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2015年05月 Archive

映画 「空気の無くなる日」   監督:伊東寿恵男

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1-0_201504291322383b2.png  ハレーすい星の接近で村中が大騒ぎ、のお話です。
  舞台は富山でしょうか。遠くに雪をいただく山々が見える村。

  すい星が接近して来て、その引力で地球の空気が吸い取られてしまう。
  小学校の用務員のおじさんが、息を切らして職員室に駆け込んできた。
  そんなバカげた話と相手にもしなかった校長が役場に出かけ、折り返し息を切らして帰って来た。
  空気がなくなる。
  新聞にも記事が出る。(だが村人に新聞購読者はいない)

2-0_20150429135659bf5.png  空気がなくなるのは5分間らしい。そのあと、空気はまた地上に満ちてくる。
  校庭に生徒を集め、さっそく始めた訓練は、洗面器や水槽に水をはって顔をつけ、できるだけ息を止める訓練だ。気分が悪くなる子も出てくる。5分間も息を止めるのは、やはり不可能であった。

  空気がなくなることを子たちが親に話し、村中は徐々に大騒ぎになって行く。
  が、対処しようがない。その日は刻々と迫る。
  こういう時、人は意外にもいつものように畑仕事をする。ぼんやり時は過ぎていく。

  だが庄屋のあるじは、ある行動に出た。
  それは、もと小作であった男からの入れ知恵であった。自転車やバイクのタイヤチューブ内の空気を吸えば、5分間は凌げる。あるじは自転車屋のチューブをすべて買い占め、さっそく家族を集めチューブの口をくわえて呼吸の訓練を始めた。

  そして、その日が来た。
  集まって南無妙法蓮華経を唱える人々。盛装し静かに時を迎える人々。柱時計を見上げる人々、そしてタイヤのチューブをくわえている人々。
  さて、このあと、どうなりますやら。
  

監督:伊東寿恵男|1949年|51分|
原作:岩倉政治|撮影:大小島嘉一|
出演:深見泰三|花沢徳衛|河崎竪男|平山均|佐々木浩一|河合健児|大町文夫|望月伸光|



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気になる映画 48

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「さよなら、人類」                    「ワイルド・スタイル」 1983年
監督:ロイ・アンダーソン                監督:チャーリー・エーハン
8月から全国順次                    3/21~ シネマライズ

3_201504281141069f5.png             4_2015042811410783e.png
「百円の恋」                        「あん」
監督:武正晴                       監督:河瀬直美
4/25~ アップリンク                5/30~ シネマスイッチ銀座 他
◆観ました。記事はこちらから
 
5_20150428114204c82.png         6_201504281142055fe.png
「マミー」                          「サンドラの週末」
監督:グザヴィエ・ドラン                 監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
4/25~ 新宿武蔵野館 他              5/23~ Bunkamura 他
                        ◆観ましたが、評に値しないです。
                                
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「パパ、遺伝子組み換えってなぁに?」        「レイシスト カウンター」
監督:ジェレミー・セイファート              監督:わたなべりんたろう
4/25~ アップリンク 名演小劇場 他       4/4~ アップリンク




映画「てなもんや東海道」  監督:松林宗惠

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1-0_2015043019075147f.png  その昔、「てなもんや三度笠」という人気のコメディTV番組があって、本作はその映画バージョン。

  とにかく全編おおらか、アホで行こう、気楽に行こうだ。
  藤田まことと言えば、必殺仕置人、剣客商売かもしれないが、もとはコメディアン。珍念役の白木みのるとは絶妙なコンビ。
  ラストのチャンバラ・シーンは大勢の出演で野外ロケ、豪勢。
  また配役も豪華だ。チョイ役も伴淳三郎ら大物揃い。クレージー・キャッツの面々や漫画トリオやらも。下記の出演者一覧を見ているだけでも楽しい。浜美枝、梓みちよと女優陣もいい。ドリフターズからは、加藤茶が瓦版売りの役。

  たまには、こういう映画も観てみよう。できたら映画館で観たい。


監督:松林宗惠|1966年|92分|
原作:香川登志緒|脚色:長瀬喜伴、新井一、沢田隆治|撮影:鈴木斌|
出演:あんかけの時次郎(藤田まこと)|珍念(白木みのる)|清水次郎長(ハナ肇)|大政(藤木悠)|小政(なべおさみ)|石松(長沢純)|安濃徳次郎 (伴淳三郎)|吉良の仁吉(犬塚弘)|早川の佐太郎(谷啓)|神戸の長吉(石橋エータロー)|鼠小僧次郎吉(南利明)|丹下完膳(左膳)(田中春男)|角井門之助(阿部九洲男)|漫太(横山ノック)|漫次(横山フック)|漫三(上岡龍太郎)|浪人権太夫(天本英世)|風天仙人(上田吉二郎)|般若の政(世志凡太)|太物商卯兵衛(小杉義男)|番頭久松(安田伸)|おきく(中真千子)|お袖(沢井桂子)|お染(梓みちよ)|奴の小万(浜美枝)|おみつ(野川由美子)|茶店の亭主仁平(若月輝夫)|夫婦ゲンカの夫(南都雄二)|夫婦ゲンカの妻(塩沢とき)|中風の老婆(平参平)|宿の番頭五助(原哲男)|女中お春(高橋紀子)|孫娘(浅川美智子)|瓦版売り(加藤茶)|



「環りの海 - 竹島と尖閣 国境地域からの問い」 「ハモの旅、メンタイの夢 - 日韓さかな交流史」 「海路としての〈尖閣諸島〉 - 航海技術史上の洋上風景」  ・・・最近読んだ本。

  • Posted by: やまなか
  • 2015-05-07 Thu 06:00:00
  • 書評
上
  最近読んだ本から、竹島と尖閣の問題についての3冊をピックアップしてみました。
  こういう問題は、ネットで情報をチェックする、他人の意見の切れ端を拾い読みする、といったことでは到底掴み取れるものではないし、早急に反応すべきものでもない。ことは多面的でかつ、問題のすそ野は思うより広い。

