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2018年06月 Archive

一夜一話の “今日はソングライターだよ” ボビー・チャールズ

1_20180601140042f5e.jpg

 今日の一枚は、ボビー・チャールズの「BOBBY CHARLES」(1972年) 。
 今も大好きなアルバムです。(CD販売区分では、ロックのジャンルです)
 
 このアルバム、一言でいえば、ソングライターが自作を歌いました的なもので、実は彼はいわゆるシンガーソングライターを売りにしていない。
 んだけど、ほのぼのとしたボーカルとゆるりとしたサウンドは一度聴いたらヤミツキ。
 なぜかと言うと、彼が作り出す曲がすごく素晴らしいのです。

 彼はミュージシャンズ・ミュージシャンと言われ、必ずしも一般受けするとは限らないが、ミュージシャンから支持されているミュージシャン。
 と、こう言われるのが凄くわかる。つまり、こいつの曲を歌ってみたい!と思わせる魔力が彼の曲にあるのです。(彼のトリコになったミュージシャンのアルバムを下に紹介しています)

 どんなジャンルのサウンドかは、R&Bを基調にしブルースやカントリーをブレンドしたサウンドです。
 こう言うとありふれたよくあるサウンドじゃと、思われるかもしれないが、ほかの人間が真似できない作風なのです、と言い切れる。
 言い換えれば、誰かのアルバムを聴いていて、「あ、この曲、ボビー・チャールズが作った曲だ」とすぐわかる。
 
 まず試聴してみて。(試聴サイト)
 https://www.amazon.co.jp/ボビー・チャールズ/dp/B000034CJN

 いいでしょ。
 バック演奏のミュージシャンは下の通り。
 ザ・バンドのメンバーやエイモス・ギャレットやマリア・マルダーの夫ジェフ・マルダーなど、ウッドストックのミュージシャンたち仲間で、ベアズヴィルというレーベルでの録音です。
 ボビー・チャールズがお遊びで来日時に、ステージに呼ばれて歌ったのが懐かしい。

 ボビー・チャールズって、どういう人?
 https://ja.wikipedia.org/wiki/ボビー・チャールズ 
 ベアズヴィルってどんなレコードレーベルなの?
 http://recordcorrecterrors.music.coocan.jp/bearsville.html
 べアズヴィル・ボックス・セットなんていうCDが出てるらしい。

「BOBBY CHARLES」(1972年) (Bearsville)
クレジット
Musician – Amos Garrett, Ben Keith, Billy Mundi, Bob Neuwirth, Bobby Charles, Buggsy Maugh*, David Sanborn, Garth Hudson, Geoff Muldaur, Harry Lookofsky, Herman Shertzer*, Jim Colegrove, Joe Newman, John Simon, John Till, Levon Helm, Mac Rebbenack*, N. D. Smart II*, Richard Manuel, Rick Danko
Producer – Bobby Charles, John Simon, Rick Danko
収録曲
A1 Street People|A2 Long Face|A3 I Must Be In A Good Place Now|A4 Save Me Jesus|A5 He's Got All The Whiskey|B1 Small Town Talk|B2 Let Yourself Go|B3 Grow Too Old|B4 I'm That Way|B5 Tennessee Blues|

 そんなわけで、ボビー・チャールズの曲を取り上げているミュージシャンと、気に入ってるアルバムを下に紹介します。
 下の4枚のうち、はじめの1枚以外は、ボビー・チャールズの仲間たちが加わっています。
 そのほかにもwikipediaによると、ファッツ・ドミノ、ビル・ヘイリー、ドクター・ジョン、レイ・チャールズなど数多くのアーティストに取り上げられているそうです。 

2_201806011444551d0.jpegゲイトマウス・ブラウン
「Back To Bogalusa 」(2001年)
 ブルースの人のアルバム。2曲目6曲目がボビー・チャールズの作品。
 かっこいいよ!ブラスも女性コーラスも!
 試聴サイト
 https://www.amazon.co.jp/ゲイトマウス・ブラウン /dp/B00005LANH


3.jpegマディ・ウォーターズ
「ウッドストックアルバム」(1975年)
 いきなりの1曲目がボビー・チャールズの作品。
 マディ・ウォーターズもまさしくブルースの人。
 このアルバムのサウンドは、ロック寄りのブルースサウンド。
でも上のゲイトマウスよりずっとアーシー、文句なし。
別の機会にこのコーナーでとりあげたい。
 試聴サイト:https://www.amazon.co.jp/マディ・ウォーターズ/dp/B00F64TT1Q


 ◆次の2枚は白人ミュージシャンのアルバムです。

4_20180601144905947.jpgポール・バターフィールド・ベター・デイズ
「ポール・バターフィールズ・ベター・デイズ」(1973年)
 4曲目がボビー・チャールズの作品。
 試聴サイト
 https://www.amazon.co.jp/ポール・バターフィールズ/dp/B00E8LU8X6


5_201806011450461f2.jpg
ジェフ・マルダー&エイモス・ギャレット
「LIVE IN JAPAN」(1979年)
5曲目がボビー・チャールズの作品。 
このコンサート行きました。エイモスのチョーキングと手の大きさがすごかった。
エレキギターの3弦を6弦あたりまでチョーキングする。
1フレットポジションと5フレットポジションを同時に押さえることができる大きな手。
試聴サイト:http://www.neowing.co.jp/product/UPCH-20119


