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映画「サーカス」  監督: G・アラヴィンダン  インド映画

上  

上2  いい映画だ。
  元気で楽しいインド映画も いいかもしれないが、彼の国には こんなに静かで情緒ある映画もある。
  インドの地方の人々の素朴さ、自然豊かな村の様子が、ていねいに描写されている。 セリフは ほとんどないが、無いだけに伝わってくることが、たくさんある。

  南インドの地方を巡業する、あるサーカス団が一台のトラックに乗ってやって来た。
  トラックの荷台には、団長はじめ10数人の団員たちと、ヒョウが入った檻と、テントや衣装・小道具・ヤギ・サルなんかが積まれている。
  彼らの出し物は、一座の華・娘たちによる自転車曲芸、インドヒョウの猛獣使い、娘を標的にするナイフ投げ、ピエロのパントマイムコメディそしてお猿のお笑いショーが、人気ネタだ。
  それに、4歳くらいの幼い女の子を交えてのアクロバット、たいまつのジャグリング、綱渡りなどが加わる。


組1-0  一座のトラックは、公演する村を通り抜け、村はずれの広い河原に止まった。
  まずはの準備は、団員総出でロープを引っ張って、この河原にテントの支柱を高々と、立ち上げることから始まった。 
  団のマネージャー氏は、公演に際しての便宜計らいを願うべく、村長と村の有力者を訪ね挨拶して回った。一方、団員たちはジンタ、つまり公演宣伝のため 太鼓やラッパを打ち鳴らし、「美しき天然」のような 少々悲しげな曲を演奏し、ビラまきをして、ついてくる子供たちを従えながら村中を行進する。

  公演初日、日が落ちて、村のあちこちから歩いて来る人々、川を舟で来た人たち、あらかじめ招待券が配られた有力者の家族たち。みんな裸足だ。公演がはじまる。子供も大人も、キラキラした目をして、ハラハラドキドキ、クスクス笑いに大笑い。大いに受けている。

組2-0  翌日、昨夜の興奮さめやらぬ子たちが、サーカステントに集まってくる。
  ピエロのおじさんは、どこ?  河原にうずくまり、無言で川をながめるピエロの老人は、子たちに振り向きもしなかった。平素のサーカスは、芸の練習か、さすらう人生を見つめる日々である。

  団員のほとんどは、幼くして親に売られて来た人々だ。アクロバットの女児の面倒をみる綱渡りの女は、51歳。6歳の時に売られてこのサーカスに来て、彼これ45年。若いころは綱渡りのサーカス・スターだったんだろうが、今は時々の出演。衣装は若いころの衣装そのまま。哀愁が漂う。

  興行成績は、日が経つにつれ落ちていくものだ。増して、田舎の村。すぐに客足は落ちた。団長は決断し、テントをたたみ次の村へと旅立って行った。トラックが村の中を通り抜けていく時、人々はそれぞれに手を振って見送ってくれた。

  団員が村を行進するジンタの演奏は、スタジオ録音で差し替えているけれども、実にいい。日本のチンドンやクレズマーや篠田昌已・大熊ワタルなんかが好きな人にはたまらない音色。(このあたりのジャンルに関心ある方は、当ブログから、コチラの記事をご覧ください。)
  本作は、団員内の恋愛・争い事などをテーマにせず、また人身売買・カースト制度などといった事を直接に物語らず、サーカス団の経営と、団員の生き様の総体を、ある程度に引いた眼でとらえながら、同時に村人の心情や村の自然も視野に入れて語る、詩情豊かな映画である。製作にあたっての、この立ち位置がこの映画を素晴らしいものにしている。

  ローカルなサーカス団を扱った邦画では、1935年の成瀬巳喜男の「サーカス五人組」があった。レビュー記事は、こちらからどうぞ

下0  川崎市市民ミュージアム・映像ホールで観ました。(同館が収蔵する映画)
  監督のG・アラヴィンダンを映像詩人としている。

オリジナル・タイトル:THAMPU|英語タイトル:THE TENT|
監督・脚本:ゴーヴィンダン・アラヴィンダン|インド|1978年|130分|
撮影:シャージー|
出演:ゴーピ|ヴェヌ|シュリーラーマン|実際の村人たち|

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