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2018年05月 Archive

映画「ストロベリーショートケイクス」  監督:矢崎仁司

上








 恋に悩む東京の女4人、それぞれの生きざまドラマ。

 その、それぞれの生きざまは、世の中、こんな女がいるだろう、と思われる女性像を、意識的にデフォルメして、美しく標本化し、花のイラスト図鑑のように仕立ててある。

 恋に悩む女4人は、二組のペアになって登場する。(つまり映画は、4人個別の恋物語で、同時に二組の物語でもあります)



1-0_201805031336155ad.jpg 里子(池脇千鶴)と秋代(中村優子)。
 このふたりは、ちょっと高級なデリバリーヘルスの店「ヘブンズゲイト」に勤めている。里子は店の電話受付嬢、秋代はヘルス嬢。
 里子は、過去に破れた恋からやっと抜け出せた、そして今、夢のような恋をしたい願望真っ最中。
 秋代は、成就しえない恋を抱えている。思い続ける彼氏とは、専門学校の同窓の菊地(安藤政信)。男と女の親友同士で菊池にその気はないし彼女がいる。

2-0_201805031337298be.jpg ちひろ(中越典子)と塔子(原作者の魚喃キリコ、俳優芸名岩瀬塔子)。
 こちらのふたりは、ルームシェアするふたり。ちひろは、いわゆるOLで、塔子は売れだしたフリーのイラストレーター。
 女4人のなかで唯一、恋の現在進行形を行くのは、OLのちひろ。相手はビジネスマンの永井(加瀬亮)。ちひろは永井の部屋に通う。
 塔子は、彼氏に捨てられ、忘れようとして忘れかけている恋を抱えている。

 里子の話は、漫画チックに喜劇仕立ての風味。結局里子は店を辞め、バイトし始めた高架下の中華の店の、あの男と一緒になるのか。
 秋代の話は、あれがそうなら、恋は成就できなかったけれども授かったのかな。
 女4人のなかで唯一だったちひろは、一番悲しい。
 塔子は、元カレからの結婚式招待状で、忘れようとして忘れかけている昔の恋があることを、我々に見せる。 
 
 映画は、里子と秋代、ちひろと塔子の二組、女同士の話をそれぞれするが、建てつけが悪い。 
 また結末は、この二組の話をひとつにして終わらせようとするが、如何せん、無理がある。
 ちなみに、エピソードが一番リアルなのは、イラストレーターの塔子の話。発注者である編集者とフリーランスの葛藤軋轢でした。そして塔子の絵筆の筆さばき。

監督:矢崎仁司|2005年| 127分|
原作:魚喃キリコ|脚本:狗飼恭子|撮影:石井勲|
出演:里子(池脇千鶴)|秋代(中村優子)|ちひろ(中越典子)|塔子(岩瀬塔子こと魚喃キリコ)|ちひろの彼氏永井(加瀬亮)|秋代の彼氏菊地(安藤政信)|デリヘルの店「ヘブンズゲイト」の店長森尾(村杉蝉之介)|デリヘル嬢・ミチル(前田綾花)|デリヘル嬢・ユリ(宮下ともみ)|デリヘル嬢・サキエ(桂亜沙美)|街中華のリー(趙たみ和)|秋代の客(高取英)|秋代の客(諏訪太朗)||秋代の客(保坂和志)|秋代の客(戌井昭人)|編集長・大崎(矢島健一)|女医(いしのようこ)|里子の母の恋人・田所(奥村公延)|里子の母・町子(中原ひとみ)|ほか

【 一夜一話の 歩き方 】下

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映画「エスケイプ・フロム・トゥモロー」  監督:ランディ・ムーア

上

 妻子を連れてディズニーランドに来た男ジムの不幸な顛末。

5-0_20180505144113878.png 家族四人、前日に、ディズニーランドを目の前にしたホテルに一泊しての、次の朝。
 さあ、これからディズニーランドへ!という時に、ジムの携帯が鳴った。(休暇中に会社から電話が来るのは嫌なものだ)

 この電話で、働き盛りのジムは、勤め先の友人から(会社の決定だと前置きされて)突然の解雇を言い渡された。
 だが、家族でこれから楽しい時を過ごそうという、この日、ジムはクビになったことを妻に言いそびれる。

4-0_20180505144520ab4.jpg 映画は、理由が思いつかない突然の解雇によって、幸せな日常から暗い非日常へ、一気に転落したジムの、苦しい心境を、同時にプレッシャーからの逃避を表現する。(ジムは幻影を見始める)
 加えて映画は、こんな時にも、妻子に対し「良きパパ」を演じようとするジムの(現実逃避との)格闘を表していく。
 
 次いで、この不幸をトリガーにして、「良きパパ」の限界線にいるジムの目線を借りて、映画はディズニーランドという、「楽しい虚構」を実態ある世界に作り上げた、その仕組まれた作りごとを突く。(とても嫌なことがあると、目の前の楽しいことに対し、一気に批判的になるものだ)

 さらに映画は、一度嫌なことに会うと嫌なことが続きがち、というよくある「いら立ちの連鎖」を、シーン各所にうまく織り込みながら、一方で、プレッシャーからの逃避から来る、見知らぬ若い女性へのチョッカイや酒の暴飲といった、「良きパパ」ジムの、いけない誘惑との葛藤を可笑しくしてみせる。

 以上のようなことを踏まえ、話は、始めは、ディズニーランドでありがちな家族の行動/感情を示しながら、話の進行につれてジムの心に「いら立ちの連鎖」が鬱積し、後半ついに、ジムはSFの世界に迷い込み、悪夢に取り込まれて精神が爆発する。
 ちょっと、映画「未来世紀ブラジル」のラストシーンが心をかすめた。

