Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」 (ドキュメンタリー映画) 監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル

映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」 (ドキュメンタリー映画) 監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル

上




1-0_2015101309542188a.jpg













 まったく無名の女性が残した写真が発見され、突如として高い評価を受けることとなった事実を追うドキュメンタリー映画。
 その女性の名は、ヴィヴィアン・マイヤー(1926 – 2009)。
 彼女はニューヨークで住込みのベビーシッターとして働く一方、空いた時間は街に出て、思いのままにスナップ写真を撮り歩いた。

2-0_20151013145847570.jpg 彼女が残した写真の発見者はジョン・マルーフ。美術館のキュレーターでもない普通の青年。(この映画の共同監督をし映画にも登場する) 
 2007年のある日、資料として古い写真を探していた彼は、大量の写真(モノクロ・ネガフィルム)が入った箱を、あるオークション会場で見つけ、そのうちのひと箱を380ドルで落札した。その後、ジョン・マルーフはこの写真の素晴らしさに気付き、これを撮った撮影者ヴィヴィアン・マイヤーという名をネット検索したが一件の情報も出て来ない。まったく無名な人物なのだ。ジョン・マルーフは、気に入った写真をセレクトしネットにあげたところ、思いもかけず世界中から大きな反響があった。彼女はどんな人物なのか?ジョン・マルーフの好奇心は膨らんで行った。

 写真と共にあった古い紙片類から彼女が関わったであろう住所や昔の電話番号を見つけ出し、電話をかけ訪問し、かつて彼女がベビーシッターとして雇われた家々を探り当てた。(当時、彼女に世話になった子供達ら関係者のインタビューは映画に再三出てくる) しかし、誰も彼女のその後を知らない。生死も分からない。
 ジョン・マルーフは、これらの関係者から、ヴィヴィアン・マイヤーが残したままを保管していた品々を譲り受け、またオークション会場で彼が買わず他人の手に渡ったネガフィルムも買い集めた。その結果、15万点以上もの写真作品を彼女は残していたことがわかる。
 また、8ミリフィルムも残されていて、若き日にベビーシッターをしていた家の子供たちや本人の様子が映画で観ることができる。

 彼はヴィヴィアン・マイヤーの写真集を発行する。たちまち全米売り上げNo.1を記録。ニューヨーク、パリ、ロンドンで個展を開くと多くの人々が集まった。作品も売れた。 

 しかし、彼女はこれほどまでの写真を撮りながらも、生前一度も自身の写真を公表しなかったのである。なぜ?
 映画はこの謎を追い解き明かしていく。彼女がベビーシッターとして面倒をみたかつての子供たちや彼女を知る僅かな人々、そして苦労の末に探し当てた彼女の親の故郷・フランスの村人たちがそれぞれ証言する。
 これによって、おぼろげながらもヴィヴィアン・マイヤーなる女性が見えてくるが、やはり真相はわからない。分かったことは、独身、人嫌い、心を他人に見せない、偽名を使っていた、男性恐怖症、新聞の切り抜きやメモまで膨大なものを残す収集癖、ニューヨーク生まれで不幸な環境で育つ、老後は浮浪者同然であった、そしてジョン・マルーフによる発見の2年後の2009年に彼女は人知れずこの世を去っていた、ことなどである。彼女を知る女性が言った、生前に写真の売上金額が本人の手に渡っていれば、と。
 
 写真の芸術的価値は、著名な写真家たちも高く評価する。そんなインタビューが映画にもあるが、美術館のキュレーターらはオリジナルプリントではないからという理由で芸術作品として評価をしないのが面白い。遺品の写真は膨大なネガフィルムと未現像のフィルムだけで、なんと、写真のプリント(紙焼き)がほとんど無いのだ。
 彼女はそもそも写真を公表する気持ちは無かったのではないかとジョン・マルーフは思い、公表したことに後ろめたさを感じ続けていると、映画で告白している。 
 私が思うに、ヴィヴィアン・マイヤーは自身の芸術性の高さを知っていただろうが、プリントして写真を見ることにまったく興味は無かったのではないかと。被写体を見つけ出し構図を決めカメラのシャッターを切る時点までで、(自分に対する)自己表現は完結していたのではないか。そして、膨大なネガが溜まりにたまり収集癖からそれをストックしていたと、そう思える。

 ヘンリー・ダーガーを思い出すかもしれない。ヘンリー・ダーガーも、誰に見せることなく作品を描き続け、死の直前にその芸術性が発見され、アウトサイダー・アートの作家として評価されるようになった男。 

 最後に、ふと思う。現在、もしヴィヴィアン・マイヤーのような人間がいて、デジカメやスマホで素晴らしい写真を撮りためていて、遺品のパソコンにそのデータが保存されていても、誰も気づかずそのハードディスクは破壊されるかもしれない。 
 <追記>ヴィヴィアン・マイヤーは、アメリカの女性の写真家Ruth Orkin (1921 – 1985)と同世代だ。

◆ジョン・マルーフによる「ヴィヴィアン・マイヤー・コレクション」の公式サイト:http://www.vivianmaier.com/
 (John Maloof Collection website on Vivian Maier)
◆映画の公式サイト:http://vivianmaier-movie.com/
写真を発見したジョン・マルーフ      
キャプチャ00オリジナル・タイトル:Finding Vivian Maier
監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル|アメリカ|2013年|83分|
撮影:ジョン・マルーフ|


【 一夜一話の 歩き方 】

最新の記事はこちら。      直近の記事100 リストは、こちらから (All Archives)

邦画評だけ見る (直近掲載の50作品)   洋画評だけ見る (直近掲載の50作品)  

TOPページ (映画記事の人気ランキング、新作映画みました、映画の特集)

邦画の題名リスト    ◆洋画の題名リスト

邦画の監督名リストから記事を探す   ◆洋画の国別リストから記事を探す

一話 (京都、旅行、美味など)      書評   美術

クラシック音楽    ポピュラー音楽              

 





関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/1295-861c2685
Listed below are links to weblogs that reference
映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」 (ドキュメンタリー映画) 監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル from 一夜一話

Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」 (ドキュメンタリー映画) 監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top