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映画 「さよなら歌舞伎町」  監督:廣木隆一  主演:染谷将太  ~東京フィルメックス 2014 から

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  いい映画だ。
  新宿歌舞伎町のラブホテル・ATLAS を舞台に、ホテルに来るさまざまな人々が、それぞれに抱く夢と、背負う問題を活写するグランド・ホテル形式の映画。
  荒井晴彦の脚本が素晴らしい。これを一字一句たがわずに映画に仕上げた廣木隆一監督がいいし、それを支えた俳優陣。とりわけ染谷将太と女優イ・ウヌがいい。
  映画は、七つのラブストーリーを描いている。そして、話の軸となる三組の男女に、二組のペアと五人の人々、合わせて15人が登場する。

中1  ◆そのうちの一組の男女の話。 (ラブホテル・ATLASの店長・徹とその彼女・沙耶)
  主人公の徹(染谷将太)は、このラブホテルの店長。
  宮城県から出て来てホテルマンを目指したが夢破れ今に至る。しかし、沙耶や親・妹には外資系高級ホテルに勤務していることになっている。沙耶(前田敦子)は、徹と一緒に住んでる。アマチュアバンドのボーカルをしていて、プロのミュージシャンになりたい。最近、ある音楽事務所からソロとしてデビューしないかという誘いがかかってきた。
  ただ、この話には乗り越えなければならないことがあった。音楽プロデューサー(大森南朋)が沙耶のからだを要求しているのだ。もちろん徹に相談できる話じゃない。彼女は決心し、プロデューサーの男とラブホに向かった。ふたりが向かった先は、偶然にもATLASだった。さて、徹と沙耶は難しい局面を迎える。

中2  ◆二組目の男女の話。 (デリバリーヘルス嬢とその彼氏、二人とも韓国人)
  デリヘルの彼女(イ・ウヌ)は、歌舞伎町のあちこちのラブホに出向くが、ATLASにもよく来る。徹とは顔なじみだ。
  日本で稼いだ金が貯まったので、近々帰国し母親と店をはじめるのが夢。歌舞伎町でのことはすべて忘れるつもり。
  彼女がデリヘル嬢だということを彼氏(ロイ)は知らない。バーのホステスをしていることになっている。
  彼氏は新大久保にある韓国料理店で働いている。この店に客としてきた彼女と知り合い、一緒に住んでいる。彼の夢は、なんと蕎麦屋をやりたいらしい。実は、彼も内緒にしていることがあった。年上のホステスに可愛がられていて小遣いももらっている。
  さて、ある夜、彼女はこれでデリヘル稼業、ほんとに最後の最後の客が待つATLASへと向かった。その客は部屋を暗くしていた。目隠しをしろと言われる・・・。
  韓国に帰る日がせまる彼女と、東京に留まって蕎麦の修行をしたい彼。このペアの行く末はいかに。

中3  ◆三組目の男女の話。 (ATLASの客室清掃係の女と、指名手配中の強盗犯の彼氏)
  指名手配の捜査網をかいくぐり、物音ひとつ立てず忍びに忍び、彼女(南果歩)の部屋に隠れ住んでいる彼(松重豊)。
  その時効は、あと2日あまりで切れる。
  彼女はATLASに勤めて長い、ベテラン従業員だ。その昔、彼女の店に勤めていた彼氏は、店の金を盗んで逃亡した。実は、ふたりは事件の前から愛し合っていた。
  この長かった潜伏期間がもう終わる。そしたら、ふたりは晴れて自由の身だ。なに不自由なく思う存分に、愛し合う日々が送れる。ああ、あと数時間で時効だ・・・。
  ところがその夜、ATLASに不倫中のラブラブカップルがやって来た。ふたりの職業は刑事。

中4  ◆四組目の男女の話。 (ラブラブな不倫中の刑事のカップル)
  男(宮崎吐夢)は、バスルームのお湯が出ないと言ってフロントに電話した。刑事だとはつゆ知らずに部屋に出向いたのが、清掃係の女(南果歩)だった。
  女性刑事(河井青葉)は仕事熱心。あっ、どこかで見た顔だと、不倫中にもかかわらず仕事モードに。バッグから書類を取り出して分かった。逃走中の男の女だ! 男の時効まであと数時間。次の瞬間、女性刑事は部屋にいる清掃係の女に、オモチャの手錠をかけた。わめく女。
  男性刑事は言う。我々は不倫中だ。ここでこの女を逮捕したら、ふたりの関係がばれてしまう! 見逃してやれ。
  不倫発覚よりも、逮捕が世のためと言い張る女性刑事を置いて、男は部屋を出ようとする。そして・・・。

