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2016年05月 Archive

映画 「カリガリ博士」 (1920年)  ドイツ映画

上

 100年前の映画に、今もって感じる格好良さを発見する映画。

1-0_20160430152542cad.jpg もちろんストーリーはあるが、各シーンの背景画(書割)が主役の映画なのかも知れない。
 背景画が作り出す空間、あるいは絵画の中の世界、そんな世界のなかで登場人物たちが活躍している。
 また、この映画のサスペンスなビジュアル・イメージは、のちの世にどれ程に影響を与えたかが実感できる。この作品は今もまだ堂々としている。
   
 ストーリーは単純だが、気を抜いて観ているとラストを読み誤るかもしれない。
 その、気を抜いてしまい兼ねない訳は2つある。
 1つは、展開がヌルイこと。狂気、猟奇的犯罪、被害者といったことの語り口がヌルイ。背景画がそのヌルさをカバーしてはいるが残念だ。

 次に音楽がダサいこと。「カリガリ博士」はサイレント映画だからピアノによる音楽が全編に渡ってついている。そのサウンドは、演奏者の手癖フレーズで弾く、気の抜けたピアノ・ブルースというかそんなサウンドだが、このセンスがダサい。
 本作は幾多あるサイレント映画とは明らかにレベルが違うわけだから、もう少し質の高い演奏者を選ぶべきであった。(公開当時はサウンドトラックは無い。この音楽はのちに付加されたもの)
 ま、そうは言っても、観ておきたい映画です。

オリジナル・タイトル:DAS CABINET DES DR. CALIGARI
英語タイトル:THE CABINET OF DR. CALIGARI
監督:ロベルト・ウイーネ|ドイツ|1920年|66分|
脚本:ハンス・ヤノヴィッツ、カール・マイヤー|
出演:カリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)|チェザーレ(コンラート・ファイト)|フランシス(フリードリッヒ・フェーエル)|ジェーン(リル・ダゴファー)|アラン(ハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー)|オルセン博士・ジェーンの父(ルドルフ・レッティンゲル)|

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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016 今年も行ってきた。

 東京国際フォーラムで催されるコンサート、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016、今年も行ってきた。

1-1_2016050420165994a.jpg 今年の目当ては、15世紀16世紀の作曲家たちの合唱曲。
 これらの曲は、コンサートではなかなか聴けないジャンルなのだ。
 古い曲なのですが、あたかも現代音楽の作曲家がつくった曲に聴こえるのです。
 アンサンブル・ジャック・モデルヌが歌った。よーござんした。

 出演:アンサンブル・ジャック・モデルヌ|指揮:ジョエル・スービエ
 作曲家:グディメル (1510年頃-1572)ジャヌカン (1480頃–1558頃)セルトン (不明-1572)オケゲム (1410頃-1497)カイェタン (1540-1578)フォーグ (不明-不明)ムトン (1459頃-1522)
 曲目:オケゲム:キリエ(ミサ曲《今はひたすら死を待つのみ》から)オケゲム:汚れなき神の御母ジャヌカン:もしもロワール川が逆に流れるならジャヌカン:うぐいすの歌ジャヌカン:草と花よカイェタン:大地は水を飲みセルトン:ヴィニョン・ヴィニェットジャヌカン/グディメル:バビロンの流れのほとりに座りジャヌカン:サンクトゥス(ミサ曲《戦争》から)ムトン:処女なる聖母は男を知らずムトン:王妃アンヌ・ド・ブルターニュの死を悼んでフォーグ:アニュス・デイ(ミサ曲《海の中で》から)


 次に、ローザンヌ声楽アンサンブルを聴いた。
 ミッシェル・コルボ( 1934年-)が育てた合唱団だが、高齢のため今年はダニエル・ロイスという指揮者が来日した。
 演奏の力はとても素晴らしいが、今年は選曲がいただけない。
 プーランクの「7つの歌」は良かったが、他の曲はどれも、曲想の違う小曲を集めた風で、落着きがない。
 よって演奏後の感想はぼんやりしてしまった。

 出演:ダニエル・ロイス (指揮)ローザンヌ声楽アンサンブルサイモン・サヴォイ (ピアノ)
 曲目:プーランク:7つの歌ドビュッシー:シャルル・ドルレアンの詩による3つの歌ラヴェル:3つの歌ヒンデミット:リルケの詩による6つのシャンソンフォーレ:ラシーヌの賛歌 op.11、魔人たち(ジン)op.12


 そして、古楽アンサンブルのレ・パラダン を聴いた。
 これがあまりにへたくそ。金返せ!だった。

 作曲家:M=A.シャルパンティエ (1645~50頃-1704)ダングルベール (1629(1628)-1691)マレ (1656-1728)



映画 「ファンシイダンス」  監督:周防正行

上
 やっちゃイケナイことをやりたい、この気持ちはほんとうは誰にでもある。
 それが寺で修業中の修行僧なら、なおさらだ。この映画はその不真面目さと理不尽さを喜劇に仕立てた。

 陽平(本木雅弘)の実家は寺だが、住職の父親は戒律など皆目気にしない。生臭坊主なんて言葉はとっくに蒸発している。気楽なもんだ。これで生計が成り立つ。おかげで陽平は東京の大学に行けた。
 陽平は寺の後継ぎを嫌がっていたが、でも就活はしない。一年間、この永平寺のような厳格な寺で修行し認めてもらえば、後継ぎの「資格」が得られる。一年かかる長~い採用試験だが、会社にこき使われるサラリーマンになるより、自営業で自由で楽ちんな寺の住職、という選択肢は十分にあり得る。檀家という固定客も寺の不動産もある。

