の「ある問題」とは何?、婚約者は誰?、マシュー・テレルの弱みとは?
 
 昨今のアメリカをみていると、こんな黒人主体の映画はもう製作されないかもしれない。

 総じて、描き切れていない大雑把さのある映画だが、娯楽映画ですからね。
 でも挿入音楽がいいです。
 映画冒頭、のっけからT-ボーンのブルースが流れて、私はノックアウト。
 この映画に取りあげられた主なミュージシャンは、往年のモダンブルースシンガーのT-ボーン・ウォーカー、ピー・ウィー・クレイトンや、ビッグバンドをバックにして歌うジャンプブルースシンガーのジミー・ウィザースプーン、ロイ・ブラウンなどなど、そしてデューク・エリントンも。
 サウンドトラック情報:http://www.allmusic.com/album/devil-in-a-blue-dress-sony-mw0000176104

オリジナルタイトル:Devil in a Blue Dress|
監督・脚本:カール・フランクリン|アメリカ|1995年|102分|
原作:ウォルター・モズレイ|撮影:タク・フジモト|
出演:イージーこと、エゼキエル・ローリンズ(デンゼル・ワシントン)|青いドレスの女・ダフネ・モネ(ジェニファー・ビールス)|イージーの親友で殺人が得意なケンカの助っ人・マウス・アレクサンダー(ドン・チードル)|バーのオヤジでイージーの友人・ジョッピー(メル・ウィンクラー)|ロス一番の富豪の白人、ダフネを愛するトッド・カーター(テリー・キニー)|カーターと市長選挙を争う白人、他人に言えない秘密を持つ男マシュー・テレル(モーリー・チェイキン)|ジョッピーがイージーに紹介した白人でマシュー・テレルに雇われる男ドウィット・オルブライト(トム・サイズモア)|ダフネの親友・コレッタ・ジェームズ( リサ・ニコル・カールソン)|コレッタの彼氏、イージーの知り合いデュプリー・ブロチャード(ジャーナード・バークス)|ほか

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映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」 監督:セオドア・メルフィ

上


1-0_201709061020036f5.jpg 70歳の頑固ジジイと、12歳の孤独な少年のお話。
 この映画、若い方には少年モノ映画に観えるかも知れないが、年配にはいささかビターな喜劇映画に観えるかも知れない。 

 頑固で人の話を聞かない人嫌いなジジイ、ヴィンセント(ビル・マーレイ)は、二十歳代の頃にはベトナム戦線を経験した世代。
 今は、白人中産階級(中の下)が住む住宅街の中の、小さな一軒家で一人暮らしだ。(子はいないようだ)

 ヴィンセントの楽しみは、安酒とタバコとTVそして、行きつけの店の踊り子・ダカと時々の有料セックス。
 暮らしは決して豊かじゃない、いや苦しい。無職の上に、自宅を抵当に入れての生活資金は底をつき、借りちゃいけない所から金を借りている。
 彼のお金はどこへ消えるのか? それは、今も最愛の妻サンディを預けている上等な介護施設。妻は重度の認知症なのだ。そして、この施設への払いが滞っている。

 そんなある日、ヴィンセントの隣家にマギーとその1人息子オリバーが越してきた。
 マギーは病院のMRI検査技師。夫は弁護士だが、この夫の度重なる浮気が原因で夫婦関係は破たん、今、オリバーの親権をめぐって離婚調停中。子供の奪い合いを避け、マギーはオリバーを連れて越してきた。(子は養子らしい)

 オリバーは12歳にしちゃ小柄。転校生への学内いじめ、母親の長時間勤務やらで、オリバーは一人ぼっち。
 「結果的に」これを救ったのが、人嫌いな隣人ヴィンセント。いいウチの子に育ったひ弱なオリバーは、おやじの塊みたいなジジイに世間を教わることになる。(競馬場、バー、娼婦、ケンカの仕方、悪い言葉など)

 これは、ヴィンセントから見れば、転がり込んで来たベビーシッターという時給稼ぎだった。
 マギーから見ればヴィンセントは、隣家のベビーシッターで便利な反面、ウチの子をワルに染め上げるジジイ。
 オリバーにとっては、初めは近寄りがたい偏屈ジジイだったが、いつの間にか仲良くなり、最後には「St.VINCENT」と褒め称える。

 話は、脳溢血によるヴィンセントの緊急入院・リハビリや、妻のいる介護施設からの料金不払いによる退去勧告や妻の死、オリバーの親権騒動の結末、踊り子のダカの嬉しい出産などのエピソードが絡んで行く。

 オリバーが学内発表で、ヴィンセントを聖人と褒めるシーンは、あまりにもアメリカ映画的感動シーンに仕立て上げられていて白けるが、これは、映画の結末のヴィンセントのうら悲しい境遇を考えると、プラスマイナスのバランスをとっての配慮とみておこう。
オリジナルタイトル:St.VINCENT|
監督・脚本:セオドア・メルフィ|アメリカ|2014年|102分|
撮影:ジョン・リンドレイ
出演:ヴィンセント(ビル・マーレイ)|オリバー(ジェイデン・リーベラー)|その母親マギー(メリッサ・マッカーシー)|ヴィンセントの有料彼女・ダカ(ナオミ・ワッツ)|ヴィンセントの妻サンディ(ドナ・ミッチェル)|ほか

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映画「カフェ・ブダペスト」 ハンガリー映画 監督:フェテケ・イボヤ

上
歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジム。ブダペストの街角にて。

1-0_20170901122232caf.png
 時は1990年、ソ連崩壊(1991年)の前年。
 祖国ソ連を離れ、開かれた東欧ハンガリーへと旅立ったロシア人の男たちの物語。