これまでに掲載したポピュラー音楽の記事は、こちらから




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映画「日本の悪霊」  監督:黒木和雄

2_201806060938547fd.jpg

 双子のように瓜二つのヤクザと刑事が入れ替わり、終いには同質化して行くお話。
 映画はふたりの登場人物の違いを、徐々に曖昧にしていきます。
 殺伐とした風景のロケ地に、ドキュメンタリー映画風のリアリティを持ち込んだ本作は、今新たな魅力を放っているようにも思えます。
 本作をヤクザ映画だと決めつけず、また、原作は脚本化の素材である位の気持ちで受けて、原作や1960-70年の政治闘争にこだわらずに観ることも一興でしょう。
 
 群馬県のある街での出来事です。地元で古くからあるが弱体化したヤクザ・鬼頭組を、この地に勢力を伸ばす新興勢力の天地組がなきものにしようとしていた。

5_20180606120805fa0.png そんな中、ふたりの男がこの街に現れる。
 そのひとりは、村瀬(佐藤慶)という男。
 村瀬は鬼頭組を傘下に置く組のナンバー2の知的な男で、鬼頭組の偵察に来た。
 鬼頭組は村瀬という大物が助っ人に来てくれると大喜び。

 もうひとりは、落合刑事(佐藤慶・一人二役)。
 県警から派遣されてきた暴力団取り締まりを専任とする刑事だが、県警本部では、いまいちウダツの上がらぬ男であった。
 街に着いた落合刑事は、案の定、鬼頭組から村瀬と間違われる。

 実はその村瀬、この街に過去を持っている。
 そんなことで村瀬は、昔のなじみの女を訪ねるが、女の部屋には先客がいた。落合刑事だ。
 女は落合刑事を村瀬だと思い誘い入れたのだった。

 先客が刑事だと分かった村瀬は、他人とは思えぬ落合刑事に強要した。やくざと刑事、入れ替わろうと。
 落合にとって、これは刑事になりすまして、鬼頭組周辺状況の情報把握もさることながら、実は、この街の過去の真相を探り出そうという思いがあった。
 一方、落合刑事がこれを拒まなかったのは、やくざの世界に以前から魅力を感じていたからであった。
 村瀬は警察署へ、落合刑事は鬼頭組へと潜り込む。そうして、なりすましの男ふたりの、それぞれの物語が街の女たちも交えて、始まる。

 さて、先ほど言った、村瀬はこの街に過去を持っている、の話。
 1955年まで日本共産党は中国共産党の影響を受けていた。例えば農村の地主に対しての武装闘争。(しかし日本共産党は1955年にこの方針の放棄を宣言)
 村瀬の過去とは、若いころ、この群馬の街で仲間とこの闘争に加わり地主を襲い、結果時には村瀬は逃げ来る地主を迎えうち刺し殺し、村瀬はじめ仲間は四散した。
 だがこの事件には謎が残り、ヤクザになった村瀬は今も当事者として、過去の真相を究明したかったのだ。
 かたや、地元警察の署長は、この事件当時からこの事件にかかわっていた。実は謎を作ったのはこの男であった。この署長の一存でこの街でのこの事件は、街の世間体よくうやむやに処理された。
 鬼頭組の組長・鬼頭正之助は、署長の意向で当時、村瀬が犯した殺人の犯人としてムショに入った。当然、見返りは鬼頭組の安泰確保であった。しかし、組長と署長との間に亀裂が生じ始める。

 話が進むうちに、真相はより明らかになっていく。そして、村瀬と落合刑事の意気はいつしか投合していくのであった。

監督:黒木和雄|1970年|96分|ATG|
原作:高橋和巳|脚本:福田善之|撮影:堀田泰寛|音楽:岡林信康 、 早川義夫|
出演:村瀬勝/落合刑事(佐藤慶)|鬼頭正之助(高橋辰夫)|後藤署長(観世栄夫)|川田部長(榎本陽介)|子分甲(蔦森皓祐)|子分乙(深尾諠)|子分丙(鈴木両全)|子分J(土井通肇)|子分戊(倉沢周平)|子分T(坂本長利)|子分A(関口瑛)|県警本部・山口(林昭夫)|天地組・馬場(渡辺文雄)|東(丸茂光紀)|伊三次膳内(成瀬昌彦)|地主襲撃のリーダー(土方巽)|警官(岡村春彦)|パチンコ屋親父(殿山泰司)|少女(高橋美智子)|夏子(堀井永子)|歌手(岡林信康)|鬼頭竜子(奈良あけみ)|

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一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術


映画「クラッシュ」  監督:ポール・ハギス

上

 白人と黒人の二項対立だけでなく、アメリカの様々な人種間のギクシャクを群像劇で観せる映画。
 ストーリーは、数多くのエピソードがパッチワークされ、それぞれに関連を持たせている。
 そこには、拳銃による殺人が3件、交通事故が3件、ハッピーエンドが2件、盛り込まれています。
 貧富による分断、車社会、銃社会のアメリカも映し出します。
 2時間足らずのこの映画で、いわばアメリカの縮図を観せようとするのだから大変。話は複雑を極める。またメッセージは細部に宿っています。

 そんな複雑なエピソード群の中から、4つの話を取り上げてみます。(エピソード間の関連性は、あとで述べるとしよう)
1_20180609143517838.jpg【エピソード1】・・リック地方検事とその妻ジーンの白人夫妻
 夫妻は、映画に出てくる登場人物中、一番の上流階級の人。
1-2_201806091447463f5.jpg 検事は黒人層からの支持をとても意識している。上から目線の妻は、いつもツンツンしていて、家政婦がいつかない。
 そんな夫婦がある日、街中で黒人の二人組に拳銃で脅され、目の前で自家用車を強奪される。
 車を強奪された事は、検事のメンツにかかわる事。それも黒人にだ、心境複雑。
 妻は恐怖心から自宅の玄関ドアのカギを丈夫なものに取り換えようとするが、修理に来たカギ屋のダニエルが黒人だったために、このカギ屋が、車を盗んだ二人組に合いカギを渡すのではと猜疑心に苛まれる。それを聞いていたカギ屋はスペアキーのすべてを夫人の前に置いて帰った。


