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2015年07月 Archive

映画「心中天網島」 監督:篠田正浩 主演:岩下志麻、中村吉右衛門

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  近松の世界で遊ぶ、富岡多恵子(浪花の詩人)と武満徹(作曲家)そして篠田正浩監督の3人による脚色と、美術を担当した栗津潔(グラフィックデザイナー)の仕事を楽しむ映画です。

  舞台は江戸時代の大阪。
  北の色里、曽根崎新地の遊女・小春(岩下志麻)と、紙屋の主人・治兵衛(中村吉右衛門)の、あってはならぬ色恋の顛末を描く。

  色里で遊ぶの域を超えて相思相愛、小春に入れあげる治兵衛は、商売ほったらかしの締まりの無いこの三年。
  だが、小春を身請けするほどの金を、治兵衛はとても用意できない。このまま、この先いつまでも離れ離れの境遇ならば、いっそ心中しようかと思い詰めるふたりである。身分の違うふたりの愛は、だからこそ深まるばかり。そして、異常に燃え上がった男と女のゴシップは世間に広がって行く。
  一方、身内としては、こんなあまりに情けない様子に我慢できず行動したのが2人。
  女房のおさん(岩下志麻・一人二役)は、小春に手紙を書いて別れてくれと嘆願した。それは、もちろん愛する夫を取り返すこと、加えて、あきんどの妻として家業の紙屋を維持するがためのことでもあった。だが、おさんは小春に対しそんな体面を放り捨て、さらにこう手紙に書いた。心中するとは夫が死ぬこと、殺すこと。それは小春あなたにとっても不本意、不幸なはず。だから後生ですから、心中するのはやめて、夫を生かせて、と。
  もうひとり、小春に別れてくれと厳しく迫ったのは治兵衛の兄。兄は小春と直接会って、そう約束させた。

2-0_20150625224602be4.jpg  そんなことになっているとは知らぬ治兵衛は、急に小春がよそよそしい態度を示すようになり疑心暗鬼。果ては薄情な女に成り下がったと思い至る。
  そんな頃、兄やらから厳しく意見され、治兵衛は小春と縁を切ると約束させられてしまう。だが、小春への未練は消えない。腑抜けの治兵衛は、やはり商売に身が入らず、鬱々とした日々を過ごす。そして、おさんは実家に引き取られることになる。つまり治兵衛は、おさんの父親から離縁を宣告された。
  そんな折、太兵衛(小松方正)という新興成金商人が、金にまかせて小春を身請けすることが決まった。
3-0_201506252331579c3.png  これを聞いた治兵衛は、太兵衛の金の力に負けたといった風な、尾ひれはひれのうわさ話に憂いながらも、とりわけ、取り引きの常連あきんど衆からの排他的な目線や店の世間体に悩み取り乱す。それを見て、今さら何なのよという、おさんの思い。(たしかに。そして余りにも男社会的概念)
  そんな思いをぐっと抑えて、実は、おさん、別の事を心配する。夫と心中を考えたほどの小春だ、夫への強い思いは今も変わらないだろう。だから、この身請け話で小春はきっと自殺する。それはなんとしても止めたい。なぜなら、小春は私の願いを聞き入れて、夫と別れてくれたのだから。
  店の資金管理をしてきたおさんは、いきなり大金を夫の前に差し出す。それは店の運転資金だ。この金で小春を身請けして、店で雇おう。治兵衛、唖然。

  さて、これら現実の、あまりの急展開に直面して、腑抜けの治兵衛の心は散り散りに乱れた。そして同時に意外にも、彼は追い詰められた末の、ホワイトアウトな開放感を感じる。それに背を押され、治兵衛はいつの間にやら、曽根崎新地の小春のいる店の前に立っていた。
  小春、ふいに現れた治兵衛をいぶかしく思うも、ふたりは密かに新地を抜け出し、夜の闇を駆け抜ける。そして、ふたりはかつて誓い合った心中と、この世のしがらみに直面する。どうする、揺れるふたつの心。(見せ場です) そして・・・。

  1969年、あの当時にインドネシアの音楽(ガムラン)を使うとは、武満徹なかなか素晴らしいです。
  映画冒頭に、監督と富岡多恵子との電話のやりとりのシーンがある。その中で、鳥辺野の墓地で撮影したい旨を監督が言っている。そこは東山にある大谷本廟(西本願寺)の墓地。その中の一部は、かつて西本願寺周辺にあった墓地が(たぶん)明治期の道路拡張のために、この地に移されてきたもの。今も、古い作りの墓石が多い。また大阪の住所を刻んだ墓石も目立つ。実は我が家の墓もその中にある。

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監督:篠田正浩|1969年|103分|
原作:近松門左衛門|脚色:富岡多恵子、武満徹、篠田正浩|撮影:成島東一郎|美術:栗津潔|音楽:武満徹|
出演:治兵衛の妻・おさん、遊女小春の一人二役(岩下志麻)|紙屋治兵衛(二代目中村吉右衛門)|太兵衛(小松方正)|治兵衛の兄・孫右衛門(滝田裕介)|大和屋の主人(藤原釜足)|おさんの父・五三衛門(加藤嘉)|おさんの母(河原崎しづ江)|下女お杉(左時枝)|小春がいる店・河庄の女( 日高澄子)|黒衣頭(浜村純)|堪太郎(土屋晋次)|お末(戸沢香織)|丁稚三五郎(赤塚真人)|女中玉(上原運子)|煮売屋主人(陶隆司)|客(牧田正嗣)|黒衣の群(天井桟敷)|

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岸部一徳の出演映画

  これまでに掲載した映画の中から、岸部一徳が出演した映画を拾ってみた。
  他の俳優に無い、独特の魅力がいい。
  刑事ドラマ「相棒」の警察庁長官・官房室長役もいいし、「ドクターX〜外科医・大門未知子」の神原名医紹介所・所長役も好きだが、映画ではそれとは違う面が出る。端役で光る。

  さて、出演の映画リストは次の通り。
  こんなことをすると、思いもよらぬ映画が集まってきて面白い。
0  なかでも、北野武が演じる教団経営者の相棒役で出演した「教祖誕生」と、田中裕子との取り合わせの「いつか読書する日」の岸部がいいです。端役出演では「Beautiful Sunday」が印象に残っている。
  
  「教祖誕生」(1993年) - 呉 役 
  「ビリケン」(1996年) - 通天閣観光株式会社・社長 役
  「Beautiful Sunday」(1998年) - 上野真吾 役
  「のど自慢」(1999年) - 審査委員長 役
  「鮫肌男と桃尻女」(1999年) - 田抜政二 役
  「顔」(2000年) - 花田英一 役
  「チキン・ハート」(2002年) - 村瀬 役
  「さゞなみ」(2002年) - 尾花先生 役
  「いつか読書する日」(2005年) - 高梨槐多 役 
  「寝ずの番」(2006年) - 笑満亭橋弥 役
  「ハッピーフライト」(2008年) - 高橋昌治 役
  「のんちゃんのり弁」(2009年) - 戸谷長次 役
  「共喰い」(2013年) - 刑事 役


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映画「8 1/2」 監督:フェデリコ・フェリーニ

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  マルチェロ・マストロヤンニ演ずるグイドは、巨匠の域に達した映画監督だ。
  この映画は、映画製作に苦悩する、そのグイドの心象風景や白昼夢を描く抽象的な物語。
  
  グイドは大きな壁にぶち当たっている。大勢の映画スタッフとひっ迫する製作日程を目の前にして、抑えようにも抑えられない不安や不快の強迫観念に駆られている。  
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  映画プロデューサーは巨額の資金集めをしてグイドが動き出すのを待つが、グイドは一向に動かない。脚本家もグイドにあらたなアイデアをメモって渡したり議論を吹っかけて彼を刺激するが、押し黙ったまま。
  女優たちは、役をもらいたくてグイドに接するも、彼に適当にあしらわれるだけ。グイドは製作開始のスタートラインに立てないでいる。