  映画冒頭のナレーションより…(本作は1995年製作)
  当時の気分を語るのは難しい。あり得ないことが突如 起きたのだ。
  ハンガリーが西側に扉を開いたのを契機に、すべてが急速に進行した。
  東欧が幸福に酔ったあの日々、忘れ得ぬ時代。
  そしてついにハンガリーからソ連軍撤退。
  (ところが)今度は別のロシア人がやって来た。西側を目指し、その入り口、ハンガリーに人々が押し寄せたのだ。
 (下記|1989年の出来事)
 
 2人のロシア人ミュージシャン、歌とギターのユーラと、サックス吹きのワジムが、ハンガリーのブダペストへたどり着く。(※※下記|2人の経路)

2‐0 (ユーラが歌う)
  ♪さあ 旅立とう 歌を道連れに
  ステンカ・ラージンは もう十分歌われた
  新時代の俺たちは そんなの歌わない。
  直立不動で大声で 一体何を歌ってる
  共産主義の歌なんて もう うんざり …
 (ユーラ役の俳優は、ロシア出身のシンガーソングライター)

 機械工をしていた若いロシア人のセルゲイも、西側諸国を目指して、まずはブダペストにたどり着く。
 このようにして当時、既にブダペストには、祖国ソ連を脱出した人々の他に、少々危ない商売をする出稼ぎ組や、自身の人生を捨てた破滅型の放浪人など、様々なロシア人たちが滞留していた。
 また、そんなロシア人を相手に宿を提供するブダペストの人、フリーマーケットでロシア人を鴨にする人など、様々なハンガリー人がいた。
 加えて、東方諸国の解放とソ連国内の混乱に乗じて、ロシア系犯罪組織がブダペストへも進出して来て、表のフリーマーケットや裏のヤミ市で、恐喝とブローカーの動きを見せ始めていた。

下


 一方、こんな東欧に対し、冒険心とある種のロマンを抱いてブダペストに来る西側の人々もいて、映画は2人の女性を登場させて、恋を語り物語を彩る。
 それはイギリス人のマギーと、アメリカ人のスーザンだ。
 ひょうきんで明るいユーラはマギーと出会い、サックスのメロディがかっこいいワジムはスーザンと出会う。
 真面目な青年セルゲイは、泊まった宿のハンガリー人の女将(年上の独身女性)の世話になる。



 この映画、誰が主人公かと言えば、ユーラが歌うメロディとその歌詞だろう。
 ユーラ役のロシア出身のシンガーソングライター、ユーリ・フォミチェフという人の歌が、映画の各所で流れる。これが素晴らしい。
 ロシア由来かな、独特のうら悲しさと、その反面の楽しさを合わせ持つ音楽だ。西側のブルース音楽の領域とは別世界。

 映画は、当時のブダペストを活写し、時代の変わり目を、重くせずにすっきりと饒舌に語っている。いい映画だ。  

 このお話の時代のあと、ロシアは西側諸国と共に生きていくはずだったが、いつの間にかプーチンの国となっている。
 また、東欧の人々は職を求めて西側に移って行く。東欧諸国も我先にEUに加盟した。そして今、今度はEU離脱を考えている国がある。
1989年の東欧の出来事
 1989年5月2日 - ハンガリー政府がオーストリアとの国境にある鉄条網の撤去に着手。鉄のカーテンが破られる。
 同年6月 - ポーランドで、自由選挙実施。非労働党政党「連帯」が上院過半数を占める。東欧革命のさきがけ。
 同年8月19日 - ハンガリーで汎ヨーロッパ・ピクニックが開催、約600人の東ドイツ市民がオーストリア経由で西ドイツへ亡命。
 同年10月7日 - ハンガリー社会主義労働者党、ハンガリー社会党への改組を決定し、一党独裁政党としての歴史に終止符を打つ。
 同年10月17日 - 東ドイツで強権的な政治を行っていたエーリッヒ・ホーネッカー・ドイツ社会主義統一党書記長の書記長解任が党政治局で決議され、ホーネッカーが失脚。
 同年11月9日 - 東ドイツがベルリンの壁の通行を自由化。
 同年11月10日 - ベルリンの壁崩壊。
        ブルガリアで共産党書記長のトドル・ジフコフが失脚。これを機にブルガリアでも民主化が始まる。
 同年11月24日 - チェコスロバキアビロード革命。共産党政権が崩壊。
 同年12月1日 - 東ドイツで憲法が改正され、ドイツ社会主義統一党(SED)による国家の指導条項が削除される。SEDの一党独裁制が終焉。
 同年12月22日 - ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権崩壊(ルーマニア革命)。

3-1_20170901123010e01.png※※2人の経路
 時は1990年。ユーラとワジムは、ロシア人バンドのメンバーで、ユーゴで行われるコンサート会場へ、バンド専用バスで向かっていた。このバンドのバスの経路に注目。
 当初、ソ連・ハンガリー国境に到着するが、検問で拒否され越境できず迂回することになる。
 まずはソ連・チェコ国境を通過、次にチェコ・ハンガリー国境を通過し、ハンガリー・ユーゴ国境を越えようとした。(リアルな描写)
 ところがここで、2人はバスを降り、バンド仲間から分かれてブダペストにたどり着く。
オリジナルタイトル:BOLSE VITA|
監督・脚本:フェテケ・イボヤ|ハンガリー、ドイツ|1995年|101分|
撮影:サライ・アンドラーシュ|
出演:ギター弾きのユーラ(ユーリ・フォミチェフ)|サックス吹きのワジム(イーゴリ・チェルニエヴィッチ)|機械工のセルゲイ(アレクセイ・セレブリャコフ)|イギリス女性・マギー(ヘレン・バクセンデール)|米国人女性・スーザン(キャロリン・リンケ)|外人向けの宿の女将・エルジ(マール・アーグネシュ)|ほか

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映画「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」 監督:ロベール・ブレッソン