オリジナルタイトル:Escape from Tomorrow
監督・脚本:ランディ・ムーア|アメリカ|2013年|90分|
撮影:ルーカス・リー・グラハム|
出演:ジム(ロイ・アブラムソン)|エミリー(エレナ・シューバー)|サラ(ケイトリン・ロドリゲス)|ソフィー(ダニエル・サファディ)|イザベル(アネット・マヘンドリュ)|科学者(スタッス・クラッセン)|看護師(エイミー・ルーカス)|

2_20180506145539a30.png









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映画「赤ちょうちん」 監督:藤田敏八  主演:秋吉久美子

上

 飾り気をえぐり取った殺伐とした荒い感触と、この先を見失った時代の、いかにも1970年代前半の映画といった趣きの作品です。

 熊本県天草から出てきた17歳の幸枝(秋吉久美子)と、二十歳そこそこの政行(高岡健二)との、不安定な幸せの道筋を描く。
 時は冬、ふたりの幸せは政行が住む、中央線大久保・東中野駅間の高架脇の、一間のアパートで始まった。

 話は引っ越しを繰り返す場面展開で進み、その中で映画は、幸枝と政行の愛の行方を追いかける。
 ふたりにとって引っ越しは、あてのない幸せ探しであり、同時に若いふたりにとって、世間を学ぶ旅であり、かつ、いわれのない試練の旅であった。


1-0_2018051012361124e.jpg アパート建て替えで追い出された政行は、京王線幡ヶ谷にあるキッチン付きトイレなしの部屋に越し、幸枝との同棲が始まる。
 ところがある日突然、この部屋にかつて住んでいた男(長門裕之)が無断で居候しだして、奇妙な3人住まいが始まる。
 その上、この部屋は幡ヶ谷斎場のそば。斎場を怖がる幸枝は引っ越しを望んだ。

 次は新宿高層ビルがすぐそこの西新宿の部屋へ。
 ここで幸枝の妊娠が分かった。しかし生活はふたりだけでも苦しい。ふたりは悩む。政行は中絶を求めた。
 そんなある日、幸枝は近くを流れる神田川に身投げしようとした。

 反省した政行は男として覚悟を決め、幸枝の出産を前提に郊外へ引っ越し。周りは畑が残る土地、キッチンもトイレもある一階だ。
 幸枝は病院で無事出産しふたりは喜んだが、幸枝は産後の鬱なのか、周囲の住民や家主(悠木千帆)との折り合いが上手くいかない。
 赤ちゃんが眠る窓際のガラス窓が投石で割れる、近所の子供かも知れない。さらには買い物途中に店前に停めて置いたはずのベビーカーが、坂道を暴走する事故を家主のせいにする。政行は四度目の引っ越しを決意した。

 安い家賃を求めて葛飾の土手近くの長屋へ越す。
 長屋の隣家は彼らを優しく歓迎した。政行は隣家から工場の職場を斡旋してもらった。良き人情の長屋住まいが始まる。
 だが住み始めてから知ったことは、ここは一家心中の悲惨な部屋であった。
 でも何故か幸枝は政行が思うほど動揺しない。いや政行より平気。もっと言えば今までの幸枝よりも、幸枝は変になっていたのだ。
 しかし政行はそれに気づかず、隣家のおばさんに幸枝の様子が変だと言われる。御用聞きの男にわけもなく殴りかかったりしていた。
 そんなある日、政行が務める工場に電話が入る。おばさんからだ、すぐ帰って来い、幸枝の行動が・・。

 シーンは精神病院のベッドで身体拘束された幸枝と、ベッドサイドの政行のシーンに移る。
 そしてラストシーン、政行は赤ん坊と二人だけの、5度目の引っ越しをするのであった。(終)

 映画は幾つかのエピソードを差し入れて、話を膨らませている。
 話の冒頭で、とある立体駐車場の係員として政行が働いていた職場の先輩・修(河原崎長一郎)、その彼女・利代子(横山リエ)のふたりは、幾つものシーンで政行と幸枝のストーリーと絡み合う。

 全編を通して思うに、秋吉久美子演ずる幸枝の表情が終始硬い印象が残る。
 ちなみに本題ではないが、幸枝の出産時に病院が赤ちゃんを取り違えるエピソードがある。
 幸枝と赤ちゃんのツーショットを政行が撮った直後に、看護師が取り違えたことを言いながら、幸枝の赤ちゃんを抱いて病室に入って来る。政行は再度、写真を撮るが、ふたりの心は落ち着かない。これも印象に残る。

監督:藤田敏八|1974年|93分|
脚本:中島丈博、桃井章|撮影:萩原憲治|
出演:久米政行(高岡健二)|霜川幸枝(秋吉久美子)|中年男(長門裕之)|牟田修(河原崎長一郎)|利代子(横山リエ)|幸枝の兄(石橋正次)|吉村クニ子(悠木千帆)|ミキ子(山科ゆり)|広村ヒサ子(中原早苗)|深谷ウメ(三戸部スエ)|松崎敬造(陶隆)|松崎文子(南風洋子)|松崎進(山本コウタロー)|管理人(小松方正)|

【 藤田敏八監督の映画 】
これまでに掲載した作品です。画像をクリックしてお読みください。

写真
「妹」
主演:秋吉久美子、林隆三
写真
「もっとしなやかにもっとしたたかに」
主演:森下愛子、奥田瑛二
写真
「修羅雪姫」・「修羅雪姫 怨み恋歌」
主演:梶芽衣子

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映画「ブリキの太鼓」  監督:フォルカー・シュレンドルフ