陽平と郁生と寺の坊主・光輝(竹中直人)
1-0_201605051447128ed.jpg 結局、陽平はたいして迷わず禅寺へ行った。行ったら、寺の前で陽平の弟・郁生(大沢健)がいた。郁生も坊主になりたい。陽平は長男だからあとを継ぐが、継げない郁生の方が坊主という職種(業種)に憧れている。そんなことで、ほかの修行僧と共にこの兄弟の修行の日々が始まる。

 修行は確かに厳しいものだったが、修行僧たちは昨日までは、その辺にいる兄ちゃん達な訳だから、そう簡単には世俗を忘れられない。肉や寿司やケンタッキーフライドチキンや甘いモノが食いたい。若い姉ちゃんにも会いたい。我慢できない。
 しかし、修行が進むうちに分かって来たことは、寺の坊主たちも陰で戒律を犯して、食っちゃいけないモノを食い、カツラかぶってキャバクラに行き、墓場で女の子とデートしていた。陽平には彼女・真朱(鈴木保奈美)がいる。寺の中では、好色坊主が修行僧を物色している。さてさて、結末はいかに。

監督・脚本:周防正行|1989年|101分|
原作:岡野玲子|撮影:長田勇市|
出演:陽平(本木雅弘)|真朱(鈴木保奈美)|郁生(大沢健)|英峻(彦摩呂)|珍来(田口浩正)|慈安(近田和生)|良好(渡浩行)|洋西(ポール・シルバーマン)|一裕(入江則雅)|晶彗(甲田益也子)|光輝(竹中直人)|寿流(菅野菜保之)|南拓然住職(村上冬樹)|アツシ(みのすけ)|硫一(大槻ケンヂ)|マドンナ(広岡由里子)|お婆さん(原ひさ子)|女性レポーター(河合美智子)|社員(柄本明)|社員(蛭子能収)|飛行機の乗客(大杉漣)|塩野厳生(宮琢磨)|塩野静子(宮本信子)|

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監督:阪本順治 主演:藤山直美        監督:清水宏  
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トーマス・アルスラン監督特集          映画で旅するイタリア 2016
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「築地ワンダーランド」              「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」
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ロメールと女たち                クシシュトフ・キェシロフスキ監督特集
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緑の光線」「レネットとミラベル四つの冒険」  「殺人に関する短いフィルム」の記事は題名をクリック
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     「冬冬の夏休み」 「恋恋風塵」   (「冬冬の夏休み」の映画記事は題名をクリック)
      監督:ホウ・シャオシェン
  5/21ユーロスペース、6/11新宿K'cinema、5/21千葉劇場、7/2ジャック&ベティほか



映画 「女はみんな生きている」  監督:コリーヌ・セロー

上
物陰に身を隠すノエミとエレーヌ

1-0_20160510122209440.png エレーヌは、なぜその女性にここまで心ひかれたのでしょう。
 この物語は、コミカルな サスペンス・ドラマです。
 話の展開がてきぱきしていて、そのスピード感は小気味よい。
 コミカルとシリアスの取り合わせ、「甘辛」の妙味を楽しみましょう。

 エレーヌ(カトリーヌ・フロ)は、仕事を持つキャリアある40代で、家事もきっちり切り回している。夫のポールは中小企業の社長で会社を経営している。息子のファブリスは大学生で惚れっぽい子、2人の女の子といい関係。つまり、この一家は何不自由ない一家だ。

 エレーヌが心ひかれたのは、ノエミという若い女だった。
 のちにわかることだが、この女は街外れの道端に立っている街娼だ。アルジェリア生まれの23歳。ノエミが幼いころ、父親はアルジェリアからパリに出稼ぎに出て別の女と家庭を持ち、母親は母親で地元の近所の男とくっついた挙句に首を吊った。
2-0_20160510122750244.png そんな中、ノエミは実の妹と一緒に父親のパリの家庭に引き取られた。この家には義母とその兄弟もいた。ノエミは頭が良く成績優秀であったが、父親はノエミに進学ではなく、10代の彼女に一方的に結婚を取り決めた。結婚で父親の懐にまとまった金が入るのである。
 しかし、直前にノエミは逃げた。逃げてパリの街を飢えてうろついた末に、麻薬ギャング一味に拉致され、ヤク漬けにされ街娼にされ、そして時が経っていた。

 そんなノエミが一味から逃げ走っているまさにその時、エレーヌは彼女に出会った。夫ポールが運転する車に向かって走って来たノエミが、フロントガラスに激突したのだ。これを見て一味はその場から逃げた。エレーヌは救急車を呼ぼうとしたが、夫はこれを制して夫婦もその場を去った。誰が見てもノエミは街娼の格好で、一味の男たちはギャングの風体だった。

 ノエミの容体が頭から離れないエレーヌは翌日、救急入院し集中治療室にいる彼女の所在を突き止めた。生死をさ迷う重体だった。その日からエレーヌは仕事と家事を棚上げにして集中治療室に通った。この間、ギャング一味が病院に現れノエミを拉致しようとしたが、果敢にもエレーヌは男たちを追い払った。(ここはコミカルなシーンのひとつ)
 
 さて、ノエミはなぜ逃げたのか、一味はなぜ街娼1人に固執するのか。それは彼女が手にした大金であった。
 仕事柄とはいえ、男を虜にするノエミの才能は抜群であった。とある富豪老人がノエミの罠にかかり、「その全財産を彼女に」生前贈与したのだ。ノエミはすかさず、ルクセンブルクからパナマへ、そして香港やケイマン経由で、すべての金を入院前にスイスのある銀行に移していた。彼女の頭の良さはギャングボスも認めていて、一味の資金洗浄を任されていた、このキャリアがここで活きたわけだ。大金隠しとタックスヘイブン。

3-0_20160510123452745.jpg 話を戻すと、エレーヌは退院したノエミを、夫ポールの母親の家にかくまった。海のそばの田舎の一軒家であった。みるみる元気になったノエミは、ポールの母親と親しくなる。母親は一人住まいで、長年にわたりポールから邪険な扱いを受けていて優しさに飢えていた。ノエミはエレーヌに対してと同様に、ポールの母親にも、母のような存在を求めていたのかもしれない。