  なぜなら、出来上がったのは作品の輪郭だけ。グイドに言わせれば、核になる魂がまだ入っていない。
  だが、グイドの周辺ではその作品の輪郭をもとに、もうスケジュールは立てられ、事は進行し始めている。無数のパイプを組んだ高い塔は、ほぼ完成している。

  一方、グイドの中では、少年時代のある記憶がいま鮮明に思い出されて、彼を魅了する。それが映画製作の核になりそうな風だが、依然として逡巡している。ついにプロデューサーは今回の映画製作を諦める。スタッフは解散。

3-0_201507011144491b9.jpg  そして、呪縛を解かれたかのようにグイドの心は飛翔する。皮肉なことに、しがらみから解放された途端、彼は新たな作品発想が湧いてくるのを感じ喜々としだすのであった。(終)


  映画の全編に渡って、巨匠グイド周辺には女が集まって来る。女優はもちろん、愛人も元愛人らしきも愛人候補もいる。そこへ、妻も呼んだ。
  さらには大勢の製作スタッフや、少年時代の自分自身や記憶に残る人々までもが、入り乱れて映画の各シーンに登場します。万華鏡を覗くように、その各シーンをじっくり楽しみましょう。


オリジナル・タイトル:Otto e Mezzo
監督:フェデリコ・フェリーニ|イタリア|1963年|140分|
原案:フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ|脚色:フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネリ、エンニオ・フライアーノ、ブルネロ・ロンディ|撮影:ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ|音楽:ニーノ・ロータ|
出演:グイド・アンセルミ(マルチェロ・マストロヤンニ)|ルイーズ・アンセルミ(アヌーク・エーメ)|クラウディア(クラウディア・カルディナーレ)|カーラ(サンドラ・ミーロ)|バーバラ(バーバラ・スティール)|マドレーヌ(マドレーヌ・ルボー)|ほか

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映画「クレージーの大爆発」 監督:古澤憲吾

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  GIBと称する国際秘密組織が、ある命令をその日本支部に下した。
1-0_20150703134847a0d.png  それは、参一銀行本店地下金庫にある莫大な量の金の延べ棒を盗み出すこと。この案件を担当することになった日本支部のエリ子(松岡きっこ)は、その身分を隠して、大木健太郎(植木等)なる男と接触することを命令される。その大木とは、GIBの独自調査から三億円強奪事件の犯人だと特定していた男だった。つまり、組織は大木の大胆不敵な実行力を買っていたのだ。

  だが三億円で、すでに大金持ちになった大木には、金庫破りする気は無かった・・が、エリ子の魅力にほだされ、2人して計画を練ることとなった。
  そして実行メンバー集めに入る。参一銀行本店勤務の不満行員(桜井センリ)、銀行本店ビルを設計施工した建築技師(石橋エータロー)、参一銀行からの借金を返済できないで窮する土木作業員の男(ハナ肇)とその手下(犬塚弘)、ヘリコプター操縦士(安田伸)、そして本店ビルに隣接するビル地階で開業している歯科医(谷啓)を巻き込んだ。その医院の床から、銀行金庫室へとトンネルを掘るのだ。
  加えて、彼らの手助けが加わる。地下金庫へのトンネル掘りで出た石を、デモの投石用にしたい全学連らしき学生(なべおさみ)たち。金庫室爆破音をカモフラージュする花火を打ち上げるための偽装ロケ撮影で歌う歌手(いしだあゆみ)。

  さて、金庫から地下駐車場のトラック荷台へ、まんまと金の延べ棒をすべり落としたところで、エリ子は大木らに拳銃を向けた。すかさずGIBの男たちも現れて、金の延べ棒はそっくりトラックごと、GIBに横取りされてしまう。さらに、走行中のトラックから、GIBによってエリ子は投げ落とされる。

2-0_20150703140622ddf.png  さあ、話はここからスピーディーに急展開する。
  寝返ったエリ子は大木らに近づき、GIBの最新ジェット機を奪って、一同、組織の日本支部がある富士山へ向かう。あわてたGIBは、そのジェット機に水素爆弾が搭載されていることを内密に政府に告げた。
  これを受けた政府は、国籍不明のジェット機飛来と驚き、航空自衛隊が緊急発進。だが、ジェットは富士山裾野に墜落。でも全員無事、爆弾も無事だった。
  さっそく、その現場へ緊急出動した陸上自衛隊隊長は、「金嬉老事件とは数段違うぞ、なにしろ水爆を背負ってる。」と言って退却を余儀なくされる。結局、エリ子大木らは、GIBによって富士山地下深くにあるGIB日本支部へ拉致され、爆弾も支部内に回収された。
  GIBのその秘密基地にはロケットがある。これに横取りした金の延べ棒を積み込み、彼らは一旦宇宙へ飛び立ち、その後地球に舞い戻り、大西洋上にある本部へ一気に向かう計画。その間に、水素爆弾の時限装置を起動させ、エリ子大木らを基地もろとも爆破しようとした。
  だが、大木らが暴れ出して基地内はてんやわんや。追われて彼らは知らずにロケット内部に潜り込んだ。その時、ロケットエンジンが点火し、彼らは宇宙へ! そして富士山が爆発する。
  ラストシーン。月面着陸した大木らは、無重力のなかで楽しそうに歌い踊る。(終)


  大木らのジェットが裾野に落ちたあと、銀行強盗犯である彼らは、その現場に居座る。そして大木は、持ち前の意味不明な大言壮語をマスコミ陣に向けて吐く。
中  これを受けて、総理大臣(藤田まこと)は緊急に閣議を招集した、そのシーン。
  総理大臣:相手は投石とゲバ棒だけの全学連とはちがうんやからね なにしろ水爆を抱えて居直っとる。
  外務大臣:しかし、水爆って強いですね。わずか7人で日本全体がひっくり返されてる。我が国の外交も、この水爆があれば強くなるんですがね・・・。
  総理大臣:いやまったく、その通りやね。ちょっとしたことで(日本漁船が)拿捕されておる。これは、我が国にぜんぜん力がないからやね。(中略)水爆を持つ議案を、提出したらどやねん。
  官房長官(藤村有弘):そういうことは、(総理の)お腹にしまって置くものかと存じます。
  総理大臣:腹に思てる事をぶちまけて、国民のみなさんに判断していただく。これが私の政治理念であり誠の政治や。

  
下監督:古澤憲吾|1969年|83分|
脚本:田波靖男|撮影:永井仙吉|特技監督:中野昭慶|
出演:大木健太郎(植木等)|土木作業員・立花五郎(ハナ肇)|歯科医・中谷宏(谷啓)|立花の手下・赤塚(犬塚弘)|参一銀行本店行員・土井(桜井センリ)|建築技師・三橋(石橋エータロー)|ヘリコプター操縦士・松田(安田伸)|GIB日本支部・毛利エリ子(松岡きっこ)|立花の妻・房子(樹木希林)・・・若い!|立花六郎(黒川俊成)|中谷歯科の女・坂内澄江(高橋紀子)|志村(人見明)|W(平田昭彦)・・・この人が出てくると、ああSF映画|Z(アンドリュー・ヒューズ)|X18号(桐野洋雄)|ビルの管理人(由利徹)・・・いい味出します最高です!|全学連(らしき)学生たちのリーダー(なべおさみ)|銀行のガードマン(玉川良一)|男A(GIB)(荒木保夫)|男B (大前亘)|自衛隊の隊長(田島義文)|長官(北竜二)|総理(藤田まこと)|官房長官 (藤村有弘)|ロケ隊の歌手(いしだあゆみ)・・・可愛く歌います|
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「人はなぜ逃げおくれるのか-災害の心理学」・「ニッポンの個人情報」・「紋切型社会-言葉で固まる現代を解きほぐす」  ・・・最近読んだ本。

  • Posted by: やまなか
  • 2015-07-10 Fri 06:00:00
  • 書評
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  最近読んだ本から3冊、とりあげてみました。

