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2016年06月 Archive

映画 「煉瓦女工」  監督:千葉泰樹

上岸辺で子守りする、みさ。

いつも明るい みさ。
1-0_20160531225247cc2.jpg













 時は戦前の日本、物語はスラム街に生きる底辺の人々を描いた群像劇です。
 そのタッチは淡々としていて、むやみに悲惨さを振り回さず、時にコミカルさも交えています。この冷静な表現スタンスがこの映画の魅力を支えています。

2‐0
 横浜の鶴見の海べり、運河岸近くのここら辺りに住む人々の様子はこんなです。
 長屋は、まるで時代劇に出てくるように安普請ですし、周りの家々も相当にくたびれています。
 大工や釣舟屋といった定職に就く者も、その稼ぎは少なく、妻や娘がメリヤス工場の女工をしていたり、家で手内職をしている。夫が浪曲(浪花節)、妻は三味線という大道芸(辻芸)を生業にする者もいます。
 家庭をかえりみず家を出て行ったきりの夫もいる。残された妻はヨイトマケ(建設現場の日雇い)に出て僅かな稼ぎを得る。
 しかし、もうどうしようもなくて夜逃げする一家、病弱な体で無理をし亡くなる者もいる。また新たに、この街に転がり込んでくる者もいます。

 この映画は群像劇だが、どちらかと言うと、大人達より子供達に重心を置いて描いている。
 大工の父親、手内職する母親を両親に持つ みさ(矢口陽子)は子守りと家事を手伝う娘。みさは夜間小学校に通っている。大道芸の家の娘・千代と、釣舟屋の娘・菊子は、夜間小学校の、みさの級友だ。

 千代は大人になったら芸者になると言う。病弱な菊子は、姉たちが勤める工場の身体検査に不合格とされ、家族からは冷たいあしらいを受けている。結局、小さな工場で雇ってもらえることになり学校を退学する。夜勤もあるのだろう。千代の一家は夜逃げした。
 一方、朝鮮人のチュイが入学してきた。チュイの一家は日本に来てまもないらしい。みさはチュイと親しくなった。だが、そのチュイも学校をやめた。なんと結婚するのだという。チュイ一家が住む朝鮮人たちの家々は川向うにあって、みさの住むスラム街より、さらに貧しい。

 この映画が持つドキュメンタリー性に注目したい。
 下記の夜間小学校に関する論文は、この映画の背景を理解するのに役立つ。



3-0_20160531234418ea0.jpg 夜間小学校 (国民夜学校)
 こういう小学校が昭和20年まであった。基本的に12歳以上の児童が対象だが、特例として10歳以上でも対象とした。児童労働との関係で出来た学校だ。表 だが実際には、12歳未満の児童も通学していたし、上は20歳前後の例も決して稀ではなかったようだ。また、朝鮮人の子供らも多数入学していた。
 この映画の教室シーンで、みさや千代やチュイが役柄とは言え、どう見ても小学校児童にはみえないのが気になったが、そういうわけがあった。右記の参考資料の表(クリックして拡大)は、夜間小学校の在籍生徒の年齢構成、生徒の職業、朝鮮人の生徒数状況を示しています。
 (参考文献:首都大学東京 機関リポジトリ 「東京における夜間小学校の成立と展開」)
 http://www.repository.lib.tmu.ac.jp/dspace/bitstream/10748/2917/1/20009-8-003.pdf

チュイの結婚式はチュイの家でおこなわれた。
4-1_20160531235526c28.jpg 


  
監督:千葉泰樹|1940年製作(公開は1946年)|63分|
原作:野澤富美子|脚本:八田尚之|撮影:中井朝一|
出演:みさ:矢口陽子|みさの父:三島雅夫|みさの母:三好久子|みさの弟:小高たかし|浪曲師の春風亭梅風:徳川夢声|梅風の妻:水町庸子|その娘・千代:悦ちゃん|家を出て消息不明だったが妻を亡くし、映画ラストでは子供たちを育てる決心をした林造:小沢栄太郎|ヨイトマケに出る林造の妻お兼:赤木蘭子|林造の長男一郎:小高まさる|夜学の先生:信欣三|引っ越してきた4人家族・おきん:藤間寿子|同・政吉:松本克平|同・政吉の妻お作:清川虹子|同・音松:宇野重吉|釣舟屋:中村栄二|釣舟屋の妻:小峯ちよ子(小峰千代子)|釣舟屋の娘康江:志賀夏江|釣舟屋の娘幸子:戸川弓子|釣舟屋の娘菊子:草島競子|チュイ:椿澄枝|チュイの父:滝沢修|チュイの母:原泉|張さん:大町文夫|

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映画 「ボンボン」  アルゼンチン映画  監督:カルロス・ソリン

上

 真面目で控えめ、お人好し、そして世渡りがうまくない男・ビジェガス、52歳。
 この男が主人公の、少しビターでハッピーエンドな、大人のおとぎ話。

1‐0 お話の舞台は、アルゼンチン南部のパタゴニア地方。見渡す限りの荒野が続く。
 ビジェガスは、妻と別れて20年。以来、独身。
 そして、それ以来20年間、ビジェガスはガソリンスタンドに住み込みで働いてきた。そのスタンドは、荒野の中にポツンとある。この物語は、会社都合でビジェガスがスタンドを解雇されたことから始まる。

 ビジェガスは娘の家に転がり込んだ。だが、娘の夫は何やら精神的な疲れを抱え呆然自失、その上、幼い子供の世話で、娘は苛立っている。収入がないビジェガスは居場所が無い。自作のナイフを作って売り歩くが、まったく売れない。

 そんな折、ビジェガスは車の故障で立ち往生の若い女性に出会った。暇だけは十分あるビジェガスは、150キロ先の女性の家まで故障車を自分の車で牽引して行った。そして、車を修理したお礼にと、一匹の犬を譲り受けた。
 ドゴ・アルヘンティーノというアルゼンチン原産の獰猛そうな大型犬だ。それも血統書付。この家のあるじは、この犬種のブリーダーを夢見た矢先に亡くなったらしい。

2‐0 実は未亡人とその娘はこの犬を持て余していた。夫人の善意な発案なのだが、お人好しのビジェガスはうまい具合に犬を押し付けられた格好。犬の名はボンボン。ビジェガスは夢のカケラをもらった。(しかし、それはあとで知ること。)
 今は、金に困っている、犬を飼う余裕すらない。と思いながらも、ボンボンを連れて家に帰ると、案の定、娘は頑なに犬を拒んだ。つまり、ビジェガスは犬とセットで拒まれたわけ。いわば要らないもの同士。

 だが事は、意表を突く展開に。
 失業手当で支給された小切手を現金化しようとしたビジェガスは、銀行の前で支店長の男に出会う。この男はボンボンを一目見て、とても素晴らしい犬だと言った。この犬種の愛好家らしい。そして、ブリーダーや犬のコンクール優勝経験がある男を紹介された。

 さっそく、コンクールに向けてボンボンの訓練が始まった。ビジェガスも寝床が確保でき、娘の家を出た。
 ビジェガスの人生に吹く風の向きが、変わり始めた。さらには、ビジェガスの前に彼女となる女性が現れた。



