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映画 「カッコーの巣の上で」   監督:ミロス・フォアマン

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 第三者の目が届かない閉鎖された場において、権力は暴走する。

 ある日、刑務所(農場形態の矯正施設)から精神病院へ移送されてきた男がいた。
 ランドル・パトリック・マクマーフィ、38歳(ジャック・ニコルソン)。 戦闘的、許可なく発言、労働一般を嫌い怠惰、暴力を振るって逮捕5回、そして未成年者強姦1回。
1-0 new こんなことが記載された刑務所からの書類に目を通しながら、精神病院の院長(医師)は、このマクマーフィと面談をした。
 院長曰く、「農園での矯正労働を逃れようとして、君が精神病のフリをしている、と刑務所側では思っているようだ。君は自身が精神異常だと思うかね? (いいや) ともかく、しばらく観察させてもらって、それから君の処置を決め、必要な治療をしよう。」
 病院に依頼した刑務所側の要望は、本当に精神異常かどうか、専門家の目でマクマーフィを観察してくれと言う、そのための移送であった。
 
 マクマーフィは、刑務所内で秩序を乱す男であった。
 ここ精神病院でも院内の規則や秩序を嫌いそれに反抗し、やりたいことをすぐ行動に移す男であった。
 そんな彼だが、周りの患者とは巧みにコミュニケーションをとり、彼らを自分の仲間にしていく。賭け金の代わりにタバコを出し合ってカードゲームで賭け事を始めるなど、やっちゃいけない事を、みんなでやれる機会を作りだし、皆で楽しみ、一目置かれたい。マクマーフィには、そんなところがあった。
2-0 仮 テレビで野球観戦がしたい。「な!見たいだろ?」
 だが、院内では決まった時間以外はテレビは見れないことになっていた。マクマーフィは、看護師長ラチェッドの同意を得て、野球観戦に賛成の挙手を皆に促したが、誰も手を挙げない。
 「な!見たいだろ?」と、一人ひとりを巡ってやっと、数人が手を挙げ始める。その時、ラチェッドは言った。「はい、もうミーティングの時間は終わりです。」と多数決を打ち切った。
 マクマーフィは、仕方なく、スイッチが入っていないテレビを前に、大声で実況中継アナウンスの真似をし始めると、患者みんなはテレビの前に集まりだし大いに盛り上がった。(右写真)
 そして、ラチェッドは院内アナウンスで騒ぎを鎮めようとした。

 自分が作り上げてきた秩序が壊されていく、この様子を見て我慢できないのが、看護師長ラチェッドだ。彼女は老齢の総看護師長の下で、男性介護スタッフを従え、看護業務遂行の全権を掌握している女だ。
 一方、マクマーフィにとって、ラチェッドが作り上げた院内秩序と無言の威圧、そしてそれに従順に従う患者たちの態度が、どうにも気に入らなかった。
 マクマーフィとラチェッドとのつばぜり合いが患者を巻き込み、そののちも展開する。 (この辺りは、まさしく映画が反体制の志をうたいあげている。原作は1962年のカウンターカルチャーの流れを汲む小説。)

 この騒動の後、院長と第三者の医師がマクマーフィを囲んでの面談が始まった。
 「その後、調子はどうだ?」 「バカな看護師長がズルいんだ。」 「でも、彼女はこの病院きっての優秀な看護師だ。」 「優秀かも知れないが、あんなワルはいないぜ。」 「と、言うと?」 「あやつり人形が好きなんだ。」
 「もう君を、この4週間、観察してきたが、君には精神異常の兆候が何も認められない。君は皆を騙してきたんじゃないか?」

 その日、マクマーフィは監視の目を盗んで病院の金網フェンスを乗り越え、出発しようとしていた病院専用バスを乗っ取った。
 バスには患者が大勢のっている。マクマーフィはバスを運転し港に向かい、そして全員、プレジャーボートに乗り込み沖へ出た。
 海は広い、潮風は日ごろの憂さを晴らすに十分だった。皆はそれぞれに楽しんだ後、港に帰ってくると、病院関係者と警察が待ち構えていた。ことは大事になった。