上

1-0_20180511163533957.jpg 3歳にして「大人の世界」を忌み嫌い、その後も幼児のように生きたオスカルという男の話です。
 この作品は、観る者の興味、視点の違いで、異なって見える映画かも知れない。そんな二面性いや三面性があります。

 そのうちの一面は、ストーリーのバックグランドとして配置されている、物語当時のポーランドの時代性、これを冷徹に語る側面。
 それは第二次世界大戦へ突き進むナチスドイツに対するポーランドの有り様と、そして当時のポーランド国内の民族的差別とを、庶民の目から生々しく描いている側面です。

 ふたつ目の面は、当時を生きる人々の赤裸々な性を、あからさまに描く側面。
 オスカルの両親と周辺の人々、およびオスカル自身のそれです。
 これがメインテーマのごとく映画は語ります。

 三つ目は、ダークなファンタジーの側面。
 オスカルは3歳にして二つの超能力を持っていました。
 まずは自身の身体的成長を止められること。
 もうひとつは、「ブリキの太鼓」を叩きながら、叫びとも聞こえる奇声を発すると、その衝撃波で標的としたガラス窓やグラスを、一瞬にして砕き散らす能力です。(コミカルなシーンとして描かれます)
 これは、オスカルがのちにサーカス団(慰問団)に加わり、芸として見せるシーンもありますが、大人の淫らな性や(たぶん本質的には)戦争や憎しみ合いも含め、「大人の世界」を嫌ったオスカルの叫びと警告であったのかもしれません。

2-0_20180511164649f27.jpg
 さて、この映画が語るお話をなぞってみましょう。
 1924年生れのオスカルは大人になることを避け、自らの意思で身体の成長を3歳で止めました。
 映画はこの、いつまでも幼児に見えるオスカルの顛末を軸に、ポーランドの都市ダンツィヒ(現在のグダニスク)周辺を舞台に、隣国ナチスドイツを歓迎しその思想に心酔し、ドイツの敗戦でこの悪夢から目覚めたポーランドの人々の、うつろな心模様を描きます。

 また映画は初めに、1899年から語り始め、ポーランドの少数民族カシューブ族(カシュバイ人)の出自であったオスカルの母方の祖母を登場させ、カシューブ族とポーランド人との民族的乖離を暗示します。(この話全体は、疎外されたカシューブ族の祖母の視点を基点にしているように思えます)
 さらに、ナチスに賛同する人々と、反ナチス・ポーランド人との内戦、またユダヤ人差別とシナゴーグ放火暴動など、ポーランドに住むユダヤ人を排斥する反ユダヤ主義のポーランド人の様子も描き出しています。


 そんなことを背景にして、さて、映画はオスカルと彼周辺の人々の話をどう語るのか。それは欲情の物語でありました。
 オスカルの奇麗な母親アグネスは同時に二人の男を愛していました。夫アルフレートと、アグネスのいとこ(従兄)で愛人のヤンです。
 アグネスは夫と生活を共にしながらも、ヤンとの間にできたであろう子・オスカルを育てています。(オスカルはヤンが実父だと思っている)
 そしてアグネスは再度ヤンの子を宿すが、これまた夫アルフレートはとても寛容でありました。しかしアグネスは体調不良と精神の混乱で自殺、あっけない死でありました。
 こんな日々の中、夫アルフレートは時と共に他の多くのポーランド人同様にナチスに心酔していく。
 独り身になって子育てと、自身が営む店のやりくりに苦労していたアルフレートは、ある日、アグネスの母親(オスカルの祖母)から一人の少女を住み込みの小間使いとして紹介されます。16歳のマリアです。オスカルと同い年。時は1940年。

3-0_20180511165213ff7.jpg この出会いはオスカルの初恋となりました。
 オスカルは、いまだに外見は幼児だが16歳の男です。マリアの肉体に魅かれます。
 そして、表向きの父親アルフレートもマリアを求めました。
 マリアが妊娠します。その子はクルトと名付けられます。その後もオスカルは、クルトを密かに自分の子だと思い続けました。

 オスカルのもうひとつの出会い。
 それはサーカス団の芸人たちでありました。とりわけ、10歳で成長を止めたと言う、小人症の団長ベブラじいさんとは息が合いました。
 そののちオスカルはサーカス団に加わり、慰問隊として(第二次世界大戦の)戦場を巡ります。
 この間、同じく団員のひとりで小人症の女性と恋に落ちます。短いでしたが幸せな日々を過ごすことができました。

 さあ、話は徐々にラストを迎え始めます。
 クルトが3歳になる日、オスカルは帰郷しクルトに新品のブリキの太鼓をプレゼントしました。そしてナチスドイツの敗戦。
 このドイツ敗戦によるポーランドの混乱の中、オスカルの父アルフレートは戦勝国ソ連軍兵隊に射殺されます。(射殺したソ連兵が能面づらの東洋系青年であったことが少し気になります)

 埋葬に参列したのは、オスカル、彼の祖母、マリア、クルト、墓守のユダヤ人でした。
 オスカルは3歳からずっと太鼓を手放しませんでしたが、父の埋葬時に、持っていたブリキの太鼓を墓穴に投げ入れます。それは、オスカルの決意表明でした。彼は止めていた自身の肉体的成長を開始することにしたのです。この時、オスカル21歳、1945年のことでした。

 ラストシーン、オスカルは祖母に言われます。「我々はポーランド人でもドイツ人でもない。お前はここにいてもしようがない、西へ旅立ちなさい」 
 そう言われてオスカルは列車に乗って旅立ちました。(終)

