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映画「心中天網島」 監督:篠田正浩 主演:岩下志麻、中村吉右衛門

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  近松の世界で遊ぶ、富岡多恵子(浪花の詩人)と武満徹(作曲家)そして篠田正浩監督の3人による脚色と、美術を担当した栗津潔(グラフィックデザイナー)の仕事を楽しむ映画です。

  舞台は江戸時代の大阪。
  北の色里、曽根崎新地の遊女・小春(岩下志麻)と、紙屋の主人・治兵衛(中村吉右衛門)の、あってはならぬ色恋の顛末を描く。

  色里で遊ぶの域を超えて相思相愛、小春に入れあげる治兵衛は、商売ほったらかしの締まりの無いこの三年。
  だが、小春を身請けするほどの金を、治兵衛はとても用意できない。このまま、この先いつまでも離れ離れの境遇ならば、いっそ心中しようかと思い詰めるふたりである。身分の違うふたりの愛は、だからこそ深まるばかり。そして、異常に燃え上がった男と女のゴシップは世間に広がって行く。
  一方、身内としては、こんなあまりに情けない様子に我慢できず行動したのが2人。
  女房のおさん(岩下志麻・一人二役)は、小春に手紙を書いて別れてくれと嘆願した。それは、もちろん愛する夫を取り返すこと、加えて、あきんどの妻として家業の紙屋を維持するがためのことでもあった。だが、おさんは小春に対しそんな体面を放り捨て、さらにこう手紙に書いた。心中するとは夫が死ぬこと、殺すこと。それは小春あなたにとっても不本意、不幸なはず。だから後生ですから、心中するのはやめて、夫を生かせて、と。
  もうひとり、小春に別れてくれと厳しく迫ったのは治兵衛の兄。兄は小春と直接会って、そう約束させた。

2-0_20150625224602be4.jpg  そんなことになっているとは知らぬ治兵衛は、急に小春がよそよそしい態度を示すようになり疑心暗鬼。果ては薄情な女に成り下がったと思い至る。
  そんな頃、兄やらから厳しく意見され、治兵衛は小春と縁を切ると約束させられてしまう。だが、小春への未練は消えない。腑抜けの治兵衛は、やはり商売に身が入らず、鬱々とした日々を過ごす。そして、おさんは実家に引き取られることになる。つまり治兵衛は、おさんの父親から離縁を宣告された。
  そんな折、太兵衛(小松方正)という新興成金商人が、金にまかせて小春を身請けすることが決まった。
3-0_201506252331579c3.png  これを聞いた治兵衛は、太兵衛の金の力に負けたといった風な、尾ひれはひれのうわさ話に憂いながらも、とりわけ、取り引きの常連あきんど衆からの排他的な目線や店の世間体に悩み取り乱す。それを見て、今さら何なのよという、おさんの思い。(たしかに。そして余りにも男社会的概念)
  そんな思いをぐっと抑えて、実は、おさん、別の事を心配する。夫と心中を考えたほどの小春だ、夫への強い思いは今も変わらないだろう。だから、この身請け話で小春はきっと自殺する。それはなんとしても止めたい。なぜなら、小春は私の願いを聞き入れて、夫と別れてくれたのだから。
  店の資金管理をしてきたおさんは、いきなり大金を夫の前に差し出す。それは店の運転資金だ。この金で小春を身請けして、店で雇おう。治兵衛、唖然。

  さて、これら現実の、あまりの急展開に直面して、腑抜けの治兵衛の心は散り散りに乱れた。そして同時に意外にも、彼は追い詰められた末の、ホワイトアウトな開放感を感じる。それに背を押され、治兵衛はいつの間にやら、曽根崎新地の小春のいる店の前に立っていた。
  小春、ふいに現れた治兵衛をいぶかしく思うも、ふたりは密かに新地を抜け出し、夜の闇を駆け抜ける。そして、ふたりはかつて誓い合った心中と、この世のしがらみに直面する。どうする、揺れるふたつの心。(見せ場です) そして・・・。

  1969年、あの当時にインドネシアの音楽(ガムラン)を使うとは、武満徹なかなか素晴らしいです。
  映画冒頭に、監督と富岡多恵子との電話のやりとりのシーンがある。その中で、鳥辺野の墓地で撮影したい旨を監督が言っている。そこは東山にある大谷本廟(西本願寺)の墓地。その中の一部は、かつて西本願寺周辺にあった墓地が(たぶん)明治期の道路拡張のために、この地に移されてきたもの。今も、古い作りの墓石が多い。また大阪の住所を刻んだ墓石も目立つ。実は我が家の墓もその中にある。

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監督:篠田正浩|1969年|103分|
原作:近松門左衛門|脚色:富岡多恵子、武満徹、篠田正浩|撮影:成島東一郎|美術:栗津潔|音楽:武満徹|
出演:治兵衛の妻・おさん、遊女小春の一人二役(岩下志麻)|紙屋治兵衛(二代目中村吉右衛門)|太兵衛(小松方正)|治兵衛の兄・孫右衛門(滝田裕介)|大和屋の主人(藤原釜足)|おさんの父・五三衛門(加藤嘉)|おさんの母(河原崎しづ江)|下女お杉(左時枝)|小春がいる店・河庄の女( 日高澄子)|黒衣頭(浜村純)|堪太郎(土屋晋次)|お末(戸沢香織)|丁稚三五郎(赤塚真人)|女中玉(上原運子)|煮売屋主人(陶隆司)|客(牧田正嗣)|黒衣の群(天井桟敷)|

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