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映画 「偽れる盛装」  監督:吉村公三郎  主演:京マチ子

君蝶(京マチ子)と、金持ちの伊勢浜(進藤英太郎)
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  京都の花街に住む、母と娘ふたりの物語。

中3  主人公の芸妓・君蝶(京マチ子)の母・きく※1も、その昔、祇園甲部の芸妓だった。
  のちに旦那を亡くし、今は祇園甲部に隣接するもうひとつの花街、宮川町※2で靜乃家という名の置屋を細々と営んでいる。
  靜乃家には、きくの長女・君蝶と13歳の時から住込みの舞妓・福彌がいる。

  きくが芸妓だった頃、きくと競り合った千代という芸妓がいた。
  その千代は、現在、祇園甲部で名のある置屋・菊亭の女主人だ。 
  千代の今の旦那は、祇園にある小料理屋のあるじで、羽振りの良い伊勢浜(進藤英太郎)だ。

組3-0  さて、ふたつのお話が展開します。
  ひとつは、千代のひとり息子の孝次(小林桂樹)が、君蝶の妹・妙子(藤田泰子)と恋仲になったことから話が始まります。 もうひとつの話は、亡くなった旦那の息子のために、きくが靜乃家を抵当に金を借りたことから始まります。

中1  孝次と妙子は、寺町通御池にある京都市役所の観光課で同じ職場だ。ふたりとも自転車で通勤している。※3
  母親に言わせれば、孝次の市役所勤めは道楽のようなものらしい。たしかに、写真が趣味の彼は、観光課にある暗室で写真を現像している。苦労知らずのぼんぼん。
  結婚を決めたふたりは行動を起こす。まずは妙子が母親・きくに打診した。母は喜んでくれた。さて次に、孝次が母親・千代に打ち明けたが、即座にその場で反対された。この祇園甲部とあの宮川町、街の格も違えば、家の格も違います。
  居ても立ってもいられぬ千代は、靜乃家に上がり込んだ。やんわり迎えるきくに、ふたりの話はご破算、と千代はきつく言い放つ。これを聞いて一番怒ったのは、隣室で聞き耳を立てていた姉の君蝶だった。ここで、勝気な女ふたり、千代と君蝶が売り言葉に買い言葉、言い争う。

団栗橋。橋の西詰から北を見る。
中2  さて、そののち、孝次と妙子は、夜の鴨川の河原にいる。※4
  「どうしよう」と言う孝次に、「結婚のこと、はっきりしてよ」と言う妙子は続けて「いっそ、ふたりして京都を出ましょう」と言うが・・・。一緒になりたいが家を出られないジュンサイ※5な男・孝次。妙子は彼に対して疑いを抱き始めた。

  片や、もうひとつの話。
  母が靜乃家を抵当に入れたと聞いて、君蝶は母に怒って言う。亡くなった旦那の家族とは縁が切れたハズ。その息子が金を無心しに来たからといって、なんで家を抵当に入れてまでお金を作るのか。うちら、きっと家、追い出されて、団栗橋※6の橋の下に住むことになる。お金が要る。

組1-2  君蝶は馴染みの客から金を引き出そうと、薬品問屋の番頭・山下(菅井一郎)に掛け合ってみたが、出せる額が小さい。君蝶は山下を見限る。
組2-0  そんな折、グランド・キャバレーで、あの千代が旦那・伊勢浜(進藤英太郎)と同伴のところを見かけた君蝶は、千代が席を外した隙に伊勢浜をダンスに誘った。
  鼻の下を長くして伊勢浜は、大喜び。これを見た千代は嫉妬に燃える。
  この時、君蝶はひらめいた。
  妹の結婚の件の仕返しと、金の工面、この両方を叶えるのは、この伊勢浜だと。

  伊勢浜と琵琶湖で遊んだ君蝶は、湖畔の旅館で彼に身体を委ねた。
  伊勢浜は千代から鞍替えして、君蝶の旦那となった。工面すべき金もポンと出してくれた。京おどり※7の舞台衣装も整えてくれた。

  そんなある日、傷心しきった山下が君蝶を呼び出し言った。
  金を貸してくれ。会社の金を使い込んでクビになった。家族も離散。
  なにもかも、お前につぎ込んだせいや。なんとかならんか。
  君蝶は捨て台詞を吐いて出て行った。
  京おどりの日が迫っていた君蝶は多忙であった。