 ちなみに、1939年9月1日のドイツ軍によるポーランド侵攻が第二次世界大戦の始まりとされています。

オリジナルタイトル:Die Blechtrommel
監督:フォルカー・シュレンドルフ|西ドイツ、フランス|1979年|142分|
原作:ギュンター・グラス(1959年発表)|
脚色:ジャン・クロード・カリエール 、 フォルカー・シュレンドルフ 、 フランツ・ザイツ|撮影:イゴール・ルター|
出演:オスカル・マツェラート(ダーフィト・ベンネント)|父アルフレート・マツェラート(マリオ・アドルフ)|母アグネス・マツェラート(アンゲラ・ヴィンクラー)|若き後妻マリア・マツェラート(カタリーナ・タールバッハ)|母アグネスの従兄ヤン・ブロンスキ(ダニエル・オルブリフスキー)|母アグネスの母親アンナ・コリャイチェク(若年期:ティーナ・エンゲル、老年期:ベルタ・ドレーフス)|母アグネスの父親ヨーゼフ・コリャイチェク(ローラント・トイプナー)|ブリキの太鼓を供給し続けたユダヤ人の玩具店オーナー・ジグムンド・マルクス(シャルル・アズナヴール)|ほか
下2

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映画「シンプルメン」  監督:ハル・ハートリー

写真
兄ビル、弟デニス、謎のエリナ、人妻ケイト

 とてもシンプルなお話。
 主要な登場人物から脇役に至るまで、誰もが実にシンプルな人々だ。

1-0_20180515120320323.png 彼らは単純な人。
 良く言えば、偽りや飾りのない、ありのままの感情で生きる、率直な人。
 それは我々の日常では、ありえないほどのシンプルさ。阿呆にみえるかもしれない。
 こういう設定だから自ずと、このお話は喜劇。
 喜劇でありながら、この映画は、我々が日ごろ、いかに自身の心を抑制して生きているかを「お前、それでいいの?」と我々に言っているようだ。

 そして、登場人物たち、自分の感情に正直な人たちを、監督ハル・ハートリーは優しく抱擁する。
 話は、ビルとその弟デニスが、長らく会わぬ父を探し、見つけ出すまでの間に出会った人々との、あれやこれや。
 話の引き金は父親が引いた。
 父は元は有名な野球選手、その後テロ容疑者とされ、家族を捨て逃亡の23年経った今、逮捕された男。ビルと弟デニスは、この父に面会しようとしたが、父親はすでに脱走した後だった。
 兄弟は、母親が持っていた父親の連絡先電話番号を頼りに父に会いに行こうと旅立った。
 そして出会う人々。服役した夫が帰宅するだろうことを嫌う妻ケイト、ケイトの家に居候する謎のルーマニア人の女エリナ、ケイトの夫と親友のマーティン、ビルを追う地元警察官、ガソリンスタンドの男ふたり。そしてちょい役の女子学生。みな個性あるシンプルな人間たち。

 父親はじめ、窃盗犯のビルなど登場人物それぞれに割り当てられるエピソードは、どれもいささか奇異。奇異だが、そこに登場人物に対する監督特有のこだわりが込められている。
 演技についてだが、一瞬だが一呼吸を置いてのセリフ回しや、ケイト、デニス、マーティン三人のダンスなど、これも監督のこだわりだ。これらを楽しみながら観てみよう。

オリジナルタイトル:SIMPLE MEN
監督・脚本:ハル・ハートリー|アメリカ|1992年|106分|
撮影:マイケル・スピラー|
出演:ビル・マッケイブ(ロバート・バーク)|デニス・マッケイブ(ウィリアム・セイジ)|ケイト(カレン・サイラス|ケイトの元夫ジャックの親友マーティン(マーティン・ドノヴァン)|ビル、デニスの父ウィリアム(ジョン・マッケイ)|ルーマニア人のエリナ(エリナ・レーヴェンソン)|女学生キム(ホリー・マリー・コームズ)|
下


【 ハル・ハートリー監督の映画 】
 これまでに取り上げた監督作品です。画像をクリックしてご覧ください。
 この監督の作品は、一度ハマるとクセになる魅力があります。
 上記「シンプルメン」に登場する俳優たちは下記の映画でも個性ある常連。ただし、「アンビリーバブル・トゥルース」と「トラスト・ミー」に出演のエイドリアン・シェリー(1966年-2006年)は監督業もする女優でした。
写真
「アンビリーバブル
    ・トゥルース」
1989年
写真
「トラスト・ミー」1991年
  
写真
「愛・アマチュア」1992年
  

写真
「ヘンリー・フール 」1997年
写真
「はなしかわって」2011年


【 一夜一話の 歩き方 】

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1年前・3年前・5年前の5月、一夜一話。(2017年5月・2015年5月・2013年5月の掲載記事

  • Posted by: やまなか
  • 2018-05-18 Fri 06:00:00
  • 映画
1年前の5月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2017年5月 Archive>

写真
「憲兵とバラバラ死美人」
監督:並木鏡太郎
中山昭二、三重明子
写真
「君と歩こう」
監督:石井裕也
目黒真希、森岡龍

写真
「ションヤンの酒家」
監督:フォ・ジェンチイ
中国
写真
「ブルース・ブラザース」
監督:ジョン・ランディス
アメリカ
写真
「GO NOW」
監督:マイケル・ウィンターボトム
イギリス
写真
「マイ・ファニー・レディ」
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
アメリカ
写真
「アナザー プラネット」
監督:マイク・ケイヒル
アメリカ
写真
「ゴモラ」
監督:マッテオ・ガローネ
イタリア

写真
美術展「写真家ソール・ライター展」
Bunkamuraザ・ミュージアム
写真
一夜一話の “今日はメンフィス・ソウルだよ。“
ソウル・チルドレン



3年前の5月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2015年5月 Archive)

