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映画「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」  監督:アレクサンダー・ペイン  2013年 アメリカ映画

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  若いころに町を出て、故郷とは無縁の生活を送って来た老夫婦。
  ある日その息子は父を伴い、はるか遠く、両親が生まれ育ったネブラスカ州の田舎町へと旅に出る。
  そして、息子は父親の過去を発見する。
  「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」 



  旅に出るきっかけは、認知症気味の父親が「100万ドルが当った」と言い出したこと。
中1  彼が受け取った手紙には、「モンタナ州のウディ・グラント様 我々は貴殿に100万ドルをお支払いいたします。」とあった。つまりその手紙とは、詐欺まがいの何かのダイレクト・メールなのだ。
  だが、ネブラスカ州リンカーン市にある そのオフィスへ行って金を受け取りに行くと、父親は旅仕度もせず徘徊するように歩き出す。これが毎度の事となり、母親も息子たちもお手上げ。
  ついに次男のデイビッドは父を車に乗せ、リンカーン市のそのオフィスへ向かうことにした。そうすれば、100万ドルがもらえる事など無い事に父は納得するであろうと・・・。

組1-0  リンカーン市への道程の途中に両親の故郷があって、この町に親子が立ち寄ったことで、話の様相は変わってくる。
  それまで家庭内問題であったことが、町の人々を巻き込んでいく。人々には内緒のはずの100万ドルの件が、一晩で町中に知れ渡ってしまった。父親が、バーで出会った幼なじみに話してしまったのだ。
  父親を祝福する人が多かったが、昔に貸した金を返してくれ、金に困っているといった話が親子に寄せられる。言い寄ってくるのは、町に住む親戚筋やバーで出会った幼なじみだ。
  デイビッドは彼らに、100万ドルなど当っていないと言い返すが、話は余計こじれて行く。事の次第を知って、母親がこの町に駆けつけた。 結局、人々はことの真相を理解し100万ドルのうわさは、父親に対する愚弄に一変した。 


組2-0  親子がこの町に滞在するなかで、デイビッドは町に住む親戚やかつての恋人から父親のことを知る。
  若いころから父親は無口であったこと。
  朝鮮戦争から帰って来て、その度合いはさらに増したこと。
  農家の子であったが農業を嫌って跡を継がなかったこと。
  美容院を営んでいた母親と結婚し、この町を出たこと。
  そして、あまりにも人が良くて、他人の要求をいつも呑んでいたいたこと。
  そのどれも、デイビッドは知らなかった。

  同時にデイビッドは、この田舎町を知る。
  小さな町では、誰もが他人の視線にさらされ、うわさにに縛られていること。
  町の生活は楽でなく、男たちは感情をストレートに吐きだし、時に粗暴になること。


中2  しつこく親子にたかる男たちに、母親が割って入り 啖呵を切って男たちを一蹴するシーンが印象に残る。
  日ごろ父親を尻に敷く母親の本性をデイビッドは見たことだろう。
  優しすぎる内向的な父親と、男勝りの外交的な母親。これが自分の両親の役割分担とでもいう関係であったことを、彼は再発見するのである。彼にとって、この旅は母を知ることになる旅でもあった。



組3-0  そもそも、親は自身の青春なんか、子に明かさない。かつ、子は親の言う事なんか聞いちゃいない。通常、子は親のことを近所のおじさんおばさんから知るのである。
  しかし、デイビッドの周りには、そんな親戚・知人がいなかった。
  彼の両親は町を出たっきり、老いても故郷を顧みなかった。映画は両親があの町を出た訳は語らないが、若い二人は故郷を嫌い、町の外に自由を求めたのだ。
  思うにデイビッドも兄も、たぶん大卒だろう。それは、両親の期待でもあったし、あの町の無教養で粗暴な男たちの様には、したくなかったのかもしれない。デイビッドも兄も知的に育ち、おまけにデイビッドは繊細な気質を父から受け継いでいるようだ。

下0  日ごろ、親が子に語ること、両親間のいつものやりとり。それらすべて、そうだと思い込んで育つ子供。そこに嘘は無いにしても、当たり前だが、それが親のすべてではない。
  映画冒頭、デイビッドの両親のセリフや様子を観て、そうなんだと思う観客は、話が進む中で日ごろ見せない父親の悲しみや母親の可愛らしさを知ることになる。さらには事件に直面して、この一家4人が互いを支え合う気持ちが失せていないことを知る。
  この映画、言ってしまえば有りふれた話だが、読み込むとなかなか奥行きある話である。アレクサンダー・ペイン監督は、小津が好きとのこと。

オリジナル・タイトル:Nebraska
監督:アレクサンダー・ペイン|アメリカ|2013年|115分|
脚本:ボブ・ネルソン|撮影:フェドン・パパマイケル|
出演:ブルース・ダーン(父親・ウディ・グラント)|ウィル・フォーテ(息子・デイビッド・グラント)|ジューン・スキッブ(母親・ケイト・グラント)|ステイシー・キーチ(エド・ピグラム)|ボブ・オデンカー(兄・クロス・グラント)|アンジェラ・マキューアン(ペグ・ナギー)|

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