1_20150430195948411.png
「環りの海 ― 竹島と尖閣、国境地域からの問い」  
   琉球新報 (著)、山陰中央新報 (著)  発行:岩波書店

  竹島と尖閣の問題を、島根県沖縄県の両県の地方紙2紙が、共同企画し連載したルポルタージュ。
  漁業の当事者として、現実や歴史を、地域や漁場からの目線で、かつ国を越えた大きな視野で、冷静に見つめている。その勇気を称えたい。
  ややもすると、領土問題についての好戦的な姿勢に対し、早急に Yes か No かを問いがちな世の中。あるいは、Yes と No を並列して見せるしかない大手マスコミ。
  そんな中、足元からモノを言うこの本は、一読に値する。
  まずは、下記の目次をご覧いただきたい。
  さらには、第3章の中の、「戦後から冷戦へ ― 米国が残した曖昧さ」、この指摘も重要だ。
  とにかく、竹島と尖閣の問題を語る場合、この本のように、少なくとも200ページは費やす、とても多面的な問題なのだ。  
  
1章 翻弄される国境の民                   
第1章 不穏な漁場 ― 苦悩する漁業者たち               
      竹島 ― 乱獲と密漁                       
      尖閣 ― 「国有化」がもたらしたもの              
第2章 対岸のまなざし ― 中国・台湾・韓国の人々の思い      
      中国 ― 「反日」感情への距離           
      台湾 ― 領有権より漁業権
      韓国 ― 歴史の相克、変化の胎動
第3章 絡み合う歴史 ― 「対立」の背景を探る
      領土編入以前 ― 航路漁場で利活用
      領土編入期 ― 実業家主導で領土に
      戦後から冷戦へ ― 米国が残した曖昧さ
      国交回復期 ― 苦肉の外交と先送り
      国連海洋法条約以後 ― 境界めぐり衝突
第4章 世界のアプローチに学ぶ ― 対立を乗り越えるために
      南沙諸島 ― 「紛争回避」を目指して
      ペドラ・ブランカ島 ― 第三者による解決
      オーランド諸島 ― 住民自治を基礎に
      アルザス・ロレーヌ地方 ― 争いの火種を共同管理
第5章 踏み出す一歩 ― 人・地域をつなぐ試み

2_20150430195950676.png
「ハモの旅、メンタイの夢 ― 日韓さかな交流史」
   竹国 友康 (著)  発行:岩波書店

  日韓の漁業とその交流史を、下関と釜山の港を起点に語る本。
  領土・領海の政治問題の文脈とは別に、日本、韓国、および中国、ロシアの4か国間では、その不足を補う魚の輸出入は相互依存の関係になっている。
  例えば、すけとうたら(明太)と、ぐち。乱獲と自然環境の変化で、近年、漁獲量が大幅に減少している。韓国は、日本海、東海、オホーツク海のすけとうたらを、ロシア・日本から輸入。黄海、西海のぐちは中国から輸入している。
  そして、京都の夏の風物詩、ハモ(鱧)。わけても、その高級品は韓国から輸入されている。
  書名はファンタスティックだが、中身は韓国現代史でもあり地味な内容。しかし、日韓関係を下関と釜山を起点に、じんわり理解できる。
 
第1章 日韓「さかな」交流のいま ― 水産物の取引現場を歩く
第2章 コムジャンオクイの生活文化史 ― その「起源」をたずねて
第3章 臨時首都釜山避難民の生活誌 ― 朝鮮戦争のなかで
第4章 ミョンテとプゴ ― 朝鮮在来の水産業の過去と現在
第5章 植民地と学問 ― 魚類学者・鄭文基と内田恵太郎
第6章 日本の植民地統治は何をもたらしたのか ― ミョンテ漁をめぐって
第7章 ハモの旅 ― 韓国南海から京都へ
おわりに 海峡を渡る風に吹かれて 下関から釜山へ


3_20150430195951795.png
「海路としての〈尖閣諸島〉 ― 航海技術史上の洋上風景」
   山田 慶兒(著)  発行:編集グループSURE

  中国・福建と琉球を結ぶ、明・清の時代にあった航路。その航路上に尖閣諸島はある。羅針盤が未発達な当時、尖閣諸島は航路の目印であった。
  「指南広義」という古い航海指針書を見出した著者は、本書で航海技術史を語っている。
  その上で著者は言う。この海域の島嶼はかつて、どの国の領土でもなく国境線もなかった。1880年代以降、帝国主義の時代になってから、領土・国境の概念がこの海域に持ち込まれた。
  固有の領土とは何だろう。いつからどのような形態で領有すれば、それは固有の領土と呼べるのか。
  さらに著者は言う。歴史問題はすぐに解決するは難しい。しかし、資源開発は経済問題だ。経済問題は、冷静になれば、その解決は難しくないのではないかと。
  
第1章 この文章を書きはじめるまで
第2章 「福建ー琉球航路と釣魚嶼 ─ 中国と琉球国の無名の遠洋航海者たちを讃えて」
第3章  これをめぐっての討議


ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2015   主催:東京国際フォーラム

  ああ、5月なんだ。今年も、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015 に行ってきた。

   
1_20150504152616090.jpg“パシオンの邂逅~バッハと現代が交差する声楽空間”
  エストニアのヴォックス・クラマンティスという合唱団が、ペルトを歌った。
  ペルトといえば、CDで聴けるのは大きな教会内で響き渡る、硬質で石の匂いがする透明感ある録音だ。
  東京国際フォーラムのホールB5は、コンサートホールというよりイベント会場で、豊かな響きは期待できなかったが、しかし、ありのままのあたたかい、生の声のペルトが聴ける様相となった。かえってそれが良かった。新鮮な体験だった。
  残念なのは、ピアノ独奏の下記2曲。へた。
  なぜに、無伴奏の合唱の間にピアノ独奏を入れたんだろう? 興ざめだった。