3‐0 観たあとに、じんわりとした幸せな温かさが残る映画。
 だが、一方、監督はパタゴニア地方に住む人々の不幸せにも目を配る。
 それは、ビジェガスの娘の家庭、ドッグトレーナーの娘、ビジェガスが働いたガソリンスタンドの元従業員たち、荒野のバラックに住まう煉瓦工場の作業員たち。

   
 ドゴ・アルヘンティーノという犬種
 ジャガーやピューマといったネコ科の大型野生獣を倒せる勇敢なハンティング・ドッグを作るため、約80年前にアルゼンチンで作出された最強の獣猟犬。護衛犬や軍用犬、警察犬などとしても優秀。
 とても迫力があり、見た者を圧倒させる迫力の持ち主。飼い主に対しては忠誠を誓うが、一度噛みつくとなかなか放さないので、他の犬や家族以外の子供と会う際は注意が必要。犬種図鑑より。http://breeder.aikenonline.jp/manual/(外部リンクです)

 【カルロス・ソリン監督の映画】  ・・・これまでに記事にした映画です。
   「エバースマイル、ニュージャージー」 (1989年製作)
   この映画も舞台はパタゴニア地方。喜劇映画です。この記事は、こちらからご覧ください。 

トレーニングを受けるボンボンとビジェガス
下オリジナル・タイトル:El Perro
英語タイトル:Bombo'N: El Perro
監督:カルロス・ソリン|アルゼンチン|2004年|97分|
原案:カルロス・ソリン|脚本:サンティアゴ・カロリ 、 サルバドール・ロッセリ 、 カルロス・ソリン|
撮影監督:ユーゴ・コラス|
出演:ココことファン・ビジェガス(ファン・ビジェガス本人)|ドッグトレーナーのワルテル・ドナ-ド(ワルテル・ドナード本人)|ビジェガスの娘(マリエラ・ディアス)|ビジェガスの彼女となる歌手のスサーナ(ロサ・ヴァルセッキ)|ほか
下2


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「映画の特集」  テーマに沿って、一夜一話の中から厳選しました。

  • Posted by: やまなか
  • 2016-06-07 Tue 12:00:00
  • 映画
                               
 いくつかのテーマに沿って、一夜一話に掲載の映画の中からピックアップしています。


組 縮小「静かな映画  邦画編」

 ガラスのように、壊れやすい映画ってある。
 繊細で華奢で、語る声が小さい。
 心ない誰かが、「辛気臭くて、つまんない。」と言った瞬間に、壊れてしまう。
 心静かな時に観よう。 こちらからどうぞ

「静かな映画  洋画編」

 洋画編です。
 心静かな時に観てください。 こちらからどうぞ


1mm「子供が主演の映画は、視点がピュア。」

 子供が主演の映画は、視点がピュアです。
 世界各国の作品をこうして並べてみると、お国柄やその時代によってそれぞれに様々な色合いが輝きます。なかなか面白いですね。
 30作品を並べました。 こちらからどうぞ。

2mm「やはり、大人の映画ってある。」 

 やっぱり、大人の映画ってある。
 もちろん、R-18指定みたいなことじゃない。
 お子ちゃまじゃ、映画が言ってるその奥が理解できない。仕方ない。
 偉そうに言うわけじゃない。 こちらからどうぞ。

人生60「人生なんて、そうそう うまく行かないワケよ。」

 悲しい映画。
 人生なんて、そうそう上手く行かないワケ。
 そんな登場人物の「心のひだ」に感応して、涙して。
 穏やかなハッピーエンドだと、ほっとほんのり安堵する。
 こっちの気持ちも、ほぐれてくる。そんな幸せもある。
 こんな気持ちで、ただぼんやりしている時間も欲しいものだ。  こちらからどうぞ。

紹介60「女が、自分の道を歩む時」

 きょうび、女子が「自分の道」を歩みはじめた時、男子よりずっと強い。
 へこんでも、へこたれない。へこたれても、起き上がる。
 起き上がって・・・、時に、ため息もする。 こちらからどうぞ。


関西  関西60「関西の映画です。」

 大阪をはじめ、関西が舞台の映画を、過去の記事から選び出しました。
 東京目線で言うと、日本で一番の、最大勢力なローカル・関西。
 関西目線でいうと、東京、ナンボのもんじゃ!  こちらからどうぞ。


紹介0060「自分を探す旅 (邦画編 その1)」

  誰しも、自分を探す。
  恥ずかしながら、自分を見失う事もある。
  自分の中を見てみる。
  見渡せるもんじゃない。
  宇宙より、自分の中のほうが、奥が深い。と言っておこう。  こちらからどうぞ。

捜し00「自分を探す旅 (邦画編 その2)」

  「自分を探す旅(邦画編)」の続編です。ご覧ください。
  こちらからどうぞ

「フランス映画、1960年代。いい映画。」
  1960年代のフランス映画を、一夜一話から拾ってみました。
  こちらからどうぞ。

「中央アジア・西アジア・南アジアの映画」
  これまでに一夜一話で取りあげた、アジアの映画です。(以下、五十音順)  この特集、人気があります。
  こちらからどうそ。

「ATGの映画」
  これまでに掲載したATGの映画をリストアップしてみました。こちらからどうぞ。

「実話の映画 邦画編」
  実話を基にした映画、事実をヒントにした映画を、過去に掲載した記事から集めてみました。
  こちらから、どうぞ。

「ちょっと変な映画」 特集  (洋画編)
 でも、どれも可笑しい話です。こちらから、どうぞ。
 一夜一話ならではの観点から選びました。

「ちょっと変な映画」 特集  (邦画編)
 同じく、ここに邦画を集めました。こちらからどうぞ。

「ドキュメンタリー映画の特集」
 これまでに記事にしたドキュメンタリー映画です。こちらかどうぞ。


映画 「のるかそるか」  監督:ジョー・ピトカ

上
左端がルーニー、中央が主人公の男・トロッター。(競馬場にて)

 一生に一度くらいは、こんなことがあって欲しい!
 競馬場でのドタバタ喜劇。スカッとしたい時、ご覧ください。

 タクシー運転手のトロッターは、しがない競馬好き。
 そんな連中が集う、薄暗く沈んだパブがある。その誰もが、小銭を使っては一喜一憂。ほど良い憂さ晴らし。

1‐00 その日、トロッターの同僚で、これまた競馬好きのタクシー運転手・ルーニーが、運転中に乗客の会話を今日も盗み録りしていた。(盗み録りはルーニーの趣味。)
 その日、録った会話の中にこんな内容があった。それは、土曜のレースで八百長をする密談。一番不人気の馬・チャリティーを勝たせるらしい。これで一儲けしようとしている。
 ルーニーは、こんなバカげた話を真に受けはしないが、休憩中に面白がってトロッターにこの会話を聞かせたのだ。しかし、トロッターは天を仰ぎ神の啓示を得たかように興奮し、その会話を繰り返し再生し聞き入っていた。そして彼の中では、戸惑い、ためらい、動揺、胸騒ぎが混在していた。なぜなら、彼は「競馬は金輪際やめる」と、かみさんに誓って間もないのだ。しかし、誓いを守るよりも破るスリルに賭け、かつ神の啓示を信じるスリルに賭けることにした。

