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映画 「かぞくのくに」  主演:安藤サクラ、井浦新  監督:ヤン・ヨンヒ

上
娘のリエ(安藤サクラ)、息子のソンホ(井浦新)、そして両親。25年ぶりの再会。


 1972年に、北朝鮮へ息子を、ひとりで移住させた家族の話。
 ヤン・ヨンヒ監督自らの体験をもとにした映画です。

 1997年の夏、両親とその娘リエ(安藤サクラ)は、朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)の一室で、息子のソンホ(井浦新)との面会を待っている。その部屋には、ほかにも我が子や兄弟との面会を待っている家族がいる。
 その皆が、病気治療のため、北朝鮮から帰って来たのだ。やがて、付き添いの人間とともにソンホらが部屋に現れた。

1‐0 一時帰国したうちの1人が、一同を前にして声高らかに、北朝鮮からのメッセージを伝えた。
 「偉大なる金日成(キム・イルソン)大元師様と、親愛なる金正日(キム・ジョンイル)将軍様のご配慮のもと、日本を訪問されたご家族(つまりソンホ達)が、病気治療の任務を立派に終えられますよう。 (また) わが祖国の社会主義建設に貢献するため、無事にピョンヤンへ戻れますよう、 祈っております。」

 このあと、それぞれに親子、兄弟が抱き合った。誰もが、北朝鮮へ渡ってからこの間一度も帰国していなかった。ソンホは、実に25年前ぶりの家族との再会だ。面会の後、皆は我が子を連れてそれぞれに自宅へ帰った。3か月間の滞在日程である。
 ソンホが乗り込んだ両親の車は足立区千住にある自宅に向かったが、一台の車が自宅前まで尾行を続けた。北朝鮮の監視であった。その後も監視の車は自宅前を動かなかった。

 病院でのソンホの診断結果は、脳腫瘍だった。もし手術するにしても、3か月間という短い滞在では、術後の手当や観察が途中で終わってしまう。そのあとを北朝鮮の病院が引き継げるのか。国交が無い上に北朝鮮の病院の状況を日本では把握できない。そもそも、北朝鮮の病院で治療不可能とされて来日しているのだから、医師もソンホの両親もリエも、どうすることもできない。

 一方ソンホは、幼なじみの在日コリアンの友人たちと会えた。ホンギ、ジュノ、チョリそしてスニ。楽しい一時を過ごせた。ソンホにとって特に、スニに会えたことは嬉しかった。なにしろ25年前、当時このふたりは16歳、淡い恋仲だったのだ。ソンホは北朝鮮で結婚し三人の子がいる。スニも医師と結婚している。彼女は夫に言って、もっといい病院を探すように頼むと言ってくれる。

2‐0 さて、なぜソンホは16歳にして北朝鮮へ移住することとなったのだろう。
 現在、彼の父親は、朝鮮総連の東京都本部の副委員長だ。25年前、父親はすでに幹部候補だったのだろう。その当時、朝鮮総連は「北朝鮮は豊かで理想の国」だと盛んに喧伝し、在日コリアンの移住を誘った帰還運動※というのがあった。朝鮮総連の父は、職務柄からも、この運動に16歳の息子を託したのだ。朝鮮へ発つ間際に、ソンホ少年は、叔父に言ったらしい。「僕が行かないと父さんに迷惑がかかるかな・・・」と。 
 しかしその後、彼の国は誰が何処から見ても、豊かで理想の国とはならなかった。

 一時訪日してまだ間もないある日、ソンホら訪日組全員に、突如、帰国命令が出た。みな、治療も始まったばかりである。
 ソンホはリエに言う。「いつも、こうなんだ。突如、命令が出て絶対服従。楽だよ、自ら何も考えなくて済む、思考停止の人生だ。」
 リエは、兄が帰って来た嬉しさと同時に、北朝鮮への恨みの気持ちが膨らんでいた。彼女は、家の前に止まっている車に近づき、乗っている監視の人間に毒づく、そういうシーンがある。また、兄から工作員にならないかと言われるが、そういうことを兄に言わせる北朝鮮が大嫌いと罵った。
 一方、ソンホは父親からの何かしらの言葉を待っていた。だが結局ソンホは、父の口から何も聞くことは出来なかった。また、ソンホの気持ちを代弁する叔父も、兄であるソンホの父親に意見を言うが、父親はだんまりを通した。
 さて、ソンホの父親は朝鮮総連の事務所で、北朝鮮の人間に対して、急な帰国命令を非難した。私は東京都本部の副委員長だが、ひとりの父親でもあると。これに対し、北朝鮮の男は言い返した。帰れば、私にも子供がいる。(命令に逆らって日程を延ばせば、私がどういうことになるのか理解しろ) 誰もが絶対服従なのだ。
 ソンホの母親(宮崎美子)は、帰る息子にスーツ・Yシャツ・ネクタイ・靴など一式を用意した。あわせて、母親は、監視の北朝鮮の男にも同様の一式を用意していた。息子をよろしく、という願いであった。
 
 映画冒頭で、次の一文が映し出される。
 1959年から20数年にわたり、約9万人以上の在日コリアン(在日韓国・朝鮮人)が北朝鮮へ移住した。
 「帰国者」と呼ばれる彼らが日本へ戻ることは困難を極めている。

 この映画のテーマは重大で広く知られるべきものだ。ただ、劇映画としては可もなく不可もなくである。
 2004年製作のドキュメンタリー映画に、三女が自ら進んで北朝鮮へ移住した、在日コリアン家族の記録がある。映画 「HARUKO ハルコ」 だ。母親チョン・ビョンチュン(金本春子)は済州島で生まれた87歳。その息子で在日二世の長男は朝鮮総連の映画カメラマンだった。在日コリアンの家族の歴史が分かる映画です。こちらから一夜一話の映画感想記事をご覧ください。

 なお、吉永小百合の主演で、浦山桐郎が1962年に監督した映画「キューポラのある街」は、帰還運動に対して、余りにも無批判すぎる。一夜一話では、今後もこの映画を取り上げないと思う。
母が用意したスーツを着て、家を出るソンホ。
右から、リエ、叔父、母、そして奥に父親が。
下 ※在日コリアンの帰還運動
 在日コリアン、つまり在日韓国人と在日朝鮮人を募って、北朝鮮へ集団移住あるいは永住帰国しようとさせた運動のこと。1959年から20数年に渡って行われた。
 
監督・原案・脚本:ヤン・ヨンヒ(梁英姫)|2012年|100分|
撮影:戸田義久
出演:安藤サクラ(リエ)|井浦新(兄のユンソンホ)|津嘉山正種(父)|宮崎美子(母)|諏訪太朗(叔父のテジョ)|ヤン・イクチュン(ヤン同志)|京野ことみ(スニ)|大森立嗣(ホンギ)|村上淳(ジュノ)|省吾(チョリ)|ほか

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