  合唱:ヴォックス・クラマンティス
  指揮:ヤーン=エイク・トゥルヴェ
  ピアノ独奏:クレール=マリ・ルゲ

  ペルト:鹿の叫び (無伴奏)
  J.S.バッハ:3声のシンフォニアより 第11番 ト短調 BWV797 (ピアノ独奏)
  ペルト:そしてパリサイ人の一人が (無伴奏)
  ペルト:アリーナのために (ピアノ独奏)
  ペルト:ヴィルヘンシータ (無伴奏)
  J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971より 第2楽章 (無伴奏)
  ペルト:カノンによる祈りの歌 (無伴奏)

2_20150504152702ee2.jpg“パシオンの邂逅~越境するアコーディオン”

  なぜか、アコーディオンが好きです。
  フィリップ・グラスの「モダン・ラブ・ワルツ」、ジョン・ケージの「夢」が良い。
  1964年のフランス映画「シェルブールの雨傘」の主題歌は、御喜美江さんが幼い頃からお気に入りの曲とのこと。これも気持ちが入っていて良かった。逆にスカルラッティは、気持ちが入り過ぎて、聴くのに困りました。
  ピアソラを久々に聴いて、ピアソラ本人の演奏CD 「57 Minutos Con La Realidad」 や 「Tango: Zero Hour」 を久々に聴いてみたくなりました。ああ、心の芯がキューッと熱くなる、アバンギャルドなバンド演奏が頭を駆け巡ります。

  アコーディオン独奏:御喜美江

  D.スカルラッティ:ソナタ ハ長調 K.159、ソナタ ニ短調 K.9、ソナタ ニ短調 K.1
  グラス:モダン・ラブ・ワルツ
  ルグラン:シェルブールの雨傘
  ケージ:夢
  ピアソラ:S.V.P.、バチンの少年、最後の嘆き、白い自転車
  ジョン・ゾーン:ロード・ランナー
                                                     主催:東京国際フォーラム


映画「ナポレオン・ダイナマイト (バス男)」  監督:ジャレッド・ヘス

上




1-0.jpg




こいつが、主人公のナポレオン・ダイナマイト

  アメリカのアイダホ州にある小さな町に住む、ナポレオン・ダイナマイトという高校生のお話。
  ナポレオンは、ルックスも頭も良いとは言えず、女の子の人気もない。両親もいない。これといった望みや金もなく、すでに人生あきらめが先行、だらりとボンヤリの日々。唯一の友人は学友ペドロだ。  
  兄のキップは一日中、家にこもってネットの向こうの女の子たちとチャットしてる。

2-00  そんなある日、ふたつの事件が起きた。
  ひとつは、変人の叔父が家にやって来て、ナポレオンやキップや、町の色っぽい奥さん達の日々を、引っかき回し始めたこと。そして、変化が起き始める。
  キップがチャットで知り合ったラフォーンダが、なんと!この町にやって来て、またたく間に結婚式!
  幸運が幸運を呼ぶ。到底無理だと思っていた生徒会長選挙でペドロが当選。叔父がどこかの奥さんと恋仲に、で、ナポレオンは? そうそう、デビーと相思相愛に。
  
  ストーリー本体も、時々挿入される気まぐれなシーンも、どちらも妙にゆるりとなごむと同時に、独特の味がする映画です。 



下0オリジナル・タイトル:NAPOLEON DYNAMITE
監督:ジャレッド・ヘス|アメリカ|2004年|95分|
脚本:ジャレッド・ヘス、ジェルーシャ・ヘス|撮影:マン・パウエル|
出演:ジョン・ヘダー(ナポレオン・ダイナマイト)|エフレン・ラミレス(メキシコ系移民の転校生ペドロ)|ジョン・グライス(ナポレオンの叔父・リコ)|アーロン・ルーエル(ナポレオンの兄・キップ・ダイナマイト)|ディードリック・ベーダー(レックス)|ティナ・マジョリーノ(ナポレオンの同級生の女の子で写真屋のデビー)|サンディ・マーティン(おばあさん)|ヘイリー・ダフ(サマー)|トレヴァー・スナー(ドン)|ションドレラ・エイヴリー(キップがチャットで知り合った長身の黒人女性ラフォーンダ)|エミリー・ティンドル(ナポレオンの同級生の女の子で、リコおじさんが営業した家の奥さんの娘トリシャ)|




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映画「ペタル ダンス」  監督:石川寛  出演:宮崎あおい、忽那汐里、安藤サクラ

上2

  四人の女優が登場する静かな映画。

  ふたつの話が語られます。
  ひとつは仲の良かった三人組の話。ジンコ(宮崎あおい)と素子(安藤サクラ)は、ミキ(吹石一恵)の近況を風のうわさに聞いて驚き心配になります。ミキは地元に帰って行って後、しばらく音沙汰がなかったのです。
0_201505121837062dd.png  うわさによると、彼女は海に飛び込んで、どうも入水自殺を図ったよう。幸い、命に別状はなく現在入院中らしい。とにかく会いに行こう、でも、行って会って、そこで何を言えばいいのか、わからない・・・、ジンコと素子の心に、躊躇がよぎります。

  もうひとつの話。「あたしなんか、無くなっちゃえばいい」 キョウコ(韓英恵)は、親友の原木(忽那汐里)の前で、か細い声でつぶやいた。そして、まもなくキョウコは行方不明になる。あの時何も言ってあげられなかったと、原木は悔む。どこかでいまも生きていてほしい・・・。そして、このふたつの話はひとつになっていきます。

  原木とジンコの出会い。互いに見ず知らずのふたりは、駅のホームにいた。そこへ電車が来た、その時、原木のちょっとしたしぐさが、飛び込み自殺のように見えた。咄嗟にジンコは原木を抱き込んでホーム内側に倒れ込む。だが誤解であった。この時ジンコは指先を骨折する。