4-1_20160510124002e9d.jpg さてさて、話の展開はまだ2つある。
 ノエミの妹が、ノエミの時と同じように結婚が決まったという話を聞きつけノエミがとった行動とは。そして、ギャング一味への仕返しとして、エレーヌとノエミが警察を巻き込んでとった行動とは。

 この映画、総じて喜劇仕立てではあるが、フランスの社会が抱える問題を列挙してみせている。
 中年に達した夫婦の癒やせぬ距離と世間体、妻の家庭内役割と夫の幼さ、夫の仕事と男社会、年老いた親と息子の疎遠、加えて男の性欲に対する皮肉といったことから、アルジェリア移民、イスラムの男尊女卑、売春と麻薬犯罪組織など多岐に渡るが、これらをうまく映画に取り込んでいる。またコリーヌ・セロー監督の女性ならではの視点が効いている。
 ところで、エレーヌはどうしてノエミという存在にここまで心ひかれたのでしょうか。


5-0_201605101301238d4.jpg原題:Chaos
監督・脚本:コリーヌ・セロー|フランス|2001年|112分|
撮影:ジャン=フランソワ・ロバン
出演:カトリーヌ・フロ(エレーヌ)|ヴァンサン・ランドン(その夫・ポール)|ラシダ・ブラクニ(ノエミ)|リーヌ・ルノー(ポールの母親・マミー)|オレリアン・ウィイク(エレーヌの子・ファブリス)|ヴォイチェフ・プショニャック(パリ)|イバン・フラネク(トゥキ)|ほか

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映画 「熱病」  ポーランド映画  監督:アグニエシュカ・ホラント(アニエスカ・ホランド)

1-0_201605101759387d3.jpg
 19世紀末から20世紀初めにかけての、ポーランドの政治活動家の悲話。
 本作は単なる歴史ドラマではなく、映画製作当時(1980年)つまり共産主義時代のポーランド政治体制下で、抑圧を受け翻弄される市民を、本作の登場人物たちになぞらえて、強権体制を批判する映画でした。

 19世紀末、その頃、ポーランドはロシア・プロイセン・オーストリアの3国によって分割統治されていました。
 そのうちのロシア領ポーランドの社会主義運動家によって1892年にパリ集会で結成された政党、ポーランド社会党の党員たちがこの映画の主役です。党員には、知識人も田舎の農民も乱暴な悪党もいて、その実態は玉石混淆でした。

 彼らはポーランドの独立回復が最大の目標でしたが、ことは遅々として進みません。彼らは体制側の高官を標的とした過激な行動を模索します。ポーランド社会党は、ヨーロッパ諸国の支援が得られず孤立し資金もありません。手作りの爆弾をひとつ仕上げ、これを綺麗な箱に入れ携える変装した男女の党員は、高官やポーランド人富裕層が集まるパーティーに紛れ込みます。しかし、標的にした軍人は自らの病のためパーティー控室で急死してしまいます。よって爆弾は使用されませんでした。

 さて、この一個の手製爆弾と時代の急変がこの映画の話の縦糸となります。横糸に用意される話には、当時の政治の不安定さを背景にした農民や商人たち庶民の姿をベースに、党員たちの様々な出自、スパイや密告、党内エリートを目指す党員、体制側と党員の二束のワラジの利益追求現実派や悪党まがいの党員、それらの男たちを粛清しようとする孤高の男、そして党員同士の悲恋などがあり、話は進みます。

 その後、ポーランド社会党は2派に分裂し政治活動は衰退します。機関紙も発行されず、連絡網も途絶えます。党に対し誠実な田舎のある党員は、党の分裂すら知らずに爆弾を抱えて党本部のあるワルシャワに出てきます。しかし、ワルシャワの空気はかつてとは違っていました。
 この愚直なまでの男は、体制側に通じた党員らしき男に騙されて警察に突き出され、爆弾を取りあげられ刑務所に放り込まれます。そしてまもなく死刑となってしまいます。
 一方、爆弾をパーティー会場に持ち込んだ女性党員はその後、気が振れてついに精神病院に入れられ、院内の治療でさらに廃人となってしまいます。
 その女性と同伴してパーティー会場にいた男性党員は、党内エリートを目指し無慈悲な官僚的な人間になって行きます。

 さて映画ラスト近く、この男性党員は体制側についたのでしょうか、上位の階級らしい軍服を着ています。爆弾を取りあげられたあの田舎出身の男がいた刑務所の塀の外、河のほとりでこの軍服の男は、例の手製爆弾の爆発処理を始めます。当然ながら、彼は手慣れた手つきでこの爆弾を扱います。そして勢いよく投げた爆弾は、河の中央で爆発し爆音とともに大きな水柱が立ちました。男はそれをじっと見つめているのでした。(終)

 映画の作りとしては、いささかたどたどしいですが、最後まで押し通す力があります。
 本作がポーランドの近現代史を学ぶきっかけになるかもしれません。
 ポーランドは強国に翻弄された国でした。 そしてユダヤ人問題もあります。「熱病」ではこの問題は取り上げられていませんが、2013年のポーランド映画「イーダ」は、ポーランド人によるユダヤ人虐殺事件が主題でした。「イーダ」の記事はこちらからどうぞ。
 
オリジナル・タイトル:Goraczka
英語タイトル:Fever
監督:アグニエシュカ・ホラント|ポーランド|1980年|118分|
原作:アンジェイ・ストルク|
出演:バルバラ・グラボフスカ|アダム・フェレンツァ|ボグスワフ・リンダ|オルギェルト・ウカシェヴィッチ|ズビグニエフ・ビエルスキ|