写真
「空気の無くなる日」
監督:伊東寿恵男
深見泰三、花沢徳衛
写真
「てなもんや東海道」
監督:松林宗惠
藤田まこと、白木みのる
写真
「ペタル ダンス」
宮崎あおい,忽那汐里,安藤サクラ
石川寛
写真
「嵐」
監督:稲垣浩
笠智衆、雪村いづみ
写真
「花とアリス」
監督:岩井俊二
鈴木杏、蒼井優
写真
「共喰い」
監督:青山真治
田中裕子、菅田将暉

写真
「ナポレオン・ダイナマイト(バス男)
監督:ジャレッド・ヘス
アメリカ
写真
「大統領の料理人」
監督:クリスチャン・ヴァンサン
フランス
写真
「オズの魔法使」
監督:ヴィクター・フレミング
~映画音楽に魅せられて
写真
「ビートニク」
監督:チャック・ワークマン
ドキュメンタリー|アメリカ
写真
「ラ・ジュテ」
監督:クリス・マルケル
フランス



5年前の5月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2013年5月 Archive)

写真
「あにいもうと」
監督:成瀬巳喜男
京マチ子、久我美子
写真
「同じ星の下、それぞれの夜」
監督:富田克也,冨永昌敬,真利子哲也
3監督によるオムニバス映画
写真
「パーク アンド ラブホテル」
監督:熊坂出
りりィ、梶原ひかり
写真
「現代インチキ物語 騙し屋」
監督:増村保造
曽我廼家明蝶、伊藤雄之助
写真
「世にも面白い男の一生 桂春団治」
監督:木村恵吾
森繁久彌,淡島千景,八千草薫
写真
「大阪の女」
監督:衣笠貞之助
京マチ子、中村鴈治郎

写真
「タッチ・オブ・スパイス」
監督:タソス・ブルメティス
ギリシャ
写真
「トランシルヴァニア」
監督:トニー・ガトリフ
フランス
写真
「ケス」
監督:ケン・ローチ
イギリス
写真
「情熱のピアニズム」
ジャズのドキュメンタリー
フランス
写真
「卵」
監督:セミフ・カプランオール
トルコ
写真
「黒猫・白猫」
監督:エミール・クストリッツァ
フランス
写真
「一瞬の夢」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
写真
「水辺の物語」
監督:ウー・ミンジン
マレーシア

映画「大いなる休暇」  監督:ジャン=フランソワ・プリオ

上

1-0_20180519202308381.jpg カナダはケベック州の沖合にある、島民120人の小さな離島のお話。
 心温まるストーリーで、少しドタバタ喜劇です
 
 島民はかつて漁業で生計を立てていたが、今は皆、廃業して一様に生活保護を受けている。
 しかし支給金の月額では、2週間分の生活費しかまかなえない。
 働き甲斐を無くした島民は、ただただ、ぼんやりした毎日を過ごす。(なぜ漁業を辞めざるを得なかったかは映画は語らない)

 そんな折、ある会社がこの島に工場を建設したいという話が浮上した。
 工場が出来て島民が工場で働けるようになったら素晴らしい!
 しかし、それには条件があった。条件とは島に常勤の医師がいる事であった。
 この島には長らく医師はいないのだ。代理医者と称して精肉店のおやじが危なげな処置をしていた。
 工場進出という湧いて出た美味しい話があるのに、医師がいなくてはどうにもならない。
 クシの歯が欠けるように、少しずつ住民は島を離れ本土へ移住していく。

2-0_201805192017374da.jpg  こんな状況を打開すべく、村長のジェルマンはあれこれ策を考えていたその矢先に、いい話が来た。
 本土に移住していった男から、自然豊かな「へんぴな島」に住みたいという若い医師がいるという。
 そしてその医師クリストファー・ルイスがついに島へやって来る。

 村長ジェルマンは、田舎者であるがちょっとした策士であり、行動派である。
 医師が島に定住してもらうには、どうすればいいか。まず島の家々の外観をきれいにした。
 そして何よりも、医師が好きだというクリケットを、この島でも盛んにやっているというウソを、島民たちで装う。(実は島民はクリケットの「ク」の字も知らないのだ。このシーンは幾つもある可笑しいシーンのひとつ)
 次の策は、医師の家の電話盗聴だ。これは彼が好きな物事調査だ。
 彼の好きな料理が分かると、島でひとつのレストラン&バーのメニューに急遽追加するなど、医師向けのウソは増えていく。

 ま、そんな努力が実って医師は島を気に入りだし、島の娘を好きになるが、次の難題が発覚。
 工場進出の企業に、別の所から誘致話が持ち上がり、そこと競り合う形となった。企業の社長は基本的に島に工場を建てたいのだが・・・、別の誘致先からは工場が来るなら5万ドルの補助をするとのこと。 
 しかし、この島ではどうあがいても5万ドルは捻出できない。

 島には生活保護の支給金を支払うため「だけ」に、銀行の出張所がある。
 島民が彼をATMのような支店長と呼ぶその男に、村長は銀行融資を迫る。気弱なその男は、恐る恐る本店に融資の旨を伝えたが、折り返しの返事は、島の出張所の廃止とATMの設置だった。
 支店長は落胆し、かつ怒りがこみ上げ自暴自棄。勝手に銀行の金庫から5万ドルを出金し、村長に進呈した。

 金が用意できた村長たちは、ヘリで島に降り立った、工場進出の社長たち視察団を迎える。
 そこでまた難題。200人以上の住民の地に工場を作るのだと・・。
 しかし負けない村長は社長たちの前で、また島民を使って200人以上いることを演出した。(島民たちは大変だ!)

