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映画『 犯罪「幸運」 』  監督:ドリス・デリエ   2012年 ドイツ映画

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      上2  

  東欧の羊飼いの娘と、ベルリンのホームレス青年との、純なラブストーリー。

組2-0  嫌な予感がした。イリーナは、急いで山の上にある家へと向かった。
  なぜなら、戦車に乗って街中を走り抜ける武装兵士を、職場から目撃したからだ。ついに、この国で民族紛争が始まったのだ。
  家に着いて彼女が見たものは、射殺され床に転がった両親の姿であった。 と、その瞬間、後ろから現れた数人の兵士たちによって、イリーナは羽交い絞めにされ、食卓の上でレイプされてしまった。
  我に返ったイリーナは、すぐそばの湖へ走った。そして入水を試みたが、死ねなかった。

組1-0  間もなく、彼女は村を出た。
  ベルリン。生まれて初めての大都会。
  ビザなし、不法入国のイリーナは娼婦にしかなれなかった。
  夜、路上に立ち、客の車が裏通りに来るのを待つ。車が近づいて話がまとまれば、彼女はその車に同乗して元締めの店へ。ねぐらは駅裏のビジネスホテルだ。ルームキーを受け取るたびに、カウンターの女は冷たい視線でイリーナをにらむ。

  そんなある日、イリーナは黒いラブラドールを連れたホームレス青年に出会う。名をカッレと言った。
  彼は、道行く人々に小銭をせびる日々。ビール臭い飲んだくれで、犬と路上生活。そんな彼にイリーナは安い赤の毛布をあげた。彼はすなおに喜び、おどけてみせる。二人の愛が始まった。
  好きな人とのセックスは初めてだったイリーナと、童貞のカッレ。ともに無口。互いに過去のことについては話さない。ただ、一緒にいれるだけでよかった。彼女の方が、姉さんなところが微笑ましい。

  イリーナは時々、発作を起こした。
  例えば、ビジネスホテルのTVが不意に内戦のニュースを流した時、彼との初めてのベッドインの時。
  あの時のことが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になって彼女を苦しめる。
  発作を鎮めるにすることは、トイレに駆け込んで、待ち針を数本、太ももに刺す。とてもカラフルなその待ち針。そう、イレーナは田舎の町で、好きな縫製の仕事をしていた。

中2  アパートを借りた。もちろん、カッレと住むため。そして、客を招く部屋として。そんな時は、カッレを追い出す。

  その日、御ひいきの大物政治家がアパートに来た。体調悪そうなその客は、サービスの最中に腹上、いや、背上死してしまう。慌てて部屋を飛び出したイリーナは、近くの公園で呆然としていた。
  そこへカッレが帰宅。イリーナによる犯行と判断した彼は、死体を運びだし公園に埋めてしまう。だが、すぐにことは発覚し、二人は警察に連行され、裁判になった。裁判のなりゆきは、世間に喜ばれない二人の素性からおよそ想像ができた。
  だが、幸運であった。彼らについた弁護人は、弱者を助けるまっとうな弁護人であった。結果、二人は無事釈放されることになる。(これが映画タイトルの 「Glück」 (=幸運)である。)
  ところで実は、弁護人は偶然にもイリーナが知る男であった。映画冒頭で、いかにも娼婦ですという格好のイリーナが、街角で車に接触し転倒するシーンがある。車から飛び出してきた男が、この弁護士で、「大丈夫、怪我はないわ。」と言って男を振り切ろうとするイリーナに、弁護士はなにかと気遣った。

中3  ラストシーンでは、イリーナは国の実家に帰っていた。ドイツからの強制退去である。だが、カッレの姿はない。裁判ののち、二人はどうなったのだろうか・・・。映画は最後まで、観客の心を離さない。

中4  イリーナとカッレ、ほぼ二人しか登場しない映画だが、適度な緊張の糸が一本、最後までピーンと張られている。これが、なかなか手練の技。絵も美しい。女性監督らしい繊細さも気持ち良い。イリーナ役の女優、アルバ・ロルヴァケルもいい。(ただ、背上死の男の死体を切断解体するシーンは目を背けます。) でも、力ある作品に出会えて嬉しい。

下オリジナル・タイトル:Glück (=幸運)
監督・脚本:ドリス・デリエ|ドイツ|2012年|107分|
原作:フェルディナント・フォン・シーラッハ|撮影:ハンノ・レンツ|
出演:(イリーナ)アルバ・ロルヴァケル|(カッレ) ヴィンツェンツ・キーファー|マティアス・ブラント|オリヴァー・ネーゲレ|




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