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映画「祭りの準備」 監督:黒木和雄

上
母と楯男

  高知の中村、海辺の夏。奔放な村人たちの群像劇。
楯男の父親と、その愛人・ノシ子
1-0_20150601154848114.png  主人公の楯男(江藤潤)を語る前に、彼の家族や向かいに住む一家の話から始めよう。
  中年の女ふたり、市枝とノシ子が、村人がとり囲む中、派手にケンカしている。楯男の父親・清馬(ハナ肇)をめぐっての、愛人同士の争いだ。これを機に、それまで市枝(絵沢萠子)と住んでいた父親は、もうひとりの愛人・ノシ子(真山知子)の家へ、そぉっと移ることとなった。市枝の家もノシ子の家も、そして楯男の家も、どれも歩ける距離にある村なかの話だ。

  一方、楯男の母親(馬渕晴子)は、何年も前に家を出た夫に愛想は尽き果て、もう何があっても動じない。母親は息子に言い聞かせる。「あの人はおじさんじゃけ」。 彼女は一人息子の楯男だけが生きがいになっていた。
  楯男の家の向かいに中島という家がある。この家の次男・利広(原田芳雄)は、楯男の幼なじみだ。そして、この利広とその兄の貞一は、そろって村のワル。警察沙汰もしょっちゅうだ。それから、利広の妹にタマミ(桂木梨江)というのがいて、楯男は物心ついた頃から好きだった。その後、タマミは東京に出ていたが最近帰ってきた。覚せい剤のヒロポン中毒になっていて廃人同様の哀れな姿。このタマミの帰郷後に、うわさはうわさを呼び、村にひと騒動が起きる。毎夜、浜にあげた漁船の中で、男好きなタマミは村中の男を受け入れるのだ。楯男もじっとは、していられなくなる。ついにその夜・・・。

2-0_201506011637042f1.png  さて楯男の話。信用金庫の支所に勤める楯男の家には、母親と父方の祖父(浜村純)の三人が住んでいる。楯男はシナリオライターを夢見ている。そのうち、東京へ行きたい。そんな心のうちを打ち明けられるのは、楯男の彼女の涼子(竹下景子)だけだ。

  事件が三つ起きる。
  ひとつは、楯男の祖父がこともあろうにタマミが好きになってしまう。楯男がタマミを求めて浜に行った時、背後から楯男を押しのけて割り込んできたのが、祖父だった。
  そしてタマミが妊娠する。誰の子かわからないが、祖父は自分の子だと公言し出す。これをいいことにタマミの母も、タマミと祖父を夫婦とみなす。楯男は利広(原田芳雄)から、「これからは親戚じゃけの」と、祝いの一升瓶を振る舞われる。そして出産。そして皆は驚く。なんと、タマミが正気にもどったのだ。タマミは楯男の祖父を嫌う避ける逃げる。悲観した祖父はついに首を吊った。

3-0_20150601165811198.jpg  ふたつめは、楯男の彼女・涼子(竹下景子)のこと。涼子は、ある左翼政党の青年部が主催する勉強会に加わっていた。その会のリーダーは、知的都会的な年上の男で、涼子は体を許してしまう。 楯男と涼子に距離ができ、しばらく経って再会。涼子は自らの過ちを告白し、楯男を初めて求めた。そして次の逢瀬の場所は、楯男が勤める信金の仮眠所であったが、ことが済んだ頃、なぜか出火しボヤとなった。そんなこんなで楯男は、涼子への愛が薄れていくのを感じていた。

  三つめの話。楯男の父親・清馬(ハナ肇)がある日、「居るところがねぇ」と、ひょっこり家に帰って来た。愛人・ノシ子が急死したのだ。母親はがんとして夫を家にあげない。そして母親は咄嗟に妙案が浮かぶ。さっそく夫を連れて、元・愛人の市枝(絵沢萠子)の家に向かった。母親は、ことの次第を話し、市枝は初めしぶしぶ、徐々ににこやかに清馬の受け入れを快諾した。だが母親も、まだまだ女。心とは別に身体は納得しないのであった・・・。

  もういい、何もかも、うんざりだ。家を出る。東京へ行くんだ。楯男はやっと決断できた。
  そのころ、利広(原田芳雄)は街で殺人を犯してしまう。あんなことで人は死ぬんだ・・・。利広は殺す気は無かったのだ。警察が彼を捜索しだす。
4-0_20150601171119f79.jpg  翌朝、楯男はいつものように信金へ出社するふりをして、母親に見送られ自転車で家を出た。
  駅に着いた楯男は驚いた。薄汚れた格好の利広が駅の待合室に現れた。楯男、金を貸してくれ。僕は今から東京へ行く。今度は 利広が驚いた。
  楯男が乗った列車が発車した。楯男はドアの窓越しに利広を見る。
  利広は楯男の姿を追いかけて、ホームを走りながら、何度もバンザイを叫ぶのであった。

  まとまりを欠きがちな群像劇を、うまくまとめている。
  原作者が脚本を書いていることが成功の要因だし、また監督の技も良い。
  さらには、暗くなりがちなストーリーをおおらかにカラッとさせているのは、原田芳雄、桂木梨江、浜村純、絵沢萠子、ハナ肇だ。いい仕事をしている。彼らを愛でながら、もう一度、観てみよう。

  黒木監督の映画
    これまでに取り上げた黒木監督の映画を2本。
    「竜馬暗殺」    こちらから記事をご覧ください。 
    「原子力戦争 Lost Love」  同じくこちらから
  
監督:黒木和雄|1975年|117分|
原作・脚本:中島丈博|撮影:鈴木達夫|
出演:江藤潤(沖楯男)|馬渕晴子(沖ときよ-楯男の母親)|ハナ肇(沖清馬-楯男の父親)|浜村純(沖茂義-楯男の祖父)|竹下景子(上岡涼子-楯男の彼女)|原田芳雄(中島利広)|石山雄大(中島貞一-利広の兄)|杉本美樹(中島美代子)|桂木梨江(中島タマミ-利広の妹)|三戸部スエ(中島やす-利広の母親)|湯沢勉(服部菊男)|原知佐子(服部サカエ)|絵沢萠子(徳原市枝-楯男の父親の愛人1)|真山知子(島村ノシ子-楯男の父親の愛人2)|阿藤快(良介)|森本レオ(駐在)|斉藤真(左翼勉強会のリーダーの男)|芹明香(娼婦ミユキ)|犬塚弘(信用金庫所長)|
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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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