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映画 「女経」 (じょきょう)  主演:若尾文子、山本富士子、京マチ子  監督:増村保造、市川崑、吉村公三郎

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 「女経」では、3つのお話が語られています。
 それぞれのお話は1話完結で、それぞれの主演女優は若尾文子、山本富士子、京マチ子と豪華競演。
 その上、増村保造、市川崑、吉村公三郎の3人の監督の腕比べを楽しむ映画でもあります。

 どの話も、女道楽な男たちが出会った女性たちを、コミカルに時にしっとり、場面によってはシリアスに描いています。
 女は男にだまされ、男は女にいい様ににされる。もちろん、この逆もあり、またどちらでもあり、どちらでもないこともあります。
 さあ、軽快な音楽に乗って、さっそく第1話が始まります。

 制作年:1960年|大映|101分(総時間)|
 原作:村松梢風|脚本:八住利雄 (第1話・2話・3話とも)|

「耳を噛みたがる女」   主演:若尾文子、川口浩

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 紀美(若尾文子)の家は、隅田川の川岸につないだ木造船だ。
 ここから紀美は銀座のキャバレーへ出勤している。父親は飲んだくれで、一家4人の生活は紀美が支えている。
 紀美の生きがいは、金を蓄えること。、紀美は店で目星を付けた客たちに、愛人っぽく色気を使い、身体は使わずに金を貢がせ、私腹を肥やしている。こんな手練手管でせっせと巻き上げた金で、紀美は兜町で株を買う。

 紀美は、店の常連客・正巳(川口浩)を商売抜きで好き。
 正巳は社長の息子でただいま後継者として修行中の身。正巳も紀美にまんざらでもない。ないが、正巳は明日、親の言いつけで親が決めた女性と仕方なく結婚する。
3‐0 そして独身最後の夜を楽しみたい正巳は、半分、友達にそそのかされて、紀美とホテルで一夜を過ごした。
 そんな事とはつゆ知らず、紀美は幸せいっぱいだった。正巳に、心の内のいろんな事をすなおに話せた。

 だが翌朝、目覚めると正巳がいない。言いようのないわびしさを抱えてホテルを出、紀美は店の同僚の五月(左幸子)のアパートに転がり込む。紀美はそこで、五月宛には来ていた正巳の結婚式の招待状を見ることになる。むなしい気持ちで紀美は五月のベッドで寝入ってしまう。

 だが、なんとそこへ、正巳が現れた。
 正巳は遅ればせながらこの段になって気付いたのだ。「あとにも先にもあんなに惚れてくれた女は今までいやしない。俺は紀美が本当に好きになったのかもしれない」 これを聞いた友人はすかさず言う。「おい、お前、今日、結婚するんだぜ」 
 友達が制するのをきかず正巳は、このアパートへ駈け込んで来たのだ。
 「何しに来たのよ」 「結婚しよう」
 突然、紀美が笑い出す。「どうしたんだよ」
 「嬉しいのよ、とっても嬉しいのよ。だけどね・・・。ウソなのよ ゆうべ言ったこと、みんなウソなのよ」
 「お金ちょうだい。ホテルを逃げ出したまんまで済むと思ったら大まちがいよ」 
 「(結婚しようって)本気で言ってるんだぜ。俺を嫌いなのか」
 「生活力の無い気まぐれなお坊ちゃん、今は若くてちょおとハンサムだけど・・・」
 「きみはウソつきだね」 「だまされて悔しい? きっと育ちが悪いのよね、アタシ」

 「あばよ」の捨てぜりふを残し正巳は出て行った。
 しばらくして戻って来た五月に向かって、紀美は言う。「アタシと結婚したいんだってさ、どう?この腕」
 「馬鹿だね、あんたって人は」 
 「アタシはダルマ船育ちよ。失恋なんてヘッチャラ、風邪ひいたようなもんよ。さて今夜からまたモリモリ稼ぎます」

 かつて紀美は、式の日取りが決まっていながら(初恋の彼に)ふられた経験があった。だから正巳の結婚相手に同じ思いをさせたくない、と紀美は五月に言うが・・・。
 ここで観客は、紀美が言う事をまともに受けちゃ、話が薄っぺらくなります。映画がいいたいことは、もう少し複雑ですね。