 レースの日の朝、トロッターはいつもとは全く違う高揚感の中にいた。
 トロッターが買った50ドル馬券1枚(チャリティー単勝勝負)が、710ドルに化けた!
 レース前、誰ひとり買おうとしない馬・チャリティーを買うトロッターに周りは笑った。結果、写真判定だった。アドレナリン噴出ののち換金、これでもう競馬はしない、そう固く自分に言い聞かせていた。トロッターは、八百長の会話が録音されたカセットテープを持ちチャリティーがいる馬房に行き、八百長を仕掛けた男たちに礼の挨拶をして、テープを返した。

2-0_20160608105211839.png しかし、相手は動揺した。口止め料としてテープを買い取ると言うが、トロッターは断わった。710ドル、これで十分な金だ。競馬はもうしない。トロッターが帰りかけると、相手が言った。次は、フェイス・ヒーラーだ。この馬も今日一番の不人気馬だ。おまけにジョッキー・クラブに入れる会員証をもらった。

 これでトロッターの魂はメラメラと燃え上がった。フェイス・ヒーラー単勝勝負で、700ドルが2450ドルに!
 そして、トロッターの前に天使が舞い降りた。馬房が並ぶ前を歩いていたトロッターは、一頭の馬の前で止まった。その馬が彼にウィンクしたのだ。この馬で単勝勝負、なんと2400ドルが6万9000ドルに!

 レースで勝負がついた瞬間、握った馬券を換金する瞬間、それはまさに至福の瞬間。観ている側も競馬に勝った気になります。競馬を知らなくても十分楽しめます。ジョッキー・クラブでは、怪しげな上流階級が上品ぶっているが、レースが始まるや、本性丸出しになるシーンも面白いでしょう。


オリジナル・タイトル:Let It Ride
監督:ジョー・ピトカ|アメリカ|1989年|86分|
原作:ジェイ・クロンリー|脚本:アーネスト・モートン|撮影:カーティス・J・ウェア|
出演:競馬好きなタクシー運転手のJ・トロッター(リチャード・ドレイファス)|やはり競馬好きな同僚・ルーニー(デイヴィッド・ヨハンセン)|トロッターの妻・パム(テリー・ガー)|馬券売りの太っちょ男(ロビー・コルトレーン)|グリーンバーグ(アレン・ガーフィールド)|その女(ジェニファー・ティリー)|

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映画 「喜劇 女は度胸」  主演:倍賞美津子、沖山秀子、渥美清  監督:森崎東

上
学は、レコード店でひとり クラシック音楽を試聴していた。


 少しビターな娯楽映画ですが、面白い。

 桃山 学(河原崎建三) に一目惚れし、アタックしたのは愛子(倍賞美津子)の方だった。
 そして、学が愛子にプレゼントした一冊の詩集がもとで、学が大変な誤解をし、そのせいで二人の愛の道のりは、大きく遠回りすることになった。
 さらには、この誤解がもとで、学の兄・勉吉(渥美清)の結婚が本決まりし、またこの誤解がもとで、学の両親(花澤徳衛、清川虹子)は、ささくれ立った夫婦の絆を、辛くも繫ぎ止めることができた。
 学が言うに、この一連の騒動はぜ~んぶ、兄さんが悪いのである。学は気弱なインテリだった。だから、兄(渥美清)や父親(花澤徳衛)が、大酒飲みで女好きで下品な人種に思え、学は日ごろから耐えきれないでいた。

母親と学、そして兄の勉吉
1-0_20160611143545238.png この映画の舞台は、東京都大田区。東京湾に突き出た羽田空港がすぐそばの運河沿い。
 学の家も、学が勤める町工場も運河岸にある。運河に沿って、空港利用客向けに大きな看板がいくつも連なって立っている。 
 愛子は、四ツ星電機の工員で女子寮(相部屋)に住んでいる。

 さて、学が愛子にプレゼントした詩集だが・・・、シーンは学の家の中。
 勉吉がちゃぶ台の前で声に出して詩集を読み上げている。それを聞いて、学は驚いた。
 なぜ、勉吉がゲーテの詩を読んでいるのか! その赤い装丁は愛子にあげた本に似ている。当然、学は兄に聞いた。その本、どうしたの。「俺の彼女だよ、ひとみチャン。コールガールだよ。どうせ本名じゃないけどな。四ツ星電機の工員だ。」 
 これを聞いた学は驚愕した。愛子はコールガールか! 四ツ星電機の工員がコールガールをしている、そんなうわさは学も聞いていた。

 実は、学が愛子にプレゼントした詩集だが・・・、
 女子寮で、愛子と同じ部屋の笑子(沖山秀子)が勝手に借りて寮から持ち出した。持ち出した先は、ホテルというより、木造のあいまい宿。つまり笑子はコールガールを副業としていた。その常連客が、学の兄の勉吉(渥美清)。勉吉は何を思ったか、その詩集を笑子から借りて家に持ち帰った。(もちろん笑子は、勉吉に弟がいることも、その彼女が愛子だということも知る由もない。)

 その日のデートは学にとって辛かった。大きな誤解の中にいる学は、「なぜ詩集が」やコールガールのことを率直に問いただせなくて、遠回しに愛子に辛く当たった。愛子は、わけが分からず、かつ不快になって、学に平手打ちを食らわし帰ってしまう。
 後日、学は斡旋屋(有島一郎)で「ひとみチャン」なる女を指名し、恐るおそる そのアパートの部屋へ向かった。
 そこは、ひとみチャン(笑子)の部屋であった。笑子は寮を出たのだ。学が訪れた時、部屋は留守だった。学は部屋の前にいた。そこへ愛子が笑子を訪ねて来た。ふたりは出会い、互いに驚くが、その驚く中身が違う。そこへ笑子が帰って来た。

2-0_20160611144141fff.png これで学の誤解は解けた。しかし、愛子は疑われていたことに大いに傷つく。また、面と向かって確かめない態度が気に入らない。そこへ、勉吉の鼻歌が聞こえてきた。学は兄に会うのを避けて、その場から逃げた。

 部屋には愛子と笑子と勉吉。勉吉は笑子に所帯を持とうかと、すき焼き鍋を前に話している。
 そのうち、窓辺に座って外をぼんやり眺めている愛子に気付く勉吉。傷つき悲しそうな愛子を見て、相談に乗ってやる。そして言う。「そんなウジウジした男、結婚してもいいことない。別れろ別れろ。」 愛子もそうだと思う。(この愛子が自分の弟の彼女だとは、勉吉はまだ知らない。)

 愛子は意を決して別れを言うため、学の「下宿」へ向かった。居たのは父親(花澤徳衛)だった。下宿じゃないんですか? えっ?お父さんですか? 学は自分の家の事、家族の事を愛子に偽っていたのだ。
 学は父親に言っていたのだろう。結婚したい女性がいるが、アルバイトでコールガールをしているかもしれないので悩んでいると。それを聞いていた父親は、「こう言っちゃ何だが・・・、その、そういう商売をした女が家庭を持つってぇのは親としては・・・」と割りとストレートに言いだした。愛子は怒る。「とにかく別れますと伝えてください!」と吐き捨てるように言い帰ろうとした。(父親は愛子の疑いが晴れたことを、まだ知らされてなかった・・・。)


