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映画「揮発性の女」  監督:熊切和嘉

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中1  つくば信用金庫へ銀行強盗に入った桜田(澤田俊輔)は、客が騒いだためカウンターにあった5万円をつかみ原付で逃走。
  人目を避けるため街道筋からそれた田んぼの田舎道を走っていたが、ガス欠。空のペットボトルを抱えてガソリンスタンドに来た。

  ガソリンスタンドの事務所に入った桜田は、ペットボトルを女に差し出した。
  女の名は、悦子(石井苗子)。夫を亡くした悦子は、ひとりで、この小さなスタンドを切り盛りしている。彼女は、水槽に飼っているピンクの両生類ペット、ウーパールーパーが、唯一親しい話し相手という孤独な女だ。近所じゃ「網ばあ」と言われている。ペットの生餌の昆虫を採るため、捕虫網持って近隣を歩くのだ。

組1-0  悦子の予感、三つ。
  そのひとつ。桜田が悦子の前で屈んだ時、背負ったバッグの脇から包丁の刃が突き出ているのを見た時。その直後、桜田は悦子に包丁を突きつけた。
  ふたつ目。桜田はレジを開けようとして、レジのキーボードをめくらめっぽうに打った。悦子はこの時感じた。
  この男、幼い。世間知らずで、おバカさん。
  見兼ねて、悦子はレジをボタンひとつで開けてやった。桜田は、僅かな札と小銭までをポケットに押し込んだ。 
  そして、三つ目。事務所兼自宅の茶の間へ、包丁を持って上がり込んだ桜田は、ちゃぶ台にあった悦子の夕食を食べ始めた。そして、茶碗からご飯を少し、おかずを少し、空いた小皿に盛って、悦子に食べろと差し出した。悦子は思った。
  優しい男。あたしより20歳以上若いかしら。
組2-0  翌朝から、ふたりはまるで夫婦のように生活を始める。だが、現実味のない日々、そう、一時の夫婦ごっこ。

  一方、桜田の思い、ふたつ。
  この家に押し入ったその日、包丁を悦子に奪われ、腹を突かれた時、痛いより何かほっとした。
  今までの緊張が一気にほどけて、疲れがどっと出た。
  悦子にマキロンで傷口を消毒されて、桜田はぐっと来た。
  姉さんみたいに、やさしい女だ。
  結局何となく、悦子の家に長居することになるが、悦子の方が性に貪欲。これには参った。

組3-0

  ことの発端は、ガソリンスタンドの常連客のヤンキー娘・サトミだった。
  サトミは、見慣れない男、桜田に興味津々。
  「このガソリンスタンドのババアの息子?」 イヤ。
  「何してる人?」 ちょっと歌舞伎界にいて・・・。
  「えっ!芸能人なんだ。」 いやいや。
  桜田にとって不用意なこの会話は、 サトミの好奇心を煽ることになる。
  ある日、銀行強盗指名手配の似顔絵チラシが、村々に配られ始めた。チラシを見て悦子が桜田に言う。「男前ね。」
  サトミは、桜田に向かって言う。 「あたし、ピンと来たよ。あんただ、あんただ! でも誰にも言わない、黙ってたげる。」
組4-0

  さあ、ここからが大団円。
  ガソリンスタンド前で、桜田が警官に捕えられた。近所の人々が集まってくる。サトミは、仲間のヤンキー娘らとキャアキャアやってる。
  そこへ悦子が駆けつけて、取り巻き連中に石を投げつける。警官には石が命中。
  警官がひるんだ隙に、悦子は桜田を原付に乗せ、猛スピードでその場から走り去る。
  時は春。サクラ満開の並木道を、ふたりは疾走する。
      
  
  悦子役の石井苗子の存在感が、この作品を映画にしている。
  少ないセリフ、静かな映画だが、悦子と桜田の仕草が雄弁。これにご注目を。
  いい映画だ。喜劇映画です。
  
下3


監督:熊切和嘉|2004年|80分|
脚本:熊切和嘉、宇治田隆史|撮影:橋本清明|
出演:益田悦子(石井苗子)|桜田理一(澤田俊輔)|サトミ(星子麻衣)|宇田川(大森博史)|  
      

うぱ ウーパールーパー
  全長10-25センチメートルの、つぶらな瞳の両生類。
  正式名は、メキシコサンショウウオ。




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