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1年前・2年前の5月、一夜一話。 (2015年5月・2014年5月掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2016-05-15 Sun 06:00:00
  • 映画
1年前の5月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年5月 Archive)

掲載記事タイトル・リスト
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1空気の無くなる日     2てなもんや東海道     3ペタル ダンス
空気の無くなる日」       「てなもんや東海道」       「ペタル ダンス
監督:伊東寿恵男         監督:松林宗惠          監督:石川寛
                    藤田まこと、白木みのる   宮崎あおい、忽那汐里、安藤サクラ

4嵐     5花とアリス     6共喰い
」             「花とアリス」           「共喰い
監督:稲垣浩            監督:岩井俊二          監督:青山真治
笠智衆                鈴木杏、蒼井優          菅田将暉、田中裕子

11ナポレオン・ダイナマイト     12大統領の料理人     13オズの魔法使
ナポレオン・ダイナマイト(バス男)」 「大統領の料理人」    「オズの魔法使」 ~映画音楽に魅せられて
監督:ジャレッド・ヘス       監督:クリスチャン・ヴァンサン  監督:ヴィクター・フレミング
アメリカ               主演:カトリーヌ・フロ        主演:ジュディ・ガーランド

14ビートニク     15ラ・ジュテ
ビートニク」          「ラ・ジュテ
監督:チャック・ワークマン    監督:クリス・マルケル
アメリカ               フランス

2年前の5月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  (2014年5月 Archive)

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1_20150508092028734.png     2_20150508092029966.png     3_20150508092030614.png
「森崎書店の日々」      「夜明けのうた」          「競輪上人行状記」
監督:日向朝子          監督:蔵原惟繕          監督:西村昭五郎
菊池亜希子            浅丘ルリ子              小沢昭一
    
4_201505080926017de.jpg     5_2015050809260395d.jpg     6_20150508092604b2f.jpg    
「大阪物語」           「HARUKO ハルコ」       「月はどっちに出ている」
監督:市川準           監督:野澤和之          監督:崔洋一
池脇千鶴、田中裕子      ドキュメンタリー          岸谷五朗、ルビー・モレノ

7_20150508093302a3d.jpg     8_20150508093303fc9.jpg     9_20150508093305e88.png  
「パリ・エキスプレス」     「ウィズネイルと僕」        「アイス・カチャンは恋の味」
監督:エルヴェ・ルノー     監督:ブルース・ロビンソン    監督:阿牛(アニュウ)
フランス              イギリス               マレーシア
    
10_20150508094315fb6.jpg     11_20150508094316e48.jpg     12_20150508094318222.png    
「雲が出るまで」        「シクロ」            「サニー 永遠の仲間たち」
監督:イェシム・ウスタオウル 監督:トラン・アン・ユン     監督:カン・ヒョンチョル
トルコ                ベトナム(仏)           韓国



    

ドキュメンタリー映画  ・・・これまでに記事にした映画です。

  • Posted by: やまなか
  • 2016-05-17 Tue 21:24:02
  • 映画
4こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!

 これまでに記事にしたドキュメンタリー映画です。
 ジャンルはさまざま。
 題名をクリックしてお読みください。

 <邦画編>

アトムの足音が聞こえる」 監督:冨永昌敬 2010
イザイホウ - 神の島・久高島の祭祀」 監督:野村岳也 1966
沖縄 うりずんの雨」 監督:ジャン・ユンカーマン 2015
牡蠣工場」 監督:想田和弘 2015
孤独なツバメたち  デカセギの子どもに生まれて」 監督:津村公博、中村真夕 2011
こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」 監督:片岡英子 2009
1-60HARUKO ハルコ精神」 監督:想田和弘 2008
ソレイユのこどもたち」 監督:奥谷洋一郎 2012
旅するパオジャンフー」 監督:柳町光男 1995
ドキュメント灰野敬二」 監督:白尾一博 2012
ニッポンの、みせものやさん」 監督:奥谷洋一郎 2012
HARUKO ハルコ」 監督:野澤和之 2004
Peace」 監督:想田和弘 2010
立候補」 監督:藤岡利充 2012



 <洋画編>

1 100,000年後の安全イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」 アメリカ 監督:バンクシー 2010
大阪ストーリー」 イギリス 監督:中田統一 1994
キングス・オブ・クレズマー」 アメリカ 監督:シュテファン・シュヴィーテルト 1996
クロッシング・ザ・ブリッジ ~サウンド・オブ・イスタンブール」 ドイツ 監督:ファティ・アキン 2005
Jazz Seen/カメラが聴いたジャズ」 ドイツ 監督:ジュリアン・ベネディクト 2001
100,000年後の安全」 デンマーク 監督:マイケル・マドセン 2009
情熱のピアニズム」 フランス 監督:マイケル・ラドフォード 2011
二郎は鮨の夢を見る」 アメリカ 監督:デビッド・ゲルブ 2011
石炭、金」 中国 監督:ワン・ビン 2009
ちいさな哲学者たち」 フランス 監督:ジャン=ピエール・ポッジ、ピエール・バルシェ 2010
ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」 フランス 監督:フレデリック・ワイズマン 2014
ハーブ&ドロシー」 アメリカ 監督:佐々木芽生 2008
8ちいさな哲学者たちバックコーラスの歌姫(ディーバ)たち」 アメリカ 監督:モーガン・ネビル 2013
パリ・ルーヴル美術館の秘密」 フランス 監督:ニコラ・フィリベール 1990
ビートニク」 アメリカ 監督:チャック・ワークマン 1999
ヴィヴィアン・マイヤーを探して」 アメリカ 監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル 2013
百年の夢」 チェコスロバキア 監督:ドゥシャン・ハナック 1972
フェスティバル・エクスプレス」 イギリス 監督:ボブ・スミートン 2003
胡同の精神病院 (フートン)」 中国 監督:シー・ルンチウ 2002
胡同のモツ鍋店 (フートン)」 中国 監督:シー・ルンチウ 2006
胡同の理髪師(フートン)」 中国 監督:ハスチョロー 2006
ベヒモス」 中国 監督:チャオ・リャン 2015
僕らのうちはどこ?~国境を目指す子供たち」 メキシコ 監督:レベッカ・カンミサ 2009
マリア」 ロシア 監督:アレクサンドル・ソクーロフ 1988
メイク・イット・ファンキー」 アメリカ 監督:マイケル・マーフィ 2005
闇からの声なき声」 イギリス 製作:ナタリー・ブールトン、ジョシュ・ビックス 2011
ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」 オランダ 監督:ウケ・ホーヘンダイク 2008

