Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画 「ブリスフリー・ユアーズ」  タイ映画  監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン

映画 「ブリスフリー・ユアーズ」  タイ映画  監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン

上

 二人のタイ人女性と、あるミャンマー人男性をめぐってのお話。
 監督の第二作目の映画。

1-0_201602071306482be.jpg 第一章
 不法にミャンマーから越境してきた男・ミンが、身分を隠して女性医師の診断を受けている。
 身体のあちこちに湿疹ができているのだ。この診察を心配そうに見守っているのが、ガールフレンドのルンと中年女性のオーン。どうやら、ミンがしゃべると彼がミャンマー人だとすぐに分かってしまうらしい。医師の前では、喉が痛くて話せないことにしている。
 ミンの治療以外に、オーンにはこの医院でやってもらうことがあった。それはミンの健康診断書を書いてもらうこと。外国人は働くにあたって労働許可証が必要だが、その申請には健康診断書が要る。健康診断書発行に際しては、身分証明するものの提示が必要。だが、ミンは持っていない。医師は提示を求めるが、オーンはあとで提示するから、とにかく今、発行してよとせがむが、断られる。

2-0_2016020713083623e.jpg 第二章
 そのあと、オーンはミンを連れて、オーンの夫が勤務する会社へ向かった。夫はこの会社の偉いサンらしい。
 健康診断書さえ貰えれば、ミンはこの会社で働ける、オーン夫妻の間ではそういう手ハズになっている。この夫婦にとって、ミンは息子のような存在らしい。それほどにミンは気に入られている。夫妻は、実の子をかつて水の事故で亡くしていた。
 この会社の正門にいる守衛たちは、みなミャンマー人だ。ミンは彼らとは顔見知りで、親しそうにミャンマー語で話している。就職できたならミンも守衛として働くのだろう。
 一方、ミンを愛するルンは、陶製人形の絵付け工場で働いている。工場内は大勢の女性従業員が働いている。
 その朝、ミンの診察に付き合ったルンは、遅刻して工場に着いた。たびたびの遅刻らしく、職場のマネージャーにルンは叱られている。何やら反抗的な彼女はその場で決意した。私、この工場、辞めるわ。


3-0_201602071319196fe.jpg 第三章
 ミンとルンは森へピクニックに出かける。このあたりは国境に近い。ミンは森の中をよく知っていて、どんどん分け入って行く。あとを追うルン。そして、崖の上に出た。見晴らしが抜群。辺りが遠望できる。ふたりはここでシートを広げちょっとしたランチを始めた。それから、こんどは谷を降りて小川のほとりに来た。しずかに流れる清流。ふたりはここで愛を確かめ合う。
 偶然だが、オーンもこの森に来ていた。夫の会社の男と逢い引き中。ここでも愛を確かめ合っている。そこへ、ふいに男たちが現れ、ふたりが乗って来たバイクが盗まれる。オーンのお相手は「カレン族だ!」と叫んで、慌ててパンツを履いてカレン族と思しき男たちのあとを追いかけて行った。突如、とり残されたオーンは、ふらふらと小川の方へ降りて行く。そしてミンとルンの愛のシーンを見てしまう。だが、オーンはふたりと合流する・・・。

 一章二章は現実の世知辛い世界を、三章は自然に囲まれて人も原始の心に戻れる世界を表わしている。
 ミンとルンの愛のシーンも、オーンたちの愛のシーンも、監督の作品の中ではもっとも大胆なシーンをみせる。自然の中で性の本能が全開する。ただし、オーンの方には少々事情があった。以前から、オーンは夫に自分たちの子が欲しいとねだっていたが、夫はセックスから遠ざかって久しいようでセックスを渋っていた。どうもオーンのこの欲求不満(?)が、不倫へとつながったようだ。

4-0_2016020713332235a.jpg オーンの夫の会社では社内に男性社員の姿しかみえない。一方、ルンの会社は女性社員が圧倒的。ルンが会社を辞めたいわけは、薄給だからか?、会社に対してルンは反抗的な態度だ。
 各シーンをこうみると、タイの女性が社会的弱者になっていることを、映画は暗に言っているように思う。加えて、不法入国のミン。このミンとルンのふたりが主役のこの映画は、現実の世界では弱者だが、森の世界では、おおらかに心を解放している、というようにみえてくる。
 
 ことほどさように、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の各作品を連ねて観て行くと、あらかじめ「意味づけされた」シーンを、観る側が読み解いて、その作意を知る、といった風な傾向が強い様に思う。だから、ストーリーをなぞっているだけだと、話はすぐには分からない。  
 冒頭第一章の開業医の女性医師はタイ社会で一人立ちしているキャリアウーマンの姿を描いている。医師に対して色々と言ってくる患者らを相手に堂々としている。この役に、とても小柄な俳優をあてているのにも意味を感じる。
 また、 医師が処方の軟膏剤と、オーン自家製の民間療法(?)のクリームらしきものを映画はみせる。西洋医学とタイの医学、この対比は、のちの作品「世紀の光」でも出てくる。

 最後に、ミンのこと。実は彼には妻子がいる。ミンが妻に電話するシーンがある。妻子はミャンマーを出国してパプアニューギニアにいるようだ。追っかけ俺もそっちに行くと言っていた。ミャンマーの人々の状況、その一端を垣間見れる。
 映画ラストでは、三人のその後が語られる。

国境近い森へ向かうルンとミン
下1オリジナル・タイトル: สุดเสน่หา|Sud sanaeha
英語タイトル:Blissfully Yours
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン|タイ|2002年|125分|
出演:カノクポーン・トングラム(ルン)|ミン・オー(ミン)|ジェンジラ・ジャンスダ(オーン)|

【アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画】
 これまでに記事にした監督の作品。題名をクリックして記事をお読みください。

 「真昼の不思議な物体」  (2000年)
 「ブリスフリー・ユアーズ」  (2002年)
 「アイアン・プッシーの大冒険」  (2003年)
 「トロピカル・マラディ」  (2004年)
 「世紀の光」   (2006年、日本公開は2016年)
 「ブンミおじさんの森」  (2010年)
 「メコンホテル」  (2012年)
 「光りの墓」  (2015年、日本公開は2016年)

一夜一話の歩き方   直近の記事100 リスト (All Archives)

邦画評だけ見る (直近掲載の50作品)   洋画評だけ見る (直近掲載の50作品)  

TOPページ (映画記事の人気ランキング、新作映画みました、映画の特集)

邦画の題名リスト    ◆洋画の題名リスト

邦画の監督名リストから記事を探す   ◆洋画の国別リストから記事を探す

一話 (京都、旅行、美味など)      書評   美術

クラシック音楽    ポピュラー音楽              




関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/1357-dd2ca520
Listed below are links to weblogs that reference
映画 「ブリスフリー・ユアーズ」  タイ映画  監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン from 一夜一話

Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画 「ブリスフリー・ユアーズ」  タイ映画  監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top