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映画 「幸せのありか」  監督:マチェイ・ピェプシツァ  2013年ポーランド映画

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  ポーランドに住む脳性麻痺の男の子が、青年に成長するまでの苦難のお話を、あたたかな眼差しで、時にコミカルに明るく描いた映画。



組1-0  少年マテウシュは、脳性麻痺の障害をもって生まれてきた。
  運動障害、肢体不自由。車椅子の生活だ。自力でできることは、ものをなんとか持てること、仰向けになって床を這うようにして移動できることくらいだ。あとはウーウーと、うなることしかできない。だから、食事や身のまわりのことに全面的な援助が必要だった。
  もちろん両親はマテウシュをかわいがったが、意志疎通は無理だった。急に何やらウー!ウー!うなっては暴れ出したりと理解不能なこともしばしばで、「我が子は知的障害も併せ持っている」と、両親も、医師すらも思い込んでいた。
  だが、実はマテウシュに知的障害は無く、発語、発声の運動障害のせいで会話ができないだけであった。(このことは、ずっと後になって発覚する。)
  マテウシュにとって最大の不幸は、自分に一番身近にいる両親にすら、自分の意志を伝えられず理解してもらえないことだった。そして時が経ち、彼も青年といっていい年ごろになった。

組2-0  彼の意志を理解してくれる天使のような人が現れる。
  向かいに住む若い女性だった。家の前のベンチで、ある日、無言で互いの思いが通じ合った。ふたりで動物園にも行った。互いに、淡い恋だったのかも知れない。だが、まもなく彼女は親に連れられ引っ越していった。

  マテウシュを取り囲む環境も変わっていった。
  この間、父親が亡くなり、母親が年老い、マテウシュの姉が結婚する。新婚の姉夫婦は、母親との同居はいいとしても、青年マテウシュとの生活を嫌った。結果、彼は精神病患者のための施設に入れられた。母親として苦渋の決断であった。だから、面会に来た時、母親は息子と目を合わせられない。 
  マテウシュにとって、母親に見捨てられたことも悲しかったが、それ以上に、ここは牢獄であった。自分は精神病ではない。この叫びを誰にも伝えられない。

組3-0
  そんな中、マテウシュを救う女性がふたり現れるのであった。
  そのひとりマグダが、ある日マテウシュの前に現れた。この施設にボランティアに来た女性だ。 会ったその日から、ふたりの意志は通じ合う。彼にとって、大人の恋になるはず・・・であった。
  もうひとりは、言語聴覚士の女性。彼女はマテウシュのために来たわけではなかった。マテウシュのそばにいた患者に対して、ブリスシンボルという絵文字(記号)を使ってコミュニケーションの訓練をしていた。
  これだ!マテウシュは驚愕した。自分にも、それを教えてくれと、ウーウーうなった。暴れた。まわりにいた医師看護師が、彼を押さえつける。
  この騒ぎを見て言語聴覚士は、マテウシュの意志に気付いた。そして早速、訓練が始まった。施設内の先生たちが集まってくる。母親も姉も来た。新聞にも取り上げられる。マテウシュは知的障害ではなかった。20数年たって、彼は初めて会話ができたのである。

  エンドロールが流れるなか、これまで なぜ親が気付かなかったのだろうかという思いがこみあげた。しかし、このストーリーは実話らしい。映画ラストに実在のマテウシュ本人の映像が添えられていた。
  
下  ブリスシンボル
  脳性麻痺などによって言葉が話せず、音声言語では意思疎通ができない人々にとっての補助・代替コミュニケーション の手段。漢字からヒントを得て作り出された視覚言語。数百の基本的な記号が様々な概念をあらわし、これらの記号を組み合わせて文章を作ることができ、会話が成立する。
  マテウシュの場合、言語聴覚士が、記号が並べられたノートを彼に見せながら、ひとつひとつ記号を指し示し、マテウシュがまばたきすれば、当該記号と分かる。これを繰り返して、マテウシュは会話したい文章を作る。
  例えば、これは「私は映画館に行きたい」と読むらしい。
  記号60

オリジナル・タイトル:CHCE SIĘ ŻYĆ
英語タイトル:LIFE FEELS GOOD
監督・脚本:マチェイ・ピェプシツァ|ポーランド|2013年|107分|
撮影:パベウ・ディルス
出演:マテウシュ(ダヴィド・オグロドニク)|少年時代のマテウシュ(カミル・トカチ)|マテウッシュの父(アルカディウシュ・ヤクビク)|マテウシュの母(ドロタ・コラク)|マグダ(カタジナ・ザヴァツカ)|ヨーラ(アンナ・ネフレベッカ)|



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