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「人はなぜ逃げおくれるのか-災害の心理学」 
                広瀬 弘忠 (著) 集英社新書
  地震・洪水・土砂崩れ・噴火といった自然災害に加えて、火災・テロ・MERSやエボラ・原発事故・船の転覆など、世の中、危険は増すばかりだ。
  ところが、我々の心は、予期せぬ異常や危険に対して、ある程度、鈍感に出来ているらしい。なぜなら、外界の変化に常に反応していたら、神経が磨り減ってしまうからである。このある程度の鈍感さを 『正常性バイアス』 という。つまり、少々のことなら正常だと自分自身にバイアスをかける。本能メカニズム。しかし困ったことに、この正常性バイアスが、身に迫る危険を危険として捉える事を妨げ、危険回避のタイミングを奪ってしまうのだ。
  例えばこの事例。小さな洪水が起こり警報が出されたが危険はなかった。次に洪水警報が発令されるも、今度も小さいだろうと高をくくっていたら、そこへ大洪水が襲う事態に。
  加えて、日ごろの安全に慣れ切って、危険に鈍感な現代人は、危機に直面しても、それを「感知」し素早く行動する能力が劣ってしまった。
  よって以上のことから、避難の指示や命令が発令されても、避難する人の割合は50%を超えることはほとんどないらしい。筆者は、冒頭に例としてあげているのは、死者200人近くの犠牲をもたらした2003年の韓国地下鉄火災だ。今なら、セウォル号のフェリー転覆事故を例とするかもしれない。
  もうひとつ重要な問題は、施設管理側が客のパニックを恐れるあまり、「ボヤです。建物の反対側からの火事ですから、危険はありませんが、避難してください。火が消えましたら、またショーを続けます。」といった風に、客に対して騒ぎをソフトランディングさせたい意識と曖昧な指示だ。この指示を聞き流す客、ゆっくり避難し出す客。そこへ突如、黒煙が室内に噴きこんでくる惨事。危険は実際よりも過小評価される。そして第4章にある、指示出し側のパニックに対する警戒意識だ。
  この本は新書だが、その内容は多岐に渡って書かれている。日本では、多くの死者をだした災害や事故の被災者被害者は、生き残ったことを恥じる申し訳ない気持ちが他国よりも強いらしい。生きのびた人を喜ばしく誇らしく意味する、英語のサバイバーに該当する日本語がない、という指摘が第5章にある。また、どんな人が生きのびるのか、などの考察も読んでおきたい。
【目次】                            
(プロローグ) 古い「災害観」からの脱却を目指して
第1章 災害と人間 
第2章 災害被害を左右するもの
第3章 危険の予知と災害被害の相関
第4章 「パニック」という神話
第5章 生きのびるための条件
第6章 災害現場で働く善意の力
第7章 復活への道筋
(エピローグ) 「天」と「人為」の挟間に生きる人間として

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「ニッポンの個人情報  
    ~個人を特定する情報が個人情報である と信じているすべての方へ」
                 鈴木 正朝 、高木 浩光、山本 一郎 (共著・鼎談) 翔泳社
  個人情報ってなんだっけ。・・・・・・・・・・・・・・・・
  例えば、氏名・生年月日・連絡先は、特定の個人を識別するために用いられる情報とは言えるが、これだけが個人情報というわけではない。
  個人情報とは、特定の個人を識別可能とする情報と、当該個人の属性情報からなる「ひとまとまり」の情報の集合物である。(下記※1)
  つまり個人情報とは、特定の個人を識別可能とする情報(氏名、生年月日、連絡先など)だけではなく、当該個人の属性情報(出身大学名、勤務経歴、ビデオをレンタルしたそのタイトル名、図書館で借りた書籍名など)、これらも「個人情報」だと、個人情報保護法は定義している。(下記※2)
  だから、個人を特定する情報=個人情報ではない。
  さらには、自分の属性情報のうち、何を知られたくないかは人によって違うので、立法の趣旨としては、その属性情報全部が個人情報と言わざるを得ないのだ。
  だが、Yahoo!JAPANのトップページ画面の一番下にあるプライバシーポリシー(下記※3)では、プライバシー情報を、「個人情報」と「履歴情報および特性情報」に分けて、あたかも「履歴情報および特性情報」は個人情報ではないと言いたいようだと、この本は言っている。また、下記※2にある個人情報保護法の条文が、間違った解釈を誘いがちな文になっていることも本書は指摘する。
  次に、匿名化の話。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  さて、じゃ、個人を特定する情報+その属性情報からなる個人情報から、氏名、生年月日、連絡先などの個人を特定する情報を分離し匿名化すれば、それは個人情報ではなくなるのか?
  例えば、週3日以上ワインを飲んでいるか、の記名アンケート結果集計があったとしよう。佐藤一郎・飲む、鈴木和子・飲まない、高橋次郎・飲む・・という膨大なデータだが、氏名を記号に置き換えてこのデータを匿名化すると、これは個人情報ではなくなるのか?
  答えはNOだ。氏名と記号が一対一で対応できる表を手元に持っていれば、匿名化したデータであっても、それは個人情報だ。(2004年消費庁見解)
  なぜなら、個人情報とは何かという個人情報保護法の定義条文に、このことを指す記述があるからだ。(※2の条文最後のカッコ部分)  
  もちろん、対応表を捨ててしまえば、何も問題はない。ただ、それを捨てたか否かは、我々には知らされない。
  漏えいの問題。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  人がやることにミスや失敗は必ずある。だから、個人情報の漏えいは、無くならない。
  だが一番の問題は、悪意ある個人情報取集者が、漏えいした情報、あるいは漏えいさせた情報を、コツコツ蓄積していること。
  さまざまなところで漏えいした情報は、その内容はてんでバラバラだが、集積し名寄せでつなぎ合わせると、実に精緻な情報となっていく。とりわけ旅券番号など信頼性の高い情報が加われば、雑多な個人情報がさらに価値の高い情報に変わる。(第5章) 

  個人情報にかかわる問題は、とても複雑で面倒だ。我々は、ビッグデータをどう考えればいいのか。個人の属性情報には、カルテや健康診断結果やDNA情報など医療情報もある。個人情報が、法にのっとって厳格に運用され、かつ我々にとって適切に運用され、我々も利用できれば、今までになく便利なことではある。
  以上のように、個人情報にかかわる問題は、我々自身に直接関わる大事な問題だ。誰もが、そう感じながらも、今は、ただながめているだけなのかもしれない。筆者たちは、問題を明白にし無自覚な我々に警鐘を鳴らすと同時に、個人情報の活用にも言及している。そして筆者たちは、山積する諸問題と活用の間で苦悩している。
  
 ※1:「行政機関等個人情報保護法の解説」の16ページ(総務省行政管理局監修 株式会社ぎょうせい 2005年発行)
    下記の個人情報保護法が言う「個人情報とは何か?」を解説している。

 ※2:個人情報保護法の「個人情報」の定義・・・(個人情報の保護に関する法律 第一章総則)
   定義・第二条より、条文そのままを、以下転載。
   『この法律において 「個人情報」とは生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により 特定の個人を識別することができるもの (他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。』
   多くは、下線部だけを読み取っているがために間違った解釈をする。
   「その他の記述等」とは、連絡先など個人を特定する情報以外に、当該個人の属性情報も含まれているのだ。
   条文は、あくまで例を記しているだけ。この部分が、実に読み取り難く誤解を生んでいる。

