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映画「罪の手ざわり」  監督:ジャ・ジャンクー

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  この映画の売り文句や著名人のコメントは、映画が語る真意に、正面から向き合おうとしていない。中国当局に配慮しているのかな。

◆ 大海  40歳代 独身 山西省
  「村人たちを沈黙させる力」に抗って、言いたいことを言う男であった。  村人や親族は日ごろから、大海の行動を制したが、彼は聞かなかった。
  村の共同所有だった鉱山が、村人が知らぬ間に私企業のものになっていた。つまり国有鉱山が、民間に払い下げになったのだろう。党幹部かその親族が、真っ先に利益を得る。自家用ジェット機、高級車を所有する男。
  大海は、社長を猟銃で射殺する。

2-0.jpg◆ 小輝  20歳前後 独身 広東省広州→広東省東莞(ドングァン)・・・香港の近く
  広州の縫製工場で工員をしていた。小輝が、作業中の従業員に話しかけ、この私語の最中、相手が大けがを負う。工場は小輝に、相手の従業員の入院期間、小輝の給与はゼロと言い渡す。小輝に非は無くはないが、適正な賃金・基本的な職の保護を要求するリスクを小輝は避け、無言で工場を辞める。
  東莞(ドングァン)へ。大きな企業に勤める友人を、工場に訪ねる。広大な従業員用食堂の片隅で友人と会話。小輝は管理された職場を嫌った。結局、高級ナイトクラブにもぐり込みボーイの職を得る。
  ナイトクラブで小輝が見たものは、上層階級の男たちの歪んだ精神と、クラブで働く下層の女性たち。その女性たちのひとりに、小輝は恋をしたが・・・。小輝は、素直に理解できない社会、恋に、思いのほか疲れていた。飛び降り自殺。


3-0.jpg◆ 小玉  30歳代? 独身 湖北省宜昌(イーチャン)
  彼女の仕事は、風俗サウナの受付カウンター担当。広州の男と不倫の関係が続いているが、そろそろはっきりさせる時期が来ていた。つまり彼女は精神的に辛い時期だった。
  地元・宜昌で我が物顔の男がいた。公道を占拠し、通行料を取るといった行動を制する者はいない、そんな男。地元官僚や警察との賄賂・癒着、そんなことなんだろう。
  ある日、この男がサウナに来店。小玉を見て、札束で風俗を強要しようとする。拒み続けた小玉は、ついに男をナイフで刺殺する。

4-0.jpg◆ 周  30歳代? 既婚 重慶 (家族は妻と一人息子)
  妻や村人には、出稼ぎに出る、と言いながら、実は中国各地をバイクやバスで放浪し、強盗殺人を繰り返している。不定期に、妻に多額の仕送りをする。妻はもちろん、親・親族から、一定の距離を置く人生。妻に今度はどこへ行く?と聞かれて、ミャンマーで高性能な拳銃を入手すると言う。
  周のエピソードのラストシーン。銀行で金をおろした富裕層夫人を路上で射殺しハンドバッグを奪う。(上記3つのエピソードとは色合いが違うように思える。)

  以上、4人のエピソードで構成された映画。実際の事件をヒントに製作されたらしい。
  党幹部・賄賂などというようなキーワードは映画に出てこない。遠回しに、京劇の劇中セリフに代替されている。たぶん、中国が許すギリギリのラインなんだろう。
  話は飛ぶが、中国の市場改革派の理論的支柱とされた経済学者・コルナイ・ヤーノシュ曰く、「中国は、社会主義経済ではない。非民主的で権威主義的な一党支配体制下の資本主義経済」 らしい。
  そんな中、ジャ・ジャンクー監督は中国でもっともタブーとされるタブーに対して、疑問を呈し批判をする挑戦をしているのだろう。
  一方、映画の売り文句は、「罪を犯さずにはいられなかった人々の怒りと哀しみが胸をうつ、衝撃と慟哭の物語」・・・だ。 4人個人への思い、という事に限定し、視野をせばめて語ろうとしている。監督との温度差を感じる。

  衝撃と言えば、銃の発射音や血しぶきや小玉(チャオ・タオ)のナイフさばきが、まさにアクション映画!! パワフル?  これ、なんか違和感あるな。
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  映画のチラシに、スピルバーグが「なんてパワフル!ジャ・ジャンクーの才能に敬意を表したい。」と言っているのは、ジャ・ジャンクーの挑戦を言っているのだろうか?
  映画自体は、エピソードを並べただけで、作品の出来としては、決して いい方じゃない。

オリジナル・タイトル:天注定 |A Touch of Sin|
監督:ジャ・ジャンクー|中国・日本|2013年|129分|
出演:チャオ・タオ:小玉(シャオユー)|チアン・ウー:大海(ダーハイ)|ワン・バオチャン:周(チョウ)|ルオ・ランシャン:小輝(シャオホイ)|チャン・ジャーイーヨウ:リャン|リー・モンリェン:ロン|ハン・サンミンサン:ミン|ワン・ホンウェイ:サウナ客|

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