中5  ◆五組目の男女の話。 (家出娘と風俗嬢スカウトマン)
  新宿の街で、漫画喫茶や時に野宿をしながら日々を送る家出娘。こうした女をスカウトして風俗嬢にするスカウトマンのチンピラ。
  男は、この女がスカウトに値するか否かのチェックのため、女を連れてATLASに入った。体臭がひどい、まず風呂に入れ!
  ところが、チンピラはこの娘に一目惚れ状態になる。仕事を忘れ、この臭い可愛い女が好きになる。風俗嬢にさせたくない。
  女をベッドに寝かせたまま、事務所にひとり戻ったチンピラは、組の男たちから手ひどいリンチを受ける。
  夜が明け、女が目覚める。男はいない。金は無い。
  追加料金が払えない女をホテルの事務所に呼んで糾弾するが、無いものは無い。「彼は必ず戻ってくる。」
  そして・・・。

0組1-  ◆あとの5人の人々。(もちろん、これ以外にも多くの人が登場する。)
  徹の妹その日はアダルトビデオの撮影が入っている日だった。撮影クルーが頼んだ宅配ピザを部屋に届けに行った徹は、その部屋に自分の妹(樋井明日香)がいるのに気付いた。「兄ちゃん、なんでここにいるの?」 そういう問題じゃないだろ。
  沙耶を誘うプロデューサーホテルのその部屋の前で徹と揉めた沙耶は、プロデューサー(大森南朋)から無理するなと言われるが・・・。徹と沙耶のラストシーンは、新宿・花園神社境内であった。俺は田舎に帰る。「あたし、待ってていいの?」
  恋する男デリヘル最後の日、デリヘル嬢(イ・ウヌ)に恋する男(村上淳)は、彼女に愛の告白をする。
  若い男に貢ぐ女デリヘル嬢の彼氏(ロイ)に密かに貢ぐ和服姿のホステスは、そのシーンでほぼ後姿。俳優じゃないかも。だからか、とてもリアル。
  店長の男デリヘル嬢(イ・ウヌ)が所属する店の店長(田口トモロヲ)は、彼女たちに優しい。彼には過去があるようだ。
  
  映画のラストシーン。徹が新宿から長距離バスに乗り、仙台へと向かうシーンは、実に爽やかである。
  群像劇は多くの人が登場するので、誰が誰だかが一般的には分かりにくい。
  しかし、この映画はそんな心配は要らない。135分は、あっという間に過ぎる。十分楽しめる。今年、一押しの邦画。 
  東京フィルメックスの会場は満席で、上映後の拍手は盛大であった。
  一点残念なのは、撮影が平凡だ、もう一工夫欲しいところ。
  
   群像劇。 さまざまな人物が、ひとつの舞台に集い合い、それぞれの人生模様が同時進行で繰り広げられて行くストーリー展開。



下監督:廣木隆一|2014年|135分|
脚本:荒井晴彦、中野太|撮影:鍋島淳裕|
出演:ペア1 染谷将太(徹 ラブホの店長)|前田敦子(沙耶 徹の彼女でアマチュアバンドのボーカル)|
ペア2 イ・ウヌ(デリバリーヘルス嬢)|ロイ(その彼氏 韓国料理店調理長)|
ペア3 南果歩(ラブホの清掃係)|松重豊(その彼氏 指名手配中の強盗犯)|
ペア4 河井青葉(女性刑事)|宮崎吐夢(その不倫相手の男 刑事)|
ペア5 我妻三輪子(家出娘)|忍成修吾(彼女が好きになったチンピラ 風俗嬢スカウトマン)
樋井明日香(徹の妹)|大森南朋(音楽プロデューサー)|田口トモロヲ(デリヘルの店長)|村上淳(デリヘル嬢に恋する男)|

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