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映画「博士の異常な愛情」 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか   監督:スタンリー・キューブリック

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  核爆弾にまたがり 落下して行く B-52機長のカウボーイ! キング・コング少佐。  
   核爆弾は、ソ連の基地に命中。 不幸にも、一旦出された指令は、止めようがなかった。  
    
          
  いい映画。
  一気に見終える、大人の喜劇。
  国家間の事柄から個人の内面までと、扱う世界が広く大きいのもいい。

  米ソが激しく対峙する冷戦時代の話。
  アメリカは、アメリカ本土を狙う、ソ連の「奇襲」核攻撃を一番に恐れていた。
  米空軍は、ソ連周辺に、核爆弾を搭載した戦略爆撃機B-52、34機を常時飛ばし、いつかある、いつか必ず実行すべき「報復」核攻撃の態勢を敷いていた。B-52の攻撃対象は、もちろんソ連の各所にある核基地だ。低空飛行でソ連圏奥深くまで侵入し、基地上空で爆弾を落下する。
組2-0  しかし、この報復核攻撃の判断と命令のルールは、頂点に位置する大統領の判断だけ、と限ってはいなかった。ルールでは、ワシントンが攻撃を受けて機能しない場合も想定されて、この場合は戦略空軍基地司令官(空軍将軍)の判断だけで、対ソ攻撃が可能になっていた。

  ある日、戦略空軍基地司令官であるリッパー将軍は、まったく彼個人の判断で報復核攻撃の命令を下した。それはつまり、ソ連の先制攻撃なしの「報復」攻撃となった。
  命令した作戦は、R作戦。その内容は、各B-52との交信は、基地にいるリッパー将軍との通信回線だけに制限する。同時に、その他との交信は完全遮断。たとえ大統領とのホットラインであろうが完全に遮断される。また、指令解除のルールは、リッパー将軍のみが知るアルファベット数文字の暗号だけであった。

組1-0  あわてるアメリカが滑稽に表現される。
  手の打ちようがない事態に、大統領は駐米ソ連大使を、国家機密会議に呼んだ。一方、空軍最高責任者であるタージドソン将軍は、手の打ちようがないこの事態に舞い上がる。「我が国が、ソ連に対し、先制核攻撃する!」 (その後を読めない読まない超タカ派・タージドソン将軍は道化を演ずる)
  だが、なぜか基地内の公衆電話は遮断されていなかった。基地司令・副官の機転で、事態は大統領に伝わり、かつ爆撃開始直前に停止命令の暗号が各B-52に配信された。
  敵国ソ連は、駐在大使を通してアメリカの過ちを知り、冷静な行動をとった。
  だが、キング・コング少佐が機長のB-52、1機だけが、暗号を受信できず、ソ連のある基地へ核を抱えてまっしぐらに向かうのであった。
  
  政治や軍隊の上層部がどうなのか知る由もないが、登場人物彼らの振る舞いをみていると、「ありえる!」「そうだろうな・・・」と、うなづく箇所が多く、笑いを誘う。
  映画は、東西冷戦当時の核戦争の話だが、核に限らず、また過去の話としてしまわずに、今に置き換え普遍化して観た方がいいかもしれない。
  国家群間の張りつめた軍事的緊張関係が続くなかでも、ある一瞬、エアポケットのように、想定外の個人の判断が入る「隙」は、いくらでもあるんだろう。それは、ミスか意志か狂気か。どんなに精緻にマニュアル化されていようが、起こりえる。そもそもマニュアルや戦略に無いことも起こりえる。
  たとえば、誰か個人が相手方の民間機を撃ち落としてしまう、といったように。

組3-0  リッパー将軍は、美味しいところをタージドソン将軍や、ナチなストレンジラブ博士に取られてしまい、存在感が薄くなっている。彼は、R作戦を実行する重要人物だ。彼のマッドな人物表現に、もう一段の彫りの深さがないために、映画の面白味を削ぐ結果になっている。つまり、ピーター・セラーズが、アメリカ大統領、ストレンジラブ博士、リッパー将軍付きの副官、の三役を演じているが、副官ではなくて、リッパーさんを演じるべきであった、と思う。
  
オリジナル・タイトル:Dr.Strangelove: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb|
監督スタンリー・キューブリック|アメリカ|1964年|93分|
原作:ピーター・ジョージ|脚本: スタンリー・キューブリック、ピーター・ジョージ、テリー・サザーン|撮影: ギルバート・テイラー|
出演:ピーター・セラーズ(英国空軍大佐でリッパー将軍付きの基地の副官・マンドレイク/アメリカ大統領・マフリー/大統領科学顧問・博士・ストレンジラブ)|ジョージ・C・スコット(アメリカ空軍将軍・バック・タージドソン)|スターリング・ヘイドン(アメリカ空軍将軍・戦略空軍基地司令官・ジャック・リッパー)|キーナン・ウィン(バット・グアノ大佐)|スリム・ピケンズ(爆撃機B-52機長・キング・コング少佐)|ピーター・ブル(ソ連中米大使・サデスキー大使)|トレイシー・リード(ミス・スコット)|ジェームズ・アール・ジョーンズ(ゾッグ少尉)|ジャック・クレリー(スタインズ)|ポール・タマリン ゴールド(バーグ少尉)|

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