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映画 「駆込み女と駆出し男」  出演:大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり  監督:原田眞人

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1-0_20160124214528d3d.jpg いい映画。抑制されたコミカルさが、随所に仕込まれた娯楽時代劇、群像劇。

 時は江戸時代、幕末のころ。話の舞台は鎌倉にある尼寺、東慶寺。
 そこは駆け込み寺、縁切り寺だ。男に追い詰められ、切羽詰まった女たちの離縁の訴えを、しっかり受け止める。
 だから話の出だし、それぞれの女たちの事態は深刻だ。しかし、女たちが寺に駆け込んだ後は、雲間から陽が差すように、事は徐々に良い方向へと向かっていく。(寺で2年が経てば離婚成立)

 まずは、「駆込み女」がふたり。
 鎌倉の近辺で、たたら製鉄を営む鉄練りのじょご(戸田恵梨香)が東慶寺に駆け込んだ。夫の重蔵(武田真治)は、この小さな製鉄所のあるじだが、仕事場はじょごに任せっきりで、本人はもっぱら酒色におぼれ、淫らな女を家に連れ込んでは放蕩の限りを尽くす。その上、夫からドメスティックバイオレンス。じょごは自殺か駆込みかを考えるに至っていた。
 日本橋の豪商・堀切屋三郎衛門(堤真一)の愛人・お吟(満島ひかり)は、その夜、江戸から駕籠(かご)を雇って一目散、鎌倉へ、翌早朝、東慶寺に駆け込んだ。豪商の愛人として、何の不自由なしの日々。おまけに三郎衛門に正妻はいないのに何故? お吟は、駆け込みのわけを誰にも明かさない。一方、その理由を自分への裏切りと勘ぐった三郎衛門は、お吟に対し敵意を抱く。お吟も三郎衛門も、それぞれに、どうも人に言えない秘密の過去があるらしい。

 そこへ、信次郎(大泉洋)という「駆出し男」が、東慶寺の門前宿・柏屋へ転がり込んできた。
 信次郎は、駆出しの医者。そして信次郎は口達者。彼のしゃべりには、聞き手をぐっと魅了するストーリー性がある。言い換えれば、作家(戯作者)の素質があるようにも思える。(のちに、じょごがそう言って二人は江戸へ行く) 加えて、一応医者の端くれなので、東慶寺内で急病人が出ると、境内に入る許可が下りる事から、可笑しなことがおこる。

2-0_201601242217429bd.jpg さて、信次郎が転がり込んだ門前宿・柏屋は代々、信次郎の親戚が営む宿。かつ柏屋は、縁を切りたいと訴える女たちの身元調べを寺に代わって代行し、また東慶寺に対する司法書士、相手方との示談仲介といった弁護士のような役割を果す御用宿でもあった。これらを仕切るのは、宿のあるじ・三代目柏屋源兵衛、とは言っても、女あるじ(樹木希林)だ。
 一方、東慶寺を仕切る尼のトップ門跡尼は、法秀尼(陽月華)という名の尼さん。これがなかなか現代的なマネジメントをする尼さん。
 これでこの映画の役者がそろった。さて、お話はどう展開しますやら、観てのお楽しみ。
 
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 この映画、三つの特徴がある。
 1)映像に何やら、たっぷりとした余裕の雰囲気がある。それは各シーンに奥行きがあるからだ。駆け込み寺の堂内・境内の広さをはじめ、民家の屋内シーンも広い。それ故か、江戸時代の空気感が醸し出されているようで、リアリティを感じる。つまり、時代劇TVドラマによく出てくる、お約束の撮影セットの様に、狭く嘘くさくチマチマしていない。

 2)そして映画は、このたっぷり感を土台にしながらも、スピード感がある。それは、次のシーンへ画面遷移する速さ。普通なら、あと数秒後に次のシーンへ行くところを、待たずにさっさと切り替わる。これがスピード感を感じさせる。ただし、主役級の俳優には広い空間、速いシーン展開に負けない演技力が要る。

 3)さらには、このスピードある展開に合わせて、セリフが早口の現代口語。聞き取れないかもしれない事を恐れていない。時代劇っぽい勿体ぶったせりふ回しが無い分、話が速い。ただし、早口なせりふ回しは滑舌が良くなきゃ台無し。そんな中で一人、ゆったりとした演技を光らせるのが、柏屋のあるじ役の樹木希林。実は、この映画のカナメは樹木希林だ。実に渋みの効いた味がある。
 邦画にまだ活力があると思わせてくれる映画です。


監督・脚本:原田眞人|2015年|143分|
原案:井上ひさし|撮影:柴主高秀|
出演:大泉洋(中村信次郎)|戸田恵梨香(鉄練りじょご)|満島ひかり(お吟)|樹木希林(柏屋の女あるじ:三代目柏屋源兵衛)|内山理名(戸賀崎ゆう)|陽月華(法秀尼)|神野三鈴(おゆき)|宮本裕子(玉虫)|松本若菜(お種)|円地晶子(おみつ)|玄里(おせん)|武田真治(重蔵)|北村有起哉(南町奉行・鳥居耀蔵)|中村育二(老中・水野忠邦)|山崎一(石井与八)|麿赤兒(医者の清拙)|キムラ緑子(お勝)|木場勝己(利平)|高畑淳子(女貸本屋)|橋本じゅん(近江屋三八)|井之上隆志(鼻山人)|山路和弘(渓斎英泉)|でんでん(為永春水)|中村嘉葎雄(風の金兵衛)|堤真一(堀切屋三郎衛門)|山崎努(曲亭馬琴)|法光尼(大鳥れい)|法鈴尼(赤間麻里子)|田中勘助(松岡哲永)|


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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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