2_20180609143644157.jpg【エピソード2】・・キャメロンとその妻クリスティンの黒人夫妻
 夫妻は、映画に出てくる登場人物中、二番目に上流の人。
 夫はTVディレクター。TV業界で黒人が生き抜くには、周りの白人たちとそれなりに同調しなければならないらしい。夫は周囲に目配りしながら穏やかに実を取る男。
 妻はそれを理解はするが、心の底では白人にオベッカ使ってと思っているようだ。
2-2_201806091451514e8.jpg そんな夫妻がある日、夫が何かの賞を受賞した夜、車で帰宅のところ、街中で白人のライアン巡査が乗るパトカーに停車させられる。
 夫妻が乗る車は、検事の盗まれた車と同車種、同じ色。
 パトカーに同乗する若い白人巡査ハンセンは、車のナンバーが違いますよと注意するが、ライアン巡査は停車させた。
 夫は妻に車外に出るなと制したが、妻は巡査の理由なき行動に怒りを抑え切れないで車外に出る。
 ライアン巡査は出てきた妻の身体を、身体検査よろしく、まさぐり始める。この屈辱に耐えられない妻は夫の方を見るが結局、夫は巡査に歯向かわなかった。
 それから、この夫婦の仲は崩れ始めた。


3-3_20180609143956208.jpg【エピソード3】・・ファハドとその娘のペルシャ人父娘、カギ屋のダニエルとその幼い娘の黒人の父娘
 ファハド父娘は中間層の下位、ダニエル父娘は下層の上位といった人たち。
3-6.jpg ペルシャ人店主のファハドは、店のドアを修理したくて、カギ屋のダニエルを呼んでカギを交換させたが、カギ屋は、ドアの扉も替えないと防犯にならないと言う。がしかし、ファハドは承知しない。互いに言い争った。
 翌日、誰かによって店はメチャメチャに荒らされた。店はファハドが長年にわたり丹精込めてきた店である。怒り心頭のファハドはダニエルの仕業と決めつけ、ダニエルの自宅前で拳銃を忍ばせ待ち伏せする。
 帰宅したダニエルに、ファハドは拳銃を突きつけ撃とうとしたその時、ダニエルにその娘が飛びついた。
 結果、ファハドはその幼い女の子の背中を至近距離で撃ってしまった。しかし、娘は怪我もなく生きていた。なぜなら空砲であった。
 以前、ファハドが銃砲店で銃弾を購入しようとした時、その店主の白人と揉め、結局、同伴したファハドの娘が、当てずっぽで指し示し買った銃弾が空砲弾だったのが、この奇跡を生んだ。



4_20180609144054954.jpg【エピソード4】・・アンソニーとピーターの黒人二人組
 職に就かず、盗みを働く黒人の男たち。しかしアンソニー曰く、俺たちは黒人からは盗まないと言っている。
 アンソニーとピーターは、【エピソード1】の車の強奪犯だ。
 そしてその夜、ふたりはこの盗んだ車で、前方不注意、アジア系の中年を轢いてしまう。処置に困った二人はある病院の玄関先にこの男を置いて逃げる。ひき逃げだ。



 さてさて、エピソードは相互に関連を持って、ますます広がっていく。
 アンソニーが、停車中の高級車に拳銃を突きつけて乗り込んだが、それは【エピソード2】のTVディレクターの黒人キャメロンの車だった。キャメロンは車を発車させながら、黒人同士2人は揉める。これを外から見ると車は変な運転をするように見える不審車。(かつ【エピソード1】の盗難車と同種同じ色)
 一台のパトカーがこれを追う。【エピソード2】に出てきた若い白人巡査ハンセンが運転するパトカーもあとを追う。追い詰められたキャメロンとアンソニーは銃を構えた巡査に包囲される。
8-0.jpg そこへ割り込んだのが、若い巡査ハンセン。「俺はこのキャメロンを知っている、悪い奴じゃない、大丈夫だ」と言いながら、他の巡査を制し、怒るキャメロンをなだめて、その場は事なきを得た。
 しかしキャメロンはアンソニーの銃を隠し持っていた。一触即発だった。

 一方、キャメロンの妻クリスティンは、夫婦仲が最悪になったことに傷心して精神不安定でいたためだろうか、交通事故で他車と接触し横転、車はひっくり返る。
 だが事態は差し迫る。相手の車からガソリンが漏れ出し、こちらに流れ来る。だが逆さになった車からクリスティンは出られない。シートベルトで宙づりになっている。
 そこへ駆けつけたのが、クリスティンを弄んだ巡査ライアン。初めクリスティンはライアンの救助を拒んだが、車に火が付く。結局彼女はライアンに助けられた。

 そして、若き白人巡査ハンセン。
 疲れての仕事の帰り道、車に乗るハンセンは、夜道でヒッチハイクする1人の黒人青年を拾います。街を出たいと言うその青年は、アンソニーの相棒のピーター。
 車内でのちょっとしたやり取りに、気分を害したハンセンは、降りろとピーターに言う。その時、ピーターがズボンのポケットに手を入れ出そうとしたモノが拳銃かと即断したハンセンは即座に、ピーターを射殺してしまう。そして道端の草むらに置いて逃げてしまった。

