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映画 「記憶が私を見る」  監督:ソン・ファン  製作:ジャ・ジャンクー  2012年 中国 Ji Yi Wang Zhe Wo

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  いい映画。
  観る者の感性を試される映画かもしれない。

組1-0  主人公や登場する親や兄ら身内に、なんの事件も起きない。なんでもないごく日常的な生活の日々が流れるだけ。
  しかし、その何んでもない日常の奥にひっそりたたずむ、精神の有り様、感情の細やかさみたいなものを、僅かなセリフで静かに描いて、映画になっているから凄い。
  映画に現れるのは、敢えて言えば、親子の絆、人生、老い支度、そして主人公ファンが人生をやり直したいと思う悲しい気持ち。 だが、映画が描いていることは、これだけじゃない。まだまだある。あるのに、それらをうまく言葉に表現できない。観て感じてください。
  たくさんのお金をかけて製作した映画でも表現できなかった事を、この作品は僅かな予算で、事もなげにやり遂げている。

  一時の休みをとって、ファンが北京からここ南京の実家に帰って来た。久しぶりだ。
  実家の臭いの中にいたい。ここの毎日は、ゆっくりと過ぎていく。
  この数日間の様子は、例えばこんなふうだ。
  医師だった父親はすでに退職していて、老後を静かに過ごしている。いま、ソファで昼寝している。
  ファンは母親と夕食の準備、ふたりで菜っ葉の葉をちぎっている。
  兄嫁が来て、もうそろそろじゃないと言って見合いをすすめる。
  兄の娘が遊びに来た。
  父親の耳あかをとってあげる。痛くない?
  平日なのに昼間、ひょっこり兄が来てひとしきり話をしていて、気付いたらソファに座ったまま寝入っている。仕事の疲れが溜まってるんだろう。母もファンもそっとしている。
  ファンと母親が窓辺に立って外を眺めながら話している。突然、ファンが17歳の時に戻って人生をやり直したいと言い出す。母の胸に顔を埋める。
  両親の知り合いの娘さんが40歳で肺がん。余命わずからしい。子がいるらしい。
  こんなような事柄がスクリーンに現れる。

  記憶の底に残るものとは。 
  ファンの両親が住んでいるこの家は、アパートの5階くらい。
  開け放った窓から聞こえて来るのは、近所の子供らが公園で遊ぶ声、車の音、どこかの誰かが物を叩いている音やら周りの生活の音。少し反響音を伴いながら、窓の下から風に乗って聞こえて来る。
  小さい頃の昼寝のことを思い出す。寝入る時や目覚めの時、ぼんやりしていると、こうした何んでもない近所の音が、心の中に染み込んでくる。そんな音が、記憶の底に残る。
  母親がファンに、仕舞って置いた服を見せている。「これは、私の母親が着て、私も着た服。覚えてる? これはあんたが小さい時に着てたわね。」 古い服の匂い。記憶が一緒にしまい込まれている。スクリーンから服の匂いが感じられる。
  その他、言い出せばきりないが、例えば父親の耳たぶの感触や両親の体臭。それらが、記憶の底に残るもの。この映画は、言葉にあらわしにくいそんなことを、たくさん私たちに感じさせてくれる。何でもない日常の奥。
  映画を観て感じたそんな感想を、ソン・ファン監督に直接話したら、顔を赤くしてすごく感激された。それを見て、当方が感激した。感想は作った本人に話すのが一番いいな。


下英語タイトル:Memories Look at Me (Ji Yi Wang Zhe Wo )
監督:ソン・ファン|中国|2012年|87分|
出演:ファン(ソン・ファン)|その他出演者(ソン・ファン監督の実の両親やご親戚)がそのまま役を演ずる)|








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Comments: 1

やまなか URL 2014-11-10 Mon 12:42:40

この映画「記憶が私を見る」は、しんゆり映画祭2014で観ることができました。東京フィルメックス プログラム・ディレクターの市山氏がソン・ファンさんをトークショーに連れてこられました。

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