  話は進んで、ジンコと素子のふたりは、意を決してミキに会いに行くドライブに出る。そして、ジンコに怪我をさせてしまったことの詫びとして、原木はその運転を買って出た。ジンコは指の怪我でハンドルが握れなくなっていたのだ。
  三人は車に乗り込み、ミキが入院する海べりの病院を目指した。ここからロードムービーが始まる。
  やっと病院にたどり着く。事前に知らされていなかったミキは、驚きと迷惑の感情を押し殺して無口であった。
  だが、ミキの願いで、ジンコと素子らは砂浜に出た。一緒に来てほしいところがあると。そこは壊れた小さな突堤であった。入水した現場らしい。ひとりじゃ来れなかったの。
  ミキに、ジンコと素子、そして三人に付いてきた原木の四人は、いつまでも海を眺めている。

  それぞれにそれぞれの閉塞感を抱く四人の女たち。そのどんよりさを吹き払い開放するかのように、映画は圧倒的に野外シーンを通す。それは、この映画シーンには吹く風が必要であったし、風景は四人の閉塞感を表わしているからだ。
  セリフは削ぎに削いでいる。ごく親しい間柄での会話は、時にひとりごとのようなになる。また、流れゆく景色や大きな風景を前にして、ただぼんやり眺めている時に話すことなんかも気持ちが弛緩していて、そうだ。
  こんな状況を再現するセリフに滑舌力はいらない、ボソボソ小声の発声で良い。誰も叫ばない。ここに、この映画のリアリティがあるかもしれない。
中  しかし、自由にセリフを言わせているようにみえるが、そのなかに、いかにも「書き言葉」風のセリフが混じっていて、耳に付いてしまう。これが残念。  
  また、ストーリーテラー能力、特にシーン展開についても残念なところがある。情感にグッと訴えるワンシーン、ワンカットのつくりは得意だが、それらを束ねて一本の長編映画に組み上げる力が弱い。いい持ち味を出してらっしゃるんだけどね。

  最後になるが、安藤サクラがいい。地味な役柄だが、彼女の存在感がこの映画をひとつにまとめるカナメになっていることを見逃さぬように。

中2  TVコマーシャルのロケ撮影現場の休憩時間。CM出演の女優たちが、思い思いに浜辺にいる。もし、こういう場面を見たなら、誰だって何かのショート・ストーリーを浮かべてもおかしくはない。監督はコマーシャルフィルム出身らしい。「ペタル ダンス」は、素の女優達のそんな様子が原点のような気がする。

監督・脚本・編集:石川寛|2012年|90分|
撮影:長野陽一|
出演:ジンコ(宮崎あおい)|原木(忽那汐里)|素子 (安藤サクラ)|ミキ(吹石一恵)|キョウコ(韓英恵)|川田(風間俊介)|先輩(後藤まりこ)|直人(安藤政信)|

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1年前の5月、一夜一話。   (2014年5月掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2015-05-15 Fri 06:00:00
  • 映画
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1_20150508092028734.png     2_20150508092029966.png     3_20150508092030614.png
「森崎書店の日々」      「夜明けのうた」          「競輪上人行状記」
監督:日向朝子          監督:蔵原惟繕          監督:西村昭五郎
菊池亜希子            浅丘ルリ子              小沢昭一
    
4_201505080926017de.jpg     5_2015050809260395d.jpg     6_20150508092604b2f.jpg    
「大阪物語」           「HARUKO ハルコ」       「月はどっちに出ている」
監督:市川準           監督:野澤和之          監督:崔洋一
池脇千鶴、田中裕子      ドキュメンタリー          岸谷五朗、ルビー・モレノ

7_20150508093302a3d.jpg     8_20150508093303fc9.jpg     9_20150508093305e88.png  
「パリ・エキスプレス」     「ウィズネイルと僕」        「アイス・カチャンは恋の味」
監督:エルヴェ・ルノー     監督:ブルース・ロビンソン    監督:阿牛(アニュウ)
フランス              イギリス               マレーシア
    
10_20150508094315fb6.jpg     11_20150508094316e48.jpg     12_20150508094318222.png    
「雲が出るまで」        「シクロ」               「サニー 永遠の仲間たち」
監督:イェシム・ウスタオウル 監督:トラン・アン・ユン     監督:カン・ヒョンチョル
トルコ                ベトナム(仏)           韓国
    



    

映画「嵐」 1956年  監督:稲垣浩  主演:笠智衆

0-1.png







  笠智衆の映画。地味な映画です。

  大正時代の話。妻に先立たれたフランス文学者、水沢(笠智衆)には三男一女、四人の幼子がいた。 
  大学教授として働き盛りの水沢に、四人の子を男手ひとつで育てる余裕は無かった。よって、太郎と次郎、三郎、そして末っ子の末子をそれぞれ親類縁者に預けていた。  
  だが、フランスから帰国した水沢は決心する。我が子は手元で育てたいと。そこへ、馴染みの出版社から、フランス文学大辞典の話が舞い込んだ。長期プロジェクトだ。水沢はライフワークに値すると言った。そして自宅で出来る仕事である。水沢はさっそく、大学に退職願を出すと同時に、まずは太郎と次郎を引きとった。親子三人の生活が始まった。
  その後の大正9年、一軒家に移り、ばあやのお徳(田中絹代)を雇い、末子を、しばらくして信州の郷里に預けていた三郎を引きとった。四人四様の性格と子供なりの生きざまを感じ取り、自身も親として成長するのであった。
0-2.png  時は経ち、一郎は父の故郷信州に行き廃屋同然だった実家を再建し農業を始める。次郎と三郎は画家の卵になっていた。水沢自身、若いころに画家の道も考えたらしい、その血を受け継いだようだ。末っ子の末子(雪村いづみ)も、しっかりした女学生になった。