 さらには以上に書かなかった男、黒人刑事のグラハム。
 映画冒頭、夜のシーン。グラハムとその妻の乗る車が接触事故を起こす。グラハム刑事が安全運転だったとしたら、相手のアジア系の女が悪いんだろう。この女、やたら悪口雑言、グラハムの妻、ヒスパニック系(メキシコ)の妻に向かって罵っている。
 あとでわかるが、このアジア系の女は夫が緊急入院した病院へ向かう途中。【エピソード4】で、アンソニーとピーターの黒人二人組にひき逃げされた男の妻が、この女。
 そんな騒ぎを横に見て、グラハム刑事は見知った巡査たちに挨拶しながら、道端にいる同僚の刑事に近づいた。「どうした、事件発生か?」「そう、若い黒人の射殺死体だ」。(映画の観客はわかる、これはハンセン巡査が射殺したピーターだ)
 そして死体を確認したグラハム刑事は驚きを押し殺した。その男はグラハム刑事の弟だった。

 最後に言い残したエピソードふたつ。
 グラハム刑事の交通事故の日のその昼、グラハム刑事は【エピソード1】のリック地方検事の息がかかった刑事フラナガンに呼び出される。その呼び出しは、グラハム刑事が担当する事件についてだった。
 担当の事件とは、白人刑事による黒人刑事射殺事件。黒人刑事が乗る車を制しようとした白人刑事は、その黒人刑事から発砲を幾度も受ける。そして白人刑事が撃った一発が黒人刑事の致命傷になった事件。互いに刑事だと知っていたのか?
 翌日、黒人刑事の車から多量の札束が発見される。黒人刑事の汚職事件に発展する。
 これにリック地方検事がストップをかけた。黒人を悪者にしては支持者が減る。汚職の件は握りつぶして、白人刑事に罪を着せるようにしたい。そこでフラナガン刑事がグラハム刑事を呼び出したのだ。グラハムは実直な刑事、フラナガンが言う地方検事の意向を嫌う。だがフラナガンはここで、グラハムの弟ピーターの犯罪歴をほのめかす。ピーターの件を見逃す代わりに、地方検事の意向を飲めという。グラハムは承知した。

 しかし、折角の弟への思いが結果的にはグラハム刑事にとってみじめなことになった。
 まずは、その夜に弟の死体と対面したこと。そして死体の身元確認のために来院したグラハムの母がグラハムに対して示した態度。「お前より私は死んだ弟に寄り添うよ!」
 もとよりグラハムと母との関係は疎遠だった。多忙なグラハムは時々は母の部屋を訪ねたが母は終始無口だった。
 観客は思う。この黒人家庭の母子の間にも、出世した息子との貧富と正義による分断の思いがあることを。

 
 ちなみに、【エピソード4】のアンソニーとピーターの黒人二人組のひとりアンソニーは、ひき逃げしたアジア系男の乗っていたバンを盗むのだが、バンの後部ドアを開けると、アジア系男女難民の一団が閉じ込められていた。
 アンソニーは盗難車を売り買いする男にバンを売ろうとするが、店の男は難民たちだけを高額で買うぞと言われる。しかし、アンソニーはこれを無視して、中華街に車を走らせ、路上で彼らを解放した。(これはとってつけた話だ※)

 私たちはペルシャ人とアラブ人の区別がつくだろうか?
 【エピソード3】でファハドが銃砲店の店員と揉めたのは、店員が彼をアラブ人だと思い毛嫌いしたからだった。
 アンソニーは、ひき逃げした男を、難民の人々を一応に中国人と言う。人を理解することは難しい。
 観ごたえある映画でした。

 ※ライアン巡査は父親思いの息子で父子だけの家ではいい息子。父親の会社では黒人従業員に良い待遇で接していたとのこと。これも付けたり的というかこだわるねぇ。

オリジナルタイトル:Crash
監督:ポール・ハギス|アメリカ|2004年|112分|
原案:ポール・ハギス|脚本:ポール・ハギス、ボビー・モレスコ|撮影監督:マイケル・ミューロー|
出演:地方検事リック(ブレンダン・フレイザー)|その妻ジーン(サンドラ・ブロック)|TVディレクターのキャメロン(テレンス・ハワード)|その妻クリスティン(サンディ・ニュートン)|ライアン巡査(マット・ディロン)|ハンセン巡査(ライアン・フィリップ)|ペルシャ人店主ファハド(ショーン・トーブ)|カギ屋ダニエル(マイケル・ペーニャ)|アンソニー(クリス・“リュダクリス”ブリッジス)|ピーター(ラレンツ・テイル)|グラハム刑事(ドン・チードル)|グラハムの母(ビバリー・トッド)|フラナガン刑事(ウィリアム・フィクナー)|ほか

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一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術



映画「モンディアリート」  監督:ニコラ・バディモフ

上
少年アブドゥを背負うアーメッドと、ルイザ。

 ストーリーはハッピーエンドで終わる心温まる話です。
 この映画、ユーモアがあってコミカルな映画ですが、これを喜劇映画と言ってしまうと、喜劇俳優やお笑い芸人が出てくる映画だと、誤解を生じるかもしれません。
 一方、話は、フランスの児童養護施設にいたサッカー大好きなアラブ人少年が、フランス人の里親のもとで生活していましたが、マルセイユで行われるワールドカップ・フランス大会に、何とかして行きたい!と、無一文で家出したことから始まります。(里親とは、うまくいっていなかったようです)
 よって、話の筋の方はまじめ(シリアス)なお話です。でもユーモアあるコミカルな映画です。甘辛と言いますか、塩あんの味。