3-0_201606111559041db.png そして、ここが映画の山場。
 その時、学が帰ってくる。学は玄関先で、愛子に何度目かの平手打ちを食らう。
 そこへ、酔った勉吉が笑子を連れて親に婚約発表しようと楽しげに帰って来た。
 そこで勉吉と笑子は驚く。勉吉の驚きは、愛子の彼氏が学であったこと。笑子の驚きは、客だった男が勉吉の父親だったこと。すぐさま、父親は学の嫁になる女の様子を窺いに客として行っていたのだと。続いて、学、勉吉、愛子、笑子の4人それぞれが次々に言い合う。愛子と笑子の間でも言い合うことに。可笑しい! 
 観客も知らないすべてが明らかになって行く。 (観てのお楽しみ。)

 そして、この取っ散らかった事態を収拾したのが、学の母(清川虹子)。それまで無口であった母は、肝っ玉母さんだった。学、勉吉、愛子、笑子と自分の旦那を家に上げて話をまとめていく。だが、その中で母親の告白があり、そのことで勉吉と父親が取っ組み合い、包丁騒ぎから運河にドボン。その隙に、母親は、息子たちの嫁になろうとする愛子と笑子に、ある頼みをするのであった。そして、夜が明ける。

 若い倍賞美津子と沖山秀子。特に若い頃の沖山秀子(1945 - 2011)を見てください。



下監督:森崎東|1969年|松竹|90分|
原案:山田洋次|脚本:大西信行 、 森崎東|撮影:高羽哲夫|
出演:桃山泰三(花澤徳衛)|桃山ツネ(清川虹子)|桃山勉吉(渥美清)|桃山学(河原崎建三)|白川愛子(倍賞美津子)|笑子(沖山秀子)|コールガール斡旋屋の黒田甚兵衛(有島一郎)|春子(春川ますみ)|路子(中川香奈)|太一(大橋壮多)|次郎(佐藤蛾次郎)|スミエ(久里千春)|

【森崎東監督の映画】 ~これまでに記事にした作品です。

 「時代屋の女房」、「生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言」、「街の灯」(これはお薦めしません)

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映画 「ママと娼婦」  フランス映画  監督:ジャン・ユスターシュ

上

 ひとりの男と二人の女のラブストーリー。舞台は1973年、パリ。

1-0_2016061314294824b.png 20歳代半ばくらいの男・アレクサンドル(ジャン=ピエール・レオ)は、年上の女・マリー(ベルナデット・ラフォン)の部屋に居候している。
 マリーはブティックで働いている。自分の店のようだ。一方、アレクサンドルは、仕事を待たず金銭的にも精神的にもマリーの世話になっている様子。

 セリフから想像するに、アレクサンドルはたぶん二十歳過ぎくらいの頃に、パリ五月革命(1968年)の影響を、カウンターカルチャーとして、もろに受けたようだ。しかし、それから5年経った1973年の現在、パリでは一時の高揚感は霧散していた。

 だからだろう、アレクサンドルはこの先に希望を見いだせず内向きで無気力な毎日を過ごしている。また、現実の資本主義社会にコミットして企業に勤め生活の糧を得る、いわば普通の生活スタイルに対して、彼はある種の嫌悪感を持っていた。それは、カウンターカルチャーに心酔した男の現実逃避だ。
 かたや、マリーはすでに社会人になった後に五月革命を経験し何らかの影響はあったにせよ現在、ブティックという現実の生活手段をしっかりと得ている。(登場人物の世代を日本風に置き換えれば、アレクサンドルは70年安保世代、マリーは30歳過ぎであれば60年安保の世代だ。)

 ある日、アレクサンドルはジルベルト(元彼女)に会いに行った。
 アレクサンドルとジルベルト(イザベル・ヴェンガルテン)は、多分、1968年ごろ同棲していたのだろう。彼女の妊娠・中絶を機に、アレクサンドルは彼女の元を去っていた。だが、この頃、アレクサンドルは焼け木杭に火がついたらしい。ジルベルトと結婚したい。しかし、大学に職を持ち自立しているジルベルトは、元彼に優しく振る舞いながらも拒否。ジルベルトは近く医師と結婚するのだ。

2-2_20160613143204996.png そんな喪失感の折、アレクサンドルはヴェロニカ(フランソワーズ・ルブラン)という少々猫背の女に出会う。ヴェロニカは25歳、仕事は麻酔士で病院の女子寮に住んでいる。本人が言うに、もぐりの麻酔士なので薄給らしい。これまで多くの男と寝てきたと言う。ヴェロニカはパリの街を浮遊してきた。あらかじめ諦めを背負った女のように見える。
 ふたりの出会いは愛へと発展する。ヴェロニカは彼の欠点を見据えながらも、初めて愛せる男と出会えたと言う。

3-0_2016061314391056d.png 三角関係が始まる。アレクサンドルはマリーの留守中に、ヴェロニカを部屋に引き入れた。これを機に、アレクサンドルとマリーとヴェロニカはマリーの部屋で酒を呑み、三人が同じベッドに横たわり、さらにはマリーの前でアレクサンドルとヴェロニカはセックスするまでになる。マリーは嫉妬を抑えて黙り込む。ヴェロニカは二人の前で愛について告白する。曰く、愛とは好きな男と結婚し子供を産むこと。
 ヴェロニカはアレクサンドルの子を宿していた。アレクサンドルはヴェロニカに結婚してくれと言いつつも、表情は歪む。
 映画はアレクサンドルという男を追い詰める。

 
 この映画、220分の長尺。セリフには堅苦しい会話もあるが、長尺を感じずに意外とすんなり観てしまえる。
 ヴェロニカは、ウィスキーをコカコーラで割る。アレクサンドルよりも新しいカルチャーの人を表わしているんだろう。
 ちなみに、フランスの1967年のドキュメンタリー映画に「想い出のサンジェルマン」(ジャック・バラティエ監督)がある。この映画の中で当時の音楽がよく流れる。リズム&ブルースや、これからロックになろうとするエレキサウンドだ。
 これに比べて1973年の 「ママと娼婦」の中で登場人物が聴くレコードはクラシックであったりシャンソンであったりと、音楽が古典的。暗に保守性を匂わせているのだろうか。
 総じて監督は、パリ五月革命や反戦機運やカウンターカルチャーについて否定的なシグナルを出しているのだろうか。

 どうでもいいことだが、マリーのブティックで、試着室の女性客が胸をはだけるシーンがあるが、「想い出のサンジェルマン」にも酷似のシーンがあった。

 パリ五月革命とは・・・ウィキぺディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/五月革命(フランス)
 
 
オリジナル・タイトル:La Maman et la putain
英語タイトル:THE MOTHER AND THE WHORE
監督・脚本:ジャン・ユスターシュ(1938 - 1981)|フランス|1973年|220分|
撮影:ピエール・ロム
出演:マリー(ベルナデット・ラフォン)|アレクサンドル(ジャン=ピエール・レオ)|ヴェロニカ(フランソワーズ・ルブラン)|ジルベルト(イザベル・ヴェンガルテン)|

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1年前・2年前の6月、一夜一話。 (2015年6月・2014年6月掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2016-06-16 Thu 06:00:00
  • 映画
1年前の6月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2015年6月 Archive

