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映画「ジ、エクストリーム、スキヤキ」 監督:前田司郎

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  これは、こころ温まる楽しい喜劇です。

  大川(窪塚洋介)37歳は、楓(倉科カナ)と一緒に住んでいる。
  ひょうきんな大川は、気軽な人生を生きている。大学生の頃からのバイト先に、今もバイトの身分で勤めている。店から店長になれと言われるが、その気はあまりない。楓とは結婚しないつもり。でもそれなりに二人は幸せな日々。楓は、一見健康そうだが、実は重い病を患っていて、病院に通っているが治る見込みはない。もちろん、そのことは大川も知っていて、彼女を支えている。
  京子(市川実日子)37歳独身は、新卒で入社した会社に今もいる。決してキャリア組じゃない。のっそりとした職場の男(黒田大輔)と、何のときめきもなく、ぬる~い関係で付き合っている。今度、二人で沖縄旅行をする予定。だが、京子は釘を刺す。私、あんたと結婚する気はないからねっ!

2-0_20150722131925cf8.jpg  そんな普通の一般市民の私生活に、15年の時を越えて、突如、割り込んできた男(井浦新)がいた。名は洞口(ほらぐち)という。洞口は、大川と京子の大学時代の友達だったが、卒業後この3人、互いに一度も会っていなかった。
  洞口はまず、大川の家にひょっこり現れる。このふたり、かつて何かがあって以来、縁を切った間柄。だから、ええっと迷惑がる大川。
  しかし、そんなこと、まったく意に介さず、洞口はひょうひょうとして大川にまとわり付くが、大川もなにせ暇を持て余している身。彼は思う。洞口に何か魂胆があってのこと、ではなさそう。
  37歳とはとても思えぬ洞口のお茶目さと大川の子供っぽさが、いつしか縁を切る前の学生時代の、アホ同士の親しい間柄に戻って行く。それを傍らから、微笑ましくみている大川の彼女・楓。
  ふたりは相談して、突然に京子を訪ねた。4人で一緒に海に行こう。なに~あんた達!と、いぶかしがる京子であった。が、4人は、大学生の時からの古い洞口の車に乗って、海へ出かける。大川手作りの木製ブーメランを飛ばしに、さしたる当てもなく。
  海に着いて浜辺に出る。楓は感激している。生まれて初めての海であった。京子も突如降って湧いた非日常を楽しんでいる。
  しかし、行ったはいいが、帰りが面倒になって来た。やっと取れた宿は、ホテルじゃなくて民宿の一室。それでも、風呂に入って、コンビニの乾きもの御つまみで学生のような宴会は楽しい。そののち雑魚寝。
  そして翌朝、4人にはそれぞれに、現実の普通の日々が待っていた。(終)

  さて、洞口のこと。
  こうしてみんなと会う少し前、実は彼は、どこか山あいの道路脇の崖から、飛び降り自殺していた。過去の自分を引きずり、次へと脱皮できずズルズルと37歳。小さな夢もやることも無かった。
  しかし、飛び降りはしたが、彼は死ななかった。いや死ねなかった。谷底に叩きつけられて全身打撲、気を失った。意識が戻り、峡谷のがれきの崖を這い上がり道路を這って、やっとのことで乗って来た車にたどり着いた。そしてドアを開け、彼が見たものは文庫本に挟んだ1枚の写真。そこには若き京子の姿が写っている。この本は、かつて京子がこの車に置き忘れた本だった。
  この時、洞口は15年の時を越え、昔の仲間に会いに行くことを思いついたのだった。そして彼は、まるでベルリンの天使のように、大川や京子が抱えるやるせない日常に、突如舞い降りて来たのであった。

  脚本がいいです。セリフがしっかり吟味されている。それを井浦、 窪塚、市川が、まるで掛け合い漫才のように、スピーディにテンポ良く上手にこなしている。これがいい。いいだけに、浜辺のシーンの洞口のセリフに、書き言葉が混じるのが目立ってしまった。加えて、洞口の自殺の話が構成上、イマイチ据わりが悪い。もう一工夫欲しい。惜しい。
  ダラダラと続く日々、そして非日常。本作と通底する映画に行定勲の映画「きょうのできごと」があった。(田中麗奈、妻夫木聡、池脇千鶴、出演) 「きょうのできごと」の記事は、こちらから。いい映画です。



下監督・原作・脚本:前田司郎|2013年|111分|
撮影:平野晋吾|音楽:ムーンライダース|
出演:井浦新(洞口)|窪塚洋介(大川)|市川実日子(京子)|倉科カナ(楓)|黒田大輔(鈴木)|西田麻耶(典子)|内田慈(仏具屋の店員)|ムーンライダースの岡田徹(仏具屋のおやじ)|ほか

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