3-0_20180519202710a0c.jpg 契約一歩手前に来て、またもや苦難。
 医師に、あれもこれもウソをついてきたことが、好きになった娘の口からバレる。
 医師は、好きな彼女ができたことに後ろ髪を引かれながらも、島を離れると村長に言った。

 だが、契約に来る社長はじめのお偉方の日程は決まっていた。
 そこで村長、まだ負けない。島に物資を運んでくる小さな船の船長を説き伏せ医師に仕立てるが・・。

 村長はじめ島民たちは実にまじめに、生活と生きがいとを求めて、「ウソ」を医師と社長につくが、所詮ウソはウソ。ついに、どん詰まり。
 だが、これを救ったのは、なんと医師のクリストファー・ルイスだった。(終)
 真面目で可笑しいお話、観てのお楽しみ!

 余談1:同じく、離島の人々のコミカルな映画に「ウェイクアップ!ネッド」がありました。
     アイルランドにある離島で起きた出来事。宝くじで12億円を仕留めた独身の島民が当たったその日に死亡。それを島民全員で何とかして横取りしたい。そして宝くじ会社の調査員が島にヘリで降り立った・・・。 
 余談2:オドレイ・トトゥ主演の映画「アメリ」(2001)に出てくる同じようなシーンが、本作「大いなる休暇」の中に2回あります。 
 (下線部をクリックしてそれぞれの映画の記事をご覧ください)

オリジナルタイトル:La Grande seduction(SEDUCING DOCTOR LEWIS)
監督:ジャン=フランソワ・プリオ|カナダ|2003年|110分|
脚本:ケン・スコット|撮影:アレン・スミス|
出演:村長ジェルマン・ルサージュ(レイモン・ブシャール)|クリストファー・ルイス(デヴィッド・ブータン)|アンリ・ジルー(ブノワ・ブリエール)|イヴォン・ブルネ(ピエール・コラン)|エヴ・ボーシュマン(リュシー・ロリエ)|スティーヴ・ロラン(ブルーノ・ブランシェ)|エレーヌ・ルサージュ(リタ・ラフォンテーム)|クロティルド・ブルネ(クレモンス・デロシェ)|モンシュール・デュプレ(ドナルド・ピロン)|リチャード・オジェ(ケン・スコット)|

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映画「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」  監督:石井裕也

上

1-0_201805201409348ae.jpg 慎二(池松壮亮)と美香(石橋静河)の、とても純なラブストーリー。
 それは繊細な男女の物語。恋することを怖がる美香の話でもある。

 とは言え、映画は今を生きるシンドさを、時間をとって描いている。
 特に慎二の周辺の登場人物は底辺であえぐ人が多い。心に重荷を抱いて、それでもなんとか今日一日分の、心のバランスを保とうとしている。
 
 舞台は東京。
 慎二と美香が出会う渋谷新宿の、作られた眩さと、人気のない街はずれの夜の暗さ。
 そして日雇い労働のビル建設現場と、死んでゆく患者を見送るに慣れた総合病院の廊下。
 そんな舞台を背景に、明日を見通せぬ日常の、鉛のような海に浮かんだ、慎二と美香の危なっかしい小さな恋。
 それで二人は、やっと明日を考えられる気がして、少し安堵するに至ったようだ。

2-0_20180520141205f57.jpg 慎二は生まれつき片目の視力がないことで屈折して生きてきた。
 高校の時、それなりに勉強ができ友達にも囲まれていたようだが、それは装いの日々であった。
 今は日雇いで生活している。慎二はこの生活に不満は無いようだ。今までに無くすなおに生きれる。
 日雇いの先輩は智之(松田龍平)という男で面倒をみてくれる。
 慎二が住むアパートの隣室のじいさんと仲がいい。本をたくさん持っていて、貸してくれていたが、ある日じいさんが孤独死。
 智之も、建設現場で突然死してしまう。

3-0_20180520141440c75.jpg 美香は東京に出て来て看護師をしている。
 毎日ではないが、患者が死んで病室を出ていくを見送るのが辛い。
 夜のバイトもしているのは、実家の父親に仕送りするためだ。
 美香が幼いころ母親は他界。自殺だったのか父親は口を閉ざしてきた。
 別れた彼氏から今でも愛しているというメッセージを受け取るが。

 物語は、登場人物に割り当てられたエピソードのパッチワークといってもいい。
 その一つひとつは、陳腐とは言わないが、よくある話。
 しかし、監督の素晴らしい演出力という魔法が、話をわざとらしくなく、リアルにして最後までしっかり観せる。

4-0_20180520141845ad9.jpg

監督・脚本:石井裕也|2017年|108分|
原作:最果タヒ(詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」)|
出演:美香(石橋静河)|慎二(池松壮亮)|智之(松田龍平)|美香の母(市川実日子)|岩下(田中哲司)|玲(佐藤玲)|牧田(三浦貴大)|フィリピン人の実習生アンドレス(ポール・マグサリン)|慎二の隣人の老人(大西力)|ストリートミュージシャン(野嵜好美)|ほか

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映画「剣侠江戸紫」  監督:並木鏡太郎

1_20180526163517c26.jpg

 なかなかの時代劇、特に脚本がよく書けている。
 実在の人を素材にした映画。113分最後まで観せます。

 時は17世紀、江戸時代前期のころ。
 当時、(将軍家直属の家臣である)旗本のひとり、水野十郎左衛門(嵐寛寿郎)という侍は、為政者側の身でありながら、江戸市中において「旗本奴」というやくざ集団を組織し、その頭であった。
 旗本奴の中でも白柄組は特に乱暴者ぞろいで、彼らは旗本を笠に、日々悪行狼藉を働いていた。