掲載記事タイトル・リスト
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1祭りの準備     2隣の八重ちゃん     3夫婦フーフー日記
祭りの準備」          「隣の八重ちゃん」       「夫婦フーフー日記」 お薦め!
監督:黒木和雄          監督:島津保次郎       監督:前田弘二
江藤潤、竹下景子                        永作博美、佐々木蔵之介

4浮草     5喜劇 駅前温泉     6沖縄 うりずんの雨
浮草」             「喜劇 駅前温泉」      「沖縄 うりずんの雨
監督:小津安二郎          監督:久松静児      監督:ジャン・ユンカーマン
京マチ子、若尾文子        森繁久彌、伴淳三郎       ドキュメンタリー映画

7きみはいい子
きみはいい子
監督:呉美保
高良健吾、尾野真千子

11みなさん、さようなら     12バーバー     13台湾の暇人
みなさん、さようなら」      「バーバー」            「台湾の暇人
監督:ドゥニ・アルカン       監督:ジョエル・コーエン     監督:アーサー・チュー
カナダ                アメリカ                台湾

14図     15天使     16モスクワ・天使のいない夜
中央アジア・西アジア      「天使」・「海辺にて」        「モスクワ・天使のいない夜
・南アジアの映画         監督:パトリック・ボカノウスキー  監督:セルゲイ・ボドロフ
                    フランス                 ロシア

2年前の6月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  (2014年6月 Archive

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1こだまは呼んでいる     2孤独なツバメたち  デカセギの子どもに生まれて     3BU・SU
「こだまは呼んでいる」     「孤独なツバメたち           「BU・SU」
監督:本多猪四郎         デカセギの子どもに生まれて」  監督:市川準
池部良、雪村いづみ       ドキュメンタリー映画         富田靖子

4雨月物語     5地獄     6凶気の桜
「雨月物語」           「地獄」            「凶気の桜」
監督:溝口健二          監督:中川信夫          監督:薗田賢次
京マチ子、田中絹代

11罪の手ざわり     12闇のあとの光     13新装開店
「罪の手ざわり」         「闇のあとの光」          「新装開店」
監督:ジャ・ジャンクー     監督:カルロス・レイガダス    監督:キム・ソンホン
中国               メキシコ                韓国

14_20150611155158afd.jpg     15ハーダー・ゼイ・カム     16レイチェルの結婚
「時計じかけのオレンジ」     「ハーダー・ゼイ・カム」     「レイチェルの結婚」 お薦め!
監督:スタンリー・キューブリック    主演:ジミー・クリフ     監督:ジョナサン・デミ
アメリカ                   ジャマイカ          アメリカ




           

映画 「贅沢な骨」  主演:麻生久美子、つぐみ  監督:行定勲

上
サキコとミヤコ。 マンションの屋上にて

 ふたりの女と一人の男とのラブストーリー。
 ミヤコ(麻生久美子)は、サキコ(つぐみ)という年下の女と一緒に住んでいる。サキコは無職でミヤコに養われている。

1-0_20160613164700194.jpg ミヤコはホテトル嬢だ。不感症だからこの商売をやっていけるとサキコに言っている。
 実は、ミヤコの心は空洞らしい。だから、安心を求めて誰かと繋がっていたい。それで、サキコと一緒にいる。それで、たくさんの男たちと繋がっていたいため、ホテトル嬢をしている。ミヤコはそう思っている。

 ある日、ミヤコはアキヲ(永瀬正敏)という客と出会う。会った時から、ミヤコとアキヲは気が合った。ホテルのベッドで、アキヲを相手にミヤコは生まれて初めてイッタ。
 そののち、ミヤコの方から商売抜きでアキヲを誘った。そのうち、ミヤコはサキコも連れて三人で遊ぶようになる。
 サキコの入院中に、ミヤコは自分のマンションにアキヲを引き入れた。サキコは事態を察して、このマンションを出て身を引くと言う。

2-0_20160613164935d9a.jpg だが、アキヲがサキコに関心を持つようになる。そして、ミヤコはふたりの関係を目撃してしまう。女ふたりの間に気まずい空気が漂い始める。今度はミヤコがふたりの邪魔をしないようにと、部屋を空けることが多くなった。
 しかし結局、サキコはアキヲを受け入れなかった。アキヲはふたりから遠ざかる。

 ミヤコは、やはりサキコとふたりでいる時が一番だと思う。サキコもそう思った。
 そんな矢先、ミヤコが死んでしまう。

 映画冒頭に、ミヤコはサキコに、喉の奥に鰻の骨が刺さって取れないでいると言う。「それは贅沢な悩みだよね」 とサキコはミヤコに返していた。だが、これは咽頭がんの症状だった。

 脚本がサキコの人物像を描けていないがために、サキコが入院することになったビル屋上からの衝動的な飛び降り行為や、アキヲを受け入れなかった理由が、ぼんやりしてしまっている。よって、ミヤコとサキコの、互いが互いを必要としていることが見えてこない。
 この映画、お薦めじゃないですが、先日記事にしたフランス映画 「ママと娼婦」 を観ていて、「贅沢な骨」での三角関係を思い出したので、ここに書いてみました。「ママと娼婦」の記事は、こちらから
 

監督:行定勲|2001年|105分|
脚本:行定勲 、 益子昌一|撮影:福本淳|
出演:ミヤコ - 麻生久美子|サキコ - つぐみ|新谷アキヲ - 永瀬正敏|素子 - 渡辺真起子:サキコの継母・・・縫いぐるみをサキコに渡す女|医師 - 光石研:ミヤコを診察する医師|眼鏡の客 - 田中哲司:ミヤコの客・・・鉄チャンか|花火のカップル - 津田寛治、小林美貴|危険な情事番頭 - 森下能幸:ミヤコが働くホテトルの男|病院の廊下でバレエを踊る少女 - 高木まり子|看護婦 - 山本麻里|クラブの女 - 川村カオリ:ミヤコを誘惑するレズビアン|クラブのDJ - 朝本浩文|

 【行定勲監督の映画】  ~これまでに記事にした作品です。

 「OPEN HOUSE」  出演:椎名英姫、南果歩
 「ロックンロールミシン」  出演:池内博之、りょう、加瀬亮
 「きょうのできごと」  出演:田中麗奈、妻夫木聡、池脇千鶴
 

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電話帳の世界をのぞき見る。  その1

 海外のホテルで、分厚い電話帳を開いてみると、その都市の臭いがした。
 かつて、そんな経験をすることがありました。
 電話帳の中の小さな広告は言わば、その街の小さなカケラ。
 時の歯車を巻き戻し、ネットじゃ味わえない 小さなカケラを拾ってみました。

 
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映画 「貸間あり」  主演:フランキー堺、淡島千景  監督:川島雄三  

上


1-0-0.jpg 喜劇役者が勢ぞろいした映画です。品質は天下一品!
 主人公の五郎(フランキー堺)を軸として、芸達者な俳優たちによる、息の合った素晴らしい群像劇が展開されます。
 ですが、喜劇映画を期待すると肩透かしを食らうかもしれません。何故かと言うと、ドタバタでおかしいのですが、余り笑えない変な映画なのです。