組4-0  そして、京おどりの当日、豪華な着物姿の君蝶がいる楽屋に、包丁を隠し持った山下が現れる。
  楽屋にいた大勢の前で、山下は包丁を突き出し君蝶を罵る。
  楽屋裏を逃げ惑う君蝶、追いかける山下。
  舞台衣装のまま、ついに君蝶は宮川町歌舞練場を出て、団栗橋へと走る。その手前に京阪電車の踏切がある。
  あ!電車が来た。 踏切が降りる。
  執拗に追いかける山下は、踏切が降りて、先へ行けずにいる君蝶の背後から、刺した。

組5-0  幸い軽傷で済んだ。
  君蝶がいる森本医院の病室に、妙子と孝次が現れた。共によそ行きの服装。旅行鞄を持っている。 一緒に東京へ行くことに決めたと言う。涙を流して喜び、医院の窓からふたりを見送る君蝶と母親の姿。時は春。

  ラストシーン。
  妙子と孝次が並んで鴨川にかかる橋を渡って、宮川町を出て行く。一方、この宮川町から出られず留まるしかない君蝶。この姉妹の対比を描く映画であった。

  北は四条大橋に、南は団栗橋に囲まれた狭い花街の世界、鴨川の端で生きる女三人を語った本作、「偽れる盛装」。
  これに対して、溝口監督の1936年作品「祇園の姉妹」は、祇園乙部(祇園東)に生きる姉妹を描いていた。両方の作品は花街に生まれ育った女を取り上げたが、同じく溝口の1953年作品「祇園囃子」では、祇園甲部の置屋の女将を頼って押しかけた花街外の娘を若尾文子が演じていた。ちなみに、京マチ子つながりで言うと、成瀬監督の1953年作品「あにいもうと」は、多摩川沿いに生まれた姉妹の話。姉を演ずる京マチ子は、東京に出て住込みの世慣れた女、これに対比して純情な妹を久我美子が演じていた。「偽れる盛装」に似ている。(「祇園の姉妹」の記事はこちらから。「祇園囃子」の記事はこちら。「あにいもうと」はこちらから、どうぞご覧ください。)
  
組6-00  ※1 君蝶の母・きく役の女優・瀧花久子の京言葉がいい! 
  ※2 京都の五花街 
  京都には祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街がある。 五花街の紹介は、京都伝統伎芸振興財団の公式サイト:http://www.ookinizaidan.com/gokagai/
  ※3 孝次が市役所から祇園の家へ自転車で帰るシーン。四条通りを花見小路通へ右折するシーンがある。写真奥が東山と八坂神社。四条通りの商店街も、まだ昔の街並み。1951年
  ※4 ふたりがいるのは、鴨川の東岸の河原。つまり、京阪電車が走る土手の下あたり。丸い石がゴロゴロしていて居心地悪そう。河川工事中か、京阪四条駅の工事か? 当時、京阪は柳が植わった鴨川東岸の土手の上を走っていた。
  ※5 京都弁で優柔不断な、いいかげんな。食用の水草で寒天質の粘液で厚く覆われ吸い物に入れたり。
  ※6 団栗橋
  鴨川にかかる橋。四条大橋の一本南にかかる。宮川町の芸者衆は、この橋を渡って鴨川西岸の先斗町や木屋町のお座敷に向かうんだろう。通い慣れた橋。この橋の東詰めが、京阪電車の踏切になっている。
  ※7 京おどり
  京都の春を華やかに彩る宮川町舞妓が総出演するのが「京おどり」。宮川町歌舞練場で上演。一方、「都をどり」は、祇園甲部が祇園甲部歌舞練場で上演する催し。
  
下監督:吉村公三郎|1951年|103分|
脚本:新藤兼人|撮影:中井朝一|
出演:君蝶(京マチ子)|君蝶の母・きく(瀧花久子)|君蝶の妹・妙子(藤田泰子)|妙子の彼氏・孝次(小林桂樹)|孝次の母・千代(村田知栄子)|君蝶の馴染み客・笠間(殿山泰司)|君蝶のなじみ客・山下(菅井一郎)|千代の旦那・伊勢浜(進藤英太郎)|君蝶の母きくが営む置屋靜乃家の舞妓・福彌(柳恵美子)|ほか

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