 かたや江戸には、町人身分の遊俠の徒である「町奴」という集団があった。
 この町奴の頭領、幡随院長兵衛(大河内傳次郎)は、旗本奴との無駄な争いを避けつつも、江戸市中の勢力を巡って白柄組と対立していた。

 さて、ここに登場するのが、白井権八(大谷友右衛門)という鳥取藩の若侍。(剣が立つ)
 この白井権八、あることで藩士達から疎外され精神的に追い詰められ、その結果、藩士である父の同僚(白井権八の上司)を城内で斬殺するに至る。(のちにあった江戸城松の廊下での赤穂事件のよう)そして白井権八は藩を捨て江戸へ逃げた。
 だが、殺された藩士の子、本庄助七・本庄助八の兄弟は親の仇討ちと、白井権八のあとを追った。

 話は進んで、江戸に来た白井権八が、ある日、白柄組の男達に取り巻かれて難儀していたところを、通りかかった幡随院長兵衛に救われ、客分の身となった。
 しかし、白柄組が白井権八にちゃちゃを入れたこの些細なもめ事は、「客分として白井権八をかくまわずに我に差し出せ」と言う、水野十郎左衛門による幡随院長兵衛への圧力へと発展する。(鳥取藩内の斬殺事件を水野は知っていた)
 また同時に、助七の白井権八仇討ちの一件を知った白柄組は、助七を利用しようとする。(助八は既に白井権八に斬られて死去)

0_20180526164000656.jpg ここに話に色を添えるのは、吉原一の花魁・小紫(山根寿子)。白井権八との仲が深まる。
 無職の白井権八は小紫と会うため、辻斬(つじぎり)をして吉原の金を作り出す。これを知った小紫は白井権八に、吉原を足抜けするから、どこか遠くへ駆け落ちしようと迫る。

 話を戻す。
 一度客分とした男を粗末に扱うことは、幡随院長兵衛、町奴の頭領の意地としてできない。(日本の侠客の元祖と言われている)
 幡随院長兵衛は、白井権八を水野に差し出さず、長兵衛自ら単身で水野の屋敷へ向かった。死を覚悟していた。
 だが水野は、この幡随院長兵衛の度胸、態度はあっぱれと、彼を褒め称え、杯を交わそうとした。
 しかし水野の部下は毒杯を長兵衛に飲ませる。これを知った水野はこの部下を切り殺した。
 そして、そのあと、水野は長兵衛を槍で刺し殺す。毒杯を飲ませた事が世間に知れては水野の恥だと。長兵衛は男らしく、まったく抵抗しなかった。

 一方、小紫は胸を躍らせ、渡しの舟着き場で白井権八を待っている。
 そのころ、当の白井権八は辻斬の罪のかどで、町奉行率いる一団に囲まれ非業の死を遂げていた。

 体制側の人々の振る舞い、そうでない人々の有り様、個人の正義、異端児排除、同調圧力と思考停止などなど、様々に読み取れるお話。
 
◆水野十郎左衛門(1630-1664)
 本名・水野成之、江戸時代前期の旗本。通称、十郎左衛門。
 詳しくはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/水野成之
◆幡随院長兵衛(1622-1650 or 1657)
 江戸時代前期の町人。町奴の頭領で、日本の侠客の元祖ともいわれる。
 詳しくはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/幡随院長兵衛
◆白井権八(1655頃-1679)
 本名・平井権八。江戸時代前期に実在した日本の武士。
 詳しくはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/平井権八

監督:並木鏡太郎|1954年|113分|
脚本:三村伸太郎|撮影:河崎喜久三|
出演:幡随院長兵衛(大河内傳次郎)|水野十郎左衛門(嵐寛寿郎)|白井権八(大谷友右衛門)|三浦屋の花魁小紫(山根寿子)|ほか多数

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一夜一話の “今日はジャズ・サックスだよ” アート・ペッパー

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 今日の一枚は、アート・ペッパー というサックス吹きの「モダン・アート」(1957年)。

 何と言っても1曲目の「Blues In」が素晴らしい。
 音数の少ないベース演奏を従えてのバラードなソロ。
 何か、闇に潜む根源的な原初を感じる。
 そう感じながらも、キラリと弾ける鋭い閃光、そして孤独なつぶやき、次に途端に来る饒舌さ。
 緊張と緩和の妙。飽きない名演奏。


 2曲目「Bewitched」から、カルテット演奏になる。
 この「Bewitched」のアート・ペッパー も良いが、今の耳には、2曲目以降のバック演奏がどうにも古臭く感じるのが残念。
 ただし、6曲目の「Stompin' at the Savoy」は良い。からだが揺れる。
 ラスト曲の「Blues Out」は、1曲目の「Blues In」と対をなす演奏。
 でもアルバム1曲目には、誰でもやはり「Blues In」と名付けたこの演奏を持ってくるだろうね。 

 試聴はこちらから。アマゾンのサイト:https://www.amazon.co.jp/Modern-Art-Pepper/dp/B000005H5O
 ただし試聴リストは、下記オリジナルアルバムの収録曲に追加された曲があり、また曲順も変わっている。

「 Modern Art 」
1."Blues In" - 5:40
2."Bewitched" (Richard Rodgers, Lorenz Hart) - 4:25
3."When You're Smiling" (Larry Shay, Mark Fisher, Joe Goodwin) - 4:47
4."Cool Bunny" - 4:10
5."Dianne's Dilemma" - 3:46
6."Stompin' at the Savoy" (Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman, Andy Razaf) - 5:01
7."What Is This Thing Called Love?" (Cole Porter) - 6:00
8."Blues Out" - 4:53

Personnel
Art Pepper - alto saxophone|Russ Freeman - piano|Ben Tucker - bass|Chuck Flores - drums