 あるシーンでは、あらかじめ緻密に計算されたスラップスティック・コメディが、ドミノ倒しのように連続するのが観られます。また、しつこいくらいに繰り返されるギャグもあります。加えて、瞬発的で突飛な言動がシーンのあちこちで飛び交います。ただし、そのどれもがアドリブではなく、また上方漫才のような馴れ合い的な笑いでもない。
 さらには、このスラップスティック・コメディやギャグ、その多くは、お話の展開に組せず、そのシーンのその場においてその場限り、あまり意味を持たせていません。よって総じて、突飛で奇異な印象を受ける向きもあろうかと思います。前衛的と言えるかもしれません。私は、ロシア映画 「フルスタリョフ、車を!」をちょっと連想しました。

 お話も一風変わっています。
 通天閣がすぐそこに見えて、大阪の街を眼下に一望できる高台に、底辺で生きる人々が住んでいます。
 そこは土塀に囲まれていて、屋敷門と広い玄関があり、かつては立派なお屋敷だったようです。しかし今は空襲を免れたボロ屋敷。とは言っても大きい家です。アパート屋敷と称している。この屋敷の各部屋に借家人たちが住んでいます。隣りの部屋との境がふすま越しの部屋もありますし、五郎(フランキー堺)は二階の広い洋間にいます。借家人のひとり、お千代(乙羽信子)の送別会をした大広間もある。

2-0-0 登場人物は様々です。
 屋敷の土間でこんにゃく製造の作業場を持つ洋吉(桂小金治)、屋敷内で骨董店を営む老人・宝珍堂とその若い妻で性的欲求不満のお澄、愛人稼業で生計を立てている・お千代(乙羽信子)、エロ写真売りのハラ作(藤木悠)、自称・保険屋の野々宮(益田喜頓)、塗り薬を発明し売出そうとしている熊田(山茶花究)と彼が庭で飼う蜂の一群、洋酒密売で儲けている明るくエネルギッシュで厚かましい女(清川虹子)、化粧品販売員の女(市原悦子)と愛する無職の夫。これに加えて、借家人たちの食事の世話をするスットンキョーな賄いのおミノ(浪花千栄子)、御隠居の大家。
 ここは底辺の人びとの梁山泊とも言えるかもしれません。

 そして映画冒頭、この梁山泊に、江藤実(小沢昭一)という学生が、五郎(フランキー堺)を訪ねてきます。
 江藤実は五郎に大学受験の代行をして欲しい。まずは予備校の模擬試験の受験代行を、と言う。五郎は渋々これを引き受けることになる。五郎は金に困っている。
 
 さて、これらの人びとを背景にして、フランキー堺、淡島千景の二人が主役を演じます。
 ボロ屋敷の借家人・五郎(フランキー堺)が住む洋間には、大きなアマチュア無線機、タイプライター、放送局用テープレコーダー、足踏みオルガン、和太鼓、天体望遠鏡、ミシン、地球儀、書籍などが所狭しと置いてある。
 五郎は物知りでインテリで器用貧乏を絵に描いたような男。どうすれば何々になれるかの、「どうすればシリーズ」全50巻の著者で、英仏独露の翻訳、懸賞小説の著述代行屋で、受験準備指導。そして大学受験代行のように他人に頼まれればなんでも引き受けてしまう気性。

3‐0 例えば、こんにゃく屋の洋吉(桂小金治)に頼まれてその製造方法を伝授したり、結婚話が決まり田舎に帰るお千代(乙羽信子)の旦那三人とのお別れ会(手切れ会)の幹事役や、しまいには宝珍堂にその妻(慢性欲求不満)からの離縁、その根拠捏造のために間男を頼まれ、五郎が女に逆レイプされそうになったり・・・。いやはや、ボロ屋敷の連中には凄いのがいます。
 ま、要するに、お人好しで気安く引き受けて、うまくこなせてしまう。でもどれも、片手間。これが彼の悩み。男として本業も無く、これで良いのか? 内心、忸怩(じくじ)たる思い。

 そんなある日、五郎「先生」のもとにユミ子(淡島千景)がやって来た。陶芸の美術品カタログの制作を先生にお願いしているらしい。ユミ子はモダンな作品を得意とする陶芸家で、街中にオシャレな陶芸ショップを開いている。一本筋の通ったキャリアある独身女性だ。

 このユミ子が、ボロ屋敷に住むことになる。長年、空いている荒れた部屋に、だ。 なぜ? それは、屋敷内の庭に陶芸窯や作業場が作れること。もうひとつの理由は、五郎先生のお傍に・・・。
 もちろん、五郎もその気だし、ユミ子がそう思ってくれることが嬉しい。だが、器用な彼が一番に苦手とするは、好きだと素直に言えないこと。確かに、その方面では初心そのもの。そしてさらに五郎が悩むのは、さしたる本業を持たずフラフラしている自分自身の情けなさ。何としても、今の自分から早く脱却しないと、ユミ子さんに好きだと言えない。彼はそう思っている。
 
 結局、勝ち気なユミ子は、大学受験代行のため九州へ出かけた五郎を追いかけて、彼が泊まる旅館へと向かいます。だが、それを知った五郎は逃げます。旅館の長~い廊下を出口に向かって一目散に五郎は逃げて行きます。それはまるで、映画 「幕末太陽傳」 の居残り佐平次(フランキー堺)のように。

 お話の組み立ては、起承転結を期待するとガッカリするかもしれません。たくさんのエピソードは散らかったままです。だからと言って粗雑な作りの映画じゃありません。実に凝った映画です。
 そして、この映画の見どころは、芸達者な俳優たちによる、息の合った素晴らしい群像劇です。そして、喜劇という手法を使って、(真正面から描くシリアスな映画では出来ない・・・)、斜めの視点から、喜怒哀楽の底辺でうごめく人びとの闊達(かったつ)さを描いているのだと思います。天下一品です。

 
 ロシア映画 「フルスタリョフ、車を!」 (1998年) 監督:アレクセイ・ゲルマン
  「貸間あり」では、ボロ屋敷に住む住人たちが次々に登場し、カメラの前に現れます。その場限りの奇異な会話やギャグがあります。五郎の部屋に置いてあるモノは、昭和34年当時の一般家庭のモノと比べて奇異です。こんなことが私に、「フルスタリョフ、車を!」を連想させました。もちろん、そのスピーディさ・えげつなさは「フルスタリョフ、車を!」の方がはるかに凌いでいますが。  「フルスタリョフ、車を!」の記事はこちらから


下0監督:川島雄三|1959年|東宝|112分|
原作:井伏鱒二|脚色:川島雄三 、 藤本義一|撮影:岡崎宏三|
出演:フランキー堺:与田五郎|淡島千景:津山ユミ子|乙羽信子:お千代|浪花千栄子:おミノ|清川虹子:島ヤスヨ|桂小金治:洋さん(谷洋吉)|山茶花究:熊田寛造|藤木悠:ハラ作(西原作一)|小沢昭一:江藤実|市原悦子:宣伝カーのウグイス嬢で化粧品販売員の高山教子|加藤春哉:その夫・高山彦一郎|渡辺篤:骨董屋の宝珍堂|西岡慶子:その妻・お澄|益田キートン:保険屋の野々宮真一|沢村いき雄:ボロ屋敷の大家で御隠居|加藤武:小松|西川ヒノデ:岸山|長谷川みのる:刑事|津川アケミ:登勢|中林真智子:女店員|頭師満:宏|宮谷春夫:四方山|青山正夫:菩提寺|守住清:地廻り|楠栄二:記者|


