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スリランカ映画 「バーニング・バード」、韓国映画 「THE NET 網に囚われた男」、中国映画「神水の中のナイフ」  ~第17回東京フィルメックス上映作品

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその第一回です。
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「バーニング・バード」  Burning Birds|フランス、スリランカ|2016|84分|
 監督:サンジーワ・プシュパクマーラ (Sanjeewa PUSHPAKUMARA)
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 泥沼の内戦が長く続いたスリランカの悲劇。
 スリランカの人口の7割を占めるシンハラ人は、仏教を準国教化するなどして、少数派のタミル人(ヒンドゥー教徒が多い)に対して、1965年ごろから反タミル人・キャンペーン、選挙権はく奪、民族浄化などを進めていました。これがお話の背景です。

 本作は1989年ごろのことで、反体制派の活動家狩りが公然と横行していました。さて、話の舞台となる村には、8人の子を持つ貧しいが幸せな一家が住んでいます。
 ある日、その父親が何の理由もなく、民兵(地元自警団)に殺害されてしまいます。それは子たちが通う小学校の校長が、彼を反体制活動家だとして、民兵に密告したためでした。
 そしてそののち、一家は悲しみの奈落へと突き進むこととなります。稼ぎ手を亡くした母親は仕事に出ますが、男社会の中で差別され暴行を受け仕事を失います。長女はコロンボに働きに出る、あるいは結婚するなどと母親に申し出ますが、勉強していい生活をつかみとってくれ、子たちの面倒をみてくれと言い納めます。母親として当然でした。
 しかし、マシな働き口が見つからず、食うものにも困る状況が続き、母親はついにお金のため売春婦となってしまいます。さらには、夫を殺した民兵が客として来店し、母親を暴行します。また、警察による査察が店に入り、店の全員が連行され刑務所送り。義母が自殺。小学校ではいじめがはじまり、子たちは校長によって学校から追放されてしまいます。
 刑務所にいる母親から、子たちを託された長女は、幼い弟妹たちと共に村を出、コロンボの縫製工場で働き始めます。
 一方、やがて出所した母親は校長宅に忍び入り、寝ていた彼をナタで殺したのち、空になった自宅に火をつけます。家は一塊の大きな炎となって激しく燃え上がって行くのでした。
 まったくもってストレートに表現される、怒りの映画です。しかし、もう一味、欲しい。

「The NET 網に囚われた男」  The Net|韓国|2016|112分|
 監督:キム・ギドク (KIM Ki-duk)
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 朝鮮半島の主権を巡っての朝鮮戦争は、1950年に始まり1953年に「休戦」となって今に至っています。
 この間、共産圏の政治体制を維持し、自由陣営と対立しているように見える北朝鮮では、実は世襲君主崇拝と社会の階級化が進んでいます。つまり北朝鮮の共産主義政治思想は東西冷戦時に比べ希薄になっていますが、人権問題、核開発の問題においては今も自由陣営と激しく対立していると言えるでしょう。
 特に昨今、核問題において両国の関係が、急に悪化していることに監督は危機感を抱いていて、これが本作の底辺にあるようです。

 38度線を挟んで対峙する両国。その国境で毎日、漁をする男がいました。ある日、舟のスクリューに網が絡みつき、懸命にこれを外そうとしている間に、水上の国境を越えてしまいます。男は韓国の国境警備隊に捕らわれて、スパイ容疑で、激しい尋問を受けることになります。そして、亡命を強要されますが、男は北に帰りたい。妻子が待っているわけです。結局、スパイ容疑は晴れ、男は北に帰されます。
 ですが今度は、北の機密情報を韓国に提供した売国奴と決めつけられ、また激しい尋問を受けることになります。
 しかし、男に同情的であった韓国の取調官の一人から受け取っていたドルが、結局、男を助けることになります。つまり、北朝鮮の取調官はこの金と引き換えに、男を開放します。
 苦難の末、男はやっと日常を取り戻したかにみえましたが、ある日漁に出ようとすると、そこは禁漁区となっていました。しかし、男は警備隊員の制止を振り切り、舟を出しますが・・・。
 ストーリーの練り込みがイマイチで半煮え感を拭えない。かつ登場人物、特に南北の取調官の人物描写が劇画的で薄っぺらで、ステレオタイプ。映画途中でラストシーンは、きっとああだろうと見当がついてしまうのも残念。

「神水の中のナイフ」  Knife in the Clear Water|中国|2016|93分|
 監督:ワン・シュエボー(WANG Xuebo)
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 中国の西北部、寧夏回族自治区というところにある村、つまり中国のイスラムの村のお話。北部はもう、内モンゴル自治区に接している地域。
 荒涼とした大きな風景と、村人の寡黙な日々が映し出されて行きます。しかし、そこには彼らの人生ドラマがあるわけです。
 小説を原作にしているとのことですが、その小説を読んでいない者には、ほとんどセリフもなく、ドラマに奥行きを感じにくい。映画が発信する微細な周波数をそれぞれが感じ取り、増幅して観ることになります。映画というより、遠い彼方の映像を眺める感じ。






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