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映画 「波影」  監督:豊田四郎  主演:若尾文子

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  若狭の小京都と呼ばれる福井県小浜の街が、映画の舞台です。
  昭和9年から話は始まります。
  小浜の街にある三丁町遊郭、そのうちの一軒に柾木家という女郎屋があった。
  この柾木家の窓から小浜湾を臨むと、向かいに見える内外海半島(うちとみはんとう)、そこに泊という名の小さな漁村集落がある。柾木家の主人・須賀吉太郎(山茶花究)は、この集落の出だった。 
  法事で泊に行っていた吉太郎は、ある日、泊からひとりの若い女(若尾文子)を連れて帰って来た。女は自分の意志から女郎になりたいという。女は泊で兄夫婦と同居していたが、義姉が子宮がんを患い伏せっていた。兄の稼ぎは少なく、家は困窮していた。そんなことで、これは、出稼ぎで女郎になることを望み、吉太郎に頼み込んでのことだった。

  主人に連れられ柾木家の暖簾をくぐったこの女に、女郎たちや やり手婆のおうた(浪花千栄子)らは、興味津々。
  吉太郎を奥の部屋に呼び入れて、妻・まさ(乙羽信子)の第一声は、「あんた、ややこしいことや、おへんやろな」であった。 まもなく、女は雛千代という名で店に出た。たちまち三丁町遊郭界隈で評判となった。

中1  吉太郎夫婦にはふたりの子がいた。長男の忠志(中村嘉葎雄)と世津子(大空真弓)。夫婦は、長男に家業を継いで欲しかった。
  世津子は雛千代になついた。商売に忙しい女将のまさに代わって、雛千代は幼い世津子の面倒をよくみた。また雛千代は、ほかの四人の女郎の世話や店のことの何やかやについて甲斐甲斐しく働き、吉太郎やまさやおうたから信頼を得るに至っていた。だが、こうした雛千代を取り巻く環境が崩れ始める。

   主人の吉太郎が世を去り、女郎屋の家に生まれたことを嫌う長男の忠志は家を出て軍隊に入り、雛千代の義姉が亡くなり、世津子は京都の学校へ入学するため小浜を離れた。雛千代は毎日、女郎として働いた。そして、いつも明るく朗らかであった。
  この間、世は戦争に突入し、小浜でも人々は徴用に駆りだされ空には敵機が飛来した。戦時下、柾木家の女郎たちは店を去って行った。一方、忠志は軍隊で事故にあい負傷、足に障害を残し鬱々として小浜に帰って来た。
  そして終戦。GHQの指令によって、それまで公に遊郭の営業を許されていた公娼制度が廃止。三丁町の見番(三業組合事務所)でも議論はあったが、しかし、のちの売春防止法成立まで、柾木家はじめ多くの女郎屋は公認で商売を続けた。
  
  忠志は退役した後、屈折したものをこころに抱え込み、相変らず女郎屋を三丁町を嫌悪し、それを母のまさにぶつけて来た。しかし終戦になり時代が変わるなか、気丈なまさは、忠志を勘当した。忠志は勘当されながらも、母に隠れて三丁町に帰って来た。忠志は雛千代に会いたい。優しい言葉をかけて欲しかった。いつしか雛千代も忠志に好意を持ち始める。だが、一線は越えない。越えたら女郎。
  そしてしばらくしたある日、忠志は柾木家に火をつけた。地元警察の留置所にいる忠志に面会に行った雛千代は、言われる。「お前もけったいなやっちゃな」 「何でです?」 「世の中に幸福を知らんちゅう人間は多いけど、お前は不幸いうのを知らん女や」 ・・・・・・・

中2  そんなことで、話はラストへと向かうわけです。
  映画は、シネマスコープで超ワイドな画面。大きなストーリーを受け止めるに足るゆったりした画角のスクリーン。いい映画を期待できるハズです。しかし、脚本と演出が映画をダメにしてしまった。
  つまり人物描写が不味い。登場人物の表面しか描かれていない。例えば、雛千代は限りなく能天気な女で、これに対比させたんだろうが、忠志は陰気なだけの男。それぞれの心模様は、取って付けたようなセリフで補っている。よって観る者は、ジーンとくる話のひだに触れることができない。映画を楽しむには、「ああ、中村嘉葎雄はああ演技してるけど、きっとああなんだろうな・・・」と想像力を駆使して、情報の不足分を補って感じ取って行かねばならない。率直に言う。若尾文子を起用しながら、もったいない! もっといい映画ができただろうに。
  ですが、この映画、まちがいなく若尾文子を愛でる映画です。そして若尾文子が、この映画を良い方向へ持って行っています。

  「まいまいこんこ」という言葉が映画に出てきます。意味はきりきり舞い、慌ただしく動き回ることだそうです。映画では、海が見える泊の岬にある小さな墓地で、墓穴の周りを、雛千代を納めた樽状の棺を担ぐ者、親族や村人がそれなりの速さでぐるぐる回るのです。
下  中村登の1957年の映画「土砂降り」は、温泉マークのネオンサインを掲げた連れ込み旅館を営む家族の話であった。旅館の一階は家族の住居。その子たちは、人知れず、いかがわしい稼業の子であることを背負って生きた。 「波影」の柾木家で育った忠志も世津子も家業を背負う子たちである。「土砂降り」の記事はこちらからどうぞ。
  話し変わって、大飯原発。雛千代が育った泊だが、泊がある内外海半島の、小浜湾を挟んで西向かいが、大飯原発がある大島半島。なお、泊発電所は北海道にある北海道電力の原子力発電所。

監督:豊田四郎|1965年|106分|
原作:水上勉|脚色:八住利雄|撮影:岡崎宏三|
出演:若尾文子(雛千代 本名倉本かね子)|大空真弓(せっちゃんこと須賀世津子)|中村嘉葎雄=嘉葎雄(世津子の兄・忠志)|乙羽信子(世津子の母で柾木家の女将・まさ)|山茶花究(世津子の父で柾木家の主人・吉太郎)|浪花千栄子(柾木家のやり手婆・おうた)|
以下、柾木家の女郎たち|春川ますみ(さだ代)|木村俊恵(照子)|ロミ山田(市子)|岩倉高子(小花)|塩沢とき(松の)|石井トミコ(春子)|大川恵美子(悦子)|河美智子(文子)|
大辻伺郎(雛千代の郷里・泊の男・彦次)|深見泰三(隣りの女郎屋・かつらぎ楼の主人)|太刀川寛(若い水兵)|立原博(陸軍の兵卒)|水島着哉(若い男)|三島雅夫(雛千代の葬儀を執り行う泊の和尚)|柳家小せん(繁造)|沢村貞子(世津子が入学した学校の教師・小杉イネ)|田武謙三(女郎の周旋人・谷山)|

マークの1が小浜、2が泊、3が大飯原発。
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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
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