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映画 「バルタザールどこへ行く」   監督:ロベール・ブレッソン

上ずぶ濡れになったマリー







1‐0






 マリーの父親は、教室ひとつの小さな学校の教師(身分は校長)で、曲がったことが嫌いで、正義感が強く、秩序や道徳を重んじる人であった。
 そして幼いマリーは、そんな親の言うことをよく聞く、良い子だった。

 父親の学校は、マリーの家の傍にあり、農場主の敷地内に建っている。
 だが、農場主はこの地に住んではいない。病弱な娘の静養のために、時折ここに来た。
 農場主の子供にジャックという息子がいて、ここへ来る度にマリーと遊んだ。幼いながらも、互いに好きだった。

 この一家が静養に来ていたある日、病弱だった娘が静かに他界した。農場主は悲しみ、それ以後、娘が死んだこの土地を嫌った。
 「娘が死んだこの地には、もう戻りたくない。あなた(マリーの父親)の夢だった最新式農法を試さないか。学校は閉めなさい。土地の譲渡に必要な書類や委任状を同封した。土地の名義はあなたの娘マリーにします。あとは、すべてあなたにお任せする。必要なら当座の生活費を公証人が提供するだろう。」 
 農場主が送ったこの手紙にある誠意に、マリーの父親は喜んだ。願ってもないことだった。

 しかし、このことがマリー一家の行く末を不幸にすることとなった。
 村の人々の妬み、その妬みが生む悪い噂、既に村を離れ遠くで噂を耳にする農場主。こののち、農場主はマリーの父親に対する不信、妄想に蝕まれていくのであった。
 農場主はまず、マリーの父親に会計報告を要求した。公証人も村の噂を考慮して報告せよとすすめる。がしかし、清廉潔白のマリーの父親は、農法主への会計報告を拒んだ。プライドもあったろう。(しかし、あまりにも世間を無視するマリーの父親。これは大人の判断ではなかった。)

2‐0 マリーの父は、自ずと村人に背を向けるようになった。マリーの家は村で孤立していった。
 その弱みに付け入る男がいた。ジェラールという村の与太者だ。そして、成長したマリーは村一番の美人であった。ジェラールは、マリーの父親の目を盗み、マリーに近寄るようになった。マリーは彼を怖がった。
 
 一方、マリーの一家を心配する男がいた。幼なじみのジャックだ。彼は単身、新車のオープンカーに乗ってマリーに会いに来た。
 この時ジャックは、マリーに愛の告白をした。マリーも彼が好きだが、彼を受け入れる心の準備がまだ出来ていなかったし、両家のいさかいを重荷に感じていた。
 そしてこの時、ジャックにはもうひとつの思いがあった。それは、自分の父親とマリーの父親の間に立って、互いの誤解を解こうという思いであった。しかし、マリーの父親は頑固で、ジャックの申し入れを突っぱねた。ジャックは憤慨し、マリーに挨拶もせず帰って行った。

 一家を取り巻く閉塞した状況は、マリーの純粋な心を重くした。そしてマリーの気持ちは暗く塞ぐ一方であった。
 そんななかマリーは、初め恐れていたジェラールと付き合うようになった。当然、マリーの両親は反対した。だが、マリーは町に出てジェラールらと遊んだ。マリーの心は解放されるようであった。

 ジャックを追い払ったマリーの父親は、その後も、譲渡の決着がつかぬ土地で、畑仕事を続けていた。しかし、ある年、農場は収穫前に差し押さえられ、作物は枯れた。
 そんなある日、再度、ジャックがマリーに会いに来た。そして再びマリーに愛の告白をした。(ジャックはジェラールとの件は知る由もない) さらには、これまでにかかった裁判費用も私が工面しようと申し出た。

 マリーはジャックの想いをうれしく受け取ったが、しかし、マリーは思った、私はかつてのマリーではない、と。
 この時、彼女は自分を恥じたのかもしれない。マリーは突如、ジェラール達がたむろする廃屋へと向かった。しかし、彼女を待っていたのは、ジェラール達によるレイプであった。人の知らせで、マリーの父とジャックは廃屋へ急いだ。マリーはその家の一部屋に閉じこもったままであった。

 マリーの精神は病んでいた。雨の中、うろつく彼女はずぶ濡れになり、一人住まいの男の家で雨宿りさせてもらう。そして、その年配の男を誘うのであった。
 マリーの父親も精神が病んで、それがもとで亡くなってしまう。残された母親は嘆くばかりであった。


下0 おおよそ、以上が、ストーリーの幹です。
 そして、この幹に枝葉として、ジェラールの私生活や村の飲んだくれ男の話など、幾つものエピソードがあちこちに挿入されています。そのため、基本のストーリーの流れを見失いがちになり、よって、なにやら難解な映画だと感じてしまう、これがこの映画の難点。

 題名にあるバルタザールとは、マリーが大好きだったロバの名。
 このロバは、マリーやジャックの幼い頃、農場主(ジャックの父親)が飼い主で、話が進むにつれ時が経つにつれ、飼い主が転々とします。また、重要場面では、なぜかこのロバが傍にいます。つまり、ロバのバルタザールは、本作の狂言回しを担っています。そしてラストシーンでは、羊の群れの中でバルタザールは主役になります。

 印象的な映画ですが、かつての洋画邦画にありがちであった、登場人物が一気に不幸の奈落へと落ちていく、そういった作り。
 ブレッソンはああだこうだと、周りで難しいことを言っていたとしても、それを気にせず、すなおに観て欲しい。


オリジナル・タイトル:Au Hasard Balthazar
監督:ロベール・ブレッソン(1901年 - 1999年)|フランス、スウェーデン|1964年|96分|
脚本・脚色・台詞:ロベール・ブレッソン|撮影:ギスラン・クロケ|
出演:マリー(アンヌ・ヴィアゼムスキー)|ジェラール(フランソワ・ラファルジュ)|ジャック(ヴァルテル・グレェン)|ほか

1960年代のフランス映画はいいですね。
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Posted byやまなか

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