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映画「みれん」   監督:千葉泰樹  主演:池内淳子、仲谷昇、仲代達矢

上

組1-0  池内淳子30歳を味わう映画。

  知子(池内淳子)は、小杉(仲谷昇)と愛人の関係になって、かれこれ8年になる。
  その8年前、小杉は妻子を抱え生活苦にあり、かつ自分の才能と人生を諦めていた。そんな負け犬の男に、知子は無性に魅かれて行った。ある年ふたりは、知子の金で汽車に乗り 秋保温泉へ向かい、雪の温泉宿で心中を図ったが、死にきれなかった。

  それからというもの、小杉は、家庭がある江ノ島近くの自宅と、友子がひとり住む文京区森川町(本郷6丁目)を行き来する生活を送っている。もちろん、知子は小杉の家内・ゆきと面識はないが、この三角関係は、小杉という優しい男を、互いにシェアする微妙な関係の上に成り立っていた。それはそれで、三人にとってそれなりに幸せな日々であったのかもしれない。
  知子は、ろうけつ染めの着物の図案を描くテキスタイル・デザイナーで、女がひとり食っていくには困らない収入があって、経済的には小杉から自立して生きて来た。だから、彼女は世間から妾や情婦と言われることを嫌った。一方、小杉は作家になりたかったが、夢は果て、今は社史、創業者一代記を書くライター稼業。小杉の家内は、ミシン仕立てお受けしますという小さな看板を玄関に出して、洋裁をしている。

中2  そんなある日、知子は、まったく偶然に、木下涼太(仲代達矢)と再会した。
  話はこの辺りから展開し出す。そもそも、知子は佐山知子といい、夫は佐山勇一という男。知子の故郷では名士であった。この元軍医で医院経営の夫が、選挙に出ることになり、選挙運動のアルバイトをしていた青年が、木下涼太であった。
  知子は佐山と戦前に結婚し子もいたが、夫婦仲はうまく行っていなかった。そしてある日、若かった知子は、年下の木下涼太を連れて駆け落ちした。12年前のことである。だが、あとさき無い生活は続かず、二人の関係は破たんした。たぶん、別れを切り出したのは知子の方であったろう。

組2-0  再会した木下涼太は、見るからに生活に疲れ果てた様相であった。知子は、そんな彼を哀れに思うと同時に、そんなにした自分を責めた。償いたい。靴やYシャツと、彼の身の回りの品々を買ってやる。身入りの良い職を見つけてやる。
  しばらくすると、知子の支援の甲斐があり、木下涼太は身も心も、本来の彼に復帰し始めた。その様子を見て、償いは終わったと感じた知子はもう会わないと言ったが、結局のところ、ふたりのこころは、あらためて通じ合うことになってしまう。
  知子は混乱し出す。木下をただかわいそうに思う気持ち、木下への愛、そして小杉との落ち着いた生活、さらには冷静な自分。彼女の心は、これら四つの間を行き来するようになる。
  やがて木下は、結婚しよう、小杉と別れてくれと せがむようになる。それを聞いて知子は、またしても、木下涼太を傷つけてしまったと後悔し出す。そして、彼に別れを言った。

組3-0  ここしばらく小杉から連絡が無かった。そんななか、知子は、小杉の妻が自殺したといううわさを聞く。取り乱し家に帰った知子。その夜、小杉の妻ゆきから、初めての電話がかかって来た。電話は小杉にであった。子供が盲腸炎になったので急いで帰ってきてほしいと伝言を頼まれる。うわさは嘘であった。ゆきの声を始めて聞いた知子。
  その一時のち、小杉がいつものように、ふらりと知子の家に帰って来た。

  この日のことが、知子をうろたえさせた。木下涼太との愛もさることながら、8年続く小杉との関係なくして知子は、今を生きていけないことを思い知る。そして、今まで気に留めなかった、小杉の妻・ゆきに嫉妬を抱くようになる。
  ある日、畳表を新しくした知子の家で、小杉は寝転んでいる。そばにはべる知子が言い出す。「昔、あなた言ったでしょ、子供が欲しいって。」 「そんな事言ったっけ?」 「あなたがやっと、生きる元気が出てきた頃よ。」 「そうだった。」 「あたし、こうして畳のいい匂いを嗅いでいると、ふと家庭を持ちたいって思うわ。」

中  そう言いながら、知子の中では、もう今までのようにドライな気持ちを維持できなくなっていた。つまり、微妙な三角関係の一角が変わってしまった。終りにしよう、そう決心していた。
  後日、知子は小杉に木下のことを告白する。静かに聞いた小杉は既に悟っていた。そして別れも悟った。

  小杉と木下の人物表現に彫りの深さが無いし、あまりに不甲斐なく、特に木下がベタつく。もう少しカラッとせい!   
  この辺り、男の機微を上手に表現できていれば、この映画、もっと良くなる。残念。  
  これに引き替え、小杉の妻の人物像はうまく表現できていた。配役は岸田今日子だが、岸田の出演はなく、電話の音声と手紙の朗読だけである。つまり、知子の家にかかって来た電話の音声と、夫宛の手紙を知子が盗み読む時の手紙文朗読だ。岸田今日子の語りが、味わい深い。  さらに、知子が小杉の自宅を訪ねた時に、部屋にワンピースが揺れていた。妻がミシンで作ったものだろう。 小杉の妻を表現する、これらのシーンは観る者に多くを語りかけている。

下監督:千葉泰樹|1963年|99分|
原作:瀬戸内寂聴・著「夏の終り」|脚色:松山善三|撮影:西垣六郎|
主演:佐山知子(旧姓相沢):池内淳子(1933年 - 2010年)|小杉慎吾:仲谷昇|妻ゆき:岸田今日子|木下涼太:仲代達矢|知子の図案を贔屓にする着物専門店・世喜弥の主人:加東大介|広告代理店社員・青島:名古屋章|同・由起子:山岡久乃|知子の元夫・佐山勇一:浜田寅彦|知子が住む貸家の家主・柿沼はつ:乙羽信子|居酒屋・三っ田のおかみ:沢村貞子|秋保温泉の女中:日塔智子|旅館の女中:矢野陽子|ホテル従業員:中山豊|たたみ職人:広瀬正一|菓子屋の主人:田辺元|靴屋の店員:伊藤正博|お茶漬屋の店員:川久保とし子|茶店の青年:青木君雄|洋品店の女店員:輝山恵子|世喜弥の女店員:歌川千恵|

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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