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イスラエル映画 「オリーブの山」、中国映画 「よみがえりの樹」、イタリア映画 「山<モンテ>」 ~第17回東京フィルメックス上映作品

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその第8回です。
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「オリーブの山」  Mountain|イスラエル、デンマーク|2015|83分|
 監督:ヤエレ・カヤム  (Yaelle KAYAM)
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 若い監督のデビュー作には、時に不思議へ誘うかのような、言葉にしようのない魅力を持つものがある。
 それは、自分勝手に素晴らしいと思う、若さゆえの独り善がりが生み出す新鮮さ、ベテランには無い原動力。
 その不思議さは、芸術というフィルター越しの風景なのか。いや、単に妙チクリンなだけのか。うむ、なかなかそうとは言いきれないのが、このミステリアスな映画。

 舞台はイスラエルにあるオリーブ山という丘陵。旧約および新約聖書にたびたび出てくる所らしい。そこに墓地がある。世界最古でかつ最大のユダヤ人のためだけの墓地。

100.jpg この墓地の中に住む若夫婦の妻・ツヴィアが主人公。つつましい一家で、子がいて、夫はユダヤ教正統派の学者のようだ。
 何不自由ない家だが、夫は最近過労気味。精神的に参っている。そのせいか、夫は妻の夜の要求に応えられないでいる。夫婦仲もギクシャクしている。

 朝、夫や子を送り出したあと、ツヴィアは台所でタバコを吸う。家は丘の中腹だから、台所の窓から見える風景がいいのだ。
 気晴らしに外へ出て、墓地の階段を上がり、見晴らしの良い場所でたたずむのが彼女のお気に入り。時たま通りすがる、墓掘りのアラブ人の男は、たたずむ彼女の前で立ち止まり、決まってタバコの火を求める。そしていつも、取りとめのないつかの間の会話が始まる。なぜかお互い、癒やされる。

 そのうちツヴィアは、家族が寝静まった夜に墓地に出るようになる。タバコを吸う辺りからは、遠くの街の灯が見える。
 ある夜、墓地の中で喘ぎ声が聞こえた。売春婦とその客だ。ツヴィアはその様子をじっと見ている。彼女が何かを落とした。その物音を聞き付けた売春斡旋の男たちが、ツヴィアを追いかける。彼女は間一髪で難を逃れた。

 その日から、ツヴィアは彼らのために料理を作るようになる。作った料理を鍋のまま、真夜中に墓地へ持って行き、恐々ながらも彼らに提供するのだ。何と言う とち狂った女だと思っていた彼らだったが、そのうちツヴィアの料理を心待ちにするようになった。

 その日ツヴィアは、まったく同じ料理を同時に二つの鍋に作っている。ひとつの鍋は家族に、もうひとつの鍋は売春グループたちのため。そしてツヴィアはおもむろに、殺鼠剤(ネズミ駆除薬剤)を取り出し、片方の鍋に入れた。
 夜が更け、いつものように彼女は鍋を抱えて墓地の中を行く。売春グループたちは美味しそうにその料理を食っている。そして彼女は帰る。墓地の階段を降りて行くその途中で、ツヴィアは立ち止まった。彼女は我が家をじっと見下ろしている。
 
 まだ若いゆえの解釈も見受けるが、映画が映しだす丘陵(オリーブ山)からの拡がりある風景が、観る者の心をも澄ます。そして、拡がりある風景に対比されるツヴィアの受け身で縮こまった心、不可解な心境。ミステリアス。 

「よみがえりの樹」  Life After Life (枝繁葉茂)|中国|2016|85分|
 監督:チャン・ハンイ (ZHANG Hanyi)
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 霊魂がとりつく憑依憑霊の話に、輪廻転生にまつわるエピソードを添えた物語。監督にとって、これが長編映画第一作目。
 ここは中国、黄土高原が広がる陜西省の辺鄙な村落。古くからの家は、崖(がけ)に横穴を掘って造った土の中の家(横穴式住居ヤオトン)だ。しかし今では、そのヤオトンの家々も、そうでない家も、みな空き家。もうこの村落に留まる人は極わずかになってしまった。
 村はこれまで炭坑で食って来たが、坑道崩落で閉鎖となる。地域住民はみな、新築の高層アパート一棟に集約されるらしい。これを嫌がる人もいる。

 そんな村に、妻を亡くした男と、その息子がいる。息子の名はレイレイ、小学校低学年くらい。ヤオトンの家に住んでいる。
 ある日、ふたりして近隣の林に入り、焚き木ひろいをしていた。その時、突如レイレイの身に、母親の霊魂が取り着いた。
 母親・シュウインは息子の声を借りて、夫に言った。我が家の前に植わっていた木を、何処か良いところへ移植したい。あの木は私が嫁いできた時の、唯一の嫁入りの品だった。
 ここから夫と、亡き妻シュウイン(レイレイの身に取り着いた母の霊魂)のふたりが、木の移植に苦労する話となる。三輪オートバイに乗って、ふたりは移植を手伝ってくれそうな人をあちこち訪ねるが、誰も相手にしてくれない。そんな中、ふたりはシュウインの実家を訪ね、シュウインは老いた両親に、自分が戻って来たことを密かに伝えたりもする。
 結局、ふたりだけの移植作業となり、レイレイの子供の身では力仕事がはかどらず苦労する。そして、荒野にその木を植え替えた。

 憑依憑霊の話は、拍子抜けの感あり。
 映画は、妻が憑霊したのちの些細な話を、必要最小限のセリフとともに、村落周辺の風景映像を延々と流して表現しようとする。
 監督は撮影されたこの地で生まれ育ったとのこと。だから、観客がなんとなく観ている映像は、監督にとっては特別な景色なのだ、その景色に監督の記憶や愛着が重なるのだろうが、観客にそれが伝わってこない。
 見方を変えれば、この物語は短編小説にはなるが、話を絵(映像)に当てはめるのは難しい。

 この映画のプロデュースは、ジャ・ジャンクー。彼が主催する「添翼計画」(若手監督育成プロジェクト)からの出品作。
 以前の出品作では、ソン・ファン監督の「記憶が私を見る」(2012年)が、抜群に良い。(この記事は、こちらからお読みください)

「山<モンテ>」  Monte|イタリア、フランス、アメリカ|2016|105分|
 監督:アミール・ナデリ  (Amir NADERI)
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 監督のアミール・ナデリは、イランの映画監督。この映画は、全編をイタリアで撮影された。
 時代は中世末期。巨大な岩があちこちに露出している山の中腹に住む一家三人。
 家の周囲は、山くずれで、がけになった急斜面、岩がガラガラしている所。そんな山あいの狭い土地に畑を耕すが、石が混じる土地は山陰で陽も当らない。
 こんな荒れた土地を離れれば良いものをと思うが、彼らは町に住めない。蔑視されている人びとなのだ。
 一家のあるじアゴスティーノは、ある日からゲンノウ(大型ハンマー)で巨岩を打ち砕こうとし始める。しかし、力しても岩は硬い、ゲンノウは跳ね返されるばかりだ。そんなシーンが延々と続く。しかしラストは、思わぬことに・・。
 ヴェネチア映画祭で「監督・ばんざい!賞」が授与されたらしいが、延々と続く岩を打ち砕こうとするシーンが、この先いつまで続くのか、はやく終わって欲しい!と願った、久々の映画でした。
 
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