  実になんと言う事のない話で、誠に実直。
  見どころは、笠智衆。彼のための映画。こんなストーリーで、客の気を最後まで引き付けて置けるのは、笠ならではだろう。
  小津にロボット化されていた笠が、本作では実に伸び伸び楽しげだ。彼のしなやかなで滋味な演技を堪能できる。
  付け加えて、昔の東京の風景が爽やかに映っていて、いい感じ。そして、爽やかついでに、雪村いづみ当時19歳が爽やかです。たまには、こういう映画も観てみよう。

  ◆稲垣浩の映画 一夜一話から
   「ゲンと不動明王」 1961年作品 こちらからどうぞ

下監督:稲垣浩|1956年|108分|
原作:島崎藤村|脚色:菊島隆三|撮影:飯村正|
出演:水沢信次(笠智衆)|水沢太郎(山本廉)|水沢次郎(大塚国夫)|水沢三郎(久保明)|水沢末子(雪村いづみ)|お徳(田中絹代)|誠心堂主人石井(加東大介)|水沢が住みこんだ宿・桜館主人北川(清水元)|宿の女中お咲(中北千枝子)|水沢の義妹しづ江(東郷晴子)|水沢の兄(山田巳之助)|八代教授(江川宇礼雄)|雑誌記者宮口(今泉廉)|郷里の青年森(松尾文人)|森の妹(香川悠子)|特高刑事(谷晃)|お霜婆さん(馬野都留子)|医者(稲葉義男)|芸者年丸(上野明美)|芸者A(黒岩小枝子)|芸者B(泉千代)|少年時代の太郎(武田昭)|少年時代の次郎 (鈴木映弘)|少年時代の三郎(平奈淳司)|少女時代の末子(中村葉子)|失業者の男(菅大作)|失業者の子供(市川かつじ)|



映画「大統領の料理人」 監督:クリスチャン・ヴァンサン 主演:カトリーヌ・フロ

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  実話をもとに製作された映画です。
  パリ市内にあるエリゼ宮殿。ここがフランス大統領官邸だ。
  この官邸の地下には、大きな厨房があって優秀なシェフのもと大勢の料理人が働いている。
  官邸に招かれる来賓向けの料理がこの厨房で作られる。

  そして、大統領自身の日頃の食事もこの厨房で作られている。だが、これがミッテラン大統領には苦痛であった。
  装飾過多の宮廷風料理じゃなく、幼い頃に祖母が作ってくれたような素朴な田舎料理が食べたい。そんな料理を毎日食べられたら、どんなに心が安らぐだろうか。ミッテランは、十分に年老いていた。

中3  食通で知られる大統領は、自分専属のシェフを官邸に置き、自分だけの料理を作ってもらおうと決めた。しかるべき筋の紹介で一人のシェフを指名した。それが、主人公オルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)であった。突然のことに戸惑いながらも、彼女は小さな厨房と若い優秀なコックを与えられ準備を始める。
  大統領は多忙だ。分刻みのスケジュール。料理についての大統領の好みすら聴けないなかで、ついに緊張のその日が来た。
  オルタンスの目利きで取り寄せた新鮮な素材を、彼女お得意の田舎料理に仕立てて出した。大統領は大いに満足。人選に間違いは無かった。数日後、オルタンスは大統領執務室に呼ばれて、大統領と田舎料理談義。互いに気が合った。

  そんなことで、オルタンスは官邸に馴染んで行ったが、問題は彼女が官邸に来たその日から、実はくすぶっていた。
  それは、従来の厨房のシェフたちとの軋轢である。彼らからすれば、彼女は異物である。手っ取り早く言えばTVドラマ「相棒」の特命係。互いにいがみ合い喧嘩もした。
  そんななか、官邸内の組織が刷新される。同時に大統領に専属の医師がついた。健康管理である。オルタンスは、前もって献立を医師に見せチェックを受けることになる。あれもダメこれもダメであった。さらには、経費削減を言われる。
  オルタンスは徐々に官邸に嫌気が差してきた。そんなある夜、献立を考えていると、大統領がひとり厨房に降りてきた。大統領が彼女に言う。虐められているんだって。彼女は、トリュフのスライスを乗せたチーズトーストを手早く作ってワインとともにステンレス台の上に出した。大統領は何も言わず美味しそうに食べ、また階段をゆっくり上がって行った。

  2年間、官邸で働いた後、オルタンスは南極基地の食堂で隊員たちの食事をつくった。人生の岐路にいると自覚する。彼女は、パリを離れ考える時間が欲しかったのだ。
  
下
  映画は淡々としている。
  オルタンスが作る田舎風料理や厨房作業の様子にあれこれ深入りせず、大統領の満足を大げさに扱わず、従来のシェフとの軋轢騒動も多くを言わない。そして、オルタンスの明日も明確には語らずにエンディングを迎える。つまり、くっきりはっきりの起承転結型の語り口ではない映画です。
  ただ、オルタンス役のカトリーヌ・フロが映画をぐいぐい引っ張る、その魅力を楽しむ映画です。

オリジナル・タイトル:LES SAVEURS DU PALAIS
監督:クリスチャン・ヴァンサン|フランス|2012年|95分|
脚本:クリスチャン・ヴァンサン、エディエンヌ・コメ|撮影:ローラン・ダイアン|
出演:オルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)|大統領(ジャン・ドルメッソン)|ダビッド・アズレ(イポリット・ジラルド)|ニコラ・ボヴァワ(アルチュール・デュポン)|ジャン・マルク・ルシェ(ジャン=マルク・ルロ)|メアリー (アーリー・ジョヴァー)|パスカル・ルビック(ブライス・フルニエ)|ジョン(ジョー・シェリダン)|コシェ・デュリ(フィリップ・ウシャン)|ジャン=ミシェル・サロメ(ローラン・ブエトルノ)|



