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映画 「グロリア」  ニューヨーク、1980年  監督:ジョン・カサヴェテス

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  この映画、シリアスなお話だと思って観てしまうと、つまらないです。

  ここはニューヨークのサウス・ブロンクスにある、くたびれたアパート。
  マフィアの手下たちが来た! グロリアは子供を連れて廊下の柱の、ちょっとした影に身を隠す。手下どもは、そのすぐそばを気付かず通り過ぎる。あれれっと思うこんなシーンが始めにある。 ここで我々は、「この映画はシリアスなお話じゃない」 ことに、気づかなきゃいけない。
  それって、どういうこと?
  本作をシリアスな映画として観るなら、突っ込みを入れたくなる箇所があちこちにある。
  一番の突っ込み所は、「そもそもニューヨーク・マフィアを相手にして、グロリアがひとりで勝てるわけないでしょ」 である。 だから監督は、誤解ないようにと念のため、冒頭で「あれれ」のシグナルを発信しているのだ。

組2-0-1  例えば時代劇の演出の型を思い出してほしい。
  姫を追って来た浪人どもが、主人公と姫を取り囲む。浪人は刀を抜いて一斉に主人公にかかって来る。はじめ、主人公は姫をかばって傍に連れているが、そのうち戦いに集中して姫が離れていく・・・。いくら強いヒーロー剣士でも、こんなに相手が多けりゃ勝てっこないとか、なぜ姫は殺されないの、とか突っ込みを入れたくなるが、これは野暮な人が言う事。
  つまり、これ、娯楽映画を観るお作法、お約束ごとに関わる事ですね。 監督はあの身を隠すシーンで、これを言っている。 そう気付けば、ヒーロー剣士をグロリアに、姫を子供に置き換えて本作を観れば、ラストまで楽しめます。

  では、どんな お話かな。
  経理に疎いのは我々だけじゃない。マフィアの金庫番が長年、金を横領し続け、かつCIAやFBIに情報を流していた。これが発覚し、この男はアパートの自宅で家族と共に爆死。その寸前に、男は同じ階に住むグロリア(ジーナ・ローランズ)に、息子のジャックを委ねた。ジャックは、父親から一冊のノートを渡されていた。金庫番として知ったマフィアの秘密が書かれたノートだった。

組1-0  ジャックを委ねられたひとり身のグロリアは迷惑であった。だが、グロリアは、ジャックの母親ととても親しかったのだ。さらには、都合の悪いことに彼女にとってマフィアはいわば古巣であった。
  まず彼女の成すべきことは、この子のために家族の死体現場を見せないこと。そして、秘密のノートを持ったこの子の命は必ず狙われるだろう。とりあえず、この場を抜け出し身を隠すのが先決だ。グロリアは服や身の回りの物をトランクに押し込み、親を探しに行こうとするジャックの手を引き廊下に出た。
  そこへマフィアの連中がノートを探しにやって来た。ふたりは廊下の柱の影に身を隠し、彼らをやり過ごし、爆発事件の野次馬や警官たちをかき分け、アパートがあるブロックを離れ、路上を急いだ。
  マフィア一味の車がふたりに近づいて来る。彼女を知っている男が言う。 「おいグロリア、その子をこっちに渡せ」 いや渡せぬのやり合いの末に、こともあろうにグロリアは彼らに拳銃をぶっ放す。思わぬことに慌てたのか、逃げるマフィアの車が横転。
  さあ、ここからグロリアとジャックは、タクシー、バス、地下鉄を乗り換え乗り換え、狭いニューヨークの街を逃げ回る。追いかけるマフィア。はらはらドキドキの展開が楽しめる。さて、ふたりは逃げ切れるのか。でもラストは、ジーンと来るハッピーエンド。

  彼女が住むアパートには、プエルトリコの貧しい人々が住んでいる。かつて、マフィアの出世頭の情婦であったグロリアにしては落ちぶれた住まい。でもグロリアのファッションは高そう。今はマフィア幹部になったその元彼からの貢ぎが、今も細々とあるようだ。この男とグロリアが愛し合ったその昔は、1950年代だろうか。マフィアがニューヨークの街を謳歌した良き時代だったろう。彼女の姉御肌は、そんな良き時代に磨かれたようだ。
  こんな風に、若きころのグロリアに思いを馳せれば、この映画に奥行きが出てくるかもしれない。
  グロリア役のジーナ・ローランズが、123分間、ひとりで盛り上げる。これはすごい。
  1980年のニューヨークもいい。   

下オリジナル・タイトル:Gloria
監督・脚本:ジョン・カサヴェテス|アメリカ|1980年|123分|
撮影:フレッド・シュラー
出演:ジーナ・ローランズ(グロリア)|ジョン・アダムス(フィル)|バック・ヘンリー(ジャック)|ジュリー・カーメン(ジェリー)|


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