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最近読んだ本。 「二大政党制 批判論」、「日本人の境界」

  • Posted by: やまなか
  • 2016-07-10 Sun 06:00:00
  • 書評
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 アメリカ、イギリスなど欧米諸国や日本の政治を見ていて、一体どうなってんだと歯がゆく思う。
 そもそも「政党って何よ?」 そう思いながら「二大政党制批判論」を読んだ。
 歯がゆく思う、その理由が少し分かった気がした。

 また一方、沖縄が抱える問題をちゃんと勉強したいと思う。
 でも、沖縄についての言論は多々あるが、論ずる視野が狭いせいか、その論点は理解できても、「でも、そもそも沖縄問題って何?」という問いに対しては、しっくり来ない。まさしく靴底から足の裏を掻く、感じ。
 そこで、小熊 英二の「日本人の境界」を読んだ。分厚い本だが、はっきり筋道が通っていて実に明快! ウーンこれは名著。


「二大政党制批判論  もうひとつのデモクラシーへ」    吉田 徹 (著)  光文社新書

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 本書は二大政党制への批判の書であるが、政党と政党政治の果たしている役割が、世界的にみて低下しているという認識のもとに、政党は何のためにあるのか、その果たすべき役割とは何なのか、を明らかにしている。
 二大政党化と二極化の進展は、社会の両端と底辺に位置する有権者を置き去りにする。極右やポピュリズム政党の台頭についての記述もある。
 また、欧米の政党政治の実情とともに、日本の政党政治や選挙制度のこれまでの流れにも言及している。2009年発行の書だが、今でも読める。投票するにあたってのノウハウを教わるよりも、まずは本書のような基本を理解したい。
  
【目次】
第1章 政党はどのような存在なのか
    【要旨】 政治においてそもそも、なぜ、政党という存在が必要とされることになったのか、国家の中での政党政治がどのような意味を持つのか。
第2章 政治改革論と「政治工学」の始まり
    【要旨】 二大政党制論が90年代の政治改革の流れの中で、どのように浮上したのかを当時の政党政治の変遷とともに回顧する。(本書で言う「政治工学」とは人為的に制度をいじって、それだけで政治が良くなるという発想方法)
第3章 二大政党制の誤謬
    【要旨】 二大政党制は多くのデモクラシーのひとつに過ぎないことを、様々な理論や各国の事例から論証する。敵対的な二大政党制は新自由主義と親和的である側面を指摘する。
第4章 歴史の中の政党政治 ― なぜ社会に根付かないのか
    【要旨】 政党政治や政党制が、どのように形成され実践されているかを欧米諸国の経験や実情を素材に、日本の明治大正期の政党政治の流れも視野に入れ論じる。
第5章 もうひとつのデモクラシーへ
    【要旨】 以上のように二大政党制の弊害を確認したうえで、新たなモデルはあるのかを現代民主主義理論を軸に考える。



「 「日本人」の境界  沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮   植民地支配から復帰運動まで」  小熊 英二 (著)  新曜社

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 「日本人」とは、どこまでの範囲の人びとを指す言葉であったのか。これが本書の第一の問いである。
 その「日本人」の境界は、どのような要因によって設定されてきたのか。これが本書の第二の問いである。
 近代日本の境界地域、すなわち沖縄、アイヌ、台湾、朝鮮などに対する政策論を以上の視点から検証し、「日本人」および「日本」という概念を再検討すること。これが本書の主題である。(序章の冒頭から引用)

 著者は、770ページほどの紙面のほとんどを使い、綿密に一次資料にあたり丁寧に検証している。(下記の目次参照) これを読む過程で、読者は江戸期以来の近代日本の支配地域拡張の政策を学び、そのなかで、それぞれの地域での「日本人」の「境界」が揺れ動くことを知る。

 戦前、朝鮮人や台湾人も、沖縄やアイヌの人々と同様に日本国籍を持っていて、法的には「日本人」であった。しかし同時に、日本国籍を持つ朝鮮人、台湾人、沖縄やアイヌの人々が、平等に「日本人」として遇されたわけではない。法制面以外での一般における差別が激しかったことは言うまでもなく、制度的にも一般的にも差別される「日本人」、つまり「日本人」であって「日本人」ではない存在の人々がいた。つまり「日本人」の境界に位置する人々だ。

 第18章「境界上の島々 ~外国になった沖縄」の冒頭で著者は、本書の主題である領土変更に伴う「日本人」の境界の問題として、とりわけ「日本からの分断と復帰という経過をとった沖縄が、もっとも大きな(主題の)対象だ」と述べている。
 沖縄は米軍の軍事目的のための暫定的占領であった。米軍にとっては、沖縄を併合してアメリカ領土にすれば、沖縄住民に「アメリカ人」としての人権を与えなければならない。信託統治をするとすれば、中ソの反対で実現困難であるだけでなく、国連の規定に縛られる。日本に返還すれば、米軍の軍政は行えない。結局、暫定措置というかたちで軍政を継続し、<アメリカであってアメリカでない土地>としてこそ、米軍のフリーハンドが獲得できた。(サンフランシスコ講和条約) ここからも、また始まる、「日本人」であって「日本人」ではない占領下の沖縄の問題も、丁寧に検証される。

 ちなみに、近代日本において、支配地域拡張の政策担当者や論者たちが、先行する欧米に比べて日本の帝国主義の後発性を強烈に意識していたことが、境界地域に対する政策に大きな影響を与えていたことを知ることができる。例えば、支配にかかる経済コストの軽視、地域からの収益よりも国防重視の姿勢、原住者の絶対的な忠誠心の確保などの大日本帝国の支配地域に対する政策の特徴を、欧米の植民地経営と比較している。
 著者の多面的な探究の姿勢や、その他の膨大な検証内容につては、下の目次をたどるだけでも理解できると思う。
 沖縄だけではなく、アイヌ、台湾、朝鮮に関する問題に突き当たった時も、その都度、また読み返したい本だ。