監督:増村保造|撮影:村井博|
出演:若尾文子(紀美)|川口浩(会社社長の跡取り息子・正巳)|左幸子(紀美が勤めるキャバレーの同僚で友人・五月)|田宮二郎(正巳の友人・春本)|ほか


「物を高く売りつける女」   主演:山本富士子、船越英二

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 深いスランプから脱せずに苦しむ流行作家の三原(船越英二)は、世間を嫌い鎌倉に身を潜めていた。
 映画はいささか幻想的なシーンから始まる。
 人影の無い鎌倉の海岸で、三原は悲しげな風情の妖艶な女と出会う。女は爪子(山本富士子)といい、後日、三原は女の屋敷に招かれた。どうやら一人住まいらしい。がらんとした古風な家だ。
 座敷に通された三原は、風呂をすすめられる。湯船に浸かったころ、がらりと風呂の引き戸が開いて、驚いたことに爪子が入って来て、三原の背中を流してくれた。
 風呂から出てさっぱりしたところで、三原は爪子から、この屋敷の処分に困っている、この家を買ってくれないかと言われる。金にさほど不自由しない三原は、言われるままの金額で買うことにした。それからまもなく、三原は前金を持ってふたたび屋敷を訪れ、爪子が差し出す契約書に押印した。三原は、これでこの爪子を屋敷ごと買えたと思っていた。

2-0-1.png ところが数日して、屋敷を訪れた三原は玄関先で、爪子からの手紙を発見する。しばらく東京へ行っていると書いてあった。
 家はもぬけの殻である。三原はハッとした。女狐にだまされた!

 場面は替わって東京都内。爪子は馴染みの不動産屋の店先にいた。
 しかるべき仲介手数料を稼いだ爪子は自宅に帰り、商売道具である高価な着物の手入れをしていた。
 そこへ、なんと三原が忽然と現れた。驚く爪子。
 三原は爪子に詰め寄り、言った。「君と結婚すればノイローゼにもならないし、小説の種もつきない」(なるほど!)
 そして、三原はにやりと笑った。爪子も微笑み返すのであった。

 さて、爪子の居場所を三原はなぜ分かったのか、それは作家の好奇心。詳しくは映画をご覧ください。

監督:市川崑|撮影:小林節雄
出演:山本富士子(土砂爪子)|船越英二(流行作家の三原靖)|野添ひとみ(ドミノ)|菅原謙二(不動産屋の大石)|潮万太郎(不動産屋の百々)|大辻伺郎(爪子と一緒に鎌倉に付いて行った不動産屋の使いっぱしりの男)|ほか


「恋を忘れていた女」   主演:京マチ子

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1-0_20160410191136ce2.jpg お三津(京マチ子)は先斗町の売れっ子芸妓であった。
 三条大橋の西詰、三条通り沿いあたりにある、碇家という老舗旅館の息子と恋仲になり、お三津は碇家の女将となった。
 しかし、早くに夫に先立たれたお三津は、碇家に居づらくなっていた。お三津の苦労はここから始まる。
 碇家のあるじで義父の五助(中村鴈治郎)は、お三津の身体と引き換えに碇家に留まることを認め、お三津に碇家の経営をさせた。(と、ここまでは映画の要所要所で都度分かる事柄)

 さて、それからお三津の才覚が花ひらく。その当時、落ち目であった碇家を、修学旅行生相手の宿として建て直す一方で、木屋町にバーを開き、先斗町でお茶屋を営むまでになった。しかし、商いに没頭するお三津は、いつしか恋を忘れた女になっていた。

 昔からお三津とそりの合わない夫の妹・弓子(叶順子)が、突然にやって来て、兄に預けた金があると言って受け取りに来た。結婚資金にしたいらしい。だが、お三津は体よく素気無く断った。これに怒った弓子はお三津対し、芸者あがりで碇家に居座った女、金儲け一筋で女を忘れた女などと口汚く罵った。

