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映画「共喰い」 監督:青山真治

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  遠馬は17歳。ここは下関市のはずれ、川辺というところ。。
  遠馬の母親・仁子(田中裕子)は、河口近くの川岸にひとりで住んでいる。
  左手先が義手の仁子は、毎日小魚をさばいて、なんとか生計を立てている。
  父親・まどか(光石研)は、密貿易か何か、人に言えぬ裏の商売を細々と続けてきた。
  遠馬は、父親と住んではいるがまったく疎遠な関係。最近、父親はどこかから琴子という若い女(篠原ゆき子)を家に連れ込んで一緒に住み始めた。琴子は遠馬にやさしくしてくれる。

2-0_20150528135241f2b.jpg  琴子の目の下に痛々しいアザができていた。父親に殴られたらしいが、遠馬に多くを語らない。だが、同じ屋根の下、その様子を盗み見て遠馬は知っていた。父親は、セックスの最中に、女の顔を殴り首を絞め興奮が高まって行く。そんなサディスティックな光景が遠馬の目に焼き付いている。
  しばらくして、琴子は妊娠する。そして、彼女はこの家から姿をくらました。

  遠馬の父母のこと。仁子は空襲で手先を失った。当時、その奇形を村の人々は冷たくあしらった。もらい手などいなかった。そんな仁子の前に男が現れた。まどかだった。粗暴で、普通の男には無い味があった。だが、並はずれて好色で女遊びが激しい男だった。そして、セックスの度に仁子は殴られた。
  いたたまれなくなった彼女は家を出て、それ以来ひとり川べりで生活している。今となっては、ここへ訪ねてくるのは、わずかなお客か息子の遠馬くらいなもの。まどかがここに通わなくなってもう何年にもなる。

3-000.jpg  遠馬に彼女がいる。千種(木下美咲)という。ふたりは、近くの神社境内にあるみこし蔵に忍び込み、愛を確かめ合っている。しかし、この忍び逢いは村に知られていたし、仁子、まどかの耳にも入っていた。
  好色な父親の異常な性向が頭から離れない遠馬は、そんな遺伝子が自身にもあると感じていた。ある日、千草とのセックスで彼女に乱暴した遠馬に、千草は恐れた。一方、母親の仁子は仁子で、息子に父親の血が流れているかもしれぬと心配であった。千種に不幸があってはならない。

  夏、祭りが始まった。激しい夕立。神社のみこし蔵で遠馬を待っていた千種が、通りかかったまどかに襲われた。
  その知らせを聞いた遠馬は神社へ走る。そして、千草を支えて遠馬は、母のもとへ。ことの次第を知った母は、出刃包丁をつかんで、雨の中、まどかを探す。長年、抑えに抑えていたまどかへの怒りが一気に噴き出すこととなった。
  
  母親の、まどかに対する復讐の成功が、観る者の気持ちを開放してくれる、そんな展開だ。
  残念なのは、男の異常な性欲を、ことさら前面に押し出して、人の気を引こうとする宣伝文句。これは、いかがなものかと思う。映画がどんどん薄っぺらくなる。
  そんな行き過ぎを手元にぐいと引き寄せ、またともすれば、まとまりを欠く話を落ち着かせて、映画をしっかりした語り口にしているのは、母親役の田中裕子だ。田中の起用が映画を救っている。わめかない泣かない。感情を押し殺した力みを感じない沈黙と、淡々とした僅かなセリフの行間から、多くのことが伝わって来る。素晴らしい。

  最後に。例えば、好色な父親に悩む青年、ほかの女と同居し久しく帰って来ない夫を持つ妻の諦め、自分の子だと思い込む男、地域の男たちを誰でも受け入れる村の女、そして季節は夏。こう並べると、黒木和雄監督の「祭りの準備」が頭に浮かぶ。そういえば、両方の映画とも、ヒロインはパラソルをさしていた。(「祭りの準備」の記事はこちらからご覧ください。)
  
下監督:青山真治|2013年|102分|
原作:田中慎弥|脚本:荒井晴彦|撮影:今井孝博|
出演:菅田将暉 - 遠馬|木下美咲 - 千種・遠馬の彼女|光石研 - 円・遠馬の父親|篠原 ゆき子(旧芸名・篠原友希子 )- 琴子・父親の愛人|田中裕子 - 仁子・遠馬の母親|宍倉暁子 - アパートの女|岸部一徳 - 刑事|淵上泰史 - 若い刑事|



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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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