0_20180614213714765.jpg アラブ人少年アブドゥは、アーメッドに出会います。アーメッドもアラブ人です。
 アーメッドは、少年がブラジルチームの大ファンであること、マルセイユのワールドカップ・フランス大会を是非観戦したいことを知ります。
 これが、子供好きでもないアーメッドが、少年アブドゥを連れてマルセイユへ行こうとしたきっかけでした。

 そして実は、アーメッドはマルセイユの地元チームのサッカー選手でした。黄金の腕と呼ばれた名ゴールキーパーでした。
 しかし、あることでチームオーナーの怒りを買い、リンチされチームから追い出されました。
 その後、10年間、アーメッドは母親や兄弟たちがいるマルセイユを離れ今日まで過ごしてきました。しかし、もうオーナーに対する罪滅ぼしはこの10年で終えた、終えたい、帰りたいと思い始めていた矢先に、アブドゥに出会ったのでした。
 だから、アーメッドが、少年アブドゥを連れてマルセイユへ行こうとした、本当のわけはアーメッドの方にありました。

 そしてマルセイユへの珍道中が始まります。
 道中いろんなことがありますが、アーメッドと少年アブドゥにとって、ルイザという若い女性に会ったっことは幸いでした。
 そしてお金のない三人は、アブドゥのためにワールドカップ・フランス大会のチケットを買わなければならないために四苦八苦するのですがうまくいかない。
 そんなうちにマルセイユに着いてしまう。
 そこで、アーメッドは決心し彼の古巣、あのチームオーナーに会いに行くのでした。
 結末は、オーナーからチケットを奪いアブドゥは観戦できました。そしてアーメッドとルイザは結ばれます。

 たわい無い話と言ってしまえばそれまでですが、いい映画です。
 ただし残念ながら今ではもう観られない映画です。(昔、NHKBSで放映された時に録画したのを観て書いています)

 はじめに、まじめ(シリアス)なお話ですが、ユーモアあるコミカルな映画です。甘辛と言いますか、塩あんの味、と言いました。
 シリアスな映画だと思いこんで、その視点だけから本作を観てしまうと、ユーモアあるシーンに、とても違和感を感じてしまうかも知れません。本作に限らず、こういった甘辛な映画を観る時には、柔軟な読解力で楽しみましょう。

オリジナルタイトル:MONDIALITO|CARTE D'IDENTITE|
監督:ニコラ・バディモフ|スイス/フランス|2000年|90分|
脚本: ニコラ・バディモフ、ムサ・マースクリ|撮影: トマ・ハードマイヤー|
出演: ムサ・マースクリ(アーメッド、別名ジョルジュ|エマ・ドゥ・コーヌ(ルイザ)|アントワーヌ・モリーニ(アブドゥ)|アントン・クズネゾフ(ロシア人行商・オレグ)

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一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術


1年前・3年前・5年前の6月、一夜一話。(2017年6月・2015年6月・2013年6月の掲載記事)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-06-16 Sat 06:00:00
  • 映画
1年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  1年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2017年6月 Archive>

写真
「夜叉」
監督:降旗康男
高倉健、田中裕子、いしだあゆみ

写真
「紅の翼」
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
アメリカ
写真
「ミニー&モスコウィッツ」
監督:ジョン・カサヴェテス
アメリカ
写真
「フェリーニのアマルコルド」
監督:フェデリコ・フェリーニ
イタリア
写真
「ブーベの恋人」
監督:ルイジ・コメンチーニ
イタリア
写真
「ウィスキー」
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
ウルグアイ

写真
CD紹介
“今日はシンガーソングライターだよ“
リッキー・リー・ジョーンズ
写真
親戚の集まりで京都へ行ってきた。
そのついでに、ちょっと京都観光。
錦市場近くの銭湯がいい!
写真
京都へ行ったついでに、琵琶湖東岸の近江八幡へ行った。
水郷めぐり、秀吉の甥・豊臣秀次の八幡山城跡、近江商人の城下町、
そして織田信長の安土城跡。


3年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  3年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2015年6月 Archive)

写真
「祭りの準備」
監督:黒木和雄
江藤潤、原田芳雄
写真
「隣の八重ちゃん」
監督:島津保次郎
逢初夢子
写真
「夫婦フーフー日記」
監督:前田弘二
永作博美、佐々木蔵之介
写真
「浮草」
監督:小津安二郎
若尾文子,川口浩,京マチ子
写真
「喜劇 駅前温泉」
監督:久松静児
森繁久彌,フランキー堺,伴淳三郎
写真
「沖縄 うりずんの雨」
監督:ジャン・ユンカーマン
ドキュメンタリー映画
写真
「きみはいい子」
監督:呉美保
高良健吾、尾野真千子

写真
「みなさん、さようなら」
監督:ドゥニ・アルカン
カナダ
写真
「バーバー」
監督:ジョエル・コーエン
アメリカ
写真
「台湾の暇人」
監督:アーサー・チュー
台湾
写真
これまでに一夜一話で取りあげた
アジアの映画です。
2017.01.14現在
写真
「天使」・「海辺にて」
監督:パトリック・ボカノウスキー
フランス
写真
「モスクワ・天使のいない夜」
監督:セルゲイ・ボドロフ
ロシア


5年前の6月に掲載した映画です。
  映画の画像をクリックしてお読みください。
  5年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。(2013年6月 Archive)

写真
「大地の子守歌」
監督:増村保造
原田美枝子
写真
「愛怨峡」
監督:溝口健二
山路ふみ子、清水将夫
写真
「下町(ダウンタウン)」
監督:千葉泰樹
山田五十鈴、三船敏郎
写真
「ハッピーフライト」
監督:矢口史靖
綾瀬はるか
写真
「古都」
監督:中村登
岩下志麻(一人二役)