上






1-0_201708271317238f3.jpg













 フランス軍人の手記をもとに監督自ら脚本を書いた、脱獄する男の一部始終を描くサスペンス映画。

 舞台はリヨンにあるモントリュック監獄の独房、時は1943年。

 その前年、ナチスドイツは南フランスへ進軍し地域を占領、リヨンはドイツ軍やその治安部隊の街となっていた。
 翌1943年6月、レジスタンス運動の中心人物が逮捕、虐殺されるなど、ナチスドイツによるレジスタンス撲滅が一気に進んで行った。

 その頃だろう、映画の主人公フォンテーヌ中尉も逮捕され拷問を受け、独房に入れられた。
 監獄の中庭では、毎日のように銃殺刑の執行が進む。
 中尉は入獄後、時を置かず脱獄を決意し、獄中のレジスタンスらによる密かな協力を得て、獄中で得られるわずかなもので脱獄のための準備を始める。
 そんなある日、獄中のレジスタンスの一人が脱獄を試みたが失敗し処刑されてしまう。しかし中尉にとっては、彼の失敗が自分の脱獄手法の改善を図るきっかけとなった。
 そして、中尉も死刑の判決を受ける。これで脱獄の決意はより固まった。

 準備が整い、いつ脱獄するかという時に、中尉の独房に一人の青年が押し込まれて来た。
 当初、中尉は彼をドイツの回し者かと疑ったがそうではなかった。そして、行きがかり上、この青年とともに脱獄するしかない。
 ついに、その夜、中尉はふたりで脱獄するのであった。


 映画のタイトルが「脱獄」ではなく「抵抗」であるのは、中尉のレジスタンス活動を褒め称えているからだろう。
 映像の多くはフォンテーヌ中尉の独房の中。台詞は極わずか。音楽も入れない。だが、シーンに緊張感があり、スリリング。

 一方、脱獄実行シーンは屋外である。それゆえに、閉ざされた空間におけるそれまでの高い緊張が、屋外に出て拡散してしまう。そのせいか、あるいは脱獄シーンそのものが有り触れているせいか、残念ながら脱獄実行シーンは凡庸だ。

 独房シーンを飽きさせないのは撮影の技と、なんと言っても中尉役のフランソワ・ルテリエという人が醸し出す雰囲気。これが至って素晴らしい。
 この映画の登場人物の多くはプロ俳優を使っていないらしい。中尉役の彼は普通の学生であった。

 最後に。フォンテーヌ中尉の脱獄の翌年1944年に、リヨンはドイツ軍から解放される。


オリジナルタイトル:UN CONDAMNE A MORT S'EST ECHAPPE OU LE VENT SOUFFLE OU IL VEUT|
英語タイトル:A MAN ESCAPED|
監督・脚本・脚色・台詞:ロベール・ブレッソン|フランス|1956年|100分|
原案:アンリ・ドヴィニ|
出演:フォンテーヌ中尉(フランソワ・ルテリエ)|青年ジョスト(シャルル・ル・クランシュ)|ほか

【ロベール・ブレッソンの映画】 これまでに記事にした映画から。

スリ」(1960年)  「バルタザールどこへ行く」(1964年) 

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映画 「ナック」 監督:リチャード・レスター

上
 天然のナンシー


1-0_20170826084019135.jpg 1965年のロンドン。流行りはじめた若者文化、カウンターカルチャーの、ブームの部分をすくい上げて作ったドタバタ喜劇。
 当時のティーンエイジの子たちを観客対象にした映画だ。
 「最近の若いもんは…」とブツブツ言う街の大人たちをスナップした、ドキュメンタリーっぽいシーンが各所に幾つもあって、世間にチョイ逆らいたいティーンエイジの笑いを誘ったんだろう。

2-0_20170826084408f36.jpg そんな古臭い大人たちの批判をよそに、若いもん3人のお話が進みます。
 やたら女にもてる(努力もしている)きざなドラマーのトーレン、もてたいがもてない要領の悪いコリン、天然系おのぼりさんの女の子ナンシー、この3人が主人公。

 そのほかに、たくさんの美人の女の子たちが入れ替わり立ち替わり登場する。
 それはトーレンの彼女達や、トーレンの持て過ぎをひがむコリンの妄想シーンに出てくる女の子たち。
 案外、ここが見どころかも知れない。(ただしヌードもセックスもない健全映画、だが男尊女卑)

 ちなみに、この女の子の中に、ハイティーンだったジェーン・バーキンやシャーロット・ランプリングが出演しているらしい。(捜してください)

 筋は言うほどのものではないが、モノクロ映像がきれいです。
 1965年のロンドンの風景やファッションが何やらアンティークです。

 監督は本作「ナック」製作の前年(1964年)に、「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」を、「ナック」製作の同年1965年に「ヘルプ!4人はアイドル」を撮っている。

 ボブ・ディランの英国ツアーに追ったドキュメンタリー映画「ドント・ルック・バック」(1967年)に出てくるティーンエイジの子たちも、この「ナック」やビートルズ映画を見たんだろうな。    

 1969年ごろのロンドンに住む青年を描いた映画「ウィズネイルと僕」(1987年)の二人は、この「ナック」の主人公たちと同世代の数年後なのでしょう。 (下線部をクリックして、その過去記事にお進みください)

 時代はいつも多面的です。
 その時代をどんなスタンスで見るか、見たかで、時代の色合いは違って見えます。
 例えば、ポップカルチャーに焦点を当てて見る、カウンターカルチャーの視点で見る、政治が人に与えた影響の文脈で見る。
 ひとりの人の中でも、時とともに見方は移ろって行きます。


オリジナルタイトル:The Knack ...and How to Get It|
監督:リチャード・レスター|イギリス|1965年|85分|
原作戯曲:アン・ジェリコー|脚色:チャールズ・ウッド|撮影:デイヴィッド・ワトキン|
出演:ナンシー(リタ・トゥシンハム)|コリン(マイケル・クロフォード)|トーレン(レイ・ブルックス)|ジェーン・バーキン|ジャクリーン・ビセット|シャーロット・ランプリング|