 ある日、お三津の技芸時代の彼氏から、会いたいと電話があった。お三津は、懐かしさと好奇心とでも言えばいいか、そんな気持ちで、木屋町の自分の店「ちゃいか」で兼光と会った。会ってすぐ、お三津は兼光の真意が分かった。金の無心であった。と、その時、京都府警が店に乗り込んできた。兼光は詐欺で追われていたのであった。
 木屋町から脇へ入った石畳の路地で、お三津は連行されて行く兼光の後姿をいつまでも見つめていた。

 このところ、身のまわりで、立て続けにいろんなことがあって、お三津は少々疲れていた。そんなある日、弓子が再び来て、東京へ帰ると言う。そして、弓子が金の話を言い出すだろう前に、お三津はさっぱりした表情で、まとまった金を弓子の前に差し出した。
 「なあ、弓子はん。あんさんらにあやかって、うちももう一遍、探してみよう思う。女のほんまの幸せっちゅうもんを。もう手遅れかもしれまへんけど・・・」と照れてみせるお三津であった。※↓

監督:吉村公三郎|撮影:宮川一夫
出演:京マチ子(お三津)|中村鴈治郎(亡き夫の父親・五助)|叶順子(亡き夫の妹・弓子)| 川崎敬三(弓子の恋人・吉須)|根上淳(お三津の芸妓時代の恋人・兼光)|ほか


 さあ、三作ならべて思うに、まずは、第2話の出来が良くない。女狐に化かされている最中が、もっさりした舞台演劇風ないしは時代劇風で、都内に場を移してからは、軽いTVドラマ風。この落差は、分かりやすさを狙ったものだが、狙っただけに、余りに見え透いたものに仕上がった。もちろん、山本富士子ファンにとっては、兎に角、いい映画なのだろうが。
 次に、第3話。これは、京マチコの一人芝居と言っていいくらいだ。他の2作が幾分コミカルなのに対し、第3話はシリアス。シリアスを好む向きにはいい映画になるのだろう。ただ、義妹の弓子とのセリフに、映画が語りたいことが直截に出てしまっていて、身もふたもない。例えば、東京へ発つ弓子を前にしての京マチ子のセリフ※↑。ま、脚本に問題ありですね。
 しかしともあれラストシーン、京マチ子がひとり三条大橋に佇む、これだけで最後のシーンを飾れるのは素晴らしいにつきる。
 よって結局、第1話が一番いいってことになる。しんみりとコミカルのブレンド度合いがほど良い。ただし、3作の中では少し難しい展開。いささかの映画読解力がないと、映画の真意を誤解する。ちなみに川口浩のボンボン風が生きている。

当時の「女経」のポスター、こんな売り方だったらしい。
下2
下 話は変わるが、第3話のワンシーン(右)について。この場所は、鴨川の西岸沿いの道から北を向いて、三条大橋の西詰を見ている。京マチ子はここを歩いて、その先を左に曲がって(三条通りに出て)碇家へ行く。かつて、京阪三条駅周辺から三条大橋を渡って、河原町通りまで行かない三条通りの北側周辺あたりにかけて、修学旅行生を主に受け入れる旅館がいくつもあった。ちなみに、この写真の奥の店は、今はスタバになっている。
 最後に、3作のサブタイトル「耳を噛みたがる女」「物を高く売りつける女」「恋を忘れていた女」、これはあまりにダサい。事務屋が事務的につけたんだろうか。興ざめだ。




 【ピックアップ】  本作の出演者および監督が関係する映画を、過去の記事からピックアップしてみた。

 ◆「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」(1959年)・・・若尾文子、京マチ子、野添ひとみの出演で、監督:市川崑
 ◆「浮草」(1959年)・・・京マチ子、若尾文子、中村鴈治郎、川口浩の出演で、監督:小津安二郎  【撮影:宮川一夫】
 ◆「偽れる盛装」(1951年)・・・京マチ子主演で、監督:吉村公三郎  【この映画は「女経」第3話に近い話です】
 ◆「夜の河」(1956年)・・・山本富士子主演で、監督:吉村公三郎  【第3話と同様に撮影は宮川一夫です】
 ◆「くちづけ」(1957年)・・・野添ひとみ、川口浩出演で、監督:増村保造

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