2Peace.jpg 3イザイホウ - 神の島・久高島の祭祀 5ソレイユのこどもたち 6ドキュメント灰野敬二
7ニッポンの、みせものやさん 8沖縄 うりずんの雨 9牡蠣工場 10_20160518100429c47.jpg
11精神 12立候補 13旅するパオジャンフー 60_20160529202955be5.jpg

2Jazz Seen/カメラが聴いたジャズ 3イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ 4ヴィヴィアン・マイヤーを探して 5キングス・オブ・クレズマー
7クロッシング・ザ・ブリッジ ~サウンド・オブ・イスタンブール 9ナショナル・ギャラリー 英国の至宝 10ハーブ&ドロシー 11バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち
12パリ・ルーヴル美術館の秘密 13フェスティバル・エクスプレス 14メイク・イット・ファンキー 15ようこそ、アムステルダム国立美術館へ
16闇からの声なき声 17胡同の理髪師 17情熱のピアニズム 18大阪ストーリー
19二郎は鮨の夢を見る 19百年の夢 20僕らのうちはどこ?~国境を目指す子供たち ビートニク



尾高忠明・指揮 N響定期公演   武満 徹/波の盆、モーツァルト/2台のピアノのための協奏曲、エルガー/変奏曲「謎」

上
 尾高忠明・指揮、N響定期公演に行ってきた。
 (第1835回定期公演 Aプログラム NHKホール 2016年5月14日)

 演奏曲目は、
 武満 徹/波の盆(1983╱1996)
 モーツァルト/2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 K.365
  (ピアノ:チック・コリア、小曽根 真)
 ・エルガー/変奏曲「謎」作品36

 まずは「波の盆」の印象だが、去年の夏、尾高指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の取り合わせで聴いた印象と全く違った。
 東フィルでの印象は水墨画に近かったが、N響では油絵の風景画をイメージした。同じ指揮者でもこうも違うものなのか。とは言え、N響という素材を活かせばこういう表現もありますという事かも知れない。しかし、打楽器がうるさかった。

 次に、チック・コリア、小曽根 真による「2台のピアノのための協奏曲」。
 このモーツァルトの曲に、2人の即興演奏が入るという尾高忠明の趣向だ。息の合ったプレイが楽しめた。2人の指は88鍵を縦横に駆け巡る。ただし、この即興演奏部分は、チック・コリアのモチーフに基づいて2人がアドリブしている。モーツァルトの雰囲気はまるでない。これを嫌がる方もいらしただろうが、逆に私はモーツァルトの古風さが好みではない。
 そして、アンコールでチック・コリアと小曽根 真が二重奏で一曲演奏した。これもチック・コリア作曲なんだろう。きれいな曲だ。音の響きが新鮮で嬉しい。
 そんなわけで、私の耳は次の曲、エルガーの変奏曲「謎」を古臭く感じて、ぼんやり聴いてました。
 
 今回思ったこと。私はやはりクラシックファンではないようだ。私はNHKホールにクラシックを聴きに来ているのではなくて、音の響きやハーモニーの素晴らしさに出会うために来ている。何ファンでもない。そう思った。

 この演奏会は撮影録音されていたので、そのうちテレビ放映されるかもしれません。





映画 「宇宙人王(ワン)さんとの遭遇」 イタリア映画  監督:アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ

上2


1-0_20160520162114ca0.jpg 宇宙人を題材にしたB級のSFだが、観客に問題提議する映画。
 
 フリーで中国語の翻訳通訳を仕事にしている女性ガイアのもとに、馴染みの斡旋会社から電話が入った。
 同時通訳のギャラが2時間で2000ユーロだと言う。あまりの高額さに一瞬躊躇したが、ガイアは引き受けることにした。

 依頼主は何やら急を要しているようで、さっそく迎えの車が来た。せかされる様にしてガイアは車に乗せられる。
 「これからの事はすべて機密だ。行先も知ってもらっては困るので目隠しをさせてもらう。」と、キュルティという男に言われた。そして、目隠しを外した場所は、地下の一室であった。

 部屋の奥は真っ暗で、どうやらそこに中国語を話す誰かがいるらしい。すぐさま、同時通訳が始まった。
 キュルティがその誰かに向かって高圧的に話し始める。ガイアは不安な気持ちを抱きつつも通訳を始めた。しかし、ここは尋問の場であった。
 暗闇で姿が見えぬ誰かは、流ちょうな中国語を話すが明らかに怯えている。「表情が見えないと正確に通訳できない」とガイアがキュルティに訴える。今度はキュルティが躊躇した。
 さて部屋の奥が明るくなるやいなや、ガイアは部屋の出口へ走った。先ほどまで王(ワン)と名乗っていた男は、なんと宇宙人であった。