 ※3:Yahoo!JAPANのプライバシーポリシー(第2章 プライバシーポリシーより転載)
   『プライバシー情報のうち「個人情報」とは、個人情報保護法にいう「個人情報」を指すものとし、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、住所、電話番号、連絡先その他の記述等により特定の個人を識別できる情報を指します。
   プライバシー情報のうち「履歴情報および特性情報」とは、上記に定める「個人情報」以外のものをいい、ご利用いただいたサービスやご購入いただいた商品、ご覧になったページや広告の履歴、お客様が検索された検索キーワード、ご利用日時、ご利用の方法、ご利用環境、郵便番号や性別、職業、年齢、お客様のIPアドレス、クッキー情報、位置情報、端末の個体識別情報などを指します。』
【目次】                                           
第1章 「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ
第2章 Suica履歴は個人データでした
第3章 そんな大綱で大丈夫か?
第4章 だまし討ち、ダメ。ゼッタイ。
第5章 漏洩が問題なのではない、名寄せが問題なのである
第6章 見えないと、不安。

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「紋切型社会-言葉で固まる現代を解きほぐす」
                        武田 砂鉄 (著) 朝日出版社
  面白い本。ロックミュージックで言えば、シンガー&ソングライターの1st.アルバムのような、ビビッドな良さを感じる。筆者が繰り出す勢いある啖呵の連発が楽しめます。
  言葉に鋭敏な著者は、最近、世の中で頻繁に使われるパターン化した言い回し、受け売り的な言葉の使われ方を列挙しながら、その裏に隠された実態を解きほぐし、言葉の使い手と受けて側との間で生じる硬直化した関係性の危うさや力関係を暴き出す。
  取りあげる事象は多岐に渡る。政権や行政府が語る言葉使い、ニュースリリースの文言を単に組み替えるだけでメディアが発信する横並び情報と、批評という異物の排除、就活面接での空しいやりとり、アイドルグループの仕掛けが繰るもの、SNS上のやりとり、東大卒の権威的話法、ジャイアンとスネ夫の関係性、WINとWINの排他性、検索され続ける怖さからネットメディア自らが言動を自重する風潮、などなど。
  筆者は言う。「自らの想いを表わすのに、言葉ほど便利なものはない。しかし、便利だからといって既存の言葉に仮託しすぎてはいけない。どこまでも自由であるべき言葉を紋切型で拘束する害毒をほじくり出してみたかった。」
  日ごろ、ニュースを見聞きして、何かしらの違和感を感じている方が本書を読むと、その違和感の出所の実態を、解像度を上げ鮮明に見せてくれる。
  本書で述べられる世の症状と通底することを、ことジャーナリズム業界に絞って書かれた本に、「ジャーナリズム崩壊」(上杉隆・著)や「報道の脳死」(烏賀陽弘道・著)があった。この記事はこちらからご覧ください。  
  ちなみに、日ごろ映画評を見ていても、本書で書かれていることを感じます。  
【目次】                                        
(はじめに)
「乙武君」………障害は最適化して伝えられる
「育ててくれてありがとう」………親は子を育てないこともある
「ニッポンには夢の力が必要だ」………カタカナは何をほぐすのか
「禿同。良記事。」………検索予測なんて超えられる
「若い人は、本当の貧しさを知らない」………老害論客を丁寧に捌く方法
「全米が泣いた」………〈絶賛〉の言語学
「あなたにとって、演じるとは?」………「情熱大陸」化する日本
「顔に出していいよ」………セックスの「ニュートラル」
「国益を損なうことになる」………オールでワンを高めるパラドックス
「なるほど。わかりやすいです。」………認め合う「ほぼ日」的言葉遣い
「会うといい人だよ」………未知と既知のジレンマ
「カントによれば」………引用の印鑑的信頼
「うちの会社としては」………なぜ一度社に持ち帰るのか
「ずっと好きだったんだぜ」………語尾はコスプレである
「“泣ける”と話題のバラード」………プレスリリース化する社会
「誤解を恐れずに言えば」………東大話法と成城大話法
「逆にこちらが励まされました」………批評を遠ざける「仲良しこよし」
「そうは言っても男は」………国全体がブラック企業化する
「もうユニクロで構わない」………ファッションを彩らない言葉
「誰がハッピーになるのですか?」………大雑把なつながり
(おわりに)

1年前の7月、一夜一話。 (2014年7月掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2015-07-12 Sun 06:00:00
  • 映画
1年前の7月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年7月 Archive

掲載記事タイトル・リスト
   個別に指定の映画記事を ご覧になるには、下記の映画タイトル名をクリックしてください。

1渋滞     2濡れた赫い糸     3みれん
「渋滞」               「濡れた赫い糸」         「みれん」
監督:黒土三男          監督:望月六郎          監督:千葉泰樹
萩原健一、黒木瞳                           池内淳子、仲谷昇

4NINIFUNI.jpg     5雁の寺
「NINIFUNI」           「雁の寺」
監督:真利子哲也        監督:川島雄三
                    若尾文子

11サーカス     12リダクテッド 真実の価値     13ポケットの中の握り拳
「サーカス」           「リダクテッド 真実の価値」  「ポケットの中の握り拳」
監督:G・アラヴィンダン     監督:ブライアン・デ・パルマ  監督:マルコ・ベロッキオ
インド映画             アメリカ映画            イタリア映画
  
14グランド・ブダペスト・ホテル   
「グランド・ブダペスト・ホテル」
監督:ウェス・アンダーソン
イギリス映画

京都     本
「非・京都観光 ぶらり街歩き」  最近読んだ本から
~ 寺町御池から三条界隈    「ジャーナリズム崩壊」 「報道の脳死」
                      「ショック・ドクトリン」

1年前の7月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年7月 Archive

福島 高湯温泉に行ってきた。

  • Posted by: やまなか
  • 2015-07-15 Wed 06:00:00
  • 一話
  福島にある高湯温泉に行ってきた。
  福島と山形の県境に沿って伸びる吾妻連峰、この山塊に点在する温泉のひとつが高湯温泉だ。
  福島駅からバスで40分ほどのところにある。ただし、上姥堂経由高湯温泉行は日に5便しかない。
  高湯温泉は、吾妻山中腹、標高750mで、福島の街中とは5度くらいの温度差がある。

0_201507141231240fd.jpg  今日は好天。福島駅西口をバスが出発し、しばらく走ると周囲は広々とした緑の田園地帯になって視野が広がる。向こうに吾妻連峰が姿を見せる。この山に向かってバスは西へと走る。
  山あいに差し掛かると、つづら折りの道が続く。終点のひとつ手前で降りる。ここが高湯温泉。
  バスが行ってしまうと、陽射しの中、静けさが身にしみる。虫と鳥の鳴き声が大きく感じる。そして硫黄の臭い。遠くに福島の街が見える。
  宿は吾妻屋にした。湯は白濁している硫黄の温泉。さっそく湯に入ると、風呂の底に沈殿した湯の花が舞い上がる。源泉の湯の力を感じる。いい湯だ。露天風呂も格別。
  温度は40度~41度くらいだろうか。私には適温。スーパー銭湯より少し熱い感じだ。

  実は高湯温泉はこれで二回目。幼い時に来ている。おぼろげな記憶にあるのは、相当にひなびたところであった。
  真夏だったが、ひどい濃霧の中、狭いつづら折りを、バスはひたすら唸りをあげノロノロ走った。路肩にガードレールは無く、時折タイヤは砂利の上を横滑りした。
  当時は湯治客もいた。そういう施設を初めて見た記憶がある。もちろん今の高湯は現代的になっている。だが、今もいわゆる温泉の観光地化は避けているらしい。

  高湯温泉観光協会 高湯温泉旅館協同組合・公式サイト:http://www.naf.co.jp/azumatakayu/

  高湯温泉(ウィキペディア)の記事:https://ja.wikipedia.org/wiki/高湯温泉

 【ご注意】 ここの温泉は、全国有数の高濃度硫黄泉。帰ってから下着を洗濯したが、硫黄臭が抜けきらない。まあ、これも良しとしよう。


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今日のGoogle検索表示ランキング、上位25本の映画。

  • Posted by: やまなか
  • 2015-07-17 Fri 06:00:00
  • 映画
00  Google検索された一夜一話の記事のうち、その検索表示で上位25本の映画が以下の様になった。検索表示順位は毎日かわるので、あくまで今日のランキングです。