映画「オズの魔法使」  監督:ヴィクター・フレミング  主演:ジュディ・ガーランド  ~映画音楽に魅せられて

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  脳みそがないと嘆くわらの案山子、心が欲しいと言うブリキ男、小心で勇気がないライオン、そして家に帰れない少女ドロシーが、オズの国で大冒険。
  初めて観たのは、小学校の授業の一環で先生に引率されて行った映画館でした。
  いま観ても、古く感じない101分、ダレません、すごいですね。
  原作が1900年発表、映画冒頭で既に40年間語り継がれてきたお話だという紹介がある。それから、もう75年経ているわけです。

  で、「虹の彼方に (Over the Rainbow)」がいいですね。いつまでも新鮮なメロディーラインです。


オリジナル・タイトル:Wizard of Oz
監督:ヴィクター・フレミング|アメリカ|1939年|101分|
原作:L・フランク・ボーム『オズの魔法使い』(The Wonderful Wizard of Oz)|
脚本:ノエル・ラングリー、フローレンス・ライアソン、エドガー・アレン・ウルフ|撮影:ハロルド・ロッソン|音楽:ハロルド・アーレン|
出演:ドロシー(ジュディ・ガーランド)|案山子ハンク(レイ・ボルジャー)|ブリキ男ヒッコリー(ジャック・ヘイリー)|ライオンジーク(バート・ラー)|北の良い魔女グリンダ(ビリー・バーク)|西の悪い魔女ミス・ガルチ(マーガレット・ハミルトン)|
オズの大魔法使い・占い師マーヴェル・御者・門番(フランク・モーガン)|





映画「花とアリス」 2004年  監督:岩井俊二

上


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  鈴木杏(ハナ)と蒼井優(アリス)、ふたりの女優をながめる映画。

  宮本先輩(郭智博)をめぐって、親友同士のハナとアリス。記憶喪失の嘘でつながる三角関係。先輩にバレて、やっとほんとに好きだと言うハナとアリスのそれぞれ。
  ストーリーを言うほどもない。劇映画というよりイメージ映像に近い。映画というよりTVドラマに近い。
  小細工仕立てて、話をつないで行こうとするわざとらしさは見ぬふりして、鈴木杏と蒼井優を観ましょうか。ふたりの女優をながめる映画です。
  ただ、チャラ、浅野忠信・主演の1995年岩井俊二の映画「PicNic ピクニック」と比べると、びっくりするほどに質が落ちている。
  「PicNic ピクニック」の記事はこちらからどうぞ

監督・脚本:岩井俊二|2004年|125分|
撮影監督:篠田昇|撮影:角田真一|
出演:鈴木杏 荒井花(ハナ)|蒼井優 有栖川徹子(アリス)|郭智博 宮本雅志|相田翔子 有栖川加代(アリスの母)|阿部寛 アリス母の連れの男|平泉成 黒柳健次(アリスの父)|木村多江 堤ユキ(バレエの先生)|坂本真 猛烈亭ア太郎|大沢たかお リョウ・タグチ|広末涼子  編集者現場担当|ルー大柴|アジャ・コング|叶美香|伊藤歩|
中野裕之|虻川美穂子|梶原善|テリー伊藤|大森南朋|松尾れい子|


映画「ビートニク」  監督:チャック・ワークマン

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  ビートニクについて学べる映画です。 オリジナル・タイトルは、「THE SOURCE」。

  まずは、ヒッピー。それはそういう人々というより、いわば社会現象だった。
  「既存の社会秩序,体制からドロップアウトする脱社会的な思想や行動に走り,あるいはそういうものを志向する者。 1960年代後半,アメリカの若者たちの間に生れ,世界中のいわゆる先進国家に浸透していった。」 なるほど。(wikipedia)

  ヒッピーのこういうカウンターカルチャの流れをさかのぼると、ビートニクなるものに行き着く。
  映画後半ごろに、「1966年、ギンズバーグとスナイダ―が、突然ヒッピーになって、我々はビートニクじゃなくなった」という証言が出てくる。ふむふむ。
  で、ビートニクとは、「1955年から1964年頃にかけて、アメリカ合衆国の文学界で異彩を放ったグループ、あるいはその活動の総称。概ね1914年から1929年までに生まれた世代が執筆活動をした。」 なるほど。(wikipedia) 大正~昭和初年生まれの世代になる。

  この映画に登場する、ビートニクを代表する三人。ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズ。1950年代を代表するアメリカ「文学界」の人たち。
  映画は、当時の映像をコラージュしながら、この三人の生きざまを時系列に紹介していく。(勉強になりました。)

  三人ともインテリです。 
 ・ジャック・ケルアック(1922 - 1969):小説家・詩人。『路上』 
  アメリカを放浪する。「ビート族の王」「ヒッピーの父」 (wikipediaへはこちらから
 ・アレン・ギンズバーグ(1926 - 1997):詩人。『吠える』 (wikipediaへはこちらから
 ・ウィリアム・バロウズ(1914 - 1997):小説家。『裸のランチ』 (wikipediaへはこちらから

  映画中で、ジョニー・デップやデニス・ホッパーらが、ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグの詩を朗読している。 
  「ポエトリーリーディング。詩人が自作の詩を読み上げること、あるいは詩を朗読するアート形態。」なるほど。
  ビートニクの時代は、ジャズが熱かった。(チャーリー・パーカー、コルトレーンらの映像が出てくる。)
  ジャズサウンドをバックにして朗読するライブが盛んだったらしい。そんな映像も出てくる。

  ビートニクな白人は、黒人(の文化)への憧れを示す。
  そういえば、詩人ラングストン・ヒューズ(1902-67)。彼が活動しはじめた1920年代は、ニューヨークのハーレムで、黒人の芸術社会が生まれ、「ハーレム・ルネッサンス」と呼ばれた時期。ビートニクをさかのぼれば、このあたりかな。

  公民権運動、ベトナム戦争やら、仏教など東洋神秘、自然回帰へのあこがれなど、政治や時代背景の影響を色濃く反映しながら、ビートニクの流れをヒッピーが受け継いで行ったんでしょう。映画の製作は1999年。20世紀の最後に映画にして、まとめて置きたかったのかもしれない。
  注意していれば、いろいろなアーティストや音楽や映画のワンシーンが出て来るので、お楽しみに。(下記の出演者欄参照)