5-0 new
 第三者の医師2人を中心に院長とラチェッドが加わり、緊急ミーティングが行われた。
 医師2人曰く、「彼は精神病じゃないが、危険な男だ。」 「そう、精神病じゃないが、彼は異常だと思う。」
 「院長のあなたは、どうしたいと思う?」と第三者の医師は問う。
 「我々の役目はもう済んだと思う。彼はあと68日で釈放となることだし、農園に返すべきだ。」
 「職員の誰かで、彼の悩みを聞いてあげる人はいないのか?」
 「彼に一番近いのが、彼が嫌っている、ここにいるラチェッドだ。」
 ラチェッド曰く、「私は、彼を農園へ送り返したり他の病院へ回すのは、責任逃れだと思うので反対です。このまま、ここで治療をしたいんです。」

 そんなことで会議のメンバーは、「病院きっての優秀な」看護師ラチェッドの意見に、何故か全員が同意してしまう。
 (現場任せの院長と、精神病じゃないが危険人物として認識してしまう第三者は、どかしている。医師としての資格も見識も無い。そもそも精神病じゃないなら、本件は病院での医療の範疇ではなく、刑務所の仕事のはずだ。)

 しかし、その「ここで治療をしたいんです」の中味とは、頭部への電気ショック療法という「罰」であった。
 さらには、全権を任されているからこそ、ラチェッドはマクマーフィの退院許可不許可を自由に操れた。
 第三者の目が届かない閉鎖された場において、まさに権力は暴走する。


6-0_201608161956573ec.png マクマーフィには、患者の皆を楽しませるプランがあった。そして、それを実行に移す夜、彼はここを脱走する計画だった。
 そのプランとは、警備員が1人となる深夜に、街の女を病院に呼び入れての、酒とダンスとセックスの院内・乱痴気パーティ。
 そして、事はうまく運んだかにみえた。しかし、患者のひとり、若いビリーが女を欲しがった。それは、マクマーフィが街の女と病院から脱出しようという、その時であった。仕方ない、今までも面倒をみてやった子だ。マクマーフィはことが済むまで、引き続き酒を呑むことにした。そして、不覚にも酔って眠り込み、夜が明けてしまった。

 ラチェッドはじめ、職員たちが出勤して来ると、みな一様に驚愕した。院内は乱痴気パーティの後の散らかり様、患者はあちこちで眠り込んでいる。さっそく患者全員が集められた。マクマーフィもいる。いないのはビリーだ。ラチェッドが彼の病室のドアを開けると、そこにはまだ女とビリーが一緒にベッドにいた。
 ビリーは母親に絶対服従の男である。それを知っていてラチェッドはこの件を母親に連絡すると言い残して部屋を出た。そしてそのあとすぐ、ビリーはガラス破片で手首を切って自殺した。
 これを知ったマクマーフィは怒りを抑えきれず、ラチェッドに飛びかかり首を絞めた。だが逆に、取り巻きに抑え込まれてしまった。
中 ラチェッドの逆鱗に触れたマクマーフィは、強制的に脳の外科手術を受け、廃人同様となった。第三者の目が届かない閉鎖された場において、またしても権力は暴走し、取り返しがつかない結末を迎える。

 
 なんとも憎たらしいラチェッドだが、これを演ずる女優ルイーズ・フレッチャーは素晴らしい!
 ちなみに日本では、この映画が製作された1975年(昭和50年)に、「精神外科を否定する決議」が日本精神神経学会で可決され、それ以降、精神外科手術は行われていない、とのこと。


オリジナル・タイトル:One Flew Over the Cuckoo's Nest
監督:ミロス・フォアマン|アメリカ|1975年|133分|
原作:ケン・キージー|脚本:ローレンス・ホーベン、ボー・ゴールドマン|
撮影:ハスケル・ウェクスラー、ビル・バトラー|
出演:ジャック・ニコルソン (マクマーフィ)|ルイーズ・フレッチャー(看護師長ラチェッド)|ウィル・サンプソン(ネイティブアメリカンで強制入院のブロムデン)|ブラッド・ドゥーリフ(自殺するビリー・ビビット)|クリストファー・ロイド(強制入院のテイバー)|マイケル・ベリーマン(エリス)|ウィリアム・レッドフィールド(ハーディング)|ダニー・デヴィート(マティーニ)|ヴィンセント・スキャヴェリ(フレドリクソン)|スキャットマン・クローザース(タークル)|シドニー・ラシック(チャーリー・チェズウィック)|マーヤ・スモール(キャンディ)|ディーン・R・ブルックス(院長スパイビー)|




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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
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