  なお、いつも掲示している一夜一話の「上位8作」は、当ブログにお出でいただいたすべての方が見たページのうち、閲覧回数が多い映画の上位8作品をあげています。
  上位8作は、こちらから、どうぞ。

【今日のGoogle検索表示ランキングの上位25本の映画】        
1
アメリカ
2
日本
3
・・・・・
4
香港
5
台湾
6
日本
7
フランス
8
アメリカ
9
・・・・・
10
フランス
11
日本
12
日本
13
日本
14
ロシア
15
アメリカ
16
アメリカ
17
日本
18
アメリカ
19
日本
20
アメリカ
21
日本
22
アメリカ
23
日本
24
日本
25
日本

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映画「百円の恋」 監督:武正晴 主演:安藤サクラ

上
妹の子供とゲームする一子
上2









  無職無収入彼氏一度も無しの一子32歳は、一日中パジャマか部屋着でダラダラの毎日。
  家は母が続けている弁当屋。最近、出戻りの妹が店を手伝いはじめたが、相変らず一子はなにもしない。
  夫婦不和からの妹のイライラは、一直線に姉の一子に向けられ、姉妹の間で取っ組み合いのケンカが絶えない。
  一子はついに、いや、追い出されるように家を出て、とは言え、近くに安い部屋を借りた。着の身着のまま、バッグひとつの引越し。その部屋は、いつも部屋着で行く100円コンビニ近くで、ボクシングジムの前を通る道の先にある。
  さて、さすがの一子も、職を探さないと家賃すら払えない。結局、その100円コンビニで深夜のアルバイト。

1-0_20150717114414ec8.jpg
1-1_20150717114041275.png  そんな一子でも、前から気になってる男(新井浩文)がいる。ジムで練習している彼を、前を通るたびにそっと見ている。
  ある夜、そのボクシング男がコンビニに現れた。100円のバナナ五つレジに置き、金を払ってバナナを持たず店を出て行った。店のバイトが一子に言う。ヤツはバナナマン、いつもバナナを買いに来る。
  一子はバナナの袋を持ってジムへ走った。男はいた。男はぶっきら棒に一言二言、話した。狩野というらしい。狩野は、その場で一子をデートに誘った。一子は言った。なんで私を? その返事は、誘ったらOKすると思ったから。無口なふたりのデートであった。
  後日、一子は誘われて狩野のボクシング試合を見に行った、が負けてしまう。30過ぎの狩野の引退試合であった、そしてその夜、ふとしたことで一子は、同じバイト仲間の中年男に犯されてしまう。だが、その事に負けない一子は、狩野とのままごとのような日々を過ごしていた。
  一方、ボクシングを失くし職もない狩野は、初恋に目覚めていく一子が面倒になり、他の女のもとへ去る。ふたりの関係はすぐに終わってしまった。

2-0_20150717120557921.jpg  さあ、ここから話は急展開。一子がボクシングジムに通い始める。
  ゆるいスタートであったが、彼女の人生始まって以来の懸命さ。過去を捨て去るようにボクシングに没頭し、同時に身体はみるみる引き締まって行く。ついにプロのライセンスがとれた。(安藤サクラの熱演が観客を引っ張ります)
  そんなある日、ジムの前に狩野がいて一子の練習を見ている。ボクシングはじめたのか? 

  ついにその日が来た。一子の初試合が始まる。一子の母親、妹も来ている。狩野もいる。
  さあ、試合はいかに! 一子と狩野は? うんうん、どちらも観てのお楽しみ。
  話の前段の自堕落な一子と、後半のボクシングに目覚めていく一子。この段差、観ていて違和感を感じさせない、うまい作り。なかなかいいですよ、この映画。


監督:武正晴|2014年|113分|
脚本:足立紳|撮影:西村博光|
出演:斎藤一子(安藤サクラ)|その母親・斎藤佳子(稲川実代子)|父親・斎藤孝夫(伊藤洋三郎)|妹・斎藤二三子(早織)|ボクサー狩野祐二(新井浩文)|100円コンビニ・アルバイト・44歳・野間明(坂田聡)|100円コンビニ本部社員・佐田和弘(沖田裕樹)|100円コンビニ店長・岡野淳(宇野祥平)|100円コンビニ・アルバイト・西村(吉村界人)|ボクシングジムのトレーナー・小林(松浦慎一郎)|ジムのおやじ(重松収)|100円コンビニ元アルバイト・池内敏子(根岸季衣)|一子の対戦相手のボクサー・迫田彩美(白岩佐季子)|狩野の対戦相手ボクサー・藤村京介(和宇慶勇二)|




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映画「キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語」 監督:ダーネル・マーティン

上






1-0_20150720132824764.jpg









  1950年代からはじまる、ブルースやロックンロール、ソウルのスターたちの誕生秘話。
  マディ・ウォーターズ、リトル・ウォルター、チャック・ベリー、ハウリン・ウルフ、エタ・ジェームズ、みなビッグヒットをかっ飛ばし大スターとなった。
  そしてこの映画は、キャデラック・レコードというレーベルを立ち上げ、彼らを発掘しスターダムに押し上げた、実在の音楽プロデューサー、レナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)のサクセスストーリーでもある。
  映画ではキャデラック・レコードという名にしているが、実はチェス・レコードのこと。※注
 
  みどころは、それぞれビッグスターに扮する俳優たちが、自ら歌い演奏していること。これが素晴らしい。ブラックミュージックに詳しい人でも十分に耐えられる実力あるプレーが楽しめる。
  田舎から出てきたばかりで、みすぼらしい姿のマディ・ウォーターズ役が演奏するアコースティックのスライドギターや歌、リトル・ウォルター役が演奏するブルースハープ(ハーモニカ)、チャック・ベリー役の歌とギターそしてあのダックウォーク。そして極みは、女性ソウルシンガー、エタ・ジェームズ役のビヨンセ・ノウルズのソウルフルなボーカルだ。ビヨンセはきっとアレサ・フランクリンなんかが好きだったんだろう。グッときます。特にビヨンセが歌う、チェスとの別れのスタジオ録音シーン。
  ちなみに、エタ・ジェームズ本人の声は押しつぶしたような実に独特なものですが、そんなこと置いといてビヨンセのボーカルを楽しみましょう。

  この映画、一応、史実に沿ってはいるが、省くところは省き、また伝説のベールはベールとして尊重している。
  何回もあるスタジオ録音のシーンは、ブラックミュージックの歴史の重みを感じます。ビヨンセはいままで聴いた事は無かったのですが、これを機に聴いてみようか。ただし、曲の作りやバック演奏や録音方法が今風で、私はきっと聴いてがっかりするかもしれない。
  ブラックミュージックの歴史やミュージシャンに対する人種差別にふれる映画に、ニューオリンズのR&Bやソウル音楽ドキュメンタリー「メイク・イット・ファンキー」がある。こちらからどうぞ。
  
chess.jpg  ※チェス・レコード (Chess Records)は、米国のブルース、R&B系のレコード・レーベル。シカゴに設立し、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、チャック・ベリー、エタ・ジェイムズなどの主要な作品を多く送り出した。その影響はブルースに留まらず、ロックンロールの歴史にも大きな影響を与えたと言われている。


下オリジナル・タイトル:Cadillac Records
監督・脚本:ダーネル・マーティン|アメリカ|2008年|108分|
撮影:アナスタス・ミチョス
出演:レナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)|マディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)|エタ・ジェームズ(ビヨンセ・ノウルズ)製作総指揮も担当|リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)|チャック・ベリー(モス・デフ)|レベッタ・チェス(エマニュエル・シュリーキー)|ウィリー・ディクソン(セドリック・ジ・エンターテイナー)|ジェニーヴァ・ウェイト(ガブリエル・ユニオン)|ハウリン・ウルフ(イーモン・ウォーカー)|タミー・ブランチャード|ノーマン・リーダス|





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映画「ジ、エクストリーム、スキヤキ」 監督:前田司郎

上






1-0_20150722123913b76.jpg






  これは、こころ温まる楽しい喜劇です。

  大川(窪塚洋介)37歳は、楓(倉科カナ)と一緒に住んでいる。
  ひょうきんな大川は、気軽な人生を生きている。大学生の頃からのバイト先に、今もバイトの身分で勤めている。店から店長になれと言われるが、その気はあまりない。楓とは結婚しないつもり。でもそれなりに二人は幸せな日々。楓は、一見健康そうだが、実は重い病を患っていて、病院に通っているが治る見込みはない。もちろん、そのことは大川も知っていて、彼女を支えている。
  京子(市川実日子)37歳独身は、新卒で入社した会社に今もいる。決してキャリア組じゃない。のっそりとした職場の男(黒田大輔)と、何のときめきもなく、ぬる~い関係で付き合っている。今度、二人で沖縄旅行をする予定。だが、京子は釘を刺す。私、あんたと結婚する気はないからねっ!

