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映画「ガッジョ・ディーロ」  監督:トニー・ガトリフ

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 ルーマニアの辺境にあるロマ集落にたどり着いた一人のフランス人青年、ステファン(ロマン・デュリス)。
 ロマ語もルーマニア語も解さないステファンが、なぜここへ来たのか。

 ステファンの父親は世界を旅する男であった。ステファンは父親を慕っていたのだろう。父親が旅先で録音した、遺品のカセットテープをこれまで幾度も繰り返し聴いてきた。それは哀愁あるロマの女の歌声であった。
 ステファンはその歌声の向こうに、父親が抱いた旅路のロマンを夢想した。そして、いつしかステファンはロマ音楽の魅力に取り憑かれる。ステファンはテープレコーダーと幾本ものカセットテープを持ってルーマニアへ旅立った。

1-0_20180202124406cc2.png 映画のタイトル名「ガッジョ・ディーロ」とは、ロマ語で「愚かなよそ者」を意味する。
 地元のルーマニア人も近づかないロマ集落に、ある日突然、ステファンが現れる。集落は一斉に、にわとり泥棒だなどと、ざわめき始める。

2-0_20180202124549c25.jpg そんなロマ人のなかで、ステファンに好意を抱く老人がいた。イシドールだ。
 イシドールの一人息子が警察沙汰で遠くの刑務所へ連れ去られたその日に、ステファンが集落に現れた。イシドールはしばらく会えない息子への思いを、ステファンに投影することで気が安らぐのであった。
 そうしてイシドールはなにかとステファンの面倒をみてやった。ロマ語も教えた。

 もう一人、ステファンに好意を抱くロマが現れる。サビーナ(ローナ・ハートナー)だ。ローナ・ハートナーはルーマニアの女優、歌手、作曲家。(ウィキペディアによる)
 そのうち、ふたりに恋が芽生える。ステファンはイシドールやサビーナの助けで集落に受け入れられるようになる。
 そしてステファンは、ここへ来た目的だったロマ音楽の収録を始めた。

 映画は各シーンで、ロマの素晴らしい演奏をドキュメンタリー風に見せ、また人の心あたたかくも貧しい生活の様子を伝える。
 観客はいつしか、自身もこの集落に滞在するかのような気持ちになる。(そうなれば、本作が好きになるかもしれない)

 ラスト近くになって、映画はロマに対する差別を言う。
 刑期を終えてイシドールの息子が帰ってきた。父親はじめ集落の人々は彼の帰還を大いに喜んだが、息子は自分を警察に密告したルーマニア人を酒場で見つけ襲った。
 そののち、ロマの集落を多数のルーマニア人が襲撃し、あばら家のような家々を焼き払う。この時イシドールの息子は焼死した。

 ラストシーン。
 ステファンは車に乗り、集落をあとにした。だが何を思ったのか、荒野を走る一本道の途中で車を止めた。
 そしてステファンはそっとつぶやいた。「俺ってバカだな」
 車を降り立ったステファンは、おもむろに路肩に穴を掘り、録りためたカセットテープを次々に壊して埋めた。
 その壊す音で目を覚ました女が、後部座席からむっくりと起き上がった。サビーナであった。

 たぶんふたりは、ステファンの母が待つパリへ行くのだろう。
 ステファンは大人として目覚めたのだ。
 父親が抱いた旅路のロマンをなぞってロマの人々を慕う気持ちから、目の前にいるサビーナを一人の女として愛することへと。

 映画のなかで流れるロマ・ミュージックを楽しんでください。

 ※ご参考
 1991年にはブカレスト近郊のボランタン村でロマの家100軒が数百名の暴徒に襲われ、焼き討ちに遭う事件が起きている。
 伊藤千尋・著『「ジプシー」の幌馬車を追った』p.218、1999年発行(ウィキペディアによる)
オリジナルタイトル:Gadjo Dilo
監督・脚本・音楽:トニー・ガトリフ|フランス、ルーマニア|1997年|100分|
撮影:エリック・ギシャール|
出演:フランス人青年ステファン(ロマン・デュリス)|ロマの女性サビーナ(ローナ・ハートナー)|ロマの老人イシドール(イシドール・サーバン)|その他にイシドール・サーバンはじめ、多数のロマ人素人俳優が登場する。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
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