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映画 「ギャラリー 欲望の画廊」  監督:ダンカン・ウォード

上

 香辛料をうんと効かせた辛辣なコメディ。その分、脂っこくなくサラリと仕上げた映画。映像もきれいだ。

1-0_2017081816335729d.jpg どこまで真実かは知らないが、イギリスの現代アートシーンの狂った裏側を強烈に風刺している。(のかな)
 好色だが、やり手の美術商アート・スピンドルと、現代美術コレクターのボブ・マクルストン、この二人の中年男が悪役主人公と言っていい。
 (アメリカの現代アート作家だったバスキア(1960 - 1988)に、若い頃に接したという人物設定で、1980年代から現代アートで生きて来た40歳半ばの中年だ)

 とにかく、その絵画やオブジェは、世の中にその一点しかない。
 だから、これがビジネスかと思わせるほどに、売る買う両者の騙し合い。カネ、名声維持、見栄と猜疑心、精神的摩耗・・・。

 一方、成功したい魂胆丸だしの、現代アートの駆け出しアーティストたち。独立してギャラリーのオーナーになりたい賢い女。そして、アートシーンの末端にすがり続けたが、芽が出ない男の自殺。

 そんな世界に男と女が生きている。不倫、チョッカイに、パトロンという利害関係。登場人物の相関図は錯綜する。それにゲイとレズ、果ては離婚と財産分与騒動。話は盛りだくさんだ。

2-0_20170818163902513.jpg 逸話のひとつとして、画家モンドリアン(1872 - 1944)の「Boogie Woogie」を、その昔、画家本人から買った老富豪が出てくる。
 画商のアートも、美術コレクターのボブも、そしてその他の画商・個人コレクターもこの絵を狙う。(きっとサザビーズや美術館も、か)
 しかし老富豪は売りたくない。だが夫人は召使の男と組んで、値を吊りあげ売ろうとする。その結末は・・。

 もうひとつ。アートの所で5年働いていたが、ボブをパトロンに据えて、ギャラリーのオーナーになった女性ベスは、赤裸々なビデオアート作品を手掛ける女性アーティストをピックアップし、第一回目の個展を開く。
 アートやボブは、この作品が映像という複製芸術なので、値が付く芸術とは思わない様子が面白い。

 ついでに。ベスの替わりに画商アートに雇われた女性ペイジが、生まれながらの不具合で手術を受ける。その時、摘出された臓器を、ボブはホルムアルデヒド漬け作品にしてペイジに送るのだ。
 ひどい話だが、これは、イギリスの現代アート・アーティスト、ダミアン・ハーストを連想させる。この作家は、鮫、牛、羊の全身を、そのまま、ホルムアルデヒドを満たした大きなガラス箱に保存した作品で有名。

 とにかく、カネと名声を求めて、人々がうごめく現代アートシーン。
 ベスに出し抜かれた画商アート・スピンドルも、離婚と財産分与を切り抜けたコレクターのボブ・マクルストンも、性懲りもなく、したたかに明日へと向かうのである。

オリジナルタイトル:Boogie Woogie|
監督:ダンカン・ウォード|イギリス|2009年|94分|
原作:ダニー・モイニハン 小説『Boogie Woogie』|脚本:ダニー・モイニハン|撮影:ジョン・マシソン|
出演:ロンドン屈指の美術商・アート・スピンドル(ダニー・ヒューストン)|美術収集家で、アートの元で働くベスを引き抜きパトロンになる・ボブ・マクルストン(ステラン・スカルスガルド)|アートの元で働く女性で、ボブの協力を得て独立してギャラリーを持つことになる賢い女・ベス(ヘザー・グラハム)|新進気鋭の若手アーティストでベスの恋人ジョー(ジャック・ヒューストン)|ジョーと不倫する、ボブの妻・ジーン・マクルストン(ジリアン・アンダーソン)|ベスに替わってアートの元で働くローラースケートの女・ペイジ(アマンダ・サイフリッド)|モンドリアンの名画Boogie Woogieの第一作を所有している老富豪アルフレッド・ラインゴールド(クリストファー・リー: ピエト)|その妻でその絵を売りたいアルフリーダ(ジョアンナ・ラムレイ)|その召使いでアルフリーダと一緒になるロバート・フレイン(サイモン・マクバーニー)|アートシーンで食えない男・デューイ(アラン・カミング)|ジーンの友人エミール(シャーロット・ランプリング)|ほか

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映画 「ラブゴーゴー」 台湾映画 監督:チェン・ユーシュン

写真
初恋のひと、リーファ










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パン屋のアシェン


 コテコテの台湾製コメディかと思いきや、案外、すっきりとした爽やかさ。

1-0_20170805151418f33.jpg パン屋のおばさんが貸してる部屋に、3人の男女が住んでいる。
 アシェン(チェン・ジンシン)は、おばさんの甥。長年、パンとケーキの職人として真面目に働き続けて、今じゃ店を任されている。
 シュウは田舎から出て来た青年で、音楽で食って行きたいが芽が出ない。金がなく、店の売れ残りのパンで、日々何とか、しのいでいる。
 OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)は、大食漢で甘いモノ好き。恋人が欲しい。

