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映画 「ミリオンダラー・ホテル」   監督:ヴィム・ヴェンダース

上
トムは、屋上の端へ向かって走りながら、手を振った。エロイーズ、さようなら。


1-0_201608051638180dc.jpg ロサンゼルスの街中にある、ミリオンダラー・ホテル。
 ここに住む長期滞在者たちは皆、世間から逃避した人々。
 老人もいれば若いのもいる。自称画家でアメリカ先住民の男、自称5人目のビートルズ・メンバー、元は女優かという風情の老婦人、垂れた乳房を持つ男、精神病院を出た人びとなど、ほかに居場所が無い様々な輩が住んでいる。
 皆、貧しい。一日中、ホテルのラウンジで過ごすことも多い。さしたるいさかいも無く、互いを尊重し合い、また深入りしない暗黙のルールの中で穏やかな日々を送っている。彼らの楽園。

 ホテルの朝、ラウンジのあちこちのソファに、思い思いに集い座る人々。その中を、皆が注文した各種ドリンクをトレーに乗せ、軽やかにおどけながらドリンクを配っているのが、ここの住人・トム。「館の執事・トムトム」と言われ皆に慕われている。トムは頭が弱いと自認している。知的障害があるのだ。

 映画は同時に、二つのストーリーを追う。ひとつはトムのラブストーリー。もうひとつは、FBI捜査官がホテルに乗り込んできた話。
2-0_20160805164708c93.jpg トム(ジェレミー・デイビス)は、同じくホテルの住人・エロイーズ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が好き。好きだが、どうしていいか分からない。初恋のような感じでたどたどしい。
 エロイーズは謎っぽい女性。かつてあった精神的苦痛から精神病院にいたが、そこを抜け出してミリオンダラー・ホテルの一室に住んでいる。やがて、エロイーズもトムに関心を持つようになる。

 実は、この物語が始まる直前に、ホテル屋上からの飛び降り自殺の事件があった。自殺したのは、やはりホテルの住人でイジーというユダヤ人青年だった。

 イジーの父親は、息子の事件が世間に知られることを恐れた。なぜなら、ユダヤ教は自殺を禁じているからだ。
 そして、息子の事件がメディアによって興味本位に取り上げられたくない。彼は、大手メディアの経営者。ライバルのテレビ局が、ここぞとばかりに父子のスキャンダルとして事件を取りあげるだろう。
 さらに、父親の思いは、果たして息子は自殺だったのだろうか、息子は自殺するはずがない。殺人かも知れない。そんな疑いが頭をもたげた。そして父親は、事件直後すぐに、FBI捜査官・スキナー(メル・ギブソン)を真実解明のため、ホテルへ向かわせた。父親はそれほどに権力を持っている政財界のドンであった。

 ホテルに乗り込んだスキナーは、変人ばかりの住人に辟易しながらも、彼らを対象に聞き取り捜査を始める。犯人はこのホテルにいると言われた皆は、スキナーを恐れホテルはざわつき始める。
 一方、テレビ局がインタビュアーと共にホテルに現れた。ことは隠しきれない、イジーの父親の危惧は現実のものとなった。ホテルの住人は喜々としてインタビューに応えている。

 この騒ぎのなか、画家のジェロニモは金儲けのアイデアが浮かんだ。自身の絵を「イジーが描いたもの」だと言えば、高く売れるぞ! 売れれば、金を皆で分けよう。さっそく、皆は口裏合わせて、テレビ局のインタビューでそう語った。
 そんな折、イジー殺しの犯人としてジェロニモが逮捕されてしまう。金が欲しい皆は、これが犯人だという男をスキナーに差し出せば、金儲け計画の首謀者ジェロニモは釈放される。これで金は入る。
 さて、誰を犯人に仕立てるか・・・。相談して、馬鹿なトムと決まった。トムはテレビに出演できるとして喜んでビデオカメラの前に座った。そして静かに言った。「僕が彼を突き落したんだ。ホテルの屋上から。」

中 本当のところ、トムは馬鹿じゃない。イジーの事件以来、トムはひとり苦悩していた。彼を突き落したのかもしれないと。
 トムの告白映像が放映されたのち、トムはホテルの屋上から飛び降りた。

 実はイジ―の死は自殺だった。トムを利用してエロイーズのことでトムを怒らせ、結果的に自殺ほう助をさせたのであった。そして、このことは誰も知らずに終わってしまった。

 物語自体は難しくないが、シーンの展開が入り組んでいて、いささか分かりづらいかもしれない。

オリジナル・タイトル:The Million Dollar Hotel
監督:ヴィム・ヴェンダース|ドイツ、アメリカ|2000年|122分|
原案:ボノ 、ニコラス・クライン|脚本:ニコラス・クライン|
撮影:フェドン・パパマイケル|音楽:ジョン・ハッセル、ボノ 、ダニエル・ラノワ、ブライアン・イーノ|
出演:トム・トム:ジェレミー・デイビス|エロイーズ:ミラ・ジョヴォヴィッチ|スキナー刑事:メル・ギブソン|ディクシー:ピーター・ストーメア|ヴィヴィアン:アマンダ・プラマー|ジェロニモ:ジミー・スミッツ|ジェシカ:グロリア・スチュアート|イジー:ティム・ロス|ほか
【ヴィム・ヴェンダース監督の映画】
これまでに記事に取り上げた作品です。題名をクリックしてお読みください。

 都市の夏」(1970年)            ゴールキーパーの不安」(1972年)
 都会のアリス」(1973年)            さすらい」(1975年)
 左利きの女」(1977年)・・・プロデューサー:ヴィム・ヴェンダース
 ベルリン・天使の詩」(1987年)        ミリオンダラー・ホテル」(2000年)
 Rain レイン」(2003年)・・・製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース
 パレルモ・シューティング」(2008年)

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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