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映画 「ハッピー・クリスマス」   2014年アメリカ映画  監督:ジョー・スワンバーグ

上
夫ジェフ、その妹ジェニー、そして妻のケリー

ケリー
1‐0‐0 子育てに多忙な主婦ケリーと、家に転がり込んで来た傷心状態ヤケッパチな義妹ジェニーとの葛藤、そして親しくなって行くお話。
 話は総じて、取り立てて言うほどもないストーリーなのですが、映画は実に率直で普段着の日常をリアルに描く。出演俳優はいわゆるお芝居をしない。
 アメリカ発の新しい映画表現をお楽しみ下さい。

2‐0 ジェフとケリーの夫婦には、2歳の可愛いい赤ちゃんがいる。
 ジェフは映画監督で、一家は安定した いい生活を送っている。
 妻のケリーはそれまで小説を書いていたが、出産を境に、とにかく育児に追われる日々。
 小説を書く時間は無くなったが、我が子が育って行くことに、この上も無く幸せを感じている。そうケリーは思っている。
 ジェフも子供の世話をしてくれる。家を空けるときは、臨時で子守りしてくれる人もいる。
 だけど近ごろ、育児が忙しいからだろうか、ケリーはイライラしている。

 そんな折、アドベントカレンダーを今年も壁に掛けたころに、夫ジェフの妹ジェニーが転がり込んできた。彼と別れて傷心状態らしい。この先しばらくは、この家にイソウロウ(同居)することなっている。
 このことはジェフから事前に聞いてはいたものの、ジェニーとはそう親しく話したこともない間柄だし、育児に追われる中、ケリーは負担を感じない訳は無かった。

 夫妻の家に転がり込んだ翌夜、ジェニーはあるパーティに出かけた。そこでジェニーは酔いつぶれてしまう。真夜中に連絡を受けた兄ジェフは、ジェニーを連れ戻したが翌朝、彼女は二日酔いで起きてこない。
 この時、ケリーが感じる負担は、ジェニーに対する不信に変わった。ケリーは、ジェニーに今朝から子守りをお願いしていたのだ。ケリーは夫にさんざん不満を言う。

 今年のクリスマスは、夫婦の間ではクリスマスプレゼントの交換はしないと言い交わしていたが、ケリーは小説を書く時間と場所が欲しいと言い出した。ジェフは映画製作で使っていた空き部屋を彼女に提供することになる。
 やがて、この部屋にジェニーとジェニーの友人カーソンが出入りするようになり、ケリーが書くべき小説のテーマについて、女三人が話し合うようになる。(このシーンが見所のひとつ。観てのお楽しみ) 
 話は弾み、ケリーとジェニーのわだかまりは、解けていく。そして、夫に対するケリーの愚痴も出るようになる。

  あまり表面には出て来ないが、知的で上位階層のケリーと、そうでないジェニーやカーソンとの対比もさらりと描いている。
 ジェフ家の臨時の子守りでジェニーの彼になった男からもらったマリファナをジェニーが家に持ち込む。これを兄のジェフが咎めながらも、自分もたどたどしく吸うシーンが可笑しい。ちなみにジェフ役は、本作の監督。

0 会話がセリフ的でなく、どれだけ自然で日常的なのか、私は英語が分からないので分からないが、演技演出撮影は自然でリアルで新鮮さを感じます。ここんところを観てください。

 ちなみに、俳優・柄本明があるところで言っていたが、「台本を渡されて、いつも思うのは、こんなセリフ、普通じゃ言わないよね、不自然だよ。」


オリジナル・タイトル:Happy Christmas
監督・脚本・出演:ジョー・スワンバーグ|アメリカ|2014年|82分|
撮影:ベン・リチャードソン
出演:ジェフ(ジョー・スワンバーグ監督)|その妹ジェニー(アナ・ケンドリック)|ジェフの妻ケリー(メラニー・リンスキー)|カーソン(レナ・ダナム)|ノイズミュージックのミュージシャンで、ジェフ家の臨時ベビーシッターで、ジェニーの彼氏になる男。赤ちゃんは彼が好き!(マーク・ウェバー)|赤ちゃん(監督のお子さんらしい)|


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<あ行> の邦画  これまでに記事にした邦画から。 2016.6.14

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 これまでに記事にした邦画から、<あ行> の映画を並べてみました。
 題名をクリックして、ご覧ください。
 <か行>以降は、こちらからどうぞ。(邦画の五十音一覧リストです)

無題000
監督:溝口健二
1937
監督:久松静児
1959
監督:蔵原惟繕
1966
監督:舛田利雄
1958
監督:枝川弘
1955
監督:市川崑
1950
監督:鈴木英夫
1965
監督:市川崑
1952
監督:滝田洋二郎
2005
監督:上利竜太
2010
監督:ドナルド・リチー
1962
監督:冨永昌敬
2010
監督:矢口史靖
1999
監督:市川崑
1957
監督:瀬々敬久
1999
監督:市川崑
1959
監督:成瀬巳喜男
1953
監督:森谷司郎
1968
監督:北野武
1991
監督:桜井秀雄
1966
監督:清水邦夫/田原総一朗
1971
監督:飯塚健
2012
監督:稲垣浩
1956
監督:吉田喜重
1963
監督:清水宏
1936
監督:松田健太郎
2009
監督:清水宏
1938
監督:真利子哲也
2009
監督:森崎東
1985
監督:野村岳也
1966
監督:渡邊孝好
1994
監督:斎藤寅次郎
1930
監督:深作欣二
1992
監督:緒方明
2004
監督:吉村公三郎
1951
監督:藤田敏八
1974
監督:小津安二郎
1959
監督:溝口健二
1953
監督:清水宏
1941
監督:太田浩児
1961
監督:本多猪四郎
1959
監督:林海象
1996
監督:横浜聡子
2009
監督:高嶺剛
1989
監督:内田けんじ
2005
監督:田中登
1976
監督:仰木豊
2006
監督:岡本喜八
1963
監督:衣笠貞之助
1958
監督:五所平之助
1954
監督:市川準
1999
監督:行定勲
1997
監督:ジャン・ユンカーマン
2015
監督:新城卓
1983
監督:市川崑
1954
監督:マキノ正博
1939
監督:柴田剛
2004
監督:成瀬巳喜男
1935
監督:清水宏
1957
監督:真利子哲也
2012
監督:冨永昌敬
2012
監督:富田克也
2012
監督:望月六郎
1997
監督:鍛冶昇
1966
監督:阪本順治
1998
監督:林海象
1992
監督:井上梅次
1962
監督:井上春生
2008
    


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映画 「亀は意外と速く泳ぐ」  主演:上野樹里  監督:三木聡

上
夫からの電話。いつも、これと言った話は無く 「カメにエサをやったか」 で終わる。
夫のペットのカメの亀太郎を、ベランダから投げ捨てたい衝動に駆られるスズメであった。

1‐0

 夫は海外へ単身赴任してしまい、ひとりポツンと毎日を送る、主婦・片倉スズメ(上野樹里)のお話。
 これは実話なのか、それとも暇を持て余す女の誇大妄想なのか。
 話は、てんでばらばら無秩序に破天荒に意味なく展開するおバカな話なので、アホらしくて途中で投げ出す人もいる。

