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映画 「昔々、アナトリアで」  トルコ映画  監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

上

1‐0 トルコ東部の、果てしなく続く丘陵風景の中で語られる荒涼としたロードムービー、そして関係者たちの群像劇。

 夜中に田舎道を車が3台、連なって走っている。
 先頭の車には、警部とその部下2人に検視担当医、そして手錠した被疑者が乗っている。死体遺棄の実況見分(及び遺体捜索)の最中なのだ。被疑者は酔って男を殺し、このあたりに埋めたと供述していた。2台目の車には検事とその部下が、続く3台目には軍警察の警官たちと第二被疑者が乗っている。
 先頭車が止まった。被疑者ケナンと警官らが降りて辺りを見回し歩きだす。後続車からも人が降りて、ケナンたちの様子を眺めている。しかし、どうも、ここも埋めた場所じゃないらしい。ケナンたちは車に戻った。
 なにしろ、どこに埋めたかは被疑者ケナンしか知らない。その彼が当時酔っていて記憶がはっきりしない。おまけにこのあたりはどこも似た風景だ。一行はまた夜道を走り出す。これで何か所目だろうか。あてど無い遺体捜索が続く。

上から医師、検事、警部、そして被疑者ケナンと女。
2-0_20160227205532bc3.jpg 映画は、この殺人事件の捜査に関わる警部・検事・医師の職務遂行を時系列に並べて縦糸にしながら、彼らと被疑者の心境をそれぞれ色違いの横糸にして、話に綾を織りなしていく。

 あたりは人家ひとつない全くの闇の世界。移動中の車内では、検事に対する警部たちの愚痴やよもやま話が、疲労感とないまぜになってだらだら続く。
 だが車外に出て、深い闇の冷たい夜気を吸いこむと眠気が覚める。そして東アナトリアの風土が発散する、古代からのオーラ。それは荒々しくも静かな風となって、人の心を雑念から解放し、見えなかった真実を目の前に導き出そうとするかのようだった。

 それ故だから今夜、検事は亡くした妻のことを、医師は別れた妻のことをあらためて考え始めている。被疑者ケナンもやっと我に返り、別れた恋人とふたりの間にできた息子のことを考え始めた。
 警部は、悪党扱いしていたケナンに対し、次第に思いやりに近い心情を示し始めていた。それは一泊した民家で、ケナンが警部にあることを吐露したことが発端だった。あること、それは、ケナンのその元・恋人とは、殺された男ヤシャルの妻だということ。

 ヤシャルを殺したのはたぶん、第二被疑者つまりケナンの実弟のようだ。何故なら、検事が弟を真犯人と睨んでいるらしいことを映画は言う。また実況見分中に、弟が声を押し殺して、自分が殺したとそう叫ぶシーンがあって、ケナンが慌てて制する。だとすると弟をかばうケナンは、死体遺棄のみをしたことになる。  

 ヤシャルの遺体は回収され、医師が勤務する病院に運び込まれ、司法解剖となった。解剖の結果、分かったことは埋められた時点でヤシャルにはまだ息があったこと。つまり、ケナンの弟は打撲を負わせたが殺していない、ケナンが生き埋めにして殺した、ということになる。さて、この事実が分かった医師はこのあとどう行動したのだろうか・・・。
下2 解剖室の前の廊下には、身元確認のため呼ばれたヤシャルの妻とその子がいた。

 157分の上映時間はあっという間に過ぎる。ドラマに大きな起伏はなく、淡々とした語り口だが、決して飽きないダレない。
 この映画、「映像の文筆力」が飛びぬけて素晴らしい。

オリジナル・タイトル:BIR ZAMANLAR ANADOLU'DA
英語タイトル:ONCE UPON A TIME IN ANATOLIA
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン|トルコ、ボスニア・ヘルツェゴビナ|2011年|157分|
脚本:エブル・ジェイラン、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、エルジャン・ケサル|
撮影:ゲクハン・ティリヤキ
出演:ムハンメト・ウズネル|ユルマズ・エルドガン|タネル・ビルセル|フィラット・タニス|エルジャン・ケサル|

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