写真
「理髪店の娘」
監督:シャーロット・リム
マレーシア
写真
「新世界の夜明け」・「The Collector」・「Bunohan」
「シネ・マレーシア2013
  マレーシア映画の現在」
写真
「 闇からの声なき声」
筋痛性脳脊髄炎 (ME)という
難病のドキュメンタリー映画
写真
「出発」
監督:イエジー・スコリモフスキ
ベルギー
写真
「マイ・ブルーベリー・ナイツ」
監督:ウォン・カーウァイ
香港
写真
「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」
監督:トーマス・ヤーン
ドイツ
写真
「メイク・イット・ファンキー」
ニューオリンズの音楽ドキュメンタリー映画
アメリカ

写真
映画ピックアップ
「人生なんて、そうそう
  うまく行かないワケよ。」


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一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術

映画「北京好日」  監督:ニン・イン

上

 現在進行形の(1992年当時の)、北京の街中の人々をドキュメンタリー風に活写する映画。
 登場人物はみな、京劇が三度の飯より好きなおじいちゃん達。
 塀沿いの通りの傍らに集まって、京胡(胡弓のような擦弦楽器)や太鼓、月琴など楽器を奏でる人達、代わるがわる自慢の喉を聴かせる人達。
 文革の世を生きてきたじいちゃん達はみな様々な労働者だったが、今は隠居の身。時間だけはある。

2-0_20180621140001726.png こんな一群に登場するのが主人公の韓(ハン)じいさん65歳。
 韓さんは京劇の劇場で長年、守衛をしてきた。
 とは言っても守衛・宿直業務以外に、劇場の事務方雑用や、出番前の(端役の)役者へ注意をしたり、舞台で虎のぬいぐるみに入ることもあった。つまり劇場と劇団の、陰ながらではあるが世話役といった立ち位置。そのすべてが韓さんの生きがいであった。
 そして定年。本人はまだまだ仕事を続けたいが、代わりの人も既に採用された。すなおに辞めるしかない。

 韓さんは独り住まい。連れ合いは先に逝った。否応なく定年後の日々が始まったが、さて、することがない。
 毎日出勤時間に家を出て、街をあてもなくうろつく。そしてある日、京劇好きな一群に出会った。

 韓さん、正直なところ、京劇の真似をして楽しむ事にさほど興味がわかない、それよりも、京劇好きな男たちの一群に対して世話役を名乗り出たい。これができれば、韓さんの生きがいの継続になる。
 韓さんは洋風ダンス教室をやっている会館を偶然見つけ、役所に京劇教室の申請をし許可が降りる。

 京劇好きのじいちゃん達は、韓さんのおかげで、寒風吹きすさぶ寒空の下で集まることもなくなると、みな大喜び。
 韓さんは韓さんで、歌う順序や運営ルールを決めたり、茶を用意したりと楽しそう。

 街の京劇コンクールにも出た。おじいちゃん達の数も増え、仲も深まり、そして一年が経とうとしていた。
 そんなある日に、歌う順序にルール無視で割り込むといった些細なことから、その場にいたおじいちゃん達も巻き込んで、大人げない喧嘩沙汰になる。韓さんは世話役を辞めると出ていった。
 その夜、会館ではおじいちゃん達が集まっていた。これまでやって来れたのは韓さんのおかげだ、喧嘩をはじめたお前は韓さんに詫びを入れろなどと話している。これを外から盗み聞きしている韓さんの表情は悲しそう。

 会館の利用は、もとから一年限りであった。みな、決まりが悪い別れとなってしまった。
 ラストシーン。塀沿いの通りに以前のように集まって、おじいちゃん達数人が京劇の演奏と歌を楽しんでいる。
 韓さんが通りの角からそおっと、その様子をうかがっている。そして、意を決した韓さんが皆の方へ向かって歩みだす。

 地味な映画ですが、こういうの好きです。
 出演者の大かたは素人だそうです。おじいちゃん仲間の中で唯一の若者(練炭町工場の雇われ役)は、ダウン症の障害のある方ですが、この人の存在が映画になごみを添えています。
 それと、製作当時の1992年から26年経った中国の急速な経済発展にあらためて驚く。
 この映画に登場したじいさん達も、きっとあの世で目を丸くしているだろう。

オリジナルタイトル:For Fun 找楽
監督:ニン・イン|中国、香港|1992年|93分|
原作:チェン・チェンコン|脚本: ニン・イン、ニン・タイ|撮影:シアオ・フォン、ウー・テイー、ヤン・シアオウェン|
出演:韓(ハン)じいさん:ホワン・ツォンルオ|喬万有(チアオ・ワンヨウ):ホワン・ウェンチェ|何明(ハー・ミン):何明|楊(ヤン)先生:ヤン・ヨウタン|董(トン)じいさん:ハン・シャンシュイ|王(ワン)じいさん:ワン・シューマン|

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映画「軽蔑」(1963) 監督:ジャン=リュック・ゴダール

上
イタリアの南、カプリ島にあるプロコシュの別荘にて。
左から、米国人映画プロデューサーのプロコシュ(ジャック・パランス)、通訳兼秘書嬢、カミーユ(ブリジット・バルドー)、その夫・劇作家のポール(ミシェル・ピッコリ)、名映画監督フリッツ・ラング(本人役で出演)。

             

1-0_20180623104949979.jpg ある日突然に妻から軽蔑され始めた夫の話。
 夫は劇作家のポール(ミシェル・ピッコリ)、妻のカミーユ(ブリジット・バルドー)は元タイピスト。