2-0_20150722131925cf8.jpg  そんな普通の一般市民の私生活に、15年の時を越えて、突如、割り込んできた男(井浦新)がいた。名は洞口(ほらぐち)という。洞口は、大川と京子の大学時代の友達だったが、卒業後この3人、互いに一度も会っていなかった。
  洞口はまず、大川の家にひょっこり現れる。このふたり、かつて何かがあって以来、縁を切った間柄。だから、ええっと迷惑がる大川。
  しかし、そんなこと、まったく意に介さず、洞口はひょうひょうとして大川にまとわり付くが、大川もなにせ暇を持て余している身。彼は思う。洞口に何か魂胆があってのこと、ではなさそう。
  37歳とはとても思えぬ洞口のお茶目さと大川の子供っぽさが、いつしか縁を切る前の学生時代の、アホ同士の親しい間柄に戻って行く。それを傍らから、微笑ましくみている大川の彼女・楓。
  ふたりは相談して、突然に京子を訪ねた。4人で一緒に海に行こう。なに~あんた達!と、いぶかしがる京子であった。が、4人は、大学生の時からの古い洞口の車に乗って、海へ出かける。大川手作りの木製ブーメランを飛ばしに、さしたる当てもなく。
  海に着いて浜辺に出る。楓は感激している。生まれて初めての海であった。京子も突如降って湧いた非日常を楽しんでいる。
  しかし、行ったはいいが、帰りが面倒になって来た。やっと取れた宿は、ホテルじゃなくて民宿の一室。それでも、風呂に入って、コンビニの乾きもの御つまみで学生のような宴会は楽しい。そののち雑魚寝。
  そして翌朝、4人にはそれぞれに、現実の普通の日々が待っていた。(終)

  さて、洞口のこと。
  こうしてみんなと会う少し前、実は彼は、どこか山あいの道路脇の崖から、飛び降り自殺していた。過去の自分を引きずり、次へと脱皮できずズルズルと37歳。小さな夢もやることも無かった。
  しかし、飛び降りはしたが、彼は死ななかった。いや死ねなかった。谷底に叩きつけられて全身打撲、気を失った。意識が戻り、峡谷のがれきの崖を這い上がり道路を這って、やっとのことで乗って来た車にたどり着いた。そしてドアを開け、彼が見たものは文庫本に挟んだ1枚の写真。そこには若き京子の姿が写っている。この本は、かつて京子がこの車に置き忘れた本だった。
  この時、洞口は15年の時を越え、昔の仲間に会いに行くことを思いついたのだった。そして彼は、まるでベルリンの天使のように、大川や京子が抱えるやるせない日常に、突如舞い降りて来たのであった。

  脚本がいいです。セリフがしっかり吟味されている。それを井浦、 窪塚、市川が、まるで掛け合い漫才のように、スピーディにテンポ良く上手にこなしている。これがいい。いいだけに、浜辺のシーンの洞口のセリフに、書き言葉が混じるのが目立ってしまった。加えて、洞口の自殺の話が構成上、イマイチ据わりが悪い。もう一工夫欲しい。惜しい。
  ダラダラと続く日々、そして非日常。本作と通底する映画に行定勲の映画「きょうのできごと」があった。(田中麗奈、妻夫木聡、池脇千鶴、出演) 「きょうのできごと」の記事は、こちらから。いい映画です。



下監督・原作・脚本:前田司郎|2013年|111分|
撮影:平野晋吾|音楽:ムーンライダース|
出演:井浦新(洞口)|窪塚洋介(大川)|市川実日子(京子)|倉科カナ(楓)|黒田大輔(鈴木)|西田麻耶(典子)|内田慈(仏具屋の店員)|ムーンライダースの岡田徹(仏具屋のおやじ)|ほか

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フランス映画、1960年代。いい映画。

  1960年代のフランス映画を、一夜一話から拾ってみました。
  古い映画だといって切り捨てないでください。いい映画ですよ。
  それそれ、題名をクリックして全文をご覧ください。
  今後、当ブログにあげたい’60年代作品は、あと数本かな・・・。そのうち、追加します。
  

1960
1小さな兵隊「小さな兵隊」 監督:ジャン=リュック・ゴダール
スイスのジュネーブが舞台。映像はモノクロでおしゃれでアンティーク、ベロニカ役のアンナ・カリーナは美人。ぼんやり見流していると、明るさ/憂いが入りまじった きれいなフランス映画。イヤイヤなにトボケタこと言ってんだ!ゴダールだよ!(うんうん、そうそう。)・・・


2スリ「スリ」 監督:ロベール・ブレッソン
質素と言っていいくらいにギミックのない映画。人物描写も淡白。あなたをヨイショしません。スリを始めた男が、プロの道を教えてもらい仲間になって稼ぐが、相変わらず無口な一匹狼。セリフがとても少ない。もう少し何か言いたいのを、グッと胸に収めてしまう当時のフランス人。奥ゆかしいというか、・・・

1961
35時から7時までのクレオ「5時から7時までのクレオ」 監督:アニエス・ヴァルダ
1961年のパリの街並みが、次々とめまぐるしく現れる。街頭を行く人々、カフェにたたずむ人々。パリの住人クレオが主人公だ。シングル盤3枚を出している駆け出しの歌手。クレオはこのところ、腹部に違和感を覚えるらしい。病院で検査した。・・・



1962
4ラ・ジュテ「ラ・ジュテ」 監督:クリス・マルケル
どういう戦争だったのだろうか。第三次世界大戦なるものが勃発し、そして勝利を手にした者も敗者も、極わずかな人々が生き残った。核戦争だったのか、パリの街は壊滅状態。生き残りはパリの地下に避難している。敗者となった人々は、ある実験のモルモットになった。・・・


1963
5天使の入江「天使の入江」 監督:ジャック・ドゥミ
映像の美しさを楽しむ映画。しゃれた映像。フランスの街の背景がオシャレなんじゃない。カメラワークが軽妙で実に小粋なんです。そして、やはりフィルムで作った映画は、美しい。柔らかな光、金属の輝き。回顧してるんじゃなく、陰影のグラデーションに奥行きと存在感があるんですね。・・・


6鬼火「鬼火」 監督:ルイ・マル
主人公アランは、この精神科の療養所に住んで3年になる。アルコール依存症だ。診療所は古風な欧州風大邸宅のようだ。アランは将校として立派な仕事をしてきたらしいが、アルジェリア戦争の戦争後遺症か。加えて。アランとその周辺の特権階級の人々の、退廃や繁栄や窮屈さをこの映画は表現している。・・・

7行きずりの二人「行きずりの二人」 監督:クロード・ルルーシュ
フランスの田舎の寂しい一本道、一台のシトロエンが雪道を疾走する。景色は白一色。モノクロ映像がきれいだ。終身刑の男がサンテ刑務所を脱獄し、盗んだ車で逃走。行方不明らしい。シトロエンを運転するこの男は、一人旅なのか、少なくとも旅の季節じゃない。対向車はほとんどない。男は・・・