 さて、ここから三話構成の第一話が始まります。
 ある日、店にレモンケーキを買いに来た女性がいた。美人だ。アシェンは、その女性が、小学校6年の同級生で、初恋のひと、リーファだと、すぐに気付いた。
 忘れていた初恋のひとは、その日から毎日来店するが、アシェンはドキドキするだけで、声もかけられない。手紙に託そうともしたが渡せない。
 そこでアシェンは考えた。彼にとって得意なコミュニケーション・ツールは、ケーキだ。店のケーキのネーミングを、「リーファへの想いの言葉」に替えはじめる。(リーファはアシェンに気付いていないが、ケーキの名前を面白がったようだ)
 さらには、テレビ放送を通して歌の歌詞で彼女に想いを伝えよう! 音痴のアシェンは、素人のど自慢に応募し、同時にシュウから歌の特訓を受ける。
 しかし、テレビ番組を見てくれなきゃ。だが放送日時を書いた手紙が渡せない。その時、業を煮やした店の女の子が、アシェンの書いた手紙をさっと奪い、リーファを追いかけ手渡した。

 第二話。
 OLのリリーが、街でポケベルを拾った。(携帯電話がまだ無い時代の話です)
 ポケベルをいじり回しているうちに、持ち主の電話番号が分かって、恐るおそる電話をかけてみると、留守番電話のメッセージが若い男のいい声! リリーはこの声に惚れてしまうが・・・。

 第三話。
 訪問セールスのアソン(シー・イーナン)が、痴漢撃退グッズを売り歩いているが、売れない。(第一話では、パン屋のおばさんに売ろうとした)
 高層ビルに迷い込むように入り込んだアソンは、高級な美容室を見つけ、客のフリして入った。ここは女性ばかりだ、セールスできるぞと、アソンは踏んだのだ。
 彼を担当したのは、リーファであった。リーファはこの店を経営している。アソンは彼女に一目惚れ。
 しかし、当のリーファは、愛しい彼との別れ話の時であった。
 
 三話とも、程よいコメディ性を保ちながら、爽やかなテイストです。
 第一話でアシェンがリーファに宛てた手紙文には、ジーンと来ますね。
 第一話のラストは第三話のラストになってつながります。
 第二話は話としては弱いのですが、可笑しい増量剤を加えていて、悪くない。2003年の邦画「茶の味」に出てくる巨大な少女は、本作のリリーの映像表現を真似ています。
 第三話はちょっと頂けない。

 総じて言うと、第一話の話で全編を描いてもらいたかった、というのが私の気持ちです。

オリジナルタイトル:愛情来了 Love Go Go|
監督・脚本:チェン・ユーシュン|台湾|1997年|113分|
撮影:ツァイ・チェンタイ|
出演:パン屋のアシェン(チェン・ジンシン)|アシェンの同級生で初恋の相手・リーファ(タン・ナ)|音楽で食って行きたいシュウ(マニェン・シェン)|OLのリリー(リャオ・ホェイチェン)|訪問セールスのアソン(シー・イーナン)|パン屋のおばさん(チウ・ショウミン)|パンにガムを入れた男(ホアン・ツジャオ)|

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映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ

上

 何世紀も生きて来たヴァンパイア夫婦の話。

1-0_201708041043400af.jpg その昔、人間の首筋に噛みついて生血を吸った彼らも、21世紀では、それはもう蛮行で、節度あるヴァンパイアはドリンクとして血を飲んでいる。

 夫のアダムは、病院の血液検査室の男に大金を渡し、輸血用の新鮮な血を横流ししてもらっている。
2-0_20170804105034de4.jpg 妻のイヴは、ヴァンパイアの老作家(ジョン・ハート)がどこかから仕入れてくる信頼度の高い血を分けてもらっている。

 なにせ近年、人の血の多くは汚染されていてヴァンパイアにとっては危険である。汚染されていない清い血の継続的供給はヴァンパイアにとって死活問題であった。

 アダムは何世紀も前から作曲家で、今ではクラシックの作曲家となってしまった人々とも活動してきた。
 ただしアダムはヴァンパイアなので、「人間」の歴史の表舞台には出て来れず、自身の曲を他の(人間の)作曲家に託したりしてきた。アダムは控えめな男であったが、そのことが不満と言えば不満であった。

 そして、20世紀半ばからは作曲するロックミュージシャンとして生きて来た。
 彼の部屋は、1960~70年代のエレキギターの名器や、1905年製のギブソンのアコースティックギター、エフェクター類やドラムセット、ヴァイオリンやリュートなどなど、様々な楽器がグチャグチャ無造作にそこらじゅう。そして、自宅録音のために、スタジオ録音用の往年の機器類が所狭しと並んでいる。
 イヴの部屋には、あらゆる国のあらゆるジャンルの書物がそこらじゅうに積まれている。(日本の文庫本もある)
 夫婦とも、実にマニアックな方々である。監督の理想の部屋なんだろうか。

 さて、お話の方はというと、大したこともないので割愛。観てのお楽しみ。(123分、一応飽きずに見通しました)
 敢えて言えば、ストーリーのスジよりも、ストーリー設定に重きがある映画といえましょう。
 あるいは、監督の世界観を覗き見ることができる作品なのかもしれない。

 気に入った台詞が2つありました。
 イヴが、鬱になりかけのアダムに言う。「自分の心にとらわれるのは、生きる時間の無駄づかいよ」
 もうひとつは、モロッコの港町のライブハウスで夫婦して聴いた、素晴らしい若手歌手を指して、アダムがイヴに言う台詞。「有名になるには、もったいない才能だ」 (確かに素晴らしい歌手です!伴奏は控えめなギターと不思議なパーカッションだけ)
 有名になったが故に才能が消えていくミュージシャンを、何世紀に渡ってたくさん見て来たアダムの言葉。(監督の名言か)

 とても驚いたことがありました。
 映画の半ばあたりで、突然、ある曲が流れます。
 その曲は、女性ソウル歌手のデニス・ラサールが歌う「TRAPPED BY A THING CALLED LOVE」(デニス・ラサール作詩作曲)
 この曲は、デニス・ラサールのアルバムのA面1曲目に収録されてる曲で、私が好きなソウルのベストに入るLPなのです。 (Westbound Records ‎– 1972年)
 いや、ビックリ!
 イヴはこの曲をかけて、元気のない旦那とダンスします。