 ポールが劇作家として売れない頃に、ポールはカミーユと出会ったのだろう、貧しいながらも楽しい生活であった。(と思われる)
 その後、劇作家として飯が食えるようになる。何部屋もある高級マンションを買った。
 カミーユ曰く、「ホテル住まいより、ずっと豪華なマンション」に移り住むことができた。
 しかし、マンション購入にあたって一部の支払いは済ませたものの、残り全額支払うためには、荒稼ぎが必要だった。

 そこへ舞い込んだ美味しい話にポールは乗った。
 それは、アメリカ人の映画プロデューサー、プロコシュ(ジャック・パランス)が手掛ける映画「オデュッセイア」の脚本を、一般受けするように手直しする案件。監督フリッツ・ラング(本人役)が書いた脚本が硬く、プロコシュは気に入らない。撮影は一部すでに始まっているにもかかわらず、だ。
 プロコシュに呼び出されて、ポールはカミーユを連れて撮影所へ出向いた。
 そしてポールは撮影所の試写室に入り、テスト撮影を観る。監督が書いた脚本も渡される。
 映画の脚本は初めてだし、プロコシュのワンマン振りもいかがなものかと思ったが、ポールはやると返事した。プロコシュはその場でポールにギャラの小切手を切った。

02-_2018062310510525b.jpg そう、この日から、カミーユのポールに対する態度が一変する。
 そういえば、撮影所でのミーティングが終わってのち、プロコシュが自宅にポール夫妻を誘ったとき、プロコシュは赤いスポーツカーにカミーユだけ乗せようとした。あの時、カミーユは、これでいいの?という視線をポールへ送ったが、ポールはプロコシュに、どうぞ、自分はタクシーで行くと行った。あれがカミーユの気に障ったか・・とポールはそう軽く思っていた。

 そんなことだから、妻から軽蔑され始めたという事にポールはまったく気づかない。
 その後何日経っても、ポールはカミーユの態度が一変したわけがわからない。ポールには、さしたる心当たりがない。カミーユの心模様を探ろうと、カミーユに何度もわけを聞いたが何も言わない、話を逸らす。夫婦の、男と女の、ボタンの掛け違いの果てしない無限ループが続く。

 そして夫婦のそんな事情は、映画プロデューサーのプロコシュの別荘に持ち込まれる。
 結局、ポールはプロコシュからの誘いを辞退し、別荘をひとりあとにする。
 一方、この先タイピストとして働くと言うカミーユは、プロコシュの車に同乗し・・。
 そして結果的に、映画監督フリッツ・ラングは自作の脚本で映画を撮り続ける。


 たぶん、カミーユには、ポールに対する思いに、以前から徐々に変化があったに違いない。
 その身近な変容に気付かなかったポール。妻へのいとおしみ、観察力が何か欠けていたポール。

 映画は、製作当時の西欧映画業界の斜陽と、資金力あるハリウッドとの対比を物語に埋め込んでいる。
 また、男の思う成功と、女の思う幸せも対比してみせているように思う。

オリジナルタイトル:Le mepris
監督:ジャン=リュック・ゴダール|フランス・イタリア|1963年|102分|
原作:アルベルト・モラビア|脚本:ジャン=リュック・ゴダール|撮影:ラウール・クタール|
出演:カミーユ(ブリジット・バルドー)|ポール(ミシェル・ピコリ)|映画プロデューサーのジェレミー・プロコシュ(ジャック・パランス)|通訳のフランチェスカ・ヴァニーニ(ジョルジア・モル)|映画監督、本人役(フリッツ・ラング)|撮影監督(ラウール・クタール)|ラングの助監督(ジャン=リュック・ゴダール)|

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映画「合葬」  監督:小林達夫

上

 将軍徳川慶喜が政権返上を明治天皇に奏上した大政奉還1867年から翌年1868年までのお話。

 世の中の土台が瓦解する幕末に、武士に生まれたからこその、生き方選択の迷路に迷い込んだ、幼なじみの3人の男たちがいた。
 しかし、この先世の中どうなる、という大きな不安が押し迫るさなかでも、武士にも、また武家の女や町人・農民といった人々にも、彼らの日常はそれぞれにあった。もちろん恋もあった。

1-0_20180627112225bd2.jpg 秋津極(柳楽優弥)は彰義隊に入隊するため、砂世(門脇麦)との婚約を一方的に解消した。(秋津は死を覚悟していた)
 砂世は、秋津の幼なじみの福原悌二郎の妹で、砂世は幼いころから秋津に淡い恋心を抱いていたのだった。
 秋津のもう一人の幼なじみ吉森柾之助は、養子先の武家から前触れなく、ていよく追い出される。(養子先の武家の女達は武士の世は終わったと、時代の変わり目を読んでいる)

 吉森に何処へと行くあてはない。秋津はこの迷える吉森を彰義隊に引き入れた。
 その吉森にもうひとつの迷いがあった。それは、茶屋で働く かなという女に恋をどう打ち明けようかという迷い。だが、そのかなは秋津に猛烈に一目惚れしてしまう。
 
 こうして秋津は妻になる女を捨て、吉森は女への思いを抱きながら彰義隊に入隊する。
 この事態におよんで、徳川将軍の身辺警護と江戸の秩序守護を目的とした彰義隊なんて、大政奉還した今、もう意味ないじゃんと思う福原は秋津に、改めて妹との婚約解消を考え直してくれ、いや少なくとも妹にもう一度会ってやってくれ、と頼み込んだ。
 そしてさらには福原は、秋津と吉森の、彰義隊に対する考えを覆そうと、彰義隊の客分となって彼らの宿舎(寺)に出入りするようになった。