これまでに掲載したポピュラー音楽の記事は、こちらから



映画「木靴の樹」  監督:エルマンノ・オルミ

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 時は20世紀一歩手前の19世紀末。
 イタリアの小作人たちの日常を群像劇として観せる。
 この映画、はるかな遠景を眺めるように、ゆったり構えて広い視野で観るといい。
 あるいはタイムスリップしたと思って観るのがいい。


 イタリアの北方、アルプス山脈に近い町、ベルガモ周辺に広がる農村地帯。
 広大な大地を所有する大地主と、地主につかえる管理人。
 そして小作人たちとその家族。老人、夫を亡くした妻と子沢山、恋する若い男女、働き遊ぶ子たち、生れたばかりの赤ん坊。
 種まき、とうもろこしの収穫。馬と荷車、干し草、牛の搾乳、解体される豚、水たまりのアヒル、うろつく犬、服地の行商人、放浪する乞食。
 そんな中にある、小作人たちの週一の寄り合い、結婚式、町のお祭りといったハレの時間。

3-0_20180528095043693.jpg しかし、そうした小作人たち農民の、一見、何の変化もない様に見える19世紀末の日常は、ゆるりと20世紀を迎えようとしている。
 そんな変化を映画は、小作人の子供の通学、工場勤めの娘たち、町(都会)の人々の新しさ、社会主義の芽生えなどのシーンで表現する。

 「木靴の樹」という題名に注目しすぎると、この映画の一部分しか見ないことになる。
 地主の領地内のすべては地主の物だから、領地内の道に沿って立ち並ぶ木を切り倒し、子供のための木靴を作った小作人一家は、この地を追われることになるのだが、地主と小作人という対立構図だけで本作を観てしまうと、本作の良さが半減してしまうだろう。

4_201805280952355b6.jpgオリジナルタイトル:L'albero degli Zoccoli
監督・脚本・撮影:エルマンノ・オルミ|イタリア|1978年|187分|
出演:ルイジ・オルナーギ(バティスティ)|フランチェスカ・モリッジ(バティスティーナ)|オマール・ブリニョッリ(ミネク)|ほか多数





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2年前・4年前・6年前の5月、一夜一話。(2016年5月・2014年5月・2012年5月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-05-31 Thu 06:00:00
  • 映画
2年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2016年5月 Archive)

写真
「ファンシイダンス」
監督:周防正行
本木雅弘、鈴木保奈美
写真
ドキュメンタリー映画の特集
邦画編、洋画編
これまでに記事にした映画です。

写真
「カリガリ博士」
監督:ロベルト・ウイーネ
ドイツ
写真
「女はみんな生きている」
監督:コリーヌ・セロー
フランス
写真
「熱病」
監督:アグニエシュカ・ホラント
ポーランド
写真
「宇宙人王さんとの遭遇」
監督:アントニオ&マルコ・マネッティ
イタリア
写真
「火車 HELPLESS」
監督:ピョン・ヨンジュ
韓国
写真
「海に出た夏の旅」
監督:セミョーン・アラノヴィッチ
ソ連



4年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年5月 Archive)

写真
「森崎書店の日々」
監督:日向朝子
菊池亜希子
写真
「夜明けのうた」
監督:蔵原惟繕
浅丘ルリ子
写真
「競輪上人行状記」
監督:西村昭五郎
小沢昭一、南田洋子
写真
「大阪物語」
監督:市川準
池脇千鶴,田中裕子,沢田研二
写真
「HARUKO ハルコ」
監督:野澤和之
ドキュメンタリー映画
写真
「月はどっちに出ている」
監督:崔洋一
岸谷五朗、ルビー・モレノ

写真
「パリ・エキスプレス」
監督:エルヴェ・ルノー
フランス
写真
「ウィズネイルと僕」
監督:ブルース・ロビンソン
イギリス
写真
「アイス・カチャンは恋の味」
監督:阿牛(アニュウ)
マレーシア
写真
「雲が出るまで」
監督:イェシム・ウスタオウル
トルコ
写真
「シクロ」
監督:トラン・アン・ユン
フランス・ベトナム
写真
「サニー 永遠の仲間たち」
監督:カン・ヒョンチョル
韓国



6年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2012年5月 Archive>

写真
「嵐を呼ぶ十八人」
監督:吉田喜重
早川保、香山美子
写真
「踊子」
監督:清水宏
淡島千景、京マチ子
写真
「めぐりあい」
監督:恩地日出夫
酒井和歌子
写真
「アトムの足音が聞こえる」
鉄腕アトムの音響ドキュメンタリー
音響デザイナー:大野松雄
写真
「けものがれ、俺らの猿と」
監督:須永秀明
永瀬正敏、小松方正
写真
「雲の上」
監督:富田克也(空族)
西村正秀、鷹野毅
写真
「明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。」
監督:上利竜太
谷村美月
写真
「修羅雪姫」「修羅雪姫 怨み恋歌」
監督:藤田敏八
梶芽衣子
写真
「新宿泥棒日記」
監督:大島渚
横尾忠則,横山リエ,状況劇場
写真
「キッドナップ・ブルース 」
監督:浅井慎平
タモリ,大和舞,淀川長治,岡本喜八,山下洋輔
桃井かおり ,川谷拓三,竹下景子,内藤陳・・・

写真
「海と大陸」
監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
イタリア
写真
「フロスト×ニクソン」
監督: ロン・ハワード
アメリカ
写真
「記憶の棘」
監督:ジョナサン・グレイザー
アメリカ
写真
「コンフェッション」
監督:ジョージ・クルーニー
アメリカ
写真
「ルイーサ」
監督: ゴンサロ・カルサーダ
アルゼンチン、スペイン


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プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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