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映画 「浅草四人姉妹」   監督:佐伯清

上
左から四女・恵美子、長女・美佐子、父、三女・千枝子、次女・幸子、手前は母


 浅草の街に住む 仲のいい四人姉妹を、さらりとスケッチする大人の喜劇。
 そして、登場人物の心情を細やかに描く、無理のない、いい脚本。
 ストーリーは、はじめは明るく軽快で、途中、相次ぎ事がこんがらがって、幸せそうで可哀想で、ラストは一抹の寂しさを残して終わります。
 姉妹の両親は、浅草の飲食店街で小さな呑み屋をやっていて、店の奥が居間、2階は川の字で寝る姉妹の部屋になっている。

 時は昭和27年、7月。浅草は夏を迎えようしている。
 大柄でさっそうと歩く、四人姉妹の長女・美佐子は、家族や近所の人から「姉ちゃん先生」と呼ばれ一目置かれている。
1‐0 美佐子は小さな病院の勤務医(内科医)で、27歳くらい、独身。毎日、都電に乗って通勤している。この先まだまだ、医学の勉強をするつもり。幼い頃から美佐子は男勝りの女の子であった。
 家族で唯一の男性、父親の藤吉(三島雅夫)は、お人好しで、「我が家は女護ヶ島(にょごがしま)だ」といって家族女性群に頭が上がらない。よって美佐子が一家の柱となっている。

 次女の幸子は、最近芸妓の道を選んだ。舞踊を極めたい。日頃は住込みで置屋にいるようだ。母親・梅子(沢村貞子)は、若い頃、浅草で名の通った芸妓だったので、幸子を応援している。
 三女の千枝子(杉葉子)は、洋裁店に勤めていて洋裁が好き。ファッションに敏感なオシャレな娘。長女・美佐子に似て行動的。
 四女の恵美子は、高校生でまだ子供っぽいが、将来、国会議員になって女性の地位向上に貢献したいという志。幼なじみの三平とは、いい仲。

 さて、そんな一家だが、話は相次いで、こんがらがってくる。
 まずは、次女の幸子。初めての客・村川に一目ぼれしてしまうが、村川に妻子あり。片思いの重症で寝込んでしまう。
 次は美佐子の話。勤務先の病院に外科医の田中という男がいて、彼は前々から美佐子に気があるが、美佐子はまったくもって気にも留めていない。
 ある日の、病院屋上で催された院内ビヤーガーデン・パーティ。飲める美佐子は大いに飲み、はずみで田中医師とダンスする。酔った美佐子の心は、なぜか田中医師の胸の中で解放され、気持ち良かった(のだろう)、その時、思わず漏らした一言、「これは、どういう気持ちなのかしら?」。
 田中はその一言を聞いて、美佐子が恋に目覚めたと思い、一方、これまで色恋に縁のなかった美佐子は、あとになっておっとりと、この気持ちは恋、と分かる。
 そんな折、三女の千枝子が急に腹痛を訴え美佐子の病院に入院。盲腸だった。これがなんと、田中医師との出会いであった。
 この時、四人姉妹の3人が恋に落ち、うち2人は恋敵のてんやわんや。

 結局、千枝子は田中医師とめでたく結婚。美佐子は、誰にも言えぬ辛い日々を過ごしながらも、明日への一歩を踏み出し始める。次女の幸子は、片思いの重症でずっと寝込んでいたが、ある日、地震でびっくり飛び起きた拍子に、病魔退散。四女の恵美子は、三平と並んで店の手伝いをしている。


さっそうと通勤する美佐子
下2 この話の背景には、兵士の戦死の影響で、男性の人口が女性に比べて大変少ない結婚難の時代だったことがあげられる。
 だが映画冒頭で、夕食時に母親が、慶応卒のお見合い写真を四人姉妹に見せるが、またぁ!と言って、誰も見ようとしない。女性もキャリア形成の時代だと映画は言っている。
 美佐子は近隣からも「姉ちゃん先生」と呼ばれているのは、家の近所の病人を嫌がらずに診察するからだ。家に往診用のカバンをいつも用意している。医院がまだ少なかった時代なのだろう。
 ちなみに、映画製作の1952年(昭和27年)は、連合国軍による日本占領が終わり日本に主権が回復した年。戦争終結、GHQ廃止。日本とアメリカ合衆国との安全保障条約発効。これより、日本は明日に向かって発展を目指すことになる。


監督:佐伯清|1952年|84分|
脚本:井手俊郎 、 橋村美保|撮影:横山実|
出演:長女・美佐子(相馬千恵子)|次女・幸子(関千恵子)|三女・千枝子(杉葉子)|四女・恵美子(岩崎加根子)|父・藤吉(三島雅夫)|母・梅子(沢村貞子)|四女・恵美子の彼氏・三平(高島忠夫)|五郎(井上大助)|加代(飯田蝶子)|姉ちゃん先生の同僚で外科医・田中(山内明)|次女の幸子の客・村川 (二本柳寛)|四人姉妹のお見合いをすすめられた慶応大卒の春山(田中春夫)|その父(小堀誠)|ほか

四女・恵美子と同級生たち。浅草六区の興行街。
下3 映画は終戦からまだ7年しか経っていない頃の話です。
 本作に地震にあうシーンがあるが、「地震、雷、空襲、親父」というセリフが出てくる。空襲がまだ生々しい頃だった。
 浅草寺の本堂も空襲で焼失、だから映画ではその姿はない。映画公開(1952年(昭和27年)8月7日)の、その前年に本堂再建工事が始まっている。そんな様子が遠景で映画に映っている。
 飲酒のシーンの大方が、美味しそうにビールを飲むシーン。映画公開が夏であったからだろうが、ビール原料になる大麦などの戦時下統制が解除になって、生産が大いに進んだ年だったらしい。
 院内で美佐子と田中医師が、消毒用の純正アルコールを水で割って飲むシーンがある。一杯飲む度に都度、名のあるウィスキーの銘柄を言いながらグイッと、そしてまたグイッと。これで美佐子は酔っぱらい、田中医師との恋を知る。ウィスキーは高価だったようだ。

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