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2017年10月17日 Archive

映画「偉大なるマルグリット」 監督:グザヴィエ・ジャノリ

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 話は悲劇なのですが、それ以上に喜劇的であります。
 夫の冷めた愛を取り戻したいがために歌う主人公の音痴がとても印象に残りますが、映画が語る本質は悲しい愛の物語なのです。

1-0_20171013211911588.png 時は1920年、フランスの郊外。
 大邸宅に住む貴族の女性マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)は裕福な資産家です。
 夫のジョルジュ・デュモンの爵位は、マルグリットが買いました。
 夫は大きなビジネスをしていますが、その資金はやはり夫人が提供しています。

 ですがマルグリットは、夫に対して金のことで恩着せがましい物言いをすることはありません。
 彼女はまったくの天然の気質で、夫を純粋に愛しています。
 かたや夫は、マルグリットに対し負い目を感じ続けていて、もはや夫の心はマルグリットから離れて久しいのです。
 しかし妻と離婚すれば金は消え失せます。夫は女と不倫をして憂さを晴らしています。

 夫婦に子はなく、夫は仕事で、あるいは浮気で家を空けることも多いようです。
 ですから、マルグリットは大邸宅にひとりいて、寂しいのです。

 マルグリットはクラシック音楽の愛好家です。音楽が彼女の心を慰めます。
 邸宅には彼女のための音楽室があり、ピアノと蓄音機があって多数のSPレコードを集めています。
 マルグリットは歌うことも趣味にしています。歌曲の譜面をたくさん持っています。
2-0_201710132120243e0.jpg インド人の執事マデルボスは彼女の歌にあわせてピアノ伴奏をします。オペラの歌曲を歌うときは、舞台衣装を着て歌います。
 そうです、マルグリットはオペラの舞台衣装や小道具も集めているのです。
 執事のマデルボスはオペラ歌手になり切ったマルグリットを写真撮影します。撮った写真はまるで有名なオペラ歌手のようです。執事はマルグリットの秘め事遊びのお相手をしています。

 でもマルグリットの本当は、歌を歌う妖艶な姿を夫に見てほしいのです。彼女は夫の愛の復活を求めているのでした。
 しかし、そんなマルグリットを、夫は陰でバケモノだと言います。

 なぜなら、マルグリットは大の音痴でした。そのうえ、自分が音痴であることを認識できないのです。彼女は先天的に歌唱能力が欠けている障害を持っているのでした。(詳細下記) 
 ですが、マルグリットは戦災孤児救済などのために、邸宅内でオーケストラ付の慈善コンサートを幾度も催します。
 観客は親しい貴族たちです。彼らはマルグリットの奇声に未だに慣れていません。ですが演奏が終わると誰もが笑顔で彼女を褒め称えます。
 夫の気遣いは計り知れません。邸宅内でひとり歌うのであれば、その時どんな舞台衣装を着ようが、夫は黙認しています。
 しかしコンサートを催す度に、夫の心は悲しいことに、ますますマルグリットから離れていくのです。

2-1_201710132122023ff.png そんなある日の邸宅内コンサートに、新聞記者と前衛的な挿絵画家、この二人の若者が密かに忍び込みます。
 そして彼らはマルグリットの圧倒的奇声に遭遇しぶったまげるわけです。特に画家は彼女を絶賛します。そして新聞記事になりました。
 つまり、夫が関係者に口外禁止にしていたマルグリットの奇声が、世間にばれてしまいました。

 さて、このシーンを導入に、映画はマルグリットの奔放さを語り始めます。
 挿絵画家はモンパルナスあたりの芸術家たち自由人の一人なのでしょうか、前衛急進的な反体制派の男です。
 この画家に誘われるままに、彼女は夜の街でジャズが流れる当時最先端のとんがった店で踊ります。(マルグリットの音楽的感性 下記)
 1人で夜の街にいること自体が初体験のマルグリットは、大いに開放感を味わいます。一人遊びに飽いたもう一人のマルグリットなのでしょうか。

2-2_20171013212350e40.png 画家が主催するアバンギャルドな催しに、マルグリットが出演し店は大騒動になり、その内容が反体制的であったことから、画家もマルグリットも警察に連行されてしまいます。世間は彼女のことをますます知ることになりました。
 画家はマルグリットに歌の先生を紹介します。そして、マルグリットは大劇場でリサイタルを開くことになります・・。

 話は飛んで、物語の結末は精神病棟でした。そこで何が行われようとするのか・・・これも観てのお楽しみ、いや悲しみましょう。 
 マルグリットを本当に思いやるのは、マルグリットの生きざまをフィルムに収めることに執心する執事と、皮肉なことに夫の不倫相手の女だけでした。

 観終わって残念なことは、脚本上、マルグリットの夫の人物描写が弱いこと。
 音痴の歌手というヒントは実話から得たようです。その人物とはアメリカのソプラノ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンス(1868-1944)という女性。歌唱能力が完全に欠落していたそうです。現在でもこの歌手のCDがあります。
 参考wikipediaサイト https://ja.wikipedia.org/wiki/フローレンス・フォスター・ジェンキンス
 なお、メリル・ストリープ主演映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」(2016年)は未見。

 ★先天性失音楽症による歌唱能力の欠如とは 参考サイト 「脳の活動によって音から音楽になる」 
  http://music-specialty.com/musicology/brain-activity.html

 ★マルグリットの音楽的感性について
  歌唱能力欠如のマルグリットですが、音楽を聴く感性は鋭いようです。
  画家に紹介されて彼女はひとりで前衛オペラ「道化師」を見に行き、いたく感銘を受けます。
  ちなみにこの音楽会会場にはプロのサクラ手配師がいて10人のサクラが拍手やブラボーを叫んでいます。
  「現代歌曲は人気がないので」と言う小人症の手配師の言が印象的です。
 
オリジナルタイトル:MARGUERITE|
監督:グザヴィエ・ジャノリ|フランス|2015年|129分|
脚本・脚色:グザヴィエ・ジャノリ|脚本協力:マルシア・ロマーノ|撮影:グリン・スピーカート|
出演:マルグリット・デュモン(カトリーヌ・フロ)|ジョルジュ・デュモン(アンドレ・マルコン)|アトスペッジーニ(ミシェル・フォー)|アゼル(クリスタ・テレ)|マデルボス(デニス・ムプンガ)|リュシアンボーモン(シルヴァン・デュエード)|キルフォンプリースト(オベール・フェノワ)|フェリシテ(ソフィア・ルブット)|ディエゴ(テオ・チョルビ)|ほか

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