 その寺には、森篤之進(オダギリジョー)という、彰義隊の武闘派(抗戦派)に懐疑的な男もいたが、その日、彰義隊と新政府軍との戦争が上野(パンダがいる上野)や谷根千あたりで始まってしまう。
 結局、福原は秋津、吉森と共に戦争に加わるが、福原は戦死。
 (彰義隊は、上野の寛永寺(上野公園)に結集するがほぼ全滅、生き残ったわずかの隊員は散り散りに谷根千あたりに四散。上野戦争)
 農家の小屋に身を隠す、負傷した秋津とそれを見守る吉森。翌朝、秋津はこの小屋で自害。

 福原の妹、砂世は、年上の穏やかな男と結婚した。
 砂世は、夫の前で胸の内を打ち明ける。
 あなたとの縁談の話が持ち上がった時、私は兄にウソをつきました。これから一生悔やむことになるから、一目秋津に会っておきたいと。

2-1_201806271123553c7.jpg でも、私はある夜、秋津と一夜を共にしていました。何処から聴こえる笛の調べに魅了されたらしい秋津が、突然に我が家の縁側に現れたのです。
 これを聞く夫は穏やかにほほ笑むばかりでありました。

 いわゆる歴史小説で描かれる幕末ではありませんね。
 話の底にある、ある種の「静寂さ」を感じ得れば、よりいい映画に思えるかもしれません。 
 何かで読んだ記憶ですが、谷根千あたりの武家屋敷の庭に上野戦争で敗れた彰義隊隊員が隠れていたという話を思い出しました。

監督:小林達夫|2015年|87分|
原作:杉浦日向子|脚本:渡辺あや|撮影:渡辺伸二|
出演:秋津極(柳楽優弥)|吉森柾之助(瀬戸康史)|福原悌二郎(岡山天音)|福原砂世(門脇麦)|かな(桜井美南)|森篤之進(オダギリジョー)|ほか

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2年前・4年前・6年前の6月、一夜一話。(2016年6月・2014年6月・2012年6月の掲載記事です)

  • Posted by: やまなか
  • 2018-06-29 Fri 06:00:00
  • 映画
2年前の6月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
2年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2016年6月 Archive)

写真
「煉瓦女工」
監督:千葉泰樹
矢口陽子、三島雅夫
写真
「喜劇 女は度胸」
監督:森崎東
倍賞美津子,沖山秀子,渥美清
写真
「贅沢な骨」
監督:行定勲
麻生久美子、つぐみ
写真
「貸間あり」
監督:川島雄三
フランキー堺、淡島千景
写真
「亀は意外と速く泳ぐ」
監督:三木聡
上野樹里  
写真
<あ行> の邦画
これまでに記事にした邦画から。
2016.6.14現在

写真
「ボンボン」
監督:カルロス・ソリン
アルゼンチン
写真
「のるかそるか」
監督:ジョー・ピトカ
アメリカ
写真
「ママと娼婦」
監督:ジャン・ユスターシュ
フランス
写真
「ハッピー・クリスマス」
監督:ジョー・スワンバーグ
アメリカ

写真
「映画の特集の特集
テーマに沿って、一夜一話の中から厳選しました。



4年前の6月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
4年前の6月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。 (2014年6月 Archive)

写真
「こだまは呼んでいる」
監督:本多猪四郎
池部良、雪村いづみ
写真
「孤独なツバメたち
デカセギの子どもに生まれて」

ドキュメンタリー映画
写真
「BU・SU」
監督:市川準
富田靖子
写真
「雨月物語」
監督:溝口健二
京マチ子,田中絹代,森雅之
写真
「地獄」
監督:中川信夫
天知茂、沼田曜一 .
写真
「凶気の桜」
監督:薗田賢次
窪塚洋介、RIKIYA

写真
「罪の手ざわり」
監督:ジャ・ジャンクー
中国
写真
「闇のあとの光」
監督:カルロス・レイガダス
メキシコ
写真
「新装開店」
監督:キム・ソンホン
韓国
写真
「時計じかけのオレンジ」
監督:スタンリー・キューブリック
アメリカ
写真
「ハーダー・ゼイ・カム」
監督:ペリー・ヘンゼル
ジミー・クリフ|ジャマイカ.
写真
「レイチェルの結婚」
監督:ジョナサン・デミ
アメリカ



6年前の5月に掲載した映画です。
映画の画像をクリックしてお読みください。
6年前の5月の掲載記事全文をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。<2012年5月 Archive>

写真
「ガス人間第一号」
監督:本多猪四郎
八千草薫
写真
「東京物語」
監督:小津安二郎
原節子,笠智衆,東山千栄子
写真
「ゴーヤーちゃんぷるー」
監督:松島哲也
多部未華子、武田航平
写真
「祇園の姉妹」
監督:溝口健二
山田五十鈴、梅村蓉子
写真
「今宵ひと夜を」
監督:千葉泰樹
八千草薫、三浦光子
写真
「海ほおずき The Breath」
監督:林海象
唐十郎、原田芳雄

写真
「アニー・ホール」
監督:ウディ・アレン
アメリカ
写真
「PARIS (パリ)」
監督:セドリック・クラピッシュ
フランス
写真
「5時から7時までのクレオ」
監督:アニエス・ヴァルダ
フランス
写真
「中国娘」
監督:グオ・シャオルー
イギリス
写真
「ロードキル」
監督:ブルース・マクドナルド
カナダ
写真
「恋する惑星」
監督:ウォン・カーウァイ
香港
写真
「ボルベール<帰郷>」
監督:ペドロ・アルモドバル
スペイン
写真
「レポマン」
監督:アレックス・コックス
アメリカ


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プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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