図0 落ち着きを少し取り戻したガイアは勇敢にも仕事を続けた。王さんに対するキュルティの態度はますます高圧的になって行く。なぜなら尋問のやりとりが堂々巡りなのである。
 国防省のキュルティは、この宇宙人がなぜ地球に来たのか、侵略ではないか、その本意を知りたい。電極による拷問も辞さない構え。
 一方、手足を縛られ椅子に座らされている王さんだが、彼はあくまで親善的な態度を崩さず、しつこく繰り返される同じ質問に対し、「地球人と友好関係を築くために来た」と、何度も答えている。
 キュルティが高圧的になればなるほど、ガイアは王さんに同情的になって行く。思い余ってついに、彼女はキュルティに人道的になれと噛みついた。
 ガイアは休憩時に、部屋から自販機やトイレへ行った。その折、彼女は国際人権NGO、アムネスティ・インターナショナルに電話しようとしたが失敗していた。

 さて、ここからガイアの冒険が始まる。キュルティが席を外した隙に、ガイアは王さんを助け出そうと、監視の男をノックアウトして王さんを部屋から連れ出した。
 しかし、長い地下廊下を通り抜け、地上階に上がって見たその光景に、ガイアはひどく驚愕した!
 彼女が見たものは、破壊されつつある都市と、上空ではイタリア軍戦闘機とUFOとの激しい戦闘の光景であった。そして宇宙人の優勢は誰の目にも明らかであった。
 呆然としているガイアの後ろから一言、王さんは彼女に同情的に言った、その一言とは・・・・。

 
 紳士然として友好を装った王さんは、地球制覇の先遣隊であった。国防省のキュルティは、当初から強い疑惑を抱いていた。
 しかし、王さんに最善をつくそうと懸命であったガイアの善意は、見事に裏切られた。
 この映画について、米中のマスコミが言い合ったらしい。それはつまり宇宙人=中国人と捉えての、中国の覇権的行動批判とその応酬だった。
 もし、イタリアとしている国が日本なら、どうだろうか。
 もし、この宇宙人を今ヨーロッパに流入している難民に置き換えれば、どうだろうか。そして、もし、あなたがガイアであったら。
 この映画は、こうした「もし」の置き換えで立ち現れる状況を観客に考えさせ、問題提議する。

 ちなみに2つのこと。
 ひとつは、この映画にアモニーケという被害者の女性が登場する。王さんがある事情でアモニーケの家に侵入した際に、王さんはアモニーケの一撃で失神し王さんは警察に捕まった。しかし、アモニーケも国防省によって連行され、ガイアがいた同じ施設で事情聴取されていた。そして、アモニーケは王さんと国防省を敵視する一方で、ガイアの脱出を助けるのであった。
 もうひとつは、なぜ王さんは中国語を話すのか。これはキュルティの質問であった。王さんは答えた。それは中国語が地球上の一番多くが話す言葉だったと。

 最後にこの映画、シナリオは荒っぽいし、王さん(VFX)はいかにもビニール製っぽくて、お粗末。
 だが、それは意図的なのかもしれない。

                              アモニーケとガイア
下オリジナル・タイトル:L'arrivo di Wang
監督:アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ|イタリア|2011年|82分|
脚本:アントニオ・マネッティ
出演:フランチェスカ・クティカ(ガイア)|エンニオ・ファンタスティキーニ(キュルティ)|ジュリエット・エセイ・ジョセフ(アモニーケ)|アントネッロ・モッローニ(マックス)|ジャーデー・ジラルディ(ファルコ医師)|

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都響・定期演奏会  アルヴォ・ペルトとスティーヴ・ライヒ  指揮/クリスチャン・ヤルヴィ

上

 クリスチャン・ヤルヴィ指揮の東京都交響楽団が、ペルトとライヒを演奏するというので行ってきた。
 (第807回 定期演奏会Bシリーズ  サントリーホール 2016年5月18日)

 曲目は次の通り。
 ・アルヴォ・ペルト:フラトレス~弦楽オーケストラとパーカッションのための(1977/91)
 アルヴォ・ペルト:交響曲第3番(1971)
 スティーヴ・ライヒ:デュエット~2つの独奏ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための(1993)
 スティーヴ・ライヒ:フォー・セクションズ(1987)(日本初演)

 最初の曲・「フラトレス」は、いわゆるペルトらしい静謐な曲。演奏時間は10分程度の短い曲。
 次は同じくペルトの「交響曲第3番」。いろんな曲想が入り乱れる感じ。大きな絵を様々な手法で描きあげたような習作の印象。

 ライヒの「デュエット~2つの独奏ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための」は、ステージの右半分で演奏される。つまり、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。そして第1、第2ヴァイオリンの首席奏者による独奏のデュエット。ライヒらしい軽快なミニマル・ミュージックの疾走感。いいですね。
 次は、「フォー・セクションズ」、日本初演とのこと。各パートが競い合うようにしてミニマル・ミュージックが爆走していきます。
 そのうち突然、いや、満を持して2台のヴィブラフォンの独奏。待ってました!という感じ。続いて2台のマリンバが、そしてその他のパートも追いかけクライマックスへ。気がついたら身体が自然に動いている。ライヒの曲の躍動感は、生演奏でないと良さが分からない、と思う。

 総じていいコンサートでした。
 ただし、もう一歩の、キレというかツヤというかノリというか、欲しかったな。
 2008年、「コンポージア2008」でスティーヴ・ライヒが来日した時の演奏会を思い出した。あれは凄かった。と思っていると、会場入口でもらったチラシの束の中に、ライヒの演奏会があった。2017年3月1日~2日。東京オペラシティ。演奏者は、スティーヴ・ライヒ、コリン・カリー(パーカッション、指揮)、コリン・カリー・グループ、シナジー・ヴォーカルズ。

映画 「火車 HELPLESS」  韓国映画  監督:ピョン・ヨンジュ

上

1-0_201605241536307a8.png









 悲しいお話ではありますが、上質のエンターテイメント映画、サスペンス・ドラマです。原作は宮部みゆきの「火車」。

 ソウルで小ぎれいな動物病院を開いているムンホは、ある日、店の前でひとり佇む女に一目ぼれした。
 女はソニョンと名乗り、ふたりは交際を始める。そして、結婚を約束するまでに至っていた。 