8サンタクロースの眼は青い「サンタクロースの眼は青い」 監督:ジャン・ユスターシュ
大人の映画ですね。語り口がビターです。劇映画なんですが、軸足は少しドキュメンタリー風。当時のフランスは、職の無い若いのが街でぷらぷらしていた。本屋で万引きして転売したり、市場やデパートをめぐって財布の落し物を探したり。バイトも臨時的なのしかなかった。それがサンタ。・・・


9いぬ「いぬ」 監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
4年の刑期を終えても、この男は懲りない。2人で組んだ前回の案件は話がうますぎた。モーリスは刑務所へ。罪滅ぼしのつもりだろう、出所時ジルベールが迎えに来た。そしてまもなく、またジルベール経由で新たにうまい話が来た。モーリスは鉄橋のそばのジルベールの家を訪ねる。・・・


1964
10太陽の下の10万ドル「太陽の下の10万ドル」 監督:アンリ・ヴェルヌイユ
娯楽映画です。S字カーブが続く北アフリカの山岳地帯。小石をけ散らしながらトラックと大型トレーラーが疾走する。アウトローなフランス人たちの、度胸と、金欲しさの知恵比べと、男の意気を語るトラック野郎活劇。武器の不法輸送を企む運送会社の社長は急きょ流れ者のハンスという男を雇った。・・・

1965
11アルファヴィル「アルファヴィル」 監督:ジャン=リュック・ゴダール
主人公のレミー・コーションは、フィガロ・プラウダ紙のジャーナリストという肩書でアルファヴィル(α都市)に、銀河を越えてやって来た。アルファヴィルというこの都市、実はα60という人工知能が絶対権力を持ち独裁政治を行っている都市国家だ。α60に逆らう者は、容赦なく処刑されている。彼の任務は、・・・

1966
12アンナ「アンナ」 監督:ピエール・コラルニック
アンナ・カリーナのための映画。彼女の魅力を歌を楽しんでください。セルジュは広告制作の人たちを率いて、ターミナル駅のホームでモデルを使った写真撮影をしていた。たまたま、そのホームに降り立ったアンナ(アンナ・カリーナ)は、撮影アシスタントとぶつかって、メガネを落とした。後日、・・・



1968
13夜霧の恋人たち「夜霧の恋人たち」 監督:フランソワ・トリュフォー
みっちり作り込んだ映画もいいが、この映画のように、一筆書き風というか、風任せというような映画も、風合いがあって、いい。この映画、筋ってほどのモノもない。その場そのシーンで、何かしらの機微を、さらりと感じられれば、観て良かった、ってことになる。兵隊をクビになったアントワーヌは、職探し。・・・

14銀河「銀河」 監督:ルイス・ブニュエル
キリスト教徒巡礼の道。フランスから巡礼を始め、途中で知り合ったピエールとジャンは、できるだけヒッチハイクでラクしたいが、車はなかなか止まってくれない。フトコロも寂しい。たき火して野宿する。なかなかワイルド。ふたりとも、映画の挿入シーンに付き合えるぐらいの暇は十分あるらしい。・・・


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映画「ドイツ零年」  監督:ロベルト・ロッセリーニ

上



上2







  ストーリーを追いかける前に、まず、崩壊したベルリンの街を見て欲しい。
  どの建物も爆弾と戦火で焼け崩れ、道にはレンガが瓦礫の山になっている。これが1947-48年、ロケ隊が撮影したベルリンの街である。

1-0_20150722204901d14.jpg  主人公の少年エドムントの家族は、壊れかかった廃墟のようなアパートに住んでいる。彼は賢い子だ。利に聡い。世間をうまく立ち回れる子だった。
  父親は、第一次大戦の元兵士で、病と栄養失調でベッドに伏せっている。それを妻が面倒をみている。薬などはない。
2-0_20150722210033d73.jpg  エドムントには歳の離れた兄姉がいる。兄は、ドイツの多くの青年がそうであったようにナチ党員であった。だが、父親はそんな長男を、実はよく思っていなかった。そして終戦。
  いま、元ナチの兄は、ナチ追放のために実施されている個別審査に怯えて、一歩も外に出ようとしない。(連合軍は、全ナチ党員を対象に個別審査を実施し重要な戦犯該当者を洗い出していた)
  姉は兄に、出頭して審査をなぜ済ませてしまわないのかと詰問し、早くことを済ませ、外に出て働いてほしいと強く言う。
  そんなことで、結局この一家の稼ぎは、姉がキャバレーで働いてなんとかしている。しかし、これだけで一家五人は食っていけない。スープの具さえ、こと欠くことが多い。売れるものは売ってしまった。家主は、家賃が払えぬこの一家を追い出したい。

  この状況を見兼ねて、エドムントが小銭を稼ぎだした。街で金をだまし取る戦災孤児のグループに加わったり、エドムントが戦時中、小学校に通っていた頃の教師と出会い、小遣い稼ぎをさせてもらう。

  そんなある日、父親の容体が悪化する。かかりつけ医の伝手でなんとか満員の病院に入れた。院内では三食が出る。(病院食は豪華だった。) 
  やがて父親の容体は快復しだし、退院の運び。しかし帰宅すれば、また口数がひとり分増える。でも帰宅するしかない。
  エドムントは病院で、ある薬瓶を盗んだ。それは父親に飲ませるため。劇薬であった。そして父親は死んだ。
  稼ぎの無い老人はいなくなった方がいい、そんな風なことをエドムントは、再会した教師から言われていた。それは教師の軽い繰り言だったのかもしれない。だが、エドムントは真に受けた。
  父を愛しているはずのエドムントがなぜに、こんなことをしてしまったのか。教師の言う事に絶対服従という戦時中の教えが、そうさせたのか? 家族の心に潜む思いがそうさせたのか? あるいは、生死を分けた戦争被害による心的外傷後ストレス障害、なのか? はたまた今日を生きる生存競争のきしみがもたらすものか? どうであれ、彼の心は思いのほか蝕まれていた。
  棺もない、葬儀と言えない葬儀が準備され、遺体がアパートから運び出される。その様子をエドムントは向かいのビルから隠れて見下ろしている。そして、父を見送ったのち、エドムントはビルから身を投げた。

オリジナル・タイトル:Germania anno zero
英語タイトル:GERMANY YEAR ZERO
監督・脚本:ロベルト・ロッセリーニ|イタリア|1948年|78分|
脚色・台詞:ロベルト・ロッセリーニ、カルロ・リッツァーニ、マックス・コルペット|
撮影:ロベール・ジュイヤール|
出演:エドムント(エドムント・メシュケ)|エドムントの父(エルンスト・ピットシャウ)|姉エヴァ(インゲトラウド・ヒンツ)|兄カール=ハインツ(フランツ=オットー・クリューガー)|ほか

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映画「宇宙人ポール」 監督:グレッグ・モットーラ

上
逃亡者
有名人
怠け者
戯け者
エイリアン


1-0_201507251336399e2.jpg









  楽しい喜劇です。
  宇宙人ポールは、1947年にワイオミングの大草原の小さな一軒家の犬に激突して地球に落下した。
  その家の少女はポールに驚かず、優しく介抱した。しかし、その後、ポールは軍の極秘研究所へ拉致され、そしてはや60年が経った。
  その間、ポールは研究所で彼の知識のすべてを、友好的に地球人に伝授した。伝授した情報のうち、極わずかは、研究所から全世界に広く流布し、地球人の宇宙人像を形成するに至った。一方、ポールは地球人の習慣を習い覚えて、飲酒喫煙スラング等々・・・、簡単に言えば地球人的なオヤジと化した。
  研究所は、ポールがいまもって明かさない各種の能力を解明したかった。彼を解剖したい。これを知ったポールは研究所から脱出した。
  ポールが逃亡中に遭遇したのが、イラストレーターのグレアムと太っちょのSF作家クライブだった。
  ふたりは英国人で、観光のためキャンピングカーをレンタルし、UFOスポットめぐりの途中であった。そしてポールはふたりに拾われロードムービーとなる。目指すは、ポールを迎えにUFO母船が来る場所。途中、宿泊したモーテルの娘ルースも、なりゆきで珍道中に加わる。
  そしてだ、ゾイル捜査官らがこの4人を執拗に追跡する。ポールの身柄確保、ルース誘拐犯人追跡。ルースの父親もライフル銃片手にキャンピングカーを追う。カーチェイス。こんなややこしい中、英国人グレアムとモーテルの娘ルースが恋に落ちる。
  そして大詰め。UFO母船が来る場所とは? そこへゾイル捜査官の上司ビッグ・ガイ(シガニー・ウィーバー)がヘリで舞い降りる。役者がそろった。さあ、これからがお楽しみ。
  
