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中国映画 「タルロ」と「ベヒモス」 ~第16回東京フィルメックス上映作品

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「タルロ」  Tharlo / 塔洛
中国 / 2015年 / 123分
監督:ペマ・ツェテン (Pema Tseden)





1-0_20151127190803cef.jpg 中国チベット自治区()でのお話だろうか。
 長髪を三つ編みにした男、タルロはチベット族の羊飼い。年は40歳過ぎ、独身、小学校卒。身寄りは無い。人里遠く離れた荒野の真っただ中で一人住まい。粗末な粘土造りの小屋だ。電気製品は裸電球にラジオだけ。バイクはある。
 彼は300頭以上の羊と生活を共にしている。そのうち200頭ほどは、羊の所有者から預かり育てている。

 チベット自治区のここ辺境でも身分証明書の保有が必須義務となり、羊飼いタルロも証明書を作ることが地元警察から求められた。ある日、彼は写真館で証明写真を撮るため、バイクで町へ出た。写真館では撮影にあたって、髪を整えなさいと言われ、通りの向かいにある小さな美容院をすすめられた。彼は何日も洗髪していないボサボサ頭であった。
 そこで、タルロは美容院を営む若い女と出会う。美しい女だ。タルロは密かに一目惚れしてしまう。彼は料金支払い時に紙幣を渡し、釣りは要らないと店を出た。店の女はちょっと驚いた。そして女は、自前の羊を売れば大きな額になると洗髪中に彼が言ったことを思い浮かべていた。
 女は写真館から出てくるタルロを待っていた。そして、彼を誘った。彼もまんざらじゃない。カラオケを嫌がるタルロを連れて女は近所のカラオケ店に入った。生まれて初めてのカラオケ体験だ。タルロが歌える歌は、カラオケに無い伝統民謡の一曲だけであった。互いに酔っぱらい、女はこの町を出たい、どこか遠くへ行きたいとささやく。そんなことで夜は更けた。
 結局、美容院で一夜を明かしたタルロは、荒野の家に帰るが彼の心は乱れるばかり。女が歌った歌をラジオで聞いて覚え、次にカラオケに行く時、歌えるようにしていた。
 そして、彼はまた美容院へ行く。羊を売って得た札束を女の前で高く積み上げた。一緒に遠くへ行こうと。
 忍んで旅に出るには、一目でタルロと分かってはいけないからと、女は彼の頭を坊主にした。そして、タルロが一緒にカラオケに行きたいというのを女は制して、巡回して来たラップのコンサートに連れて行く。そしてその夜は、また美容院に泊まった。
 翌朝、女の姿は無かった。札束も消えていた。女を探しあぐねたタルロは家に帰り、酒浸りの日々となる。

中 映画冒頭、タルロが7歳の時に覚えたと言う、毛沢東語録の一節(中国語)を、彼は警察署長の前で歌うように朗々と暗唱してみせる。そして、その一節にある善人と悪人について所長と語るシーンがある。時が経ち、女と財産を失くした後、タルロは顔写真を持って警察署へ証明書の申請手続きに行く。署長はスキンヘッドの彼を見て言った。この写真と人相が違い過ぎる。あらためて写真を撮れ、そうしないと手続きは出来ないと証明書申請を断られた。

 50歳代の中国人を知ってるが、その方は今でも語録のすべてを暗記しているという。学校で覚えさせられたのだ。 
 映画の初めと終わりに聴こえて来る音楽は、ホーミー(喉歌)。和音になっているが、ひとりで歌っている、二重録音ではない、そういう特殊な歌唱法。まるでシンセサイザーのようだ。
 ()ホーミーは、モンゴル国西部や中国新疆ウイグル自治区北部に居住の人々に伝わるものという。ということは、この映画の舞台は、チベット自治区と新疆ウイグル自治区にまたがる辺りなのかな?


上 
「ベヒモス」  Behemoth
中国 / 2015年 / 91分
監督:チャオ・リャン (ZHAO Liang)


1-0_201511272239051e5.jpg 内モンゴル自治区でのドキュメンタリー。
 <石炭採掘現場> かつて、緑の草原が果てしなく続いた大地が、今は石炭の巨大な露天掘りの地となり、草の一本もない岩石と石炭だけの風景が広がっている。【地獄】
 採掘のためのダイナマイトの爆音、破砕された膨大な量の石塊。それを運び、次から次へと捨て場(捨石(ボタ)の集積場)へ捨てるトラックの群れ。
 そのボタ山の崖すそに、付近の人々が集まって来る。石に混じって僅かに石炭があるのだ。それをを三輪トラックに積んで家に帰り、石炭を仕分けする。そんな稼業がここにある。
 地域の道路を大型トレーラーやトラックが、土ぼこり・砂塵を巻き上げて走り去るこの地の景観は、あまりに殺伐としている。
 <鉄鉱石から鉄を取り出す生産現場> 製鉄所。多くの人々が肉体労働する旧式の設備だ。噴き出す汗、灼熱に耐えて働く労働者たち。
 <病院> 炭塵などの粉塵を日々吸って肺を侵され(塵肺)入院している男たち。【煉獄】
 この患者が後を絶たないらしい。遠くに露天掘りのボタ山や工場が見える墓地が、強烈な印象を残す。
 <高層マンションが林立する無人の街> 真っ青な空の下に、新築マンションが建ち並ぶ。【天国】
 だが、人影がまったく無い。一台の車も通らない広い道路。この道路でゴミを拾うひとりの清掃員。中国では、こういう無人のマンション群の街が多いらしい。(監督の言) 
 
 地獄、煉獄、天国という構成。ナレーションがない(字幕処理)。登場人物の発言も一切ない。現場の騒音や効果音はある。
 作り手とドキュメンタリー対象との距離感が気に入らない。例えば、ワン・ビン監督の中国映画「石炭、金」のように、有無を言わせず対象に迫って行くことをしない。さりとて、避けている風でもない。お上品? どこか遠目で対象を見ているところがある。だから、映画が、働く現場の現実の力強さに押されている。「石炭、金」の記事は題名をクリックしてご覧ください。   
 
 
 
まったく無人の高層マンションが林立する、天国の街。
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