オリジナル・タイトル:THE SOURCE
監督・脚本:チャック・ワークマン|アメリカ|1999年|88分|
撮影:トム・ハーウィッツ、ドン・レンザー、ナンシー・シュライバー|
出演:ジャック・ケルアック1922 - 1969|アレン・ギンズバーグ1926 - 1997|ウィリアム・バロウズ1914 - 1997|
詩朗読で出演:ジョニー・デップ、デニス・ホッパー、ジョン・タートゥーロ|
その他の出演(インタビュー、演奏映像):ボブ・ディラン|ジョン・コルトレーン|マイルス・デイヴィス|ポール・ボウルズ|ノーマン・メイラー|テリー・サザーン|マーロン・ブランド|ニール・キャサディ|チャーリー・パーカー|ジェリー・ガルシア|ジョーン・バエズ|ジャック・ニコルソン|ほか


映画「ラ・ジュテ」  監督:クリス・マルケル

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  どういう戦争だったのだろうか。
  第三次世界大戦なるものが勃発し、そして勝利を手にした者も敗者も、極わずかな人々が生き残った。
  核戦争だったのか、パリの街は壊滅状態。生き残りはパリの地下に避難している。

  敗者となった人々は、ある実験のモルモットになった。
  その実験とは、タイムトラベルだ。だが、実験はうまく行かず、発狂する者が後を絶たない。
  ある日、ある男が選ばれた。その男は実験に耐え、過去のパリを散策できた。
  そして、男は過去のパリでひとりの女に出会う。実験が繰り返される度に、男はその女と出会えた。ほのかな愛が生まれる。

  研究者たちは、この男を未来へ行かせることにした。未来から、医療品とエネルギーを持ち帰ること。これは、この実験のそもそもの目的であった。
  そしてその日、未来に行った男は、ある場面に遭遇する。それは・・・。

  映画製作の1962年といえば、冷戦の時代。当時、ことは緊迫していて、核戦争による第三次世界大戦がまるっきり架空のこととは思えぬ時代だった。1962年秋、キューバ危機の折、明日核戦争が起きるかもしれないと日本でも不安な日々があったと、そんな話を聞いたことがある。
  それから50年以上経った現在、創作上のこととは言え当時ほどには、そうそう簡単に第三次世界大戦なんてことは言わない。それより今、問題はより複雑になった。
  ま、それはともかく、映画は第三次世界大戦の戦後からはじまるが、ストーリーは意外にも、男の過去未来、個人の話で終始する。よって戦闘場面などは無い。いわゆるSFを期待しないこと。
下  最後に。野暮を承知で言うが、実験はどうも脳内でのタイムトラベル実験のようだ。なのに、どうやって未来から医薬品を持ち帰れるんだろう? 加えて、エネルギーって、持ち帰れるものなの?

  この映画は全編、動画じゃないです。写真がスライドショーのように次々に現れて話を進めます。でもそれぞれの写真には力があります。そして静かな映画です。
  本作の2年後に、スタンリー・キューブリックによる 「博士の異常な愛情」というシリアスな喜劇映画があった。この映画は、米ソによる回避努力むなしく、核戦争に突き進ん行くその一瞬へと話が進むストーリー。その翌年製作の「アルファヴィル」は、ジャン=リュック・ゴダールの作。電脳化した未来社会を描いて、ソ連や全体主義を批判している映画だった。この二作も冷戦時代の映画です。 「博士の異常な愛情」の記事へは、こちらから。「アルファヴィル」はこちらから、どうぞ。

オリジナル・タイトル:La Jetée
監督・脚本:クリス・マルケル|フランス|1962年|29分|
撮影:ジャン・チアボー、クリス・マルケル|
出演:エチエンヌ・ベッケル|リジア・ボロフチク|ジャック・ブランシュ|ヘレーネ・シャトラン|ジェルマーノ・ファチェッティ|



2年前の5月、一夜一話。 (2013年5月掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2015-05-29 Fri 06:00:00
  • 映画
2年前の5月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  (2013年5月 Archive)

掲載記事タイトル・リスト
   個別に指定の映画記事を ご覧になるには、下記の映画タイトル名をクリックしてください。

1あにいもうと     2同じ星の下、それぞれの夜     3パーク アンド ラブホテル
「あにいもうと」        「同じ星の下、それぞれの夜」 「パーク アンド ラブホテル」
監督:成瀬巳喜男         監督:富田克也ほか       監督:熊坂出
京マチ子、久我美子
  
4現代インチキ物語 騙し屋     5世にも面白い男の一生 桂春団治     6大阪の女   
「現代インチキ物語 騙し屋」 「世にも面白い男の一生 桂春団治」    「大阪の女」
監督:増村保造         監督:木村恵吾          監督:衣笠貞之助
                 淡島千景、八千草薫        京マチ子

11タッチ・オブ・スパイス     12トランシルヴァニア     13ケス    
「タッチ・オブ・スパイス」     「トランシルヴァニア」     「ケス」
監督:タソス・ブルメティス   監督:トニー・ガトリフ     監督:ケン・ローチ
    
14情熱のピアニズム     15卵     16黒猫・白猫   
「情熱のピアニズム」       「卵」             「黒猫・白猫」
ジャズピアニスト       監督:セミフ・カプランオール  監督:エミール・クストリッツァ
ミシェル・ペトルチアーニ
  
17一瞬の夢     18水辺の物語  
「一瞬の夢」          「水辺の物語」
監督:ジャ・ジャンクー     監督:ウー・ミンジン
                 マレーシア映画

無0題3年前の今月は、15本の邦画・洋画を掲載しています。
 全文の記事は、こちらからご覧になれます。
 また、個別にその映画記事だけをご覧になりたい方は、下の映画名をクリックしてご覧ください。