 しかしソニョンには両親兄妹はおらず、ムンホの父親はそんな境遇の女が息子の嫁になることに反対していた。だが、ムンホは親の反対を押し切り、親戚に結婚式の招待状を送った。そして、父を説得すべくムンホは、ソニョンを連れ、田舎の実家へ行くことにした。
 その日は雨だった。高速に乗ったふたりは途中、サービスエリアへ寄った。ムンホがコーヒーを買いに行き戻って来ると、ソニョンの姿はどこにも無かった。
 
 ムンホは警察を頼ったが、警察は事務的な対応しか示さなかった。そこで彼は従兄のジョングン(元刑事)を訪ね、捜索の協力を得る。忽然と消えた彼女を探すムンホとジョングンは、次第にソニョンなる女の実像に迫って行くことになる。

 ムンホはとりあえず、ソウルへ引き返し彼女の部屋に行くと、室内は異常なほどに荒らされていた。
 最初の手がかりは、銀行に勤めるムンホの友人からの電話であった。お前の彼女がクレジットカードの契約申請をしたが、信用調査に落ちてカード発行できなかったと言う。自己破産している、とのことだった。
 その日友人は、仕事として彼女にその旨を連絡し、加えて友人として「ムンホはこの事を知っているか?」と聞いたという。すると、彼女はそれに答えず携帯電話を切ったらしい。(のちに分かる事だが、これがSAで彼女が姿を消した原因であった、でもなぜ?)
 ムンホは、ソニョンが自己破産しているなどという話は聞いたことがなかった。

 次にムンホは彼女の勤務先へ行き、彼女の無断欠勤を確認し、彼女が書いた手書きの履歴書の写しを得た。また、彼女と親しい会社友達はいないことを知る。ムンホは履歴書を元に前職のいくつかの会社に電話してみたが、履歴書に書かれている転職履歴はすべて架空であった。

 ムンホは、彼女の自己破産手続きをしたという弁護士を訪ね事情を聞く。そこで分かったことは、弁護士が会って手続きしたソニョンの住民登録証カードにある顔写真は、ムンホが知るソニョンとは別人であった。しかし同姓同名、その上、生年月日も住民登録番号(マイナンバー)も同じであった。
 そもそも自己破産した人間が、新たにクレジットカードの申請をするはずがない。ムンホが知るソニョンとはいったい誰なのか。なぜ、他人になりすましていたのか・・・。苦悩するムンホ。それでもソニョンへの愛は冷めなかった。

 一方、従兄のジョングンは捜査のプロであった。(彼の登場で映画はぐっと面白くなってくる) ソニョンの荒れた部屋に入って、ジョングンの刑事魂はうずいた。指紋が検出されない。
 さてジョングンは、彼女の履歴書にある過去の住所を手掛かりに、現役刑事と偽って捜査を始める。紆余曲折しながらも緻密な捜査が進み、ことは次々に明らかになって行く。

 ソニョン役の女優キム・ミニは、小手先の演技をしない。全力でソニョンを演じている。
 物語の各要所、絶妙なところで、過去のシーンや幻想シーンが入る。これが話の流れにスパイシーな起伏をつける。巧い。
 最後まで観客の心を離さない展開。力のあるいい映画です。お楽しみください。

 本作以外に最近観た、お気に入りの韓国映画はこれ。「コインロッカーの女」(2015年) こちらから記事をお読みください。

オリジナル・タイトル:화차
英語タイトル:HELPLESS
監督・脚本:ピョン・ヨンジュ|韓国|2012年|116分|
原作:宮部みゆき『火車』|撮影:キム・ドンヨン|
出演:イ・ソンギュン(チャン・ムンホ)|キム・ミニ(カン・ソニョン、実はチャ・ギョンソン)|チョ・ソンハ(キム・ジョングン元刑事)|ソン・ハユン (動物病院の女性・ハンナ)|チェ・ドクムン(ハ・ソンシク刑事)|イ・ヒジュン(ノ・スンジュ)|

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映画 「海に出た夏の旅」  ソ連映画  監督:セミョーン・アラノヴィッチ

上


1-0_20160524230729147.jpg

 1942年のソ連。夏の北極海に浮かぶ、無人島での話。

 徴兵適齢未満の少年たちを多数乗せて、古びた軍用輸送船が、この孤島へ向かっている。
 徴兵適齢未満とは言え、まだ童顔の子供も多くいるが、みな志願して集まった少年たちだ。彼らの任務は、海鳥の生息地となっている孤島に滞在し、無数にいる海鳥の卵を集め持ち帰ること。ソ連の銃後は食料不足であった。

 鳥の巣は、海に面して切り立った岩壁にある。腰にロープを巻いて崖を降りる。相棒の一人は崖の上でそのロープを支える危険な作業だ。
 この岩だらけの島には、まきにする木と飲み水がない。ボートを漕いで遠くの島へ調達に行く。その島には清流が流れ落ちる小さな滝があった。
 パンは輸送船で来る時に持ち込んだ。肉は少年たちが猟銃で撃ち落とした海鳥の肉。みなで調理する。テント生活である。少年たちの面倒をみるのは、優しい老兵の男。無線機は無い。

 ある日、ドイツ軍戦闘機1機が島に飛来し機銃掃射してきた。その直後、ソ連の戦闘機が現れ、空中戦の末、ドイツ軍戦闘機は墜落。その際、敵機搭乗員がパラシュートで、飲み水調達の島に降りたことは誰も気づかなかった。幸い、少年はみな無事であった。

