Home > 邦画評だけ見る 直近50作 > 映画 「おゆきさん」  主演:和泉雅子、笠智衆   監督:鍛冶昇

映画 「おゆきさん」  主演:和泉雅子、笠智衆   監督:鍛冶昇

上
駅へ迎いに出たおゆきは、平山のあとについて歩く。初対面の二人。(多摩川の土手沿いの道)


 和泉雅子主演の青春映画だが、笠智衆の起用によって深みが出て、大人の映画となった。
 つまり、親の気持ちが分からないと、魅力の半分しか見えてこない。

 おゆき(和泉雅子)は両親を早くに亡くし、深川に住む口うるさい遠縁の叔母(武智豊子)に育てられた。中学を卒業すると、おゆきはすぐに働きに出た。
 今回の「お手伝いさん」の仕事は、おゆきにとって初めてのことであったが、人の紹介で田園調布のお宅に住み込みで働くこととなった。
1-0_20160326130606ef6.png その家のあるじは、大学教授の平山良吉(笠智衆)。妻の正子と一人娘の洋子(松尾嘉代)の三人家族。一家は円満である。家族は家の中では平山をタタと呼んでいる。ただ、平山が頑固なために、この家にはお手伝いさんが居つかない。今度のお手伝いさんはどうだろうかと、毎度のことながら妻と娘は気をもんでいる。

 平山宅の最寄駅、東急東横線・田園調布駅を下車してきた平山を、迎えに出たおゆき。映画はこのシーンから始まる。
 明治生まれの頑固者の平山は、娘の洋子が結婚相手を勝手に決めたことに憤慨している。前もって平山に相談すら無かったのだ。つまり洋子は現代的。妻の正子は夫の気持ちを理解する一方、娘の気持ちも分かる。もっとも平山も仕事柄、日頃、助手や院生らの若いのと付き合っているから、若い女性の気持ちがまったく分からないではないが、父親としてとなると事は違う。

2-0_20160326131952cd9.png そんななか、新しいお手伝いさんのおゆきが住み込みで働き始める。
 珍しいことに、初対面の時から平山は、おゆきとは相性がいいようだ。おゆきの方でも、平山に違和感はなかった。

 ちょうどそのころ、平山にとっては、娘が結婚して自分から離れていくという男親ならではの哀愁、その前触れが平山の心をよぎり始めるころであった。もちろん、そんな心の内は家族にも見せない。(これを演じてみせる笠智衆) そんな平山は、おゆきが持つ少し古風なたたずまいをこころよく感じていた。

 おゆきは活発で、天真爛漫な現代的女性だが、平山が感じたその快さとは、田園調布のような郊外には無い、いささか古風だが下町情緒残る深川、その空気を吸って育ったおゆきが発する粋、とでもいうようなものなのかもしれない。
 また、おゆきはおゆきで、親を知らぬ故に父親というものへの憧れから、平山に父親の匂いを感じとっていた。
 いつしか平山とおゆきの間に、父娘に似た感情が行き来し始めた。平山はおゆきを、大学の野球大会や歌舞伎や食事に連れて行った。正月には日本髪を結わせてやった。

 しかし、おゆきは父親に甘える経験が無い。また、父親に口答えする経験もない。結婚のことで平山と娘の洋子が不和になってることに口を挟んだおゆきは、出過ぎたことと平山から平手打ちを食らった。その瞬間、おゆきは経験したことのない感情を覚えた。それは赤の他人が言い過ぎたことの自戒はさることながら、平手に二人目の娘に対する父親を感じて、おゆきはハッとしたのである。なぜなら、平山は他人に暴力をふるう類いの人間ではないことを、おゆきは知っているからだ。もちろん、平山はすぐに謝った。謝ったが、思わず手を出してしまった事を心の中で整理できずに動揺する平山であった。

3-0 ところが、ここに水を差すことが起きた。叔母がやって来ておゆきに、あの家のお手伝いさんを辞めなと言う。平山との関係をうわさする話を聞いたとのこと。
 それは、確かに大学の助手らが冗談で話されていたことではあったが、彼らも本意ではない。助手らも、美人のおゆきに憧れていた。

 そして、映画はいくつものエピソードを加えながら、洋子は無事、彼氏と結婚し、おゆきはというと、平山の願いから、なんと平山家の養女となったことを描く。さらには、おゆきは平山の研究室の助手・川田という男と相思相愛になり結婚が決まった。めでたしめでたし。
 登場人物たちの人情を細やかに描いた映画です。

平山とおゆき
下



監督:鍛冶昇|1966年|79分|
原作:塩田良平|脚色:倉本聰|撮影:藤岡粂信|
出演:おゆき・祐紀子(和泉雅子)|平山良吉教授(笠智衆)|その妻・平山正子(小夜福子)|その娘・平山洋子(松尾嘉代)|川田・・おゆきを好きになる男、院生(新克利)|碌ちゃん・・花屋で働く男、おゆきの幼なじみ(松山政路)|おゆきを育てた伯母・・深川に住む(武智豊子)|木所・・平山洋子の結婚相手(平田大三郎)|木所の父・・北鎌倉に住む(高野誠二郎)|木所の母(原恵子)|川田の父(若宮忠三郎)|みどり・・川田の婚約者だったが交通事故で死亡(瞳美沙)|本吉・・おゆきを紹介した人(山田禅二)|佐伯教授(浜村純)|阿部教授(小泉郁之助)|村田教授(伊藤寿章)|山内・・助手か院生(野村隆)|吉田・・助手か院生(浜口竜哉)|後藤・・助手か院生(平塚仁郎)|ほか


一夜一話の歩き方   直近の記事100 リスト (All Archives)

邦画評だけ見る (直近掲載の50作品)   洋画評だけ見る (直近掲載の50作品)  

TOPページ (映画記事の人気ランキング、新作映画みました、映画の特集)
叔母に言われて、平山家を離れたおゆき。(深川にて)
邦画の題名リスト    ◆洋画の題名リスト下2

邦画の監督名リストから記事を探す   ◆洋画の国別リストから記事を探す

一話 (京都、旅行、美味など)      書評   美術

クラシック音楽    ポピュラー音楽


関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/1388-3e1abebb
Listed below are links to weblogs that reference
映画 「おゆきさん」  主演:和泉雅子、笠智衆   監督:鍛冶昇 from 一夜一話

Home > 邦画評だけ見る 直近50作 > 映画 「おゆきさん」  主演:和泉雅子、笠智衆   監督:鍛冶昇

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top