【目次】
序章   「日本人」の境界変動/「日本」と「植民地」、そして「欧米」/「包摂」と「排除」/
      「政治の言葉」と「表現されえないもの」

(Ⅰ)
第1章 琉球処分  「日本人」への編入
      「国内の人類」への統合と排除/外国人顧問の提言/「日本人」としての琉球人/歴史をめぐる争い
第2章 沖縄教育と「日本人」化  同化教育の論理
      旧慣維持と忠誠心育成/「文明化」と「日本化」/歴史観の改造
第3章 「帝国の北門」の人びと  アイヌ教育と北海道旧土人保護法
      国境紛争から「日本人」へ/〈日本人の住む土地〉/宣教師の脅威/「漸化」という論理/
      北海道旧土人保護法の成立

第4章 台湾領有  同化教育をめぐる葛藤
      台湾統治の混迷/外国人顧問の同化反対論/「殖民地」か「非殖民地」か/国防重視論と対欧米意識/
      「日本人」化教育の開始/巻き返す非同化論/「漸進」という折衷形態

第5章 総督府王国の誕生  台湾「六三法問題」と旧慣調査
      〈事実上の立法権〉/〈台湾自治王国〉構想/折衷としての「法律でない法律」/議会側の反発/
      「日本人」の意味/後藤新平の台湾王国化/根拠不明の独裁支配

第6章 韓国人たりし日本人  日韓併合と「新日本人」の戸籍
      踏襲された折衷案/「漸進主義」の教育/国籍における排除と包摂/同化言説の完成
(Ⅱ)
第7章 差別即平等  植民地政策学と人種主義
      フランス同化主義と啓蒙思想/ル・ボンと同化主義批判の台頭/「生物学の原則」/「自治」と「離隔」/
      「自主」のジレンマ/二つの差別の間

第8章 「民権」と「一視同仁」  植民地と通婚問題
      「一視同仁」の高唱/「植民者民権」の出現/通婚と「日本人」
第9章 柳は翠、花は紅  日系移民問題と朝鮮統治論
      錯綜する論壇の統治批判/デモクラットの文明的同化主義/大アジア主義者の分化多元主義/
      自由主義者の分離主義/「民族問題」隘路

第10章 内地延長主義  原敬と台湾
      文明化としての「日本人」/「日本」編入のモデル/総督府の抵抗と「漸進」/頓挫した統治改革
第11章 統治改革の挫折  朝鮮参政権問題
      総督府による統治改革/自治か参政権か/〈総督府の自治〉の浮上
(Ⅲ)
第12章 沖縄ナショナリズムの創造  伊波晋猷と沖縄学
      沖縄にとっての同化/二重のマイノリティ/防壁としての同祖論/沖縄ナショナリズムと同祖/
      排除と同かの連鎖/啓蒙知識人として/挫折した沖縄ナショナリズム

第13章 「異身同体」の夢  台湾自治議会設置請願運動
      権利獲得としての「同化」/多様性への願望/植民政策学の読み換え/キリスト教徒とアジア主義者/
      多元的な日本、多元的な台湾/「憲法違反」の限界/引き裂かれた請願運動

第14章 「朝鮮生まれの日本人」  唯一の朝鮮人衆議院議員・朴春琴
      「日本人」としての権利/内地在住朝鮮人の参政権/「我等の国家」への屈折/「一視同仁」の壁/
      虚像の「日本人」

第15章 オリエンタリズムの屈折  柳宗悦と沖縄言語論争
      オリエンタリズムとしての「民芸」/沖縄側の猛反発/「西洋人」としての方言擁護/「日本人」の強調/
      沖縄同化の最終段階

第16章 皇民化と「日本人」  総力戦体制と「民族」
      「朝鮮」の否定/民族概念の相対化/平等と近代化の期待
第17章 最後の改革 ― 敗戦直前の参政権付与
      境界を揺るがす三要因/遺跡問題の浮上/超えられなかった臨界/「日本人」という牢獄
(Ⅳ)
第18章 境界上の島々  「外国」になった沖縄
      「少数民族」としての沖縄人/「琉球総督府」の誕生/「アメリカ人」からの排除/
      「日本人」であって「日本人」でない存在

第19章 独立論から復帰論へ  敗戦直後の沖縄帰属論争
      沖縄独立論とアメリカ観/保守系運動としての復帰/帰属論議の急浮上/揺らぎの中の帰属論
第20章 「祖国日本」の意味  1950年代の復帰運動
      人権の代名詞としての「日本人」/親米反共を掲げた復帰運動/日本ナショナリズムの言葉
第21章 革新ナショナリズムの思想  戦後知識人の「日本人」像と沖縄
      「アジアの植民地」としての日本/「健全なナショナリズムの臨界」/単一民族史観の台頭/
      「植民地支配」から「民族統一」へ/民族統一としての琉球処分/非難用語となった「琉球独立論」

第22章 1960年代の方言札  戦後沖縄教育と復帰運動
      復興活動としての復帰/方言札の復活/「日の丸」「君が代」の奨励/憧れと拒絶の同居/
      「祖国は日本か」/政治変動と転換と

第23章 反復帰  1972年復帰と反復帰論
      琉球独立論の系譜/復帰の現実化/「仮面」への嫌悪/独立論との距離/「否」の思想

結論   後発帝国主義としての特徴/国民国家における包摂/公定ナショナリズム/「脱亜」と「興亜」/
      分類外の曖昧さ/被支配者の反応/有色の帝国


あとがき

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