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映画「風の子」 監督:山本嘉次郎

山の上の畑でサツマイモを育てた次男と、下の妹たち。
みんなで掘り上げたイモにかじりつく。

上

 戦時中、東京(大森)を離れ親戚を頼って越後へ、そして能登へと疎開した一家の話。(実話を基にした脚本

 一家は、母と子が5人そして叔母、つまり女・子供だけの計7人。パン職人の父親を兵隊に取られ、パン屋をやっていけなくなった事からの疎開だった。もちろん空襲を避けるためでもあった。
 しかし疎開先の越後の街では、彼らをあたたかく迎え入れることはなく、人々はこの一家を「疎開もん」と呼び、やっかい者として差別的に扱った。一家に男がいないことで、街の人たちに、そして親戚からも、いいように扱われた。それでも、子たち5人が明るく日々を過ごせたのには、理由があった。一家の柱は母であったが、先進的で楽観的な叔母の明るさがあったからこそだった。しかし、そうは長くうまくは行かない。

中 精神的に追い詰められた一家は、遠い親戚を頼りに、今度は能登の農村へ意を決して旅立った。
 がしかし、その親戚は家の一室も貸さないと言い、一家を追い払った。だが、捨てる神あれば拾う神あり、近くの農家の娘が彼らをこころよく受け入れてくれた。親を亡くしたその娘にとって、女の一人住まいは何かと不安であった。一家は久々に他人のあたたかい心に触れる日々を過ごすことができた。
 ところが、ある日、この娘の結婚が突然に決まる。一家はこの家を出なければならなくなった。仲人が一家に言った。あんた達を受け入れなかったあの家の親戚筋に庵主さん(進藤英太郎)がいる。寺には空いた部屋もある。行って頼んでみたらと。
 一家は拒否する庵主に取りすがって頼み込み、半ば、寺に押し入るようにして一室に上がり込み、夜露がしのげることとなった。 

 次第に食べる物に事欠き始める。持参の着物をはじめ売れるモノは、これまでに近所の人たちに売ってしまっていた。食べる物は、芋のツルだけの粥になった。母は10歳過ぎの長男と相談し、彼は納得してひとり越後へ出稼ぎに出た。見送る母は断腸の思いであった。

 畑を借りたいと言う一家の申し入れに対し、村は初め竹林を指定した。母と叔母と次男で竹林を開墾しようとしたが、土台無理だった。さすがに見兼ねた村は、山の上の畑を提供した。次男はここにサツマイモを植えた。小便を水で薄めたものを入れた桶を天秤棒の前後に下げて次男は何度も山を登った。暇をもらって帰って来た長男も手伝った。
 そして、秋。蔓を引き上げると、土の中からまさに芋づる式にサツマイモが現れた。幼い妹たちも喜び、生のままのサツマイモを嬉しそうにかじるのであった。

幼い妹たち。山の上のサツマイモ畑で。
下 当時、少年であった山本映佑という人が自らの体験をもとに書いたものが原作。川端康成に推賞された。少年少女雑誌「赤とんぼ」に連載された。一家の次男が山本映佑。映画の中で、原作を書いているシーンがある。 

監督・脚本:山本嘉次郎|1949年|90分|
原作:山本映佑|撮影:植松永吉|
出演:渡辺篤(父)|夏川静江(母)|竹久千恵子(小母さん)|久保健一(弘)|藤本武(英二)|池田昌子(まち子)|小林辰江(貞子)|渡辺昶子(悦子)|進藤英太郎(能登の庵主さん)|深見泰三(大久保の主人)|柳谷寛(その弟で精神障害を持つ兵五郎)|藤原釜足(越後の親戚・のっぺり伯父さん)|登山晴子(米ちゃん)|小杉義男(新家の由兵衛さん)|馬野都留子(文右衛門の妻)|宮川富士夫(子たちをいじめる山村八造(あだ名・熊ン蜂)|浜地良子(質屋の女主人)|


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