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映画 「箱入り息子の恋」  監督:市井昌秀

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組1-2-

  箱入り息子と箱入り娘の、コメディタッチな恋のお話。
  ほんわか映画にみえますが、結構問題提議な話です。

中1  結婚を本人同士に任せていても、なかなか進まないのが現状です。
  たとえ周囲から過保護だと言われても、お子様の幸せを真剣に考えるのであれば、やはり親御様ご自身が積極的にお子様の結婚活動をサポートすることが何よりも大切です。
中8  お子様の幸せ、家族みんなの幸せ、そして親御様ご自身の幸せのためにも、まずは親御様がアクションを起こして、お子様の結婚活動を全面的にサポートしていきましょう。それがお子様の幸せな結婚への近道です。 
  そんなわけで「お子様」のため、今井家(大杉漣、黒木瞳)、天雫家(平泉成、森山良子) やら親御様たちは、ホテルで行われるその会に参加していた。互いにお子様の身上書を見せ合う、代理お見合い。
  ひとり息子を持つ天雫家のテーブルを訪れた今井家は、身上書に貼ったその写真を見て、35歳の男にしちゃ頼りない面構え、とみてとって、席を立ってしまった。

中2  箱入り息子、自己完結する男 
  天雫健太郎35歳一人っ子は、徒歩圏にある市役所勤務。勤続13年で無遅刻無欠勤だが、いまだに役職なしの一般職員。住民基本台帳の記録整備の記録課一筋。身の回りの整理整頓・縦横並行・均等配置、鉛筆削りや手洗いも、潔癖症なまでにやる。毎日、昼は自宅に帰り、親が用意した昼食を食べ、5時には定時退社。極度のあがり症で人の目を見られない。だから、人付き合い、職場の付き合いは面倒くさくてまったくしない。友は無し。女性と付き合ったこともない。童貞。帰宅後や休日は、外出せずに部屋にこもり、ゲーム。話せる友は、ペットの蛙。
  引きこもりではないが、容姿や性格に自信が無いこと、意欲や社会的適応力の無さを自覚していて、また、しても無駄だと、はなから努力せずあきらめ淡々と、昇進も関心なし。なるほど現代の隠遁生活。気楽なものだ。一生独身を貫く人生設計。給与は貯金につぎ込み、自分の老後を保証する。(役職なくても年功序列、倒産しない役所勤めはいいもんだ。)
  一方、親は子離れできず、箱入り息子に育ててしまったと思い込んでいるが、天雫健太郎35歳は箱は箱でも自作の箱に自ら入って、箱入り息子。つまり、自己完結する男。 だから、お見合いしたらという親の勧めなどに耳を貸さない。

中3  箱入り娘、盲目の女
  今井奈穂子(夏帆)は幼いころに目を患い、今は全く視力を失っている。一人っ子。
  白杖(はくじょう)で外出することも少なく、どこに行くにも親が車で送り迎えしている。父は社長でバリバリ働き、家は裕福。母は良妻賢母で奈穂子に付きっきり。父は娘のために、大手企業に勤める優秀なビジネスマンと結婚させたい。

中6  さて、こんな両家が、見合いすることになる。
  だが見合いの席で、健太郎を気に入らない奈穂子の父は、健太郎をなじって、場をぶち壊してしまう。だが、健太郎はいつになく冷静で珍しく雄弁であった。 健太郎と奈穂子の父は、席上、社会的に弱い男と強い男の優劣を言い合っている。奈穂子の父は、お役所勤めのノホホン職場環境と熾烈なビジネス現場にいる人間に能力差があることを言い、社会的能力ある男に娘の面倒をみて欲しいことを言い、そういう背景には彼なりの男尊文化圏があるようだ。ま、よくある話。 

組1-00  どうして、無謀と思える見合いをすることになったのかは、実は奈穂子の母の計らいがあった。
  ある日こんなことがあった。雨の中、母を待つ奈穂子の前を偶然通りかかった健太郎が、ひとり立っている奈穂子に一目惚れし傘をそっと差し出した。彼は「視線を感じなかった」から、あがらず素直にすっと傘を差しだせたのだ。一方、目の見えぬ奈穂子は、その時何かを感じた。ファンタジーな二人の出会い。母が戻って来たときには、男物の傘をさす奈穂子がぽつんといた。
  後日、借りた傘の柄に「天雫」という珍しい名のネームを見た母親は、代理見合いの会で会ったあの天雫家の子息だと直感した。そして、夫を説得して見合いにこぎつけたのであった。
  あの雨の日、傘をどうぞと言った男の声を覚えていた彼女は、見合いの席で健太郎の声を聞いて確信していた。

組2-0  御破算になった見合いであったが、奈穂子の母は娘の心を察して、ふたりのデートを夫に内緒で密かに準備した。 これが本当のお見合いよ。
  それは、あまりにもたどたどしいデートであったが、奈穂子初めての吉野家でのお食事は楽しかった。デートを重ねるたびにお互いの気持ちは深くなって行った。そしてある日、奈穂子がホテルに誘った。健太郎の表情が読めない彼女は、触感で健太郎を確かめたかった。


組3-0  だが、幸せな日々は続かなかった。奈穂子の父親の目を盗んでのデートは、いつか発覚する運命であった。
  さらに幾つものことがドラマチックにコメディタッチに続いた。車に轢かれそうになった奈穂子を捨て身で助けた健太郎は集中治療室に入ったり、退院したが彼女のことばかり思う彼は、職場で奇声を発して午後半休を申請し奈穂子の家に向かい、夜間二階にある彼女の部屋に忍び込みベッドインするが、階下の親に見つかって、健太郎は二階からスッポンポンで落下とか速い展開で話は進む・・・。もちろん、奈穂子も悲しい。思い出の吉野家にひとりで行ってみるが、涙があふれて食べてはいられない・・・。 
中7
  でも大丈夫そうだ。
  ラストでは病室のベッドで健太郎は点字で手紙を書いている。
  そして、届いた手紙を奈穂子は部屋で嬉しそうに読んでいる。

  この映画、箱入り息子と言いながら、実は子離れできない親御様の生態を喜劇化している。  
  健太郎も奈穂子も、子離れできない親のもとに育ったため、ぜい弱なお子様になっているが、芯はしっかりしたお子様であった。


監督:市井昌秀|2013年|117分|
原案:マックス・マニックス|脚本:市井昌秀、田村孝裕|撮影:相馬大輔|音楽:高田漣|
出演:星野源(天雫健太郎)|夏帆(今井奈穂子)|平泉成(天雫寿男)|森山良子(天雫フミ)|大杉漣(今井晃)|黒木瞳(今井玲子)|
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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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