 つっこみを3つ。
 アダムが病院で輸血用血液を分けてもらうシーン。
 病院の男(人間)がアダムに言う。アダムが首にかけている聴診器を見て、「それ、古いね、70年代のモノかい?」
 私がアダムなら、こう言いかえす。「あんたの座ってる、その椅子、古いね、70年代の椅子だろ」
 男が座ってる椅子は、スチール製、キャスター付のねずみ色のくたびれたオフィス家具なんです。
 ちなみに、監督は1953年生まれ。70年代が懐かしいのでしょうかね。

 アダムの手足となっている男(人間)が、アダムが欲しがった貴重なエレキギターを探しだして納品しに来たシーン。
 ケースからおもむろにギターを取り出して、アダムが試奏する。しかし、だ!
 何か、気の利いたリードのフレーズを弾くのかと思いきや、たどたどしく2フレットで指3本のAしか押さえない・・・、それだけ。オイオイ、これ失笑でした。(楽器店で恐るおそる試奏する中学生みたい)

 3つ目は、本作の題名です。英語タイトルをまんまカタカナにしただけ。ハナから売る気がない素振りが素晴らしい。

 最後に、これまでに記事にした映画で、ヴァンパイアの映画「SUCK サック」、これもロックがらみでした。

下 
オリジナルタイトル:Only Lovers Left Alive|
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ|アメリカ イギリス ドイツ|2013年|123分|
撮影監督:ヨリック・ルソー|音楽:ジョセフ・ヴァン・ヴィセム|
出演:アダム(トム・ヒドルストン)|イヴ(ティルダ・スウィントン)|イヴの妹のエヴァ(ミア・ワシコウスカ)|老作家マーロー(通称キット)(ジョン・ハート)|アダムの手先として動くイアン(人間)(アントン・イェルチン)|ワトソン医師(人間)(ジェフリー・ライト)|


【ジム・ジャームッシュ監督の作品】 ~これまでに記事にした映画から
(題名をクリックしてご覧ください)

パーマネントバケーション」「ナイト・オン・ザ・プラネット」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」

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映画 「大統領の理髪師」 韓国映画  監督:イム・チャンサン

上
左から、理髪師のソン、大統領、側近。

 
 社会的にとてもシリアスな題材を、敢えてコミカルなタッチで映画化にするには、勇気が要ると思います。

 大企業による公害被害とその訴訟勝利という実話を扱った、ジュリア・ロバーツ主演映画「エリン・ブロコビッチ」が、まさしくそうした映画でした。(この記事はこちらからどうぞ)

1-0_201708011416255d3.jpg 本作の「大統領の理髪師」も、基本こうしたコミカルタッチな映画です。
 ここでのシリアスな題材とは、1960年代、韓国大統領の独裁政治によって犠牲となった一般市民の悲劇です。
 でも、観てみるとわかりますが、意外に軽い仕立てに作られています。

 「大統領の理髪師」で終始一貫、固有名詞なしで登場する「大統領」とは、実は第5代大統領の朴正煕です。(1917-1979)
 (その娘は第18代大統領のパク・クネ(朴槿恵)ですね。)
 ただし、理髪師のお話は創作です。つまり創作のお話を語ることで、映画は朴正煕の独裁政権を批判しています。

 「エリン・ブロコビッチ」は、ジュリア・ロバーツ演ずる普通一般の女性が、ある偶然の機会で、弁護士代行として公害訴訟に立ち向かうコミカルな話でしたが、本作「大統領の理髪師」は、ソン・ガンホ演ずる理髪店の男が、ある日、無理やり、大統領の専属理髪師にされてしまいます。このことから喜劇と悲劇が始まります。

 ジュリア・ロバーツ演ずる女性は高卒で、弁護士として求められるハイレベルな専門知識からは、ほど遠い人物でした。一方、ソン・ガンホ演ずる理髪師は文盲で世事に疎い男です。両作品ともに、この知識ギャップが喜劇設定になっています。
 
 さて、ソン・ハンモは定期的に官邸(青瓦台)に呼ばれ、官邸内に新設した理髪室で、国で一番偉い男(独裁者)の、髪を切りヒゲを剃ることになります。こりゃ、誰でもビビります。しかし名誉でもあるわけです。

 ここで事件が起きます。
 細菌性の下痢症状を抱えた北朝鮮の兵士(スパイ)が、ソウルに侵入して来ます。そしてソウル市内にこの細菌が拡がりはじめます。
 韓国当局はこの細菌をマルクス病菌と名付け、下痢をした人間は北朝鮮と接触したヤツだと断定し検挙し始めます。
 また同時に当局は、急に下痢の症状になった市民は、「スパイと接触したヤツ」に接触して、下痢になった人間だと断定し、尋問をし密告を促します。
 ソン・ハンモの理髪店がある町内では、彼の知り合い幼なじみ数人が疑われ、尋問を受け拷問を受け処刑されてしまいました。

 そんなある日、ソン・ハンモの店に、大統領側近の偉いサンが散髪に来ていました。(店は官邸のお膝元の街にあります)
 そして運命です。その時、ソン・ハンモの息子ナガンが、お腹が痛いと父親に訴えました。偉いサンはギロッと睨みます。
 大統領から寵愛を受けているソン・ハンモですから、国の民としてもっとも模範的態度を示さねばなりません。

2-0_201708011423262e7.jpg 彼は息子を連れて近くの交番に出頭します。交番は町内にあって警官とは親しい間柄です。まさか、息子を当局に渡すことはなかろうと踏んだのですが、ナガンは当局に送られ電気拷問を受けます。
 しかし、ナガンの身体は電気を通されても、なぜかただ、ムズガユイだけでした。