1嵐を呼ぶ十八人     2踊子2     3めぐりあい
「嵐を呼ぶ十八人」       「踊子」             「めぐりあい」
監督:吉田喜重         監督:清水宏         監督:恩地日出夫
                 淡島千景、京マチ子      酒井和歌子

4アトムの足音が聞こえる     5けものがれ、俺らの猿と     6キッドナップ・ブルース
「アトムの足音が聞こえる」  「けものがれ、俺らの猿と」  「キッドナップ・ブルース」
音響デザイナー:大野松雄    監督:須永秀明        監督:浅井慎平

7雲の上     8明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛     9修羅雪姫」・「修羅雪姫 怨み恋歌
「雲の上」         「明日やること ゴミ出し・・。」 「修羅雪姫」・「修羅雪姫 怨み恋歌」 
監督:富田克也(空族)    監督:上利竜太          監督:藤田敏八  
                 谷村美月             梶芽衣子

10新宿泥棒日記
「新宿泥棒日記 」
監督:大島渚

11海と大陸     12フロスト×ニクソン     13記憶の棘
「海と大陸」           「フロスト×ニクソン」     「記憶の棘」
監督:E・クリアレーゼ    監督: ロン・ハワード       監督:ジョナサン・グレイザー  
イタリア映画祭2012                              ニコール・キッドマン

14コンフェッション     15ルイーサ
「コンフェッション」       「ルイーサ」
監督:ジョージ・クルーニー  監督: ゴンサロ・カルサーダ


映画「共喰い」 監督:青山真治

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  遠馬は17歳。ここは下関市のはずれ、川辺というところ。。
  遠馬の母親・仁子(田中裕子)は、河口近くの川岸にひとりで住んでいる。
  左手先が義手の仁子は、毎日小魚をさばいて、なんとか生計を立てている。
  父親・まどか(光石研)は、密貿易か何か、人に言えぬ裏の商売を細々と続けてきた。
  遠馬は、父親と住んではいるがまったく疎遠な関係。最近、父親はどこかから琴子という若い女(篠原ゆき子)を家に連れ込んで一緒に住み始めた。琴子は遠馬にやさしくしてくれる。

2-0_20150528135241f2b.jpg  琴子の目の下に痛々しいアザができていた。父親に殴られたらしいが、遠馬に多くを語らない。だが、同じ屋根の下、その様子を盗み見て遠馬は知っていた。父親は、セックスの最中に、女の顔を殴り首を絞め興奮が高まって行く。そんなサディスティックな光景が遠馬の目に焼き付いている。
  しばらくして、琴子は妊娠する。そして、彼女はこの家から姿をくらました。

  遠馬の父母のこと。仁子は空襲で手先を失った。当時、その奇形を村の人々は冷たくあしらった。もらい手などいなかった。そんな仁子の前に男が現れた。まどかだった。粗暴で、普通の男には無い味があった。だが、並はずれて好色で女遊びが激しい男だった。そして、セックスの度に仁子は殴られた。
  いたたまれなくなった彼女は家を出て、それ以来ひとり川べりで生活している。今となっては、ここへ訪ねてくるのは、わずかなお客か息子の遠馬くらいなもの。まどかがここに通わなくなってもう何年にもなる。

3-000.jpg  遠馬に彼女がいる。千種(木下美咲)という。ふたりは、近くの神社境内にあるみこし蔵に忍び込み、愛を確かめ合っている。しかし、この忍び逢いは村に知られていたし、仁子、まどかの耳にも入っていた。
  好色な父親の異常な性向が頭から離れない遠馬は、そんな遺伝子が自身にもあると感じていた。ある日、千草とのセックスで彼女に乱暴した遠馬に、千草は恐れた。一方、母親の仁子は仁子で、息子に父親の血が流れているかもしれぬと心配であった。千種に不幸があってはならない。

  夏、祭りが始まった。激しい夕立。神社のみこし蔵で遠馬を待っていた千種が、通りかかったまどかに襲われた。
  その知らせを聞いた遠馬は神社へ走る。そして、千草を支えて遠馬は、母のもとへ。ことの次第を知った母は、出刃包丁をつかんで、雨の中、まどかを探す。長年、抑えに抑えていたまどかへの怒りが一気に噴き出すこととなった。
  
  母親の、まどかに対する復讐の成功が、観る者の気持ちを開放してくれる、そんな展開だ。
  残念なのは、男の異常な性欲を、ことさら前面に押し出して、人の気を引こうとする宣伝文句。これは、いかがなものかと思う。映画がどんどん薄っぺらくなる。
  そんな行き過ぎを手元にぐいと引き寄せ、またともすれば、まとまりを欠く話を落ち着かせて、映画をしっかりした語り口にしているのは、母親役の田中裕子だ。田中の起用が映画を救っている。わめかない泣かない。感情を押し殺した力みを感じない沈黙と、淡々とした僅かなセリフの行間から、多くのことが伝わって来る。素晴らしい。

  最後に。例えば、好色な父親に悩む青年、ほかの女と同居し久しく帰って来ない夫を持つ妻の諦め、自分の子だと思い込む男、地域の男たちを誰でも受け入れる村の女、そして季節は夏。こう並べると、黒木和雄監督の「祭りの準備」が頭に浮かぶ。そういえば、両方の映画とも、ヒロインはパラソルをさしていた。(「祭りの準備」の記事はこちらからご覧ください。)
  
下監督:青山真治|2013年|102分|
原作:田中慎弥|脚本:荒井晴彦|撮影:今井孝博|
出演:菅田将暉 - 遠馬|木下美咲 - 千種・遠馬の彼女|光石研 - 円・遠馬の父親|篠原 ゆき子(旧芸名・篠原友希子 )- 琴子・父親の愛人|田中裕子 - 仁子・遠馬の母親|宍倉暁子 - アパートの女|岸部一徳 - 刑事|淵上泰史 - 若い刑事|



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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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