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映画 「熱病」  ポーランド映画  監督:アグニエシュカ・ホラント(アニエスカ・ホランド)

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 19世紀末から20世紀初めにかけての、ポーランドの政治活動家の悲話。
 本作は単なる歴史ドラマではなく、映画製作当時(1980年)つまり共産主義時代のポーランド政治体制下で、抑圧を受け翻弄される市民を、本作の登場人物たちになぞらえて、強権体制を批判する映画でした。

 19世紀末、その頃、ポーランドはロシア・プロイセン・オーストリアの3国によって分割統治されていました。
 そのうちのロシア領ポーランドの社会主義運動家によって1892年にパリ集会で結成された政党、ポーランド社会党の党員たちがこの映画の主役です。党員には、知識人も田舎の農民も乱暴な悪党もいて、その実態は玉石混淆でした。

 彼らはポーランドの独立回復が最大の目標でしたが、ことは遅々として進みません。彼らは体制側の高官を標的とした過激な行動を模索します。ポーランド社会党は、ヨーロッパ諸国の支援が得られず孤立し資金もありません。手作りの爆弾をひとつ仕上げ、これを綺麗な箱に入れ携える変装した男女の党員は、高官やポーランド人富裕層が集まるパーティーに紛れ込みます。しかし、標的にした軍人は自らの病のためパーティー控室で急死してしまいます。よって爆弾は使用されませんでした。

 さて、この一個の手製爆弾と時代の急変がこの映画の話の縦糸となります。横糸に用意される話には、当時の政治の不安定さを背景にした農民や商人たち庶民の姿をベースに、党員たちの様々な出自、スパイや密告、党内エリートを目指す党員、体制側と党員の二束のワラジの利益追求現実派や悪党まがいの党員、それらの男たちを粛清しようとする孤高の男、そして党員同士の悲恋などがあり、話は進みます。

 その後、ポーランド社会党は2派に分裂し政治活動は衰退します。機関紙も発行されず、連絡網も途絶えます。党に対し誠実な田舎のある党員は、党の分裂すら知らずに爆弾を抱えて党本部のあるワルシャワに出てきます。しかし、ワルシャワの空気はかつてとは違っていました。
 この愚直なまでの男は、体制側に通じた党員らしき男に騙されて警察に突き出され、爆弾を取りあげられ刑務所に放り込まれます。そしてまもなく死刑となってしまいます。
 一方、爆弾をパーティー会場に持ち込んだ女性党員はその後、気が振れてついに精神病院に入れられ、院内の治療でさらに廃人となってしまいます。
 その女性と同伴してパーティー会場にいた男性党員は、党内エリートを目指し無慈悲な官僚的な人間になって行きます。

 さて映画ラスト近く、この男性党員は体制側についたのでしょうか、上位の階級らしい軍服を着ています。爆弾を取りあげられたあの田舎出身の男がいた刑務所の塀の外、河のほとりでこの軍服の男は、例の手製爆弾の爆発処理を始めます。当然ながら、彼は手慣れた手つきでこの爆弾を扱います。そして勢いよく投げた爆弾は、河の中央で爆発し爆音とともに大きな水柱が立ちました。男はそれをじっと見つめているのでした。(終)

 映画の作りとしては、いささかたどたどしいですが、最後まで押し通す力があります。
 本作がポーランドの近現代史を学ぶきっかけになるかもしれません。
 ポーランドは強国に翻弄された国でした。 そしてユダヤ人問題もあります。「熱病」ではこの問題は取り上げられていませんが、2013年のポーランド映画「イーダ」は、ポーランド人によるユダヤ人虐殺事件が主題でした。「イーダ」の記事はこちらからどうぞ。
 
オリジナル・タイトル:Goraczka
英語タイトル:Fever
監督:アグニエシュカ・ホラント|ポーランド|1980年|118分|
原作:アンジェイ・ストルク|
出演:バルバラ・グラボフスカ|アダム・フェレンツァ|ボグスワフ・リンダ|オルギェルト・ウカシェヴィッチ|ズビグニエフ・ビエルスキ|

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