 数日後、送り返されてきたナガンは半身不随になっていました。
 ソン・ハンモは体制に対し煮えたぎる怒りを覚えますが、大統領や側近の前では平静を装います。
 一方で、ソン・ハンモは息子を背負い、息子の足を治せる民間医療の医者や仙人を訪ね歩きました。そして、韓国一の仙人に会うことができました。

 映画のラスト近く、大統領が側近によって暗殺されてしまいます。
 ソン・ハンモのその後は、いかに。彼の息子の足は一体どうなるのか! 観てのお楽しみ。

 ちなみに、映画はクーデターで政権を掌握した朴政権についてだけではなく、ベトナム戦争で負傷した韓国軍兵士の心、朴大統領の前任の不正選挙についても語っています。


オリジナルタイトル:孝子洞理髪師|효자동 이발사|
監督・脚本:イム・チャンサン|韓国|2004年|116分|
撮影 チョ・ヨンギュ|
出演:ソン・ハンモ(ソン・ガンホ)|その妻のキム(ムン・ソリ)|その子ナガン(イ・ジェウン)|大統領(チョ・ヨンジン)|警護室長チャン・ヒョクス(ソン・ビョンホ)|中央情報部長パク・ジョンマン(パク・ヨンス)|ほか

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映画 「初恋のアルバム 人魚姫のいた島」 韓国映画  監督:パク・フンシク

2_20170723103949f09.jpg




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 甘口の映画だが、そう悪くはない。
 それは、若き日の母親とその娘ナヨンを、一人二役で演ずる、チョン・ドヨンが光っているからです。

 ナヨンは失踪した父親を探して、母親が生まれ育った島へ旅立ちました。
 ですが、島に着いた途端、ナヨンは、母親が娘であった頃へ、タイムスリップしてしまう。
 タイムスリップしたその先では、島も、そして周りの海も、まだまだ開発の手が及んでないのどかな風土、光りに満ち溢れた風景でした。

1-0_20170721103413879.jpg 若き日の母・ヨンスンは幼い弟と二人住まい。親はいません。ヨンスンは島の女たちと一緒に、海女をして生活しています。
 島には小さな郵便局があって、ヨンスンはそこの若い配達夫・ジングクと恋仲になっていました。
 学校へ通えず文盲のままに過ぎて来たヨンスンに、ジングクは優しく読み書きを教えています。

 映画はその大部分の時間を使って、このヨンスンとジングク、若い二人の、たどたどしい愛を瑞々しく描いて行きます。これが本作の見どころでしょう。

 さて、そののちジングクは転勤で島を離れることになりますが、結局、その後二人はめでたく結ばれました。
 そう、この郵便局の男ジングクがナヨンの父親になるのです。

 しかし、いつからなのでしょうか、両親の夫婦仲がうまく行かないようになってしまいました。(映画は、夫婦仲が悪い事や以下の事については、少ししか時間を割きません)

2-0_2017072110361922a.jpg 勝ち気な母親は、事あるごとに、がなり声で父親を容赦なく、なじる毎日。父親は言われるまま、ただ黙っている。
 ナヨンはそんな母親が嫌いだ。こんな、女尊男卑な家庭に生まれたくなかった。

 どうやら父親は借金を背負っているようです。人の好い父親は、誰かの連帯保証人になったらしく、返済義務が生じている。
 父親の郵便局勤めの稼ぎだけでは賄えない。その分、家計を補うためにも、母親は銭湯でマッサージ/垢すりをして働いています。(ナヨンも郵便局に勤めています)

 そのうえ、近年、父親は体調が悪い。病院の検査でも良くないらしい。だが父親は、このことを誰にも話していません。
 父親は妻に債務に病魔に疲れてしまい、失踪。
 そこで、娘ナヨンが、父親探しに島へ向かうのでした。

 そして映画冒頭。父親の葬儀の席で、借金を残したまま他界したことを、母親は大声でなじり、大泣きするのです。

 タイムスリップから帰ったナヨンは思います。
 あんなに、ねじ曲がってしまった母親の心に、夫にも見せない秘めた愛、若き日の愛が、あるのだろうと。
 そして、父親については、純粋に優しいということは、かえって周りを傷つけることになると・・・。

 残念なのは、若い頃の両親と現在の両親の、その様相の格差があまりにあまりなので、別の人の話に思えてしまいます。
 いやいや往往にして、こうなってしまうものですよ、と映画は言っているのでしょうか。


下
オリジナルタイトル:人魚姫|인어공주 |
監督:パク・フンシク|韓国|2004年|111分|
原案:キョン・ヒェウォン|脚本:パク・フンシク 、 ソン・ヒェジン|撮影:チェ・ヨンテク|
出演:娘のナヨン、若き日のナヨンの母・チョ・ヨンスン、一人二役(チョン・ドヨン)|現在の母・キム・ヨンスン(コ・ドゥシム)|若き日の父・キム・ジングク(パク・ヘイル)|現在の父・キム・ジングク(キム・ボングン)|ナヨンの彼氏・ドヒョン(イ・ソンギュン)|ほか

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映画 「アデル、ブルーは熱い色」  監督:アブデラティフ・ケシシュ

上
 アデルとエマ
1-0_20170713094955213.jpg


 オリジナルの題名は「アデルの人生:第1章と第2章」。
 高校生のアデルが同じ学校の先輩男子より、街で見かけたブルーの髪の女性に魅かれていく話。
 主人公のアデル役のアデル・エグザルコプロスの自然体の熱演に脱帽だ、素晴らしい。

 宣伝では、衝撃の愛の7分間、史上最高のラブシーンにカンヌが大喝采!と、レスビアンの性描写をことさらに言うが、蓮っ葉な売り文句だな、それがこの映画の売りなのかい?

