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映画 「おみおくりの作法」  監督:ウベルト・パゾリーニ   2013年イギリス・イタリア合作

上        

  




組1-0




  イギリスはロンドンの下町でのお話。
  孤独死した人の葬儀が、市の費用で執り行われている。静まり返った教会内には、牧師と、葬儀立ち会いの市の職員1人しかいない。その職員の名は、ジョン・メイ(エディ・マーサン)、この映画の主人公だ。
組2-0  ジョン・メイは市役所に勤務してはや22年。長年、福祉管理の一業務、民生課の仕事をしている。
  彼の業務は、孤独死に対応する業務だ。発見された遺体が市の遺体安置所へ運ばれた後が、彼の出番。死亡したその人の部屋を訪れ、その人の親族知人の連絡先資料を見つけ出し連絡をとることから、彼の仕事は始まる。がしかし、大方の場合、連絡先が見つからないか、連絡先が分かってもまったく連絡が付かないか、親族が見つかっても彼らは葬儀埋葬に来ないか、である。孤独死とは、そういうものらしい。

  だからか、どんな場合も、彼はとても丁寧に孤独死した人に尊敬の念をもって対応する。
  というより、市の業務の範疇を越えて、いわば彼独自の「おみおくりの作法」を実践するのだ。
  例えば、葬儀時に教会で流す讃美歌CDを個人で多数コレクションしていて、故人にふさわしい一枚を教会で流す。また、牧師が読み上げる追悼説教もその都度、彼が原稿を書く。まるで彼が故人の親友のような、そんな内容だ。
  遺体安置所の隅には、遺灰が入った容器がいくつも並んでいる。このあとにすべき業務は、市の共同墓の区画に埋めるだけであるが、ジョン・メイは留保する。もう少し待とう、親戚知人から連絡が入るかもしれないからと・・・。
  ジョン・メイは、孤独死した人々への惜別の情に生きている風にみえる。だが彼は決して暗くならない。むしろ生きがいとなっている。自宅にある分厚いフォトアルバムには、今までに「おみおくりの作法」で弔った多数の人々の写真が貼られている。それらの写真は、故人の部屋でジョン・メイが見つけ出した生前の写真。免許証の写真、若いころの写真、軍服の写真、家族との写真と様々だ。人々の人生が見えてくる。

  映画はこういった情景を淡々と描いて行くが、観る者はそのうち、「この映画、起承転結の結に向けてどうするつもりよ?」と、その先をいろいろ思いをめぐらすようになって行く。

  ジョン・メイは独身で身寄りがない無口で几帳面な男だ。友人と呼べる人もいないようだ。
  仕事柄か、近くの墓地に自分の墓のための一画をすでに購入している。そこからは、ロンドンの街が一望できる。
  そんなジョン・メイに、ある日突然、解雇が告げられた。市の業務合理化の一環らしい。だが彼は騒がない。彼の頭の中は、最後の案件を処理しなければならないことでいっぱいだ。
組3-00  今回の案件では、娘と思われる子どもの写真が見つかった。親族を探し求めてあちこちへ出張し、ついに母親を見つけ出したが葬儀に参列しないと言われる。次に娘のケリー(ジョアンヌ・フロガット)に会うことができた。そして、ふたりは恋に落ちる。
  しかし、・・・。

  飄々とした語り口の映画だが、ラストの急展開で映画全体のバランスを取っている。
  孤独死は、英語標記でも「Kodokushi」らしい。ちょうど、津波が「Tsunami」であるのと同じだ。ちなみに、引きこもりの英語標記は「hikikomori」であった。できれば、もっといいイメージの言葉が拡がって欲しいものだ。
  市の遺体安置所へ遺体を搬送する仕事の話は、2011年のオーストリア映画 「呼吸」 で描かれている。少年院を仮出所した若者の成長が語られている。ここでも孤独死があった。映画 「呼吸」 の記事は、こちらからどうそ。  



下

オリジナル・タイトル:Still Life
監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ|イギリス・イタリア合作|2013年|91分|
撮影:ジョン・メイ(エディ・マーサン)|ケリー・ストークス(ジョアンヌ・フロガット)|メアリー(カレン・ドルーリー)|評議会マネージャー(アンドリュー・バカン)|ビリー・ストークス管理人(デヴィッド・ショウ・パーカー)|管理人(マイケル・エルキン)|ジャンボ(シアラン・マッキンタイア)|ホームレスの男(ティム・ポッター)|ホームレスの男(ポール・アンダーソ)|モルグの職員(ブロンソン・ウェッブ)|

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