 逃走する宇宙人映画
  「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」はコミカルな映画だ。ニューヨークのハーレムに現れる。見た目は地球人だ。同じ宇宙人に追われている。
  もうひとつは「レポマン」。一人の科学者が軍事施設から得体のしれないモノを後部トランクに入れ、無断で運び出した。それは徐々に熱を発して行く。彼とモノを追う秘密組織。科学者には2万ドルの賞金がかかっている。軍事施設とは、宇宙人やUFO研究で有名なアメリカの最高機密軍事施設・エリア51だ。(ともに映画題名をクリックして記事をご覧ください)
 
下オリジナル・タイトル:Paul
監督:グレッグ・モットーラ|アメリカ・フランス・イギリス合作|2011年|104分|
脚本:ニック・フロスト、サイモン・ペッグ|撮影:ローレンス・シャー|
出演:サイモン・ペッグ(イラストレーター・グレアム・ウィリー)|ニック・フロスト(SF作家・クライブ・ゴリングス)|ジェイソン・ベイトマン(ゾイル捜査官)|クリステン・ウィグ(モーテルの娘・ルース・バグス)|ビル・ヘイダー(ゾイル捜査官の部下・ハガード)|ブライス・ダナー(タラ・ウォルトン)|ジョー・ロー・トルグリオ(ゾイル捜査官の部下・オライリー)|ジョン・キャロル・リンチ(ースの父・モーゼス・バグス)|ジェーン・リンチ(パット・スティーブンス)|デビッド・ケックナー(ガス)|ジェシー・プレモンス(ジェイク)|シガニー・ウィーバー(ゾイル捜査官のボス・ビッグ・ガイ)|セス・ローゲン(ポールの声)|ジェフリー・タンバー(アダム・シャドーチャイルド)|スティーブン・スピルバーグ(スティーブン・スピルバーグの声)|

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2年前の7月、一夜一話。そして、もう1年前は・・・。 (2013年7月掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2015-07-31 Fri 06:00:00
  • 映画
2年前の7月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  (2013年7月 Archive

掲載記事タイトル・リスト(下記)
個別に指定の映画記事を ご覧になるには、下の映画タイトル名をクリックしてください。

1珍品堂主人   2兄貴の恋人   3ロボジー
「珍品堂主人」      「兄貴の恋人」      「ロボジー」
監督:豊田四郎        監督:森谷司郎     監督:矢口史靖
淡島千景、森繁久彌    酒井和歌子、内藤洋子    ミッキー・カーチス、吉高由里子

4狐と狸 2   5乙女ごころ三人姉妹   6あの夏、いちばん静かな海。 
「狐と狸」         「乙女ごころ三人姉妹」   「あの夏、いちばん静かな海。」
監督:千葉泰樹         監督:成瀬巳喜男      監督:北野武

7ツレがうつになりまして。   8事件記者   9女が、自分の道を歩む時
「ツレがうつになりまして。」「事件記者」     「女が、自分の道を歩む時」 
監督:佐々部清      監督:山崎徳次郎     映画特集
宮崎あおい、堺雅人    事件記者とは?    一夜一話からピックアップ

11マーサの幸せレシピ   12夜霧の恋人たち   13大阪ストーリー
「マーサの幸せレシピ」「夜霧の恋人たち」      「大阪ストーリー」 
監督:S・ネットルベック 監督:F・トリュフォー   監督:中田統一 イギリス

14スタンリーのお弁当箱   15愛おしき隣人
「スタンリーのお弁当箱」「愛おしき隣人」
監督:アモール・グプテ  監督:ロイ・アンダーソン

題 3年前の今月は、14本の邦画・洋画を掲載しています。
1ヶ月分の全文記事は、こちらからご覧になれます。 (2012年7月 Archive
また、個別にその映画記事だけをご覧になりたい方は、下の映画名をクリックしてご覧ください。



21サマータイムマシン・ブルース    22ハラがコレなんで   23ドキュメント灰野敬二
「サマータイムマシン・ブルース」 「ハラがコレなんで」 「ドキュメント灰野敬二」
監督:本広克行       監督:石井裕也     監督:白尾一博
瑛太、上野樹里       仲里依紗

24屋根の上の赤い女   25水の花   26もう頬づえはつかない
「屋根の上の赤い女」    「水の花」        「もう頬づえはつかない」
監督:岡太地       監督:木下雄介       監督:東陽一
            寺島咲          桃井かおり

31シチリア!シチリア!   32みんなのしらないセンダック   33ブラザー・フロム・アナザー・プラネット
「シチリア!シチリア!」  「みんなのしらないセンダック」 「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ 監督:スパイク・ジョーンズ 監督:ジョン・セイルズ
  
34パンチドランク・ラブ   35イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ   35ラスト・ホリデイ
「パンチドランク・ラブ」「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」 「ラスト・ホリデイ」
監督:ポール・トーマス・アンダーソン 監督:バンクシー監督:アミール・カラクーロフ

36少女の髪どめ    37越境者
「少女の髪どめ」      「越境者」 
監督:マジッド・マジディ   監督:ピエトロ・ジェルミ

題題000_20150723142445d5e.jpg4年前の今月は、16本の邦画・洋画を掲載しています。
1ヶ月分の全文の記事は、こちらからご覧になれます。 (2011年7月 Archive
また、個別にその映画記事だけをご覧になりたい方は、下の映画名をクリックしてご覧ください。



ここでは趣向を変えて、(いいね!・拍手・ツィートを頂いた数)の順に並べてみました。
まあ、その数が0でも、一夜一夜で取り上げる映画は、どれもいい映画なんですがね。

1.「黒い眼のオペラ」 台湾 監督:ツァイ・ミンリャン
2.「フルスタリョフ、車を!」 ロシア 監督:アレクセイ・ゲルマ
3.「キングス・オブ・クレズマー」 アメリカ 音楽ドキュメンタリー  監督:シュテファン・シュヴィーテルト
4.「竜馬暗殺」 監督:黒木和雄 出演:原田芳雄
5.「きょうのできごと」 監督:行定勲 出演:田中麗奈、妻夫木聡
6.「パーマネントバケーション」 アメリカ 監督:ジム・ジャームッシュ
7.「黒い神と白い悪魔」 ブラジル 監督:グラウベル・ローシャ
8.「スリ」 フランス 監督:ロベール・ブレッソン
9.「スイート・スイート・ビレッジ」 チェコスロヴァキア 監督:イジー・メンツェル
10.「ミフネ」 デンマーク 監督:ソーレン・クラウ・ヤコブセン
11.「ポンヌフの恋人」 フランス 監督:レオス・カラックス
12.「江分利満氏の優雅な生活」 監督:岡本喜八 出演:小林桂樹、新珠三千代
13.「どつかれてアンダルシア (仮)」 スペイン 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア B級!
14.「エヴァとステファンとすてきな家族」 スウェーデン 監督:ルーカス・ムーディソン
15.「キス・キス・バン・バン」 イギリス 監督:スチュワート・サッグ B級!
   お馴染みの「千と千尋の神隠し」の湯婆婆の息子「坊」にそっくりが出てきます。
16.「原子力戦争 Lost Love」 監督:黒木和雄 出演:原田芳雄



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プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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