 とにかく、スズメはスパイになった。
 募集広告を見たのだ。(なにしろスパイの募集なので、誰にも見つからないところに、誰にも見つからないサイズのポスターが貼ってあった。偶然、ひょんなことでスズメはこれを見つけた。)
 電話して、言われるままにスズメは、目立たぬ古びた普通のアパートの一室を訪ねた。そこに住むクギタニ夫婦(岩松了、ふせえり)は、日本支部のスパイの元締めであった。指示命令は、どこかの国のスパイ組織から、クギタニ夫婦に知らされる。とは言っても、もう10年来、組織から何の音沙汰はないらしい。夫妻は辛抱強く指示を待ち、日々を送っているようだ。
 一応、面接はあった。面接結果は、スズメがあまりに普通、なのでスパイに適任、ということで合格。そして、なんと、その場で500万円の分厚い札束を渡された。活動資金だと言う。
 スズメは思う。目立たなく普通でいることは難しい。スパイになって、今まで過ごしてきた身の回りやこの街に対しての「見る目」が変わったように思える。それが刺激的で、この非日常感がスズメには嬉しい。

4-0_2016062615580445f.png いつかもし、組織から指示が出たなら、商店街の街頭放送で宣伝アナウンスをするクギタニの妻が、宣伝アナウンスに交えて集合時間を伝える事にしていた。

 誰に・・・? 
 無職でいつもパチンコ屋にいる夫はもとより、商店街のそこそこの味のラーメン屋(松重豊)も普通の豆腐屋(村松利史)も、実はベテランのスパイであった。集合場所は、近くのあの公園と決めていた。

 そしてついに、その時が来た!
 「南国ムードで疲れたあなたをお出迎え。グランドキャバレー・ファイアーダンスは冬でも熱気むんむん。明日午後9時からはサービスタイムでハッスルタイム。」
 これを聞いた皆は驚いた。ついいに来た! 明日の午後9時、公園集合だ。

 集まったのは、クギタニ夫婦にラーメン屋と豆腐屋とスズメ。そして、いつも公園のベンチにいるホームレスの婆さんの6人。
 その時、ベンチの下の公園の地面が静かに動きだし、秘密の入り口が現れた。そして・・・・。

 とまあ、基本こんな話だが、本筋の話のまわりには、たくさんのくだらんエピソードが散らばってます。
 スズメの幼なじみで、掴みどころのない謎の女・扇谷クジャク(蒼井優)は、このエピソード群のなかで登場します。
 中西刑事(伊武雅刀)の部下の福島を演じる俳優・嶋田久作。彼がかつて演じたのが映画 「帝都物語」 の魔人(加藤保憲)だったが、そのイメージを思いだすと可笑しい。
 何故なら 「亀は意外と速く泳ぐ」 では彼は鉄棒の逆上がりができないで、伊武雅刀に笑われる。



監督・脚本:三木聡|2005年|90分|
撮影:小林元|
出演:上野樹里 - 片倉スズメ|蒼井優 - スズメの幼なじみ・扇谷クジャク|
下0岩松了 - スパイの元締め・クギタニシズオ|ふせえり - その妻・クギタニエツコ|要潤 - 学生時代にスズメの憧れの男子だった・加東先輩|松重豊 - スズメが街一番と言う、そこそこの味のラーメン屋のオヤジ(実はスパイの仲間)|村松利史 - 豆腐屋のオヤジ(やはり実はスパイの仲間で射撃のプロ、頻繁に海外へ行く)|森下能幸 - 最中屋のおじさん(豆腐屋の隣りの店)|緋田康人 - スズメがベランダの排水詰まりの修繕を頼んだ水道屋(実は現代版の岡っ引き、つまり刑事の手先)|温水洋一 - 永久パーマという名の美容院のおじさん|松岡俊介 - 韮山|水橋研二 - 白バイ警官|岡本信人 - スズメの父親(ひとりで住んでいる)|伊武雅刀 - 中西刑事|嶋田久作 - その部下・福島刑事(鉄棒が出来ない男)|柿嶋孝雄 - 加東先輩の息子|? - ホームレスの婆さん|亀の「亀太郎」|


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3年前・4年前・5年前の6月、一夜一話。 (2013年6月・2012年6月・2011年6月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2016-06-30 Thu 06:00:00
  • 映画
3年前の6月掲載記事の全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。  (2013年6月 Archive

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1大地の子守歌     2愛怨峡     3下町
大地の子守歌」         「愛怨峡」            「下町(ダウンタウン)」
監督:増村保造         監督:溝口健二          監督:千葉泰樹
原田美枝子                          山田五十鈴、三船敏郎

4ハッピーフライト     5古都     123_201606281059457a9.png
ハッピーフライト」        「古都」           5年前の6月記事はこちらから
監督:矢口史靖          監督:中村登       いい映画が15本。お待ちしております。
綾瀬はるか            岩下志麻      岡本喜八「殺人狂時代」、ファティ・アキン「太陽に恋して」他

11理髪店の娘     12闇からの声なき声     13出発
理髪店の娘いい映画     「闇からの声なき声」       「出発
監督:シャーロット・リム      製作:ナタリー・ブールトン他   監督:イエジー・スコリモフスキ
マレーシア           イギリス             ベルギー

14マイ・ブルーベリー・ナイツ     15mare-sia.jpg     16ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
マイ・ブルーベリー・ナイツ」   マレーシア映画祭のまとめ   「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
監督:ウォン・カーウァイ      「マレーシア映画の現在」     監督:トーマス・ヤーン
香港                             ドイツ

17メイク・イット・ファンキー     無題123
メイク・イット・ファンキー」    映画ピックアップ  ~これまでに記事にした映画
音楽ドキュメンタリー      「人生なんて、そうそう うまく行かないワケよ。
アメリカ             邦画/洋画


4年前の今月は、14本の邦画・洋画を掲載しています。
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1ガス人間第一号     2東京物語     3ゴーヤーちゃんぷるー
ガス人間第一号」        「東京物語」          「ゴーヤーちゃんぷるー
監督:本多猪四郎         監督:小津安二郎       監督:松島哲也
八千草薫            原節子             多部未華子、武田航平

4祇園の姉妹     5今宵ひと夜を     6海ほおずき
祇園の姉妹」         「今宵ひと夜を」         「海ほおずき The Breath
監督:溝口健二         監督:千葉泰樹         監督:林海象
山田五十鈴           八千草薫             唐十郎、原田芳雄

11アーニー     12PARIS (パリ) 2     13時から7時までのクレオ
アニー・ホール」        「PARIS (パリ)」         「5時から7時までのクレオ」 
監督:ウディ・アレン       監督:セドリック・クラピッシュ    監督:アニエス・ヴァルダ
アメリカ             フランス            フランス

14中国娘     15ロードキル     16恋する惑星
中国娘」            「ロードキル」         「恋する惑星
監督:グオ・シャオルー       監督:ブルース・マクドナルド  監督:ウォン・カーウァイ
イギリス             カナダ             香港

17ボルベール     18レポマン
ボルベール<帰郷>」      「レポマン
監督:ペドロ・アルモドバル     監督:アレックス・コックス
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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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