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映画「怪異談 生きてゐる小平次」  監督:中川信夫  主演:宮下順子

上

       上7-0

  時は江戸時代、ここは江戸。ひとりの女と、ふたりの男のお話。

  三人は、寺子屋で机を並べた幼なじみ。おちかと太九郎は夫婦になった。
組0-0  太九郎と小平次は同じ芝居の一座にいて、それぞれ夢がある。
  下座で太鼓をたたく太九郎は、近松門左衛門みたいな人気の戯作者を目指し、日々戯作を書き売り込んではいるが、今もって認められない。小平次の方は、市川團十郎みたいな人気役者になりたい。
  だが、二人のいる一座は、江戸市中にあまたある三流劇団。神社や寺院の境内で小屋掛け芝居。これだけじゃ食えない。一座は、ときおり地方巡業の旅に出る。

組1-0  三人は、今も気が置けない親しい間柄。
  そして、小平次は、おちかが好き。
  「夫婦になりたい。」 おちかにはそう言うが、太九郎に「おちかをくれ」とは言えぬ。
  だが、小平次の気持ちは昂るばかり。「太九郎を殺してでも、お前と一緒になりたい。」 そんなことも言う。
  おちかは、そんな小平次を いつも笑顔でさらりとかわす。
  太九郎は神経質な男。戯作がうまくいかないと、おちかに当って暴力をふるう。でも、身も心もお前に預けた身、と言って、おちかは逆らわない。太九郎の気が静まると、子供のように慰めてやる。そんな太九郎が愛おしい、おちか。

  その おちかが妊娠した。まだ太九郎にさえ言っていない。
  そのころ、三人は気晴らしの旅行をした。旅先で、おちかは、ふと小平次に妊娠のこと、子を堕したいことを独り言のように言う。
組2-0  そして、冷たい滝に打たれて堕胎。山の中の川っぷちで、三人は水子供養をした。太九郎の心に疑惑が残る。

  小平次は、おちかへの気持ちが抑えられなくなってくる。
  そんな折、一座は地方巡業の旅に出る。旅先での暇な昼時、小平次は太九郎を誘って舟で釣りに出た。ふたり並んで釣り糸を垂れる。その時、小平次はおちかを好きなことをつぶやくように告白する。そして言う、「感づいていただろ。でも、俺は今まで手さえ握ったことはない。おちかをくれ。」
  次の瞬間、小舟の上でふたりは揉みあい、小平次が沼に落ちる。落ちた小平次を、太九郎は竹竿で打ちのめした。小平次は沼に沈んだ。沼はまた静寂を取り戻す。
   太九郎は一座を抜け、ひとり江戸に逃げ帰る。 おちかは、魂が抜けたような太九郎を迎えた。「小平次を殺した・・・。」 


組2-00  その夜、蚊帳をくぐり寝床に入ろうとしたその時、ふたりが見たものは、なんと小平次! であった。
  驚く気持ちを押さえつけて、太九郎は小平次に謝り、生きていてくれたこと祝い、酒を出す。小平次は終始幽霊のように無口であった。
  ここでまた、小平次は「おちかをくれ」と小声で言う。そして、ついに太九郎は小平次を殺してしまう。

組2-000  俺と一緒に逃げてくれ、そう言われてふたりは、江戸を去る。去ってはみたものの、太九郎は小平次の気配から逃げきれない。小平次の霊がまとわりつく。おちかは江戸っ子、気が強い。太九郎を励ますが、太九郎は滅入るばかり。

  夫婦は、谷あいの河原に出た。小石を積んだ塔があちこちにあって、ここは賽の河原のよう。
  心中しよう。太九郎がおちかを殺しにかかる、その時。止めにかかった男が・・・。
  この男こそ、変わり果てた姿の、死にぞこないの小平次であった。追い詰められた太九郎は、またしても小平次に飛びかかったが、結局ふたりの男は共に死んでしまう。
  おちかは、いつまでも そこに立ち、川の流れを見つめていた。

中
  




  




下  中川監督、最晩年の作。
  歌舞伎の演目を、紅テント黒テント風の舞台劇要素を絡めて映画化。出演はたった三人だけだが、描く世界は深淵だ。
  この映画を観てしまうと、鈴木清順の「陽炎座」なんか、観てられない。「陽炎座」の製作年、1981年。「怪異談 生きてゐる小平次」の製作は、翌1982年。

監督・脚本:中川信夫(1905年-1984年)|1982年|78分|
原作(戯曲-歌舞伎の演目):鈴木泉三郎(1893年-1924年)|撮影:桶口伊喜夫|囃子:福原清彦、仙波清彦|唄・三味線:岡本宮ふじ|
出演:おちか:宮下順子|小幡小平次:藤間文彦|那古太九郎:石橋正次|

組5-0

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やまなか

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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