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映画「花よりもなほ」 監督:是枝裕和

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0000000.jpg 元禄時代の時代劇コメディ。群像劇だが主人公はいる。武士で独身の岡田准一と、後家で子持ちの宮沢りえ。

 武士が武士たる時代は終わっていた。つまり、徳川の世になって100年経った頃、いくさが無い、刀もいらぬ平和な時代のお話。
 舞台は、廃屋同然の吹き溜まりの長屋。落語「貧乏花見」の世界のように、底辺の人々は貧しくも明るくにぎやかに日々を生きている。(この部分が主に、映画の喜劇要素を担っている)
 まずは、主人公の話をして行きます。
 そんな人々に混じって長屋に住む武士がいる。風来坊の浪人(香川照之)や、親の仇討ちのため、かたきを探す武士。その武士こそが、信州松本から来た主人公・青木宗左衛門(岡田准一)だ。親のかたきの名は、同じ藩の藩士で、江戸に潜伏している金沢十兵衛(浅野忠信)だ。首尾よく敵討ちが成し遂げられれば、百両が藩から頂ける。(そのころの一両を十万円とすれば一千万円相当。藩公認の敵討ちは法的に認められていた)

 江戸に来て2年経ち、青木はやっと金沢を見つけた。金沢は、夫婦で長屋に住み子供がいる。良き父親、幸せそうな家庭。それを見て青木は、かたきが討てない。彼には刺客の才能が無かった。言い換えれば、親のかたきを憎み続け刀を振り上げる気力が無くなっていた。
 それは彼の実家でも、同じであった。しかし、武家として青木家の建前は仇討ちせよ、だ。長男として青木はその役目を押し付けられた格好。映画後半で分かるが、敵討ちのために藩から支給される月の手当は、実家の家計の赤字に充てられていた。手当の存在を青木は知らなかった。
 そんなこんなの入り組んだ事情をすべて知っている叔父の青木庄三郎(石橋蓮司)は、青木にうま~く立ち回れと、そーっと示唆した。

 長屋の藪医者・小野寺十内(原田芳雄)のもとに、患者を装い町人に変装し、たむろする男たちがいる。赤穂浪士らしい。この映画は赤穂浪士の討ち入り直前の話。民衆は、いつ仇討ちするのかと密かに期待していた。
 そんな空気を受けて、かつ叔父の示唆を聞き入れて、青木は自身の仇討ちを、かたきの金沢を殺さずにやれないかと一計を案じた。長屋のみんなに協力を得て、町奉行所で一芝居を打ち、それはまんまと成功した。(あり得ない!と言わないで、これコメディです)
 一方、赤穂浪士の討ち入り後、世間は討ち入りの話題で持ちきり。赤穂浪士がいた、このボロ長屋は一躍、江戸の観光名所となった。長屋の連中が観光ガイドをし、饅頭を作れば売れた。

 ところで青木と同じ長屋に住む、後家で子持ちの宮沢りえは? このふたりの話は、互いに気はありそうだが、映画は意外に恋愛を描かない。だがラストではいい仲に。(このエピソードは客寄せパンダ)
 このように青木の仇討ち話を中心に、いろんなエピソードが取り囲む。長屋の面々のあれこれの話、赤穂浪士のエピソード、陰のある長屋の住人・そで吉(加瀬亮)と、長屋の大家(國村隼)の女・おりょう(夏川結衣)がむかし恋仲だったことなど、エピソードに事欠かない映画だが、全体通して観ると雑駁な印象が避けられない。まあ、言ってしまえば残念な映画です。
 シーンの遠景遠くに人がひとり歩いていたりなど、こだわりは各所で読み取れます。お金があったのでしょう。大勢の有名俳優やタレントを使っています。出演者それぞれにそれなりの役とストーリーを配らなくてはいけない。各所属事務所への配慮もあるでしょう。それをまとめ上げ、一本の映画にしなきゃいけない。だが、脚本が弱くて、まとめ切れていない。こう想像すると、これは物事の順序が逆ですな。
 コミカルな時代劇は、今後も誰かが作り続けて行って欲しいと思います。
 翌2007年製作の「やじきた道中 てれすこ」(監督:平山秀幸)も、コミカルな時代劇です。過去から受け継ぐ型を尊重し踏襲しながらも現代的にアレンジしてます。中村勘三郎、柄本明、小泉今日子が出演。 記事はこちらから。

原題:Hana
監督・原案・脚本:是枝裕和|2006年|127分|
撮影:山崎裕|音楽:タブラトゥーラ|←時代劇とリュートの取り合わせはいい。タブラトゥーラは中世音楽を主軸に民族ポップ音楽を取り込む楽団
出演:青木宗左衛門(岡田准一)|おさえ(宮沢りえ)|貞四郎(古田新太)|平野次郎左衛門(香川照之)|おのぶ(田畑智子)|乙吉(上島竜兵)|孫三郎(木村祐一)|そで吉(加瀬亮)|留吉(千原靖史)|善蔵(平泉成)|お勝(絵沢萠子)|おりょう(夏川結衣)|長屋の大家・伊勢勘(國村隼)|重八(中村嘉葎雄)|進之助(田中祥平)|吉坊(田中碧海)|健坊(木村飛影)|うめ(ひろみどり)|ゆき(井内菜摘)|祖母(山村嵯都子)|青木庄三郎(石橋蓮司)|寺坂吉右衛門(寺島進)|鈴田重八郎(遠藤憲一)|横山勘平(田中哲司)|神崎与五郎(中村有志)|青木宗右衛門(勝地涼)|お絹(石堂夏央)|与力(トミーズ雅)|青木庄二郎(南方英二)|金沢十兵衛(浅野忠信)|小野寺十内(原田芳雄)|

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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