 短い夏が終わろうとしていた。島では、パンが底をついた。海が荒れだし飲み水も蓄えが無くなっていた。飢えが始まろうとしていた。なぜ、パンの補給がないのか。少年を運んだあの輸送船はドイツ潜水艦によって撃沈されていたのだ。

2-0_20160524231117e98.jpg ある濃霧の日、ドイツ軍潜水艦が島付近に浮上し、少年たちの島に3人の兵士が上陸してきた。墜落した戦闘機搭乗員の捜索であった。ドイツ兵士は、少年ばかりがいることに驚いた。
 少年たちの世話役の男は、搭乗員の所在は知らないと言った。そして敵意をむき出しにする少年を制して、ここは夏休みのキャンプだと言ってその場を取り繕った。(父親が戦死した子たちは多かった)
 しかし、些細なことでドイツ兵の怒りを買い、少年たちの世話役は皆の前で射殺された。

 その頃、濃霧のなか、水を補給しようと島へ渡った年長の少年たちは、上陸後、墜落したドイツ兵と遭遇した。銃撃戦になったのち、ドイツ兵は少年たちに捕まった。その場で射殺しようとしたが、ひとりの少年が止めに入った。結局、兵士の両手を縛って、舟は島を離れた。
 島から帰って来て、年長の少年たちは世話役の死を知った。射殺を止めた少年は、ひとり猟銃を持って水の島へ引き返した。そして、ドイツ兵を見つけ出し、銃を構えるのであった。(終)
 その後、少年たちはソ連の軍艦によって無事救出された。


 映画冒頭で、少年を島へ運んだソ連の輸送船は少年たちを降ろすと、すぐさま別の海域へ向かった。その任務はドイツ潜水艦に撃沈され、漂流する連合国軍の輸送船団搭乗員の救出であった。
 1941年、ドイツは独ソ不可侵条約を破り、ソ連に侵攻を開始した。これに対し、ソ連を支援する連合国軍(アメリカ、イギリス)はソ連への物資や兵器の援助を始めた。
 この映画は、連合国軍の輸送船団を巡り、北極海で行われたドイツ軍との戦闘・「北極海の戦い」の最中の話のようだ。


オリジナル・タイトル: Летняя поездка к морю
英語タイトル:SUMMER TRIP TO THE SEA
監督:セミョーン・アラノヴィッチ|ソ連|1980年(1978年?)|88分|

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3年前・4年前の5月、一夜一話。 (2013年5月・2012年5月掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2016-05-30 Mon 06:00:00
  • 映画
3年前の5月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  (2013年5月 Archive

掲載記事タイトル・リスト
   個別に指定の映画記事を ご覧になるには、下記の映画タイトル名をクリックしてください。

1あにいもうと     2同じ星の下、それぞれの夜     3パーク アンド ラブホテル
「あにいもうと」           「同じ星の下、それぞれの夜」 「パーク アンド ラブホテル」 いち押し
監督:成瀬巳喜男         監督:富田克也ほか       監督:熊坂出
京マチ子、久我美子
  
4現代インチキ物語 騙し屋     5世にも面白い男の一生 桂春団治     6大阪の女   
「現代インチキ物語 騙し屋」  「世にも面白い男の一生 桂春団治」    「大阪の女」
監督:増村保造         監督:木村恵吾          監督:衣笠貞之助
                 淡島千景、八千草薫        京マチ子

11タッチ・オブ・スパイス     12トランシルヴァニア     13ケス    
「タッチ・オブ・スパイス」      「トランシルヴァニア」        「ケス」
監督:タソス・ブルメティス     監督:トニー・ガトリフ       監督:ケン・ローチ
    
14情熱のピアニズム     15卵     16黒猫・白猫   
「情熱のピアニズム」       「卵」             「黒猫・白猫」
ジャズピアニスト         監督:セミフ・カプランオール   監督:エミール・クストリッツァ
ミシェル・ペトルチアーニ
  
17一瞬の夢     18水辺の物語  
「一瞬の夢」          「水辺の物語」
監督:ジャ・ジャンクー      監督:ウー・ミンジン
                 マレーシア映画

無0題4年前の今月は、15本の邦画・洋画を掲載しています。
 全文の記事は、こちらからご覧になれます。
 また、個別にその映画記事だけをご覧になりたい方は、下の映画名をクリックしてご覧ください。



1嵐を呼ぶ十八人     2踊子2     3めぐりあい
「嵐を呼ぶ十八人」       「踊子」             「めぐりあい」
監督:吉田喜重         監督:清水宏         監督:恩地日出夫
                 淡島千景、京マチ子      酒井和歌子

4アトムの足音が聞こえる     5けものがれ、俺らの猿と      6キッドナップ・ブルース
「アトムの足音が聞こえる」  「けものがれ、俺らの猿と」     「キッドナップ・ブルース」
音響デザイナー:大野松雄    監督:須永秀明        監督:浅井慎平

7雲の上     8明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛     9修羅雪姫」・「修羅雪姫 怨み恋歌
「雲の上」         「明日やること ゴミ出し・・。」    「修羅雪姫」・「修羅雪姫 怨み恋歌」 
監督:富田克也(空族)    監督:上利竜太          監督:藤田敏八
              谷村美月             梶芽衣子

10新宿泥棒日記     2-0_20160529214840142.jpg
「新宿泥棒日記 」     5年前の5月の一夜一話は、こちらから
監督:大島渚

11海と大陸     12フロスト×ニクソン     13記憶の棘
「海と大陸」           「フロスト×ニクソン」      「記憶の棘」
監督:E・クリアレーゼ       監督: ロン・ハワード       監督:ジョナサン・グレイザー  
イタリア映画祭2012                       ニコール・キッドマン
アフリカの難民、地中海を渡りイタリアへ

14コンフェッション     15ルイーサ
「コンフェッション」       「ルイーサ」
監督:ジョージ・クルーニー    監督: ゴンサロ・カルサーダ


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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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