 ブルーの髪の女性エマは画家、その彼女が映画の中で、自身の作品に言及するキュレーター(美術評論家)に対して言っている。「作品に敬意を払うべきよ」と。このセリフをそのまま、本作の配給会社に言いたいね。
 観るほうも、エロいの観たけりゃ、他のにすれば。

 売りのラブシーンよりも、アデルがクラブで街頭デモでパーティで幼稚園で踊るダンスシーンの方が長い。映画の各所で出てくる。監督は愛と踊り両方のシーンをもって、作品のいしずえ(礎)と考えている風に思える。

 映画に使われる音楽の選定にセンスを感じる、いいね。

 あと、アデルの家庭は中の下か、労働者階級で、人生において特に職業選択は手堅くというに対して、エマの家庭は自由奔放な上流階級。お父さんは二人目で、著名なシェフ。エマの家庭はレスビアンを許容する。

 話のスジはいたって単純だが、「アデルの人生:第1章と第2章」を丁寧に描いて行く。179分の大作。
 演技輝くアデルに注目。じっくり観てみよう。

 ちなみに、アデルに対して恋愛感情なしに、親身になってくれる男子が登場する。
 2015年の韓国映画「恋物語」にも同様な男子が主人公のレスビアンな女子を慰める。(「恋物語」の記事はこちらから。)


オリジナルタイトル:La Vie d'Adèle : Chapitres 1 et 2|
英語タイトル:BLUE IS THE WARMEST COLOR|
監督:アブデラティフ・ケシシュ|フランス|2013年|179分|
原作:ジュリー・マロ|脚本:アブデラティフ・ケシシュ 、 ガリア・ラクロワ|
撮影監督:ソフィアン・エル・ファニ|音楽:ジャン=ポール・ユリエ|音楽監修:エリーゼ・ルーゲン|
出演:アデル(アデル・エグザルコプロス)|エマ(レア・セドゥー)|サミール(サリム・ケシュシュ)|リーズ(モナ・バルラベン)|トマ(ジェレミー・ラユルト)|ベアトリス(アルマ・ホドロフスキー)|アントワーヌ(バンジャマン・シクスー)|ほか

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映画 「チャップリンからの贈りもの」  監督:グザヴィエ・ボーヴォワ

上
左から、娘のサミラ、父親のオスマン、そして風来坊のエディ。
 

 話の舞台はスイス、レマン湖の辺り。
 生真面目なアルジェリア人と楽天家のベルギー人、この二人の男がトンデモナイことを仕出かす話。

1-0_20170708220906035.jpg 北アフリカはアルジェリアからの(不法?)移民の男オスマンは、テレビも無い粗末な小屋に妻子と住んでいる。
 最近、妻が重い腰痛で緊急入院し、オスマンは娘のサミラと二人っきり。  
 そこへ風来坊のベルギー人エディが訪ねて来た。エディはオスマンの命の恩人で、義理堅いオスマンはエディの居候を歓迎した。
 だが、病院でこのことを知ったオスマンの妻は、「エディはやっかい者」と渋い顔。以前に良くない事があった様子。

 オスマンは問題を抱えていた。
 妻の医療費が払えない。だから妻は手術が受けられない。
 病院からは、オスマンの妻であることを証明する家族証明を提示すれば、低所得者向けに、手術代などの医療費が割安になる。
 しかしオスマン夫婦は結婚の際、スイスの役所の手続きをしていない、だから証明するものが無い、よって高額医療費の全額負担となってしまう。
 そのうえ、妻が働けないでいるので、家族の収入はがた減り。銀行に金を借りる相談に行ったが相手にしてもらえない。
 手立てがないオスマンは頭を抱えている。おまけに娘のサミラは母親が家にいないので情緒不安定。

2-0_20170708215635248.jpg こんなオスマン一家の困った様子を見ていた居候のエディに、アイデアが浮かんだ。
 最近、他界したチャップリンの遺体を一時、盗んで、身代金を頂こう!
 晩年、レマン湖のほとりの別荘に住んでいたチャップリンは、近くの墓地に埋葬されていたのだ。

 エディの突飛な言動に慣れているオスマンだったが、これには呆れた。呆れたが魅力的でもあった。なにしろオスマンに打つ手がなかった。
 ついにある夜、二人は闇に紛れて、墓荒らしを決行し、人目につかない別の場所に棺を埋めた。
 次に、チャップリン家に対して、電話で犯行声明と身代金要求。電話はエディが担当、オスマンは英語が話せない。
 しかしエディの電話は、思うように話が進まず相手に怒鳴りだしたり、オスマンに相談なく身代金を半額にしたりと、横にいるオスマンはハラハラし通し。
 (シーンは喜劇とまでは行きませんが、ともに貧しい男の凸凹コンビの様相。)

 さてさて話は、このあと、どうなるのでしょう。でも映画は、一応、ハッピーエンドを迎えます。
 脚本は、スイスで1977年に実際にあった事件を基にしているようです。
 チャールズ・チャップリンは、1977年12月25日に死去、映画の日本語タイトル名は12月25日クリスマスの日にかけているのでしょうか。
 ちなみにですが、スイスでは、全住民の24.6%の外国人を抱えているらしい。(2015年現在)


オリジナルタイトル:La Rançon de la Gloire|
英語タイトル:THE PRICE OF FAME|
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ|フランス|2014年|115分|
脚本:エティエンヌ・コメ 、 グザヴィエ・ボーヴォワ|撮影監督:カロリーヌ・シャンプティエ|
出演:エディ(ブノワ・ポールヴールド)|オスマン(ロシュディ・ゼム)|サーカスの女・ローサ(キアラ・マストロヤンニ)|チャップリンの秘書・ジョン・クルーカー(ピーター・コヨーテ)|オスマンの娘・サミラ(セリ・グマシュ)|オスマンの妻・ヌールNoor(ナディーン・ラバキー)|チャップリンの娘(ドロレス・チャップリン)|

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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